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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1301853
審判番号 不服2014-2250  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-06 
確定日 2015-06-10 
事件の表示 特願2011-534490「データパケットを分類するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月20日国際公開、WO2010/056267、平成24年 3月29日国内公表、特表2012-507930〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2009年10月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年10月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年2月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[結論]
平成26年2月6日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本願発明と補正後の発明

上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成25年9月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
複数のルールに従って、受信されたパケットの単一パス分類を可能にするように構成された分類木構造を構築するための方法であって、各ルールが、それに関連付けられた複数のフィールドを有し、各フィールドが、それに関連付けられた優先順位レベルを有し、
方法が、トップ優先順位レベルについて、
トップ優先順位レベルのフィールド内で、各一意の値についてノードを作成するステップと、
トップ優先順位レベル内のノードのそれぞれについて、対応するノードの値に一致する1つまたは複数のルールのそれぞれの集合を識別するステップと、
作成されたノードからヘッドノードを選択するステップと、
トップ優先順位レベル内でヘッドノードから他のノードへの論理的決定経路を作成するステップと、
トップ優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの論理的決定経路を作成するステップと
を実行するステップを含み、いずれの残りの優先順位レベルのそれぞれについて、
次に高い優先順位レベルから受信された論理的決定経路のそれぞれについて、それぞれ次に高い優先順位レベルのノードに関連付けられたルールを満足するのに必要なノードおよび関連した論理的決定経路のみを含む、それぞれの部分木を作成するステップと、
最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの論理的決定経路を作成するステップと
を実行するステップを含み、
分類木構造が3分類木構造である、方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項1】
複数のルールに従って、受信されたパケットの単一パス分類を可能にするように構成された分類木構造を構築するための方法であって、各ルールが、それに関連付けられた複数のフィールドを有し、各フィールドが、それに関連付けられた優先順位レベルを有し、
方法が、トップ優先順位レベルについて、
トップ優先順位レベルのフィールド内で、各一意の値についてノードを作成するステップと、
トップ優先順位レベル内のノードのそれぞれについて、対応するノードの値に一致する1つまたは複数のルールのそれぞれの集合を識別するステップと、
作成されたノードからヘッドノードを選択するステップと、
トップ優先順位レベル内でヘッドノードから他のノードへの論理的決定経路を作成するステップと、
トップ優先順位レベル内のそれぞれのノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップと
を実行するステップを含み、いずれの残りの優先順位レベルのそれぞれについて、
次に高い優先順位レベルから受信された論理的決定経路のそれぞれについて、それぞれ次に高い優先順位レベルのノードに関連付けられたルールを満足するのに必要なノードおよび関連した論理的決定経路のみを含む、それぞれの部分木を作成するステップと、
最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のそれぞれのノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップと
を実行するステップを含み、
分類木構造が3分類木構造である、方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:下線は補正箇所を示す。)


2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、本願発明の特許請求の範囲の請求項1に記載された「トップ優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの論理的決定経路を作成するステップ」と、「最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの論理的決定経路を作成するステップとを実行するステップ」に関して、「トップ優先順位レベル内のそれぞれのノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップ」と「最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のそれぞれのノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップ」として、「ノード」が「それぞれ」であり、「論理的決定経路」が「異なる」ものであると限定したものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項(補正の目的)の規定に適合している。
また、特許法17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。

(2)独立特許要件

本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。


ア.補正後の発明

上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

イ.引用発明

原査定の拒絶の理由において引用された、欧州特許出願公開第1515501号明細書(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。)

(ア)「Background Of The Invention
【0002】 In the general field of computer-based systems, involving multiple and varied work stations located at multiple and diverse sites providing services of differing classification the procedures for controlling data flow are known to be extremely complex.
【0003】 Typically, data flow is governed by sets of rules which dictate, amongst other things, quality of service, security and metering. The data usually is in the form of packets with a header having particular information such as source,destination and service related criteria. The manner in which the data is handled in the system involves examining the header in relation to these sets of rules. In such an environment, range specified rules become the most viable option to provide an acceptable level of control. This is largely due to the fact that it would be practically impossible to compare all of the data with the sets of rules in a high speed system. Range-specified rules, according to the following description, can be broadly described as a set of rules defined using intervals (or ranges) for each field.The fields can be defined arbitrarily, depending on the applications. A typical example for the fields is the 5-tuple (IP source address, IP destination address, TCP protocol, source port, destination port), but any arrangement of any number of fields is possible, as long as the corresponding data exists in the packets (header and payload) which are going to be matched. The ranges can be thought of as integer intervals, but the invention applies to any set of ordered values on which the concept of interval can be defined. A packet matches a rule if each of its fields(as extracted, or parsed, from the packet) is contained within the corresponding ranges of the rule. If the rule set is ordered top-down, then the best matching rule for a packet is the matching rule closest to the top.
【0004】 An example of the environment contemplated by the present invention is in an IP router which processes a large number of packets coming from and destined for a large number of user sites. To provide service to end users that is better than"best effort" the system needs to strictly adhere to sets of rules which dictate how data packets are processed. Obviously, taking into consideration the vast volumeof traffic in communications systems such as the Internet, it would be difficult to compare each packet with a rule and to determine whether it meets established criteria. Thus the aforementioned range based algorithm can be applied.」(2頁1欄)
([当審仮訳]:
発明の背景
【0002】コンピュータ・ベースのシステムの一般的な分野においては、異なった分類のサービスを提供している多数の多様なサイトに位置している多数の多様なワークステーションを伴っているので、データフローをコントロールするための処理は非常に複雑であることが知られている。
【0003】典型的には、他のものの中から、サービスの品質、セキュリティー、計測を規定するためのルールの集合によってデータのフローは支配される。データは通常、ソース、目的地とサービス関連のフィールドのような特定の情報を持ったヘッダを有するパケットの形である。システムでデータを取り扱う方法は、ルールのこれらの集合と関係を持ったヘッダーを調べることを必要とする。そのような環境において、範囲を規定するルールが制御のために許容できるレベルの最も有効な選択肢となっている。これは高速なシステムでデータとそれらのルールの集合と比較することは実際には不可能であるという事実に多くはよっている。以下に述べるように、範囲を指定するルールは、各フィールドにおいて間隔(あるいは範囲)を用いて定義されたルールの集合として広く記述できる。フィールドはアプリケーションによって任意に定義できる。フィールドのための典型的な例は5つの組(IPソースアドレス、IP目的地アドレス、TCPプロトコル、ソースポート、目的地ポート)である。しかし、マッチングを行うパケット(ヘッダとペイロード)に存在するデータに対応する限り、フィールの数の変更は可能である。範囲は整数間隔と考えられるが、しかし、この発明は間隔の概念が定義されることができる順序づけられた値のどんな集合にでも適用できる。もし、(パケットから抽出もしくは解析することで)そのフィールドのそれぞれが範囲のルールに対応して含まれているなら、パケットはルールに一致する。もしルールのセットがトップダウンの順序があれば、パケットに最も一致するルールは、1番目のルールに最も近いルールである。
【0004】そのような環境の例として本発明が考えているのは、入力する非常に沢山のパケットを処理し非常に多くのユーザサイトに繋がれているIPルータである。「最善の努力」よりエンドユーザに対するよいサービスを提供するために、システムはパケットをどのように処理するか命じたルールの集合を厳密に守る必要がある。明らかに、インターネットのような通信システムでの膨大な量のトラフィックを考慮にすると、ルールとそれぞれのパケットを比較して定義された基準に一致するか決定することは難しいであろう。それゆえ、前述の範囲ベースのアルゴリズムが適用されるだろう。)

