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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1301389
審判番号 不服2014-3664  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-26 
確定日 2015-05-28 
事件の表示 特願2010-505787「吸水性樹脂粉体の輸送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 1日国際公開、WO2009/119758〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、2009年(平成21年)3月26日(優先権主張2008年(平成20年)3月28日、2008年(平成20年)4月28日、2008年(平成20年)9月22日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成25年10月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年11月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成26年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成26年4月10日に審判請求書の請求の理由について補正する手続補正書(方式)が提出され、さらに、平成26年9月4日に上申書が提出され、その後、当審において平成26年9月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成26年12月8日に意見書とともに特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本件出願の請求項1ないし14に係る発明は、平成26年2月26日に提出された手続補正書によって補正された明細書、平成26年12月8日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
製造工程中の吸水性樹脂粉体を輸送配管を経由して空気輸送する吸水性樹脂粉体の輸送方法であって、
前記輸送配管の始点における初期固気比をR1(kg-樹脂/kg-空気)とし、前記輸送配管の末端における末端固気比をR2(kg-樹脂/kg-空気)とした場合に、
初期固気比R1が35?150(kg-樹脂/kg-空気)であり、末端固気比R2が20?50(kg-樹脂/kg-空気)であり、
前記輸送配管の始点における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が7m/s以下であり、
前記輸送配管の末端における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(末端線速)は、前記初期線速よりも大きく、かつ、7?15m/sであり、
前記吸水性樹脂粉体の質量平均粒子径(D50)が200?600μmであり、
一つの輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtが50?1000mであり、
前記輸送配管の内径が30?300mmであり、
前記吸水性樹脂粉体が多価金属塩を含み、
固気比変化率(R1/R2)を1.8以上7以下とするとともに、二次空気を用いて前記吸水性樹脂粉体のプラグ輸送を行うことを特徴とする、吸水性樹脂粉体の輸送方法。」


3.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
当審において平成26年9月30日付けで通知した拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2007/104673号(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ここで、ウムラウト付きの「a」、「o」及び「u」は、順に「ae」、「oe」及び「ue」に置き換え、エスツェットは、「ss」に置き換えるものとする。
また、翻訳文として特表2009-529478号公報の記載を引用する(なお、段落番号を付加する。)。

a)「Patentansprueche

1. Verfahren zur pneumatischen Foerderung wasserabsorbierender Polymerpartikel, dadurch gekennzeichnet, dass die Gasanfangsgeschwindigkeit bei der Foerderung von 1 bis 6 m/s und die Foerdergutbeladung von 1 bis 100 kg/kg betraegt, wobei die Foerdergutbeladung der Quotient aus Foerdergutmassenstrom und Gasmassenstrom ist.

2. Verfahren gemaess Anspruch 1 , dadurch gekennzeichnet, dass der Rohrdurchmesser von 3 bis 30 cm betraegt.

・・・(中略)・・・

10. Verfahren gemaess einem der Ansprueche 1 bis 9, dadurch gekennzeichnet, dass Polymerpartikel auf Basis von teilneutralisierter Polyacrylsaeure verwendet werden.」(特許請求の範囲の請求項1.ないし10.)
<翻訳文>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法において、搬送の際の気体初期速度が、1?6m/sであり、かつ搬送物負荷が、1?100kg/kgであり、その際、搬送物負荷が、搬送物の質量流量と気体の質量流量とからの商であることを特徴とする、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法。
【請求項2】
管の直径が、3?30cmであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
管の直径が、搬送装置中で増大することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
搬送用導管中の圧力が、周囲圧力に対して、-0.8?10バールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリマー粒子が、10質量%未満の含水率を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリマー粒子の少なくとも90質量%が、1000μm未満の粒径を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
150μmより小さい粒径を有するポリマー粒子の割合が、空気による搬送によって、ポリマー粒子の全量に対して1質量%未満だけ高まるように、空気による搬送の間の機械的負荷を調整することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ポリアクリル酸をベースとするポリマー粒子を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
架橋したポリアクリル酸をベースとするポリマー粒子を使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
部分的に中和されたポリアクリル酸をベースとするポリマー粒子を使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。」(請求項1ないし10)

b)「Beschreibung

Die vorliegende Erfindung betrifft Verfahren zur pneumatischen Foerderung wasserabsorbierender Polymerpartikel, wobei die Gasanfangsgeschwindigkeit bei der Foerderung von 1 bis 6 m/s und die Foerdergutbeladung von 1 bis 100 kg/kg betraegt.

