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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1301442
審判番号 不服2014-2943  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-17 
確定日 2015-06-04 
事件の表示 特願2010-528895「幾何学分割された双方向予測モードパーティションのビデオエンコーディング及びデコーディングのための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日国際公開、WO2009/051668、平成23年 1月 6日国内公表、特表2011-501508〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年10月10日(パリ条約における優先権主張外国庁受理2007年10月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月9日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成25年2月21日に手続補正がなされたが、同年9月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明について
本願の請求項に係る発明は、平成26年2月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「【請求項7】
適応幾何学分割によりピクチャの少なくとも一部について双方向予測可能ピクチャデータをエンコードするステップを有し、
前記適応幾何学分割のための幾何学パーティションは、リファレンスピクチャの第1リストに対応する予測判断材料の第1の組、リファレンスピクチャの第2のリストに対応する予測判断材料の第2の組、及び双方向予測に用いられ、前記第1の組及び前記第2の組のうち少なくとも一方からの予測判断材料を含む予測判断材料の第3の組から選択される少なくとも1つの予測判断材料を用いて予測される、方法。」


第3 引用例
1.原審の拒絶理由に引用された、特開2005-277968号公報(以下、「引用例1」という。)には「画像符号化方法および画像復号化方法」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、動画像信号を動き補償を用いて高能率圧縮符号化する際の画像符号化方法および画像復号化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MPEGビデオ方式に代表される従来の画像符号化方式においては、画面を予め定められた単位に分割し、その分割単位で符号化を行う。例えば、MPEG-4 AVC(Advanced Video Coding)方式(例えば、非特許文献1参照)においては、画面(ピクチャ)をマクロブロックと呼ばれる水平16画素、垂直16画素の単位で処理を行う。そして、動き補償を行う場合には、マクロブロックを矩形のブロック(最小で水平4画素、垂直4画素)に分割して、ブロック毎に異なる動きベクトルを用いて動き補償を行うことができる。
【非特許文献1】ISO/IEC 14496-10 Advanced Video Coding規格書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の方式では、マクロブロック内を矩形に分割するため、例えば動物体の境界線が斜め方向である場合、境界線とブロックの分割線が一致しない。このような場合、ブロック内に動きの異なる2つの領域が存在することとなる。そのため、いずれかの領域の動きを用いて動き補償を行うと、他方の領域にとっては異なる動きで動き補償をすることとなる。このため、動き補償の効率が低下し、その結果として符号化効率の低下を招く、という課題を有していた。
【0004】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、画面をマクロブロックに分割して符号化する場合であっても、動物体の境界を考慮した動き補償を行うことができる、動画像符号化方法および動画像復号化方法を提供することを目的とする。」(3-4頁)

