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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1301217
審判番号 不服2014-2145  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-05 
確定日 2015-05-20 
事件の表示 特願2012-514983「チャネル適応型エラー耐性バーストモード伝送のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月16日国際公開、WO2010/144254、平成24年11月22日国内公表、特表2012-529847〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯と本願発明
本願は、2010年5月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成25年6月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月3日付けで手続補正されたが、同年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月5日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成25年9月3日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「少なくとも1つの光回線終端装置、および少なくとも1つの光回線終端装置のダウンストリームにある複数の光ネットワーク装置を含む受動光ネットワーク内で通信を実行するための方法であって、
周期的または連続的に少なくとも1つの光回線終端装置と複数の光ネットワーク装置間のチャネルに対するアップストリーム伝送特性を決定するステップと、
周期的または連続的に、各伝送方式がそれぞれの光ネットワーク装置と少なくとも1つの光回線終端装置間のチャネルのアップストリーム伝送特性に依存する、複数の伝送方式を複数の光ネットワーク装置に対して設定するステップと、
それぞれの光ネットワーク装置の伝送方式に従って複数の光ネットワーク装置から少なくとも1つの光回線終端装置へのアップストリーム伝送を実行するステップと、
を含む、方法。」

第2 引用発明
原審の拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-54244号公報(平成20年3月6日公開、以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPON(Passive Optical Network)などの、伝送媒体に光を用いた通信により高速に情報の送受信を行うための局側光網終端装置、加入者側光網終端装置、および光通信システムに関する。」(3頁)

ロ.「【0032】
〔光通信システムの構成〕
本発明の実施形態としての光通信システムは、図1に示すように、1G/10G OLT1からの光信号が、光スターカプラで分岐されて1G ONU4と、10G ONU7とに送信されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。
【0033】
1G/10G OLT1は、1G/10G PON OLT2と、Video OLT3とからの光信号が、光合分波部11でWDMにより多重化されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。
【0034】
1G ONU4は、1G PON ONU5と、Video ONU6とからの光信号が、光合分波部41でWDMにより多重化されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。
また、10G ONU7も同様に、1G PON ONU8と、Video ONU9とからの光信号が、光合分波部71でWDMにより多重化されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。
【0035】
1G/10G PON OLT2および1G PON ONU5の間の光通信では、1G/10G PON OLT2および10G PON ONU8の間の光通信に用いられる光波長と同じ波長で光通信が行われる。すなわち、同一の光波長で、1Gbps(Giga Bit per Second)の光通信と、10Gbpsの光通信とが行われるように構成されている。
【0036】
光波長の割り当て例を図2に示す。この図2に示すように、上り回線のデータ送信には、1Gbps、10Gbps共に波長λ1が用いられ、下り回線のデータ送信には、1Gbps、10Gbps共に波長λ2が用いられている。
このように、時分割多元接続TDMA(Time Division Multiple Access)を用いることで、同一の光波長で異なる2つの通信速度での光通信が行われるようになっている。
【0037】
