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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1301598 |
審判番号 | 不服2013-18910 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-30 |
確定日 | 2015-06-02 |
事件の表示 | 特願2011-116630「コンピュータソフトウェア製品を安全に配布する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月18日出願公開,特開2011-159327〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成14年1月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年1月31日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2002-018694号の一部を,平成19年4月18日に新たな特許出願とした特願2007-109531号の一部を,平成23年5月25日に新たな特許出願としたものであって, 平成23年6月22日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,平成23年6月28日付けで手続補正がなされ,平成24年2月9日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成24年8月10日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成25年2月12日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成25年5月14日付けで意見書が提出されたが,平成25年5月29日付けで審査官により拒絶査定がなされ(発送;平成25年5月31日),これに対して平成25年9月30日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成25年12月19日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2.平成25年9月30日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年9月30日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成25年9月30日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,本願明細書の 「 【0038】 選択されたソフトウェア製品を含むパッケージ形媒体はユーザに配布される。これは,一般に認証処理以前の任意の時に生じることができ,パッケージ形媒体を顧客に送るか又は小売業者を通してその媒体へアクセスするような幾つかの手段によってなし得る。対話型コンピュータエンタテインメントシステムを使用して,その後ユーザは,自分がどのソフトウェアタイトルを賃貸,さもなければ限定的使用の制限を受ける購入をしたいかを示す。ユーザは,賃貸される利用可能なプログラム又はコンテンツのタイトルを表示する選択メニューを提示される。ユーザは,自分のユーザ公開キーを対話型コンピュータエンタテインメントシステムに入力する(ステップ308)。ステップ310では,対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キーに暗号化する。対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する。一実施例では,メモリカード公開キーは,メモリカードに記憶された情報に基づいて作成され,使用時に対話型エンタテインメントシステムに挿入されるメモリカード内にプログラム化される。次に,対話型コンピュータシステムは,このシステムに接続された表示装置のスクリーン上にこの暗号化情報を表示する(ステップ312)。」 及び, 「 【0041】 この処理は,ステップ318又は320で受信された暗号解読データ(ユーザ公開キーデータ)から,ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを検索するステップ324から続く。次に,このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)。一実施例では,ソフトウェアタイトルのためのソフトウェアプログラムは,サーバ102に密に接続又は疎に接続されるコンテンツデータベース106に記憶される。このステップでは,サーバは,ユーザが選択した購入オプションのデータをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化もする。」 (以下,上記引用の本願明細書の各段落を,「補正前の段落」という)が, 「 【0038】 選択されたソフトウェア製品を含むパッケージ形媒体はユーザに配布される。これは,一般に認証処理以前の任意の時に生じることができ,パッケージ形媒体を顧客に送るか又は小売業者を通してその媒体へアクセスするような幾つかの手段によってなし得る。対話型コンピュータエンタテインメントシステムを使用して,その後ユーザは,自分がどのソフトウェアタイトルを賃貸,さもなければ限定的使用の制限を受ける購入をしたいかを示す。ユーザは,賃貸される利用可能なプログラム又はコンテンツのタイトルを表示する選択メニューを提示される。ユーザは,自分のユーザ公開キーを対話型コンピュータエンタテインメントシステムに入力する(ステップ308)。ステップ310では,対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キー()に暗号化する。対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する。即ち,対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する。