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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1301607
審判番号 不服2014-9423  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-21 
確定日 2015-06-01 
事件の表示 特願2012-204154「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 60043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月18日の出願であって、平成25年8月27日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年2月27日付け(発送日:同年3月6日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年5月21日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされ、その後、当審における平成27年1月9日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年3月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
基板に搭載されると共に所定方向に沿って相手側コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
前記コネクタは、2対の差動対を構成するコンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングとを備えており、
前記コンタクトの夫々は、前記相手側コネクタとの接触部を有し且つ前記ハウジングに圧入保持される第一部位と、前記基板に接続固定される第二部位と、前記第一部位と前記第二部位とを連結する連結部とを有しており、
前記コンタクトの前記第一部位は一列に並んでおり、
前記コンタクトの前記第二部位は二列に並んでおり、
前記差動対の夫々を構成する2つの前記コンタクトの前記第二部位は、互いに異なる列に属しており、
前記所定方向と直交する幅方向において、前記第二部位及び前記連結部は前記第一部位の前記接触部よりも小さい幅を有しており、
前記第一部位には、前記第一部位を前記ハウジングに圧入する際に治具により押圧するための肩部が設けられており、
前記幅方向において、前記肩部の幅は、前記接触部の幅よりも大きく、前記連結部の幅よりも大きく、
前記第一部位は、互いに等しい長さを有しており、
前記第二部位は、互いに等しい長さを有しており、
前記連結部は、前記所定方向と交差する方向に夫々延びており、且つ、互いに等しい長さを有しており、
前記コンタクトの信号伝送経路長は互いに等しいコネクタ。」

第3 刊行物に記載された事項
1 当審における拒絶の理由に引用した特開2010-10129号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「ソケット、プラグ、及びコネクタ装置」に関して、図面(特に、【図1】ないし【図4】参照。)とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【0021】
図1乃至図4を参照すると、第一舌状部11は第二舌状部12の上方に位置し、第一舌状部11の厚さは第二舌状部12より薄い。第一舌状部11の第二舌状部12に対向する取付壁111には、第一端子2を装着するための第一収容溝112が設けられる。第一収容溝121は五本形成され、五本の第一端子2を装着している。
【0022】
第二舌状部12は、前記第一舌状部11の取付壁111に対向する頂壁121と、回路基板に対向する底壁122と、頂壁121及び底壁122を連接するための両側壁125とを含む。前記頂壁121及び底壁122には、第二端子3を装着するための第二収容溝123及び124がそれぞれ凹んで形成される。前記頂壁121の第二収容溝123と底壁122の第二収容溝124とは、各々、二本形成され、二本の第二端子3をそれぞれ装着している。第二舌状部12の両側壁125には、前記第三端子24を装着するための受入溝126がそれぞれ形成される。
【0023】
前記第一端子2は、平板状の接触部21と、接触部21から後向きに延在し、折曲がる連接部22と、回路基板に接続するための端子部23とを含む。第一端子2は前記絶縁ハウジング1の第一収容溝112に装着され、接触部21は第一舌状部11の取付壁111に貼り付けられ、相手プラグ200と接続するように第一収容空間110に露出する。
【0024】
第一端子2は、高速伝送可能な五本の端子からなり、中央の接地端子(参照記号なし)は、両側の一対の差動信号端子(参照記号なし)よりも第一舌状部11の先端側に長く、これによって、プラグ200をソケット100に挿入し接続する時に、接地端子が信号端子よりも先に接続されるので、静電気放電を防止できる。」

(2)上記(1)の段落【0024】の「一対の差動信号端子」との記載から、第一端子2は、2対の差動対を構成している。

(3)上記(1)の段落【0023】の「第一端子2は、平板状の接触部21」「を含む」との記載及び「第一端子2は前記絶縁ハウジング1の第一収容溝112に装着され、接触部21は第一舌状部11の取付壁111に貼り付けられ、相手プラグ200と接続する」との記載から、第一端子2の夫々は、相手プラグ200側のコネクタとの接触部を有し且つハウジングに保持される接触部を有しているといえる。また、上記(1)の段落【0024】の「プラグ200をソケット100に挿入し接続する」との記載から、ソケット100は、相手プラグ200と嵌合可能であることは明らかである。

