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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1301390
審判番号 不服2014-3996  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-03 
確定日 2015-05-28 
事件の表示 特願2007-253796「プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日出願公開、特開2009- 82796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成19年9月28日の出願であって、平成24年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、平成26年3月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成26年3月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定

1 補正の却下の決定の結論

平成26年3月3日付けの手続補正を却下する。

2 理由

(1) 本件補正の内容

平成26年3月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前は以下の「ア」であったものを、本件補正後は以下の「イ」とする補正を含むものであり、以下の補正事項1?3よりなるものである。

ア 本件補正前(平成25年2月1日付け手続補正書)

「プラズマを生成するプラズマ生成室と、
プラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部と、
プラズマ生成室で生成されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処処理室と、を備え、
前記プラズマ温度制御部は、プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性を以て冷却するように形成されており、
前記被処理物は、イオン、励起種、原子、分子、液体、ミスト(霧)、気体状の物質の単独若しくは複数の状態にあることを特徴とする、プラズマ処理装置。」

イ 本件補正後

「プラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室で生成されたプラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部と、
前記プラズマ生成室で生成されその後前記プラズマ温度制御部によって温度制御されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処理室と、を備え、
前記プラズマ温度制御部は、プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、当該プラズマが当該プラズマ温度制御部を通過する間に当該プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する冷却速度を以て冷却して、最終的に前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性線を以て冷却するように形成されており、
前記被処理物は、イオン、励起種、原子、分子、液体、ミスト(霧)、気体状の物質の単独若しくは複数の状態にあることを特徴とする、プラズマ処理装置。」

(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

<補正事項1>

本件補正前の請求項1の
「プラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部」との記載を、
「前記プラズマ生成室で生成されたプラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部」とする補正。

<補正事項2>

本件補正前の請求項1の
「プラズマ生成室で生成されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処処理室」との記載を、
「前記プラズマ生成室で生成されその後前記プラズマ温度制御部によって温度制御されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処理室」とする補正。

<補正事項3>

本件補正前の請求項1の
「前記プラズマ温度制御部は、プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性を以て冷却するように形成されており、」との記載を、
「前記プラズマ温度制御部は、プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、当該プラズマが当該プラズマ温度制御部を通過する間に当該プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する冷却速度を以て冷却して、最終的に前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性線を以て冷却するように形成されており、」とする補正。

(2) 本件補正についての適否

ア 新規事項についての検討

(ア) 本件補正における上記の補正事項3が、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるかについて以下検討する。

(イ) 当初明細書等には、プラズマ温度制御部がプラズマを冷却するプラズマ冷却部であるプラズマ冷却室に関して次の事項が記載されている。

「【0006】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置は、プラズマ中に被処理物を導入し、分解処理や新物質創造処理などの処理を行うものである。図1は、プラズマ処理装置10のブロック図の例を示している。プラズマ処理装置10は、プラズマを生成するプラズマ生成室20と、プラズマを冷却又は加熱するプラズマ温度制御部30と、プラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処理室40などを備えている。図1では、プラズマ温度制御部30は、プラズマ生成室20に隣接し、プラズマ生成室20から流れ出るプラズマの温度を制御するプラズマ温度制御室からなっているが、プラズマ処理装置10は、プラズマ温度制御部30をプラズマ生成室20に配置してもよい。また、図1では、プラズマ処理室40は、プラズマ温度制御部30に隣接し、プラズマ温度制御部30から流れ出るプラズマを導入している。
【0007】
図2は、図1のプラズマ温度制御部30がプラズマを冷却するプラズマ冷却部32であるプラズマ冷却室の場合において、プラズマ生成室20から排出されたプラズマの冷却曲線の一例を示している。横軸は、図1のプラズマ冷却室を備えるプラズマ処理装置10の横方向の位置(距離)を示しており、縦軸は、プラズマ温度を示している。実線の冷却曲線は、プラズマ冷却室で冷却する場合の強制冷却の変化を示しており、破線の冷却曲線は、プラズマ冷却室で冷却しない場合の従来の自然冷却の変化を示している。
【0008】
プラズマ冷却室でプラズマを冷却することにより、短距離つまり短時間で所望の温度にすることができる。プラズマ処理室40で更に温度制御をすることで、プラズマ処理室40で一定のプラズマ温度を保持することができるほか、所望の空間的もしくは時間的なプラズマ温度変化を得る事ができる。それに対して、自然冷却の場合、プラズマは装置壁面や周囲のガスと接触によっての徐々に冷却され、プラズマ生成室20から相当離れた距離で装置温度もしくは室温まで冷却される。
【0009】
プラズマ処理装置10は、例えば、プラズマ生成室20から排出されたプラズマを積極的に冷却、加熱もしくは保温し、プラズマの温度、気圧、流速等を制御することができる。プラズマ中に物質を導入し、分解処理や新物質創造などを行う場合、分解処理や新物質創造などで生成された生成物の種類は、プラズマ生成室20から排出されたプラズマの温度、密度で大きく変化する。本実施の形態のプラズマ処理装置10では、プラズマ生成室20から排出されたプラズマの温度や密度を適切にコントロールすることで、生成物の種類などを制御・管理することができる。また、プラズマ処理の効果や速度はプラズマ中の物質構成(イオン、励起種、原子、分子、など)によって大きく異なる。プラズマ処理装置10の構成の自由度を上げることで、所望の効果(物質創造、表面処理、二次生成物の制御など)を実現し、かつ処理効率を向上することができる。」