一実施例では,メモリカード公開キーは,メモリカードに記憶された情報に基づいて作成され,使用時に対話型エンタテインメントシステムに挿入されるメモリカード内にプログラム化される。次に,対話型コンピュータシステムは,このシステムに接続された表示装置のスクリーン上にこの暗号化情報を表示する(ステップ312)。」 及び, 「 【0041】 この処理は,ステップ318又は320で受信された暗号解読データ(ユーザ公開キーデータ)から,ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを検索するステップ324から続く。次に,このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)。即ち,サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する。一実施例では,ソフトウェアタイトルのためのソフトウェアプログラムは,サーバ102に密に接続又は疎に接続されるコンテンツデータベース106に記憶される。このステップでは,サーバは,ユーザが選択した購入オプションのデータを,メモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化もする。」 (以下,上記引用の各段落を,「補正後の段落」という,なお,補正後の段落に附加された下線は,審判請求人が附加したものである。)に補正された。 2.補正の適否 本件手続補正が,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲,及び,図面(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。 当初明細書等には, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する。即ち,対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する。」 という記載,及び, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)。即ち,サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する。」 という記載は存在しない。 そして,当初明細書等には, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 ことと, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であること,及び, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する」 ことと, 「サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であることを明確に指し示す記載も存在しない。 そこで,以降において, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 ことと, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であること,及び, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する」 ことと, 「サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であることが,当初明細書等の記載内容から読み取れるかについて,検討する。 (1)「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 ことと, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であるかについて 当初明細書等に, 「 【0027】 図2bは,本発明の一実施例によるクライアント/サーバ・コンピュータ・ネットワークでソフトウェア製品を配布する暗号化/暗号解読処理を示す。図2bは,図2aに示された暗号化処理の一層詳細な例示を行う。図2bは,ネットワークを介してクライアント・コンピュータ(又は「コンソール」)及びサーバコンピュータ222でユーザ220によって実行される暗号化/暗号解読処理を示す。サーバコンピュータ222は,ユーザ220により要求されたソフトウェア製品(ソフトウェアタイトルとも呼ばれる。)を供給する。ネットワークを介してソフトウェア製品の安全な配布を保証するユーザとサーバとの間のやり取りによって,多層化公開キー暗号化(PKCS)を組み込み,サーバからユーザによって記憶媒体(例えば,磁気ディスク又は光ディスク)に記憶されたソフトウェア製品コンテンツの暗号解読を可能にする。一般に,図2bに示された処理の場合,サーバ222は,クライアント・コンピュータ(コンソール)で作成された該当する秘密キーを使用して暗号解読出来るキーを暗号化する。サーバ222は,一対のキー(ユーザAとユーザB)を作成し,一方のキー(ユーザA)をユーザに送信する。このキーによって,ユーザは,ソフトウェア製品のコンテンツを暗号解読することが出来る。サーバは,ユーザから送られたキーを使用してこのキーを暗号化し,次に一対のキーの対応するキー(ユーザB)で暗号化キーを再暗号化する。そして,この二重暗号化キーをユーザに送信する。 【0028】 図2bに示された実施例の場合,ソフトウェアタイトルは,タイトル公開キー(タイトルA)で暗号化される。この処理を開始するためユーザ220は,ユーザ情報をサーバ222に供給する。サーバ222は,ユーザ情報を使用し,ユーザ公開キー(ユーザA)及びユーザ秘密キー(ユーザB)の対226を作成する。次に,サーバ222は,ユーザ220にユーザAキーを送り返す。次に,コンソールAキー228及びコンソールBキー229を含むコンソール公開キー/秘密キーの対が,ユーザ220のために作成される。ユーザは,ユーザ公開キー(ユーザA)を使用してコンソール公開キー(コンソールA)228を暗号化し,サーバ222に送信する。次に,ユーザ220は,購入されるソフトウェア製品のためタイトルIDをサーバ222に送信する。