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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L
管理番号 1301210
審判番号 不服2013-22395  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-15 
確定日 2015-05-20 
事件の表示 特願2011-541076「背景雑音を除去する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月 3日国際公開、WO2011/012054、平成24年 5月31日国内公表、特表2012-512434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯と本願発明
本願は、2010年7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月29日、中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成24年9月18日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成26年7月8日付けで当審より拒絶理由が通知されたが、意見書が提出されず期間経過となったものである。

本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成25年11月15日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「音響信号の特性値を検出し、前記音響信号の変化の傾向を反映した特性信号を取得するステップと、
前記特性信号を所定範囲内に制限するピーク抑制を実行するステップと、
前記ピークが抑制された特性信号と前記音響信号とを乗じ、生成信号を取得するステップと、
前記生成信号を比例的に増幅し、増幅された生成信号を出力するステップとを含む背景雑音の除去方法。」

第2 引用発明及び周知技術
1 引用例及び引用発明
当審の平成26年7月8日付け拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平7-177048号公報(平成7年7月14日公開、以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音声信号に含まれる雑音を低減する雑音低減処理方法に関し、特に例えばマイクロホンにより収音される音声信号に混入する雑音を低減するための雑音低減処理装置に適用される雑音低減処理方法に関するものである。」(2頁1?2欄)

