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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1302015
審判番号 不服2014-1282  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-24 
確定日 2015-06-08 
事件の表示 特願2010-505745「マイクロチップの流路制御機構」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 1日国際公開、WO2009/119698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年3月18日(優先権主張 2008年3月24日)の出願であって,平成25年1月31日付けで拒絶理由が通知され,同年4月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年11月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成26年1月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年1月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年1月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。
「第一の層と,
第二の層と,
前記第一の層と前記第二の層の間に設けられた,弾性部材を含む中間層と,
前記第一の層と前記中間層との間に設けられた,試料を充填する移送元槽と試料の移送先である移送先槽とを連接する流路と,
前記第二の層と前記中間層との間に設けられた,前記流路の任意の位置から前記移送先槽近傍まで前記流路と重なる第一のシャッタ部と,を備え,
前記第一のシャッタ部へ圧力をかけることにより前記流路を閉鎖し,前記第一のシャッタ部への圧力をぬくことにより前記流路を開放するように構成し,
前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出することにより前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させるように構成したことを特徴とするマイクロチップ。」(下線は補正箇所を示す。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成25年4月8日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「第一の層と,
第二の層と,
前記第一の層と前記第二の層の間に設けられた,弾性部材を含む中間層と,
前記第一の層と前記中間層との間に設けられた,試料を充填する移送元槽と試料の移送先である移送先槽とを連接する流路と,
前記第二の層と前記中間層との間に設けられた,前記流路の任意の位置から前記移送先槽近傍まで前記流路と重なる第一のシャッタ部と,を備え,
前記第一のシャッタ部へ圧力をかけることにより前記流路を閉鎖し,前記第一のシャッタ部への圧力をぬくことにより前記流路を開放するように構成したことを特徴とするマイクロチップ。」

(3)上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第一のシャッタ部」について,「前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出することにより前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させるように構成」するという限定を付加するものであって,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)補正発明
補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

ここで,補正発明の「前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出することにより前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させる」点について,「前記流路の交差する間際まで」と特定されていることから,「第一のシャッタ部」は上記「交差」部に重ならないと解され,補正の根拠とされた明細書の記載箇所には「間際まで」という記載はあり,そこで参照している図6にもそうした例が示されている。
しかし,そのとき,「第一のシャッタ部」の一例に対応する「シャッタ流路83c」は,「移送先槽」に対応する「反応層52d」には達しない。
また,「移送先槽」に対応する槽にシャッタ流路が達する例は,図21Bに「シャッタ流路283c」として示されているものの,この「シャッタ流路283c」は「交差部C」と完全に重なっているから,「前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させる」という補正発明の特定事項に対応するものではない。
したがって,補正発明の「前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出する」という事項については,明細書及び図面を参酌して,第一のシャッタ部の先端部が移送先槽に向かって延びているという意味に解釈する。

(2)引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用され,本願の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2008/004572号(以下「引用例」という。)には,次の事項が記載されている。なお,後に引用発明の認定に直接的に利用する箇所に当審が下線を付した。

(ア)「[0001]
本発明は遺伝子解析などの化学/生化学分析などに広く使用されるマイクロ流路チップに関する。更に詳細には、本発明は液体又は気体などの流体試料を移送するための簡易な流体移送機構を有するマイクロ流路チップに関する。」

(イ)「[0062]
本発明で使用するマイクロ流路チップ1Aにおける中間基板8は弾性及び/又は可撓性を有するポリマー又はエラストマーであることが好ましい。中間基板8が弾性及び/又は可撓性を有する材料から形成されていない場合、扱き用非接着薄膜層12の部分を、膨隆させ扱き移送を実現するために変形させることが不可能又は困難となる。従って、中間基板8の形成材料としては例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのようなシリコーンゴムの他、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマーなどが好ましい。ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのようなシリコーンゴムが特に好ましい。上面基板3がPDMSである場合、中間基板8もPDMSであることが好ましい。PDMS同士は接着剤を使用しなくても、相互に強固に接着することができる。この現象は一般的に、「恒久接着(パーマネント・ボンディング)」と呼ばれている。ここでいう恒久接着とは、基板を構成する成分にSiを含んだ基板同士の表面をある種の表面改質を行うだけで、接着剤無しで基板と基板とを相互に接着することができる性質のことであり、マイクロ流路チップにおける微細構造の良好な封止性を発揮させることができる。PDMS基板の恒久接着では、貼り合わせ面を適宜表面改質処理した後、両方の基板の貼り合わせ面を密着して重ね合わせ、一定時間放置することで、容易に接着が行えるものである。換言すれば、非接着薄膜層11が存在する部分は恒久接着せず、非接着の状態に維持されているので、圧力などにより風船状に膨隆変形して流路用の空隙を出現させることができる。また、この非接着薄膜層11が存在する部分以外の箇所は恒久接着しているため、膨隆部分に通される液体又は気体などが他の部位に漏出することも無い。」

