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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1302019
審判番号 不服2014-5121  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-18 
確定日 2015-06-09 
事件の表示 特願2011-554225「オブジェクトモデルにおける壁面を識別するためのシステム、方法、コンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日国際公開、WO2010/105127、平成24年 9月 6日国内公表、特表2012-520525〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、2010年(平成22年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月12日、2009年9月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月6日付けで手続補正がなされ、平成25年5月24日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成25年9月2日付けで手続補正がなされたが、平成25年11月12日付け(発送日同年11月18日)で拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成26年3月18日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年12月6日付け手続補正及び平成25年9月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであり、次のとおりのものと認められる。

(A)CADシステムで表されるオブジェクトモデルにおける壁フィーチャを識別するための方法において、
(B)CADシステムにオブジェクトモデルをロードするステップと、
(C)前記CADシステムによって前記オブジェクトモデルの第1の面の選択を受信するステップと、
(D-1)前記CADシステムによって候補壁面を発見し、該候補壁面を候補リストに記憶するステップと、
(D-2)ただし、前記候補壁面は前記第1の面と同一のオブジェクトモデルボディに由来する、又は、前記候補壁面は前記第1の面と同一表面タイプである、又は、前記候補壁面は前記第1の面と反対の複数の法線ベクトルを有する、又は、前記候補壁面は前記第1の面からオフセットされている、
(E)前記候補リストにおける少なくとも1つの候補壁面を、前記第1の面の対応面として指定するステップと、
(F)前記第1の面および前記対応面を前記オブジェクトモデルの壁として前記CADシステムに記憶するステップと
(G)を含むことを特徴とする、方法。

((A)?(G)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第2 刊行物の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された特開平6-259505号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「 【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、計算機上の形状モデルを作成する方法に係わり、特に詳細形状まで作成した形状モデルを局所的または全体的に簡略化する形状簡略化方法に関するものである。」

「 【0002】
【従来の技術】
設計過程においては、設計アプリケーションによりモデル形状が変化する。例えば解析モデル形状は、解析種類・目的、荷重条件、境界条件等によって変わり、これが解析を行う上でのノウハウになっている。このため、CADデータから解析モデルを作成するモジュールはユーザが容易に形状簡略化する機能を持つ必要があった。即ち、この発明は、計算機を用いて既存の3次元の形状モデルを簡略化して異なるモデルを作成する際の形状簡略化方法に関するものである。
詳細形状まで作成した形状モデルを局所的または全体的に簡略化する形状簡略化には、フィレット部分の削除、突起部分や穴部分の削除、板状部分の厚さ0の薄肉形状化などの機能が必要である。
従来、3次元CADデータのデータ構造として、境界表現データ構造が採用されることが多い。ところが境界表現データ構造は、形状簡略化の際、突起やフィレットを抽出するのが困難であった。」

「 【0007】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、形状特徴を持たない境界表現で表現された形状データを対象とし、容易な操作でフィレット部の削除、突起部や穴部の削除、板状部分の厚さ0の薄肉化ができ、形状処理後も形状の接続関係を維持できる形状簡略化方法を得ることを目的としている。」

「 【0015】
【実施例】
実施例1.
以下、この発明の一実施例を図1について説明する。図1はこの発明の一実施例による形状簡略化方法に係る形状簡略化装置を示すブロック図である。図において、11は境界表現で表現された形状データを内部データ構造に変換する入力部、12は入力された形状データから平行、接続状態の幾何学的特徴を抽出し、データ構造の位相データに付加する幾何学的特徴抽出部、13はユーザの意図した簡略化形状部分の一部の形状要素と形状簡略化する種類を入力する簡略化形状指示部、14は簡略化対象形状抽出部で、簡略化形状指示部13のユーザの指示と幾何学的特徴抽出部12で抽出された幾何学的特徴から簡略化の対象形状を特定する。15は簡略化形状処理指令データ作成部で、簡略化対象形状抽出部14で得られた簡略化対象形状について幾何学的特徴抽出部12で得られた幾何学的特徴に基づき簡略化するのに必要な削除または合わせる処理の形状処理を指定する情報を形状データに付ける。これは、簡略化の種類ごとに手順が定められている。また、16は局所的幾何形状操作部で、合わせる処理を指定された形状要素について、隣接する形状の幾何形状を変更せず、対象の形状要素とそれに接続する形状要素の幾何形状を変更する。さらに、8は簡略化形状処理指令データ作成部15で削除する指定を受けた形状要素の位相を削除する位相操作部、9はデータを格納するデータ格納部である。」

