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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1301397 |
審判番号 | 不服2014-9966 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-28 |
確定日 | 2015-05-28 |
事件の表示 | 特願2009-242312「ディスク再生装置及びディスク再生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 6日出願公開、特開2011- 90729〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成21年10月21日の出願であって、平成25年10月11日付け拒絶理由通知に対して、同年12月24日付けで意見書を提出するとともに手続補正がなされたが、平成26年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月28日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がされたが、当審における平成27年1月6日付け拒絶理由通知に対して、同年3月3日付けで意見書を提出するとともに手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成27年3月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくともプリストップ機能に対応していないタイトル情報を記憶しているディスクから信号を読み取り、読み取った信号をデコードして再生するディスク再生装置であって、 ユーザによって指示され、少なくとも前記再生をさせるためのプレイキー及び前記再生を完全に停止させるためのストップキーを有する操作手段と、 表示手段と、 前記ディスクに記憶されている信号に応じた出力映像信号を生成する映像処理手段と、 前記ディスクに記憶されている信号に応じた出力音声信号を生成する音声処理手段と、 前記操作手段を介して前記ディスクに対する指示信号に応じて前記ディスクの制御を行う制御手段と、 を有し、 前記制御手段は、前記ディスクが再生されている状態で、前記操作手段を介して、1回目のストップキーの信号を受信したとき、前記映像処理手段及び音声処理手段による映像及び音声の再生を完全に停止させるのではなく、一時的に停止させてポーズ状態に遷移させると共に、 前記映像処理手段に対し、前記表示手段の画面に表示されているポーズ画面に黒画又はブルーバックの画像を重ねて表示させて擬似プリストップ状態とし、 前記疑似プリストップ状態では、ストップキー又はプレイキーのみ受け付け、それ以外のキーが押された場合には、指示を受け付けずに前記表示手段の画面に指示を受け付けない旨の禁止表示を重ねて表示させる ことを特徴とするディスク再生装置。」 3.各引用例の記載 (1)引用例1 当審の平成27年1月6日付けの拒絶の理由に引用した特開2009-232123号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審が付した。以下同様。) ア「【0004】 従来、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体やFM/AM、TV等複数のソースから選択された信号に基づいて映像や音響のコンテンツを再生する機能を備える装置には、CDやDVD等を再生中に入力ソースを他に変更した際等に、CDやDVDの再生位置(ソース切り替え前の停止位置)を記憶し、次回再生時に前回再生を停止した位置から再生を再開する、所謂レジューム再生機能が備えられていることが一般的である。レジューム再生機能は、CDやDVD等の再生装置の普及を通じて、ユーザにとって一般的な機能となっており、ユーザは、一般的な再生装置においては、この機能が自動的に働くことを期待する。 【0005】 ここで、例えばBlu-ray Disc(登録商標。以下、「BD」と称する)等、同種のコンテンツ(例えば、映像コンテンツ)であっても、再生における制御の方式が異なるコンテンツが提供される媒体がある。より具体的には、BDでは、コンテンツの制御方式として、従来DVDにおいて用いられている方式を拡張したHDMV(High Definition Movie)、またはJava(登録商標)プログラムを使用するBD-J(Blu-ray Disc Java)の制御方式が用いられる。そして、HDMVコンテンツに関しては、制御方式が従来のDVDの拡張であるために、再生途中のコンテンツの識別子等を記憶しておくことで、DVDで提供されるものと同様のレジューム再生機能を容易に提供することが可能である。 