・・・(中略)・・・

In der am meisten bevorzugten Ausfuehrungsform der vorliegenden Erfindung werden konische Foerderleitungen eingesetzt.」(1ページ3行ないし3ページ17行)
<翻訳文>
「【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、搬送の際の気体初期速度が、1?6m/sであり、かつ搬送物負荷が、1?100kg/kgである、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法に関する。
【0002】
吸水性ポリマーは、殊に(共)重合された親水性モノマーからなるポリマー、適切なグラフト主鎖上の1もしくは複数の親水性モノマーのグラフト(コ)ポリマー、架橋されたセルロースエーテルまたはデンプンエーテル、架橋されたカルボキシメチルセルロース、部分的に架橋されたポリアルキレンオキシドまたは水性液体中で膨潤可能な天然製品、たとえばグアール誘導体である。かかるポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯およびその他の衛生用品を製造するための、水溶液を吸収する製品として使用されているが、しかし、農業園芸における保水剤としても使用されている。
【0003】
吸水性ポリマーは、典型的には25?60g/g、有利には少なくとも30g/g、好ましくは少なくとも32g/g、特に有利には少なくとも34g/g、とりわけ有利には少なくとも35g/gの遠心分離保持能力を有する。この遠心分離保持能力(CRC)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験方法第441.2-02「遠心分離保持能力("Centrifuge retention capacity")」に従って測定される。
【0004】
吸水性ポリマーの製造はたとえば"Modern Superabsorbent Polymer Technology"、F. L. Buchholz and AT. Graham、Wiley-VCH、1998年、第69?117頁に記載されている。有利には吸水性ポリマー粒子は、空気による搬送システムによって搬送される。その際に必然的に生じる機械的な負荷は、不所望の摩耗につながる。従って、低い搬送速度ひいては低い機械的負荷が望まれている。
【0005】
基本的に、空気による搬送の場合、3つの異なった搬送方法が区別される。
【0006】
1.高い気体速度の範囲での空中搬送および流れ搬送の場合、自由に流れる個々の粒子の法則がほぼ該当する。これは空気による搬送の古典的な方法である。生成物の堆積が現れる場合はない。管中でのほぼ均質な搬送物の分布が存在する。
【0007】
2.気体速度が低下する場合、搬送物が特に管の下半分で流れる束状の搬送(straehnenfoerderung)の範囲に達する。管の上半分には、空中搬送が存在する。
【0008】
3.気体速度が小さい場合、搬送は極めて保護的に、高い圧力損失を伴う密集した流の搬送(Dichtstromfoerderung)(プラグ搬送、インパルス搬送)として行われる。
【0009】
JP-A-2004/345804は、吸水性ポリマー粒子の密集した流の搬送を記載しており、その際、外部から付加的に搬送ガスが搬送用導管の個々の区間に供給される(二次空気)。
【0010】
本発明の課題は、特に外部に存在する付加的な導管を介した二次空気の高価な使用が回避される、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する改善された方法を提供することである。
【0011】
上記課題は、搬送の際の気体初期速度が、1?6m/sであり、かつ搬送物負荷が、1?100kg/kgである、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法により解決された。
【0012】
気体速度が高すぎるか、または低すぎると、摩擦が高まり、かつ搬送される吸水性ポリマー粒子の粒径分布の値が低くなりすぎる。
【0013】
搬送の際の気体初期速度は、有利には1.5?6m/s、特に有利には2?5m/s、とりわけ有利には3?4m/sであり、かつ流体送り管(Fluidschub-Leitung)を使用する場合、有利には2?6m/s、特に有利には3?5.5m/s、とりわけ有利には4?5m/sである。
【0014】
流体送り管は、たとえば500mm毎に吹き込み箇所を有する、内部に存在する導管で
あり、該箇所を介して、搬送ガスの部分流が制御されずに、吹き込み箇所同士の間で生成物流ブランチの周囲に案内される(バイパス)。流体送り管への搬送物の侵入は、流れバッフルによって防止されている。
【0015】
空気による搬送の搬送物負荷は、有利に1?100kg/kg、特に有利には5?75kg/kg、とりわけ有利には10?50kg/kgであり、その際、搬送物負荷は、搬送物の質量流量と、気体の質量流量とからの商である。
【0016】
空気による搬送がその中で実施される導管の直径は、有利に3?30cm、特に有利には4?25cm、とりわけ有利には5?20cmである。管の直径が小さすぎると、空気による搬送による機械的負荷が高くなり、従って不所望の摩耗が促進される。管の直径が大きすぎると同様に、搬送用導管中での吸水性ポリマー粒子の不所望の停滞が起こりうる。
【0017】
搬送ガスは圧縮可能であるため、搬送用導管中では、一定した圧力が支配することはなく、搬送の開始時には、終了時よりも高い圧力が存在する。しかしこのことによって、気体体積は高まり、これと共に気体速度も高まる。搬送速度を最適な気体速度の範囲に維持するために、搬送用導管の直径を、その長さに依存して、有利にはその大きさにおいて少なくとも1回、段階付をする。このことは特に長い搬送区間が該当する。有利には導管直径の複数の段階付が存在する。本願発明の最も有利な実施態様では、円すい形の搬送用導管を使用する。」(段落【0001】ないし【0017】)

c)「Die wasserabsorbierenden Polymerpartikel weisen vorzugsweise zu mindestens 90 Gew.-% einen Partikeldurchmesser von weniger als 1.000μm, besonders bevorzugt zu mindestens 95 Gew.-% einen Partikeldurchmesser von weniger als 900μm, ganz besonders bevorzugt zu mindestens 98 Gew.-% einen Partikeldurchmesser von weniger als 800μm, auf.

・・・(中略)・・・

wird, hergestellt werden. 」(4ページ14行ないし5ページ5行)
<翻訳文>
「【0025】
吸水性ポリマー粒子は、有利には少なくとも90質量%までが、1000μm未満の粒径を有し、特に有利には少なくとも95質量%までが、900μm未満の粒径を有し、とりわけ有利には少なくとも98質量%までが、800μm未満の粒径を有する。
【0026】
本発明による方法によれば、空気による搬送の間の機械的負荷は、150μmより小さい粒径を有するポリマー粒子の割合が、空気による搬送によって、そのつどポリマー粒子の全量に対して、1質量%未満、特に有利には0.7質量%未満、とりわけ有利には0.5質量%未満だけ高くなり、かつポリマー粒子の透過性が、空気による搬送によって有利に5×10^(-7)cm^(3)s/g未満、特に有利には4×10^(-7)cm^(3)s/g未満、とりわけ有利には3×10^(-7)cm^(3)s/g未満だけ低下するまで低下される。
【0027】
本発明による方法において使用可能な吸水性ポリマー粒子は、
a)エチレン性不飽和の、酸基を有するモノマー少なくとも1種、
b)架橋剤少なくとも1種、
c)場合により、1もしくは複数の、a)と共重合可能なエチレン性および/またはアリル性の不飽和モノマー、および
d)場合により、1もしくは複数の、モノマーa)、b)および場合によりc)が少なくとも部分的にその上にグラフトされることができる水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液を重合し、
その際、ここで得られるポリマーを乾燥させ、分級し、
e)場合により少なくとも1の後架橋剤により後処理し、乾燥させ、熱により後架橋させ、かつ
f)場合により少なくとも1の多価カチオンによって後処理する
ことによって製造される。」(段落【0025】ないし【0027】)

d)「Die wasserabsorbierenden Polymerpartikel koennen zusaetzlich mit mindestens einem mehrwertigen Kation f) nachbehandelt werden.

・・・(中略)・・・

Ublicherweise wird das mehrwertige Kation f) als waessrige Loesung eingesetzt. Die Konzentration des mehrwertigen Kations f) in der waessrigen Loesung betraegt beispielsweise 0,1 bis 12 Gew.-%, vorzugsweise 0,5 bis 8 Gew.-%, besonders bevorzugt 1 ,5 bis 4 Gew.-%. 」(10ページ30行ないし同ページ末行)
<翻訳文>
「【0061】
吸水性ポリマー粒子はさらに、少なくとも1の多価カチオンf)によって後処理されてもよい。適切なカチオンf)はたとえば二価のカチオン、たとえば亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムのカチオン、三価のカチオン、たとえばアルミニウム、鉄、クロム、希土類およびマンガンのカチオン、四価のカチオン、たとえばチタンおよびジルコニウムのカチオンである。対イオンとして塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオンおよびカルボン酸イオン、たとえば酢酸イオンおよび乳酸イオンが可能である。硫酸アルミニウムが有利である。
【0062】
通常では、多価カチオンf)は水溶液として使用される。水溶液中の多価カチオンf)の濃度は、たとえば0.1?12質量%、有利には0.5?8質量%、特に有利には1.5?4質量%である。」(段落【0061】ないし【0062】)

e)「Beispiele

Beispiel 1 :

Durch kontinuierliches Mischen von Wasser, 50 gew.-%iger Natronlauge und Acrylsaeure wurde eine 38,8 gew.-%ige Acrylsaeure/Natriumacrylatloesung hergestellt, so dass der Neutralisationsgrad 71,3 mol-% betrug. Der Feststoffgehalt der Monomerloesung betrug 38,8 Gew.-%.