ロ.「【0018】
【実施例】以下、図面を参照しながら本発明に係る雑音低減処理方法のいくつかの実施例について説明する。以下の説明においては、これらの実施例の方法が適用された雑音低減処理装置として、例えば携帯用電話装置に組み込まれるものを想定している。すなわち、例えば高雑音環境下での携帯用電話装置の使用に際し、送話用のマイクロホンが音声と共に収音してしまう雑音を低減するための雑音低減処理装置に本発明の実施例に係る雑音低減処理方法が適用される。本発明の実施例においては、一般的に音声と雑音とを比較した場合に、雑音よりも音声の方がレベルが大きいことを利用して雑音を低減している。
【0019】先ず、図1は、本発明に係る雑音低減処理方法の第1の実施例が適用された雑音低減処理装置を示している。
【0020】この図1において、音声信号入力手段としてマイクロホン1を用いている。このマイクロホン1には、音声の他に、外部騒音や風雑音等の雑音が収音され、これが電気信号に変換される。
【0021】マイクロホン1からの入力信号は、アナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器であるA/D変換器2に供給される。このA/D変換器2からの信号であるディジタル入力信号x(n) は、図示しないフレーム分割手段によって例えば周期20msec のフレームに分割され、160サンプル毎にフレームパワー計算回路3及びノイズリデュース(雑音低減)回路6に供給される。フレームパワー計算回路3は、音声信号のフレーム毎のパワーとして、上記フレーム当りのディジタル入力信号x(n) の平均パワー、例えば自乗平均の平方根値、いわゆるrms値を計算する。このフレームパワー計算回路3で計算されたフレーム平均パワー値は、抑圧比計算回路4に供給される。抑圧比計算回路4は、上記フレームパワー計算回路3で計算されたフレーム平均パワーを用いて、雑音を抑圧するための係数である抑圧比を計算する。抑圧比計算回路4で計算された抑圧比は、スムージング回路5に送られる。スムージング回路5は、抑圧比計算回路4で計算された抑圧比にスムージング処理を施す。このスムージング処理とは、例えば20msec で160サンプルのフレーム単位で分割された入力音声信号のつながりの不連続性を避けるための処理である。このスムージング処理が施された抑圧比は、ノイズリデュース回路6に送られ、このノイズリデュース回路6においてA/D変換器2から供給されたディジタル入力信号x(n) の雑音を除去するために用いられる。
【0022】フレームパワー計算回路3は、上記フレーム当りのディジタル入力信号x(n)の平均パワーを計算する。この1フレームの例えば160サンプルの入力信号の平均パワーrmsは、次の式で計算される。
【0023】
【数1】(略)
【0024】この(1)式に基づいて計算された平均パワーrmsは、抑圧比計算回路4に供給される。
【0025】抑圧比計算回路4は、平均パワーrmsと、ある閾値nr1とを比較し、その比較結果により、抑圧比scale を計算する。すなわち、この抑圧比scale は、上記平均パワーrmsが閾値nr1以上のとき1とし、閾値nr1よりも小さいとき、
scale =rms/K ・・・ (2)
ただし、Kは定数。この例の場合にはK=nr1。
とする。あるいは、全てのrmsについて(2)式を計算し、その計算結果としての抑圧比scale が1よりも小(scale <1)となる場合には、この(2)式で計算された抑圧比scale をディジタル入力信号x(n) に乗算する。これは、上記平均パワーrmsが上記閾値nr1よりも小となるフレームにおいては、ディジタル入力信号x(n) に1よりも小さいゲインを乗算することを意味する。また、この(2)式の結果、抑圧比scale が1以上(scale ≧1)となる場合には、ディジタル入力信号x(n) には何も処理を施さずにそのまま出力する。これは、抑圧比scale が上記閾値となるフレームにおいては、ディジタル入力信号x(n) に1のゲインを乗算することを意味する。従って、この閾値nr1を適切に選ぶことにより、雑音部分のようなパワーの小さい部分ではゲインが小さく制御されることになり、実質的に雑音低減の効果が得られる。なお、上記(2)式を用いた場合のノイズ抑圧の効果は、入力信号の平均パワーに対して1/2倍となる。
【0026】この抑圧比計算回路4により計算された抑圧比scale を上記ディジタル入力信号x(n) に乗算して得られる出力信号のレベル変化を図2に示す。この図2において、横軸に入力レベルを、縦軸に出力レベルをそれぞれdB(デシベル)表示で示している。横軸の閾値nr1を境に、入力レベルである例えば上記rms値がnr1以上となる領域では入力に対して一定ゲインの出力が得られ、入力レベルがnr1よりも小となる領域では、入力レベルが低下するほどゲインが小さくなるような、一種の伸張器あるいはエキスパンダの特性が得られる。
【0027】さらにノイズの抑圧を大きくしたい場合、すなわちエキスパンダの伸張作用の強さを高めたい場合には、抑圧比計算回路4における抑圧比scale の計算式として、例えば次の(3)式を用いるようにすればよい。
scale =rms^(2 )/K’ ・・・ (3)
ただし、K’は定数。
このときのノイズ抑圧の効果は、入力信号の平均パワーに対して1/4倍にすることができる。」(3頁4欄?4頁6欄)