(イ)「【0006】 As used in this application packet classification is the process of categorizing packets into "flows" in an Internet router based on one or more fields in the packet header. All packets belonging to the same flow obey a predefined rule and are processed in a similar manner by the router. This classification process is used in ACLs (Access Control Lists) for security, QoS, or for Metering for instance.
【0007】 An algorithm for Multi-field packet classification by range specification takes a rule set and a packet as inputs, finds the best matching rule for the packet in the rule set based on the values of multiple fields in the packet header. A rule set consists of a finite number of rules. Each rule in the rule set contains multiple fields specified by ranges, where a range is an integer interval with a lower bound and an upper bound. Each rule also has a rule number.
【0008】 A single field of a given rule set is a set of integer intervals. Given a set of integer intervals, a set of elementary intervals and a set of disjoint intervals can be obtained. The elementary intervals break down the set of integer intervals into smaller but necessary elements that are non-overlapping, while the disjoint intervals combine the overlapping integer intervals in the set of integer intervals together to form larger integer intervals that are disjoint to each other.
【0009】 A matching rule for a given packet satisfies the principle that the value of each field of the packet falls into the value range of the corresponding field of the rule. The best matching rule is the matching rule with the smallest rule number among all the matching rules in the rule set, given the convention that rules are numbered from the highest priority to the lowest priority.」(2頁2欄?3頁3欄)
([当審仮訳]:
【0006】このアプリケーションを用いることによって、パケットの分類分けは、パケットヘッダ内の1つ以上のフィールドをもとに、インターネットルーターの”フロー”の中に分類分けプロセスとして組み込まれる。同じフローに属しているすべてのパケットは前もって定められたルールに従って、そして、そのルータによって同じ方法で処理される。この分類プロセスは、例えば、セキュリティーのためのACLs(アクセスコントロールリスト)、QoS、計測のために用いられる。
【0007】範囲を規定することよって複数のフィールドを持ったパケットを分類するためのアルゴリズムは、ルールの集合とパケットを入力すると、そのパケットヘッダの複数のフィールドの値に基づいてルールの集合から最も一致するルールを見いだす。ルールの集合は有限個のルールを含んでいる。ルールの集合のそれぞれのルールは、範囲によって規定された複数のフィールドを含んでおり、ここで、範囲は下限と上限からなる整数間隔である。それぞれのルールはルール番号を持っている。
【0008】所与のルールの集合の一つのフィールドは整数間隔の集合である。所与の整数間隔の集合によって、基本間隔の集合と分離間隔の集合を得ることができる。基本間隔は、整数間隔をオーバーラップしないように細かくすることで得られ、一方、分離間隔は、お互いを分離するための大きな整数間隔を形作るために、整数間隔の集合でオーバーラップしている間隔を結合したものである。
【0009】与えられたパケットのための一致のルールは、そのパケットの各フィールドの値が、ルールの対応するフィールドの範囲の値に入るという原則を満たすことである。一致するルールの中で最も良いものはルールのセットのなかで最もルール番号が小さいものである、これは、ルールが最も高いプライオリティから最も低いプライオリティへと番号が付けられているという約束がされているためである。)

