ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G01N |
---|---|
管理番号 | 1301461 |
審判番号 | 不服2013-19314 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-04 |
確定日 | 2015-06-03 |
事件の表示 | 特願2009- 65343「ガスの混合物を分析する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日出願公開、特開2009-175153〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成13年10月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2000年10月16日 (US)米国,2000年11月9日 (US)米国)を国際出願日とする特願2002-536530号の一部を,平成21年3月18日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成24年 3月26日付け:拒絶理由の通知 同年10月 2日付け:意見書,手続補正書の提出 同年10月17日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知 平成25年 4月30日付け:意見書,手続補正書の提出 同年 5月21日付け:平成25年4月30日付けの手続補正に ついての補正の却下の決定,拒絶査定 同年10月 4日付け:審判請求書,手続補正書の提出 第2 平成25年10月 4日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年10月 4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。なお,補正箇所を示すものとして当審が下線を付した。 「燃焼ガス排出物の多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置であって, (a)少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイであって, それぞれの化学的/電気的活性物質は,該個別ガス成分に選択された温度で暴露したときに他の化学的/電気的活性物質のそれぞれとは異なる電気的応答特性を有し, これらの4つの化学的/電気的活性物質は,式M^(1)O_(x)およびM^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物の異なる組み合わせから選ばれ;4つの金属酸化物物質の組み合わせが,少なくとも1つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含み, 式M^(1)O_(x)の金属酸化物がZnO,SnO_(2)およびNiOからなる群より選択され,そして, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物がNiFe_(2)O_(4),1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),ZnTiO_(3),MnCrO_(3),および,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物からなる群より選択され, ただし,当該4つの金属酸化物物質の組み合わせは,MnCrO_(3),および,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物からなる群より選択される少なくとも一つの金属酸化物を含む,アレイと, (b)該アレイを該ガス混合物に暴露したときに,それぞれの化学的/電気的活性物質の電気的応答を決定する手段と, (c)該電気的応答から該個別ガス成分の分析を行う手段と, を備えた,多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成24年10月 2日付けの手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置であって, (a)少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイであって, それぞれの化学的/電気的活性物質は,該個別ガス成分に選択された温度で暴露したときに他の化学的/電気的活性物質のそれぞれとは異なる電気的応答特性を有し, これらの4つの化学的/電気的活性物質は,式M^(1)O_(x),M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)およびM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物の異なる組み合わせから選ばれ;4つの金属酸化物物質の組み合わせが,少なくとも1つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)またはM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含み, 式M^(1)O_(x)の金属酸化物がZnO,SnO_(2)およびNiOからなる群より選択され, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物がNiFe_(2)O_(4),1%Nb:TiO_(2),SrNb_(2)O_(6),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3),ZnTiO_(3)およびMnCrO_(3)からなる群より選択され,ただし,4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むときは,当該式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物は1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3)またはZnTiO_(3)ではなく, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物がCuMnFe_(2)O_(4)および1%Zn:MgAl_(2)O_(4)からなる群より選択され, a,bおよびcは,a+b+c=1という条件つきで,それぞれ独立して,0.0005?1であり,xは,存在する酸素が化合物中の他の元素の電荷とのバランスをとるのに十分な数である,アレイと, (b)該アレイを該ガス混合物に暴露したときに,それぞれの化学的/電気的活性物質の電気的応答を決定する手段と, (c)該電気的応答から該個別ガス成分の分析を行う手段と, を備えた,多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置。 