サーバ222は,特定のソフトウェア製品のためタイトル秘密キー(タイトルB)232を検索する。タイトルBキーは,タイトル公開キー(タイトルA)に対応する秘密キーである。次に,サーバ222は,ユーザ秘密キー(ユーザB)を使用してタイトルBキーを再暗号化し,ユーザ220に送信する。次に,ユーザは,タイトル秘密キー(タイトルB)を使用して暗号化ソフトウェアタイトルを暗号解読する。」(下線は,当審にて説明の都合上附加したものである。以下,同じ。) という記載が存在し,上記引用の段落【0028】に記載された,下線を附した記載内容によれは,当初明細書等には, “ユーザ220は,サーバ222から送られたユーザAキー(ユーザ公開キー(ユーザA)とも表記)を用いて,コンソール公開キー(コンソールA)228を暗号化する”ことが記載されていることが読み取れ,この処理内容は,公開鍵暗号系を用いた,通常の“鍵配送”の手法であることは,当業者には周知の技術事項である。 そして,当初明細書等には, 「 【0032】 図2aに示されるように,図1のシステムを使用する利用可能な4つの配布及び顧客アクセスの実施例が考えられる。第1の実施例は,ソフトウェア製品がパッケージ形記憶媒体122を使用してオフラインで顧客に配布され,顧客が暗号解読情報を電話機132を使用してサーバにオフラインで供給する実施例である。本実施例の場合,ゲームコンソールは,スタンドアロン装置として使用され,サーバシステム110に接続されない。 【0033】 残りの実施例の場合,ゲームコンソール114は,直接通信又はコンピュータネットワークを介してサーバシステム110に接続され,このネットワークの幾つかの態様は,顧客トランザクションの配布及び/又は暗号解読の面で使用される。第2の実施例は,ソフトウェア製品がネットワーク108を介して製品の送信によるオンラインで顧客に配布され,顧客はネットワーク108及びゲームコンソール114を介して暗号解読情報をサーバシステム110に供給する実施例である。第3の実施例は,ソフトウェア製品がパッケージ形記憶媒体122の使用によるオフラインで顧客に配布され,顧客がネットワーク108及びゲームコンソール114を介して暗号解読情報をサーバシステム110に供給する実施例である。第4の実施例は,ソフトウェア製品がネットワーク108を介して製品の送信によるオンラインで顧客に配布され,顧客は,電話機132を使用してオフラインで暗号解読情報をサーバシステム110に供給する実施例である。」 と記載されていて,上記で引用した段落【0027】の「図2bは,図2aに示された暗号化処理の一層詳細な例示を行う」という記載内容と併せると,当初明細書等には,“【図2b】における,【図2a】に示された暗号化処理について詳述された実施例”は,更に,4つのバリエーションの実施例に分かれることが示されている。 そして,当初明細書等の段落【0034】?段落【0045】に記載された内容は,【図3】に関連するものであって,当初明細書等の段落【0034】に,「図3は,本発明のオフライン配布実施例のための限定使用のソフトウェア製品を配布するステップを示すフローチャートである」と記載されていることから,当初明細書等の段落【0034】?段落【0045】に記載されている実施例は,段落【0033】に記載された「第3の実施例は,ソフトウェア製品がパッケージ形記憶媒体122の使用によるオフラインで顧客に配布され,顧客がネットワーク108及びゲームコンソール114を介して暗号解読情報をサーバシステム110に供給する実施例」に相当するものであることが読み取れる。 そこで,第3の実施例の処理に関して記述された,上記において補正前の段落【0038】として引用した記載中の, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 という処理に関して,前後の記載内容も含めて検討すると,当初明細書等の【図3A】にも,310という番号を附加して, 「製品およびユーザメモリカードのためのID番号がユーザ公開キーに暗号化される」 と記載されていることから,「ユーザ公開キーに暗号化される」という記載が誤記であるとは認められない。 そして,上記引用の処理は,上記において引用した補正前の段落【0038】に記載された内容から, “ユーザの対話型コンピュータエンタテインメントシステムにおいて行われる” ものであることが,読み取れる。 そして,この処理の結果が,同じく段落【0038】に記載された, 「次に,対話型エンタテインメントシステムは,このシステムに接続された表示装置のスクリーン上にこの暗号化情報を表示する」 における「暗号化情報」を指すものであるとすると,該「暗号化情報」は,当初明細書等の段落【0039】に, 「ユーザに提供された暗号化情報には,ユーザが製品を受領し,使用することが認証されていることを検証するため,ユーザがサーバに供給する暗号解読情報が含まれている」 と記載されているように「暗号解読情報」が含まれており,該「暗号解読情報」は,当初明細書等の段落【0039】に, 「ユーザは,ゲームコンソールがコンピュータネットワークを介してサーバシステムに接続されるか否かにより,オフライン又はオンラインのいずれかで暗号解読情報をユーザに送信すること出来る」という意味不明の記載があるものの,同じく,段落【0039】に, 「ユーザがサーバに直接に接続されない場合(オフライン),ユーザは,スクリーンに表示された暗号解読情報を電話機によってサーバに送信する(ステップ318)。ゲームコンソールが直接通信ネットワークを介してサーバに接続される場合,ユーザは,暗号解読情報をネットワーク回線を介してサーバに送信する」 と記載されているように, “「暗号解読情報」が,ユーザから,サーバに送信される” ことが読み取れる。 