(ウ)「Summary of the Invention
【0043】 According to one aspect of the invention a new tree-like structure is created.The tree-like structure, known as a disjoint graph, enables packet classification in only one pass of the tree.
【0044】 The disjoint graph is comprised of two new types of data structures: an elementary interval tree (EIT) and a disjoint interval (DIT). The disjoint graph is constructed based on a range-specified rule set for classifying packets. Each rule in the rule set has an equal number of fields, D, and each field specifies a range,referred to as an integer interval, having a lower and an upper bound. The disjoint graph has the same number of layers, D, as there are fields in each rule. The layers are comprised of nodes, and each node has an associated rule set selected from the original (range-specified) rule set.
【0045】 The first layer of the disjoint graph is an EIT. The remaining layers comprise a set of DITs and a set of EITs. The set of DITs at a given layer are constructed for the integer intervals stored in each node of the EITs in the preceding layer. The set of EITs at a given layer are constructed for the integer intervals stored in each node of the DITs of that layer. The associated rule set of a node of an EIT in aj-th layer contains rules whose j-th field contains the elementary interval stored in the node.The associated rule set of a node of a DIT in aj-th layer contains rules whose j-th field is contained by the disjoint interval stored in the node.
【0046】Elementary intervals are non-overlapping integer intervals. Disjoint intervals are intervals formed from overlapping integer intervals by combining them to form integer intervals that are disjoint from each other.」(5頁8欄)
([当審仮訳]:
発明の概要
【0043】本発明の一つの特徴は、新たなツリー状の構造を作成することである。ツリー状の構造は分離図として知られており、パケットの単一のパス分類を可能とする。
【0044】分離図は2つ新しいタイプのデータ構造からなる。それは基本間隔木(EIT)と分離間隔木(DIT)である。分離図は、パケットを分類するために領域を規定したルールの集合をもとに構築される。ルールの集合の各ルールは、同じ数Dのフィールドを有しており、各フィールドは、整数間隔と呼ばれ、下限と上限をもっている。分離図は、各ルールにあるフィールドと同じ数Dの層を有している。層はノードで構成されており、各ノードは、元の(範囲を規定した)ルールの集合から選択された関連付けられたルールの集合を有している。
【0045】分離図の第1の層はEITである。残りの層は、DITの集合とEITの集合からなっている。所定の層におけるDITの集合は、一つ前の層におけるEITの各ノードに備えられた整数間隔に応じて構築される。所定の層のEITは、その層のDITの各ノードに備えられた整数間隔に応じて構築される。j番目の層のEITのノードに関連付けられるルールの集合は、そのノードの基本間隔を含んでいるj番目のフィールドにおけるルールを含むものである。j番目の層のDITのノードに関連付けられるルールの集合は、そのノードの分離間隔によって含まれるj番目のフィールドにおけるルールを含むものである。
【0046】基本間隔は、オーバーラップしない整数間隔である。分離間隔は、オーバーラップしている整数間隔を互いを分離するために結合して形成した整数間隔から形成された間隔である。)

(エ)「Detailed Description of the Invention
【0065】 In accordance with the present invention, given a rule set and a packet, a Disjoint Graph based Classification Algorithm is presented. The algorithm includes the Disjoint Graph to represent the rule set to support packet classification, the Disjoint Graph Construction algorithm to transform the rule set into a disjoint graph, and the Disjoint Graph Search algorithm to find the best matching rule for the packet on the disjoint graph.
【0066】 The Disjoint Graph data structure for a given rule set with D fields in each rule has D layers. Each node in the disjoint graph has an associated rule set. The first layer of the disjoint graph is an elementary interval tree (EIT) constructed for the set of integer intervals belonging to the first field of rules in the rule set. Besides the first layer, the j-th layer of the disjoint graph consists of a set of disjoint interval trees (F_(j)-DITs) and a set of elementary interval trees (F_(j)-EITs). The set of F_(j)-DITs are constructed for the integer intervals stored in each node of the F_(j-1)-EITs in the (j-1)-th layer. The set of F_(j)-EITs are constructed for the integer intervals stored in each node of the F_(j)-DITs in the j-th layer.
【0067】 The disjoint graph is constructed based on two structures: Elementary Interval Tree (EIT) and Disjoint Interval Tree (DIT). Given a set of integer intervals,its elementary intervals and disjoint intervals can be represented by trees, which are called the elementary interval tree and disjoint interval tree. Each node in EIT(DIT) stores one of the elementary (disjoint) intervals of the set of integer intervals.The components of the disjoint graph, F_(j)-EIT and F_(j)-DIT enhance the EIT and DIT by setting an associated rule set (ARS) to each node of EIT and DIT. The associated rule set of a node in F_(j)-EIT contains rules whose j-th field contains the elementary interval stored in the node, while the associated rule set of a node in F_(j)-DIT contains rules whose j-th field is contained by the disjoint interval stored in the node.
【0068】 The EIT component alone would be enough to construct a data structure that satisfies the requirement of a single path to be traversed to find the best matching rule for a packet by constructing Efts for the associated rule set of the nodes of the constructed EIT until no more EIT can be constructed. However,duplicated sub-EITs will be constructed in such data structure when the associated rule sets of the nodes in one EIT are overlapping with each other. These duplicated sub-EITs are redundant and should be shared to save storage space for the data structure. Unfortunately, duplicated sub-EITs may not be shared by two EITs if the sub-EIT is in the "middle" of an EIT. Thus, DITs are constructed to enable the sharing of the duplicated sub-EITs.
【0069】 For example, Figure 3 is the example of DIT and EIT construction. Figure 3.c shows that two EITs have a duplicated sub-EIT, but they can't share the duplicated sub-EITs since the sub-EIT is in the "middle" of both EITs. But when we create a DIT for each EIT, we can use the DITs to replace the original EITs and let the twoDITs share a single sub-EIT.
【0070】 Figure 4 is the Disjoint Graph G constructed for the set of rules S with 3fields given in Figure 1. G has 3 layers: 1) layer 1 contains one F_(1)-EIT constructed for the rule set S; 2) layer 2 contains six F_(2)-DITs for associated rule sets of nodes in the F_(1)-EIT and two F_(2)-EITs constructed for associated rule sets (ARSs) of nodes in the six F_(2)-DITs, because there are six different ARSs whose sizes are greater than 1in the F_(1)-EIT and two different ARSs whose sizes are greater than 1 in the six F_(2)-DITs;3) layer 3 contains two F_(3)-DITs constructed for ARSs of nodes in the two F_(2)-EITs and one F_(3)-EIT constructed for ARSs of nodes in the two F_(3)-DITs, because there are two different ARSs whose sizes are greater than 1 in the two F_(2)-EIT and two different ARSs whose sizes are greater than 1 in the two F_(3)-DITs.」(6頁9欄?7頁11欄)
([当審仮訳]:
発明の詳細な説明
【0065】本発明によれば、ルールの集合およびパケットを与えることで、分類アルゴリズムに基づいた分離図が提供される。このアルゴリズムは以下のものを含んでいる、パケットの分類をサポートするためのルールの集合を表す分離図、ルールを分離図の中に変換するための分離図構築アルゴリズム、および、分離図上でのパケットための最適な一致したルールを見つけるための分離図検索アルゴリズムからなる。
【0066】それぞれがD個のフィールドからなるルールの集合のための分離図のデータ構造はD個の層を有する。分離図の各ノードは関連付けられたルールの集合を有している。分離図の第1層は、ルールの集合の内の最初のフィールド内のルールに属する整数間隔の集合に応じて構成されたEITである。第1層に続くj番目の層はF_(j)-DITの集合とF_(j)-EITの集合からなる。F_(j)-DITの集合はj-1層のF_(j-1)-EITの各ノードの整数間隔に応じて構築される。F_(j)-EITの集合は、j層のF_(j)-DITの各ノードにある整数間隔に応じて構築される。
【0067】分離図は2つの構造からなる。EITとDITである。与えられた整数間隔の集合は、EITとDITと呼ばれる木によって基本間隔と分離間隔として現すことができる。EIT(DIT)内の各ノードはその整数間隔の集合の基本(分離)間隔の一つを有する。分離図のコンポーネントであるF_(j)-EITとF_(j)-DITは、EITとDITの各ノードでルールを関連付けることでEITとDITを強調させる。F_(j)-EITのノードに関連付けられるルールは、そのノードに備えられる基本間隔を含むj番目のフィールドにおけるルールを含み、一方、F_(j)-DITの各ノードに関連付けられるルールは、そのノードに備えられる分離間隔が含まれるj番目のフィールでのルールを含む。
【0068】これ以上のEITが構築できなくなるまで、構築されたEITのノードに関連付けられルールの集合に応じたEITを構築することによって、EITコンポーネントのみで、パケットのために最適に一致するルールを見つけるための単一パスの要件を満たすデータ構造を十分に構築できる。しかし、EIT内の各ノードで関連付けられるルールが互いに重複すると、重複したサブEITが構築される。これら重複するサブEITは冗長であり、データ構造のための記録領域で共有される必要がある。サブEITがEITの「中間」にある場合残念ながら、サブEITは、2つのEITで共有できない。そのために、重複するサブEIT を共有するためにDITが構成される。
【0069】例えば、図3は、DITとEITの構成例である。図3のcは、2つのEITが重複したサブEITを持っているが、サブEITは両方のEITの途中にあるので共有することはできない。しかし、各EITのためにDITを作成することで、元のEITを置き換えたDITを用いることで2つのDITで単一のサブEITを共有できるようになる。
【0070】図4は、図1に示される3つのフィールドを持つルールの集合Sのために構築された分離図Gである。Gは3つの層を有している1)層1は、ルールの集合Sのために構築された1つのF_(1)-EITを含んでいる。2)層2は6個の F_(2)-DITと2個のF_(2)ーEITが含まれおり、F_(2)-DITはF_(1)-EITのノードにルールの集合と関連付けられたルールに応じて、F_(2)ーEITは6個のF_(2)-DITのノードに関連付けられたルール集合に応じて構築されている。なぜなら、F_(1)-EITにおいて1以上の6個の異なるARSが、6個のF_(2)-EITに1以上の2個の異なるARSがあるためである。3)層3には、2つのF_(2)-EITの各ノードに応じて構築された2つのF_(3)-DITが含まれおり、また、2つのF_(3)-DITの各ノードに応じて構築された1つのF_(3)-EITが含まれている。なぜなら、2つのF_(2)-EITにおいて1以上の2個の異なるARSが、2個のF_(3)-DITに1以上の2個の異なるARSがあるためである。)