・・・(中略)・・・

Beispiel 3

Es wurde verfahren wie unter Beispiel 1. Die Gasanfangsgeschwindigkeit wurde ueber den Foerdergasdruck auf 5,8 m/s erhoeht.

Tab. 1 : Ergebnisse
・・・(Tab. 1の内容は省略)・・・」(12ページ11行ないし14ページ末行)
<翻訳文>
「【0070】
実施例
例1:
水、50質量%の水酸化ナトリウム溶液およびアクリル酸を連続的に混合することによって、中和度が71.3モル%となるように、38.8質量%のアクリル酸/アクリル酸ナトリウム溶液を製造した。モノマー溶液の固体含有率は、38.8質量%であった。モノマー溶液は、成分を混合した後に、熱交換器により連続的に29℃の温度に冷却し、かつ窒素を用いて脱気した。
【0071】
ポリエチレン性不飽和架橋剤として、ポリエチレングリコール-400-ジアクリレート(400g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコールのジアクリレート)を使用した。使用量は、モノマー溶液1tあたり、2kgであった。
【0072】
ラジカル重合を開始するために、以下の成分を使用した:過酸化水素(モノマー溶液1tあたり、1.03kg(0.25質量%))、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(モノマー溶液1tあたり、3.10kg(15質量%))、ならびにアスコルビン酸(モノマー溶液1tあたり、1.05kg)。
【0073】
モノマー溶液の処理量は、18t/hであった。
【0074】
個々の成分を、容積6.3m^(3)を有する反応器List Contikneter(List社、Arisdorf、スイス)に以下の量で連続的に供給する。
【0075】
モノマー溶液 18t/h
ポリエチレングリコール-400-ジアクリレート 36kg/h
過酸化水素溶液/ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液74.34kg、
アスコルビン酸溶液18.9kg/h
反応器の端部において、さらに、150μmより小さい粒径を有する分離されたふるい下750?900kg/hを計量供給した。
【0076】
反応溶液は、供給部で23.5℃の温度を有していた。反応器は、38rpmのシャフト回転数で運転した。反応器中での反応混合物の滞留時間は、15分間であった。
【0077】
得られた生成物ゲル中で、分析により0.6質量%(固体含有率に対する)の残留アクリル酸含有率および45.0質量%の固体含有率が判明した。
【0078】
重合およびゲルの粉砕の後で、水性ポリマーゲルをベルト型乾燥器上に供給した。合計して、55質量%の含水率を有する水性ポリマーゲル18.3t/hを乾燥させた。該ゲルを、30cmの高さから、揺動ベルトにより、乾燥器の搬送ベルト上に供給した。ゲル層の高さは、約10cmであった。
【0079】
乾燥器ベルトのベルト速度は、0.02m/sであり、かつ乾燥器ベルト上での滞留時間は、約37分であった。
【0080】
乾燥させたヒドロゲルを粉砕し、かつふるい分けした。150?800μmの粒径を有するフラクションを、後架橋させた。
【0081】
後架橋剤溶液は、Schugi(登録商標)ミキサー中でポリマー粒子上に噴霧した。後架橋剤溶液は、ポリエチレングリコール/水の質量比1:2の混合物中のエチレングリコールジグリシジルエーテルの1.2質量%溶液であった。ポリマー粒子に対して、溶液5質量%を噴霧した。引き続き、150℃で60分間乾燥させ、かつ後架橋させた。
【0082】
後架橋の間に生じた粗粒を分離した後に、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送した。搬送用導管として、アルミニウムからなり、長さ153mおよび内径108.5mmを有する平滑な導管を使用した。搬送用導管は、2つの水平な区間と、2つの垂直な区間とからなり、その際、これらの区間は、湾曲部によって結合されていた。垂直な突出部は、合計して10mであった。
【0083】
搬送性能は、吸水性ポリマー粒子5800kg/hであり、搬送空気量は320kg/hであり、かつ搬送用導管開始端の気体速度は3.2m/sであり、搬送用導管終端の気体速度は、8m/sであった。搬送用導管中の圧力は、周囲圧力に対して、+1500?0ミリバールである。搬送物負荷は、18kg/kgであり、かつフルード数は、搬送の開始時に3.1であった。
【0084】
吸水性ポリマー粒子(SAP)の粒径分布は、光学的な検出法により測定した。この結果は第1表にまとめられている。
【0085】
例2
例1と同様に実施した。気体初期速度を、搬送ガス圧力によって、1.2m/sに低下させた。
【0086】
例3
例1と同様に実施した。気体初期速度を、搬送ガス圧力によって、5.8m/sに高めた。
【0087】
【表1】 ・・・<表1の内容は省略>・・・ 」(段落【0070】ないし【0087】)

イ 刊行物1の記載事項及び図面に示された内容から分かること
a)上記アa)、b)及びe)の記載によれば、刊行物1には、製造工程中の吸水性ポリマー粒子を搬送用導管を経由して空気により搬送する吸水性ポリマー粒子の搬送方法が開示されていることが分かる。

b)上記アa)及びb)の記載によれば、吸水性ポリマー粒子の搬送方法において、搬送物負荷が1?100(kg-樹脂/kg-空気)であることが分かる。

c)上記アa)及びb)の記載によれば、吸水性ポリマー粒子の搬送方法において、搬送用導管の始点における、吸水性ポリマー粒子の気体速度が1?6m/sであることが分かる。

d)上記アa)及びc)の記載によれば、吸水性ポリマー粒子の搬送方法において、吸水性ポリマー粒子の少なくとも90重量%までが1000μm未満の粒径であることが分かる。

e)上記アb)の記載によれば、吸水性ポリマー粒子の搬送方法において、搬送用導管の直径が30?300mmであることが分かる。

f)上記アc)及びd)の記載によれば、吸水性ポリマー粒子の搬送方法において、吸水性ポリマー粒子が硫酸アルミニウムを含むことが分かる。

ウ 引用発明
上記ア及びイを総合して、本願発明の表現にならって整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「製造工程中の吸水性ポリマー粒子を搬送用導管を経由して空気により搬送する吸水性ポリマー粒子の搬送方法であって、
搬送物負荷が1?100(kg-樹脂/kg-空気)であり、
前記搬送用導管の始点における、前記吸水性ポリマー粒子の気体速度が1?6m/sであり、
前記吸水性ポリマー粒子の少なくとも90重量%までが1000μm未満の粒径であり、
前記搬送用導管の直径が30?300mmであり、
前記吸水性ポリマー粒子が硫酸アルミニウムを含む、吸水性ポリマー粒子の搬送方法。」