〔通信速度の異なる光信号の送受信とアイドルパターン〕
このように異なる通信速度の光信号を同一の光波長により送受信するため、本光通信システムにおける各OLTおよび各ONUは、図1に示すように、各フレームのデータ部の前にプリアンブルパターンとしてアイドルパターンを送信する。
このように、各通信速度によるデータ信号間に時間差を空けられるようにすることで、同一の光波長の信号による通信速度が切り替えられた場合であっても、受信する回路が追従できるように構成されている。
【0038】
また、OLTは、プリアンブルパターンの送出時間を通信速度に応じて変更する。
すなわち、1Gbpsの通信速度と10Gbpsの通信速度とでは、同じビット数のプリアンブルパターンを送出する場合であっても、送出時間が異なるものとなってくる。このため、プリアンブルパターンの送出時間を通信速度に応じたものとすることにより、それぞれの通信速度に最適な長さのプリアンブルパターンを送出することができる。
【0039】
一般に、プリアンブルパターンの送出時間は固定されているが、本実施形態では上述のようにプリアンブルパターンの送出時間を通信速度に応じて変更する。このため、複数の異なる通信速度の光信号を1つの光波長により送受信する場合であっても、プリアンブルパターンが長すぎることによりデータ送出時間が圧迫されてしまったり、プリアンブルパターンが短すぎることによりデータ送受信の信頼性が低くなってしまうことのない、高精度で安定した光通信を実現することができる。
【0040】
こうして異なる通信速度の光信号を同一の光波長により送受信できるようにすることにより、光信号の送受信を行うための光モジュールを1つで済ませることができる。
このため、1つの通信速度の光信号のみを送受信する従来のOLTと比べてもコスト高になることなく、それでいて異なる通信速度のデータ信号同士がぶつかることのない、信頼性の高い通信を確保できるようになっている。
【0041】
〔OLTの主要構成〕
1G/10G PON OLT2の主要構成について、図3を参照して説明する。
光信号を送受信する光モジュールは、PD(Photodiode)202とLD(Laser Diode)203とを備え、PD202により受信する光信号と、LD203により送信される光信号とが、光合分波部201により、WDMで多重化されるよう構成されている。
【0042】
PD202により光信号が受信されると、その信号が1Gbps/10Gbpsの何れであるかに応じて、SEL(Selector)204が、1G用CDR(Clock And Data Recovery)部205または10G用CDR部207へとその信号の出力先を選択する。
光信号が1Gbpsのフレームである場合には、1G用CDR部205が、送信されたフレームからクロックおよびデータ情報を抽出して復元する。その復元された情報に1G用PON処理部206が所定の処理を行い、送信されたデータを読み取れるようにする。
【0043】
光信号が10Gbpsのフレームである場合には、10G用CDR部207が、送信されたフレームからクロックおよびデータ情報を抽出して復元する。その復元された情報に10G用PON処理部208が所定の処理を行い、送信されたデータを読み取れるようにする。
【0044】
こうして1G用PON処理部206または10G用PON処理部208で処理された情報について、誤り率検出209は、FEC(Forward Error Correction)により付加されている冗長ビットからフレームの誤り率を検出する。
また、距離測定制御部210は、OLTとONUとの間の距離測定の制御を行う。
IPマルチキャスト制御パケット監視部215は、送信されたフレームにIPマルチキャスト制御パケットが含まれているか否かを監視し、そのフレームを後段の処理部に出力する。
【0045】
光レベルチェック部211は、PD202により受信された光信号の光量レベルが光レベルモニタ部212により検出されると、その検出された光レベルのチェックを行う。このチェック結果に基づいて、起動制御部214は、SEL204、ONU制御情報生成部213、下り帯域制御部218、下り出力速度判定部219への起動指示を行う。
【0046】
ONU制御情報生成部(冗長ビット長さ決定手段、かつ冗長ビット長さ指示手段)213は、誤り率検出209、距離測定制御部210、起動制御部214、その他ONUの制御に関わる各種の機能部から情報入力を受信することで、ONUに対して出力する光信号の制御情報を生成する。この光信号の制御情報とは、例えば1G用PON処理部220、10G用PON処理部221、およびONUでFECにより付加する冗長ビットの長さ調整、そして光出力パワーのレベル制御、プリアンブルパターンの長さ制御などを行うための情報信号である。
【0047】
ONUへの下り回線に出力する信号への処理を行う構成として、まず、1G/10G判別部216は、前段の処理部から送信された信号が1Gbpsで出力するものか、10Gbpsで出力するものかを判別する。
【0048】
IPマルチキャスト監視&制御部217は、出力する光信号にIPマルチキャストにより送信するフレームが含まれているかどうかの監視とその制御を行う。