「 【0017】
まず、ST1では、図2(a)に示すよ に、境界表現で表現された形状モデルを入力部11から入力し、図4に示す内部データ構造の位相データ及び幾何データに変換してデータ格納部9に格納する。このデータ構造は位相データ(topology)と幾何データ(geometry)に分けられ、位相データはモデル全体を意味するModel、空間領域、面分、稜線、点を意味するVolume,Face,Edge,Vertexの基本位相要素と、境界位相要素Shell,LoopとLoopまわりの隣接関係を表現するEdgeuse,Vertexuseである。また、幾何データはFace,Edge,Vertexに対応するSurface,Curve,Pointである。幾何データはそれぞれ無限面、無限曲線を表わす幾何情報だけを持ち、境界に関する幾何情報を持たない。この内部データ構造は孤立稜線、孤立面の表現を行えるデータ構造であり、このデータ構造で孤立面(F3)を表現した場合、図5のようになる。」

「 【0019】
次に、ST2では幾何学的特徴抽出部12において、内部形状データから基本位相要素間の幾何学的特徴を抽出する。この処理は、すべての同じ種類の基本位相要素間の組み合わせについて、隣接する基本位相要素の組み合わせについては接続状態を調べ、それ以外の組み合わせについては平行か否かを調べる。接続状態はまず滑らかに接続しているかを調べ、滑らかでない場合は、凹、凸の判定を行う。
図6は平行の幾何学的特徴の条件を示す説明図であり、幾何形状の種類とそれに対する条件を示している。平行となる場合は、同じ種類の幾何形状で、図6に示す条件を満たすと同時に、基本位相要素の境界上の点について、面の法線ベクトル方向に立てた直線が他方の面分の領域内で交差するものを平行とする。
【0020】
次に、ST3では簡略化形状指示部13において、対象とする簡略化の種類と簡略化する部分形状の一つの形状要素または全体形状を、入力部11からユーザに指示させる。簡略化の種類はユーザの選択したコマンドで決まり、コマンド入力はキーボードからの記号による入力と、ポインティングデバイスによるメニューのピックで行われる。また、1つの形状要素の入力は次の2つの方法から選択できる。
1)表示画面の各形状要素上に識別記号を表示し、その記号をキーボ ードからキーインする。
2)図2(b)に示すように形状表示した画面上の1点をポインティ ングデバイスでピックし、画面座標系においてその入力点に最も 近い形状要素(面、線、点)を入力とする。
2)の場合は確認のため強調表示し、ユーザの意図と異なる場合は次に近い形状要素を強調表示して確認することを繰り返す。」

「 【0034】
実施例3.
この発明の実施例3における形状簡略化方法として、板状部分の厚さ0の薄肉化の場合について、処理の説明をする。
ST1?ST3に処理は実施例1と同様である。ST4で入力された簡略化の種類、簡略化形状部分の一つの形状要素または全体形状の情報に基づき、幾何学的特徴から簡略化形状部分を特定する。
板状部の一部の基本位相要素から板状部分を特定するには、まずこの基本位相要素が属する面分(Face)を探索する。この面分が複数ある場合、板状部分の面分を選択するため、各面分が平行の幾何学的特徴を持つか否かを調べ、持つ場合、平行な面分間の距離を求め、その距離が一番短いものを採る。この最初に得られた一番短い平行な面分間の間隔を基準板厚とし、以後この基準板厚より短い板厚を持つものを板状部分とする。これを例えば処理Dとする。
最初の板状部分が得られると隣接する板状の面分のペアを探索していく。得られた平行な面分のペアのそれぞの面分について、順次、処理Dを行う。即ち、その面分に隣接する面分が平行な幾何学的特徴を持つか否かを調べ、その平行な面分間の間隔が基準板厚より短いものだけを板状部分とする。この操作を繰り返して、一連の板状部分を特定する。
【0035】
次に、ST5では簡略化形状処理指令データ作成部15において、特定された部分形状について合わせる処理を示すtogeather関係要素を基本位相要素に付加する。板状部分の厚さ0の薄肉化の場合は、図7の左端に示すように、板状部分の特定時に求めた面分のペアについてtogetherの関係要素を設定する。この時、ペアになっている2つの面分の中立面を求め、この幾何情報(Surface)を作成しtogether関係要素にこのSurfaceへのポインタを持たせる。」

