ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
判定2015600032 | 審決 | 特許 |
判定2016600042 | 審決 | 特許 |
判定2014600041 | 審決 | 特許 |
判定2015600021 | 審決 | 特許 |
判定2015600011 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) A23F |
---|---|
管理番号 | 1301616 |
判定請求番号 | 判定2014-600031 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2014-07-28 |
確定日 | 2015-06-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5439566号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ説明書に示す容器詰緑茶飲料は、特許第5439566号の請求項1乃至3、6及び7に係る発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示す容器詰緑茶飲料(以下、「イ号物件」という。)は、特許第5439566号の請求項1乃至3及び5乃至8に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 2.本件特許発明 本件特許の請求項1ないし請求項8に係る発明は、特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、構成要件ごとに分説すると次のとおりである。以下、特許第5439566号の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」といい、また、それらを合わせて「本件特許発明」ともいい、それぞれの構成要件を「構成要件A」等という。 [請求項1] A.茶抽出液中の90積算質量%の粒子径(D90)が3μm?60μmであり、且つ B.糖酸味度比が0.12?0.43であることを特徴とする、 C.容器詰緑茶飲料。 [請求項2] D.単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度が87ppm?380ppmであることを特徴とする、 請求項1記載の容器詰緑茶飲料。 [請求項3] E.単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度における二糖の濃度の重量比率(二糖/単糖+二糖)が、0.69?0.92であることを特徴とする、 請求項1又は2に記載の容器詰緑茶飲料。 [請求項4] F.酸味度の合計値が、600ppm?840ppmであることを特徴とする、 請求項1?3のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。 [請求項5] G.電子局在カテキン濃度が250ppm?550ppmであることを特徴とする、 請求項1?4のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。 [請求項6] H.カフェイン濃度が200ppm未満であることを特徴とする、 請求項1?5のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。 [請求項7] I.平均粒子径が1μm以上の粒子を含有することを特徴とする、 請求項1?6のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。 [請求項8] J.透視度が4度?12度まであることを特徴とする、 請求項1?7のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。 3.当事者の主張 3-1.請求人の主張の概要 請求人は、判定請求書、判定請求弁駁書及び平成27年3月25日付け判定請求回答書において、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属することについて以下のとおり主張している。 (ア)判定請求書の「6.請求の理由(4)イ号物件の説明」において、イ号物件の構成は、イ号説明書(別添)に示す次のとおりである。 商品名:伊右衛門 贅沢冷茶 内容量:2L、550ml、500ml、280ml 構成: a.茶抽出液中の90積算質量%の粒子径(D90)が19.302μmであり、且つ b.糖酸味度比が0.267である、 c.ペットボトル詰緑茶飲料 であって、さらに、 d.単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度が145.51ppmであり、 e.単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度における二糖の濃度の重量比率(二糖/単糖+二糖)が、0.88であり、 f.酸味度の合計値が545.31ppmであり、 g.電子局在カテキン濃度が270ppmであり、 h.カフェイン濃度が97ppmであり、 i.平均粒子径が6.664μmの粒子を含有し、 j.透視度が6.53度である。 (イ)判定請求に係る本件特許発明の数値限定されている各構成について、測定値が全て示されているのは550mlペットボトル製品のみであるが、同一ブランド且つ同一商品名を冠した製品が、単なる容量のみでその成分値が大きく異なることは、合理的にみて考えられない。 また、製造時期によって「ビタミンC量」が、極端に多かったり少なかったりということはなく、各「伊右衛門 贅沢冷茶」製品は、製造時期にかかわらず判定請求に係る本件特許発明の各構成要件を満たすものと考える。(判定請求回答書第4頁3行?第6頁末行) (ウ)本件特許明細書には、「緑茶飲料の90積算質量%の粒子径(D90)は、例えば市販のレーザー回析式粒度分布測定装置等により測定することができる」(段落【0018】)と記載されている。したがって、当業者のみならずかかる記載をみれば、本件特許発明における90積算質量%の粒子径(D90)の測定においてレーザー回析式粒度分布測定装置を用いると合理的に解することができる。 被請求人は、「いずれの測定方法及び定義を用いるかにより結果が異なる」と主張するが、かかる測定方法等による結果のブレを試験的に示したわけではない。(判定請求弁駁書第4頁15行?第6頁12行) (エ)単糖濃度及び二糖濃度の定量方法について、本件特許明細書は、特許第4843118号公報及び特許第4843119号公報を引用しており、前記特許公報にはHPLCの分析条件が記載されている。したがって、当業者であれば、本件特許発明における単糖濃度及び二糖濃度の定量方法を理解する上で何ら困難性はない。(判定請求弁駁書第6頁13行?第8頁3行) (オ)甲第7号証には、ビタミンC(L-アスコルビン酸)の測定方法として、2・4-ジニトロフェニルヒドラジン法、インドフェノール・キシレン法、高速液体クロマトグラフ法、酸化還元滴定法の4種類の測定方法が当業者にとって技術常識であることが示されている。なかでも、高速液体クロマトグラフ法が一般的な方法として用いられることも周知事実である。(判定請求弁駁書第8頁4行?第9頁11行) (カ)タンニンの測定には、酒石酸鉄法による比色定量法が古くから用いられており(甲第8号証)、かかる分析方法はタンニン分析法とも呼ばれており広く用いられている(甲第9号証)ことも当業者にとって技術常識である。 なお、例えば甲第10号証に記載されるとおり、「タンニン」という用語は、古くから用いられているものであり、現在では「ポリフェノール」と称されることも多いことも、当業者にとっては周知事項である。(判定請求弁駁書第9頁12行?第10頁13行) 3-2.被請求人の主張の概要 被請求人は、判定請求答弁書及び平成27年3月27日付け判定請求回答書において、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属しないことについて以下のとおり主張している。 (ア)請求人は、「伊右衛門 贅沢冷茶」の2L、550ml、500ml、280mlの4種類の製品を本件判定の対象物件としているが、甲第2?4号証において「550ml製品」のみを測定対象として測定したとする数値を記載したものであり、他の製品については、その「構成」の主張立証自体を欠如するものであるから、「技術範囲に属する」との判定がなし得るものではない。(判定請求答弁書第2頁下から4行?第3頁下から7行) (イ)構成要件Aの「茶抽出液中の90積算質量%の粒子径(D90)」並びに構成要件Bの「糖酸味度比」を算出する上で必要な「単糖濃度」、「二糖濃度」、「ビタミンC濃度」及び「タンニン量」について、それぞれの測定方法、測定条件が本件明細書において特定されておらず、構成要件A及び構成要件Bについての技術的範囲を確定することはできないことから、「伊右衛門 贅沢冷茶」の各製品が構成要件A及び構成要件Bを充足するとの立証は、不可能である。また、用いる測定方法、測定条件によって数値が変動することも当業者の技術常識である。 さらに、本件明細書には、「タンニン」について、定義が記載されていなく、「タンニン」として、どのような構造の化合物についてその量を測定すれば良いのかは、一切不明である。(判定請求答弁書第3頁下から6行?第14頁12行) (ウ)本件判定請求は、請求人が「技術的範囲に属する」との判定を求めて請求したものであり、請求人は全ての要件について全面的に主張及び立証責任を負うものである。(判定請求回答書第2頁15行?第20頁24行) 4.判断 4-1.イ号物件について 当審の平成27年2月25日付け審尋に対する、請求人の「甲第2号証及び甲第3号証において試験対象とした「伊右衛門贅沢冷茶 550ml」は、甲第4号証において試験対象とした「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」と同じものです。」(平成27年3月25日付け判定請求回答書第7頁1?10行)との回答に基づいて、甲第2号証ないし甲第4号証には、「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の分析値が示されているものと認める。 そして、判定請求人がイ号物件を特定するために提出した甲第2号証ないし甲第4号証のうち、すべての成分が立証されているのは一製品である上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」のみであるので、甲第1号証ないし甲第4号証(それぞれ別添)並びに、判定請求弁駁書及び判定請求回答書によると、イ号物件は以下のとおりである。