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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1301392
審判番号 不服2014-4594  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-10 
確定日 2015-05-28 
事件の表示 特願2008-333927号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年7月15日出願公開、特開2010-154905号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成20年12月26日の出願であって、平成25年2月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月1日に意見書及び手続補正書が提出されところ、同年12月3日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年12月10日)、それに対し、平成26年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成26年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年3月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成25年5月1日に提出された手続補正書における
「特別情報を表示する表示手段と、
遊技者により記憶操作が実行されたことを特定する記憶操作特定手段と、
遊技者により前記特別情報とは異なる付加情報を入力操作可能とする付加入力操作手段と、
前記記憶操作特定手段により前記記憶操作の実行が特定されたことに基づいて、前記表示手段にて表示されている特別情報に対応した情報を態様情報として態様情報記憶手段に記憶させる記憶実行手段と、
前記付加入力操作手段により前記付加情報の入力操作がされたことに基づいて、前記付加情報に対応した情報を前記態様情報記憶手段に記憶させる付加実行手段と、
前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報を前記表示手段に出力する情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。」
から、審判請求時に提出された手続補正書における
「特別情報を表示する表示手段と、
遊技者により記憶操作が実行されたことを特定する記憶操作特定手段と、
遊技者により前記特別情報とは異なる付加情報を入力操作可能とする付加入力操作手段と、
前記記憶操作特定手段により前記記憶操作の実行が特定されたことに基づいて、前記表示手段にて表示されている特別情報に対応した情報を態様情報として態様情報記憶手段に記憶させる記憶実行手段と、
前記付加入力操作手段により前記付加情報の入力操作がされたことに基づいて、前記付加情報に対応した情報を前記態様情報記憶手段に記憶させる付加実行手段と、
前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報からURLを作成する手段と、
前記URLを携帯端末によって読み取り可能なコードに変換して表示出力する手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である情報の出力に関して、「前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報を前記表示手段に出力する情報出力手段」とあったものを「前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報からURLを作成する手段と、前記URLを携帯端末によって読み取り可能なコードに変換して表示出力する手段」と限定することを含むものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-345901号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。
ア 「【背景技術】
【0002】
遊技機の一種として表示装置を備えたパチンコ機等がある。このようなパチンコ機においては、例えば、作動口に遊技球が入球することを契機として各種遊技状態を決定する抽選が行われ、かかる抽選の結果に基づいて、複数種類用意されている変動パターンのうちいずれかを選択し、当該選択された変動パターンに基づいて表示装置の表示部において図柄の変動表示が行われる。
【0003】
このような遊技機にあっては、遊技者の興趣を向上させるべく、各種遊技状態に応じて様々な表示演出が行われる。特に、表示部として液晶表示部等が採用されるようになってきたことから、昨今では当該表示部を用いたより多彩な表示演出が可能となってきており、かかる表示演出は、遊技機の分野において大当たり等への期待感を抱かせるという点において重要な役割を担っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003-154110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抽選の結果に基づいて随時行われる表示演出については、遊技者が前もってどのような表示演出が行われるかを予測できないことから、遊技者が見たかった表示部における表示演出を見逃してしまうといった事態が往々にして起こり得る。さらに、表示演出を落ち着いた状況下で観賞したいといったニーズもあるのも事実である。なお、上述した課題は、パチンコ機に限られるものではなく、スロットマシン等の他の遊技機にも該当する問題である。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、表示演出を堪能することのできる遊技機を提供することを目的としている。」

イ 「【0072】
可変表示装置ユニット35には、第2契機対応口34の通過をトリガとして普通図柄を変動表示する普通図柄表示装置41と、第1契機対応口33への入賞をトリガとしてLEDを色換え表示(変動表示)する識別情報表示装置としての特別表示装置43と、特別表示装置43による変動表示に合わせて装飾図柄を変動表示する可変表示装置としての装飾図柄表示装置42とが設けられている。」