ハ.「【0037】すなわち、図1の構成からも明らかなように、抑圧比計算回路4で計算して求められた抑圧比scale は、一旦スムージング回路5によるスムージング処理を施した後、ノイズリデュース回路6に送るようにしている。
【0038】このスムージング回路5は、上述したようなノイズ低減処理において生じる問題を解決するために設けられたものであり、上記アタックタイム、リカバリタイムを設定している。この実施例では、アタックタイムを“0”とし、リカバリータイムは可変ができるようにしている。
【0039】すなわち、計算した現在のフレームの音声パワーが前のフレームより大きいときにはその値をそのまま使い、逆に、小さい場合は次の(4)式で特性を示されるローパスフィルタ(LPF)によりスムージングを行い、フレームパワーの変化による処理音声の不自然感が出ないようにする。
【0040】
【数2】(略)
【0041】この(4)式の係数 Scale_flt_(1),Scale_flt_(2) の割合を変えることによりリカバリータイムを変更することができる。アタック、リカバリーの処理を加えた場合、音声信号がどのように変化するかを図5の破線に示す。この図5において、横軸には時間が、縦軸には振幅がとられているが、上記(4)式によりスムージング処理を行うと、実線で示されている音声信号の変化を破線で示すような滑らかな変化にすることができる。このスムージング回路5によって、フレームパワーの変化による処理音声の不自然感が補正されたscale は、ノイズリデュース回路6に供給される。
【0042】ノイズリデュース回路6は、A/D変換器2から供給されたディジタル入力信号x(n) にスムージング回路5を介したscale を乗算して、入力信号x(n) の雑音低減処理を行い、雑音が低減された出力信号を出力端子7から出力している。
【0043】したがって、この第1実施例に係る雑音低減処理装置は、少ない計算量で雑音低減処理を行うことができる。」(5頁7?8欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0019】における「図1は、本発明に係る雑音低減処理方法の第1の実施例が適用された雑音低減処理装置を示している。」との記載、同ロ.の【0021】における「A/D変換器2からの信号であるディジタル入力信号x(n) は、図示しないフレーム分割手段によって例えば周期20msec のフレームに分割され、160サンプル毎にフレームパワー計算回路3及びノイズリデュース(雑音低減)回路6に供給される。フレームパワー計算回路3は、音声信号のフレーム毎のパワーとして、上記フレーム当りのディジタル入力信号x(n) の平均パワー、例えば自乗平均の平方根値、いわゆるrms値を計算する。このフレームパワー計算回路3で計算されたフレーム平均パワー値は、抑圧比計算回路4に供給される。抑圧比計算回路4は、上記フレームパワー計算回路3で計算されたフレーム平均パワーを用いて、雑音を抑圧するための係数である抑圧比を計算する。抑圧比計算回路4で計算された抑圧比は、スムージング回路5に送られる。スムージング回路5は、抑圧比計算回路4で計算された抑圧比にスムージング処理を施す。・・・このスムージング処理が施された抑圧比は、ノイズリデュース回路6に送られ、このノイズリデュース回路6においてA/D変換器2から供給されたディジタル入力信号x(n) の雑音を除去するために用いられる。」との記載、及び図1によれば、引用例の雑音低減処理方法は、ディジタル入力信号(x(n)) が、フレームパワー計算回路(3)に供給され、フレームパワー計算回路(3)が、平均パワー、いわゆるrms値を計算し、平均パワー(rms)が、抑圧比計算回路(4)に供給され、抑圧比計算回路(4)が、平均パワー(rms)を用いて、雑音を抑圧するための係数である抑圧比(scale)を計算し、抑圧比(scale)が、スムージング回路(5)に送られ、スムージング回路(5)が、抑圧比(scale)にスムージング処理を施して、ノイズリデュース回路(6)に送り、このノイズリデュース回路(6)においてディジタル入力信号(x(n))の雑音を除去している。ここで、上記ハ.の【0042】における「ノイズリデュース回路6は、A/D変換器2から供給されたディジタル入力信号x(n) にスムージング回路5を介したscale を乗算して、入力信号x(n) の雑音低減処理を行い、雑音が低減された出力信号を出力端子7から出力している。」との記載によれば、前述のノイズリデュース回路(6)は、ディジタル入力信号(x(n)) にスムージング回路(5)を介した抑圧比(scale)を乗算して、雑音低減処理を行い出力信号を取得している。すなわち、引用例の雑音低減処理方法は、(α)ディジタル入力信号(x(n))のrms値を計算し、ディジタル入力信号(x(n))の平均パワー(rms)を取得し、(β)平均パワー(rms)を所定範囲内に制限する抑圧比(scale)を計算し、(γ)スムージング回路(5)を介した抑圧比(scale)とディジタル入力信号(x(n))とを乗じ、出力信号を取得しているということができる。
また、上記ロ.の【0025】における「抑圧比計算回路4は、平均パワーrmsと、ある閾値nr1とを比較し、その比較結果により、抑圧比scale を計算する。すなわち、この抑圧比scale は、上記平均パワーrmsが閾値nr1以上のとき1とし、閾値nr1よりも小さいとき、scale =rms/K・・・(2)ただし、Kは定数。この例の場合にはK=nr1。とする。」との記載によれば、前述の抑圧比(scale)は、平均パワー(rms)が閾値nr1以上のとき1に固定されるから、抑圧比(scale)を計算することは、ピーク抑制を実行するということができる。