以下、分説された各構成を「構成a」等という。 ただし、請求項8に係る「透視度」については、試験報告書等の具体的な証拠が示されておらず、また、測定の対象とされた製品についても明らかでないことより、構成要件Jは本件判定の対象とはしない。 なお、各数値において本件特許発明と対応したものは、その有効数字の桁数を本件特許発明に合わせたものとした。 一製品である「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」が、 a.レーザー回析式粒度分布測定装置(Shimadzu SALD-2300 島津製作所)を用い、装置付属のマニュアルに従って分析した茶抽出液中の90積算質量%の粒子径(D90)が19μmであり、且つ、 b.試料に内標を添加して10倍希釈した後、陰イオン交換カートリッジを用いて前処理し、HPLCにて糖を定量した結果(mg/L)は (1)グルコース 8.97 (2)フルクトース 8.54 (3)スクロース 128 (4)セロビオース 検出なし (5)マルトース 検出なし、 HPLC分析にて分析した(6)ビタミンC量は29.4mg/100ml、酒石酸鉄比色法にて分析した(7)タンニン量は43.8mg/100ml、 すなわち糖酸味度比:((1)+(2)+(3)+(4)+(5))/((6)×0.365+(7))が0.27である、 c.ペットボトル詰緑茶飲料であって、 さらに、上記一製品が、 d.単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度:(1)+(2)+(3)+(4)+(5)が146mg/L(ppm)であり、 e.単糖の濃度と二糖の濃度とを合わせた糖類濃度における二糖の濃度の重量比率(二糖/単糖+二糖):((3)+(4)+(5))/((1)+(2)+(3)+(4)+(5))が、0.88であり、 g.HPLC分析にて分析した濃度(mg/100ml)が ガロカテキン(GC) 9.8 エピガロカテキン(EGC) 4.5 エピガロカテキンガレート(EGCg) 4.6 ガロカテキンガレート(GCg) 5.2 エピカテキンガレート(ECg) 1.5 カテキンガレート(Cg) 1.4 すなわち上記電子局在カテキン濃度の合計が27.0mg/100ml(270ppm)であり、 h.HPLC分析にて分析したカフェイン濃度が9.7mg/100ml(97ppm)であり、 i.上記a.と同じ分析した結果、平均粒子径が7μmの粒子を含有する。 4-2.一製品である「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」の各構成要件の充足について (1)構成要件A及びIについて 「90積算質量%の粒子径(D90)」の測定方法について、本件特許明細書に「例えば市販のレーザー回析式粒度分布測定装置等により測定することができる」(段落【0018】)と記載され、「市販のレーザー回析式粒度分布測定装置」が示されていることから、構成要件Aの測定方法は「市販のレーザー回析式粒度分布測定装置」を用いると合理的に解される。また、構成要件Iに係る「平均粒子径」も上記「市販のレーザー回析式粒度分布測定装置」を用いれば、「90積算質量%の粒子径(D90)」と同時に測定が可能であることから、構成要件Iの測定方法は「市販のレーザー回析式粒度分布測定装置」を用いると合理的に解される。 よって、構成a及びiがレーザー回析式粒度分布測定装置(Shimadzu SALD-2300 島津製作所)を用いて測定されていることは、妥当なものである。そして、構成aの「90積算質量%の粒子径(D90)が19μm」は構成要件Aの「3μm?60μm」の上限値及び下限値に対して、また、構成iの「平均粒子径が7μm」は構成要件Iの下限値「1μm」に対してそれぞれかなりの余裕がある測定値であることから、用いる装置の違いにより測定値に多少の差が生じるとしても、「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」は構成要件A及び構成要件Iを充足するものといえる。 (2)構成要件B、D及びEについて 「糖酸味度比」について、本件明細書の段落【0019】に 「(糖酸味度比) 本発明において「糖酸味度比」とは、酸味度に対する、糖類濃度(単糖濃度+二糖濃度(ppm))であらわされる。 糖酸味度比=糖類濃度(ppm)/酸味度(ppm) なお、「酸味度」とは、ビタミンC濃度(ppm)をクエン酸換算した酸度(ppm)と渋味成分であるタンニンの割合を加算した値であり、次の式により求められる。 酸味度(ppm)=ビタミンC量(ppm)×0.365+タンニン量(ppm)」と定義がなされている。 そうすると、構成要件Bの「糖酸味度比」を特定するためには、「単糖濃度」、「二糖濃度」、「ビタミンC量」及び「タンニン量」を明らかにする必要がある。 そこで、「ビタミンC量」について検討すると、その測定方法として高速液体クロマトグラフ(HPLC)法は、栄養表示基準(消費者庁告示、甲第7号証の別表第2)において基準とされるものの一つであることから、構成bの「29.4mg/100ml」を「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「ビタミンC量」とすることは妥当である。 