そして,“サーバに送信された「暗号解読情報」”に対する,サーバ側における処理としては,当初明細書等の,上記において補正前の段落【0041】として引用した記載中に, 「この処理は,ステップ318又は320で受信された暗号解読データ(ユーザ公開キーデータ)から,ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを検索するステップ324から続く」 とあることから,上記引用の段落【0041】の記載中の「暗号解読データ」と,段落【0038】,及び,段落【0039】に記載された「暗号解読情報」とが,同一のものであるとすると,上記引用の段落【0041】における“サーバ側の処理”は,【図3B】の,番号「324」が与えられた, 「サーバがソフトウェアタイトルID番号およびメモリーカード公開キーをユーザ公開キーから引き出す」 に対応するもとであるから,結局,該“サーバ側の処理”は, “サーバが,ソフトウェアタイトルID番号およびメモリーカード公開キーを,受信されたユーザ公開キーから引き出す” 処理であることが読み取れる。 以上検討した事項から,当初明細書等に記載された「第3の実施例」の,当初明細書等の段落【0038】?段落【0041】に記載された,「ユーザ」と,「サーバ」との間の処理は, “ユーザの対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化し, 対話型コンピュータエンタテインメントシステムは,このシステムに接続された表示装置のスクリーン上にこの暗号化情報を表示し, ユーザに提供された暗号化情報には,ユーザが製品を受領し,使用することが認証されていることを検証するため,ユーザがサーバに供給する暗号解読情報が含まれ, ユーザは,スクリーンに表示された暗号解読情報を,オフラインの場合に,電話機によってサーバに送信し,ゲームコンソールが直接通信ネットワークを介してサーバに接続される場合は,暗号解読情報をネットワーク回線を介してサーバに送信し, サーバは,受信された暗号解読情報(ユーザ公開キー)から,ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを引き出す” ものであることが読み取れる。 そして,段落【0038】においては,「メモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化」したものを「暗号化情報」と呼ぶと読み取れ,段落【0039】において,該「暗号化情報」に「暗号解読情報」が含まれると記載され,段落【0041】においては,「暗号解読データ」=「ユーザ公開キーデータ」であると記載されていて, 段落【0038】の記載に従えば,「ユーザ公開キー」=「暗号化情報」であると読み取れることから,「ユーザ公開キー」に対応する「情報」に関して,表現が一致しない点が存在するものの, 段落【0038】の「メモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化」という記載内容,及び,段落【0041】の「受信された暗号解読データ(ユーザ公開キーデータ)から,ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを検索する」という記載内容,並びに,【図3B】の「サーバがソフトウェアタイトルID番号およびメモリカード公開キーをユーザ公開キーから引き出す」という記載内容のうち,特に,段落【0041】の「(ユーザ公開キーデータ)から・・・・検索する」という内容,及び,【図3B】の“サーバが,ユーザ公開キーから引き出す”という記載内容から,“サーバ側に,「ID番号」と,「メモリカードの公開キー」が含まれる,「ユーザの公開キー」が送信されている”ことは明らかであり,このことから,「ユーザ」から,段落【0038】?段落【0041】,及び,【図3B】に記載されている「ユーザの公開キー」とは,暗号化された「ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キー」とを,ユーザからサーバへ運ぶための“入れ物”を意味するものと解される。 仮に,当初明細書等の段落【0038】?段落【0041】に記載された事項が,通常の公開鍵暗号系を用いた“鍵配送”であれば,「ユーザの公開キー」が,「ユーザ」側において“暗号化”に用いられる場合に,該「ユーザの公開キー」が,「サーバ」側に送信されることがないことは,暗号の技術分野においては,周知の技術事項である。 まして,「ユーザの公開キー」が,その中に,“他の情報”を含むという構成は,本願における特徴的な構成であって,通常の公開鍵暗号系の“鍵配送”とは,明らかに異なるものである。 以上検討したように,当初明細書等に記載された, 「対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キーに暗号化する」 ことと,本件手続補正によって,本願明細書の段落【0038】に附加された, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化される」 とが,同義であるということは,当初明細書等の記載内容からは読み取れない。 よって,本件手続補正によって補正された,補正後の段落【0038】の, 「ステップ310では,対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キー()に暗号化する。対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する。即ち,対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する。」(段落【0038】当該引用箇所に附加された下線は,審判請求人が,本件手続補正において附加したものである。) は,当初明細書等に記載されたものではない。 (2)「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する」 ことと, 「サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であるかについて, 当初明細書等の段落【0041】に記載された, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)」(下線は,当審にて附加したものである。