したがって、上記(α)ないし(γ)をステップとして纏めると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ディジタル入力信号(x(n))のrms値を計算し、前記ディジタル入力信号(x(n))の平均パワー(rms)を取得するステップと、
前記平均パワー(rms)を所定範囲内に制限するピーク抑制を実行するステップと、
スムージング回路(5)を介した前記ピークが抑制された平均パワー(rms)と前記ディジタル入力信号(x(n))とを乗じ、出力信号を取得するステップとを含む雑音低減処理方法。」

2 周知例及び周知技術
当審の平成26年7月8日付け拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-259927号公報(平成5年10月8日公開、以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

ニ.「【0002】
【従来の技術】近年、コンパンダ、およびエキスパンダは通信時の雑音を低減し、S/N比の改善を図る目的で送受信機に広く利用されるようになってきた。
【0003】以下に従来の送受信機の雑音低減装置について説明する。図5は従来の送受信機の雑音低減装置のブロック図であり、1はマイクロホン、2はマイク増幅器、3はコンパンダであって通常の送信系の一部を示す。また、4は中間周波増幅器、5はFM復調器、6はエキスパンダ、7は低周波増幅器、8はスピーカであり、通常の受信系の一部を示すものである。
【0004】以上のように構成された送受信機の雑音低減装置について、以下にその動作を説明する。
【0005】まず、送信時においては、マイクロホン1に入力された音声信号はマイク増幅器2で増幅されコンパンダ3へ入力される。ここで入力音声信号は対数圧縮され、音声圧縮信号出力端子に出力される。次に図示は省略するが、この音声圧縮信号は、一般的に、これ以降、過変調制御回路(IDCとも言う)、スプラックフィルタを経てFM変調器でFM変調された後、送信出力増幅器で増幅されアンテナから高周波信号として出力される。
【0006】一方、受信時においては図示は省略するが、一般的にはアンテナより入来した高周波信号は、高周波増幅器を経て、局部発振器,周波数変換器により中間周波信号として中間周波信号入力端子へ出力される。この中間周波信号は中間周波増幅器4で増幅された後、FM復調器5で音声圧縮信号として復調され、エキスパンダ6に入力される。ここでエキスパンダ6は音声圧縮信号を対数伸張して元の音声信号に復元させた後、この音声信号は低周波増幅器7を経てスピーカ8から出力される。」(2頁1欄)

同じく、当審の平成26年7月8日付け拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平4-315322号公報(平成4年11月6日公開、以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