【請求項2】 前記ガス混合物中の成分ガスが分離されていない,請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記多成分ガス混合物に暴露したときだけ前記化学的/電気的活性物質の電気的応答から前記分析が行われる,請求項1に記載の装置。 【請求項4】 前記化学的/電気的活性物質に並列回路構成で接続された,前記ガス混合物の温度値を決定する手段をさらに備え,前記個別ガス成分が,ディジタル化された電気的応答およびディジタル化された温度値から分析される,請求項1に記載の装置。 【請求項5】 それぞれの化学的/電気的活性物質の温度が実質的に前記ガス混合物の可変温度だけで決まる,請求項1に記載の装置。 【請求項6】 選択された温度の前記ガス混合物に暴露したときの各物質の電気的応答特性が値として定量化可能であり,かつ該選択された温度の個別ガス成分に該物質を少なくとも1分間暴露した際に少なくとも1種の物質の応答値が一定であるかまたは20パーセント以下の変化を示す,請求項1に記載の装置。 【請求項7】 前記多成分ガス混合物が400℃未満の温度を有し,かつ前記アレイが前記ガス混合物内に位置して400℃以上の実質的に一定の温度を有する,請求項1に記載の装置。 【請求項8】 自動車排気系を備えた,請求項1に記載の装置。 【請求項9】 多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する方法であって, (a)少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイを提供することであって, それぞれの化学的/電気的活性物質は,該個別ガス成分に選択された温度で暴露したときに他の化学的/電気的活性物質のそれぞれとは異なる電気的応答特性を有し, これらの4つの化学的/電気的活性物質は,式M^(1)O_(x),M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)およびM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物の異なる組み合わせから選ばれ;4つの金属酸化物物質の組み合わせが,少なくとも1つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)またはM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含み, 式M^(1)O_(x)の金属酸化物がZnO,SnO_(2)およびNiOからなる群より選択され, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物がNiFe_(2)O_(4),1%Nb:TiO_(2),SrNb_(2)O_(6),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3),ZnTiO_(3)およびMnCrO_(3)からなる群より選択され,ただし,4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むときは,当該式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物は1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3)またはZnTiO_(3)ではなく, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物がCuMnFe_(2)O_(4)および1%Zn:MgAl_(2)O_(4)からなる群より選択され, a,bおよびcは,a+b+c=1という条件つきで,それぞれ独立して,0.0005?1であり,xは,存在する酸素が化合物中の他の元素の電荷とのバランスをとるのに十分な数であることと, (b)該アレイを該ガス混合物に暴露したときにそれぞれの化学的/電気的活性物質の電気的応答値を決定することと, (c)該電気的応答値から該個別ガス成分の分析を行うことと, を含む,多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する方法。」 (3)補正事項 上記請求項1についての補正は,次のアないしオの事項を含む。 ア 「多成分ガス混合物」が,「燃焼ガス排出物」のものであることを限定する。 イ 「少なくとも4つの化学的/電気的活性物質」の選択肢から,「M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)」を削除する。 ウ 「a、bおよびcは、a+b+c=1という条件つきで、それぞれ独立して、0.0005?1であり、xは、存在する酸素が化合物中の他の元素の電荷とのバランスをとるのに十分な数である」との事項を削除する。 エ 「M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)」の選択肢から「SrNb_(2)O_(6)」と「SrTiO_(3)」とを削除し,代わりに「SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物」を追加する。 オ 「4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むときは,当該式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物は1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3)またはZnTiO_(3)ではな」いという事項を削除し,「当該4つの金属酸化物物質の組み合わせは,MnCrO_(3),および,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物からなる群より選択される少なくとも一つの金属酸化物を含む」という事項を追加する。 (4)補正事項についての検討 ア 上記(3)アは上位概念から下位概念への変更,上記(3)イは択一的記載の要素の削除であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 上記(3)ウについては,上記(3)イに伴うものといえ,また,拒絶理由に示された事項についてした,明瞭でない記載の釈明ともいえるから,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮,又は第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 ウ 一般に,単独の金属酸化物と二つの金属酸化物の混合物とは,物質的にも化学的にも別物であり,本願明細書の実施例においても,単独の金属酸化物の例は記載されているが,二つの金属酸化物の混合物の例がなく,それらを同等な物質として扱っているとはいえない。してみれば,「SrNb_(2)O_(6)」及び「SrTiO_(3)」と,「SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物」とは同等なものとはいえず,また,単独の金属酸化物である「SrNb_(2)O_(6)」及び「SrTiO_(3)」の下位概念に相当するともいえない。よって,「SrNb_(2)O_(6)」及び「SrTiO_(3)」を選択肢から削除し,「SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物」を選択肢として追加することは,限定的減縮を目的とするものに該当しない。 よって,上記(3)エの補正事項は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮には該当しないし,同項第1号に掲げる請求項の削除,第3号の誤記の訂正,第4号の明瞭でない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。 (5)以上より,本件補正は,上記ウの点で,平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 2 独立特許要件について 加えて,本件補正が平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するとしても,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,以下のとおり,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (1)本件補正発明には,式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物の選択肢として,「SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物」が含まれる。 これに関連して,発明の詳細な説明の記載には,次のことが記載されている。 ア 「【0075】 実施例1 この実施例では、450℃の4種の燃焼ガス組成物の存在下における20種の金属酸化物半導電性物質の電気的性質の変化を示す。以下の表1に列挙されているシグナルは、上記の赤外線サーモグラフィー法により得たものである。これらのシグナルは、2%O_(2)/98%N_(2)である比較ガスにおける温度に対する、記載の4種のガス組成物のうちの1種に暴露したときの物質の温度差(℃)を表し、半導電性物質の電気抵抗の変化を反映している。別段の記載がないかぎり、シグナルはすべて、物質を横切って10Vの印加を行ったときに得られたものである。空欄は、そのガス組成物をその物質に接触させたときに検出可能なシグナルが得られなかったことを示す。別段の記載がないかぎり、N_(2)中2000ppmでガスを測定した。 【0076】 【表3】 」 イ 「【0078】 実施例2 この実施例では、450℃の5種の燃焼ガス組成物の存在下における8種の金属酸化物半導電性物質の電気的性質の変化を示す。以下の表2に列挙されているシグナルは、赤外線サーモグラフィー法により得たものである。これらのシグナルは、2%O_(2)/98%N_(2)である比較ガスにおける温度に対する、記載のガス組成物に暴露したときの半導電性物質の温度差(℃)である。別段の記載がないかぎり、シグナルはすべて、半導電性物質を横切って10Vの印加を行ったときに得られたものである。空欄は、そのガス組成物をその物質に接触させたときに検出可能なシグナルが得られなかったことを示す。別段の記載がないかぎり、N_(2)中2000ppmでガスを測定した。 【0079】 【表4】 」 ウ 「【0080】 実施例3 この実施例では、600℃の4種の燃焼ガス組成物の存在下における26種の金属酸化物半導電性物質の電気的性質の変化を示す。すぐ下の表3に列挙されているシグナルは、赤外線サーモグラフィー法を用いて得たものである。これらのシグナルは、2%O_(2)/98%N_(2)である比較ガスにおける温度に対する、記載のガス組成物に暴露したときの物質の温度差(℃)の測定値である。別段の記載がないかぎり、シグナルはすべて、物質を横切って10Vの印加を行ったときに得られたものである。空欄は、そのガス組成物をその物質に接触させたときに検出可能なシグナルが得られなかったことを示す。別段の記載がないかぎり、N_(2)中2000ppmでガスを測定した。 【0081】 【表5】 」 エ 「【0083】 実施例4 この実施例では、実施例3の4種の金属酸化物物質のセットを用いてIRサーモグラフィーシグナルにより600℃の記載の4種のガス組成物を識別しうることを示す。以下の 表4に結果を示す。これらのシグナルは、2%O_(2)/98%N_(2)である比較ガスにおける温度に対する、記載のガスに暴露したときの物質の温度差(℃)の測定値である。別段の記載がないかぎり、シグナルはすべて、物質を横切って10Vの印加を行ったときに得られたものである。空欄は、そのガス組成物をその物質に接触させたときに検出可能なシグナルが得られなかったことを示す。別段の記載がないかぎり、N_(2)中2000ppmでガスを測定した。 【0084】 【表6】 」 オ 「【0087】 比較例A この比較例では、実施例3の6種の物質のこのセットを用いてIRサーモグラフィーシグナルにより600℃の2種のガス組成物を識別できないことを実証し、物質を適切に選択することの重要性を示す。。以下の表5Aに結果を示す。これらのシグナルは、2%O_(2)/98%N_(2)である比較ガスにおける温度に対する、記載のガス組成物に暴露したときの物質の温度差(℃)の測定値である。別段の記載がないかぎり、シグナルはすべて、物 質を横切って10Vの印加を行ったときに得られたものである。空欄は、そのガス組成物をその物質に接触させたときに検出可能なシグナルが得られなかったことを示す。別段の記載がないかぎり、N_(2)中2000ppmでガスを測定した。 