以下,同じ。) は,当初明細書等の【図3B】には,番号326が附加されて, 「サーバがソフトウェアタイトルパスワードをデータベースから引き出しこのパスワードをシステム公開キーおよびユーザ秘密キーに暗号化する」 と記載されていて, 段落【0041】においては,「メモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方に暗号化する」ものが,「ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キー」であるのに対して, 【図3B】においては,「システム公開キーおよびユーザ秘密キーに暗号化する」ものが,「ソフトウェアタイトルパスワード」である点で,発明の詳細な説明の記載内容と図面の記載内容が一致していないが,どちらの記載内容も,上記(1)で検討した事項から, 「メモリーカード公開キー」,及び,「ユーザ秘密キー」を,「ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キー」,或いは,「ソフトウェアタイトルパスワード」の“入れ物”として表現している態様を含むものである。 仮に,「メモリーカード公開キー」,及び,「ユーザ秘密キー」を,「ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キー」,或いは,「ソフトウェアタイトルパスワード」の“入れ物”ではなく,当初明細書等の段落【0037】に, 「サーバは,ユーザのためのユーザ公開キー及びユーザ秘密キーを作成する」 と記載されていることと,上記引用の段落【0037】の記載内容と,上記で引用した,当初明細書等の段落【0027】,段落【0028】に記載された内容を考慮して,上記段落【0041】における「ユーザ秘密キー」を,公開鍵暗号系における「ユーザ秘密キー」であると解釈すると, 段落【0041】における「サーバ」側の処理である, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)」 に対応する,「ユーザ」側の処理として,当初明細書等の段落【0042】に, 「ステップ332では,対話型コンピュータエンタテインメントシステムは,このデータをユーザ秘密キーを使用して暗号解読し,暗号解読データをメモリカードに記憶する」 と記載されていて, 当初明細書等の段落【0041】において, “「サーバ」側で,「ユーザ秘密キー」を用いて暗号化された「この秘密キー」” を,当初明細書等の段落【0042】において, “「ユーザの対話型コンピュータエンタテインメントシステム」側において,「ユーザ秘密キー」を使用して暗号解読する” ことは,当該技術分野における周知の技術知識からは,あり得ない構成であるから, 当初明細書等の段落【0041】に記載されている, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)」 と,本件手続補正による附加された, 「サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する」 とが,同義であると解釈することはできない。 なお,上記引用の段落【0042】に記載された内容に対応すると思われる,【図3B】の,番号332を附加された記載内容は, 「ゲームコンソールがデータをユーザ公開キーで暗号解読しソフトウェアタイトルをメモリカードに記憶する」 であり,加えて,当初明細書等の段落【0041】に記載された, 「サーバは,ユーザが選択した購入オプションのデータをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化もする」 という「サーバ」側に対応する,「ユーザ」側の処理として,段落【0043】に, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムに挿入した後、システムは、次にソフトウェアタイトルを始動する(ステップ334)。始動時,ソフトウェアタイトルは,タイトルの秘密キー及び購入オプション情報をメモリカード秘密キーを使用して暗号解読する」 と記載されていて,仮に,段落【0042】に記載された, 「このデータをユーザ秘密キーを使用して暗号解読」 が誤記であり,上記において引用した,当初明細書等の【図3B】の番号332を附加した記載内容が正しいとすると, 当初明細書等における「この秘密キー」と,「購入オプション」については, 暗号化に,「ユーザ秘密キー」,及び,「メモリカード公開キー」を用い, 復号に,「ユーザ公開キー」,及び,「メモリカード秘密キー」を用いているので,公開鍵暗号系の処理としては矛盾がないことを附言しておく。 以上,(1),及び,(2)において検討したとおりであるから,当初明細書等の記載内容からは, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 ことと, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であること,及び, 「このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する」 ことと, 「サーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ステップ324でユーザ公開キーから引き出したメモリカード公開キー及びステップ304で作成したユーザ秘密キーを用いて暗号化する」 こととが,同義であることとを読み取ることが出来ず,また,仮に,段落【0042】に記載された内容が誤記であったとしても, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 ことと, 「対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーを,ステップ306にてサーバから供給されたユーザ公開キーを用いて暗号化する」 ことが,同義であることは,依然として,読み取ることはできない。 よって,本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。 3.補正却下むすび したがって,本件手続補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成25年9月30日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,平成24年8月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項23に記載された事項により特定されるものである。 