ウ 「【0131】
ビデオRAM524は、装飾図柄表示装置42に表示される表示データを記憶するメモリであり、このビデオRAM524の内容を書き替えることにより、装飾図柄表示装置42の表示内容が変更される。キャラクタROM525は、装飾図柄表示装置42に表示される図柄などのキャラクタデータを記憶するメモリである。画像コントローラ526は、CPU521、ビデオRAM524、出力ポート529のそれぞれのタイミングを調整してデータの読み書きに介在すると共に、ビデオRAM524に記憶される表示データを所定のタイミングで読み出して装飾図柄表示装置42に表示させるものである。本実施形態では、プログラムROM522及びキャラクタROM525が表示データ記憶手段(再表示データ記憶手段)に相当する。」

エ 「【0244】
ステップS1601で肯定判定された場合には、ステップS1602において変動停止フラグをリセットした後、ステップS1603において、変動表示中にプレミアムリーチが導出されるか否かを判別する。具体的には、ワークRAM523に記憶されたコード情報のうち、変動パターンコマンドに対応する値が「15」又は「16」であるか否かを判
別する。ここで肯定判定された場合には、ステップS1604で、ワークRAM523に設けられた一次記憶手段としての仮記憶エリアに該コード情報(画像情報)を記憶する。尚、上述したことではあるが、コード情報(画像情報)とは、変動パターンコマンド及び停止図柄からなる表示データを特定する情報群である。また、本実施形態では、仮記憶エリアに記憶できるコード情報の数は1つであり、仮記憶エリアに既にコード情報が記憶されている状態であるときに、新たにコード情報を記憶する場合には、当該新たなコード情報を上書きする。
【0245】
その後、ステップS1605において、後述する記憶期間カウンタPをリセットする。なお、該記憶期間カウンタPは、コード情報が仮記憶エリアに記憶された後の装飾図柄の変動表示回数をカウントするためのものである。さらに、ステップS1606において、前面枠セット14に設けられた変動記憶ボタン422(図1参照)を点灯状態としてから(変動記憶ボタン422に内蔵された発光手段を点灯させてから)本処理を終了する。また、上記ステップS1601又はステップS1603において否定判定された場合には、そのまま本処理を終了する。
【0246】
ステップS1403の本記憶処理について図26を参照しつつ説明する。
【0247】
まず、ステップS1701では、仮記憶エリアにコード情報が格納されているか否かを判別する。当該ステップS1701で肯定判定された場合には、ステップS1702に進み、変動記憶ボタン422の操作があるか否かを判別する。ステップS1702で肯定判定された場合にはステップS1703に進む。
【0248】
ステップS1703では、ワークRAM523に設けられた画像情報記憶手段としての本記憶エリアに対して、仮記憶エリアに記憶されているコード情報を記憶する。それから、ステップS1704に進み、仮記憶エリアに記憶されているコード情報を消去する。その後、ステップS1705において、変動記憶ボタン422を消灯状態とするとともに、前面枠セット14に設けられた再表示ボタン423(図1参照)を点灯状態とした後(再表示ボタン423に内蔵された発光手段を点灯させた後)、本処理を終了する。また、上記ステップS1701又はステップS1702で否定判定された場合には本処理を終了する。なお、本実施形態では、本記憶エリアに記憶できるコード情報の数は1つであり、本記憶エリアに既にコード情報が記憶されている状態であるときに、仮記憶エリアに記憶されている新たなコード情報を本記憶エリアに記憶する場合には、当該新たなコード情報を上書きする。
【0249】
続いて、ステップS1404の導出処理について、図27を参照しつつ説明する。
【0250】
まず、ステップS1801では、装飾図柄表示装置42において再表示中であるか否かを判別する。ここで否定判定された場合、ステップS1802において、本記憶エリアにコード情報が格納されているか否かを判別する。ステップS1802で肯定判定された場合、ステップS1803に進み、再表示ボタン423の操作があるか否かを判別する。ステップS1803で肯定判定された場合、ステップS1804に進み、変動表示中又は大当たり中であるか否かを判別する。当該ステップS1804で否定判定された場合、ステップS1805において、保留があるか否か(始動保留球数N≠0であるか否か)を判別する。
【0251】
ステップS1804及びステップS1805でともに否定判定された場合(例えば、いわゆるデモ画面表示中である場合)にはステップS1806に進み、再表示実行処理を行う。再表示実行処理においては、本記憶エリアに記憶されているコード情報に対応する表示データを、プログラムROM522及びキャラクタROM525から抽出し、当該抽出した表示データに基づいて装飾図柄表示装置42にて表示する表示画像(再表示画像)を生成する。つまり、装飾図柄表示装置42において既に表示された表示画像と同じ表示画像を生成するわけである。そして、コード情報に基づいて決定した表示画像を装飾図柄表示装置42において表示することで、装飾図柄表示装置42において既に表示された変動表示と同様の変動表示が装飾図柄表示装置42にて再度表示(再表示)される。」