(4)上記(1)の段落【0023】の「回路基板に接続するための端子部23とを含む」との記載及びコネクタ装置の機能から、ソケット100が回路基板に搭載されること及び端子部23が回路基板に接続固定されることは明らかである。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「基板に搭載されると共に所定方向に沿って相手プラグ200と嵌合可能なソケット100であって、
前記ソケット100は、2対の差動対を構成する第一端子2と、前記第一端子2を保持する絶縁ハウジング1とを備えており、
前記ソケット100に含まれるの第一端子2の夫々は、前記相手プラグ200との接触部21を有し且つ前記ハウジングに保持される接触部21と、前記基板に接続固定される端子部23と、前記接触部21と前記端子部23とを連結する連接部22とを有しており、
前記ソケット100の前記接触部21は一列に並んでいる、
ソケット100。」

2 当審における拒絶の理由に引用した特開平10-106668号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「コネクタ」に関して、図面(特に、【図1】参照。)とともに、以下の事項が記載されている。

(1)「【0020】また、圧入部23は、幅方向の寸法W4がコンタクト部21の幅寸法W1,W2および中央部W3の幅寸法よりも大きく形成されており、コンタクト保持溝16の下部16aおよび貫通孔15の幅寸法W6は、中央部の幅寸法W3と等しく形成されている。
【0021】このように構成されたプラグコンタクト20は、プラグハウジング10の底部から、背面21dを底部16cに当接させながらコンタクト保持溝16内に挿入される。ここで、圧入部23は貫通孔15の幅よりも大きく形成されているため、プラグコンタクト20のプラグハウジング10への挿入を行うことにより、プラグコンタクト20がしっかりと保持される。
【0022】また、コンタクト保持溝16の深さD1は、コンタクト部21の厚さt1よりも浅く形成されており、開口部の幅W5は本体部21fの表面の幅W2よりも若干広い幅で形成されている。このため、コンタクト部21を挿入することにより、本体部21fの表面がコンタクト保持溝16から突出した状態、すなわち外側端面12aから突出した状態で保持される。
【0023】このとき、突出部21eは両端面21gがコンタクト保持溝16の両側面16dに当接して食い込んでいくため、プラグコンタクト20がコンタクト保持溝16に保持されることとなる。このため、圧入部23のみならずコンタクト部21の先端部近傍においても、プラグハウジング10に対してプラグコンタクト20がしっかりと保持される。
【0024】このように形成されたプラグコンタクト20,20′を設けたプラグコネクタ1は、プラグコンタクト20,20′のリード部24,24′が基板(図示せず)に形成された貫通孔に挿入されて半田付けされるとともに、プラグハウジング10の左右端部に配設された取付金具18を用いて基板に固定される。」

(2)【図1】によれば、プラグコンタクト20,20′のリード部24,24′は、二列に並んでおり、また、互いに異なる列に属しており、当該プラグコンタクト20,20′は、夫々対を構成していることが看てとれる。

(3)【図1】によれば、リード部24,24′及びこれと圧入部23の間の部位からなるプラグコンタクト20,20′の幅は、圧入部23の幅よりも小さい幅を有していることが看てとれる。

(4)【図1】によれば、圧入部23のうちプラグコンタクト20,20′に近い部位に幅方向に張り出した部位があること及びプラグコンタクト20,20′のうち、本体部21fとリード部24,24′の間にある折れ曲がった部分があることが看てとれる。

第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「相手プラグ200」及び「ソケット100」は前者の「相手側コネクタ」及び「コネクタ」に相当し、以下同様に、「第一端子2」、「端子部23」及び「連接部22」は「コンタクト」に、「絶縁ハウジング1」は「ハウジング」に、「接触部21」は「接触部」を有する「第一部位」に、「端子部23」は「第二部位」に、「連接部22」は「連結部」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「基板に搭載されると共に所定方向に沿って相手側コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
前記コネクタは、2対の差動対を構成するコンタクトと、前記コンタクトを保持するハウジングとを備えており、
前記コンタクトの夫々は、前記相手側コネクタとの接触部を有し且つ前記ハウジングに保持される第一部位と、前記基板に接続固定される第二部位と、前記第一部位と前記第二部位とを連結する連結部とを有しており、
前記コンタクトの前記第一部位は一列に並んでいる、
コネクタ。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点1〕
第一部位に関して、本願発明は、「ハウジングに圧入保持され」ているのに対し、
引用発明は、かかる構成を備えていない点。