第4.原審の拒絶理由 原審における,平成25年2月12日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)は,次のとおりである。 「 理 由 この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 記 明細書段落【0037】には, 「即ち,ステップ304では,サーバは,ユーザのためユーザ公開キー及びユーザ秘密キーを作成する。」 というように,ステップ304において,「ユーザ公開キー」と「ユーザ秘密キー」のペアを作成している。 (なお,当該「ユーザ公開キー」はステップ306によってユーザに供給される。) そして,明細書段落【0038】には, 「ステップ310では,対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キーに暗号化する。対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する。一実施例では,メモリカード公開キーは,メモリカードに記憶された情報に基づいて作成され,使用時に対話型エンタテインメントシステムに挿入されるメモリカード内にプログラム化される。」 というように,ステップ310において,「賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号」と「メモリカード公開キー」それぞれ(「賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号」は「メモリカード公開キー」の一種?)を暗号化して「ユーザ公開キー」を作成することが開示されている。 つまり,ステップ304及び306によってユーザが得た当該「ユーザ公開キー」は,利用されることなく再作成,すなわち,上書きされる。 なお,出願人は,平成24年8月10日付けの意見書において, 「次に,これについて反論する。ステップ310では,タイトルIDとメモリ公開キーを,ステップ306にてサーバから提供されたユーザ公開キーに暗号化しているのであって,「ユーザ公開キー」を新たに作成しているのではない。」 と主張している。 しかしながら,ステップ304において「ユーザ公開キー」は既に作成されているにも関わらず,ステップ310において(「ユーザ公開キー」を暗号化する等の「ユーザ公開キー」の利用に関する趣旨ではなく)「ユーザ公開キー」に暗号化すると規定されているのであるから,ユーザ公開キーが暗号化によって新たに作成されているのであるといえ,出願人の主張は採用しない。 更に,明細書段落【0041】には, 「次に,このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)。」 というように,ステップ326において,「ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キー」を暗号化して「メモリカード公開キー」と「ユーザ秘密キー」を作成することが開示されている。 つまり,ステップ304で作成された「ユーザ秘密キー」は利用されることなく再作成,すなわち,上書きされる。 なお,出願人は,平成24年8月10日付けの意見書において, 「これについて反論する。ステップ326では,「ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キー」を,ステップ304にて抽出した「メモリカード公開キー」とステップ304で生成した「ユーザ秘密キー」に暗号化することが記載されているが,「メモリカード公開キー」と「ユーザ秘密キー」を作成することは記載されていない。」 と主張している。 しかしながら,ステップ304において「ユーザ秘密キー」は既に作成されているにも関わらず,ステップ310において(「ユーザ秘密キー」を暗号化する等の「ユーザ秘密キー」の利用に関する趣旨ではなく)「ユーザ秘密キー」に暗号化すると規定されているのであるから,ユーザ秘密キーが暗号化によって新たに作成されているのであるといえ,出願人の主張は採用しない。 そうすると,ステップ304で作成された「ユーザ公開キー」と「ユーザ秘密キー」のペアは,ステップ310において「ユーザ公開キー」が(「ユーザ秘密キー」と無関係に)再作成され,ステップ326において「ユーザ秘密キー」が(「ユーザ公開キー」と無関係に)再作成されてしまい,「ユーザ公開キー」と「ユーザ秘密キー」との対応関係が失われてしまうので,所望の認証ができない,すなわち,本願発明の目的を達成できない。 (なお,以上のことから,ステップ310において「メモリカードに記憶された情報に基づいて作成され」た「メモリカード公開キー」を,ステップ326において「ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キー」を暗号化することによって作成し直すことに,どのような技術上の意義があるのか不明である。) よって,この出願の発明の詳細な説明は,請求項1乃至23に係る発明について,経済産業省令で定めるところにより記載されたものではない。 なお,この出願は,出願内容が著しく不明確であるから,請求項1乃至23に係る発明については,新規性,進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。」 第5.当審の判断 上記「第2.平成25年9月30日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において指摘したとおり, 本願明細書の段落【0027】の「図2bは,図2aに示された暗号化処理の一層詳細な例示を行う」という記載内容と,本願明細書の段落【0032】の「図2aに示されるように,図1のシステムを使用する利用可能な4つの配布及び顧客アクセスの実施例が考えられる。」という記載内容から,本願の,“【図2b】における,【図2a】に示された暗号化処理について詳述された実施例”は,更に,4つのバリエーションの実施例に分かれることが示されていることが読み取れ, そして,本願明細書の段落【0034】?