(ウ)「[0073]
図7は、本発明の流体移送方法を実施するために使用されるマイクロ流路チップの更に別の実施態様の概要断面図である。このマイクロ流路チップ1Cでは、図1に示されたマイクロ流路チップ1Aと異なり、上面基板3と下面基板5との間に、第1の中間基板と第2の中間基板からなる2枚の中間基板が間挿されている。このマイクロ流路チップ1Cでは、2本の扱き用非接着薄膜層が上下から流路用非接着薄膜層をサンドイッチ状に挟み込むように構成されているのが特徴である。説明の便宜上、第1の中間基板を上側中間基板8Uと呼び、第2の中間基板を下側中間基板8Lと呼ぶ。流路用非接着薄膜層となる第1の非接着薄膜層11は、上側中間基板8Uの下面側及び下側中間基板8Lの上面側の何れか一方又は両方に形成されている。この流路用非接着薄膜層11の両端には、上面基板3と上側中間基板8Uを貫通するポート7及び9が接続されている。第1の扱き用非接着薄膜層となる第2の非接着薄膜層12は、下面基板5の上面側及び下側中間基板8Lの下面側の何れか一方又は両方に形成されている。この第1の扱き用非接着薄膜層となる第2の非接着薄膜層12の少なくとも1ヶ所には、上面基板3の上面に開口する第1の加圧口13が接続されている。第2の扱き用非接着薄膜層となる第3の非接着薄膜層17は、上面基板3の下面側及び上側中間基板8Uの上面側の何れか一方又は両方に形成されている。この第2の扱き用非接着薄膜層となる第3の非接着薄膜層17の少なくとも1ヶ所には、上面基板3の上面に開口する第2の加圧口19が接続されている。第2の加圧口19の配設位置は第1の加圧口13と重ならない位置とする。第1の加圧口13及び第2の加圧口19は下側基板5の外面に開口するように配設することもできる。
[0074]
図8は、図7に示されたマイクロ流路チップ1Cを用いて流体を移送する原理を説明する概要断面図である。上側中間基板8Uと下側中間基板8Lの界面の第1の非接着薄膜層11に対応する第1の非接着部分に形成された空隙に注入されて液体18は、下面基板5と下側中間基板8Lの界面の第2の非接着薄膜層12に対応する第2の非接着部分に生じた膨隆先端部により扱かれて所定方向に前進する。この際、上面基板3と上側中間基板8Uの界面の第3の非接着薄膜層17に対応する第3の非接着部分を膨隆させ、両方の膨隆先端部で液体18を扱き移送することもできる。別法として、下面基板5と下側中間基板8Lの界面の第2の非接着薄膜層12に対応する第2の非接着部分だけを膨隆させ、上面基板3と上側中間基板8Uの界面の第3の非接着薄膜層17に対応する第3の非接着部分を膨隆させない扱き移送又はこの逆の態様の扱き移送など様々な扱き移送態様を実施することができる。また、下面基板5と下側中間基板8Lの界面の第2の非接着薄膜層12に対応する第2の非接着部分及び上面基板3と上側中間基板8Uの界面の第3の非接着薄膜層17に対応する第3の非接着部分の何れか一方を膨隆させて、上側中間基板8Uと下側中間基板8Lの界面の第1の非接着薄膜層11に対応する非接着部分に形成された空隙を開閉するためのバルブとしても機能させることができる。従って、図7に示されたマイクロ流路チップ1Cによれば、前進・後退・停止を含めて、極めて複雑な流体移送が可能となる。
[0075]
図9は、図7に示されたマイクロ流路チップ1Cにおける、第1の非接着薄膜層11、第2の非接着薄膜層12及び第3の非接着薄膜層17のレイアウトの一例を示す平面図である。(A)は上面基板3と上側中間基板8Uの界面の第3の非接着薄膜層17のレイアウトであり、(B)は上側中間基板8Uと下側中間基板8Lの界面の第1の非接着薄膜層11のレイアウトであり、(C)は下面基板5と下側中間基板8Lの界面の第2の非接着薄膜層12のレイアウトである。(D)はこれら3つを合体させた状態を示す。図示されているように、第1の非接着薄膜層11に対して、第2の非接着薄膜層12及び第3の非接着薄膜層17はそれぞれ単独で重畳しているところもあれば、第2の非接着薄膜層12及び第3の非接着薄膜層17が第1の非接着薄膜層11を上下からサンドイッチ状に重畳しているところもある。このような違いは、前記のような扱き目的やバルブ目的など使用目的の違いに基づく。この実施態様では、第1の非接着薄膜層11は9-1?9-5の5個の流体注入ポートと、7-1及び7-2の流体取出ポートを有する。符号6は第1の非接着薄膜層11における拡大領域を示す。この拡大領域6は各注入ポートから扱き移送されてきた流体類の混合撹拌槽として利用される。ポート9-1?5の各流体を順番に混合撹拌槽6に扱き移送する際、第1の非接着薄膜層11による流路の分岐の部位までを上部又は下部の一つの扱き空隙が担当するように配置されている。この配置により第1の非接着薄膜層11による流路内の流体は、所望の方向に移送することが可能となる。また、第1の非接着薄膜層11による流路を挟むように上部と下部に扱き空隙を配置することによって、第1の非接着薄膜層11による流路の分岐部分や長い流路を2分割して扱き空隙を設ける際、扱き空隙同士が重なり合っても、第1の非接着薄膜層11による流路内の流体が途切れないで移送することを可能にしている。」