「タンニン量」について検討すると、「タンニン」は茶の成分の「ポリフェノール」とも総称される用語として当該技術分野において通常用いられているものであり(甲第10号証)、また、その測定方法として酒石酸鉄法による比色定量法を用いることは食品分野において一般的な方法である(甲第8号証及び甲第9号証)ことから、構成bの「43.8mg/100ml」を「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「タンニン量」とすることは妥当である。 「単糖濃度」及び「二糖濃度」について検討すると、その測定方法としてHPLC法は、栄養表示基準(消費者庁告示、甲第7号証の別表第2)において「糖類」の測定方法の基準とされていることから、構成bの各値を「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「単糖濃度」及び「二糖濃度」とすることは妥当である。 そして、それらから算出された「糖酸味度比」は「0.27」であって、構成要件Bの「0.12?0.43」の上限値及び下限値に対してかなりの余裕がある値であるので、上記各測定値が多少の測定誤差を含むものとしても、「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」は構成要件Bを充足するものといえる。同様に「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」は、構成要件D及びEについても充足するものといえる。 (3)構成要件Cについて 「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」は、構成c「ペットボトル詰緑茶飲料」の一製品であるので、構成要件C「容器詰緑茶飲料」を充足することは明らかである。 (4)構成要件Gについて 「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」の構成g「電子局在カテキン濃度の合計が27.0mg/100ml(270ppm)」は、構成要件Gを充足しているが、甲第4号証の「伊右衛門贅沢冷茶500ml 2014.10.27/AJ」の「電子局在カテキン濃度の合計」は、241ppm(8.7+4.0+4.1+4.6+1.4+1.3=24.1mg/100ml)であり、構成要件Gにおいて特定されている「250ppm?550ppm」の範囲外の測定値となっている。 そして、上記の測定値の差は、製品間の成分のばらつきによるものか、実施された測定の精度によるものかなど、請求人から提出された証拠等からは明らかではなく、また、構成gの「270ppm」は、構成要件Gの下限値の「250ppm」に近接した値でもある。 よって、構成gの測定値に基づいて、直ちに「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」が構成要件Gを充足しているとすることはできない。 (5)構成要件Hについて 構成hの「カフェイン濃度が9.7mg/100ml(97ppm)」は、構成要件Hを充足する。 以上のことから、一製品である「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ 」は、構成要件A?E、H及びIを充足することから、本件特許発明1乃至3、6及び7の技術的範囲に属する。 4-3.イ号物件の各構成要件の充足について 上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」以外のイ号物件についても構成要件Cを充足することは明らかなので、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」が充足するとした、構成要件A、B、D、E、H及びIについて、それ以外のイ号物件についても充足するといえるかを以下に検討する。 (1)構成要件A及びIについて 「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の構成a「19μm」は、構成要件A「3μm?60μm」の上限値及び下限値に対してかなりの余裕がある測定値であること、また、イ号物件が「石臼挽き抹茶」を使用するものであり(甲第1号証)、その粒子径分布は使用される当該「石臼挽き抹茶」 の粒子径分布に主に依存するものと考えられるが、製品により当該「石臼挽き抹茶」の粒子径分布が大きく違ったものを使用するもとは考えられないことから、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」以外のイ号物件についても構成要件A及びIを充足するものといえる。 (2)構成要件B、D及びEについて 「ビタミンC量」については、甲第4号証において分析試験報告がなされている「伊右衛門贅沢冷茶500ml 2014.10.27/AJ」の「20.1mg/100ml」と上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「29.4mg/100ml」とは差があるものの、「ビタミンC量」は構成要件Bにおいては0.365倍されて「タンニン量」に加算されるものであるので、その差は「糖酸味度比」に大きく影響するものではない(「20.1mg/100ml」として「糖酸味度比」を算出しても「0.28」であり、構成b「027」との差は小さく、また、構成要件B「0.12?0.43」の範囲内である。)。