第3 対比
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「計算機上の形状モデルを作成する方法」が記載され(段落【0001】)、実施例3.において「板状部分を特定する」ことが記載され(段落【0034】)、この「板状部分を特定する」ことを方法の発明として認定する。

(ア)段落【0002】に従来の技術の記載として、「CADデータ」の記載があり、刊行物1全体から見て、刊行物1には、CADに関するものが記載されているものと認められ、段落【0015】に記載された形状簡略化装置は、「CADシステム」といえる。
したがって、「形状モデル」(段落【0017】)は、「CADシステムで表される形状モデル」といえる。
よって、「板状部分を特定する」方法は、『CADシステムで表される形状モデルにおける板状部分を特定する方法』といえる。

(イ)段落【0034】には、「ST1?ST3に処理は実施例1と同様である。」の記載されている。ここで、「ST1」は、「境界表現で表現された形状モデルを入力部11から入力し、内部データ構造の位相データ及び幾何データに変換してデータ格納部9に格納する」ものであり(段落【0017】)、「ST2」は、「幾何学的特徴抽出部12において、内部形状データから基本位相要素間の幾何学的特徴を抽出する。この処理は、すべての同じ種類の基本位相要素間の組み合わせについて、隣接する基本位相要素の組み合わせについては接続状態を調べ、それ以外の組み合わせについては平行か否かを調べる」ものであり(段落【0019】)、「ST3」は、「簡略化形状指示部13において、対象とする簡略化の種類と簡略化する部分形状の一つの形状要素または全体形状を、入力部11からユーザに指示させる」ものであり(段落【0020】)、形状要素として「面」を入力することも開示されている(段落【0020】)。
「ST1」は、CADシステムに形状モデルをロードしているといえるから、『CADシステムに形状モデルをロードするステップ』といえる。

(ウ)上記(イ)のとおり、「ST3」は、面を入力部11からユーザが指示するものであり、この情報はCADシステムが受信するものと認められ、刊行物1に記載された方法は、『前記CADシステムによって前記形状モデルの面の選択を受信するステップ』を含むといえる。

(エ)段落【0034】には、「板状部の一部の基本位相要素から板状部分を特定するには、まずこの基本位相要素が属する面分(Face)を探索する。この面分が複数ある場合、板状部分の面分を選択するため、各面分が平行の幾何学的特徴を持つか否かを調べ、持つ場合、平行な面分間の距離を求め、その距離が一番短いものを採る。」と記載され、「その距離が一番短いものを採る」のであるから、平行な面(面分)は複数あるものと認められ、それらは候補といえ、その候補はCADシステムによって発見されるといえる。そして、「その距離が一番短いものを採る」のであるから、候補が記憶されることは自明である。
したがって、刊行物1に記載された方法は、『前記CADシステムによって候補面を発見し、該候補面を記憶するステップ』を含むといえる。
また、面が平行となる条件は、「同じ種類の幾何形状で、図6に示す条件を満たすと同時に、基本位相要素の境界上の点について、面の法線ベクトル方向に立てた直線が他方の面分の領域内で交差するものを平行とする。」(段落【0019】)であり、図6に示す条件のうち、平面の場合は、図6によれば、「面の法線ベクトルが平行」であるから、面が平行となる条件は、『同じ種類の幾何形状(平面)で、面の法線ベクトルが平行であり、基本位相要素の境界上の点について、面の法線ベクトル方向に立てた直線が他方の面分の領域内で交差するもの』である。