(オ)「【0071】 The Disjoint Graph Construction algorithm takes a rule set S with N rules and D fields as input, and returns a disjoint graph G as output.
Input: rule set S = {R_(1),...,R_(N)}, where R_(i) = {F_(i1), F_(i2),..., F_(iD)}, i∈ [1, N].
Output: disjoint graph G.
Disjoint Graph Construction Algorithm (S)
Step 1. Construct the first layer of the disjoint graph G
【0072】 Construct an F_(1) - EIT for integer interval F_(1)(S) using the EITC algorithm
Step 2. Construct the k-th layer of the disjoint graph G , k∈ [2, D]
【0073】
1. Construct a F_(k) - DIT in the k-th layer for each node of F_(k-1) - EIT in the(k - 1)-th layer and connect the node to the root of the newly constructed F_(k )- DIT

a. Given a node v with an associated rule set Sv of an F_(k-1) - EIT in the(k - 1) -th layer, construct a F_(k) - DIT_(v), for the set of integer intervals F_(k)(S_(v)) using the DITC algorithm, connect v to the root of F_(k) - DIT_(v). If S_(v) has only one rule, directy associate the rule to v;
b. If the associated rule set S_(v), of another node v' is the same as S_(v), then F_(k) - DIT_(v) is shared by v and v' , and node v' is also connected to the root of F_(k) - DIT_(v);
a. Repeat a to c to construct F_(k) - DIT s for all the nodes in theF_(k-1) - EIT s.

2. Construct a F_(k) - EIT in the k-th layer for each node in the F_(k) - DIT s in the k-th layer and connect the node to the root of the newly constructed F_(k) - EIT

a. Given a node v with an associated rule set Sv of an F_(k) - DIT in the k -th layer, construct an F_(k) - EIT_(v), for the set of integer intervals F_(k)(S_(v)) using the EITC algorithm, connect v to the root of F_(k) - EIT_(v). If S_(v) has only one rule, directy associate the rule to v;
b. If the associated rule set S_(v), of another node v' is the same as S_(v), then F_(k) - EIT_(v) is shared by v and v' , and node v' is also connected to theroot of F_(k) - EIT_(v);
c. Repeat a to c to construct F_(k) - EIT s for all the nodes in the F_(k) - DITs.
Repeat Step 2 until the D -th layer of the disjoint graph G is constructed.」(7頁11欄?12欄)
([当審仮訳]:
【0071】分離図構築アルゴリズムは、N個のルールとD個のフィールドを持つルールの集合Sを入力として、出力として分離図Gを出力する。
入力: ルールの集合S = {R_(1)、...、R_(N)}
ここで、R_(j)= {F_(j1)、F_(j2)、...、F_(jD)}、j∈[1、N]
出力: 分離図G