【0006】 しかし、BD-Jコンテンツに関しては、制御方式が従来のDVDと異なり、BDから読み出されたJavaプログラムを実行することで制御する方式であるために、従来DVDで提供される方式と同様の方式でレジューム再生機能を提供することは容易でない。より具体的には、BD-JはJavaプログラムを実行する制御方式であるために、一旦プログラムを終了してしまうと次回再生時にはプログラムを先頭から実行する必要がある。このため、BD-Jコンテンツの再生においては、従来のDVD再生装置において提供されていたレジューム再生機能のように、記録媒体からの情報の読み出しを行うフロントエンド(F/E)とデコード等を行うバックエンド(B/E)との双方を停止させる方法でレジューム再生機能を提供することが出来ない。 【0007】 本発明は、上記した問題に鑑み、記録媒体から読み出されたプログラムを用いて該記録媒体から読み出されたコンテンツの再生を制御する装置において、所謂レジューム再生機能を提供することを課題とする。」 イ「【0008】 本発明は、上記した課題を解決するために、コンテンツ制御プログラムの実行領域を保持することで、記録媒体から読み出されたプログラムを用いて該記録媒体から読み出されたコンテンツの再生を制御する装置において、所謂レジューム再生機能を提供することを可能にした。 【0009】 詳細には、本発明は、記憶装置を有し、記録媒体から読み出されたコンテンツを、前記記憶装置を用いて再生するコンテンツ再生装置であって、前記記録媒体からコンテンツおよび該コンテンツを制御するためのコンテンツ制御プログラムを読み出す読出手段と、前記読出手段によって前記記録媒体から読み出された前記コンテンツ制御プログラムを、前記記憶装置に展開して実行することで、前記記録媒体から読み出されたコンテンツの再生を制御するコンテンツ制御手段と、前記コンテンツの再生の停止指示を受け付ける停止指示受付手段と、前記コンテンツの再生中に前記停止指示受付手段によって前記停止指示が受け付けられた場合に、前記記憶装置上の前記コンテンツ制御プログラムの実行領域の内容を実行途中の状態のまま保持する状態保持手段と、を備えるコンテンツ再生装置である。」 ウ「【0019】 図1は、本実施形態に係るコンテンツ再生システムのハードウェア構成の概略を示す図である。本実施形態に係るコンテンツ再生システム1は、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)14、RAM12等に展開された命令及びデータを処理することでシステム全体を制御するCPU(Central Processing Unit)11、RAM12にロードされる各種プログラム等システムによって使用される各種データが記憶されるHDD(Hard Disk Drive)13、デコーダ(Digital Signal Processor)15、デコーダ15から渡されたデジタル信号をアナログ信号へ変換するD/A変換器16、増幅器17、タッチパネルディスプレイ2、スピーカ3、マルチドライブ4、TVチューナ5、AM/FMチューナ6等を有し、これらはバス等を介して電気的に接続されている。 【0020】 マルチドライブ4は、CD、DVD、BD等の複数の規格のディスク(記録媒体)を装填および読み取り可能な光学ディスクドライブである。本実施形態に係るシステムでは、マルチドライブ4に装填されたBD41等のディスクから読み出された情報はデコーダ15へ送られる。デコーダ15は、読み出された情報に基づいて映像信号および音響信号を生成する。そして、デコーダ15によって生成された映像信号および音響信号をタッチパネルディスプレイ2およびスピーカ3へ出力することで、コンテンツ再生システム1は、映像および音響の再生を行う。 【0021】 なお、本実施形態では、ディスクから読み出された情報に基づく映像信号および音響信号は、所謂DSP(Digital Signal Processor)等であるデコーダ15によって生成されるが、デコード処理は、RAM12等に展開されたデコードプログラムを実行するCPU11によって行われてもよい。また、ディスクから読み出された情報に基づく映像信号の処理および音響信号の処理は、一のプロセッサによって処理されてもよいし、夫々異なる専用のプロセッサによって処理されてもよい。 【0022】 タッチパネルディスプレイ2は、本システムにおける、ユーザに対する入出力装置(ユーザインターフェース)であり、CPU11によって制御されることで、ユーザに何らかの情報を通知する画像を表示し、またユーザによる画像表示部分への接触操作を検出することで、ユーザ操作を受け付ける。なお、コンテンツ再生システム1は、タッチパネルディスプレイ2への接触操作の他に、システム1に設けられた各種ボタン等(図示は省略する)によっても、ユーザによる操作を受け付ける。