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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1301916 |
審判番号 | 不服2013-17523 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-10 |
確定日 | 2015-06-10 |
事件の表示 | 特願2008-256606「携帯通信端末、通信システム、及び通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日出願公開、特開2010- 87985〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年10月 1日の出願であって、平成25年 6月 6日に拒絶査定がなされ、これに対して、同年 9月10日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 そして、当審において、平成25年11月12日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年11月22日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は、平成26年 1月24日付けで回答書を提出した。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年 9月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成25年 4月 3日付けの手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された、 「【請求項1】 所定情報を記憶する記憶部を備える通信端末であって、 前記記憶部の記憶残容量が所定値未満となるときに、前記記憶部に記憶された前記所定情報の少なくとも一部を、所定装置に対して送信すると共に、該送信した所定情報を縮小化して、前記記憶部に記憶させる制御部を備え、 前記所定情報の少なくとも一部は、経時的に取得され、前記記憶部に記憶された情報である、ことを特徴とする通信端末。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「【請求項1】 所定情報を記憶する記憶部を備える携帯通信端末であって、 前記記憶部の記憶残容量が所定値未満となるときに、前記記憶部に記憶された前記所定情報の少なくとも一部を、所定装置に対して送信すると共に、該送信した所定情報を縮小化して、前記記憶部に記憶させる制御部と、 ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部と、 を備え、 前記所定情報の少なくとも一部は、前記生体情報取得部により経時的に取得された生体情報である、ことを特徴とする携帯通信端末。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。) 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の【請求項1】において、補正前の特許請求の範囲の【請求項2】に基づいて、「通信端末」について「ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部」が備えられているという点と、「経時的に取得され、前記記憶部に記憶された情報」について「生体情報取得部により経時的に取得された(ユーザの)生体情報」である点で限定し、さらに、明細書の段落【0012】等の記載に基づいて「通信端末」を「携帯通信端末」と限定したものである。 また、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び、特許法第17条の2第5項(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項において「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明] これに対して、 原査定の拒絶理由で引用された特開2005-109684号公報(以下、「引用文献」という。)には、「画像データ送信システム及び画像データ送信方法並びに携帯端末装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【技術分野】 【0001】 本発明は、携帯端末装置とサーバを備える画像データ送信システム及び画像データ送信方法並びに携帯端末装置に関するものである。」(3頁) ロ.「【0017】 このような本発明の画像データ送信システム及び画像データ送信方法並びに携帯端末装置によれば、この携帯端末装置が、その記憶部の記憶容量を節約するために画像データをサーバに送信して消去した後であっても、記憶容量を節約しつつ、その画像データの内容を自機の表示部に表示させることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0019】 図1に示すように、撮像機能付き携帯電話機2(携帯端末装置に相当)は、無線の基地局4を介して、通信網6のサーバ8と通信を行うことができるようになっている。 ・・・(中略)・・・ 【0022】 次に、図2に示すように、撮像機能付き携帯電話機2は、カメラ部18(撮像部)、表示部20、記憶部22、画像処理部24、通信部26、操作部28、及びこれらを制御する制御部30を備えるようになっている。 【0023】 このような撮像機能付き携帯電話機2は、カメラ部18により撮影された画像データを表示部20に表示させることができるようになっていて、撮影する際には、その画像データの解像度を調節することができるようになっている。また、カメラ部18により撮影した画像データは、記憶部22に記憶させることができ、記憶した画像データは再び読み出して表示部20に表示させることができるようになっている。 ・・・(中略)・・・ 【0027】 以後の説明において、カメラ部18により撮影されたままの画像データや通信部26により受信したままの画像データのように、この撮像機能付き携帯電話機2が画像処理や編集処理を全く施していないような画像データを初期画像データということとする。 ・・・(中略)・・・ 【0034】 すなわち、ユーザーが、記憶部22に記憶されている複数の初期画像データの中からいずれかの初期画像データを選択して所定の操作を行なうと、制御部30は、通信部26にその初期画像データをサーバ8に対して送信させるようになっている(ステップS11)。 ・・・(中略)・・・ 【0036】 すなわち、画像処理部24は、制御部30からの命令に基づいて、通信部26が送信した初期画像データ又は送信中若しくは送信しようとする初期画像データから、この初期画像データに対応する低解像度画像データを生成する(ステップS12)。そして、この低解像度画像データを記憶部22に記憶させた後に(ステップS13)、初期画像データを記憶部22から消去するようになっている(ステップS14)。 ・・・(後略)・・・」(5?7頁) 上記引用文献の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献に記載された「携帯端末装置」に関し、以下の技術事項が読み取れる。 上記ロ.【0019】、【0023】、【0027】の記載より、引用文献の「携帯端末装置」は、「初期画像データ」を「記憶部22」に「記憶」させる「携帯電話機2」であると認められる。 上記ロ.【0017】の記載より、引用文献の「携帯端末装置」は、「記憶容量を節約する」ように構成されていることは明らかである。 上記ロ.