下り帯域制御部218は、IPマルチキャスト制御パケット監視部215による上り回線の信号の監視結果に基づいて、下り回線に出力する光信号の帯域制御を行う。
【0049】
こうして帯域制御が行われた光信号を出力するための処理を、1Gbpsの信号であれば1G用PON処理部(第1の処理手段)220が、10Gbpsの信号であれば10G用PON処理部(第2の処理手段)221が、それぞれ行う。この時、1G用PON処理部220または10G用PON処理部221は、上述したONU制御情報生成部213から受信した制御情報(指示信号)に基づいた長さの冗長ビットを、FECにより各フレームに付加する。
【0050】
また、1G/10G判別部216が、入力されるデータ速度(1Gbpsまたは10Gbps)を判別することで、下り出力速度判定部219が下り回線の通信速度を判定し、その通信速度に応じたプリアンブルパターンの長さを上述のようにして定める。
下り出力速度判定部219による判定結果に基づいて、SEL(Selector)222は、1G用PON処理部220または10G用PON処理部221と、LD203との接続を選択し、通信速度に応じて定められた長さのプリアンブルパターンを、図1に例示するように各通信速度のデータフレームの前に送信できるように付加する。
【0051】
こうして、1G用PON処理部220または10G用PON処理部221により処理された情報が、通信速度に応じた長さのプリアンブルパターンを付加されたデータフレームとして、LD203により下り回線に出力される。
【0052】
クロック制御部223は、上述した信号情報の処理を行うマスタークロックを生成すると共に、このマスタークロックに基づいて、1Gbpsの信号のクロックと、10Gbpsの信号のクロックとを同期させる制御を行う。
このように、上り回線と下り回線とを同一のマスタークロックに基づいて送受信することにより、それぞれの信号を確実に同期させることができる。この同一のクロックを用いる方法については、例えばPLL(Phase Locked Loop)回路を用いて調整する方法など、各種の方法を用いてよい。
【0053】
〔ONUの主要構成〕
次に、本実施形態に係るONUの主要構成について説明する。
主要な部分の構成については、図1に示す1G PON ONU5についても、10G PON ONU8についても、対応する通信速度の点が異なる以外は同様である。このため、ここでは1G PON ONU5の主要構成を例として、図4を参照して説明する。
【0054】
光信号を送受信する光モジュールは、PD510とLD509とを備え、LD509により送信される光信号と、PD510により受信する光信号とが、光合分波部508により、WDMで多重化されるよう構成されている。
【0055】
PD510により光信号が受信されると、CDR部512は、受信したフレームからクロックおよびデータ情報を抽出して復元する。このクロックは、ONU本体の動作を制御するクロックとして活用される。このことにより、OLTのクロックとONUのクロックとを同期させることができる。
【0056】
こうしてCDR部512により復元された情報に対して、誤り訂正部513は、FECにより、付加されている冗長ビットからフレームの誤りを検出して訂正する。
自ONU宛判定部514は、誤りが訂正されたフレームが本ONU宛に送信されたものであるか否かを判定する。本ONU宛に送信されたものである場合、後段の処理部に送信する。
【0057】
こうして受信されたフレームの情報に対して、誤り訂正用冗長ビット指示受信部503は、FECにより付加している冗長ビットの長さについてのOLTからの指示信号の情報を受信し、その指示に基づく長さの冗長ビット付加を上りPONフレーム生成部501に指示する。
【0058】
プリアンブルパターン指示受信部504は、各フレームのデータ部の前にプリアンブルパターンとして送信するアイドルパターンの長さについての指示をOLTから受信し、その指示に基づく長さのアイドルパターンをプリアンブルパターンとして送信するよう、上りPONフレーム生成部501に指示する。
上り送出タイミング制御505は、上りPONフレーム生成部501による上り回線へのフレーム送出タイミングの制御を行う。
【0059】
出力レベル指示受信部506は、光出力パワーのレベル制御についての指示をOLTから受信し、その指示に基づくパワーレベルでLD509から光出力が行われるよう、光出力レベル制御部507に指示を送信する。
光出力レベル制御部507には、他に、受光レベルモニタ部511により検出された、PD510で受信された光信号における光出力レベルも入力され、この受信された光信号における光出力レベルに基づく光出力レベルの制御も可能となっている。
【0060】
上りPONフレーム生成部501は、上述のようにして送信された各指示に基づいて、OLTからの指示に基づく長さの冗長ビットが付加されたフレームを、上り回線への送出用として生成する。プリアンブル挿入部502は、生成されたフレームに、上述のようにして送信された指示に基づいた長さのプリアンブルパターンを挿入する。