段落【0045】に記載された内容は,【図3】に関連するものであって,本願明細書の段落【0034】に,「図3は,本発明のオフライン配布実施例のための限定使用のソフトウェア製品を配布するステップを示すフローチャートである」と記載されていることから,本願明細書の段落【0034】?段落【0045】に記載されている実施例は,その段落【0033】に記載された「第3の実施例は,ソフトウェア製品がパッケージ形記憶媒体122の使用によるオフラインで顧客に配布され,顧客がネットワーク108及びゲームコンソール114を介して暗号解読情報をサーバシステム110に供給する実施例」に相当するものであることが読み取れる。 そこで,本願の【図2B】に詳述された,本願の【図2A】の「暗号化処理」と,本願明細書の段落【0034】?段落【0045】に記載され,対応する図面が,本願の【図3A】,及び,【図3B】である「第3の実施例」との対応について検討すると, 原審拒絶理由においても指摘され,上記「第2.平成25年9月30日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において引用したとおり,本願明細書の段落【0037】に, 「サーバは,ユーザのためのユーザ公開キー及びユーザ秘密キーを作成する」 と記載され,これは,本願明細書の段落【0028】に記載された, 「サーバ222は,ユーザ情報を使用し,ユーザ公開キー(ユーザA)及びユーザ秘密キー(ユーザB)の対226を作成する」 に対応するものと解される。 そして,本願明細書の段落【0037】に記載された, 「サーバは,ユーザにユーザ公開キーを与える」 が,本願明細書の段落【0028】に記載された, 「サーバ222は,ユーザ220にユーザAキーを送り返す」 に対応するものと解される。 「第3の実施例」においては,「ユーザ」側において,上記引用の「サーバ」側の処理に引き続く処理として,原審拒絶理由において指摘され,上記「第2.平成25年9月30日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」,及び,「2.補正の適否」において引用したとおり,本願明細書の段落【0038】に, 「ステップ310では,対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キーに暗号化する。対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する」 と記載されている。 そして,上記引用の段落【0038】記載中の,「ユーザ公開キーに暗号化する」という処理に対応する,「サーバ」側の処理として,上記「第2.平成25年9月30日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討したとおり,本願明細書の段落【0041】に, 「受信された暗号解読データ(ユーザ公開キーデータ)から,ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを検索する」 と記載され,上記引用の段落【0038】の記載内容に対応する,【図3A】の,番号310を附加された, 「製品およびユーザメモリカードのためのID番号がユーザ公開キーに暗号化される」 という記載に対応する,「サーバ」側の処理を示した段落【0041】の記載内容に対応する,【図3B】の,番号324を附加された, 「サーバがソフトウェアタイトルID番号およびメモリーカード公開キーをユーザ公開キーから引き出す」 という記載から,「第3の実施例」においては,「サーバ」側において,「タイトルのID番号」と「メモリカードの公開キー」とを,「ユーザの公開キー」として暗号化したものを,「ユーザ」側から受け取っていることは明らかであって,このことから,段落【0038】に記載された,「ユーザ公開キーに暗号化する」は誤記ではないことは明らかである。 そうすると,本願明細書の段落【0037】の記載内容において,「サーバ」側が作成した,「ユーザ公開キー」,「ユーザ秘密キー」対のうちの,「ユーザ」側に送信された,「ユーザ公開キー」は,「ユーザ」側によって,“賃貸されるソフトウェアタイトルID番号およびメモリカード公開キーをユーザ公開キーに暗号化する”ことによって,“新たなユーザ公開キー”が作成されることになり,この“新たなユーザ公開キー”は,「サーバ」側で作成した「ユーザ公開キー」とは異なるものであり,「サーバ」側で作成した「ユーザ秘密キー」を用いて暗号化した情報を復号することは出来ず,また,上記“新たなユーザ公開キー”を用いて暗号化した情報は,上記「ユーザ秘密キー」で復号出来ないことは明らかであるから,本願明細書の段落【0041】において,「サーバ」側が,「ユーザ」側から受け取った,「ユーザ公開キーデータ」から,どのようにして,「ソフトウェアタイトルのID番号及び対話型コンピュータエンタテインメントシステムのメモリカードの公開キーを検索する」ことが可能であるのか,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面に記載された内容からは不明である。 また,本願明細書の段落【0041】に記載された, 「次に,このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)」 についても,上記引用の段落【0041】の記載内容を, “サーバが,データベースから,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを検索し,前記検索した秘密キーを,メモリ公開キーへ暗号化すると共に,ユーザ秘密キーへ暗号化する”ものと解釈すると, “サーバにおいて,ユーザ秘密キーを,データベースに保持されている,個々のソフトウェアタイトルに対応した秘密キーを用いて,新たに生成する”ことになるので,本願明細書の段落【0041】において,“新たに生成されたユーザ秘密キー”は,本願明細書の段落【0037】において,「サーバ」によって生成された,「ユーザのためのユーザ公開キー及びユーザ秘密キー」のうちの,「ユーザ秘密キー」とは,明らかに異なるものであり,上記“新たに生成されたユーザ秘密キー”を用いて暗号化されたデータは,本願明細書の段落【0037】において,「サーバ」によって生成された,「ユーザ公開キー」によって復号することは出来ず,また,段落【0038】において,「ユーザ」側で生成された,“新たなユーザ公開キー”と対になるものとも認められない。 