(2)刊行物2
ア 刊行物2の記載事項
当審において平成26年9月30日付けで通知した拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-345804号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂製造工程における、多価アルコールを含有する吸水性樹脂粉体の輸送方法であって、
前記吸水性樹脂粉体は、高濃度空気輸送装置を用いて輸送管内を輸送され、
前記輸送管には二次空気が噴出され、
前記輸送管に供給される前記吸水性樹脂粉体の温度が30℃以上であることを特徴とする、吸水性樹脂粉体の輸送方法。
【請求項2】
前記吸水性樹脂粉体は、多価アルコールによって表面架橋された表面架橋吸水性樹脂の粉体からなる、請求項1に記載の輸送方法。
【請求項3】
前記吸水性樹脂粉体の水平輸送距離が30m以上である、請求項1または2に記載の輸送方法。
【請求項4】
前記吸水性樹脂粉体の垂直輸送距離が10m以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の輸送方法。
【請求項5】
単量体を含む水溶液を重合させて得られる含水重合体を乾燥して得られる吸水性樹脂粉体を、輸送管内を高濃度空気輸送させる工程を含む、吸水性樹脂の製造方法であって、
前記吸水性樹脂粉体は、多価アルコールを含有し、
前記吸水性樹脂粉体は、30℃以上の温度で前記輸送管に供給され、
前記輸送管には二次空気が噴出される、吸水性樹脂の製造方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】)

b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂の輸送に関する。より詳しくは、本発明は、多価アルコールを含有する吸水性樹脂の高濃度空気輸送に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸水性樹脂は、優れた吸水力を有する樹脂であり、その特性を活かして幅広い用途に適用されている。例えば、吸水性樹脂は、紙オムツ、生理用ナプキンなどの衛生用品、土壌用保水剤などに適用されている。
【0003】
吸水性樹脂は、乾燥、解砕、分級、熱処理による表面架橋などの様々な工程を経て、製造される。工業的な連続生産工程においては、乾燥機、解砕機、分級機、熱処理機などの各装置間の輸送には、輸送装置が用いられる。しかしながら、吸水性樹脂の物性は形状や粒子径といった外形形状に影響されやすく、輸送中に加えられた外力による粉化や破砕によって、吸水性樹脂の物性が低下する傾向がある。
【0004】
このような輸送中の物性低下を防止する技術として、空気輸送が注目されている(例えば、非特許文献1参照)。空気輸送は、機械的輸送法に比べて所要動力が大きいという欠点を持つ。しかし、空気輸送の導入によって、輸送ラインの簡略化、有害粉塵の飛散防止、および被輸送物への異物の混入防止が実現されうる。空気輸送の方式は、低濃度空気輸送と高濃度空気輸送とに大別される。低濃度空気輸送では、被輸送物である粉体は、輸送管内において、分散状態にある。高濃度空気輸送では、被輸送物である粉体は、輸送管内においてスラグまたはプラグと呼ばれる集団を形成しながら移動する。粉体が分散状態を維持するためには、気流速度が高くなければならないので、低濃度空気輸送は高速輸送に、高濃度空気輸送は低速輸送に、それぞれ対応する。
【0005】
高濃度空気輸送では、気体流量が少なくてすむというメリットに加えて、輸送管の磨耗や粒子の破砕が抑制されるメリットがある。しかし、粉体の濃度を高め、気流速度を低下させると、輸送管が閉塞する問題がある。そこで、高濃度空気輸送装置には、流れを安定化させるための特別な装置が設けられることが多い。輸送管内における粉体の流れを安定化させるための装置としては、二次空気を噴出させる装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。」(段落【0001】ないし【0005】)

c)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、多価アルコールを含有する吸水性樹脂粉体を空気輸送すると、空気輸送機によっては、吸水性樹脂の物性が低下することがある。そこで、本発明が目的とするところは、吸水性樹脂を空気輸送する際の物性低下を抑制する手段を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、吸水性樹脂製造工程における、多価アルコールを含有する吸水性樹脂粉体の輸送方法であって、前記吸水性樹脂粉体は、高濃度空気輸送装置を用いて輸送管内を輸送され、前記輸送管には二次空気が噴出され、前記輸送管に供給される前記吸水性樹脂粉体の温度が30℃以上であることを特徴とする、吸水性樹脂粉体の輸送方法である。
【0009】
本発明においては、多価アルコールを含有する吸水性樹脂粉体が、高濃度空気輸送装置を用いて輸送される。高濃度空気輸送されるため、吸水性樹脂は輸送中の物性低下が少ない。
【0010】
また、輸送管に二次空気を噴出させて多価アルコールを含有する吸水性樹脂粉体を搬送すると、吸水性樹脂の物性低下が抑制される。輸送管に二次空気を噴出させると、輸送管の閉塞も生じにくい。」(段落【0007】ないし【0010】)