【0088】 【表8】 」 カ 「【0091】 実施例6 この実施例では、400℃の4種のガス組成物の存在下における19種の金属酸化物半導電性物質の応答の測定のためのACインピーダンス法の使用を示す。以下の表6に列挙されているシグナルは、N_(2)中10,000ppmのO_(2)におけるインピーダンスの大きさに対する、記載のガス組成物に暴露したときの物質のインピーダンスの大きさの比である。使用したガスは、N_(2)中200ppmのNO_(2)、N_(2)中200ppmのNO_(2)および10,000ppmのO_(2)、N_(2)中1000ppmのCO、ならびにN_(2)であった。 【0092】 【表10】 」 キ 「【0093】 実施例7 この実施例では、550℃の4種のガス組成物の存在下における19種の金属酸化物半導電性物質の応答の測定のためのACインピーダンス法の使用を示す。表に列挙されているシグナルは、ACインピーダンス法により得られたものである。これらのシグナルは、N_(2)中10,000ppmのO_(2)におけるインピーダンスの大きさに対する、記載のガス組成物に暴露したときの物質のインピーダンスの大きさの比である。使用したガスは、N_(2)中200ppmのNO_(2)、N_(2)中200ppmのNO_(2)および10,000ppmのO_(2)、N_(2)中1000ppmのCO、ならびにN_(2)であった。 【0094】 【表11】 」 ク 「【0095】 実施例8 この実施例では、650?700℃の4種のガス組成物の存在下における23種の半導電性物質の応答の測定のためのACインピーダンス法の使用を示す。表に列挙されているシグナルは、ACインピーダンス法により得られたものである。これらのシグナルは、N_(2)中10,000ppmのO_(2)におけるインピーダンスの大きさに対する、記載のガス組成物に暴露したときの物質のインピーダンスの大きさの比である。使用したガスは、N_(2)中200ppmのNO_(2)、N_(2)中200ppmのNO_(2)および10,000ppmのO_(2)、N_(2)中1000ppmのCO、ならびにN_(2)であった。 【0096】 【表12】 」 ケ 「【0097】 実施例9 この実施例では、800℃の4種のガス組成物の存在下における16種の半導電性物質の応答の測定のためのACインピーダンス法の使用を示す。表に列挙されているシグナルは、ACインピーダンス法により得られたものである。これらのシグナルは、N_(2)中10,000ppmのO_(2)におけるインピーダンスの大きさに対する、記載のガス組成物に暴露したときの物質のインピーダンスの大きさの比である。使用したガスは、N_(2)中200ppmのNO_(2)、N_(2)中200ppmのNO_(2)および10,000ppmのO_(2)、N_(2)中1000ppmのCO、ならびにN_(2)であった。 【0098】 【表13】 」 (2)発明の詳細な説明の記載事項についての検討 上記(1)アないしケのうち,例えば,上記(1)カには,400℃の4種のガス組成物の存在下における19種の金属酸化物半導電性物質の応答の測定のためのACインピーダンス法の使用を示した【表10】中に,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)が各々別の金属酸化物半導電性物質として使用されている。 しかし,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)を混合物として用いる例は,上記(1)アないしケのいずれにも記載されていない。 (3)第36条第6項第1号について 上記(2)より,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物を用いる本件補正発明に含まれるSrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物を化学的/電気的活性物質として用いること,また,この混合物を用いたとき,この混合物が本件補正発明の分析対象である燃焼ガス排出物の各成分に対してどのような挙動を示すのか,さらに,この混合物を用いたとき,多成分ガス混合物を分析するため,少なくとも他の3つの化学的/電気的活性物質として何を選択するのが好適なのか,発明の詳細な説明には何らの記載も示唆もなされていない。 よって,SrNb_(2)O_(6)とSrTiO_(3)の混合物を用いる本件補正発明は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 したがって,本件補正発明を特定するために必要な事項が記載された本件補正後の特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明に記載されたものではないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (4)上記(3)より,本件補正が平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するとしても,本件補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 よって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するとしても,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成25年10月 4日付けでなされた手続補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし9に係る発明は,平成24年10月 2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,上記第2[理由]1(2)の「【請求項1】」に記載のとおりのものである。 2 引用例 (1)原査定の拒絶の理由で引用され,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭57-66347号公報(以下「引用例1」という。)には,次のことが記載されている。なお,後に引用発明の認定に直接的に利用する箇所に当審が下線を付した。 ア 1頁右下欄12行?2頁左上欄2行 「本発明は異なつた既知の成分からなる混合ガスの成分ガスの種類および濃度等のガス情報を測定する混合ガス検出装置に関するものである。 従来、酸化スズ(SnO_(2)),酸化鉄(Fe_(2)O_(3)),酸化亜鉛(ZnO)などの半導体ガス検出装置は、ガス濃度を電気信号の強弱として出力することができ、使い易く安価であるために多く用いられてきた。