ホ.「【0002】
【従来の技術】図2は、従来のコードレス電話装置の構成を示している。図2(a)は基地局を示しており、図2(b)を移動局を示している。図2(a)において、27は局線であり、通話回路28に接続されており、通話回路28は増幅回路29に接続されて、増幅回路29はコンプレッサー回路30に接続されており、コンプレッサー回路30は変調回路31に接続されて、変調回路31は送信回路32に接続されており、送信回路32はアンテナ33に接続されている。また、アンテナ33は受信回路34に接続されており、受信回路34は復調回路35に接続されて、復調回路35はエキスパンダー回路36に接続されており、エキスパンダー回路36は増幅回路37に接続され、増幅回路37は通話回路28に接続されている。図2(b)において、38はアンテナであり、受信回路39に接続されており、受信回路39は復調回路40に接続され、復調回路40はエキスパンダー回路41に接続されており、エキスパンダー回路41は増幅回路42に接続されて、増幅回路42はレシーバー43に接続されている。また、44はマイクであり、増幅回路45に接続されており、増幅回路45はコンプレッサー回路46に接続されて、コンプレッサー回路46は変調回路47に接続されており、変調回路47は送信回路48に接続されており、送信回路48はアンテナ38に接続されている。
【0003】次に上記従来例の動作について説明する。
図2において、基地局では、局線27から得られた音声信号は通話回路28を通って増幅回路29で増幅され、増幅された信号はコンプレッサー回路30で帯域圧縮された後、変調回路31で変調され、送信回路32に入り送信波となりアンテナ33より送信される。そして、送信された信号は移動局のアンテナ38を介して受信回路39で受信され、復調回路40で音声信号に復調され、エキスパンダー回路41で帯域伸張された後、増幅回路42で増幅されたレシーバ43に伝えられる。また、移動局のマイク44から得られた音声信号は増幅回路45で増幅されて、コンプレッサー回路46で帯域圧縮された後、変調回路47で変調され、送信回路48に入り送信波となり、アンテナ38より送信される。そして、送信された信号は、基地局のアンテナ33を介して、受信回路34で受信されて、復調回路35で音声信号に復調され、エキスパンダー回路36で帯域伸張された後、増幅回路37で増幅されて、通話回路28に入り局線27に伝えられる。このように、上記従来例のコードレス電話装置でも、エキスパンダー回路とコンプレッサー回路により無線回路のノイズを低減することができる。」(2頁1?2欄)

上記周知例1及び周知例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ニ.の【0006】における「エキスパンダ6は音声圧縮信号を対数伸張して元の音声信号に復元させた後、この音声信号は低周波増幅器7を経てスピーカ8から出力される。」との記載、及び図5、また、上記ホ.の【0002】における「図2(a)において、・・・エキスパンダー回路36は増幅回路37に接続され、・・・図2(b)において、・・・エキスパンダー回路41は増幅回路42に接続されて」との記載、及び図2(a)(b)によれば、周知例1及び周知例2の雑音低減方法は、エキスパンダの出力を比例的に増幅し、増幅された信号を出力している。

したがって、上記周知例1及び周知例2には、以下の発明(以下、「周知技術」という。)が記載されているものと認められる。

「雑音低減方法において、エキスパンダの出力を比例的に増幅し、増幅された信号を出力すること。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「ディジタル入力信号(x(n))」は、上記引用例の上記ロ.の【0021】における「マイクロホン1からの入力信号は、アナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器であるA/D変換器2に供給される。このA/D変換器2からの信号であるディジタル入力信号x(n)」との記載によれば、マイクロホン(1)、すなわち、音響振動/電気信号変換装置からのA/D変換信号であるから、「音響信号」ということができる。
b.引用発明の「平均パワー(rms)」は、上記引用例の上記ロ.の【0021】における「フレームパワー計算回路3は、音声信号のフレーム毎のパワーとして、上記フレーム当りのディジタル入力信号x(n) の平均パワー、例えば自乗平均の平方根値、いわゆるrms値を計算する。」との記載によれば、ディジタル入力信号x(n)の自乗平均の平方根値、すなわち、実効値を意味している。一方、本願明細書の段落【0021】における「特性値検出部202は、・・・音響信号の変化の傾向を反映した特性信号を取得する。」との記載、段落【0031】における「特性値検出部は、実効値検出部又はピーク検出部である。」との記載によれば、実効値は、音響信号の変化の傾向を反映した特性信号である。したがって、「平均パワー(rms)」は、音響信号の「変化の傾向を反映した特性信号」ということができる。
c.引用発明の「rms値」は、上記b.の対比を考慮すると、「特性値」ということができる。
d.引用発明の「計算」は、rms値(特性値)を計算により検出しているから、「検出」ということができる。
e.引用発明の「出力信号」は、「生成信号」ということができる。
f.引用発明の「スムージング回路(5)を介した前記ピークが抑制された平均パワー(rms)と前記ディジタル入力信号(x(n))とを乗じ、出力信号を取得するステップ」と、本願発明の「前記ピークが抑制された特性信号と前記音響信号とを乗じ、生成信号を取得するステップ」とは、いずれも、「特定の前記ピークが抑制された特性信号と前記音響信号とを乗じ、生成信号を取得するステップ」という点で一致する。
g.引用発明の「雑音低減処理方法」は、雑音は、背景雑音といえるから、「背景雑音の除去方法」ということができる。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「音響信号の特性値を検出し、前記音響信号の変化の傾向を反映した特性信号を取得するステップと、
前記特性信号を所定範囲内に制限するピーク抑制を実行するステップと、
特定の前記ピークが抑制された特性信号と前記音響信号とを乗じ、生成信号を取得するステップと、
を含む背景雑音の除去方法。」