d)「【0020】
次に、本発明の輸送方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、高濃度空気輸送装置の一実施形態の概略図である。輸送される吸水性樹脂粉体は、ホッパー102に貯蔵される。ホッパー102から輸送される吸水性樹脂粉体(以下、「吸水性樹脂粉体」を単に「粉体」とも記載する)が、リフトタンク103を通じて、輸送管104に供給される。ホッパー102から輸送管104への粉体の供給および、輸送管104内部での粉体
の輸送には、コンプレッサー106によって作製される圧縮空気が用いられうる。圧縮空気による高濃度空気輸送によって、粉体はホッパー108に輸送される。輸送管には、二次空気を噴出させるための、エアノズルが設けられる。二次空気は、コンプレッサーによって圧縮されており、二次空気供給管110を通じて、輸送管中に適宜設けられたエアノズルに供給される。エアノズルに供給された二次空気は、輸送管内部に噴出される。
【0021】
高濃度空気輸送は、低濃度高速輸送に比べて、所要動力が小さい。輸送管中を輸送される粉体の濃度が高くなると、粉体の集団が管断面の全体をプラグ状に塞ぐ。このとき、ほとんどの粒子は輸送管の壁面と衝突しないため、管の磨耗や粉体の破砕が抑制される。このように、粉体は、プラグ状に輸送管を塞ぎながら輸送される。理想化されたプラグ輸送は、粉体の集団と空気とが整然と分離されて、粉体が輸送される。ただし、粉体と空気とが整然と分離されることは稀である。実際系においては、管底側に粉体の静止堆積層が形成され、その上をプラグが波動的な運動を示しながら移動する。または、粉体の堆積層が成長して丘状の塊からプラグとなり、ある程度進んだのち、プラグが崩壊する。この挙動を繰り返して、粉体が輸送される。
【0022】
本願においては、このような粉体の高濃度空気輸送を実現する装置を、高濃度空気輸送装置と呼ぶ。言い換えれば、高濃度空気輸送装置においては、プラグを形成しながら粉体が輸送管内を移動する。本発明の輸送方法に用いられる高濃度空気輸送装置の構成は特に限定されないが、少なくとも、粉体が移動する輸送管、輸送管に二次空気を供給するための二次空気供給管を有する。つまり、本発明の高濃度空気輸送装置は、吸水性樹脂粉体を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから供給された前記吸水性樹脂粉体が圧送される輸送管と、前記輸送管に連結されてなる、前記輸送管を圧送されている前記吸水性樹脂粉体に二次空気を供給するための二次空気供給管とからなる。好ましくは、高濃度空気供給装置は、前記輸送管に一次空気を供給するコンプレッサーを有する。また、好ましくは、高濃度空気供給装置は、前記二次空気供給管に二次空気を供給するコンプレッサーを有する。一のコンプレッサーが、一次空気および二次空気を供給してもよい。貯蔵タンクの底部には、ガスシール可能なバルブが設けられていることが好ましい。高濃度空気輸送装置は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1などの公知技術を参照して設計されうる。
【0023】
高濃度空気輸送装置において、二次空気を供給する方式は特に限定されない。二次空気の供給方式としては、二次空気を連続的に供給させる方式、二次空気をバイパス管より噴出させる方式、二次空気の噴出を制御する方式などが挙げられる。好ましくは、図1に示すように、二次空気をバイパス管より噴出させる。
【0024】
なお、本願においては、吸水性樹脂の粉体が高濃度空気輸送装置を用いて輸送されるが、「粉体」とは高濃度空気輸送装置を用いて輸送されうるあらゆる形態を含む広い概念である。物体を破砕したときに生じる形態を表す用語として、「粒子」、「粉末」、「塊」など、様々な用語が用いられる。本願における「粉体」とは、これらの用語のいずれかに限定されるべきものではなく、高濃度空気輸送装置を用いて輸送されうる程度に微細である全ての形態を意味する。
【0025】
二次空気は、輸送管の途中において、管内に供給される気体を意味する。コストを考慮すると、圧縮された空気が二次空気として用いられる。吸水性樹脂が酸素に対して反応性を有しているなどの特段の事情がある場合には、窒素ガスなどの不活性ガスが二次空気として用いられてもよい。その場合には、輸送管に粉体を供給するために用いられる一次空気としても、窒素ガスなどの不活性ガスが用いられるとよい。
【0026】
二次空気が輸送管に供給されると、輸送管内部での粉体の閉塞を防止できる。また、吸水性樹脂の粉体が輸送される場合には、二次空気を用いて粉体を輸送することによって、吸水性樹脂の物性の低下が抑制される。具体的には、加圧下の吸収倍率や生理食塩水流れ誘導性などの物性維持に顕著な効果がある。吸水性樹脂は、その評価が物性によって大きく左右される製品である。このため、本発明の輸送方法を適用することによって、吸水性樹脂の評価を向上させることができ、吸水性樹脂の競争力が高まる。
【0027】
二次空気の供給箇所の数やノズルの大きさは、特に限定されない。粉体の閉塞は、粉体の性質、粉体の供給量、輸送管のサイズなどの諸条件によって左右される現象である。したがって、粉体の閉塞しやすさを考慮して、二次空気の供給箇所の数およびノズルの大きさが決定されるとよい。二次空気の供給量も、特に限定されない。同様に、粉体の閉塞しやすさを考慮して、二次空気の供給量が決定されるとよい。」(段落【0020】ないし【0027】

イ 刊行物2の記載事項及び図面に示された内容から分かること
a)上記アa)ないしd)の記載並びに図1によれば、刊行物2には、製造工程中の吸水性樹脂粉体を輸送管を経由して高濃度空気輸送する吸水性樹脂粉体の輸送方法が開示されていることが分かる。

b)上記アa)ないしd)の記載並びに図1によれば、二次空気を用いて吸水性樹脂粉体のプラグ輸送を行うことが分かる。

ウ 刊行物2に記載された発明
上記ア及びイを総合して、本願発明の表現にならって整理すると、刊行物2には、次の事項からなる発明(以下「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「製造工程中の吸水性樹脂粉体を輸送管を経由して高濃度空気輸送する吸水性樹脂粉体の輸送方法であって、
二次空気を用いて前記吸水性樹脂粉体のプラグ輸送を行う、吸水性樹脂粉体の輸送方法。」

4.対比
そこで、本願発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

・後者における「吸水性ポリマー粒子」は前者における「吸水性樹脂粉体」に相当し、以下同様に、「搬送用導管」は「輸送配管」に、「空気により搬送する」は「空気輸送する」に、「吸水性ポリマー粒子の搬送方法」は「吸水性樹脂粉体の輸送方法」に、「硫酸アルミニウム」は「多価金属塩」に、それぞれ相当する。

・後者における「搬送物負荷」は「固気比」ということができる。
そして、後者における「搬送物負荷が1?100(kg-樹脂/kg-空気)であり」は、前者における「前記輸送配管の始点における初期固気比をR1(kg-樹脂/kg-空気)とし、前記輸送配管の末端における末端固気比をR2(kg-樹脂/kg-空気)とした場合に、
初期固気比R1が35?150(kg-樹脂/kg-空気)であり、末端固気比R2が20?50(kg-樹脂/kg-空気)であり」に、「固気比が所定の範囲であり」という限りにおいて相当する。

・後者における「前記搬送用導管の始点における、前記吸水性ポリマー粒子の気体速度が1?6m/sであり」は、前者における「前記輸送配管の始点における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が7m/s以下であり」に、「前記輸送配管の始点における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が所定の範囲であり」という限りにおいて相当する。

・後者における「前記吸水性ポリマー粒子の90重量%までが1000μm未満の粒径であり」は、前者における「前記吸水性樹脂粉体の質量平均粒子径(D50)が200?600μmであり」に、「前記吸水性樹脂粉体の所定の粒子径が所定の範囲であり」という限りにおいて一致する。

・後者における「前記搬送用導管の直径が30?300mmであり」は、刊行物1の13ページ28行ないし30行における「Als Foerderleitung wurde eine glatte Rohrleitung aus Aluminium mit einer Laenge von 153 m und einem Innendurchmesser von 108,5 mm verwendet.」(翻訳文:「搬送用導管として、アルミニウムからなり、長さ153mおよび内径108.5mmを有する平滑な導管を使用した。」)という記載を考慮すると、搬送用導管の直径は内径を意味するものといえるから、前者における「前記輸送配管の内径が30?300mmであり」に相当する。