イ.「【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図14を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の画像符号化方法を用いた画像符号化装置のブロック図である。図1に示すように、画像符号化装置100は、フレームメモリ101、分割制御部102、分割部103、動き検出部104、参照ピクチャ用メモリ105、差分部106、変換部107、量子化部108、可変長符号化部109、逆量子化部110、逆変換部111、加算部112、スイッチ113、分割方法記述部114、および分割方法保持部115から構成される。
【0009】
入力画像はまずフレームメモリ101に保持される。また、参照ピクチャ用メモリ105には、符号化済み画像の復号化画像が既に蓄積されており、これが入力画像を符号化する際の参照ピクチャとして用いられるものとする。
【0010】
フレームメモリ101に保持された入力画像は、水平16画素、垂直16画素の正方領域を有するマクロブロックに分割され、マクロブロック毎に処理される。
各マクロブロックの処理開始時点においては、スイッチ113は「a」に接続される。よって、各マクロブロックの画像は、分割部103に入力され、そして複数の領域に分割される。分割部103においてどのようにマクロブロックを分割するかは、分割制御部102により決定される。分割制御部102が決定する分割方法の例を図2に示す。図2に示すように、分割制御部102で決定する分割方法は、矩形分割または任意分割に大別される。矩形分割には、図2(a)?(d)に示すように4通りの分割方法があるとする。
【0011】
任意分割の方法を図3を用いて説明する。任意分割を行う場合には、図3(a)に示すように、点a?点pの分割点候補のうち、いずれか2点を通る線分により、マクロブロックを2つの領域に分割する。図3(a)において、波線で囲まれた領域が1画素を示している。ここでは便宜上、縦8画素、横8画素の領域を示しているが、マクロブロックの大きさは他の大きさであっても構わない。なお、線分上に位置する画素については、予め定めておいた方法により、いずれかの領域に振り分ければよい。例えば、画素内でより大きな面積が属する領域に分類する、線分よりも2次元平面上で上(または下)にある領域に分類する、交互に2つの領域に分類する、等である。図3(a)においては、線分が2画素毎の分割点候補を通るという制限を設けた場合について示しているが、これは1画素毎、4画素毎、等であっても良いし、非等間隔であっても良い。また、分割点の位置は隣接する画素の間である必要はなく、画素上にあっても良い。図3(a)の分割点候補において、線分が点cと点oとを通る場合、マクロブロックは図3(b)に示すように領域301と302とに分割される。また、線分が点hと点pとを通る場合、マクロブロックは図3(c)に示すように領域303と304とに分割される。
【0012】
図4はマクロブロックの分割方法および動きベクトルとして決定する際の動作の流れを示すフローチャートである。
分割制御部102は、上記で説明した分割方法を順に分割部103に対して指示する。そして、分割部103では、分割制御部102により指示された分割方法によりマクロブロックを分割し、分割領域画像を生成する(ステップS101)。そして、各分割領域画像を動き検出部104に対して出力する。
【0013】
動き検出部104では、分割部103から入力された分割領域画像について、参照ピクチャ用メモリ105に保持されている参照ピクチャに対する動き検出を行う(ステップS102)。動き検出は、参照ピクチャ内の予め定められた範囲(例えば水平方向±32画素、垂直方向±24画素の長方形領域の範囲)の中で、評価値が最適(最小または最大)になる位置を検出することにより行う。例えば、評価値を分割領域画像と参照ピクチャ内の対応画像(参照画像)との差分値和とすると、評価値が最小となる参照ピクチャ中の位置を検出することになる。また、評価値としては、差分値和と動きベクトル(分割領域画像のフレーム内の位置と、参照ピクチャ内の参照画像の位置の差)の符号量との重み付け和等を用いることもできる。動き検出部104は、マクロブロック内の各分割領域画像に対して動き検出を行い、分割領域における最適な動きベクトルおよび評価値を求め、分割領域毎の評価値を加算(ステップS103)することにより、マクロブロック内の合計評価値を求める。そして、この合計評価値、動きベクトルを分割制御部102に対して出力
する。
【0014】
分割制御部102では、動き検出部104から入力された合計評価値を現時点での最適値と比較(ステップS104)し、最適値よりも良い値である場合(例えば、最適基準として最小を用いる場合には、最適値よりも小さい値の場合)には、その合計評価値を最適値として置き換え、この場合の分割方法と動きベクトルとを保持する(ステップS105)。ここで、合計評価値に対する最適値はマクロブロック毎にリセット(初期値化)されるものとする。
【0015】
分割制御部102、分割部103、動き検出部104は、上記の動作を分割制御部102から指示された分割方法に対して順次実施する。そして、全分割方法について処理を行った後、最適な合計評価値を与える方法として保持されている分割方法、動きベクトルをそのマクロブロックの分割方法および動きベクトルとして決定する(ステップS106)。
【0016】
分割制御部102により、マクロブロックの最終的な分割方法が決定されると、スイッチ113は「b」に接続され、入力マクロブロックの画像は差分部106に入力される。そして、決定された分割方法と動きベクトルとは参照ピクチャ用メモリ105に伝えられ、各分割領域に対する参照画像が差分部106に対して出力される。例えば、図5においてマクロブロック500が任意分割で領域501と領域502とに分割された場合、参照ピクチャから参照画像503、参照画像504を取得し、入力マクロブロックに対する動き補償画像MCを生成することになる。また、決定された分割方法DIは分割方法記述部114に、動きベクトルMVは可変長符号化部109に対しても出力される。
【0017】
差分部106では、入力マクロブロック画像と、参照画像(分割領域毎の参照画像を合成した画像)MCとの対応する画素の差分を計算し、残差画像RSを生成する。
残差画像RSは変換部107において周波数変換を施された後、量子化部108で量子化処理を施されて、量子化された変換係数QCとなり、可変長符号化部109と逆量子化部110とに入力される。
」(4-6頁)

ウ.「【0035】
また、本発明の実施例においては、参照画像数が1である場合について説明したが、これは2つ以上のピクチャを参照画像として用いても良い。」(8頁)