分離図構築アルゴリズム(S)
ステップ1.分離図の第1の層の構築
【0072】EITCアルゴリズを用いて整数間隔F_(1)(S)についてのF_(1)-EITを構築する。
ステップ2.分離図Gにおけるk番目の層の構築 k∈[2,D]
【0073】
1.k-1層のF_(k-1)-EITの各ノードに応じたk層のF_(k)-DITを構築し、各ノードと新しく構築されたF_(k)-DITのルートを結合させる。

a.k-1層のF_(k-1)-EITのルールの集合S_(v)が関連付けられた所定のノードvについて、DITCアルゴリズムを用いて整数間隔F_(k)(S_(v))のためにF_(k)-DIT_(v)を構築する、ノードvとF_(k)-DIT_(v)のルート繋げる。もし、ルールが1つしか無いのであるば、vとルールを直接関連づける。
b.関連付けられるルールの集合Svが他のノードv’に.関連付けられるルールの集合Sv’と同じであれば、F_(k)-DIT_(v)はvとv’に共有され、ノードv’もF_(k)-DIT_(v)のルートに繋がれる。
c.F_(k)-EITの全てのノードのためにF_(k)-DITが構築されるまで繰り返す

2.k層のF_(k)-DITの各ノードに応じたk層のF_(k)-EITを構築し、各ノードと新しく構築されたF_(k)-EITのルートを結合させる。
a.k層のF_(k)-DITのルールの集合S_(v)が関連付けられた所定のノードvについて、EITCアルゴリズムを用いて整数間隔F_(k)(S_(v))のためにF_(k)-EIT_(v)を構築し、ノードvとF_(k)-EIT_(v)のルート繋げる。もし、ルールが1つしか無いのであるば、vとルールを直接関連づける。
b.関連付けられるルールの集合Svが他のノードv’に.関連付けられるルールの集合Sv’と同じであれば、F_(k)-EIT_(v)はvとv’に共有され、ノードv’もF_(k)-EIT_(v)のルートに繋がれる。
c.F_(k)-DITの全てのノードのためにF_(k)-EITが構築されるまで繰り返す。
構築される分離図のD層までステップ2を繰り返す。)

(カ)「【0082】 The Elementary Interval Tree is an augmented binary search tree that stores each of the elementary intervals in one node to represent a set of intervals. Each node in the elementary interval tree has LB, UB, Left, Right, and AIS fields, where LB and UB are lower and upper endpoint of an elementary interval, respectively,Left and Right are pointers to left and right subtree, respectively, and AIS(Associated Interval Set) is a list of identifiers of intervals that contain the elementary interval stored in the node.」(8頁13欄)
([当審仮訳]:
【0082】EITは、1つのノードにおいて間隔の集合を現す各基本間隔を備えている拡張された2分探索木である。 EITの各ノードは、LB、UB、Left、Right、そしてAISを有している。ここで、 LB とUBは基本間隔の下限と上限であって、LeftとRightはそれぞれ左と右のサブtree へのポインタであり、そして AIS (関連づけられた間隔の集合)は、ノードが備えた基本間隔を含む間隔の識別子のリストである。)

(キ)「【0098】 The Disjoint Interval Tree is a binary search tree that stores each of the disjoint intervals in one node to represent a set of intervals. Each node in the disjoint interval tree has LB, UB, Left, Right, and AIS fields, where LB and UB are lower and upper endpoints of a disjoint interval, respectively, Left and Right are pointers to left and right subtree, respectively, and AIS (Associated Interval Set) is a list of identifiers of intervals that is contained by the disjoint interval stored in the node.」(9頁16欄)
([当審仮訳]:
【0098】DITは、1つのノードにおいて間隔の集合を現す各分離間隔を備えている2分探索木である。DITの各ノードは、LB、UB、Left、Right、そしてAISを有している。ここで、 LB とUBは分離間隔の下限と上限であって、LeftとRightはそれぞれ左と右はサブtree へのポインタであり、そして AIS (関連づけられた間隔の集合)は、ノードが備えた分離間隔を含む間隔の識別子のリストである。)


上記引用例の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、

a)上記(ウ)の段落【0043】の記載によれば、引用例には、パケットの単一のパス分類を可能としたツリー状の構造からなる分離図が、また、段落【0044】には、分離図は、パケットを分類するためにルールの集合をもとに構築され、ルールはD個のフィールドを有していることが、そして、段落【0045】には、第1層が基本間隔木(EIT)であり残りの層の各層が分離間隔木(DIT)と基本間隔木(EIT)で構成されるツリー状の分離図であること、さらに、上記(カ)には、EITは拡張された2分探索木であること、上記(キ)には、DITが2分探索木であることが記載されている。
また、DITは上記(エ)の段落【0068】?【0069】の記載によれば、2つのEITの「中間」に同じ重複したルールを持つサブEITが生じると共有することができないので、その重複するサブEITのために設けられるものであり、元のEITを置き換えたDITを設けることによって、重複するサブEITは共有できるようになるものであり、さらに、上記(ウ)の段落【0045】の記載によれば、DITは分離間隔よりなり、また、段落【0046】の記載によれば、分離間隔は、オーバーラップしている整数間隔を互いを分離するために結合して形成した整数間隔である。
すなわち、ルールの範囲が重複するルール間で、ルールの範囲を結合して一つの分離間隔として、元のEITをDITに置き換え、その後、結合した分離間隔に対してEITを作成することで、EITの共有を行うものと認められる。
そして、上記(オ)の段落【0071】?【0073】には、この分離図を構築するためのアルゴリズムが記載されており、引用例には、分離図を構築する方法が記載されていると認められる。
また、上記(ア)の段落【0004】、及び上記(イ)の段落【0006】の記載によれば、引用例のものは、IPルータに適用され、パケットがIPルータに入力されることが記載されている。
したがって、引用例には、IPルータに入力されるパケットの単一のパス分類を可能とする、パケットを分類するためにルールの集合をもとに構築された、第1層が拡張された2分探索木である基本間隔木(EIT)であり、残りの層の各層が、ルールの範囲が重複する際には、ルールの範囲を結合した分離間隔を形成する2分探索木である分離間隔木(DIT)と、前記結合した分離間隔のための拡張された2分探索木である基本間隔木(EIT)で構成されるツリー状の分離図を構築するための方法が記載されているといえる。