したがって、両者は、
「製造工程中の吸水性樹脂粉体を輸送配管を経由して空気輸送する吸水性樹脂粉体の輸送方法であって、
固気比が所定の範囲であり、
前記輸送配管の始点における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が所定の範囲であり、
前記吸水性樹脂粉体の所定の粒子径が所定の範囲であり、
前記輸送配管の内径が30?300mmであり、
前記吸水性樹脂粉体が多価金属塩を含む、吸水性樹脂粉体の輸送方法。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
固気比に関し、本願発明においては、「前記輸送配管の始点における初期固気比をR1(kg-樹脂/kg-空気)とし、前記輸送配管の末端における末端固気比をR2(kg-樹脂/kg-空気)とした場合に、
初期固気比R1が35?150(kg-樹脂/kg-空気)であり、末端固気比R2が20?50(kg-樹脂/kg-空気)であり」、「固気比変化率(R1/R2)を1.8以上7以下とする」のに対して、引用発明においては、「搬送物負荷が1?100(kg-樹脂/kg-空気)」であって、固気比が1?100(kg-樹脂/kg-空気)であるところ、初期固気比、末端固気比及び固気比変化率については明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
輸送配管の始点における、吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が所定の範囲であることに関し、本願発明においては、「前記輸送配管の始点における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が7m/s以下」であるのに対して、引用発明においては、「前記搬送用導管の始点における、前記吸水性ポリマー粒子の気体速度が1?6m/s」である点(以下、「相違点2」という。)。

[相違点3]
本願発明においては、「前記輸送配管の末端における、前記吸水性樹脂粉体の線速度(末端線速)は、前記初期線速よりも大きく、かつ、7?15m/s」であるのに対して、引用発明においては、搬送用導管の末端における、吸水性ポリマー粒子の線速度(末端線速)について特定されていない点(以下、「相違点3」という。)。

[相違点4]
吸水性樹脂粉体の所定の粒子径が所定の範囲であることに関し、本願発明においては、「前記吸水性樹脂粉体の質量平均粒子径(D50)が200?600μm」であるのに対して、引用発明においては、「前記吸水性ポリマー粒子の少なくとも90重量%までが1000μm未満の粒径」であって、吸水性ポリマー粒子の質量平均粒子径について特定されていない点(以下、「相違点4」という。)。

[相違点5]
本願発明においては、「一つの輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtが50?1000m」であるのに対して、引用発明においては、搬送用導管の長さについて特定されていない点(以下、「相違点5」という。)。

[相違点6]
本願発明においては、「二次空気を用いて前記吸水性樹脂粉体のプラグ輸送を行う」のに対して、引用発明においては、二次空気を用いて吸水性ポリマー粒子のプラグ輸送を行うか否か明らかでない点(以下、「相違点6」という。)。


5.判断
相違点1ないし6について検討するに先立ち、吸水性樹脂粉体を輸送配管を経由して空気輸送する技術分野における普遍的課題及び技術常識等について整理する。
吸水性樹脂粉体を輸送配管を経由して空気輸送する際に、吸水性樹脂粉体の物性の低下を防止するために、吸水性樹脂粉体の粉化や破砕を防止する必要があるとの課題は、刊行物2(特に、段落【0003】ないし【0005】)にも記載されているように本件出願の優先日前に周知の課題である。
また、粉体を輸送配管を経由して空気輸送する際に、プラグ輸送等の低速輸送を行うことにより、粉体の破砕等が減少することは、本件出願の優先日前に技術常識である。
さらに、粉体を輸送配管を経由して空気輸送する際に、輸送配管の始点から末端に亘って、粉体が閉塞しないように輸送状態を設定することも、本件出願の優先日前に技術常識である。
したがって、吸水性樹脂粉体を輸送配管を経由して空気輸送する際に、吸水性樹脂粉体の輸送状態を、輸送配管の始点から末端に亘って、吸湿性樹脂粉体の粉化や破砕を防止するように、かつ輸送配管が閉塞しないように設定した、プラグ輸送等の低速輸送を行うことは、当業者が当然に考慮すべきことといえる。
その際、刊行物1における3ページ9ないし11行の記載(翻訳文の段落【0017】の「搬送ガスは圧縮可能であるため、搬送用導管中では、一定した圧力が支配することはなく、搬送の開始時には、終了時よりも高い圧力が存在する。しかしこのことによって、気体体積は高まり、これと共に気体速度も高まる。」という記載)からも理解できるように、輸送配管の始点においては、圧力は高く、吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)は低く、固気比は大きくなり、輸送配管の末端においては、始点に比べて、圧力は低く、吸水性樹脂粉体の線速度(末端線速)は高く、固気比は小さくなるところ、この様な普遍的な現象を考慮して設定されるのは当然のことである。
ところで、引用発明において、搬送物負荷(固気比)が1?100(kg-樹脂/kg-空気)であり、搬送用導管(輸送配管)の始点における、吸水性ポリマー粒子(吸水性樹脂粉体)の気体初期速度が1?6m/sであるところ、吸水性ポリマー粒子の搬送状態はプラグ輸送等の低速輸送となっていることは明らかである(必要であれば、刊行物1の2ページ5ないし7行(翻訳文の段落【0008】)を参照。)。
そして、引用発明においても、吸水性ポリマー粒子を搬送用導管を経由して空気により搬送するものであるから、吸水性ポリマー粒子の搬送状態を、搬送用導管の始点から末端に亘って、吸水性ポリマー粒子の粉化や破砕を防止するように、かつ搬送用導管が閉塞しないように設定した、プラグ輸送等の低速輸送を行うことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そこで、以上のことを踏まえて、各相違点について検討する。

