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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1301407
審判番号 不服2013-22988  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-25 
確定日 2015-05-29 
事件の表示 特願2011- 32603「電力表面取り付けの発光ダイ・パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日出願公開、特開2011-139087〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成15年9月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年9月4日、2003年5月27日 何れも米国)を国際出願日とする特願2004-534428号の一部を平成23年2月17日に新たな特許出願としたものであって、その後の経緯は以下のとおりである。
平成23年 3月17日 誤訳訂正書
平成24年10月15日 拒絶理由通知(同年10月17日発送)
平成25年 3月18日 意見書・手続補正書
平成25年 7月23日 拒絶査定(同年7月25日送達)
平成25年11月25日 本件拒絶査定不服審判の請求

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1-18に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。

「上面と下面を有する電気的絶縁基板と、
前記基板の前記上面に設けられた複数のトレースと、
前記複数のトレースに接続され、前記基板の前記上面に取り付けられる発光ダイオード(LED)と、
前記発光ダイオード(LED)に対向する前記基板の前記下面上に設けられ、且つ、前記複数のトレースから電気的に離隔される熱接触パッドと、
を備える発光ダイ・パッケージ。」(以下「本願発明」という。)

3 引用する刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-202271号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】樹脂成形品で作成される基板の表面に凹部を形成すると共に基板の表面に回路パターンを設け、発光ダイオードチップを凹部内に搭載すると共に発光ダイオードチップと基板の表面の回路パターンとをワイヤーボンディングし、発光ダイオードチップとワイヤーを覆うように透明樹脂のモールド部を基板の表面に設けて成ることを特徴とする発光ダイオード。

【請求項4】基板の裏面の凹部に対応する箇所に放熱用ランドを設けて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発光ダイオード。
…」

イ 「【0011】
【実施例】以下本発明を実施例によって詳述する。図1及び図2は本発明の一実施例を示すものであり、その製造の工程を図3に基づいて説明する。…

【0015】上記のようにして、図6のように成形板17を構成する各基板1に回路パターン3を形成することができ(図6において回路パターン3を斜線で示す)、図6の鎖線の位置で成形板17を切断することによって、回路パターン3を形成した図1に示すような基板1に分離することができるものである。図1の実施例では、回路パターン3は基板1の一方の側部側の回路パターン3aと他方の側部側の回路パターン3bの離隔された一対のもので形成されるようにしてあり(図1において回路パターン3を斜線で示す)、各回路パターン3a,3bの端部は基板1の側端面から下面にかけて取り出し用の電極端子部9,9として形成するようにしてある。また凹部2の底面には回路パターン3bの一部をなすようにダイボンディング部24がめっきで形成してあり、さらに凹部2の内側面の全面に回路パターン3bの一部をなすように反射層25がめっきで形成してあって、発光ダイオードチップ4からの光を反射させて発光効率を高めるようにしてある。
【0016】そして、発光ダイオードチップ4をダイボンディング等で凹部2内に固定することによって、回路パターン3bに電気的に接続した状態で搭載すると共に、発光ダイオードチップ4と基板1の表面の回路パターン3aとの間に金線等のワイヤー5をボンディングして発光ダイオードチップ4と回路パターン3aとを電気的に接続し、さらに発光ダイオードチップ4とワイヤー5を覆うように透明樹脂を成形してモールド部6を基板1の表面に設けることによって、図1および図2に示すような表面実装型の発光ダイオードを作成することができるものである。…」

ウ 「【0019】図8は本発明のさらに他の実施例を示すものであり、基板1の裏面の凹部2に対応する箇所に放熱用ランド7を設けるようにしてある(図8において回路パターン3及び放熱用ランド7を斜線で示す)。この放熱用ランド7は銅めっき等の金属めっきによる金属膜で凹部2の直径よりも大きな直径の円形に形成してある。このように放熱用ランド7を設けることによって、凹部2内に搭載した発光ダイオードチップ4の発熱を効率良く放熱することができ、また凹部2の底部の薄肉となる部分を放熱用ランド7で補強することができるものである。」