b)上記(イ)の段落【0007】、及び、上記(ウ)の段落【0044】には、各ルールが範囲を規定された整数間隔からなる複数のフィールドを有することが記載されている。
さらに、上記(ウ)の段落【0044】、及び上記(エ)の段落【0066】の記載によれば、フィールドの数と、分離図の層の数が同じであることが、上記(ウ)の段落【0045】、及び段落【0067】には、j番目の層のEITのノードに関連付けられるルールが、j番目のフィールドにおけるルールを含み、一方、j番目の層のDITの各ノードに関連付けられるルールは、j番目のフィールでのルールを含むことが記載されていることから、各フィールドが各層と対応するものと認められる。
したがって、引用例には、各ルールが範囲を規定された整数間隔からなる複数のフィールドを有し、分離図はフィールドに対応した同じ数の層を有することが記載されているといえる。

c)上記(オ)の段落【0071】?【0073】には、ステップ1として、第1の層がEITとして構築し、ステップ2として、2番目以降のk番目各層のDITとEITを順次構築する分離図の構築アルゴリズムが記載されており、引用例には、まず、第1の層のEITを構築するステップと、その後、残りの各層のDITとEITを順次構築するステップからなる方法が記載されているといえる。
そして、上記(エ)の段落【0066】には、分離図の第1層のEITは、ルールの集合の内の最初のフィールド内のルールに属する整数間隔の集合に応じて構成されることが、さらに、上記(イ)の段落【0008】によれば、ルールの集合のフィールドにある整数間隔をオーバーラップしないように細かく分けることで基本間隔が形成されることが記載されており、そして、段落【0067】、及び図4によれば、EITの各ノードが基本間隔を有することが記載されていることから、EITの各ノードに基本間隔が割り当てれるものと認められる。
したがって、引用例には、第1層のEITを構築するステップとして、最初のフィールド内のルールに属する整数間隔をオーバーラップしないように細かく分けることで基本間隔を算出し、EITの各ノードに割り当てることが記載されているといえる。
また、【0067】には、j-EITのノードに関連付けられるルールは、そのノードに備えられる基本間隔を含むj番目のフィールドにおけるルールを含むことが記載されており、引用例には、第1層のEITを構築するステップとして、各ノードの基本間隔に関連したルールが関連付けることが記載されているといえる。
さらに、上記(カ)の段落【0082】には、EITは拡張された2分探索木であり、各ノードはサブツリーへのポインタ-を有することが記載されており、ここで、一般的に「2分探索木」では、ルートの親ノードを選択し、「左の子ノード<親のノード<右の子ノード」となるように、各ノードがいわゆる枝で結合されるものであり、そして、分離図の例である図4の第1層のEITにおいても、親ノードを中心に各ノードが結合されていることから、引用例においても、第1層のEITを構築するステップとして、ルートの親ノードが選択され、他のノードと枝で結合されたものと認められる。

d)上記(オ)の段落【0072】には、2番目以降の各層は、前の層のEITの各ノードに応じてDITを作り、前の層のEITの各ノードと作った当該層のDITのルートを結合させること、次に、該DITの各ノードに応じてEITが作り、該DITの各ノードとEITのルートを結合させることが記載されており、また、上記(エ)の段落【0066】には、DITは、一つ前の層におけるEITの各ノードの整数間隔に応じて構築され、EITは、その層のDITの各ノードの整数間隔に応じて構築されることが、さらに、段落【0067】には、EIT(DIT)内の各ノードはその整数間隔の集合の基本(分離)間隔の一つを有しており、各ノードにはその基本(分離)間隔を含むルールが関連付けられていることが記載されていることから、前の層のEITの各ノードに応じてDITを作ること、及び、DITの各ノードに応じてEITを作ることは、前の層のEITの各ノードに関連付けられたルールに応じてDITを作ること、及び、DITの各ノードに関連付けられたルールに応じてEITを作ることと認められる。
したがって、引用例には、残りの各層のDITとEITを構築するステップとして、前の層のEITの各ノードに関連付けられたルールに応じて、該各ノードに対応した当該層のDITを作ること、前記前の層のEITの各ノードと当該層に作られたDITのルートを結合させること、該作られたDITの各ノードに関連付けられたルールに応じて当該層のEITを作ること、 前記作られたDITの各ノードと当該層に作られたEITのルートを結合させることが記載されているといえる。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「IPルータに入力されるパケットの単一のパス分類を可能とする、パケットを分類するためにルールの集合をもとに構築された、第1層が拡張された2分探索木である基本間隔木(EIT)であり、残りの層の各層が、ルールの範囲が重複する際には、ルールの範囲を結合した分離間隔を形成される2分探索木である分離間隔木(DIT)と、前記結合した分離間隔のための2分探索木である基本間隔木(EIT)で構成されるツリー状の分離図を構築するための方法であって、各ルールが範囲を規定された整数間隔からなる複数のフィールドを有し、分離図はフィールドに対応した同じ数の層を有し、
まず、第1の層のEITを構築するステップと、その後、残りの各層のDITとEITを順次構築するステップからなる方法であって、
第1層のEITを構築するステップが、
最初のフィールド内のルールに属する整数間隔をオーバーラップしないように細かく分けることで基本間隔を算出し、EITの各ノードに割り当てること、
各ノードの基本間隔に関連したルールを関連付けること、
ルートの親ノードが選択されること、
親ノードと他のノードが枝で結合すること、
残りの層の各層のDITとEITを構築するステップが、
前の層のEITの各ノードに関連付けられたルールに応じて、該各ノードに対応した当該層のDITを作ること、
前記前の層のEITの各ノードと当該層に作られたDITのルートを結合させること、
該作られたDITの各ノードに関連付けられたルールに応じて当該層のEITを作ること、
前記作られたDITの各ノードと当該層に作られたEITのルートを結合させること
からなる方法。」


また、上記(エ)の段落【0068】には、「・・・、EITコンポーネントのみで、パケットのために最適に一致するルールを見つけるための単一パスの要件を満たすデータ構造を十分に構築できる。・・・」と記載されており、上記引用例には以下の事項(以下、「技術事項」という。)が記載されている。

