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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1301454
審判番号 不服2013-12153  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-26 
確定日 2015-06-03 
事件の表示 特願2008-538306「雄の哺乳動物における体脂肪の蓄積を低減するためのイソフラボン組成物及びその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月10日国際公開、WO2007/051629、平成21年 4月 9日国内公表、特表2009-514824〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2006年11月2日(パリ条約による優先権主張 2005年11月2日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年2月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年6月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?30に係る発明は、平成25年6月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?30に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
その1日当たりの最小必要量を超えるカロリーを摂取する雄の哺乳動物における脂肪蓄積を低減するための医薬品であって、
ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインを少なくとも含む可食組成物を含み、
前記動物の1日当たりの平均カロリー摂取量が、その1日当たりの最小エネルギー必要量を超え、
前記可食組成物が大豆胚芽ミールを含み、
前記可食組成物がL-カルニチンも共役リノール酸も含まず、
前記動物がイヌ又はネコである、医薬品。」


3.引用例に記載された事項
(1)原審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2005/89567号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(引用例1は英語で記載されているので、以下、訳文で示す。下線は当審で付した)
(ア)「体重管理
[0100] 卵巣除去された、又は去勢された肥満でないイヌ(“正常な”イヌと称せられる、雄:<17.5%体脂肪;雌:<20%体脂肪)を実験に使用した。グループ1(対照食)は、13匹のラブラドールレトリーバー(LRs)からなっていた。グループ2(イソフラボン食)は、14匹のLRsからなっていた。グループ3(カクテル食)は15匹のLRsからなっていた。
[0101] 対照食を与えた動物(グループ1)は、標準の超高品質食(1900キロカロリー/ポンド、30%タンパク質、17%脂肪)を摂取した。イソフラボン食を与えた動物(グループ2)に10%大豆胚芽ミール(SGM)を含有する該対照食を与えた。カクテル食を与えた動物(グループ3)に10%SGM、1.5%共役リノール酸(CLA)及びL-カルニチンの100万当たり100部(100ppm)を含有する該対照食を与えた。
[0102] 全てのイヌの維持エネルギー要求量(MER)を、給餌実験前に調べた。すべてのイヌに12カ月の給餌実験中にそれらのMERの125%を与えた。
[0103] 各々の動物について以下の測定を行った:
・体重、身体状態得点、DEXA。
・イソフラボン類及びそれらの代謝産物の血漿濃度。
体重管理結果
[0104] 正常なイヌにおける体重増加は、給餌の9カ月後(P=0.043、対照グループ対イソフラボングループ)に、及び給餌の12カ月後(P=0.041、対照グループ対イソフラボングループ)に、対照グループにおけるよりもイソフラボングループにおいて有意に低かった。12カ月の研究の全体を通じて、対照イヌにおける平均体重増加は、イソフラボンを与えたイヌのそれよりも2倍ほど多かった(図9)。
[0105] 給餌実験の12カ月にわたって3つのグループのイヌの間で、除脂肪体重変化における差はなく、対照イヌにおける有意に高い重量増加は正常なイヌにおけるいっそう高い体脂肪の蓄積に起因していたことを示す(図10)。
[0106] 対照グループとカクテルグループとの両方はイソフラボングループよりも有意に多い体脂肪を増加させた。対照グループの平均体脂肪増加は、イソフラボンを与えたイヌよりも、給餌の6カ月後に5倍多く(P=0.013、対照グループ対イソフラボングループ)、給餌の9カ月後に3倍多く(P=0.007、対照グループ対イソフラボングループ)、給餌の12カ月後に2.7倍多かった(P=0.006、対照グループ対イソフラボングループ)。」(実施例2)

(2)記載事項(ア)によれば、引用例1には、卵巣除去された、又は去勢された肥満でないイヌに、維持エネルギー要求量の125%の、10%大豆胚芽ミールを含む超高品質食餌が与えられたイソフラボングループに対して、大豆胚芽ミールを含まない食餌が与えられた対照グループでは、6ヶ月後、9ヶ月後、12ヶ月後に、有意に多い脂肪蓄積を示したことが記載されている。そうすると、上記大豆胚芽ミールを含む食餌は、脂肪の蓄積を有意に低減させる効果を有するといえるので、引用例1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「維持エネルギー要求量の125%を与えられた卵巣除去された又は去勢されたイヌにおいて、脂肪の蓄積を有意に低減させる効果を有する食餌であって、前記イヌは維持エネルギー要求量の125%の食餌を与えられ、前記食餌が大豆胚芽ミールを含む食餌」(以下、「引用発明」という。)