「【0011】
(プラズマ温度制御部)
プラズマ温度制御部30は、所定の温度のプラズマを得るものである。プラズマ温度制御部30は、図1のようにプラズマ生成室20に隣接したプラズマ温度制御室でも、又は、プラズマ生成室20内に配置されていても、プラズマ生成室20を兼ねていてもよい。図1のようなプラズマ温度制御部30は、プラズマ生成室20から流れ出るプラズマの温度を制御するプラズマ温度制御室になっている。プラズマ温度制御部30は、例えばプラズマの温度、密度、気圧、又は、流速などの状態を特定の状態に制御して、プラズマ処理室40に移送する。プラズマ温度制御装置30は、例えば、プラズマを所定の温度に急激に冷却したり、加熱したりすることができる。これにより、所望の化学変化を生じさせる事ができる。プラズマ温度制御部30がプラズマ冷却部32の場合、固体により冷やす、液体により冷やす、気体により冷やす方式のほか、細孔などを介して急速に減圧し、又は、断熱膨張の効果により急冷するなど種々の方法を使用できる。
【0012】
図3(A)は、ハニカム構造のようなガス通路を有し、表面積が大きく、かつ温度管理された金属、ガラス、セラミックスなどの固体で形成されているプラズマ冷却部30を示している。プラズマ生成部20から排出されたプラズマは、プラズマ温度制御部30の通路を有する個体中を通過し、所望の温度に制御される。図3(B)は、多孔構造のプラズマ温度制御部30を示しており、小面積の穴やスリットを配置することで、プラズマ温度制御部30の入口と出口でプラズマの気圧を変化させ、プラズマ温度や密度を制御する。図3(C)は、コーン構造のプラズマ温度制御部30を示しており、プラズマ温度制御部30の入口と出口でガス流路の断面積を変えることでガスの流速を制御する。コーン構造は、多数のコーン形状からなっていても、又は1つのコーン形状からなっていてもよい。プラズマ温度制御部30は、図3(A)?(C)の構成要素を組み合わせるなど、種々の構成を取ることができる。」