(エ)[図7]



上記図7より,上から,上面基板,上側中間基板,下側中間基板,下面基板の順に積層されることが読み取れる。

(オ)[図8]




(カ)[図9]



上記の図9(B)及び(D)を参照すれば,「注入ポート9-1」から延びる「第1の非接着薄膜層11」は,「注入ポート9-1」と「混合撹拌槽6」とを連接することが読み取れる。
そして図9(C)も参照すれば,「第2の非接着薄膜層12」には,「注入ポート9-1」から延びる「第1の非接着薄膜層11」と重なり,その先端が「混合撹拌槽6」に向かい,「注入ポート9-2」から延びる「第1の非接着薄膜層11」が上記「注入ポート9-1」から延びる「第1の非接着薄膜層11」と交差する間際まで延びるものがあることが読み取れる。


イ 以上を総合すると,引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「中間基板及び上面基板は弾性を有するPDMSであり,
上面基板と下面基板との間に,上側中間基板と下側中間基板からなる2枚の中間基板が間挿されて,上から,上面基板,上側中間基板,下側中間基板,下面基板の順に積層され,
流路用非接着薄膜層となる第1の非接着薄膜層(11)は,上側中間基板の下面側及び下側中間基板の上面側の何れか一方又は両方に形成され,この流路用非接着薄膜層の両端には,上面基板と上側中間基板を貫通するポートが接続され,
第1の扱き用非接着薄膜層となる第2の非接着薄膜層(12)は,下面基板の上面側及び下側中間基板の下面側の何れか一方又は両方に形成され,この第1の扱き用非接着薄膜層となる第2の非接着薄膜層(12)の少なくとも1ヶ所には,上面基板の上面に開口する第1の加圧口が接続され,
第2の扱き用非接着薄膜層となる第3の非接着薄膜層は,上面基板の下面側及び上側中間基板の上面側の何れか一方又は両方に形成され,この第2の扱き用非接着薄膜層となる第3の非接着薄膜層の少なくとも1ヶ所には,上面基板の上面に開口する第2の加圧口が接続され,
下面基板と下側中間基板の界面の第2の非接着薄膜層(12)に対応する第2の非接着部分及び上面基板と上側中間基板の界面の第3の非接着薄膜層に対応する第3の非接着部分の何れか一方を膨隆させて,上側中間基板と下側中間基板の界面の第1の非接着薄膜層に対応する非接着部分に形成された空隙を開閉するためのバルブとしても機能させることができ,
第1の非接着薄膜層は5個の流体注入ポート(9-1?9-5)と,2個の流体取出ポートを有し,
拡大領域(6)は各注入ポートから扱き移送されてきた流体類の混合撹拌槽として利用され,
注入ポート(9-1)から延びる第1の非接着薄膜層は,注入ポート(9-1)と混合撹拌槽(6)とを連接し,
第2の非接着薄膜層(12)は,注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層(11)と重なり,その先端が混合撹拌槽(6)に向かい,他の注入ポート(9-2)から延びる第1の非接着薄膜層が上記注入ポート(9-1)から延びる第1の非接着薄膜層(11)と交差する間際まで延び,
ポートの各流体を順番に混合撹拌槽(6)に扱き移送する際,第1の非接着薄膜層による流路の分岐の部位までを上部又は下部の一つの扱き空隙が担当するように配置されている
流体試料を移送するための簡易な流体移送機構を有するマイクロ流路チップ。」