「EITのみで、分離図を構成する。」

ウ.対比・判断

a)引用発明の「パケット」は「IPルータに入力」するものであり、本願発明の「受信されたパケット」に相当する。引用発明の「ルール」は「集合」であるから複数個あると認められ、引用発明の「ルールの集合」が、本願発明の「複数のルール」に相当する。
さらに、引用発明の「分離図」は、パケットを分類するために「2分探索木である基本間隔木(EIT)」と「2分探索木である分離間隔木(DIT)」からなるツリー状の構造であるから、引用発明の「分離図」と、補正後の発明の「3分類木構造である」「分類木構造」は、「ツリー状の分類構造」で共通する。
したがって、引用発明の「IPルータに入力されるパケットの単一のパス分類を可能とする、パケットを分類するためにルールの集合をもとに構築された、第1層が拡張された2分探索木である基本間隔木(EIT)であり、残りの層の各層が、ルールの範囲が重複する際には、ルールの範囲を結合した分離間隔を形成される2分探索木である分離間隔木(DIT)と、前記結合した分離間隔のための2分探索木である基本間隔木(EIT)で構成されるツリー状の分離図を構築するための方法」と、補正後の発明の「複数のルールに従って、受信されたパケットの単一パス分類を可能にするように構成された分類木構造を構築するための方法」は、「複数のルールに従って、受信されたパケットの単一パス分類を可能にするように構成されたツリー状の分類構造を構築するための方法」で共通する。

b)引用発明の「各ルールが範囲を規定された整数間隔からなる複数のフィールドを有し」は、補正後の発明の「各ルールが、それに関連付けられた複数のフィールドを有し」に相当する。
また、引用発明の「分離図を構築するための方法」は、「まず、第1の層を構築」し、「その後、残りの各層」を「順次構築」するものであるから、引用発明においては番号の若い「層」に優先順位があると認められ、また、引用発明において「分離図はフィールドに対応した同じ数の層を有」するものであり、「フィールド」と「層」が対応している以上、「フィールド」も「層」に対応して優先順位を有するものと認められる。

c)引用発明における、「第1層のEITを構築すること」は、「第1層」に対応する「フィールド」に対して分離図を構築するものと認められる。また、引用発明の「基本間隔」は整数の間隔であるから一意の値と認められ、さらに、上記b)に記したように「フィールド」には「層」に対応して優先順位があると認められるので、最優先順位の「第1の層」に対応する「最初のフィールド」は、優先順位のレベルがトップといえることから、引用発明の「最初のフィールド内のルールに属する整数間隔をオーバーラップしないように細かく分けることで基本間隔を算出し、EITの各ノードに割り当てること」は、補正後の発明の「トップ優先順位レベルのフィールド内で、各一意の値についてノードを作成するステップ」に相当する。

d)引用発明の「各ノードの基本間隔に関連したルールを関連付けること」における「各ノード」は、「第1の層」の「EIT」にある「各ノード」であり、また、上記b)に記したように「第1の層」は優先順位のレベルがトップであるから、優先順位のレベルがトップの層にある「各ノード」といえ、引用発明の「各ノードの基本間隔に関連したルールを関連付けること」は、補正後の発明の「トップ優先順位レベル内のノードのそれぞれについて、対応するノードの値に一致する1つまたは複数のルールのそれぞれの集合を識別するステップ」に相当する。

e)引用発明の「ルートの親ノード」は、「第1の層」の「EIT」の最上位にあるノードであり、最上位にあるノードを「ヘッドノード」と称することは任意であるから、引用発明の「ルートの親ノードが選択されること」は、補正後の発明の「作成されたノードからヘッドノードを選択するステップ」に相当する。

f)引用発明の「親ノードと他のノードと枝で結合すること」は、「第1の層のEITを構築ステップ」で行うものであり、そして、上記b)に記したように「第1の層」は優先順位のレベルがトップであり、さらに、引用発明の第1の層のEITは2分探索木で構築されるものであり、ルールに応じて作られるものであるから、ノード間の結合は論理的決定経路と認められ、引用発明の「親ノードと他のノードと枝で結合すること」は、補正後の発明の「トップ優先順位レベル内でヘッドノードから他のノードへの論理的決定経路を作成するステップ」に相当する。

g)引用発明の「前記前の層のEITの各ノードと当該層に作られたDITのルートを結合させること」は、「前の層」が「第1層」の時には、「第1層」の「各ノード」と「DITのルートを結語すること」であり、そして、最後の層以外では、前の層のEITの各ノードから現在の層のDITのルートが結合されるものであり、さらに、「DITのルート」のノードは前の層の各ノードに関連付けられたルールに応じて作られるものであるから、その間の結合路である、EITの各ノードとDITのルートの結合は論理的決定経路であり、「前の層のEITの各ノードから」のものであるから、互いに異なる経路と認められるので、引用発明の「前記前の層のEITの各ノードと当該層に作られたDITのルートを結合させること」と、補正後の発明の「トップ優先順位レベル内のそれぞれのノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップ」、及び、「最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のそれぞれのノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップ」は、「トップ優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップ」、及び「最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップ」という点で差異はない。

h)引用発明の「残りの層」は「第1の層」以外の層であり、また、上記b)に記載したように引用発明においては番号の若い「層」に優先順位があるから、残りの優先順位のレベルの層と認められ、さらに、引用発明の「各層」はそれぞれの層といえ、引用発明の「残りの層の各層」は、補正後の発明の「いずれの残りの優先順位レベルのそれぞれについて」に相当する。

i)引用発明の「前の層のEITの各ノードに関連付けられたルールに応じて、該各ノードに対応した当該層のDITが作ること」は、DITは各ノードに関連付けられたルールに応じて構築されるものであるから、関連した論理的決定経路のみを有するものと認められ、さらに、引用発明の「該作られたDITの各ノードの有するルールをもとに当該層のEITが作ること、 前記作られたDITの各ノードと当該層に作られたEITのルートを結合させること」は、DITの各ノードに対してそれぞれEITを作成するものであるから、当該層のDITと、DITの各ノードに結合されたEITからなるツリーは、前の層の各ノードに対する「部分木」と認められる。
したがって、引用発明の「前の層のEITの各ノードの有するルールをもとに、該各ノードに対応した当該層のDITが作ること、前記前の層のEITの各ノードと当該層に作られたDITのルートを結合させること、該作られたDITの各ノードの有するルールをもとに当該層のEITが作ること、前記作られたDITの各ノードと当該層に作られたEITのルートを結合させること」は、補正後の発明の「次に高い優先順位レベルから受信された論理的決定経路のそれぞれについて、それぞれ次に高い優先順位レベルのノードに関連付けられたルールを満足するのに必要なノードおよび関連した論理的決定経路のみを含む、それぞれの部分木を作成する」に含まれるものである。