オ 「【0309】
(r)上記実施形態では特に言及しなかったが、再表示においては、例えば対象とされた基表示画像が表示された日時等を付加表示してもよい。この場合、例えば、遊技者がカメラ付携帯電話等で当該再表示画像を撮影して後で見かえすときに、当該撮影した表示画像がいつの表示画像なのかを認識することができる。また、遊技者が、自分の名前(イニシャル)等を入力可能に構成し、当該入力した名前等が再表示中に表示されるよう構成してもよい。この場合の再表示画像を撮影することで、自分が写したものであるといった証明になる。」

上記ア?オの記載、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「特別表示装置43による変動表示に合わせて表示データ(装飾図柄を含む)を変動表示する可変表示装置としての装飾図柄表示装置42と、
変動記憶ボタン422の操作があるか否かを判別し、
遊技者が、自分の名前(イニシャル)を入力可能に構成し、
変動記憶ボタン422の操作があった場合、ワークRAM523に設けられた画像情報記憶手段としての本記憶エリアに対して、変動パターンコマンド及び停止図柄からなる、装飾図柄表示装置42に表示される表示データ(装飾図柄を含む)を特定する情報群であるコード情報を記憶し、
コード情報に基づいて決定した表示画像を装飾図柄表示装置42における再表示中に、入力された名前(イニシャル)を付加表示するように構成し、
名前(イニシャル)が付加表示された、コード情報に基づいて決定した表示画像である再表示画像をカメラ付携帯電話等で撮影する遊技機。」