その動作原理は、被検出ガスの上記半導体ガス検出素子の活性部への吸着による抵抗変化を、第1図に一例を示す検出回路で電圧出力として取り出すものである。」 イ 2頁右上欄12行?左下欄1行 「本発明の要点は、ガス検出素子の材料のガスに対するガス検出感度の差(以下ガス選択性と称する)を逆に利用して、被測定混合ガス中の各成分ガスに対する各ガス検出素子の検出感度をあらかじめ測定しておき、各検出素子ごとに測定される検出出力と上記の各ガス検出素子の有する成分ガスごとの既知の検出感度とから組み立てられる多元連立一次方程式を解いて混合ガスの成分ガス濃度,濃度比、特定ガス成分の有無等のガス情報を定めるようにした点にある。」 ウ 3頁左上欄6?10行 「第4図(a)は本発明の混合ガス検出装置の要部であるガス検出素子部を示す概略図である。本ガス検出素子部は6個の検出素子(以下センサ)401, 402, 403, 404, 405, 406がマトリツクス状に配置されている。」 エ 3頁右上欄7?16行 「本実施例の場合のセンサペーストは、センサ401にCoO材料、センサ402にWO_(3)+Pt材料、センサ403にVO_(2)+Ag材料、センサ404にZnO+Pd材料、センサ405にFe_(3)O_(4)材料、センサ406にSnO_(2)材料とし、各材料毎に高融点結晶化ガラスを約10%加えて混合し、有機バインダを用いて混練して作成した。 かゝる構造のガス検出素子部からの信号(電圧値)は、上部電極415と下部電極412との組み合わせによつて取り出される。」 オ 3頁左下欄7行?右下欄最下行 「第5図で51はCoO系ガス検知素子の酸素(O_(2))に対する検出出力特性、55は同系検知素子の水蒸気(H_(2)O)に対する検出出力特性、56は同系検知素子の炭化水素に対する検出出力特性、第6図で62はWO_(3)+Pt混合系ガス検知素子の水素(H_(2))に対する検出出力特性、63は同系ガス検知素子の二酸化窒素(NO_(2))に対する検出出力特性、64は同系ガス検知素子の一酸化炭素(CO)に対する検出出力特性、第7図で72はV_(2)O_(5)+Ag混合系ガス検知素子のH_(2)に対する検出出力特性、73は同系ガス検知素子のNO_(2)に対する検出出力特性、74は同系ガス検知素子のCOに対する検出出力特性、76は同系ガス検知素子の炭化水素に対する検出出力特性、第8図で82はZnO+Pd混合系ガス検知素子のH_(2)に対する検出出力特性、84は同系ガス検知素子のCOに対する検出出力特性、86は同系ガス検知素子の炭化水素に対する検出出力特性、第9図で92はSnO_(2)系ガス検知素子のH_(2)に対する検出出力特性、94は同系ガス検知素子のCOに対する検出出力特性、96は同系ガス検知素子の炭化水素に対する検出出力特性、第10図で105はFe_(3)O_(4)系ガス検知素子のH_(2)O(gas)に対する検出出力特性である。 ちなみに上記各成分ガスに対する各検知素子のガス選択度を示す検出感度は、下記の第1表に示すようである。 」 カ 6頁第4図 「 」 キ 6頁第5?6図 「 」 ク 7頁第7?10図 「 」 ケ 上記エと上記オの間で,バナジウムの酸化物が異なるが,各種ガスに対する検出感度の記載された上記オの「V_(2)O_(5)+Ag」が,上記ウの,マトリックス状に配置された6個の検出素子のうちの一つに用いられると読み取ることもできる。(もちろん,上記エの酸化物と読み取ることもできる。) また,上記オの第1表,また,上記キ及び上記クの第5?10図から,上記6個の検出素子は,混合ガスの各成分ガスに対して各々異なる検出感度を有することが読み取れる。 コ 技術常識を勘案して以上の記載事項を総合すれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「酸素,水素,二酸化窒素,一酸化炭素等の,異なった既知の成分からなる混合ガスの成分ガスの種類および濃度等のガス情報を測定する混合ガス検出装置において, 各々CoO材料,WO_(3)+Pt材料,V_(2)O_(5)+Ag材料,ZnO+Pd材料,Fe_(3)O_(4)材料,SnO_(2)材料からなる6個の検出素子がマトリックス状に配置され, 上記6個の検出素子は,上記混合ガスの各成分ガスに対して各々異なる検出感度を有し, 上記6個の検出素子への上記混合ガスの吸着による抵抗変化を,上部電極と下部電極の組み合わせにより各々電圧信号として取り出す検出回路を備え, 上記6個の検出素子ごとに測定される検出出力と各検出素子の有する成分ガスごとの既知の検出感度とから組み立てられる多元連立一次方程式を解いて上記混合ガスの成分ガス濃度,濃度比、特定ガス成分の有無等のガス情報を定めるようにした混合ガス検出装置。」 (2)引用例2 原査定の拒絶の理由で引用され,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特公平6-76980号公報(以下「引用例2」という。)には,次のことが記載されている。 ア 1欄12行?2欄13行 「【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、混合気体中に含まれるNOxガスの濃度を検出するためのNOxガス検知素子に関し、特に内燃機関等の排ガスに含まれるような高濃度のNOxガスの検出に有効なNOxガス検知素子に関するものである。」 〔従来の技術及び問題点〕 従来、使用されているNOxガス濃度測定には、化学発光法、赤外線吸収法、電気分解法等が用いられていたが、これらの方法の実施には大型の装置を要するため高価であり、また、メインテナンスが困難であるといった問題があった。 これらの問題を解決するため、SnO_(2)やAgO-V_(2)O_(5)等の金属酸化物半導体やフタロシアニン錯体等の有機半導体をNOxガス検知素子として用いた小型でメンテナンスフリーのNOxガス検知器が多くの研究者により検討されてきた」 イ 3欄17?37行 「〔問題点を解決するための手段〕 本発明者は上記の様な問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも表面に酸化触媒を含有する層を有し、特定の酸素欠陥を有するチタン原子を含有する金属酸化物をNOxガス検知素子として使用することにより、NOとNO_(2)に対して同等で且つ高い感度を示し、また、測定可能なNOxガス濃度の上限が高く、しかもNOx以外の夾雑ガスに対する感度が極めて低く、該夾雑ガスの影響が少ないという優れた特性を示すことを見い出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、非化学量論性パラメーター(δ)が0.01<δ<0.5の酸素欠陥を有する、 (a)TiO_(2)、 (b)TiO_(2)と固溶する金属とチタンとの複合酸化物、及び (c)チタンとペロブスカイト型構造の酸化物を形成する金属とチタンとの複合酸化物 よりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物(以下、含チタン酸化物ともいう)よりなり、且つ少なくとも表面に酸化触媒を含有する層を有するNOxガス検知素子である。」 