タッチパネルディスプレイ2やボタン等を介して入力された内容はRAM12に記録され、CPU11によって処理される。また、本システムによるユーザへの通知等は、スピーカ3を介して音響出力されてもよい。」 エ「【0033】 ここで、本実施形態に係るコンテンツ再生システム1は、DVD等の再生に際して、再生停止時に再生位置を記憶して次回再生時に記憶された再生位置から再生を開始する、所謂レジューム再生機能を提供する。レジューム再生機能は、BDのHDMVコンテンツに関しても、従来のDVDと同様の方法で提供される。これは、HDMVコンテンツのコンテンツ制御方式が、従来のDVDビデオのコンテンツ制御方式を拡張したものであるために、同様の手法でレジューム再生機能を提供できるためである。 【0034】 しかし、BDに収録されたBD-Jコンテンツに関しては、コンテンツ制御方式が従来方式の拡張ではなく、Javaプログラムを読み出して実行することでコンテンツを制御する方式であるために、従来のDVDと同様の方法でレジューム再生機能を提供することは容易でない。このため、本実施形態に係るコンテンツ再生システム1は、コンテンツ制御プログラムの実行領域を実行途中の状態のまま保持する方法で、レジューム再生機能を提供する。以下、フローチャートを用いて、処理の詳細を説明する。」 オ「【0043】 図6Aは、従来のDVDやHDMVコンテンツにおける、ユーザ操作の内容に応じたバックエンドおよびフロントエンドの動作の内容を示す図である。また、図6Bは、本実施形態のBD-Jコンテンツにおける、ユーザ操作の内容に応じたバックエンドおよびフロントエンドの動作の内容を示す図である。図6Aによれば、従来の手法では、機能モードの切替が指示されると、バックエンドは再生を終了し、再生処理に使用していたメモリを解放していることが分かる。これに対して、本実施形態に係るコンテンツ再生システムによれば、ユーザによって機能モード切替操作が行われた場合に、従来と異なりバックエンドの状態を保持することで、BD-Jコンテンツの再生時にもレジューム再生機能を提供することが可能である。また、本実施形態に係るコンテンツ再生システムは、機能モード切替操作時に、バックエンドを状態保持しつつ、フロントエンドの駆動を終了させる点で特徴を有する。即ち、本実施形態に係るコンテンツ再生システムは、バックエンドの状態保持によってレジューム再生機能の提供を可能にしつつ、更に、フロントエンドは駆動終了させることによって、部品の劣化を防止することを可能としている。」 ・上記アによれば、Blu-ray Discでは、HDMVとBD-Jの制御方式が用いられること、このうち、HDMVコンテンツは、DVDで提供されるものと同様のレジューム再生機能を容易に提供可能であるのに対して、BD-Jコンテンツの再生においては、従来のDVD再生装置において提供されていたレジューム再生機能のように、記録媒体からの情報の読み出しを行うフロントエンド(F/E)とデコード等を行うバックエンド(B/E)との双方を停止させる方法でレジューム再生機能を提供することが出来ないため、従来DVDで提供される方式と同様の方式でレジューム再生機能を提供することは容易でないこと(段落【0005】、【0006】)が記載されている。 ・上記ウによれば、実施例のコンテンツ再生システム1は、システム全体を制御するCPU11、デコーダ15、タッチパネルディスプレイ2、スピーカ3、マルチドライブ4等を有し、これらはバス等を介して電気的に接続されているが、このうち、マルチドライブ4に装填されたBD41等のディスクから読み出された情報はデコーダ15へ送られ、デコーダ15は、読み出された情報に基づいて映像信号および音響信号を生成し、タッチパネルディスプレイ2およびスピーカ3へ出力する、また、 タッチパネルディスプレイ2は、ユーザに対する入出力装置であり、ユーザに何らかの情報を通知する画像を表示し、またユーザによる接触操作を検出することで、ユーザ操作を受け付けるものであって、タッチパネルディスプレイ2等を介して入力された内容は、CPU11によって処理されることが記載されている。 ・上記イ、エ、オによれば、従来DVDで提供される方式と同様の方式でレジューム再生機能を提供することは容易でないBDに収録されたBD-Jコンテンツに関しては、コンテンツ制御プログラムの実行領域を実行途中の状態のまま保持する方法で、レジューム再生機能を提供するコンテンツ再生システム1が記載されている。 