(2)対比
刊行物発明と本願補正発明とを対比する(以下、刊行物発明、本願補正発明を、それぞれ「前者」、「後者」と、「前者」と「後者」をまとめて「両者」という。)。
ア 前者における「特別表示装置43による変動表示に合わせて表示データ(装飾図柄を含む)を変動表示する可変表示装置としての装飾図柄表示装置42」と、後者における「特別情報を表示する表示手段」とを対比する。
後者における「特別情報」に関して、発明の詳細な説明に、「特徴1.特別情報を表示する表示手段(図柄表示装置41)」(【0351】)こと、「前記副制御手段は、演出の内容を決定するために用いる演出情報を決定する演出決定手段(音声ランプ制御装置82による変動開始用処理におけるステップS1202?1207)を備えるとともに、前記特別情報の表示として、前記演出情報及び前記結果情報の組み合わせに対応付けられた特別演出を実行するよう前記演出実行手段を制御するものであり、」(【0374】)こと、「特徴8によれば、主制御手段により出力される結果情報と、副制御手段により決定される演出情報との組み合わせに対応付けられて特別演出が実行される。」(【0375】)ことが記載されている。これらの記載からみて、後者において、「特別情報」の表示は、演出情報と結果情報の組み合わせに対応付けられた特別演出として実行されるものである。
一方、前者における「装飾図柄」に関して、発明の詳細な説明には、「変動パターンコマンドには、ノーマルリーチ、スーパーリーチ、プレミアムリーチといった装飾図柄の変動種別を特定する情報が含まれている。本実施形態では、例えば「FF10」,「FF11」,「FF12」,「FF13」,「FF14」,「FF15」,「FF16」のうちのいずれかが変動パターンコマンドとして設定される。一方、表示制御装置45には、これらの変動パターンコマンドと装飾図柄の変動種別との関係がテーブルで記憶されている。そして、表示制御装置45は、変動パターンコマンドに対応する演出パターンを表示する。以下、装飾図柄の変動種別及び、該変動種別と変動パターンコマンドとの対応関係について説明する。」(【0172】)ことが記載され、「次に、表示制御装置45の処理について説明する。変動パターンコマンド、図柄コマンド、決定コマンド等を入力した表示制御装置45は、かかる各種コマンドに基づいて、装飾図柄表示装置42の表示態様を決定し、該表示態様を装飾図柄表示装置42において表示するようになっている。具体的には、変動パターンコマンドに基づいて装飾図柄の変動表示を所定時間行う。そして、図柄コマンドに基づき停止図柄を決定して、表示する。なお、特別表示装置43の決定表示後、上述したように決定コマンドが表示制御装置45へ送信されるが、この決定コマンドは主となる特別表示装置43と補助的な装飾図柄表示装置42との完全な同期を目的とするものである。つまり、完全な同期を図るという上では上記のように決定コマンドを送信する構成が望ましいが、主制御装置261と表示制御装置45との両方で変動時間を把握する構成であれば、決定コマンドを送信しない構成としてもよい。」(【0220】)ことが記載されている。これらの記載からみて、前者において、「装飾図柄」の変動表示は、表示態様、及び、装飾図柄の変動種別に応じて所定時間実行されるものである。
さらに、請求人は、審判請求書において、「本願発明では、・・・、特別情報(引用文献1の表示データや引用文献2の特別図柄表示器に表示された画像に相当)・・・」(第3ページ第16?17行を参照。)と主張している。
これらのことを総合勘案すると、前者における「表示データ(装飾図柄を含む)」は、後者における「特別情報」に相当する。
同様にして、前者における「装飾図柄表示装置42」は、後者における「特別情報を表示する表示手段」に相当する。

イ 前者における「変動記憶ボタン422の操作があるか否かを判別」することは、その構成及び機能からみて、後者における「遊技者により記憶操作が実行されたことを特定する記憶操作特定手段」を有することに相当する。

ウ 前者における「遊技者が、自分の名前(イニシャル)を入力可能に構成」することと、後者における「遊技者により特別情報とは異なる付加情報を入力操作可能とする付加入力操作手段」を有することとを対比する。
前者における「自分の名前(イニシャル)」は、表示データ(装飾図柄)とは異なるものであり、付加的に表示されるものであるから、後者における「特別情報とは異なる付加情報」に相当する。
そして、前者において、遊技機が名前(イニシャル)を入力するための何らかの操作手段を具備することは、当業者に自明である。
したがって、前者における「遊技者が、自分の名前(イニシャル)を入力可能に構成」することは、後者における「遊技者により特別情報とは異なる付加情報を入力操作可能とする付加入力操作手段」を有することに相当する。

エ 前者における「変動記憶ボタン422の操作があった場合、ワークRAM523に設けられた画像情報記憶手段としての本記憶エリアに対して、変動パターンコマンド及び停止図柄からなる、装飾図柄表示装置42に表示される表示データ(装飾図柄を含む)を特定する情報群であるコード情報を記憶」することと、後者における「記憶操作特定手段により記憶操作の実行が特定されたことに基づいて、表示手段にて表示されている特別情報に対応した情報を態様情報として態様情報記憶手段に記憶させる記憶実行手段」とを対比する。
前者における「表示データ(装飾図柄を含む)」、「装飾図柄表示装置42」は、上記アにおいて検討したように、それぞれ、後者における「特別情報」、「特別情報を表示する表示手段」に相当する
そして、前者における「表示データを特定する情報群であるコード情報」は、後者における「特別情報に対応した情報」である「態様情報」に相当する。
したがって、前者における「変動記憶ボタン422の操作があった場合、ワークRAM523に設けられた画像情報記憶手段としての本記憶エリアに対して、変動パターンコマンド及び停止図柄からなる、装飾図柄表示装置42に表示される、装飾図柄としての表示データを特定する情報群であるコード情報を記憶」することは、後者における「記憶操作特定手段により記憶操作の実行が特定されたことに基づいて、表示手段にて表示されている特別情報に対応した情報を態様情報として態様情報記憶手段に記憶させる記憶実行手段」に相当する。