ウ 4欄24?29行 「また、一般式BTiO_(3)-δで示される含チタン酸化物はペロブスカイト型の構造をとる酸化物であり、その具体的なものを例示すれば、CaTiO_(3)-δ,SrTiO_(3)-δ,BaTiO_(3)-δ,PbTiO_(3)-δ,CdTiO_(3)-δ,ZnTiO_(3)-δ,LaTiO_(3)-δ,BaTiO_(3)-δ,NdTiO_(3)-δ,SryBa-yTiO_(3)-δ,BayLa_(1)-yTiO3-δ,CaySr_(1)-yTiO_(3)-δ,等が挙げられる。」 (3)引用例3 原査定の拒絶の理由で引用され,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特公平6-23710号公報(以下「引用例3」という。)には,次のことが記載されている。 ア 1欄12行?2欄最下行 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、混合気体中に含まれるNOxガスの濃度検出を行うための新規なNOxガス検知素子に関し、特に内燃機関等の排ガスに含まれる様な高濃度のNOxガスの検出に有効なNOxガス検知素子に関するものである。 〔従来の技術及び問題点〕 従来、使用されているNOx濃度測定には、化学発光法、赤外線吸収法、電気分解法等が用いられてきたがこれらの方法の実施には大型の装置を要し高価であり、また、メンテナンスが困難であるといった問題点があった。これらの問題点を解決するため、SnO_(2)やAgO-V_(2)O_(5)等の金属酸化物半導体やフタロシアニン錯体等の有機半導体をNOxガス検知素子として用いた小型でメンテナンスフリーのNOxガス検知器が多くの研究者により検討されてきた。 かかるNOxガス検知器は、NOxガス検知素子に一対の電極を接続し、該NOxガス検知素子がNOxを吸着したときに起こる抵抗の変化を測定してNOx量を測定するものである。」 イ 7欄37行?8欄8行 「実施例2?15 一般式A_(x)Ti_(1-x)O_(2)(ただしAはAl,V,Nb,Ta,Sb,As,Ga,In,Sc,及びYよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を示し、0<x<1である)よりなる含チタン酸化物の製造は、Aの酸化物とTiO_(2)とを所定のモル比で混合し、空気中で1000℃にて1時間焼成することにより行った。また、BTiO_(3)(BはMg,Ca,Sr,Ba,Pb,Cd,Ni,Cr,Co,Mn,Zn,Fe及びLnよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を示す)よりなる含チタン酸化物の製造は、Bの炭素塩とTiO_(2)とを所定のモル比で混合し、空気中で1200℃にて1時間焼成することにより行った。」 3 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「混合ガス」は,「成分ガス」が複数種類含まれるものであるから,本願発明の「多成分ガス混合物」に相当する。 そして,引用発明1の「成分ガスの種類および濃度等のガス情報を測定する」ことは,本願発明の「個別ガス成分を分析する」ことに相当する。 してみれば,引用発明1の「異なった既知の成分からなる混合ガスの成分ガスの種類および濃度等のガス情報を測定する混合ガス検出装置」は,本願発明の「多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置」に相当する。 (2)引用発明1において「6個の検出素子がマトリックス状に配置され」ていることは,6個の検出素子が配列されている,すなわちアレイになっていることを意味する。 そして,引用発明1の「検出素子」が有する「CoO材料,WO_(3)+Pt材料,V_(2)O_(5)+Ag材料,ZnO+Pd材料,Fe_(3)O_(4)材料,SnO_(2)材料」は,「混合ガスの吸着によ」り「抵抗変化」を示す性質を備えるから,本願発明の「化学的/電気的活性物質」に相当する。 してみれば,引用発明1が備える「各々CoO材料,WO_(3)+Pt材料,V_(2)O_(5)+Ag材料,ZnO+Pd材料,Fe_(3)O_(4)材料,SnO_(2)材料からなる6個の検出素子がマトリックス状に配置され」たものは,本願発明の「少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイ」に相当する。 (3)引用発明1では「検出素子」の一つとして「SnO_(2)」を選択している。 してみれば,引用発明1の「各々CoO材料,WO_(3)+Pt材料,V_(2)O_(5)+Ag材料,ZnO+Pd材料,Fe_(3)O_(4)材料,SnO_(2)材料からなる6個の検出素子がマトリックス状に配置され」たものと,本願発明の「少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイであって, これらの4つの化学的/電気的活性物質は,式M^(1)O_(x),M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)およびM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物の異なる組み合わせから選ばれ;4つの金属酸化物物質の組み合わせが,少なくとも1つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)またはM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含み, 