上記ア.?ウ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記ア.にあるように、引用例1には、「画像符号化方法」が記載されている。

b.上記イ.の段落【0009】-【0011】には、画像符号化に際して、入力画像を分割したマクロブロックの画像を線分を用いて分割することが記載されており、上記イ.の段落【0012】-【0015】には、マクロブロックの画像を分割する分割方法をマクロブロック毎に決定することが記載されている。
また、上記イ.の段落【0009】には、参照ピクチャが符号化済み画像の復号画像であることが記載され、上記イ.の段落【0016】-【0017】には、線分で分割されたマクロブロックの画像に対応する参照画像を前記参照ピクチャから取得し、対応する画素の差分を求めて符号化することが記載されている。
さらに、上記ウ.には、本発明の実施例(実施の形態1)においては、参照画像数が1の場合であったが、2つ以上のピクチャを参照画像として用いても良い旨記載されている。
ここで、(実施の形態1)において、上記イ.の段落【0016】、【0017】には「参照画像」が「参照ピクチャ」から生成されるものであることが記載されており、さらには上記ウ.における2つ以上の「ピクチャ」を用いても良い、との記載を併せて考えると、上記ウ.は2つ以上の参照「ピクチャ」を「参照画像」を生成するために「用いても良い」ことを示しているといえる。
また、上記ウ.について、「2つ以上」が「2つ」を含むことは明らかである。

したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。
(引用発明1)
「マクロブロック毎に決定された分割方法により分割された入力画像のマクロブロックの画像と、2枚の参照ピクチャを用いて生成された参照画像との間で対応する画素の差分を求めて符号化する、
画像符号化方法」


2.原審の拒絶理由に引用された、Thomas Wiegand et al.,Draft Errata List with Revision-Marked Corrections for H.264/AVC,Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and ITU-T SG16 Q.6) 9th Meeting: San Diego, California, Document: JVT-I050,ITU-T,2003年 9月,p.71-73, 175-178(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

エ.「Draft Errata List with Revision-Marked Corrections for H.264/AVC」(タイトル)
(邦訳)
「H.264/AVCのための改訂箇所付正誤表草案」

オ.「Pred_L0: specifies that the inter prediction process is invoked using list 0 prediction. Pred_L0 is an Inter macroblock prediction mode.」(71頁、下から5-6行目)
(邦訳)
「Pred_L0: インター予測処理がリスト0の予測を使用して起動されることを指定します。 Pred_L0はインターマクロブロック予測モードです。」

カ.「Table 7-11 - Macroblock type values 0 to 22 for B slices

」(71頁)
(邦訳)
「表7-11-Bスライスにおける0から22までのマクロブロックタイプ値」
(表は省略)

キ.「The following semantics are assigned to the macroblock types in Table 7-11:
(中略)
- B_X0_X1_MxN, with X0, X1 referring to the first and second macroblock partition and being replaced by L0, L1, or Bi, and MxN being replaced by 16x8 or 8x16: the samples of the macroblock are predicted using two luma partitions of size MxN equal to 16x8, or two luma partitions of size MxN equal to 8x16, and associated chroma samples, respectively.」(72頁、下から7行目-73頁、上から6行目)
(邦訳)
「表7-11におけるマクロブロックタイプの意味は以下の通り:
(中略)
- B_X0_X1_MxN、ここで第一及び第二のマクロブロックパーティションに対応するX0、X1は、L0、L1、またはBiで置換され、MxNは、16x8または8x16で置換される:当該マクロブロックのサンプルは、サイズMxNが16x8に等しい2つの輝度領域、あるいはサイズMxNが8x16に等しい2つの輝度領域、およびそれぞれに関連する色サンプルを用いて予測される」

ク.「The following semantics are assigned to the macroblock prediction modes (MbPartPredMode( )) in Table 7-11.
(中略)
- Pred_L1: specifies that the Inter prediction process is invoked using list 1 prediction. Pred_L1 is an Inter macroblock prediction mode.
- BiPred: specifies that the Inter prediction process is invoked using list 0 and list 1 prediction. BiPred is an Inter macroblock prediction mode.」(73頁、15行目-22行目)
(邦訳)
「表7-11におけるマクロブロック予測モード(MbPartPredMode( ))の意味は以下の通り:
(中略)
- Pred_L1:インター予測処理がリスト1の予測を使用して起動されることを指定します。 Pred_L1はインターマクロブロック予測モードです。
- BiPred:インター予測処理がリスト0とリスト1の予測を使用して起動されることを指定します。 BiPredはインターマクロブロック予測モードです。」