オ 前者における「コード情報に基づいて決定した表示画像を装飾図柄表示装置42における再表示中に、入力された名前(イニシャル)を付加表示するように構成」することと、後者における「付加入力操作手段により付加情報の入力操作がされたことに基づいて、付加情報に対応した情報を態様情報記憶手段に記憶させる付加実行手段」を有することとを対比する。
上記ウにおいて検討したように、前者における「自分の名前(イニシャル)」は、後者における「付加情報」に相当し、両者は、「付加入力操作手段」を具備するものである。
そして、前者において、表示画像の再表示中に、名前(イニシャル)を付加表示するために、名前(イニシャル)情報を予め所定の記憶装置に記憶させておくことは、当業者にとって自明である。
そうすると、両者は、「付加入力操作手段により付加情報の入力操作がされたことに基づいて、付加情報に対応した情報を記憶手段に記憶させる付加実行手段」を有することで共通する。

カ 前者における「名前(イニシャル)が付加表示された、コード情報に基づいて決定した表示画像である再表示画像をカメラ付携帯電話等で撮影する」ことと、後者における「態様情報記憶手段に記憶されている態様情報に対応した情報及び付加情報に対応した情報からURLを作成する手段と、URLを携帯端末によって読み取り可能なコードに変換して表示出力する手段」を有するととを対比する。
前者において、「名前(イニシャル)」情報、及び、「コード情報に基づいて決定した表示画像」は、装飾図柄表示装置42に表示出力されるものである。
そして、後者において、URLは、態様情報記憶手段に記憶されている態様情報に対応した情報、及び、付加情報に対応した情報から作成されるものである。
したがって、両者は、「態様情報記憶手段に記憶されている態様情報に対応した情報、及び、付加情報に対応した情報とを表示出力する手段」を有することで共通する。

上記ア?カから、本願補正発明と刊行物発明とは、
「特別情報を表示する表示手段と、
遊技者により記憶操作が実行されたことを特定する記憶操作特定手段と、
遊技者により前記特別情報とは異なる付加情報を入力操作可能とする付加入力操作手段と、
前記記憶操作特定手段により前記記憶操作の実行が特定されたことに基づいて、前記表示手段にて表示されている特別情報に対応した情報を態様情報として態様情報記憶手段に記憶させる記憶実行手段と、
前記付加入力操作手段により前記付加情報の入力操作がされたことに基づいて、前記付加情報に対応した情報を記憶手段に記憶させる付加実行手段と、
前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報、及び、前記付加情報に対応した情報とを表示出力する手段と、
を備えた遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
付加情報に対応した情報を記憶させる記憶手段に関して、
本願補正発明は、特別情報に対応した情報を記憶させる態様情報記憶手段であるのに対して、
刊行物発明は、特別情報に対応した情報を記憶させる態様情報記憶手段であるか否か不明である点。

[相違点2]
態様情報記憶手段に記憶されている態様情報に対応した情報、及び、付加情報に対応した情報とを表示出力する手段に関して、
本願補正発明は、態様情報記憶手段に記憶されている態様情報に対応した情報及び付加情報に対応した情報からURLを作成する手段と、URLを携帯端末によって読み取り可能なコードに変換して表示出力する手段を有するのに対して、
刊行物発明は、名前(イニシャル)が付加表示された、コード情報に基づいて決定した表示画像である再表示画像をカメラ付携帯電話等で撮影するが、本願補正発明の上記構成を備えない点。