j)補正後の発明における「実行するステップ」は、「トップ優先順位レベル」の各ステップ、及び「残りの優先順位レベル」の各ステップを「実行するステップ」であるが、引用発明においても、分離図を構築するためには、当然、「第1の層のEITを構築するステップ」、及び「残りの層の各層のDITとEITを構築するステップ」内の各構成は実行されるものであり、補正後の発明と引用発明で実質的な差異をもたらすものではない。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)

「複数のルールに従って、受信されたパケットの単一パス分類を可能にするように構成されたツリー状の分類構造を構築するための方法であって、各ルールが、それに関連付けられた複数のフィールドを有し、各フィールドが、それに関連付けられた優先順位レベルを有し、
方法が、トップ優先順位レベルについて、
トップ優先順位レベルのフィールド内で、各一意の値についてノードを作成するステップと、
トップ優先順位レベル内のノードのそれぞれについて、対応するノードの値に一致する1つまたは複数のルールのそれぞれの集合を識別するステップと、
作成されたノードからヘッドノードを選択するステップと、
トップ優先順位レベル内でヘッドノードから他のノードへの論理的決定経路を作成するステップと、
トップ優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップと
を実行するステップを含み、いずれの残りの優先順位レベルのそれぞれについて、
次に高い優先順位レベルから受信された論理的決定経路のそれぞれについて、それぞれ次に高い優先順位レベルのノードに関連付けられたルールを満足するのに必要なノードおよび関連した論理的決定経路のみを含む、それぞれの部分木を作成するステップと、
最低位以外の各優先順位レベルについて、現在の優先順位レベル内のノードから次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路を作成するステップと
を実行するステップを含む、
方法。」


(相違点)
(相違点1)
次に低い優先順位レベルへの異なる論理的決定経路が、補正後の発明では、トップ優先順位レベル内、及び、現在の優先順位レベル内のそれぞれのノードから作成されるのに対して、引用発明では、それぞれのノードからは、必ずしも作成されない点。

(相違点2)
ツリー状の分類構造が、補正後の発明では、3分類木構造であるのに対して、引用発明では、そのような構造でない点。


以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1)に関して
引用発明のものは、引用例の段落【0006】に「・・・。 同じフローに属しているすべてのパケットは前もって定められたルールに従って、そして、そのルータによって同じ方法で処理される。・・・」あるように、ルータに入力されるすべてのパケットが予め定められたルールに従うことを前提としているために、最低位のフィールドに到達する前のフィールドにおいて1つのルールのみと一致した際には、それ以下のフィールドでのルールの判定を行わないものであるが、ルータに入力されるパケットの中には予め定められたルールに従わないものも含まれることは、当然に予想されることであるから、引用発明においてもルールに従わないものために、各層のそれぞれのノードから論理決定経路を作成し、それぞれに部分木を作成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2)に関して
補正後の発明における「3分類木構造」は、本願の発明の詳細な説明の段落【0028】に「図3A-3Cの例示的な実施形態では、分類構造300は、テーブル200の列を表すレベルによる3分探索木である。一般的に、3分探索木は、各ノードが3つまでの枝、すなわち、現在のノードの値よりも大きな値のための右枝、現在のノードの値に等しい値のための中枝、および現在のノードの値よりも小さな値のための左枝を有することができる探索木である。本発明の一実施形態では、分類構造の中枝は、木の現在のレベルにおいて、うまくいく一致が見つかった(すなわち、着信パケットフィールドに適用可能なルールが識別された)こと、および、分類プロセスが木の次のレベルにおいて(すなわち、次のパケットフィールドに)続いてもよいことを示す」と記載されることから、「分類構造」が「3分探索木」であることと認められる。
そして、一般に「3分探索木」とはトライ木の各ノードを2分探索木としたものであるから、補正後の発明における「3分類木構造」は、パケットの各フィールドに対応する木構造の各レベルおいては2分探索木として適用可能なルールを探索し、一致するものが見つかると次のフィールドに対応する木構造のレベルに続くものと認められる。
ここで、引用発明においても第1の層のEITは2分探索木であり、第1の層の各ノードには第1のフィールドのルールが関連付けられていることから、適用可能なルールを探索し、一致するものが見つかると次の層に続くものである。そして、次の層において、引用発明ではEITとDITという2つの2分探索木を組み合わせたものであり、残りの層のEITは、DITにおいてルールの範囲が重複した際に、ルールの範囲を結合した分離間隔のために設けられたものであるから、DITからEITへの論理的決定経路では2分探索木の構造ではなくなっている。
しかしながら、上記「イ.引用発明」の項に記載したように、上記引用例には「EITのみで、分離図を構成する。」という技術事項が記載されており、引用発明においても、分離図のための十分な記録領域が確保できる際には、第2層目以降の各層の構造もEITのみで構築することは当業者が容易になし得ることである。そして、その際には、次の層以降の各層もEITのみで構築され、各層が2分探索木となり、分離図は「3分類木構造」となることから、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、補正後の発明の効果も、引用発明、引用例に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正後の発明は、上記引用例に記載された発明及び引用例に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


第3.本願発明について

1.本願発明

平成26年2月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。


2.引用発明

引用発明等は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用発明」の項で「引用発明として」認定したとおりである。


3.対比・判断

そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり、上記引用例に記載された発明及び引用例に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび

以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び引用例に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-25 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2011-534490(P2011-534490)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 玉木 宏治  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山本 章裕
山澤 宏
発明の名称 データパケットを分類するための方法およびシステム  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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