そして,本願明細書の段落【0041】には,更に, 「サーバは,ユーザが選択した購入オプションのデータをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化もする」 と記載され,本願明細書に,上記「第2.平成25年9月30日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において引用した記載も含め, 「【0042】 ステップ328では,サーバは,秘密キー及び購入オプション情報をユーザに送信する。図3に示されたオフライン配布実施例の場合,この情報は,電話機132を介してユーザに提供してもよい。次に,ユーザは,この暗号化情報を対話型コンピュータエンタテインメントシステムへ入力する(ステップ330)。ステップ332では,対話型コンピュータエンタテインメントシステムは,このデータをユーザ秘密キーを使用して暗号解読し,暗号解読データをメモリカードに記憶する。」 と記載されていて,上記引用の段落【0042】に記載された「暗号化情報」とは,上記引用の段落【0041】において,“ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ユーザ秘密キーへ暗号化した”“新たなユーザ秘密キー”,及び,“購入オプションのデータを,ユーザ秘密キーへ暗号化した”“新たなユーザ秘密キー”と解される。 そして,上記引用の段落【0042】においては,「ユーザ」側は,上記「暗号化情報」を,「ユーザ秘密キーを使用して暗号解読」しているが,上記において引用したとおり,「ユーザ」側には,本願明細書の段落【0037】において,「サーバ」が作成した,「ユーザ公開キー」しか与えられていないので,上記“新たなユーザ秘密キー”を,「ユーザ」側に存在しないはずの,「ユーザ秘密キー」を「使用して暗号解読する」とはどのような態様を表現したものか不明である。 また,仮に,上記引用の段落【0041】における, 「この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する」 及び, 「ユーザが選択した購入オプションのデータをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化もする」 が,“?それぞれで暗号化する”の誤記であったとしても,上記引用の段落【0042】に記載された内容から, “「ユーザ秘密キー」で暗号化した,「秘密キー」,「購入オプション」を,「ユーザ秘密キー」を使用して暗号解読する” ことになり,公開鍵暗号系において,“秘密キーで暗号化したものを,秘密キーで復号する”ことはあり得ないことから,上記引用の段落【0041】,及び,段落【0042】に記載された一連の処理を含む,上記「第3の実施例」が,公開鍵暗号系の処理を行っているとは認められない。 したがって,上記において言及したように,上記「第3の実施例」は,公開鍵暗号系の暗号処理に関する“【図2b】における,【図2a】に示された暗号化処理について詳述された実施例”の「4つの配布及び顧客アクセスの実施例」の一つであるとされているが,以上に検討したとおりであるから,““?それぞれで暗号化する”の誤記である”と解釈した場合でも,上記「詳述された実施例」と,上記「第3の実施例」との対応関係が,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面に記載された内容からでは,不明である。 以上に検討したとおりであるから,原審拒絶理由において指摘された,本願明細書の段落【0038】に記載された, 「ステップ310では,対話型エンタテインメントシステムは,賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号もユーザ公開キーに暗号化する。対話型コンピュータエンタテインメントシステムはメモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化する。一実施例では,メモリカード公開キーは,メモリカードに記憶された情報に基づいて作成され,使用時に対話型エンタテインメントシステムに挿入されるメモリカード内にプログラム化される。」 及び,本願明細書の段落【0041】に記載された, 「次に,このサーバは,ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーをデータベースから検索し,この秘密キーをメモリカード公開キー及びユーザ秘密キーの両方へ暗号化する(ステップ326)。」 が,どのような態様を表現したものであるか不明であり, 結果として,本願明細書の段落【0037】に記載された,“サーバによって生成される「ユーザ公開キー及びユーザ秘密キー”と,本願明細書の段落【0038】に記載された,“賃貸されるソフトウェアタイトルのID番号と,メモリカードの公開キーをユーザ公開キーに暗号化したもの”と,本願明細書の段落【0041】に記載された,“ソフトウェアタイトル用の対応する秘密キーを,ユーザ秘密キーへ暗号化したもの”との対応関係が不明である。 よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載したものでない。 第6.むすび したがって,本願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-10-30 |
結審通知日 | 2014-11-25 |
審決日 | 2014-12-16 |
出願番号 | 特願2011-116630(P2011-116630) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和田 財太 |
特許庁審判長 |
山崎 達也 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 石井 茂和 |
発明の名称 | コンピュータソフトウェア製品を安全に配布する方法及びシステム |
代理人 | 高橋 要泰 |
復代理人 | 大塩 剛 |