(3)当審の判断
ア 上記相違点1について検討する。
刊行物発明は、変動パターンコマンド及び停止図柄からなる表示データを特定する情報群であるコード情報をワークRAM523に設けられた画像情報記憶手段としての本記憶エリアに記憶するものである。
そして、刊行物発明は、コード情報に基づいて決定した表示画像の再表示に関連させて、入力された名前等を付加表示するものである。
そして、情報処理や遊技機の技術分野において、関連する複数の情報を共通の記憶手段に記憶させることは、当業者が必要に応じてなし得た程度のものである。
これらのことからみて、刊行物発明において、入力された名前等の情報を、コード情報と同様に、ワークRAM523に設けられた画像情報記憶手段としての本記憶エリアに記憶させることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 上記相違点2について検討する。
情報処理や、遊技機の技術分野において、複数の情報からURLを作成し、作成されたURLを用いてこれらの情報を取得可能とすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2004-240564号公報の【0021】には、付加情報を貼り付けた地図情報からURLを作成することが記載され、特開2008-191714号公報の【0053】?【0057】には、付加情報及び画像特定情報にアクセスするURLを生成することが記載され、特開2007-54555号公報の【0125】?【0127】には、主人公キャラと相手キャラとの組合せ情報から、物語のWebページを閲覧することが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。
さらに、遊技機の技術分野において、URLを携帯端末によって読み取り可能なコードに変換して表示装置に表示出力し、表示出力されたURLを用いて必要な情報を取得することは、本願出願前に周知の技術事項である(特開2004-357974号公報の【0102】には、携帯電話にサイトアドレスを入力できるように、サイトアドレスがシンボル化された2次元バーコードの画像を表示出力することが記載され、特開2006-68242号公報の【0097】には、「携帯電話端末Kを使用して2次元コードを撮像してURLをアクセス」することが記載され、上記特開2007-54555号公報【0125】?【0127】には、携帯端末機204により、表示された二次元コードパターン205に含まれるURL情報に基づいてWebページを閲覧することが記載されている。以下「周知の技術事項2」という。)。
そして、刊行物発明は、名前等の情報が付加表示された、コード情報に基づいて決定した表示画像である再表示画像をカメラ付携帯電話等で撮影するもの、すなわち、態様情報に対応した情報、及び、付加情報に対応した情報とを携帯電話を利用して取得するものである。
したがって、刊行物発明において、態様情報に対応した情報、及び、付加情報に対応した情報とを携帯電話を利用して取得するに際して、上記周知の技術事項1及び2を適用して、複数の情報から作成されたURL情報を作成すると共に、作成されたURLを携帯電話を用いて読み取ることにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 効果について
本願補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明、及び、周知の技術事項1及び2から予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。

エ 小括
上記アからウにおいて検討したように、本願補正発明は、当業者が刊行物発明、及び、周知の技術事項1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本願補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「特別情報を表示する表示手段と、
遊技者により記憶操作が実行されたことを特定する記憶操作特定手段と、
遊技者により前記特別情報とは異なる付加情報を入力操作可能とする付加入力操作手段と、
前記記憶操作特定手段により前記記憶操作の実行が特定されたことに基づいて、前記表示手段にて表示されている特別情報に対応した情報を態様情報として態様情報記憶手段に記憶させる記憶実行手段と、
前記付加入力操作手段により前記付加情報の入力操作がされたことに基づいて、前記付加情報に対応した情報を前記態様情報記憶手段に記憶させる付加実行手段と、
前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報を前記表示手段に出力する情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物
刊行物及びその記載事項、刊行物発明は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」において検討した本願補正発明から、「前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報からURLを作成する手段と、前記URLを携帯端末によって読み取り可能なコードに変換して表示出力する手段」とあったものを「前記態様情報記憶手段に記憶されている前記態様情報に対応した情報及び前記付加情報に対応した情報を前記表示手段に出力する情報出力手段」とその限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2」に記載したとおり、当業者が刊行物発明、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が刊行物発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-24 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-13 
出願番号 特願2008-333927(P2008-333927)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 村松 貴士
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 山田 強  

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