(3)対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 第一の層について
引用発明の「上面基板」及び「上側中間基板」は,連続して積層されているから,補正発明の「第一の層」に相当する。

イ 第二の層について
引用発明の「下面基板」は,補正発明の「第二の層」に相当する。

ウ 中間層について
引用発明では「上面基板,上側中間基板,下側中間基板,下面基板の順に積層され」るから,「下側中間基板」は,「上面基板,上側中間基板」と「下面基板」との間にある。
そして,「中間基板」は「弾性を有する」から,「下側中間基板」は「弾性を有する」。
したがって,引用発明の,「上面基板,上側中間基板」と「下面基板」との間にあり,「弾性を有する」「下側中間基板」は,補正発明の「前記第一の層と前記第二の層の間に設けられた,弾性部材を含む中間層」に相当する。

エ 流路について
(ア)引用発明では,「流路用非接着薄膜層となる第1の非接着薄膜層は,上側中間基板の下面側及び下側中間基板の上面側の何れか一方又は両方に形成され」るから,「流路用非接着薄膜層となる第1の非接着薄膜層」は「上側中間基板」と「下側中間基板」との間に設けられ,そして,「上側中間基板」の上には「上面基板」が連続して積層されている。
したがって,引用発明の「第1の非接着薄膜層」は,「上面基板」及び「上側中間基板」からなる層と,「下側中間基板」との間に設けられる。
また,引用発明の「第1の非接着薄膜層」は,「流路用非接着薄膜層となる」のであるから,「流路」としての機能を有する。

(イ)引用発明の「流体」について,引用発明が「流体試料を移送するための簡易な流体移送機構を有するマイクロ流路チップ」に関する発明であることから,その「流体」は「流体試料」として扱われるものである。
してみれば,引用発明の「流体」は,補正発明の「試料」に相当する。

(ウ)引用発明の「流体注入ポート」は,その表現からみて「流体」を注入するポートであるのは自明であるから,補正発明の「試料を充填する移送元槽」に相当する。
そして,引用発明では,「拡大領域は各注入ポートから扱き移送されてきた流体類の混合撹拌槽として利用され」る。
その「注入ポート」から見て「混合撹拌槽」は流体の移送先である。
したがって,引用発明の「混合撹拌槽」は,補正発明の「移送先である移送先槽」に相当する。

(エ)以上より,引用発明の,「上面基板」及び「上側中間基板」からなる層と,「下側中間基板」との間に設けられ,「注入ポートと混合撹拌槽とを連接」する「第1の非接着薄膜層」は,補正発明の「前記第一の層と前記中間層との間に設けられた,試料を充填する移送元槽と試料の移送先である移送先槽とを連接する流路」に相当する。