こうしてデータフレームにプリアンブルパターンが付加されたデータに基づき、LD509が上り回線へのデータ送信を行う。
【0061】
〔通信速度の異なる光信号の送信と誤り訂正方式〕
また、本実施形態としての光通信システムでは、上述のようにFECとして、少量の冗長ビットをデータの前に追加して各フレームを構成し、このことにより不完全な伝送による誤りを検出して修正するようにしている。
【0062】
ここで、OLTの誤り率検出209が各通信速度についての誤り率を検出し、その検出された誤り率に基づいて、ONU制御情報生成部213が各通信速度についての1フレーム当たりの冗長ビットの長さを決定し、指示信号として1G用PON処理部220と、10G用PON処理部221と、各ONUとに送信する。
【0063】
その指示信号をONUの誤り訂正用冗長ビット指示受信部503が受信して上りPONフレーム生成部501に指示を送信する。上りPONフレーム生成部501は、こうしてONU制御情報生成部213からの指示に基づく長さの冗長ビットを有するデータフレームを、上り回線への送出用として生成する。
【0064】
また、OLTの1G用PON処理部220または10G用PON処理部221は、ONU制御情報生成部213による指示信号を受信し、ONU制御情報生成部213からの指示に基づく長さの冗長ビットを有するデータフレームを、下り回線への送出用として生成する。
【0065】
以上のようにして、上り回線および下り回線の両方について、冗長ビットの長さが通信速度ごとに適切に制御され、誤り訂正能力が適正なレベルに維持されるようになっている。
【0066】
誤り訂正能力を上げると、1つのフレームで送信できるデータ量が少なくなってしまうため、伝送路中で発生したエラーを測定することで、発生するエラーの量に応じて、予め定められたエラー訂正能力とするように、冗長ビットの長さを決定する。
このことにより、通信速度の異なる光信号が1つの光波長に混在していても、それぞれの通信速度に応じて、適切な誤り訂正能力と、1つのフレーム当たりの送信データ量とをバランスよく制御することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、誤り率検出209により検出された誤り率に基づいて、ONU制御情報生成部213が、1フレーム当たりの冗長ビットの長さを各通信速度について決定することとして説明したが、冗長ビット長さの決定方法はこのことに限定されず、例えば、距離測定制御部210により測定されたOLTとONUとの間の距離に基づいて、冗長ビットの長さを決定する構成であってもよい。
【0068】
この場合、距離測定制御部210により測定されたOLTとONUとの間の距離が長い場合、その距離の長さに応じて冗長ビットの長さも長くすることとしてよい。この距離の長さから冗長ビットの長さを算出する方法については、予め定められた算出方法であれば各種の算出方法を用いてよい。
このように、OLTとONUとの間の距離に応じて冗長ビットの長さを決定することにより、冗長ビットの長さの安定した制御ができるようになる。
【0069】
また、1フレーム当たりの冗長ビットの長さを、上述のように誤り率検出209により検出された誤り率に基づいて決定するか、あるいは、上述のように距離測定制御部210により測定されたOLTとONUとの間の距離に基づいて決定するかを、ユーザの設定入力などに基づいて選択できる構成であってもよい。
【0070】
〔無信号時のアイドルパターン送出〕
次に、本実施形態としての光通信システムでの信号送信におけるアイドルパターンについて説明する。
上述のように、本実施形態としての光通信システムでは、通信速度の異なる光信号を確実に送受信するため、各データ信号の前に、通信速度に応じた長さのアイドルパターンを送出している。
【0071】
また、ONUは、上り方向の無信号時にもアイドルパターンを送信する。
すなわち、光信号による上り回線へのデータフレームの送出がONUにより開始された時、OLTはまず、信号の同期をとり、受信した光信号が1Gbpsの信号なのか10Gbpsの信号なのかを検出し、それから受信処理を行う。このため、無信号状態で光信号が発信されないという構成であると、光信号の送出が開始された時、OLTが受信した光信号に対してビット同期をとるところからスタートすることとなるため、送信された光信号のデータ処理が間に合わなくなる虞がある。
【0072】
このため、上り回線への出力が無信号である時にもアイドルパターンを送信するようにすることで、OLTは光信号へのビット同期を常時維持し続けることができ、ONUから送信されてくる高速通信の光信号に対しても確実に反応できるようにすることができる。」(6?11頁)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0032】における「本発明の実施形態としての光通信システムは、図1に示すように、1G/10G OLT1からの光信号が、光スターカプラで分岐されて1G ONU4と、10G ONU7とに送信されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。」