上記エ.?上記ク.の記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、
c.上記エ.にあるように、引用例2は画像符号化方式である「H.264/AVC」について記載されている。

d.H.264/AVCにおいて、マクロブロックのサイズが16x16であることは技術常識であり、上記キ.には、16x16のサイズのマクロブロックが16x8(あるいは8x16)の第一及び第二、2つのマクロブロックパーティションで予測されることが記載されていることから、上記キ.におけるマクロブロックパーティションは、マクロブロックを2つに分割して予測するためのものであると言える。
また上記カ.には、前記マクロブロックパーティションで2つに分割されるマクロブロックがPred_L0、Pred_L1、BiPredの何れか2つの予測モードで予測されることが記載されており、何れか2つであれば何れか少なくとも1つの予測モードであることは明らかであり、各予測モードが各マクロブロックパーティションの予測モードに対応している。
また、上記オ.、ク.には、各予測モードについて、Pred_L0がリスト0の予測に対応したインター予測処理の予測モードを、Pred_L1がリスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードを、BiPredがリスト0とリスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードを、それぞれ表すことが記載されている。

したがって、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。
(引用発明2)
「マクロブロックを分割するマクロブロックパーティションは、リスト0の予測に対応したインター予測処理の予測モードPred_0、リスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードPred_1、及びリスト0とリスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードBiPredのうち少なくとも1つの予測モードで予測されるH.264/AVC」


第4 対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比する
(ア) 引用発明1の「画像符号化方法」は画像符号化の「方法」である。

(イ) 引用発明1の「マクロブロック毎に決定された分割方法」による「分割」は、上記b.で述べたようにマクロブロック毎の線分による分割であることから、本願発明の「適応幾何学分割」に相当する。
また、引用発明1の「符号化する」ことは本願発明の「エンコードする」ことに相当する。
そして、引用発明1の「入力画像」は適応幾何学分割された上で符号化の対象となる画像であることから、やはり適応幾何学分割の上でエンコードの対象となる本願発明の「ピクチャ」に相当する。
また、引用発明1の「マクロブロックの画像」は、入力画像を分割したものであるから、入力画像の「少なくとも一部」であることは明らかである。
引用発明1における「マクロブロックの画像と、2枚の参照ピクチャから生成された参照画像との間で対応する画素の差分を求めて符号化する」について、「参照ピクチャ」は、上記イ.の段落【0009】に記載されているように、符号化済み画像の復号化画像であり、画像符号化の技術分野において復号化画像と対象画像との差分を符号化することは予測符号化であることから、「マクロブロックの画像」は予測符号化の対象であり、「予測可能」であることは明らかである。
また、「マクロブロックの画像」が、該画像を構成する各画素毎の値、すなわち「データ」を有することも当然の事項に過ぎない。
また、引用発明1における「参照ピクチャ」は符号化の対象となる「マクロブロックの画像」を予測符号化するために用いられる画像であることから、本願発明における「リファレンスピクチャ」に相当する。
そして、「2枚の参照ピクチャ」を用いることだけが規定された引用発明1における予測は、本願発明における「双方向予測」と、「2枚のリファレンスピクチャを用いた予測」である点で共通し、本願発明においては「2枚のリファレンスピクチャ」を用いた「双方向」予測であるのに対して、引用発明1においては、2枚のリファレンスピクチャを用いたどのような予測であるのかについて規定がない点で相違する。
したがって、引用発明1の「マクロブロック毎に決定された分割方法により分割された入力画像のマクロブロックの画像と、2枚の参照ピクチャから生成された参照画像との間で対応する画素の差分を求めて符号化する」ことは、本願発明の「適応幾何学分割によりピクチャの少なくとも一部について双方向予測可能ピクチャデータをエンコードする」ことと、「適応幾何学分割によりピクチャの少なくとも一部について2枚のリファレンスピクチャを用いた予測可能ピクチャデータをエンコードする」ことである点で共通し、「2枚のリファレンスピクチャを用いた」予測に際して、本願発明においては「双方向」予測であるのに対して、引用発明1においては、2枚のリファレンスピクチャを用いたどのような予測であるのかについて規定がない点で相違する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致ないし相違している。
(一致点)
「適応幾何学分割によりピクチャの少なくとも一部について2枚のリファレンスピクチャを用いて予測可能ピクチャデータをエンコードするステップを有する、
方法。」

