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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1301609
審判番号 不服2014-13130  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-07 
確定日 2015-06-01 
事件の表示 特願2008-261304「軽量瓦」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月12日出願公開、特開2010- 31625〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年10月8日(優先権主張 平成19年11月5日、平成20年3月26日、平成20年7月2日)を出願日とする出願であって、平成26年4月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年7月7日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、この補正は明細書の一部を補正するものであって特許請求の範囲を補正するものではない。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年9月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
粘土瓦に用いる素材からなる成型素地を焼成してなり、非透水の瓦本体のおもて面に皿状に陥没した複数の陥没部が形成され、該陥没部を囲む非陥没部が上面視格子形状をなし、前記陥没部の肉厚が前記非陥没部の肉厚の0.3?0.7倍である軽量瓦。」


3.引用刊行物とその記載事項
(1)引用例1
原査定時において引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭63-117148号(実開平02-039017号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。以下同じ。)

ア.「本考案は瓦本体の表面、裏面に無数の凹部を刻設せしめることにより、重量軽減を図らしめ、又ハニカム状のリブにより強度の低下を防止せしめると共に、最終寸法精度を向上せしめ、更に屋根下地材と凹部とにより強固に固定せしめて地震時の振動或いは強風時の風の力による屋根下地材と平板瓦との剥離を防止せしめると共に、雪止めせしめた平板瓦を提供せんとするものである。」(第3頁4?12行)

イ.「以下本考案の一実施例を図面に基づいて説明すると、
1は平板状の瓦本体であり、該瓦本体1の裏面2には、平面視六角状に成さしめると共に、下方へ行くに従って縮小成さしめる様に所定深さにて凹部3、3a・・・を多数個刻設せしめてハニカム状の連続したリブ4、4a・・・を形成せしめている。
尚、凹部3、3a・・・の形状として平面視六角状の形状に限定されるものではなく、例えば平面視円形状、平面視四角状等であっても可能であり、又深さに対しても瓦本体1の強度に影響しない任意なる深さと設定成さしめれば良い。」(第4頁13行?第5頁5行)

ウ.「又、他の実施例にあっては、前記と同様のなる凹部3、3a・・・からなるハニカム状の連続したリブ4、4a・・・を表面6に形成せしめている。
更に、他の実施例においては、表面6及び裏面2にリブ4、4a・・・を形成せしめることも可能である。
次に本考案に係る平板瓦の作用について説明すると、・・・(中略)・・・、又表面6の凹部3、3a・・・により雪止め出来ると共に、凹部3、3a・・・により軽量と成さしめるのである。」(第6頁10行?第7頁5行)
エ.「更にハニカム状のリブ4、4a・・・にて瓦本体1を補強せしめることにより、凹部3、3a・・・にて重量を軽減せしめているにも係わらず、強度的にも従来の平板瓦と何ら遜色なく、又乾燥収縮、焼成収縮を抑制せしめることにより、かかる収縮に伴って発生する形状の狂いを防止して最終製品の寸法精度を向上することが出来る等その実用的効果甚だ大なるものである。」(第8頁19行?第9頁6行)

オ.「4.【図面の簡単な説明】
図は本考案の一実施例を示すものにして、
第1図は本考案に係る平板瓦の裏面斜視図、第2図は同上他の実施例の裏面斜視図、第3図は同上表面斜視図、第4図、第5図は同上葺設状態を示す断面図である。
1瓦本体 2裏面 3、3a凹部 4、4aリブ 6表面」(第9頁7?14行)

カ.上記イ.の「下方へ行くに従って縮小成さしめる様に所定深さにて凹部3、3a・・・を多数個刻設せしめ」の記載と第3図及び第4図をあわせ見ると、凹部は皿状であると解される。また第4図の記載から、図面は模式図ではあるが、凹部の厚みはリブの厚みに対し概ね0.5倍程度のようにうかがえる。

キ.上記イ.の「凹部3、3a・・・を多数個刻設せしめてハニカム状の連続したリブ4、4a・・・を形成せしめている。」の記載から、リブは連続しており、凹部を多数個刻設せしめて形成したものなので、リブは凹部を囲むことが明らかである。