〔相違点2〕
本願発明は、
「コンタクトの第二部位は二列に並んでおり、
差動対の夫々を構成する2つの前記コンタクトの前記第二部位は、互いに異なる列に属しており、
所定方向と直交する幅方向において、前記第二部位及び連結部は第一部位の接触部よりも小さい幅を有しており、
前記第一部位には、前記第一部位をハウジングに圧入する際に治具により押圧するための肩部が設けられており、
前記幅方向において、前記肩部の幅は、前記接触部の幅よりも大きく、前記連結部の幅よりも大きい」のに対し、
引用発明は、かかる構成を備えていない点。

〔相違点3〕
本願発明は、
「前記第一部位は、互いに等しい長さを有しており、
前記第二部位は、互いに等しい長さを有しており、
前記連結部は、前記所定方向と交差する方向に夫々延びており、且つ、互いに等しい長さを有しており、
前記コンタクトの信号伝送経路長は互いに等しい」のに対し、
引用発明は、かかる構成を備えていない点。

第5 当審の判断
そこで、各相違点を検討する。
1 相違点1について
引用発明と共通する技術分野に属する刊行物2には、「圧入部23は貫通孔15の幅よりも大きく形成されているため、プラグコンタクト20のプラグハウジング10への挿入を行うことにより、プラグコンタクト20がしっかりと保持される。」との技術事項(以下、「刊行物2に記載された技術事項1」という。)が記載されており(上記「第2」の「2」の「(1)」)、引用発明においても接触部21の保持は考慮される事項であるから、引用発明に上記刊行物2に記載された技術事項1を適用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
上記「第2」の「2」の「(2)ないし(4)」によれば、刊行物2に記載されたプラグコンタクト20,20′のリード部24,24′は、二列に並んでおり、差動対を構成する2つのプラグコンタクト20,20′のリード部24,24′は、互いに異なる列に属しており、当該リード部24,24′の幅は、本体部21fの表面の幅W2よりも狭いと認められる。
また、上記「第2」の「2」の「(4)」によれば、刊行物2に記載されたプラグコンタクト20,20′のうち、本体部21fとリード部24,24′の間にある折れ曲がった部分の幅は、本体部21fの表面の幅W2よりも狭いと認められる。
さらに、上記「第2」の「2」の「(1)」によれば、刊行物2に記載された圧入部23は、「圧入部23は貫通孔15の幅よりも大きく形成されているため、プラグコンタクト20のプラグハウジング10への挿入を行うことにより、プラグコンタクト20がしっかりと保持される」のであるから、本願発明の「肩部」に相当し、圧入部23の幅W4は、本体部21fの表面の幅W2よりも大きく、プラグコンタクト20,20′のうち、本体部21fとリード部24,24′の間にある折れ曲がった部分の幅よりも大きいと認められる(以下、「刊行物2に記載された技術事項2」という。)。
そうすると、引用発明においても、第1端子2の配置構造はコネクタが設けられる基板に応じて適宜設計されるものであるから、引用発明に上記刊行物2に記載された技術事項2を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
対となるコンタクトの信号伝送経路長を互いに等しくすることは基本となる構成であるところ、信号伝送経路長を等しくするために、本願発明のように連結部を所定方向と交差する方向に夫々延ばした際、「第一部位は、互いに等しい長さを有しており、第二部位は、互いに等しい長さを有しており、連結部は、所定方向と交差する方向に夫々延びており、且つ、互いに等しい長さを有しており、コンタクトの信号伝送経路長は互いに等しい」という構成は、例えば特開2011-9151号公報(段落【0031】、【0032】、【図10】参照。)に示されるような周知の構成(以下、「周知の技術事項」という。)であって、特別な構成ではない。
そうすると、引用発明において、周知の技術事項を適用して、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4 効果について
本願発明が奏する効果は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項1、2及び周知の技術事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項1、2及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-26 
結審通知日 2015-04-02 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2012-204154(P2012-204154)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 康孝  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小柳 健悟
中川 隆司
発明の名称 コネクタ  
代理人 山崎 拓哉  

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