(相違点)
(a) 「2枚のリファレンスピクチャから」予測するに際して、本願発明においては「双方向」予測であるのに対して、引用発明1においては、2枚のリファレンスピクチャを用いたどのような予測であるのかについて規定がない点で相違する。

(b) 本願発明においては「適応幾何学分割のための幾何学パーティションは、リファレンスピクチャの第1リストに対応する予測判断材料の第1の組、リファレンスピクチャの第2のリストに対応する予測判断材料の第2の組、及び双方向予測に用いられ、前記第1の組及び前記第2の組のうち少なくとも一方からの予測判断材料を含む予測判断材料の第3の組から選択される少なくとも1つの予測判断材料を用いて予測される」のに対して、引用発明1においてはそのような記載がない点で相違する。

そこで、上記相違点(a)、(b)について検討する。

第3の2.に記載したように、引用発明2にはH.264/AVCにおいて、「マクロブロックを分割するマクロブロックパーティションは、リスト0の予測に対応したインター予測処理の予測モードPred_0、リスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードPred_1、及びリスト0とリスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードBiPredのうち少なくとも1つの予測モードで予測される」ことが記載されている。
ここで、引用発明2における「リスト0の予測に対応したインター予測処理の予測モードPred_L0」について、H.264/AVCにおいて、リスト0の予測に対応したインター予測処理とは、リスト0に対応したリファレンスピクチャを用いたインター予測処理を表すことは技術常識であり、ある予測モードにおける予測に際しては、該予測モードに対応した各種パラメータ、すなわち予測判断材料が用いられることも通常行われている事項に過ぎないことから、引用発明2における「インター予測処理としてリスト0の予測に対応した予測モードPred_L0」は、本願発明の技術用語を用いれば、「リファレンスピクチャの第1リストに対応する予測判断材料の第1の組」と言えるものである。
同様に、引用発明2における「インター予測処理としてリスト1の予測に対応した予測モードPred_L1」は、Pred_L0とリスト0とリスト1とが異なるだけであることから、本願発明の技術用語を用いれば、「リファレンスピクチャの第2リストに対応する予測判断材料の第2の組」と言えるものである。
また、引用発明2における、「リスト0とリスト1の予測に対応したインター予測処理の予測モードBiPred」について、リスト0とリスト1という異なるリストに対応したリファレンスピクチャを用いた両方の予測に対応していることから、本願発明の技術用語を用いれば、「2枚のリファレンスピクチャからの予測に用いられ、第1の組及び第2の組の予測判断材料を含む予測判断材料の第3の組」であると言えるものである。
したがって、引用発明2はマクロブロックを分割したパーティションそれぞれに対し、本願発明の技術用語を用いれば「リファレンスピクチャの第1リストに対応する予測判断材料の第1の組、リファレンスピクチャの第2のリストに対応する予測判断材料の第2の組、及び2枚のリファレンスピクチャからの予測に用いられ、前記第1の組及び前記第2の組からの予測判断材料を含む予測判断材料の第3の組から選択される少なくとも1つの予測判断材料を用いて予測される」技術が記載されているものであり、当業者であれば、引用発明2に記載の上記技術を引用発明1における、適応幾何学分割によって分割された各マクロブロックの画像の予測に用いて具体的な構成を得ることは容易になし得ることに過ぎない。
なお、2枚のリファレンスピクチャを用いた予測として双方向予測は周知慣用の技術に過ぎない。
このように、相違点(a)、(b)は格別なものではない。

このように上記相違点は格別なものでなく、本願発明に関する作用・効果も引用発明1、2から当業者が予測できる範囲のものである。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明1、2に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2014-12-25 
結審通知日 2015-01-07 
審決日 2015-01-21 
出願番号 特願2010-528895(P2010-528895)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 高行  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 豊島 洋介
渡邊 聡
発明の名称 幾何学分割された双方向予測モードパーティションのビデオエンコーディング及びデコーディングのための方法及び装置  
代理人 倉持 誠  
代理人 石井 たかし  
代理人 吹田 礼子  
代理人 木越 力  

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