との記載、及び図1によれば、光通信システムは、1G/10G OLT(1)と、1G ONU(4)及び10G ONU(7)とで構成されている。ここで、同ロ.の【0033】における「1G/10G OLT1は、1G/10G PON OLT2と、Video OLT3とからの光信号が、光合分波部11でWDMにより多重化されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。」との記載、同ロ.の【0034】における「1G ONU4は、1G PON ONU5と、Video ONU6とからの光信号が、光合分波部41でWDMにより多重化されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。また、10G ONU7も同様に、10G PON ONU8(当審注:原文では、「1G」と記載されているが、「10G」の誤記である。)と、Video ONU9とからの光信号が、光合分波部71でWDMにより多重化されると共に、その逆方向にも送信できるように構成されている。」との記載、及び図1における、1G/10G PON OLT(2)と、1G/10G PON ONU(5,8)に着目すれば、光通信システムは、1G/10G PON OLT(2)と、1G/10G PON OLT(2)の下り回線にある1G/10G PON ONU(5,8)とを備えているということができる。
また、上記ロ.の【0044】における「1G用PON処理部206または10G用PON処理部208で処理された情報について、誤り率検出209は、FEC(Forward Error Correction)により付加されている冗長ビットからフレームの誤り率を検出する。」との記載、及び図3によれば、前述の1G/10G PON OLT(2)の誤り率検出(209)は、冗長ビットから上りデータフレームの誤り率を検出していることが読み取れるから、1G/10G PON OLT(2)の誤り率検出(209)は、(α)1G/10G PON OLT(2)と1G/10G PON ONU(5,8)間の上りデータフレームの誤り率を検出しているということができる。
また、上記ロ.の【0046】における「ONU制御情報生成部(冗長ビット長さ決定手段、かつ冗長ビット長さ指示手段)213は、誤り率検出209、・・・から情報入力を受信することで、ONUに対して出力する光信号の制御情報を生成する。この光信号の制御情報とは、例えば1G用PON処理部220、10G用PON処理部221、およびONUでFECにより付加する冗長ビットの長さ調整、・・・などを行うための情報信号である。」との記載、同ロ.の【0049】における「1G用PON処理部220または10G用PON処理部221は、上述したONU制御情報生成部213から受信した制御情報(指示信号)に基づいた長さの冗長ビットを、FECにより各フレームに付加する。」との記載、同ロ.の【0062】における「OLTの誤り率検出209が各通信速度についての誤り率を検出し、その検出された誤り率に基づいて、ONU制御情報生成部213が各通信速度についての1フレーム当たりの冗長ビットの長さを決定し、指示信号として1G用PON処理部220と、10G用PON処理部221と、各ONUとに送信する。」との記載、同ロ.の【0063】における「指示信号をONUの誤り訂正用冗長ビット指示受信部503が受信して上りPONフレーム生成部501に指示を送信する。上りPONフレーム生成部501は、こうしてONU制御情報生成部213からの指示に基づく長さの冗長ビットを有するデータフレームを、上り回線への送出用として生成する。」との記載、図3及び図4によれば、前述の1G/10G PON OLT(2)のONU制御情報生成部(冗長ビット長さ決定手段、かつ冗長ビット長さ指示手段)(213)は、1G/10G PON ONU(5,8)と1G/10G PON OLT(2)間の上りデータフレームの冗長ビットの長さを指示し、1G/10G PON ONU(5,8)の上りPONフレーム生成部(501)が、当該ONU制御情報生成部(213)からの指示に基づいたFECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さを有するデータフレームを生成しているから、1G/10G PON OLT(2)のONU制御情報生成部(213)は、(β)FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さを1G/10G PON ONU(5,8)に対して設定しているということができる。
また、上記ロ.の【0062】における「OLTの誤り率検出209が各通信速度についての誤り率を検出し、その検出された誤り率に基づいて、ONU制御情報生成部213が各通信速度についての1フレーム当たりの冗長ビットの長さを決定し」との記載によれば、1G/10G PON OLT(2)のONU制御情報生成部(213)は、上りデータフレームの誤り率に基づいて1フレーム当たりの冗長ビットの長さを決定しているから、FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さは、1G/10G PON OLT(2)と1G/10G PON ONU(5,8)間の上りデータフレームの誤り率に依存しているということができる。