以上によれば、引用例1には、実施例にかかるコンテンツ再生システムとして、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「Blu-ray Discに記憶されるHDMVコンテンツとBD-Jコンテンツのうち、従来のDVD再生装置において提供されていた記録媒体からの情報の読み出しとデコード等との双方を停止させる方法ではレジューム再生機能を提供することが出来ないBD-Jコンテンツを読み取り、読み取ったコンテンツを再生するコンテンツ再生システムであって、 ユーザに対する入出力装置であり、ユーザに情報を通知する画像を表示し、ユーザ操作を受け付けるタッチパネルディスプレイと、 読み出された情報に基づいて映像信号および音響信号を生成するデコーダと、 タッチパネルディスプレイを介して入力された内容を処理するCPUと、 を有し、 ユーザによってコンテンツの再生中に停止指示受付手段によって停止指示が受け付けられた場合に、コンテンツ制御プログラムの実行領域を実行途中の状態のまま保持することにより、BD-Jコンテンツの再生時にもレジューム再生機能を提供する コンテンツ再生システム。」 (2)引用例2 当審の平成27年1月6日付けの拒絶の理由に引用した特開2008-278279号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。 ア「【0023】 以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る情報記録再生装置としての複合型記録再生装置の構成を示すブロック図である。ここでは、情報記録再生装置として複合型記録再生装置について説明するが、単体の、光ディスク装置、ハードディスク装置、VCRのそれぞれに、以下で述べる映像音声ミュート処理を適用できることは言うまでもない。」 イ「【0031】 ここで、ユーザがリモコン11の再生キー231を押下して、ハードディスク装置3を再生動作させることによって、ハードディスク14に記録されているタイトルを再生させ、テレビジョン受像機13から映像および音声を出力させて、そのタイトルを視聴している際中に、自宅に来客があったとすると、ユーザは、テレビジョン受像機13から出力されている映像および音声をミュートするため、ミュート専用リモコン20のミュートキー22を押下する。これにより、システムコントローラ10の出力対象判定手段は、ミュートキー22の押下を検知し(ステップS1)、ハードディスク14の映像音声情報を再生して映像および音声をテレビジョン受像機13から出力中であるか、チューナ1により選局された番組の映像音声をテレビジョン受像機13から出力中であるかを判定する(ステップS2、S3)。 【0032】 ハードディスク14の映像音声情報を再生して映像および音声をテレビジョン受像機13から出力中であると判定されたとき、システムコントローラ10の再生ポーズ状態遷移手段は、ハードディスク装置3にハードディスク装置3を停止させる指示を与えるが、ハードディスク装置3は直ぐには停止できないので、ハードディスク装置3が再生ポーズ可能な状態になったか否かをハードディスク装置3からの制御情報により判定し(ステップS4)、再生ポーズ可能な状態になれば、ハードディスク装置3を再生ポーズ状態に遷移させる(ステップS5)。この再生ポーズ状態に遷移されると、システムコントローラ10は、ハードディスク14の再生停止位置を示すアドレス情報をRAM16に格納し、ハードディスク装置3をレジューム停止させる。 【0033】 前記再生ポーズ状態に遷移された後、システムコントローラ10の映像音声ミュート手段は、映像信号遮断スイッチ18および音声信号遮断スイッチ19をオフさせ、テレビジョン受像機13への映像信号および音声信号を遮断して、テレビジョン受像機13から出力される映像および音声をミュートする(ステップS6)。これにより、テレビジョン受像機13においては、ディスプレイ装置131には映像が表示されず、またスピーカ132からは音声が出力されないことになり、即ち、映像および音声がミュートされることになる。 【0034】 ここで、来客が帰った後、ユーザは、当該タイトルの続きを視聴するため、ミュート専用リモコン20のミュートキー22を押下すると、システムコントローラ10のミュート解除手段は、ミュートキー22が押下されたことを検知し(ステップS7)、ミュートの解除処理を開始する(ステップS8)。即ち、前記ミュート解除手段は、現在のミュート解除対象を判断し(ステップS9、S10)、ミュート解除対象がハードディスク14の映像音声情報を再生して得られた映像音声であれば、映像信号遮断スイッチ18および音声信号遮断スイッチ19をオンして、ミュートを解除し、ハードディスク装置3を再生動作させ、RAM16に格納されたアドレス情報に従ってハードディスク14から当該タイトルの続きから再生を開始させる(ステップS11)。」 