式M^(1)O_(x)の金属酸化物がZnO,SnO_(2)およびNiOからなる群より選択され, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物がNiFe_(2)O_(4),1%Nb:TiO_(2),SrNb_(2)O_(6),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3),ZnTiO_(3)およびMnCrO_(3)からなる群より選択され,ただし,4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むときは,当該式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物は1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3)またはZnTiO_(3)ではなく, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物がCuMnFe_(2)O_(4)および1%Zn:MgAl_(2)O_(4)からなる群より選択され, a,bおよびcは,a+b+c=1という条件つきで,それぞれ独立して,0.0005?1であり,xは,存在する酸素が化合物中の他の元素の電荷とのバランスをとるのに十分な数である,アレイ」とは, 「少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイであって, これらの4つの化学的/電気的活性物質は,金属酸化物の異なる組み合わせから選ばれ, 金属酸化物の1つとしてSnO_(2)を有するアレイ」である点で共通する。 (4)引用発明1の「抵抗変化」は,本願発明の「電気的応答」に相当する。 してみれば,引用発明1の「上記6個の検出素子への上記混合ガスの吸着による抵抗変化を,上部電極と下部電極の組み合わせにより各々電圧信号として取り出す検出回路」は,本願発明の「該アレイを該ガス混合物に暴露したときに,それぞれの化学的/電気的活性物質の電気的応答を決定する手段」に相当する。 (5)引用発明の「検出出力」は,「抵抗変化を」「電圧信号として取り出す検出回路」の出力である。 そして,引用発明の「混合ガス検出装置」は,「上記6個の検出素子ごとに測定される検出出力と各検出素子の有する成分ガスごとの既知の検出感度とから組み立てられる多元連立一次方程式を解いて上記混合ガスの成分ガス濃度,濃度比、特定ガス成分の有無等のガス情報を定めるようにした」のであるから,その「ガス情報を定める」手段を備えるのは技術常識から明らかである。 また,引用発明の「成分ガス濃度,濃度比、特定ガス成分の有無等のガス情報を定める」ことは,本願発明の「個別ガス成分の分析を行う」ことに相当する。 よって,引用発明が備える「上記6個の検出素子ごとに測定される検出出力と各検出素子の有する成分ガスごとの既知の検出感度とから組み立てられる多元連立一次方程式を解いて上記混合ガスの成分ガス濃度,濃度比、特定ガス成分の有無等のガス情報を定める」手段は,本願発明の「該電気的応答から該個別ガス成分の分析を行う手段」に相当する。 (6)以上より,本願発明と引用発明1との一致点,相違点は,次のとおりである。 「一致点」 「多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置であって, (a)少なくとも4つの化学的/電気的活性物質のアレイであって, これらの4つの化学的/電気的活性物質は,式M^(1)O_(x)の金属酸化物の異なる組み合わせから選ばれ, 式M^(1)O_(x)の金属酸化物の1つがSnO_(2)であるアレイと, (b)該アレイを該ガス混合物に暴露したときに,それぞれの化学的/電気的活性物質の電気的応答を決定する手段と, (c)該電気的応答から該個別ガス成分の分析を行う手段と, を備えた,多成分ガス混合物中の少なくとも1種の個別ガス成分を分析する装置。」 「相違点」 本願発明は「4つの金属酸化物物質の組み合わせが,少なくとも1つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)またはM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含み, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物がNiFe_(2)O_(4),1%Nb:TiO_(2),SrNb_(2)O_(6),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3),ZnTiO_(3)およびMnCrO_(3)からなる群より選択され,ただし,4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むときは,当該式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物は1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3)またはZnTiO_(3)ではなく, 式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物がCuMnFe_(2)O_(4)および1%Zn:MgAl_(2)O_(4)からなる群より選択され, a,bおよびcは,a+b+c=1という条件つきで,それぞれ独立して,0.0005?1であり,xは,存在する酸素が化合物中の他の元素の電荷とのバランスをとるのに十分な数である」のに対し, 引用発明1は「式M^(1)O_(x)の金属酸化物」のみを選択しており,上記本願発明の「式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)またはM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含」まない点。 4 相違点についての判断 上記相違点について検討する。 (1)含Ti酸化物の採用 引用発明1のように,金属酸化物へのガスの吸着による抵抗変化でガスを検出する材料として,SrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)等の含Ti酸化物は,上記2(2),(3)の引用例2及び3に記載されているように,いずれも公知であったし,その各材料で各種のガスに対する電気的応答が異なるのは自明である。 そして,引用例2,3に記載されているように含Ti酸化物は,引用発明が検出対象とするNOx等に対する感度が高いのであるから,引用発明1のSnO_(2)の他のセンサーを構成する材料として,SrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)等の含Ti酸化物を適用することは当業者が容易に想到することである。 