[相違点1について]
本願発明において、初期固気比R1が35?150(kg-樹脂/kg-空気)であり、末端固気比R2が20?50(kg-樹脂/kg-空気)としたことについては、本件出願の明細書の段落【0120】における「輸送効率を高め、高初期線速による物性低下を抑制する観点から、初期固気比R1は、35(kg-樹脂/kg-空気)以上であることが好ましく、50(kg-樹脂/kg-空気)以上であることがより好ましく、100(kg-樹脂/kg-空気)以上であることがさらに好ましい。輸送効率(単位時間あたりの輸送量)の低下を抑えるという観点から、初期固気比R1は、150(kg-樹脂/kg-空気)以下であることが好ましく、120(kg-樹脂/kg-空気)以下であることがより好ましい。」という記載及び段落【0121】における「輸送効率を高め、浮遊状態での粉体同士の衝突を抑制して物性低下を抑えるという観点から、末端固気比R2は10(kg-樹脂/kg-空気)以上であることが好ましく、15(kg-樹脂/kg-空気)以上であることがより好ましく、20(kg-樹脂/kg-空気)以上であることがさらに好ましい。輸送効率(単位時間あたりの輸送量)の低下を抑え、更に閉塞現象や性能低下を抑制するという観点から、末端固気比R2は、50(kg-樹脂/kg-空気)以下であることが好ましく、40(kg-樹脂/kg-空気)以下であることがより好ましく、30(kg-樹脂/kg-空気)以下であることがより好ましい。」という記載並びに段落【0209】における表1を参酌しても、それぞれの上限値及び下限値に臨界的な意義を認めることができず、粉粒体をプラグ輸送等の低速輸送を行う際に採用される一般的な数値範囲内のものであって、吸水性樹脂粉体の輸送状態が、輸送配管の始点から末端に亘って、吸湿性樹脂粉体の粉化や破砕を防止するように、かつ輸送配管が閉塞しないものとなるように最適化を図った程度のものといえ、格別な技術的意義を認めることができない。
また、固気比変化率(R1/R2)を1.8以上7以下としたことについても、上記表1の結果からは、上限値及び下限値に臨界的な意義を認めることができず、本件出願の段落【0119】において「上述したように、本発明ではR1>R2とされる。換言すれば、固気比変化率(R1/R2)は、1より大きくされる。 ・・・ 固気比変化率が1より大きくなるように制御することにより、初期線速Vxを抑制しつつ、閉塞現象(詰まり)を抑制することができる。この観点から、固気比変化率(R1/R2)は、1.8以上が好ましく、2以上が好ましく、3.6以上がより好ましい。固気比変化率が過度に大きい場合、輸送速度の変化が大きく、吸水性樹脂粉末の性能が低下しやすい。この観点から、固気比変化率(R1/R2)は、7以下とされ、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。」と記載されているように、吸水性樹脂粉体の輸送状態が、輸送配管の始点から末端に亘って、吸湿性樹脂粉体の粉化や破砕を防止するように、かつ輸送配管が閉塞しないものとなるように最適化を図った程度のものといえ、格別な技術的意義を認めることはできない。
一方、引用発明において、吸水性ポリマー粒子の搬送状態を、搬送用導管の始点から末端に亘って、吸水性ポリマー粒子の粉化や破砕を防止するように、かつ搬送用導管が閉塞しないように設定するにあたり、搬送状態の指標の一つである搬送物負荷について、他の搬送条件(搬送用導管の長さや内径、搬送用導管の始点及び末端におけるポリマー粒子の気体速度、吸水性ポリマー粒子の粒径など)に応じて設定することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、引用発明において、搬送物負荷は、本願発明における初期固気比R1及び末端固気比R2と同程度の1?100(kg-樹脂/kg-空気)であり、また、搬送用導管の始点における搬送物負荷に比べて、搬送用導管の末端における搬送物負荷は小さくなることを考慮すると、搬送用導管の始点における搬送物負荷を35?150(kg-樹脂/kg-空気)に設定するとともに、搬送用導管の末端における搬送物負荷を20?50(kg-樹脂/kg-空気)に設定して、両者の変化率を1.8以上7以下とし、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