「【図1】



「【図2】



(ウ) 上記(イ)の摘示事項から、当初明細書等には、プラズマ温度制御部がプラズマを冷却するプラズマ冷却部であるプラズマ冷却室に関して、「図2は、図1のプラズマ温度制御部30がプラズマを冷却するプラズマ冷却部32であるプラズマ冷却室の場合において、プラズマ生成室20から排出されたプラズマの冷却曲線の一例を示している。横軸は、図1のプラズマ冷却室を備えるプラズマ処理装置10の横方向の位置(距離)を示しており、縦軸は、プラズマ温度を示している。実線の冷却曲線は、プラズマ冷却室で冷却する場合の強制冷却の変化を示しており、破線の冷却曲線は、プラズマ冷却室で冷却しない場合の従来の自然冷却の変化を示している。」(【0007】)、「プラズマ冷却室でプラズマを冷却することにより、短距離つまり短時間で所望の温度にすることができる。」(【0008】)と記載されているだけであって、「プラズマ温度制御部を通過する間」の「冷却速度」については記載されていない。
また【図2】に関しては、「32」の二点鎖線で囲まれた「実線」の曲線の部分(下記【参考図2】参照。)が、「プラズマ温度制御部30がプラズマを冷却するプラズマ冷却部32であるプラズマ冷却室」における「プラズマの冷却曲線の一例」であることは認められ、また、「32」の二点鎖線で囲まれたプラズマ冷却部(プラズマ冷却室)32内における「実線」の冷却曲線(強制冷却)と「破線」の冷却曲線(自然冷却)に関する温度変化を対比すると、「実線」の冷却曲線(強制冷却)は、プラズマ温度が約3000℃から約800℃となり約2200℃低くなることを表している一方、「破線」の冷却曲線(自然冷却)は、プラズマ温度が約3000℃から約2000℃となり約1000℃低くなることを表しており、これらからは、「実線」の冷却曲線(強制冷却)に基づく冷却速度が、「破線」の冷却曲線(自然冷却)に基づく冷却速度に比べて、約2.2倍(=約2200÷約1000)大きいことが分かる程度である。
以上のことから、当初明細書等には、「当該プラズマが当該プラズマ温度制御部を通過する間に当該プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する冷却速度を以て冷却して、」については記載されておらず、また、当初明細書等より自明とすることもできない。

「【参考図2】


(エ) したがって、上記補正事項3を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでない。

(オ) むすび

よって、本件補正は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

イ 独立特許要件について

ここで、仮に、本件補正が請求項の限定的減縮を目的とするものとした場合、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明1」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる、独立特許要件)を満足するか否かについて、以下に検討する。

(ア) 本件補正発明1について

本件補正発明1は、本件補正により補正された特許請求の範囲及び平成26年3月3日付けで提出された手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりであると認められる。

「プラズマを生成するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室で生成されたプラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部と、
前記プラズマ生成室で生成されその後前記プラズマ温度制御部によって温度制御されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処理室と、を備え、
前記プラズマ温度制御部は、プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、当該プラズマが当該プラズマ温度制御部を通過する間に当該プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する冷却速度を以て冷却して、最終的に前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性線を以て冷却するように形成されており、
前記被処理物は、イオン、励起種、原子、分子、液体、ミスト(霧)、気体状の物質の単独若しくは複数の状態にあることを特徴とする、プラズマ処理装置。」

(イ) 引用例の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭52-11176号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 「2.特許請求の範囲
放電により活性化ガスを作る装置と、その活性化ガスの温度を希望の値に調整する装置と、その活性化ガスと温度平衡になる如く試料が配置される反応室とから成ることを特徴とする活性化ガス反応装置。」(第1頁左下欄第4?9行)

b 「本発明はマイクロ波放電によって発生したフリーラジカル(活性化原子)の関与する化学反応装置に係り、被反応物を調整して冷却又は加熱することにより希望の反応を効果的に起させ副作用を排除することを可能ならしめた反応装置に関する。」(第1頁左下欄第11?15行)

c 「近時マイクロ波放電による活性化度の高い活性化ガスが得られるようになると、反応(速度がいちゞるしく速くなり、その際に発生する反応熱(正又は負)が無視出来なくなって来た。このため”低温反応”という特徴が全く失われる結果となって来た。以上のことを換言すれば、マイクロ波プラズマをガス活性化に利用する端緒が開かれて以来、従来技術の範囲では考えられなかった全く新しい困難が発生して来たのである。
”低温反応”が高温反応になったことによって起る大きい困難は2つあり1つは副反応の発生他の1つは反応速度の低下である。我々の経験によればマイクロ波電力300W、平均圧力4torr、流速2×10^(3)cm/秒の酸素を基体とした活性化ガス流中に紙、米粒等を置くと数秒以内に発火する。又銅片を入れると表面は1秒程度で黒色のCuOでカバーされ更に暗赤色に加熱される。このような加熱状態で、もし活性ガス中に不純物が存在すれば好ましからざる副次反応の起る可能性は充分にある。
次に鉛を被処理物として上記活性ガス流中に入れた場合その表面を観察すると、数秒以内に黄→褐→赤→銀白という色変化をたどった後熔融する。」(第1頁右下欄第15行?第2頁左上欄第17行)