4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「イヌ」は「哺乳動物」であるし、引用発明の「維持エネルギー要求量の125%」は本願発明の「1日当たりの最少必要量を超えるカロリー」に相当し、イソフラボングループ(グループ2)においてはL-カルニチンも共役リノール酸も添加されていない食餌が与えられている。また「卵巣除去された」イヌは当然雌であるし、「去勢された」イヌは雄である。また、「脂肪の蓄積を有意に低減させる効果を有する」ものを与えることは、「脂肪蓄積を低減するため」のものを与えていることに他ならない。そして、大豆胚芽にダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインが含有されることは、本願優先日当時、広く知られていた事項である(必要であれば、特開2000-262244号公報[0002],表1、国際公開第2003/75686号第3頁41-43行、Journal of Chromatography B, 777 (2002) p.129-138 、TABLE2 ”soy germ”の欄、参照)。また大豆胚芽ミールは食べることができるものであるから、可食組成物であるところ、食餌に含まれている可食組成物は大豆胚芽ミールを含むといえるし、ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインは可食組成物に含まれるといえる。

そうすると、両者は、
「その1日当たりの最小必要量を超えるカロリーを摂取する雄又は雌の哺乳動物における脂肪蓄積を低減するためのものであって、
ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテインを少なくとも含む可食組成物を含み、
前記動物の1日当たりの平均カロリー摂取量が、その1日当たりの最小エネルギー必要量を超え、
前記可食組成物が大豆胚芽ミールを含み、
前記可食組成物がL-カルニチンも共役リノール酸も含まず、
前記動物がイヌであるもの。」
である点で一致し、以下の点で一見相違する。

・本願発明では「雄」の哺乳動物の脂肪蓄積を低減するのに対し、引用発明では「雄と雌」の混合集団において脂肪蓄積の低減が観察された点(以下、「相違点1」という)
・本願発明は「医薬品」に関するものであるところ、引用発明は「食餌」である点(以下、「相違点2」という)

5.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1)
引用例1においては、脂肪蓄積低減効果について、「雄」および「雌」の混合集団の平均データのみが示され、「雄」に特化したデータは示されていない。しかし、去勢された雄について、実際に試験は行われており、脂肪蓄積の低減が示されているデータには、そのような雄のデータも含まれているものである。そうすると、引用例1には、雄について脂肪蓄積の低減が行われていることが記載されているといえる。

また、仮に、雄についてそのような結果が記載されていないと見なされるとしても、雄、雌の混合集団において脂肪蓄積が低減されたことが示されている以上、雄について脂肪蓄積の低減が起こることは、当業者が予測可能な効果にすぎない。

(相違点2)
本願明細書中、実施例では、「医薬品」は、食餌としてイヌに与えられている。そうすると、本願発明にいう「医薬品」とは「食餌」の態様を含むものであると認められる。してみると、相違点2は実質的には相違点ではない。
また、仮に、「食餌」は「医薬品」とは異なるものであると解したとしても、イヌに対して「脂肪蓄積の低減」という効果を有するものを「医薬品」の態様に変更することは当業者が容易に想到しうることであるし、そのことにより格別の効果が得られるとも認められない。

したがって、本願発明は、引用例1記載の発明と同一であるか、または引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明である、もしくは、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-16 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-19 
出願番号 特願2008-538306(P2008-538306)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 理文原田 隆興  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 増山 淳子
渕野 留香
発明の名称 雄の哺乳動物における体脂肪の蓄積を低減するためのイソフラボン組成物及びその使用方法  
代理人 池田 正人  
代理人 池田 成人  
代理人 戸津 洋介  
代理人 城戸 博兒  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 黒川 朋也  

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