オ 第一のシャッタ部とその構成について
(ア)引用発明においては,「下面基板と下側中間基板の界面の第2の非接着薄膜層に対応する第2の非接着部分及び上面基板と上側中間基板の界面の第3の非接着薄膜層に対応する第3の非接着部分の何れか一方を膨隆させて,上側中間基板と下側中間基板の界面の第1の非接着薄膜層に対応する非接着部分に形成された空隙を開閉するためのバルブとしても機能させることができ」る。
そして,引用発明では「第2の非接着薄膜層の少なくとも1ヶ所には,上面基板の上面に開口する第1の加圧口が接続され」ることから,引用発明において「第2の非接着部分」「を膨隆させ」るということは,圧力をかけるということであるのは自明である。
したがって,引用発明の「第2の非接着薄膜層」は,圧力をかけることにより「膨隆」して「第1の非接着薄膜層に対応する非接着部分に形成された空隙を」開放し,圧力をぬくことにより「第1の非接着薄膜層に対応する非接着部分に形成された空隙を」閉鎖するという,シャッタとしての機能を有する。

(イ)引用発明では「第1の扱き用非接着薄膜層となる第2の非接着薄膜層は,下面基板の上面側及び下側中間基板の下面側の何れか一方又は両方に形成され」,その「第2の非接着薄膜層は,注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層と重な」る。
したがって,引用発明の「第2の非接着薄膜層」は,「下面基板」と「下側中間基板」との間に設けられている。

(ウ)以上より,引用発明の,「下面基板」と「下側中間基板」との間に設けられ,「注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層と重なり」,圧力をかけることにより「膨隆」して「第1の非接着薄膜層に対応する非接着部分に形成された空隙を」閉鎖し,圧力をぬくことにより「第1の非接着薄膜層に対応する非接着部分に形成された空隙を」開放する「第2の非接着薄膜層」は,補正発明の「前記第二の層と前記中間層との間に設けられた,前記流路の任意の位置から前記移送先槽近傍まで前記流路と重なる第一のシャッタ部」であって,「前記第一のシャッタ部へ圧力をかけることにより前記流路を閉鎖し,前記第一のシャッタ部への圧力をぬくことにより前記流路を開放するように構成」されたものに相当する。

カ 第一のシャッタ部の配置について
引用発明の「第2の非接着薄膜層は」「その先端が混合撹拌槽に向かい,他の注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層が上記注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層と交差する間際まで延び」る。
したがって,引用発明の「第2の非接着薄膜層」の「先端」は「混合撹拌槽に」向かって延び,すなわち補正発明でいう「進出」し,「他の注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層が上記注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層と交差する間際まで」シャッタとして機能する。
よって,引用発明の「その先端が混合撹拌槽に向かい,他の注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層が上記注入ポートから延びる第1の非接着薄膜層と交差する間際まで延び」る「第2の非接着薄膜層」は,補正発明の「前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出することにより前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させるように構成した」ものに相当する。

キ マイクロチップについて
引用発明の「マイクロ流路チップ」は,補正発明の「マイクロチップ」に相当する。

ク 以上を総合すれば,補正発明と引用発明とは,
「第一の層と,
第二の層と,
前記第一の層と前記第二の層の間に設けられた,弾性部材を含む中間層と,
前記第一の層と前記中間層との間に設けられた,試料を充填する移送元槽と試料の移送先である移送先槽とを連接する流路と,
前記第二の層と前記中間層との間に設けられた,前記流路の任意の位置から前記移送先槽近傍まで前記流路と重なる第一のシャッタ部と,を備え,
前記第一のシャッタ部へ圧力をかけることにより前記流路を閉鎖し,前記第一のシャッタ部への圧力をぬくことにより前記流路を開放するように構成し,
前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出することにより前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させるように構成したマイクロチップ。」
である点で一致し,相違点はない。

ケ したがって,補正発明は,引用発明,すなわち引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年1月24日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成25年4月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,上記第2[理由]1(2)に記載のとおりである。

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は,上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記第2[理由]2で検討した補正発明から,上記第2[理由]1(3)で検討したとおり,「第一のシャッタ部」について,「前記第一のシャッタ部の先端部が前記移送先槽に進出することにより前記流路の交差する間際まで前記第一のシャッタ部のシャッタ機能を作用させるように構成」するという限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が,上記第2[理由]2(3)に記載したとおり,引用例に記載された発明であるから,本願発明も同様に引用例に記載された発明である。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-02 
結審通知日 2015-04-08 
審決日 2015-04-21 
出願番号 特願2010-505745(P2010-505745)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土岐 和雅  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 三崎 仁
右▲高▼ 孝幸
発明の名称 マイクロチップの流路制御機構  
代理人 佐々木 敬  
代理人 福田 修一  
代理人 池田 憲保  
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