エ 「【0023】
【発明の効果】上記のように本発明は、樹脂成形品で作成される基板の表面に凹部を形成すると共に基板の表面に回路パターンを設け、発光ダイオードチップを凹部内に搭載すると共に発光ダイオードチップと基板の表面の回路パターンとをワイヤーボンディングし、発光ダイオードチップとワイヤーを覆うように透明樹脂のモールド部を基板の表面に設けたので、凹部内にはワイヤーを納める必要がないと共に、凹部の底面にワイヤーを接続するためのスペースを設ける必要がなく、凹部は発光ダイーオドチップのみを納める深さと大きさに形成すればよいものであり、基板の厚みを薄くまた小さく作成することが可能になって、発光ダイオードを薄く小型化して作成することが可能になるものである。
【0024】…。
【0025】さらに本発明は、基板の裏面の凹部に対応する箇所に放熱用ランドを設けるようにしたので、凹部に搭載した発光ダイオードチップの発熱を放熱用ランドから効率良く放熱することができると共に、凹部の底部の薄肉となる部分を放熱用ランドで補強して強度を高めることができるものである。」

オ 「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面断面図、(c)は底面図である。

【図8】本発明のさらに他の実施例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面断面図、(c)は底面図である。」

カ 図1、図8は、以下のとおりである。


4 引用発明
以下、刊行物に記載された「さらに他の実施例」(上記「3 ウ」、「3 カ」の図8、請求項1を引用する請求項4)に基づいて引用発明を認定するが、「さらに他の実施例」は実施例に「放熱用ランド7」を設けたものであるから、「放熱用ランド7」以外の構成は、実施例(上記「3 イ」、「3 カ」の図1)の記載を参酌する。

(1)上記「3 ア」の請求項1、請求項4によれば、刊行物には、
「樹脂成形品で作成される基板の表面に凹部を形成すると共に基板の表面に回路パターンを設け、
発光ダイオードチップを凹部内に搭載すると共に発光ダイオードチップと基板の表面の回路パターンとをワイヤーボンディングし、
発光ダイオードチップとワイヤーを覆うように透明樹脂のモールド部を基板の表面に設け、
基板の裏面の凹部に対応する箇所に放熱用ランドを設けて成る、
発光ダイオード。」
が記載されている。

(2)上記「3 イ」の【0015】によれば、回路パターン3は、基板1の一方の側部側の回路パターン3aと他方の側部側の回路パターン3bの離隔された一対のもので形成され、各回路パターン3a,3bの端部は基板1の側端面から下面にかけて取り出し用の電極端子部9,9として形成されている。また凹部2の底面には回路パターン3bの一部をなすようにダイボンディング部24がめっきで形成されている。そして、発光ダイオードチップ4をダイボンディング等で凹部2内に固定することによって、回路パターン3bに電気的に接続した状態で搭載すると共に、発光ダイオードチップ4と基板1の表面の回路パターン3aとの間に金線等のワイヤー5をボンディングして発光ダイオードチップ4と回路パターン3aとを電気的に接続している。

(3)上記「3 イ」、「3 ウ」の記載を踏まえて図8を見ると、放熱用ランド7は、取り出し用の電極端子部9、9と離隔していることが看取できる。

(4)以上のことから、刊行物には、以下の発明が記載されている。
「樹脂成形品で作成される基板の表面に凹部を形成すると共に基板の表面に回路パターンを設け、
発光ダイオードチップを凹部内に搭載すると共に発光ダイオードチップと基板の表面の回路パターンとをワイヤーボンディングし、
発光ダイオードチップとワイヤーを覆うように透明樹脂のモールド部を基板の表面に設け、
基板の裏面の凹部に対応する箇所に放熱用ランドを設けて成る発光ダイオードであって、
前記回路パターンは、基板1の一方の側部側の回路パターン3aと他方の側部側の回路パターン3bの離隔された一対のもので形成され、各回路パターン3a,3bの端部は基板の側端面から下面にかけて取り出し用の電極端子部9,9として形成され、
凹部の底面には回路パターン3bの一部をなすようにダイボンディング部がめっきで形成され、
発光ダイオードチップはダイボンディング等で凹部内に固定することによって、回路パターン3bに電気的に接続した状態で搭載されると共に、発光ダイオードチップと基板の表面の回路パターン3aとの間に金線等のワイヤーをボンディングして発光ダイオードチップと回路パターン3aとを電気的に接続され、
放熱用ランドは、取り出し用の電極端子部9、9と離隔している、
発光ダイオード。」(以下「引用発明」という。)