ウ「【0039】 以上説明したように本実施形態によれば、ミュート専用リモコン20のミュートキー22を押下することで、テレビジョン受像機13から出力されている映像および音声を直ぐにミュートできるので、急な来客があった場合や、ユーザ以外の人が部屋に入って来た場合や、電話がかかって来た場合などに、ユーザが視聴していた映像および音声を直ぐに消すことができ、使い勝手が向上する。また、前記ミュートされた後、再びミュートキー22を押下することで、映像および音声のミュートを直ぐに解除できるので、ユーザは、続きの映像および音声を直ぐに視聴することができ、使い勝手が向上する。また、通常のリモコン11とは別にミュート専用リモコン20を設けているので、ミュートキー22を直ぐに探し出すことができ、ミュートする操作を早く行うことができる。」 以上によれば、引用例2には、下記の技術的事項が記載されていると認められる。 「ハードディスクに記録されているタイトルを再生させ、視聴している際中に、ユーザがミュートキーを押下すると、システムコントローラは、ハードディスク装置を再生ポーズ状態に遷移させ、レジューム停止させるとともに、映像信号および音声信号を遮断して、テレビジョン受像機から出力される映像および音声をミュートし、その後、ユーザがミュートキーを押下すると、システムコントローラは、映像信号遮断スイッチおよび音声信号遮断スイッチをオンして、ミュートを解除し、ハードディスクから当該タイトルの続きから再生を開始させる。 これにより、ミュートキーを押下することで、映像および音声を直ぐにミュートでき、再びミュートキーを押下することで、映像および音声のミュートを直ぐに解除できること。 この映像音声ミュート処理は、光ディスク装置に適用できること。」 4.本願発明と引用発明の対比 (1)対比 ア 引用発明において、Blu-ray Discに記憶される「従来のDVD再生装置において提供されていた記録媒体からの情報の読み出しとデコード等との双方を停止させる方法」は、本願発明でいう「プリストップ機能」に該当し,上記従来の方法では「レジューム再生機能を提供することが出来ないBD-Jコンテンツ」は、本願発明の「プリストップ機能に対応していないタイトル情報」に該当する。 イ 引用発明の「ユーザに対する入出力装置であり、ユーザに情報を通知する画像を表示し、ユーザ操作を受け付けるタッチパネルディスプレイ」は、本願発明の「ユーザの指示を入力する操作手段」と、「表示手段」に該当する。 ウ 引用発明の「読み出された情報に基づいて映像信号および音響信号を生成するデコーダ」は、本願発明の「出力映像信号を生成する映像処理手段」、「出力音声信号を生成する音声処理手段」に該当する。 エ 引用発明の「タッチパネルディスプレイを介して入力された内容を処理するCPU」は、本願発明の「操作手段を介して前記ディスクに対する指示信号に応じて前記ディスクの制御を行う制御手段」に該当するものであり、引用発明のCPUは、ユーザによって機能モード切替操作が行われた場合に、BD-Jコンテンツの再生時にもレジューム再生機能を提供する制御を行うものであることは明らかである。 オ 引用発明の「ユーザによってコンテンツの再生中に停止指示受付手段によって停止指示が受け付けられた場合」は、本願発明の「前記制御手段は、前記ディスクが再生されている状態で、前記操作手段を介して、1回目のストップキーの信号を受信したとき」に該当する。 そして、引用発明において提供される「BD-Jコンテンツの再生時」の「レジューム再生機能」は、上記従来方法とは異なる方法により実現されるレジューム再生機能であるから、これによりレジューム再生可能に再生を停止した状態(プリストップ状態)を「疑似プリストップ状態」と呼称することができる。 ここで、本願発明は、「前記映像処理手段及び音声処理手段による映像及び音声の再生を完全に停止させるのではなく、一時的に停止させてポーズ状態に遷移させる」と共に、「前記映像処理手段に対し、前記表示手段の画面に表示されているポーズ画面に黒画又はブルーバックの画像を重ねて表示」させて、「疑似プリストップ状態」としているのに対して、引用発明は、「コンテンツ制御プログラムの実行領域を実行途中の状態のまま保持する」ことにより、「BD-Jコンテンツの再生時」にも「レジューム再生機能を提供する」点で相違する。 (2)一致点、及び相違点 以上より、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、 「少なくともプリストップ機能に対応していないタイトル情報を記憶しているディスクから信号を読み取り、読み取った信号をデコードして再生するディスク再生装置であって、 ユーザによって指示され、少なくとも前記再生をさせるためのプレイキー及び前記再生を完全に停止させるためのストップキーを有する操作手段と、 表示手段と、 前記ディスクに記憶されている信号に応じた出力映像信号を生成する映像処理手段と、 前記ディスクに記憶されている信号に応じた出力音声信号を生成する音声処理手段と、 前記操作手段を介して前記ディスクに対する指示信号に応じて前記ディスクの制御を行う制御手段と、 を有し、 前記制御手段は、前記ディスクが再生されている状態で、前記操作手段を介して、1回目のストップキーの信号を受信したとき擬似プリストップ状態とする、 ディスク再生装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明の疑似プリストップ状態は、「前記映像処理手段及び音声処理手段による映像及び音声の再生を完全に停止させるのではなく、一時的に停止させてポーズ状態に遷移させると共に、前記映像処理手段に対し、前記表示手段の画面に表示されているポーズ画面に黒画又はブルーバックの画像を重ねて表示させ」るものであるのに対し、引用発明では,「コンテンツ制御プログラムの実行領域を実行途中の状態のまま保持する」ことにより、「BD-Jコンテンツの再生時」にも「レジューム再生機能を提供する」点。 [相違点2] 本願発明は、「前記疑似プリストップ状態では、ストップキー又はプレイキーのみ受け付け、それ以外のキーが押された場合には、指示を受け付けずに前記表示手段の画面に指示を受け付けない旨の禁止表示を重ねて表示させる」のに対し、引用発明は、「疑似プリストップ状態では、ストップキー又はプレイキーのみ受け付け、それ以外のキーが押された場合には、指示を受け付け」ないように構成するとともに「前記表示手段の画面に指示を受け付けない旨の禁止表示を重ねて表示させる」ことが特定されていない点。 5.各相違点の判断 (1)[相違点1]について 上記3(2)のとおり、引用例2には、「ハードディスクに記録されているタイトルを再生させ、視聴している際中に、ユーザがミュートキーを押下すると、システムコントローラは、ハードディスク装置を再生ポーズ状態に遷移させ、レジューム停止させるとともに、映像信号および音声信号を遮断して、テレビジョン受像機から出力される映像および音声をミュートし、その後、ユーザがミュートキーを押下すると、システムコントローラは、映像信号遮断スイッチおよび音声信号遮断スイッチをオンして、ミュートを解除し、ハードディスクから当該タイトルの続きから再生を開始させる」という技術的事項が記載されている。 そして、引用例2には、このような映像音声ミュート処理は、光ディスク装置に適用できることが記載されているから、引用発明のBlu-rayDiscを再生するディスク再生装置の「疑似プリストップ状態」を実現するための処理として、「コンテンツ制御プログラムの実行領域を実行途中の状態のまま保持する」ことに代えて、「ディスク再生装置を再生ポーズ状態に遷移させ,レジューム停止させるとともに、映像および音声信号を遮断する」処理を採用することは、当業者が容易になし得ることに過ぎない。 そして、表示手段にポース画面を表示させない構成として、本願発明のように「画面に表示されているポーズ画面に黒画又はブルーバックの画像を重ねて表示させ」る構成とするか、映像信号を遮断する構成とするかは、設計上の微差にすぎず、いずれを採用するかは当業者の設計的事項にすぎない。 (2)[相違点2]について 引用発明において提供される「レジューム可能に再生停止した状態(プリストップ状態)」は、再生停止されているとともに,停止した位置から再生を再開可能な状態であるが、このような映像信号が表示されていない停止状態では、「早送り」や、「巻き戻し」などの「ストップキー又はプレイキー以外」のキーを受け付けないのがむしろ自然であり、「ストップキー又はプレイキーのみ受け付け、それ以外のキーが押された場合には、指示を受け付け」ないように構成することは格別のものではない。 そして、ユーザの操作したキー(ボタン)が、指示を受け付けないキーであった場合に、指示を受け付けない旨の禁止表示を表示することは、例えば特開2005-92997号公報、特開2002-44591号公報、特開2005-276330号公報に記載されるように映像再生装置のユーザインターフェースとして周知慣用技術にすぎない。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1、2、及び周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-25 |
結審通知日 | 2015-03-31 |
審決日 | 2015-04-13 |
出願番号 | 特願2009-242312(P2009-242312) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堀 洋介 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 丹治 彰 |
発明の名称 | ディスク再生装置及びディスク再生方法 |
代理人 | 岡本 啓三 |