【0034】の記載より、引用文献の「携帯端末装置」は、「記憶部22に記憶され」た、「初期画像データ」のいずれかを選択して「サーバ8に対して送信」させるようになっていることは明らかである。 ここで、いずれかを選択している点から、選択される「初期画像データ」は、「記憶部22に記憶された初期画像データ」の「少なくとも一部」のものであるといえる。 上記ロ.【0036】の記載より、引用文献の携帯端末装置の画像処理部24は、「制御部30」からの命令に基づいて、送信した「初期画像データ」から、この「初期画像データに対応する低解像度画像データを生成」し、そして、この「低解像度画像データ」を「記憶部22」へ「記憶させ」ていると認められる。 上記ロ.【0022】の記載より、引用文献に記載された「携帯電話機2」は、「記憶部22」、「画像処理部24」、「制御部30」、「カメラ部18」を備えるものと認められる。 したがって、上記引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「初期画像データを記憶する記憶部22を備える携帯電話機2であって、 前記記憶部22の記憶容量を節約するように、前記記憶部22に記憶された前記初期画像データの少なくとも一部を、サーバ8に対して送信すると共に、該送信した初期画像データに対応する低解像度画像データを生成して、記憶部22へ記憶させる制御部30と、 画像データを撮像するカメラ部18と、 を備え、 前記初期画像データの少なくとも一部は、カメラ部より取得された画像データである、ことを特徴とする携帯電話機2。」 [対比・判断] 補正後の発明と、引用発明とを対比すると、 引用発明の「初期画像データ」は、「所定」の「情報」に含まれることは明らかであるから、補正後の発明の「所定情報」に相当し、引用発明の「サーバ8」が、補正後の発明の「所定装置」に相当することは明らかである。 引用発明の「記憶部22」、「携帯電話機2」は、補正後の発明の「記憶部」、「携帯通信端末」に相当する。 また、引用発明では、「初期画像データ」が、「サーバ8」に送信されると共に、「低解像度画像データ」が「生成」されており、この「低解像度画像データ」を「生成」することが、記憶容量を節約するために、データ量を小さくするものであることは自明であるから、補正後の発明における(「所定情報」の)「縮小化」に相当しているといえる。 引用発明の「カメラ部18より取得された画像データ」と、補正後の発明の「生体取得部により取得された信号」とは、いずれも「取得された情報」という点で一致する したがって、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「所定情報を記憶する記憶部を備える携帯通信端末であって、 前記記憶部に記憶された前記所定の情報の少なくとも一部を、所定装置に対して送信すると共に、該送信した所定情報を縮小化して、前記記憶部に記憶させる制御部と、 を備え、 前記所定情報の少なくとも一部は、取得された情報であることを特徴とする携帯通信端末。」 <相違点> (1)上記「前記記憶部に記憶された前記所定の情報の少なくとも一部を、所定装置に対して送信する」ことが、補正後の発明では、「前記記憶部の記憶容量が所定値未満となるときに」行われるのに対して、引用発明では、特に限定していない点。 (2)上記「前記所定情報の少なくとも一部」に関し、補正後の発明では、「生体情報取得部により経時的に取得された生体情報であ」り、「ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部」により取得されるのに対して、引用発明では、「カメラ部から取得された画像データ」であり、「画像データを撮像するカメラ部」により取得される点。 上記相違点について検討すると、 まず、相違点(1)について検討する。 記憶部の記憶容量を常時確保するために、記憶部の記憶容量が所定値未満となるときに、記憶部に記憶された情報の一部を所定装置に対して送信することは、当業者にとって周知(例えば、特開平8-102795号公報において、特に段落【0047】。)である。 すると、引用発明も「記憶部22の記憶容量を節約するように」記憶部22に記憶されたデータの一部をサーバ8に送信するものであるから、引用発明において、記憶部の記憶容量が所定値未満となるとき「前記記憶部に記憶された前記所定の情報の少なくとも一部を所定装置に対して送信する」ことを行い、残容量を増やすように動作させることは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 次に、相違点(2)について検討する。 「ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部」を備えている携帯端末は、周知(例えば、特開2004-255029号公報の【0020】、【0021】、特開2008-204040号公報の【0017】、【0018】。)である。そして、これらの周知技術の携帯端末においても、記憶部の記憶容量が不足することは一般的な課題である。 すると、引用発明を周知の生体情報を保存する携帯端末に転用し、引用発明において「初期画像データ」に代えて、上記周知技術の「生体情報」を採用し、引用発明の「画像データを撮像するカメラ部」に代えて、上記相違点(2)に係る「ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部」を備えているとし、「前記所定情報の少なくとも一部」あるいは全部を「生体情報取得部により経時的に取得された生体情報」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、補正後の発明が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から到達した構成から容易に予測できる範囲内のものである。 なお、「生体情報」の「縮小化」については周知(例えば、特開2005-218492号公報。)であり、相違点(2)の判断について、「画像データ」を、「生体情報」としたときに、「縮小化」として、月毎代表測定データのようなものを算出し、日毎や、週毎のデータを消去することを行い、記憶部の必要とされる容量を減らす具体的な構成も、上記文献に記載されているように周知である。 よって、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を 受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成25年 9月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明及び周知技術は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2.(2)独立特許要件」の項で引用発明及び周知技術として認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記補正後の発明から上記補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2.(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.結び 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-09 |
結審通知日 | 2015-01-13 |
審決日 | 2015-01-27 |
出願番号 | 特願2008-256606(P2008-256606) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁 |
特許庁審判長 |
田中 庸介 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 山中 実 |
発明の名称 | 携帯通信端末、通信システム、及び通信方法 |
代理人 | 丸山 隆夫 |