<相違点1>
「特定の前記ピークが抑制された特性信号と前記音響信号とを乗じ、生成信号を取得するステップ」に関し、
本願発明は、「前記ピークが抑制された特性信号と前記音響信号とを乗じ、生成信号を取得するステップ」であるのに対し、引用発明は、前記ピークが抑制された平均パワー(rms)(特性信号)と前記ディジタル入力信号(x(n))(音響信号)とを乗じ、出力信号(生成信号)を取得するステップであるものの、ピークが抑制された平均パワー(rms)は「スムージング回路(5)を介して」いる点。

<相違点2>
「背景雑音の除去方法」に関し、
本願発明は、「前記生成信号を比例的に増幅し、増幅された生成信号を出力するステップ」を含むものであるのに対し、引用発明は、当該「前記生成信号を比例的に増幅し、増幅された生成信号を出力するステップ」を含まない点。

第4 判断
そこで、まず、上記相違点1について検討する。
引用発明は、前記ピークが抑制された平均パワー(rms)(特性信号)と前記ディジタル入力信号(x(n))(音響信号)とを乗じ、出力信号(生成信号)を取得するものの、ピークが抑制された平均パワー(rms)は「スムージング回路(5)を介して」いるところ、上記引用例の上記ロ.の【0021】における「スムージング回路5は、抑圧比計算回路4で計算された抑圧比にスムージング処理を施す。このスムージング処理とは、例えば20msec で160サンプルのフレーム単位で分割された入力音声信号のつながりの不連続性を避けるための処理である。」との記載によれば、スムージング回路(5)は、雑音低減処理方法において、入力音声信号のつながりの不連続性を避けるための処理をして、ディジタル入力信号(x(n))の変化の傾向を反映した信号を出力するものである。
一方、本願明細書の段落【0031】における「特性値検出部202は、・・・フィルタキャパシタC2とを含む。・・・フィルタキャパシタC2によってフィルタリングされ、増幅された音響信号の平均パワーの信号あるいはピーク変化の信号5を取得する。」との記載によれば、本願発明も、フィルタキャパシタ(C2)が、フィルタリング処理をして、音響信号の変化の傾向を反映した信号を出力するために設けられている。
したがって、引用発明の「スムージング回路(5)」は、本願発明の「特性値検出部」の「フィルタキャパシタ(C2)」と同じ作用をもたらすものであるから、上記相違点1は実質的なものではない。

次に、上記相違点2について検討する。
上記「第2 引用発明及び周知技術」の項の「2 周知例及び周知技術」
のとおり、「雑音低減方法において、エキスパンダの出力を比例的に増幅し、増幅された信号を出力すること。」は、周知技術である。
そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明において、上記周知技術を採用して、本願発明のように「前記生成信号を比例的に増幅し、増幅された生成信号を出力するステップ」を含む構成とすることに格別の困難性はない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2014-12-19 
結審通知日 2014-12-24 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2011-541076(P2011-541076)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 剛史  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 関谷 隆一
萩原 義則
発明の名称 背景雑音を除去する方法及び装置  
代理人 桜田 圭  
代理人 木村 満  
代理人 美恵 英樹  
代理人 毛受 隆典  
代理人 森川 泰司  
代理人 雨宮 康仁  
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