また、上記ロ.の【0063】における「指示信号をONUの誤り訂正用冗長ビット指示受信部503が受信して上りPONフレーム生成部501に指示を送信する。上りPONフレーム生成部501は、こうしてONU制御情報生成部213からの指示に基づく長さの冗長ビットを有するデータフレームを、上り回線への送出用として生成する。」との記載、図3及び図4によれば、前述の1G/10G PON ONU(5,8)の上りPONフレーム生成部(501)は、(γ)1G/10G PON ONU(5,8)の冗長ビットの長さに従って1G/10G PON ONU(5,8)から1G/10G PON OLT(2)へのデータフレームの上り回線への送出を実行しているということができる。
ここで、上記(α)ないし(γ)は、前述の光通信システムが実行する方法として捉えると、1G/10G PON OLT(2)、および1G/10G PON OLT(2)の下り回線にある1G/10G PON ONU(5,8)を含む光通信システム内で光通信を実行するための方法ということができる。

したがって、上記(α)ないし(γ)をステップとして纏めると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「1G/10G PON OLT(2)、および1G/10G PON OLT(2)の下り回線にある1G/10G PON ONU(5,8)を含む光通信システム内で光通信を実行するための方法であって、
1G/10G PON OLT(2)と1G/10G PON ONU(5,8)間の上りデータフレームの誤り率を検出するステップと、
FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さがそれぞれの1G/10G PON ONU(5,8)と1G/10G PON OLT(2)間の上りデータフレームの誤り率に依存する、FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さを1G/10G PON ONU(5,8)に対して設定するステップと、
それぞれの1G/10G PON ONU(5,8)の冗長ビットの長さに従って1G/10G PON ONU(5,8)から1G/10G PON OLT(2)へのデータフレームの上り回線への送出を実行するステップと、
を含む、方法。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「1G/10G PON OLT(2)」、「1G/10G PON ONU(5,8)」及び「光通信」は、本願発明の「少なくとも1つの光回線終端装置」、「複数の光ネットワーク装置」及び「通信」にそれぞれ相当する。
b.引用発明の「下り回線」は、下りデータフレーム(ダウンストリーム)が伝送されるから、「ダウンストリーム」ということができる。
c.引用発明の「上りデータフレームの誤り率を検出する」は、引用発明の「上りデータフレームの誤り率」が、本願明細書の段落【0023】における「アップストリームチャネル伝送特性を決定するためのある選択肢では、システムが設置されるときにSNRを測定する。別な実施形態では、システムは、OLT内のFECデコーダがフレーム中に生じる誤り数を計数可能とする高いレベルのFECで(その後より低いレートで)開始され得る。」との記載によれば、本願発明の「チャネルに対するアップストリーム伝送特性」に含まれ、「上りデータフレームの誤り率を検出する」ことにより上りデータフレームの誤り率(チャネルに対するアップストリーム伝送特性)が決定されるから、「チャネルに対するアップストリーム伝送特性を決定する」ということができる。
d.引用発明の「FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さ」は、本願明細書の段落【0019】における「伝送方式には、OLT-ONUアップストリームリンクそれぞれに対して適切なレベルのFECを組み込むことができる。」との記載、段落【0018】における「チャネル特性は、時間と共に大きく変化しないが、BERは、周期的または連続的いずれかにより、監視され、必要により、FECの強度を高め、それによって誤り率を低下させるか、あるいはFECを低下させ、それにより伝送速度を高めるかのいずれかとするようにFEC方式を更新する。」との記載、段落【0020】における「非常に悪いチャネルを有するONUに対しては、チャネル依存伝送方式は、OLTに達するために適切な強いFECおよびsync機構を持つ伝送方式を含むことができる。」との記載によれば、「FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さ」が、それぞれ異なるレベルのFEC方式(伝送方式)を表しているから、これらを「各伝送方式」ということができる。
e.引用発明の「データフレームの上り回線への送出」は、「アップストリーム伝送」ということができる。