5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「上面と下面を有する電気的絶縁基板」と、引用発明の「表面に回路パターンを設け」、「裏面の凹部に対応する箇所に放熱用ランドを設け」た「基板」を対比する。
ア 引用発明の「基板」は表面に回路パターンが形成されるから、電気的に絶縁性の基板である。よって、引用発明の「基板」は、本願発明の「電気的絶縁基板」に相当する。
イ 引用発明の基板は、その表面に回路パターンを設け、その裏面の凹部に対応する箇所に放熱用ランドを設けた基板であるから、引用発明の基板は表面と裏面を有する。そして、引用発明の基板が有する「表面」は、本願発明の「上面」に相当し、引用発明の基板が有する「裏面」は、本願発明の「下面」に相当する。
ウ してみると、両者は相当関係にある。

(2)本願発明の「前記基板の前記上面に設けられた複数のトレース」と、引用発明の「基板の表面に」「設け」た「回路パターン」を対比する。
ア 上記(1)ア、イで検討したとおり、引用発明の「基板」は、本願発明の「電気的絶縁基板」に相当し、引用発明の基板が有する「表面」は、本願発明の「上面」に相当する。
イ 引用発明の「回路パターン」は、回路パターン3aと回路パターン3bの離隔された一対のもので形成されることを考慮すると、引用発明の「回路パターン」は、本願発明の「複数のトレース」に相当する。
ウ してみると、両者は相当関係にある。

(3)本願発明の「前記複数のトレースに接続され、前記基板の前記上面に取り付けられる発光ダイオード(LED)」と、引用発明の「ダイボンディング等で凹部2内に固定することによって、回路パターン3bに電気的に接続した状態で搭載されると共に」、「金線等のワイヤーをボンディングして」「回路パターン3aと…電気的に接続」される「発光ダイオードチップ」を対比する。
ア 引用発明の「発光ダイオードチップ」は、本願発明の「発光ダイオード(LED)」に相当する。
イ 上記(2)イで検討したとおり、引用発明の「回路パターン」は、本願発明の「複数のトレース」に相当することを考慮すると、引用発明の「回路パターン3bに電気的に接続」され、「回路パターン3aと…電気的に接続」される「発光ダイオードチップ」は、本願発明の「前記複数のトレースに接続され…る発光ダイオード(LED)」に相当する。
ウ 引用発明は、「基板の表面に凹部」が形成されることを考慮すると、引用発明の「ダイボンディング等で凹部2内に固定することによって、…搭載される」「発光ダイオードチップ」は、本願発明の「前記基板の前記上面に取り付けられる発光ダイオード(LED)」に相当する。
エ してみると、両者は相当関係にある。

(4)本願発明の「前記発光ダイオード(LED)に対向する前記基板の前記下面上に設けられ、且つ、前記複数のトレースから電気的に離隔される熱接触パッド」と、引用発明の「基板の裏面の凹部に対応する箇所に」「設け」られ、「取り出し用の電極端子部9、9と離隔している」る「放熱用ランド」を対比する。
ア 引用発明は、「発光ダイオードチップは…凹部2内…搭載され」ることを考慮すると、引用発明の「基板の裏面の凹部に対応する箇所」は、本願発明の「前記発光ダイオード(LED)に対向する前記基板の前記下面上」に相当する。
イ (ア)引用発明の「取り出し用の電極端子部9、9」は「各回路パターン3a,3bの端部」であること、(イ)上記(1)アで検討したとおり、引用発明の「基板」は電気的に絶縁性の基板であること、(ウ)上記(2)イで検討したとおり、引用発明の「回路パターン」は、本願発明の「複数のトレース」に相当すること、をそれぞれ考慮すると、引用発明の「取り出し用の電極端子部9、9と離隔している」ことは、本願発明の「前記複数のトレースから電気的に離隔される」ことに相当する。
ウ 引用発明の「放熱用ランド」は、本願発明の「熱接触パッド」に相当する。
エ してみると、両者は相当関係にある。

(5)本願発明の「発光ダイ・パッケージ」と、引用発明の「発光ダイオード」を対比すると、両者は相当関係にある。

(6)上記(1)?(5)によれば、本願発明と引用発明に格別の相違は認められない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-22 
結審通知日 2014-12-24 
審決日 2015-01-19 
出願番号 特願2011-32603(P2011-32603)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松崎 義邦  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 小松 徹三
松川 直樹
発明の名称 電力表面取り付けの発光ダイ・パッケージ  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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