ク.上記イの記載は、各実施例における凹部3、3a・・・の形状として平面視四角状であっても可能であると具体的に例示されたものであるから、凹部の形状は平面視四角状であるといえる。


ケ.上記アないしキの記載及び図示内容からみて、引用例1には次の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

「瓦本体の表面に無数の凹部を刻設せしめ、皿状の凹部を囲む連続したリブを表面に形成せしめ、凹部の形状として平面視円形状、平面視四角状等であり、重量軽減を図らしめ、又リブにより強度の低下を防止せしめ、又乾燥収縮、焼成収縮を抑制せしめる平板瓦」


4.対比
(1)本願発明と引用発明の対比する。
ア.引用発明の「平板瓦」は、「瓦本体の表面に無数の凹部を刻設せしめ重量軽減を図」るものなので、本願発明の「軽量瓦」に相当する。

イ.引用発明の「平板瓦」は、製造時の「焼成」により「焼成収縮を抑制せしめる」ものであり、「焼成」により製造される瓦は粘土瓦であり、「平板瓦」として、粘土瓦に用いる素材からなる成型素地を焼成して製造することは自明である。
そうすると、引用発明の「焼成」してなる「平板瓦」は、本願発明の「粘土瓦に用いる素材からなる成型素地を焼成して」なるものに相当する。

ウ.引用発明の「瓦本体の表面」は、非透水性であることは自明であり、本願発明の「非透水の瓦本体のおもて面」に相当する。

エ.引用発明の「凹部」及び「リブ」は、本願発明の「陥没部」及び「非陥没部」に相当する。

オ.引用発明の「瓦本体の表面に」「刻設せしめ」た「皿状の」「無数の凹部」は、本願発明の「非透水の瓦本体のおもて面に皿状に陥没した複数の陥没部」に相当する。

カ.引用発明の「凹部を囲むリブ」は、本願発明の「陥没部を囲む非陥没部」に相当する。

上記ア?カから、本願発明と引用発明とは、
「粘土瓦に用いる素材からなる成型素地を焼成してなり、非透水の瓦本体のおもて面に皿状に陥没した複数の陥没部が形成され、該陥没部を囲む非陥没部をなす軽量瓦」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>「非陥没部」に関して、本願発明は「上面視格子形状」であるのに対し、引用発明は「凹部3、3aの形状として平面視円形状、平面視四角状等」である点。

<相違点2>「陥没部の肉厚」が「非陥没部の肉厚」に対し、本願発明は「0.3?0.7培」であるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。


5.当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
瓦の軽量化のために、陥没部を囲み上面視格子形状をなす非陥没部を形成することは本願優先権主張日前に周知(特開昭57-187462号公報第1図又は第5図、特開平8-260622号公報図1、特開平10-169100号公報図1、特開平10-325215号公報図10及び図12等参照。)である。
引用発明の「凹部」は、「形状として平面視四角状であっても可能」であるから、瓦の軽量化に際し上記周知技術のように、凹部を上面視格子形状となすことにより、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得るものである。

(2)相違点2について
引用発明の「平板瓦」は、「凹部」と「リブ」により「重量軽減を図らしめ、又リブにより強度の低下を防止せしめ」るものであり、「凹部」の厚みが小さいほど、重量軽減するが、瓦本体の強度を減少するため、凹部の厚みをどのように設定するかは、所望とする重量軽減と瓦本体の強度に応じて、決定すべき事項であるといえる。
引用例1には、上記3.(1)エにおいて、凹部の厚みがリブの厚みに対し概ね0.5倍程度のようにうかがえる。また、瓦の表面に凹部とリブを設けることにより、曲げ強度が向上することは技術常識(一例として、特開平10-102684号公報【0011】【0018】等参照。)である。
そうすると、引用発明の「平板瓦」において、「凹部」の厚みを「リブ」の厚みに対し、所望の重量と曲げ強度に応じて、「0.3?0.7倍」のように好適な値に設定し、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得るものである。

(3)結論
本願発明全体の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術より当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2015-03-30 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-17 
出願番号 特願2008-261304(P2008-261304)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 隆  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 竹村 真一郎
小野 忠悦
発明の名称 軽量瓦  
代理人 楠本 高義  

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