d 「低温(室温以下)かつ大量(反応熱により被反応物の温度が室温以上に上昇する程度以上)の活性ガスが関与するような反応において目的の反応のみを効果的に進行させることを可能ならしめるのが本発明である。」(第2頁左下欄第8?12行)

e 「次に本発明の一実施例を図面により説明する。本発明の概略を第2図に示す。原料ガス例えば酸素は導入口(1)より入り活性化室(2)で活性化され、熱交換器(3)で適温に調整された後反応室(4)において被反応体(5)と反応し排出口(6)を経て排気ポンプで排出される。
本発明の主要部は熱交換器(3)を設けて活性化ガスの温度を適値に保つ所にある。これを支える技術的内容は次の通りである。・・・3.反応場所における温度調節法として(特に冷却の場合)活性ガス自身による(冷却)が最も効果的である。・・・前記ガス活性化室(2)の囲りには、マイクロ波キヤビテイ(9)が設けられ、ここへはマイクロ波電力(10)が入力される。熱交換器(3)等は断熱材(11)で保温或いは保冷されている。又、反応室(4)内の試料(5)は台(12)上に載置されている。」(第2頁右下欄第13行?第3頁左上欄第3行)

f「

」(第2図)

(ウ) 引用発明の認定

摘示事項a、e及びfの開示によれば、引用例には、「原料ガスが活性化される活性化室(2)と、活性化された前記原料ガスが適温に調整される熱交換器(3)と、活性化室(2)で活性化されその後熱交換器(3)によって適温に調整された活性化ガスを被反応体(5)と反応させる反応室(4)と、を備え、前記熱交換器(3)は断熱材(11)で保温或いは保冷し、熱媒体を流すことによって前記活性化室(2)で活性化された活性化ガスを適温に調整する活性化ガス反応装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(エ) 対比・判断

本願発明1と引用発明とを対比すると、

a 引用発明の「被反応体(5)」は、本願発明1の「被処理物」に相当する。

b 上記摘示事項a、b、e、fによれば、活性化室(2)の囲りに設けられたマイクロ波キヤビテイ(9)にマイクロ波電力(10)が入力され、マイクロ波放電により活性化室(2)に導入された前記原料ガスが活性化され活性化ガスとなり、そこには、プラズマの一種であるフリーラジカル(活性化原子)が発生していることから、引用発明の「原料ガスが活性化される活性化室(2)」、「活性化ガス」は、それぞれ、本願発明1の「プラズマを生成するプラズマ生成室」、「プラズマ」に相当する。

c また、上記摘示事項a、b、e、fによれば、活性化ガスの温度を希望の値に調整する装置として、断熱材(11)で保温或いは保冷し、熱媒体が流される熱交換器(3)が記載されていることから、引用発明の「活性化された前記原料ガスが適温に調整される熱交換器(3)」は、本願発明1の「プラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部」に相当する。

d また、上記摘示事項a、b、e、fによれば、活性化室(2)で活性化されその後熱交換器(3)によって適温に調整された活性化ガスを利用して、被反応体(5)と反応させる反応室(4)が記載されていることから、引用発明の「活性化室(2)で活性化されその後熱交換器(3)によって適温に調整された活性化ガスを被反応体(5)と反応させる反応室(4)」は、本願発明1の「プラズマ生成室で生成されその後前記プラズマ温度制御部によって温度制御されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処理室」に相当する。

e さらに、引用発明の「活性化ガス反応装置」は、本願発明1の「プラズマ処理装置」に相当する。

以上をまとめると、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

[一致点]

「プラズマを生成するプラズマ生成室と、
プラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部と、
プラズマ生成室で生成されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処理室と、を備えるプラズマ処理装置。」

[相違点1]

プラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部について、本願発明1は、「プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、当該プラズマが当該プラズマ温度制御部を通過する間に当該プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する冷却速度を以て冷却して、最終的に前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性線を以て冷却するように形成されており、」であるのに対して、引用発明は、「前記熱交換器(3)は断熱材(11)で保温或いは保冷し、熱媒体を流すことによって前記活性化室(2)で活性化された活性化ガスを適温に調整する」である点。

[相違点2]