f.引用発明の「光通信システム」は、上記引用例の上記イ.の【0001】における「本発明は、例えばPON(Passive Optical Network)などの・・・光通信システム」との記載によれば、本願発明の「受動光ネットワーク」と差異はない

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「少なくとも1つの光回線終端装置、および少なくとも1つの光回線終端装置のダウンストリームにある複数の光ネットワーク装置を含む受動光ネットワーク内で通信を実行するための方法であって、
少なくとも1つの光回線終端装置と複数の光ネットワーク装置間のチャネルに対するアップストリーム伝送特性を決定するステップと、
各伝送方式がそれぞれの光ネットワーク装置と少なくとも1つの光回線終端装置間のチャネルのアップストリーム伝送特性に依存する、複数の伝送方式を複数の光ネットワーク装置に対して設定するステップと、
それぞれの光ネットワーク装置の伝送方式に従って複数の光ネットワーク装置から少なくとも1つの光回線終端装置へのアップストリーム伝送を実行するステップと、
を含む、方法。」

<相違点1>
「少なくとも1つの光回線終端装置と複数の光ネットワーク装置間のチャネルに対するアップストリーム伝送特性を決定する」タイミングに関し、
本願発明は、「周期的または連続的に」少なくとも1つの光回線終端装置と複数の光ネットワーク装置間のチャネルに対するアップストリーム伝送特性を決定するのに対し、引用発明は、1G/10G PON OLT(2)(少なくとも1つの光回線終端装置)と1G/10G PON ONU(5,8)(複数の光ネットワーク装置)間の上りデータフレームの誤り率を検出(チャネルに対するアップストリーム伝送特性を決定)するものの、当該「周期的または連続的に」との特定がない点。

<相違点2>
「各伝送方式がそれぞれの光ネットワーク装置と少なくとも1つの光回線終端装置間のチャネルのアップストリーム伝送特性に依存する、複数の伝送方式を複数の光ネットワーク装置に対して設定する」タイミングに関し、
本願発明は、「周期的または連続的に」、各伝送方式がそれぞれの光ネットワーク装置と少なくとも1つの光回線終端装置間のチャネルのアップストリーム伝送特性に依存する、複数の伝送方式を複数の光ネットワーク装置に対して設定するのに対し、引用発明は、FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さ(各伝送方式)がそれぞれの1G/10G PON ONU(5,8)(光ネットワーク装置)と1G/10G PON OLT(2)(少なくとも1つの光回線終端装置)間の上りデータフレームの誤り率(チャネルのアップストリーム伝送特性)に依存する、FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さ(複数の伝送方式)を1G/10G PON ONU(5,8)(複数の光ネットワーク装置)に対して設定するものの、当該「周期的または連続的に」との特定がない点。

第4 判断
上記相違点1及び2について検討する。
受動光ネットワークにおいて、周期的にチャネルの伝送特性を検出することは、例えば、特開2005-175599号公報(段落【0018】)、特開2007-166446号公報(段落【0035】)に記載されているように周知技術である。
そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「1G/10G PON OLT(2)と1G/10G PON ONU(5,8)間の上りデータフレームの誤り率を検出する」タイミングを、本願発明のように「周期的」にすること(相違点1)に格別の困難性はない。その際、チャンネルの伝送特性の検出に応じて伝送方式の設定を変更することは普通に行われていることであるから、引用発明の「FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さがそれぞれの1G/10G PON ONU(5,8)と1G/10G PON OLT(2)間の上りデータフレームの誤り率に依存する、FECにより各フレームに付加する冗長ビットの長さを1G/10G PON ONU(5,8)に対して設定する」タイミングを、本願発明のように「周期的」とすること(相違点2)は自然なことでである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2014-12-17 
結審通知日 2014-12-22 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2012-514983(P2012-514983)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 萩原 義則
山澤 宏
発明の名称 チャネル適応型エラー耐性バーストモード伝送のためのシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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