[相違点2及び3について]
本願発明において、輸送配管の始点における、吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が7m/s以下であることについては、本件出願の明細書の段落【0017】における「好ましくは、吸水性樹脂粉体の輸送配管始点での線速度(初期線速)を7m/s以下とする。」という記載、及び、本件出願の段落【0209】における表1を参酌しても、上限値に臨界的な意義を認めることができない。
また、本願発明において、輸送配管の末端における、吸水性樹脂粉体の線速度(末端線速)は、初期線速よりも大きく、かつ、7?15m/sであることについても、本件出願の明細書の段落【0163】における「末端線速Vyが小さくなると、粒子と輸送配管との衝突速度や、粒子同士の衝突速度が小さくなる。つまり、小さい末端線速Vyにより、吸水性樹脂粉体が受けるダメージが抑制されうる。吸水性樹脂粉体の物性低下を抑制する観点から、末端線速Vyは、15m/s以下が好ましく、13m/s以下がより好ましく、10m/s以下がより好ましい。上述した通り、本発明では、複数の輸送装置による輸送が同時に進行しうるため、末端線速Vyの低下と輸送効率とが両立しうる。輸送効率の観点から、末端線速Vyは、7m/s以上が好ましい。」という記載、及び、本件出願の段落【0209】における表1を参酌しても、上限値及び下限値に臨界的な意義を認めることができない。
そして、本願発明において、輸送配管の始点における、吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)が7m/s以下であり、輸送配管の末端における、吸水性樹脂粉体の線速度(末端線速)は、初期線速よりも大きく、かつ、7?15m/sであることについては、吸水性樹脂粉体の輸送状態が、輸送配管の始点から末端に亘って、吸湿性樹脂粉体の粉化や破砕を防止するように、かつ輸送配管が閉塞しないものとなるように最適化を図った程度のものといえ、格別な技術的意義を認めることはできない。
一方、引用発明において、吸水性ポリマー粒子の搬送状態を、搬送用導管の始点から末端に亘って、吸水性ポリマー粒子の粉化や破砕を防止するように、かつ搬送用導管が閉塞しないように設定するにあたり、刊行物1の13ページ34ないし39行の記載(翻訳文の段落【0083】における「搬送性能は、吸水性ポリマー粒子5800kg/hであり、搬送空気量は320kg/hであり、かつ搬送用導管開始点の気体速度は3.2m/sであり、搬送用導管終端の気体速度は、8m/sであった。搬送用導管中の圧力は、周囲圧力に対して、+1500?0ミリバールである。搬送物負荷は、18kg/kgであり、かつフルード数は、搬送の開始時に3.1であった。」という記載)からも分かるように、搬送状態の指標である、搬送用導管の始点における、吸水性ポリマー粒子の気体速度(以下、「気体初期速度」ともいう。)、及び、搬送用導管の末端における、吸水性ポリマー粒子の気体速度(以下、「気体末端速度」ともいう。)を、他の搬送条件(搬送物負荷、搬送用導管の長さや内径、吸水性ポリマー粒子の粒径など)に応じて設定することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、引用発明における気体初期速度及び気体末端速度については、気体初期速度が1?6m/sであり、刊行物1の13ページ34ないし39行(翻訳文の段落【0083】)の上記記載において、気体初期速度が3.2m/sであり、気体末端速度が8m/sである例が示されているように、本願発明における、輸送配管の始点における、吸水性樹脂粉体の線速度(初期線速)及び輸送配管の末端における、吸水性樹脂粉体の線速度(末端線速)と同程度である。
そうすると、引用発明において、気体初期速度を7m/s以下とするとともに、気体末端速度を気体初期速度よりも大きく、かつ、7?15m/sとし、上記相違点2及び3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点4について]
本願発明において、吸水性樹脂粉体の質量平均粒子径(D50)が200?600μmである(なお、D50が付されていることにより、吸水性樹脂粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径と認められる。)ことについては、本件出願の明細書の段落【0048】における「粉砕は、所望の粒径(好ましくは、重量平均粒子径200?800μm)の粒子状吸水性樹脂がより多く得られるように行うことが好ましい。」という記載、段落【0050】における「[分級工程] 分級工程は、粒子状吸水性樹脂を篩い分ける工程である。分級工程では前述の粉砕工程で得られた粉砕物が篩い分けられる。この分級工程では、例えば、金属篩網を有する分級装置14が用いられる。該分級工程において、この分級装置14を用いて所望の粒径(篩分級で規定される重量平均粒子径(D50)が好ましくは200?800μm、さらに好ましくは300?600μmを有する粒子を選択して、目的とする粒子状吸水性樹脂が得られうる。」という記載、段落【0088】における「[整粒工程] ・・・ この解砕処理により得られた解砕物に対しては、上記分級処理が再度実施されて、粒径が小さい微粉が除去されつつ、所望の粒径(好ましくは、重量平均粒子径200?800μm)を有する粒子状吸水剤が得られうる。」という記載及び段落【0175】における「(粒度) 表面架橋前および/または最終製品における吸水性樹脂(吸水性樹脂粉体)の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200?600μm、より好ましくは200?550μm、さらに好ましくは250?500μm、特に好ましくは350?450μmである。また、150μm未満の粒子が少ないほどよく、通常0?5質量%、好ましくは0?3質量%、特に好ましくは0?1質量%に調整される。さらに、850μm以上の粒子が少ないほどよく、通常0?5質量%、好ましくは0?3質量%、特に好ましくは0?1質量%に調整される。」という記載によれば、所望の粒径の範囲を設定したものであって、その数値範囲に格別な技術的意義を認めることができない。
一方、引用発明において、吸水性ポリマー粒子の少なくとも90重量%までが1000μm未満の粒径であるところ、刊行物1の14ページのTab1(翻訳文における段落【0087】の表1)において、吸水性ポリマー粒子をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径とした場合の質量平均粒子径(D50)についてみると、例1では、501-600μmの範囲にあり、例2では、401-500μmの範囲にあり、例3では、501-600μmの範囲にあることから、本願発明の吸水性樹脂粉体の質量平均粒子径(D50)と同程度のものである。
そうすると、引用発明において、吸水性ポリマー粒子の質量平均粒子径(D50)を200?600μmとし、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点5について]
本願発明において、一つの輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtが50?1000mであることについては、本件出願の明細書の段落【0154】における「このような空気輸送装置の直列的な接続は、輸送区間が長い場合において有効性が高い。この観点から、一つの上記輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtが50m以上であるのが好ましく、70m以上がより好ましく、100m以上がより好ましい。輸送装置の台数を抑制する観点から、合計長さLtは、1000m以下が好ましく、500m以下がより好ましく、200m以下がより好ましい。」という記載及び段落【0209】における表1(一つの輸送区間に含まれる輸送配管の長さLpが123mの例については示されているが、一つの輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtを特定した例は示されていない。)を参酌しても、上限値及び下限値に臨界的な意義を認めることができず、吸水性樹脂粉体の輸送状態を、輸送配管の始点から末端に亘って、吸湿性樹脂粉体の粉化や破砕を防止するように、かつ輸送配管が閉塞しないものとするにあたり、一つの輸送区間が長くなる場合に、一つの輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtの最適な範囲を示した程度のものといえ、格別な技術的意義を認めることができない。
一方、引用発明において、一つの搬送区間に搬送用導管を複数設けるかは明らかではないが、粉体を搬送用導管を経由して空気により搬送する際に、中継用の搬送装置を介して複数の搬送用導管を設けることは、本件出願の優先日前に慣用手段であるから、複数の搬送用導管を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。
その際、一つの搬送区間に含まれる搬送用導管の合計長さをどの程度とするかは、吸水性ポリマー粒子の搬送状態を、搬送用導管の始点から末端に亘って、吸水性ポリマー粒子の粉化や破砕を防止するように、かつ搬送用導管が閉塞しないように設定することが可能であって、一つの搬送区間を搬送した後の吸水性ポリマー粒子の粉化や破砕の程度が許容し得る範囲で、他の搬送条件(搬送物負荷、気体初期速度、気体末端速度、搬送用導管内径、吸水性ポリマー粒子の粒径など)に応じて、当業者が任意に設計し得る事項である。
そして、刊行物1の13ページ27ないし32行の記載(翻訳文の段落【0082】における「後架橋の間に生じた粗粒を分離した後に、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送した。搬送用導管として、アルミニウムからなり、長さ153mおよび内径108.5mmを有する平滑な導管を使用した。搬送用導管は、2つの水平な区間と、2つの垂直な区間とからなり、その際、これらの区間は、湾曲部によって結合されていた。垂直な突出部は、合計して10mであった。」という記載)によれば、引用発明において、搬送用導管の長さとして153mとすることが示されており、本件出願の明細書の段落【0209】における表1に示された、一つの輸送区間に含まれる輸送配管の長さLpが123mのものと同程度である。したがって、引用発明における一つの搬送区間に含まれる搬送用導管の合計長さも、本願発明の一つの輸送区間に含まれる輸送配管の合計長さLtと同程度と認められる。
そうすると、引用発明において、慣用手段に基づき、一つの搬送区間に含まれる搬送用導管の合計長さを50?1000mとし、上記相違点5に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点6について]
相違点6の検討に先立ち、刊行物2に記載された発明を本願発明の用語を用いて表現するために、本願発明と刊行物2に記載された発明(以下、「後者2」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者2における「吸水性樹脂粉体」は前者における「吸水性樹脂粉体」に相当し、以下同様に、「輸送管」は「輸送配管」に、「高濃度空気輸送する」は「空気輸送する」に、「吸水性樹脂粉体の輸送方法」は「吸水性樹脂粉体の輸送方法」に、「プラグ輸送」は「プラグ輸送」に、それぞれ相当する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、本願発明の用語で表現すると、次のとおりの技術(以下、「刊行物2に記載された技術」という。)ということができる。
「製造工程中の吸水性樹脂粉体を輸送配管を経由して空気輸送する吸水性樹脂粉体の輸送方法であって、
二次空気を用いて前記吸水性樹脂粉体のプラグ輸送を行う、吸水性樹脂粉体の輸送方法。」
一方、引用発明は、刊行物2に記載された技術に対して、「製造工程中の吸水性ポリマー粒子(吸水性樹脂粉体)を搬送用導管(輸送管)を経由して空気により搬送する(高濃度空気輸送する)」という共通の基本構成を有している。
そして、刊行物2の段落【0010】及び【0026】の記載を参酌すると分かるように、刊行物2に記載された技術は、輸送管内部での吸水性樹脂粉体の閉塞を防止するという課題を解決するものであるところ、引用発明においても、搬送用導管内部での吸水性ポリマー粒子の閉塞を防止する課題が内在することは明らかである。
そうすると、引用発明において、刊行物2に記載された技術を適用して、二次空気を用いて吸水性ポリマー粒子(吸水性樹脂粉体)のプラグ輸送を行うようにし、上記相違点6に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2に記載された技術、周知の課題及び慣用手段から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された技術、周知の課題及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-26 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2010-505787(P2010-505787)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 光司石川 太郎  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
槙原 進
発明の名称 吸水性樹脂粉体の輸送方法  
代理人 八田国際特許業務法人  

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