なお,本願発明において,金属酸化物としてSnO_(2)の他にSrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)等の含Ti酸化物を採用したことによる効果について検討するに,発明の詳細な説明における実施例としては,上記2(1)アないしケのとおり,N_(2)中のNO_(2),O_(2)2%/N_(2)98%中のNO_(2),N_(2)中のCO,リファレンスであるN_(2),C_(4)H_(10)1%に対する,ZnO,SnO_(2),NiFe_(2)O_(4)等の各金属酸化物における温度変化やインピーダンスの変化を示しつつ,上記2(1)オに,N_(2)中及びO_(2)2%/N_(2)98%中のNO_(2)の2種類のガス(2種類の雰囲気でのNO_(2))は,SnO_(2),WO_(3),FeTiO_(3),NiO,SnO_(2)+5%F2889,CuFe_(2)O_(4)では同じ温度変化を示すので区別できず,物質を適切に選択することが重要である旨記載されているのみであり,結局,具体的にどういう多成分ガス混合物において,どういった金属酸化物を少なくとも4つ選ぶと,どういった効果が得られるということも記載されていないのであるから,SnO_(2)の他にSrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)等の含Ti酸化物を採用したことによる,ガスセンサとしての格別顕著な効果は認められない。 よって,引用発明1における化学的/電気的活性物質として,SnO_(2)の他にSrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。 (2)4つの金属酸化物の組み合わせ ア 除外される金属酸化物について 上記(1)で検討した,引用発明1における化学的/電気的活性物質として,SnO_(2)の他にSrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)を採用したもの(以下「引用発明+含Ti酸化物」という。)における式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物はSrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)の3つであるから,「4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むとき」という条件には該当しないこととなる。 よって,「引用発明+含Ti酸化物」は,上記相違点における「ただし,4つの金属酸化物物質の組み合わせがただ一つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物を含むときは,当該式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の金属酸化物は1%Nb:TiO_(2),MnTiO_(3),Zn_(4)TiO_(6),SrTiO_(3)またはZnTiO_(3)ではな」いものに包含されるものであるといえる。 イ M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)について 「引用発明+含Ti酸化物」には,少なくともSnO_(2),SrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)の4つの金属酸化物が含まれるものであって,本願発明の「少なくとも1つの式M^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)(「引用発明+含Ti酸化物」では,SrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)が該当)またはM^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含むもの」に相当するものになる。 そして,本願発明における4つの金属酸化物の組み合わせには,1つのM^(1)O_(x)と3つのM^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)の組み合わせのみからなるものが含まれるのであるから,「引用発明+含Ti酸化物」において採用されている1つのM^(1)O_(x)であるSnO_(2)と3つのM^(1)_(a)M^(2)_(b)O_(x)であるSrTiO_(3),ZnTiO_(3),MnTiO_(3)の他に,M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含まないものも本願発明には含まれる。 したがって,「引用発明+含Ti酸化物」における4つの金属酸化物の他に,さらに式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物を含んでいないもの,すなわち,式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物に付随する「式M^(1)_(a)M^(2)_(b)M^(3)_(c)O_(x)の金属酸化物がCuMnFe_(2)O_(4)および1%Zn:MgAl_(2)O_(4)からなる群より選択され, a,bおよびcは,a+b+c=1という条件つきで,それぞれ独立して,0.0005?1であり,xは,存在する酸素が化合物中の他の元素の電荷とのバランスをとるのに十分な数である」という条件を満たさないものであったとしても,上記「引用発明+含Ti酸化物」が,上記相違点に係る本願発明の一態様に含まれるものであることにかわりはない。 (3)以上のことから,上記(1)で検討したように上記「引用発明+含Ti酸化物」が容易に想到し得るものであるから,上記相違点に係る本願発明の構成は,当業者が容易に想到し得たことである。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-18 |
結審通知日 | 2015-01-06 |
審決日 | 2015-01-20 |
出願番号 | 特願2009-65343(P2009-65343) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G01N)
P 1 8・ 55- Z (G01N) P 1 8・ 57- Z (G01N) P 1 8・ 121- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 洋介 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
右▲高▼ 孝幸 三崎 仁 |
発明の名称 | ガスの混合物を分析する方法および装置 |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 竹林 則幸 |