よって、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「29.4mg/100ml」をイ号物件の値として用いることは適当である。 「タンニン量」については、「伊右衛門贅沢冷茶500ml 2014.10.27/AJ」の「42.9mg/100ml」と上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「43.8mg/100ml」とは差は小さく、また、緑茶飲料においてタンニンはカテキンをその主成分とするものであって、嗜好性に大きな影響を与えるものである(甲第10号証114?115頁「2)嗜好性と味成分、呈味構造」参照)ので、同一の名称の製品間に大きなばらつきがあるものとは考えられないことから、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の「43.8mg/100ml」をイ号物件の値として用いることは適当である。 「単糖濃度」及び「二糖濃度」については、原材料の緑茶並びに乾燥条件及び抽出条件により変わり得るものとしても、同一の名称の製品間においてそれらが大きく変えられているものとは考えられないこと、また、「単糖濃度」及び「二糖濃度」は緑茶飲料において主要な成分でないにしても嗜好性に影響を与えることは明らかであり、同一の名称の製品間に大きなばらつきがあるものとは考えられないことから、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」についての各測定値をイ号物件の値として用いることは適当である。 そして、上記各値を用いて算出される「糖酸味度比」の「0.27」は、構成要件B「0.12?0.43」の上限値及び下限値に対してかなりの余裕がある値であり、イ号物品において製品間に上記各値に多少のばらつきがあるとしても、上記数値範囲には含まれること、また、同一の名称の製品においてペットボトルの容量によりその成分が変更されているとは合理的にみて考えられないことから、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」以外のイ号物件についても構成要件Bを充足するものといえる。また同様に構成要件D及びEについても充足するものといえる。 (3)構成要件Hについて 「カフェイン濃度」について、「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」の構成h「97ppm」は、構成要件Hの上限値「200ppm」に対してかなりの余裕がある測定値であること、また、「カフェイン濃度」は緑茶飲料の嗜好性に大きな影響を与えるものである(甲第10号証114?115頁「2)嗜好性と味成分、呈味構造」参照)ので、同一の名称の製品間に大きなばらつきがあるものとは考えられず、上記「伊右衛門贅沢冷茶550ml 2015.01.10/AJ」以外の、イ号物件についても構成要件Hを充足するものといえる。 以上のことから、イ号物件は、構成要件A?E、H及びIを充足する。 4-4.被請求人の主張について (1)主張(ア)について 上記したように同一の名称の製品においてペットボトルの容量によりその成分が変更されているとは合理的にみて考えられない。 (2)主張(イ)について 「90積算質量%の粒子径(D90)」の測定方法については、上記したようにレーザー回析式粒度分布測定装置を用いるものと解され、そして、用いる装置によって測定値に多少の差が生じたとしても、イ号物件は構成要件Aを充足するものである。 「単糖濃度」、「二糖濃度」、「ビタミンC量」及び「タンニン量」については、それぞれが指す物質自体は明確であるので、本件特許発明の技術的範囲は確定し得るものである。そして、本件明細書に各数値の測定法が記載されていない場合、通常は、その数値を測定するのに通常用いられる測定法で測定すると解するのが自然であり、また、その測定法が複数あって、その測定法ごとに測定値が多少異なることがあるとしても、その測定値によって、本件特許発明の数値範囲を満たす場合も満たさない場合もあるとまではいえないから、測定法ごとに測定値が多少異なること自体は、イ号物件が本件発明の技術的範囲に含まれるとの判断に影響を及ぼすものではない。 7.むすび したがって、イ号物件は、構成要件A?E、H及びIを充足することから、本件特許発明1乃至3、6及び7の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
|
判定日 | 2015-05-26 |
出願番号 | 特願2012-219688(P2012-219688) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(A23F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小暮 道明 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 鳥居 稔 |
登録日 | 2013-12-20 |
登録番号 | 特許第5439566号(P5439566) |
発明の名称 | 容器詰緑茶飲料及びその製造方法 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 城山 康文 |
代理人 | 青柳 ▲れい▼子 |
代理人 | 川嵜 洋祐 |