被処理物について、本願発明1は、「イオン、励起種、原子、分子、液体、ミスト(霧)、気体状の物質の単独若しくは複数の状態にあること」であるのに対して、引用発明は、特に規定していない点。

上記相違点について検討する。

[相違点1]について

引用例には、上記摘示事項eによれば、「反応場所における温度調節法として(特に冷却の場合)活性ガス(当審注:「活性化ガス」の誤記と認められる。)自身による(冷却)が最も効果的である。」と記載されていることから、引用発明は、熱交換器(3)に流される「熱媒体」として「冷媒」を使用し、断熱材(11)で保冷することによって、該熱交換器(3)を通過する該活性化ガスを冷却する態様を含んでいることになり、また、冷媒を使用し断熱材(11)で保冷された該熱交換器(3)を通過する該活性化ガスが自然冷却より短時間に冷却されることは、当然の事項であることから、引用発明の熱交換器(3)も、該活性化ガスの温度を被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却しているといえ、さらに、プラズマを所定の温度に冷却する際、冷却速度を何らかの「冷却特性線」により、例えば「プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する」ように設定することは、当業者にとっては適宜試行錯誤を通じて最適化を図ったものに過ぎない。
なお、本願明細書を参照する限り、「1/3以下」に関し、該数値に臨界的意義が認められず、また、「冷却特性線」に関する顕著な効果については何ら触れられていない。

[相違点2]について

一般に、低温のプラズマを利用した処理装置における被処理物として、「気体状の物質の単独若しくは複数の状態にある」ものを対象とすることについては、例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-336653号公報(【0031】・・・触媒物質を特定したことで、低温プラズマにより発生する種々の活性種が空気浄化などの被処理流体の処理を行う際に有効に利用され、・・・)や、同じく本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-336653号公報(【0007】・・・を含有する被処理気体を、無声放電による低温プラズマで処理し、・・・)に記載されているように、本願出願前より広く行われていることに過ぎないので、引用発明におけるプラズマ処理における被処理物を「イオン、励起種、分子、液体、ミスト(霧)、気体状の物質の単独若しくは複数の状態」のものとして用いる程度のことも当業者にとっては容易になし得ることに過ぎない。

したがって、上記周知技術を引用発明に適用して[相違点2]に係る発明特定事項とすることは、当業者にとっては何らの困難性も認められない。

そして、本願発明1による上記[相違点1][相違点2]に係る効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得たものであって、格別のものとはいえない。

(オ) 小括

よって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(カ) まとめ

したがって、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3) 結語

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、また、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定にも違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記のとおり平成26年3月3日付けの手続補正は却下されたので、本願発明は、平成25年2月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。

「プラズマを生成するプラズマ生成室と、
プラズマの温度を制御するプラズマ温度制御部と、
プラズマ生成室で生成されたプラズマを利用して被処理物を処理するプラズマ処処理室と、を備え、
前記プラズマ温度制御部は、プラズマ冷却部であり、前記プラズマ生成室において生成された前記プラズマの温度を、前記被処理物を処理する所定温度まで自然冷却より短時間に冷却する冷却特性を以て冷却するように形成されており、
前記被処理物は、イオン、励起種、原子、分子、液体、ミスト(霧)、気体状の物質の単独若しくは複数の状態にあることを特徴とする、プラズマ処理装置。」

2 引用発明と周知技術

原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項並びに周知技術については、上記「第2 平成26年3月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「(2) 本件補正についての検討」の項中の「イ 独立特許要件について」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記「第2 平成26年3月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「(2) 本件補正についての検討」の項中の「イ 独立特許要件について」の項中の「(エ) 対比・判断」で検討した本件補正発明1から、[相違点1]に係る「プラズマの冷却期間を自然冷却の場合に比べて1/3以下に短縮する冷却速度」、[相違点2]に係る「冷却特性線」との限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明1が前記「第2 平成26年3月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「(2) 本件補正についての検討」の項中の「イ 独立特許要件について」の項中の「(エ) 対比・判断」に記載したとおり、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その上位概念の発明である本願発明も、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-26 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2007-253796(P2007-253796)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三崎 仁平塚 政宏  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 國島 明弘
日比野 隆治
発明の名称 プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法  
代理人 伊藤 高英  
代理人 大倉 奈緒子  
代理人 玉利 房枝  
代理人 中尾 俊輔  

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