(オ)上記(エ)のとおり、「その距離が一番短いものを採る」のであるから、候補面から対応面を指定するステップ、すなわち、『候補面から前記面の対応面を指定するステップ』を、刊行物1に記載された方法が含むといえる。

(カ)刊行物1に記載された方法は、「板状部分の特定時に求めた面分のペアについてtogetherの関係要素を設定」(段落【0035】)しており、ここで、面分は面といえるから、『板状部分の特定時に求めた面のペアについてtogetherの関係要素を設定するステップ』を含むといえる。

以上より、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「CADシステムで表される形状モデルにおける板状部分を特定する方法において、
CADシステムに形状モデルをロードするステップと、
前記CADシステムによって前記形状モデルの面の選択を受信するステップと、
前記CADシステムによって候補面を発見し、該候補面を記憶するステップと、
ただし、前記候補面は、同じ種類の幾何形状(平面)で、面の法線ベクトルが平行であり、基本位相要素の境界上の点について、面の法線ベクトル方向に立てた直線が他方の面分の領域内で交差するもの、
前記候補面から前記面の対応面を指定するステップと、
板状部分の特定時に求めた面のペアについてtogetherの関係要素を設定するステップ
を含むことを特徴とする、方法。」

2 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)構成要件A、構成要件G
刊行物1発明における「CADシステムで表される形状モデルにおける板状部分を特定する方法」と構成要件Aとを対比する。
刊行物1発明の「形状モデル」は、所定の物体のモデルであるから、「オブジェクトモデル」といえる。
刊行物1発明の「板状部分」は、平行な面で挟まれた部分であり、「壁」ともいえる。また、「板状部分」は特徴的な部分であるから「壁フィーチャ」ともいえる。
「特定する」ことは、「識別する」ことともいえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「CADシステムで表されるオブジェクトモデルにおける壁フィーチャを識別するための方法」として一致する。
また、「含むことを特徴とする、方法」として一致する。

(2)構成要件B
刊行物1発明における「CADシステムに形状モデルをロードするステップ」と構成要件Bとを対比する。
「形状モデル」が「オブジェクトモデル」といえることは上記(1)のとおりである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは「CADシステムにオブジェクトモデルをロードするステップ」を含むことで一致する。

(3)構成要件C
刊行物1発明における「前記CADシステムによって前記形状モデルの面の選択を受信するステップ」と構成要件Cとを対比する。
「形状モデル」が「オブジェクトモデル」といえることは上記(1)のとおりであり、「面」は、「第1の面」といえる。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは「前記CADシステムによって前記オブジェクトモデルの第1の面の選択を受信するステップ」を含むことで一致する。

(4)構成要件D-1
刊行物1発明における「前記CADシステムによって候補面を発見し、該候補面を記憶するステップ」と構成要件D-1とを対比する。
刊行物1発明の「候補面」は、「板状部分」のものであり、「板状部分」は「壁」に相当する(上記(1))から、「候補面」は本願発明の「候補壁面」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記CADシステムによって候補壁面を発見し、該候補壁面を記憶するステップ」を含む点で一致する。
しかしながら、「該候補壁面を記憶する」ことが、本願発明のおいては「候補リストに」記憶するのに対し、刊行物1発明においてはそうではない点で相違する。

(5)構成要件D-2
構成要件D-2は、「ただし、前記候補壁面は前記第1の面と同一のオブジェクトモデルボディに由来する、又は、前記候補壁面は前記第1の面と同一表面タイプである、又は、前記候補壁面は前記第1の面と反対の複数の法線ベクトルを有する、又は、前記候補壁面は前記第1の面からオフセットされている、」であり、構成要件D-1の「候補壁面」の説明であって、複数の条件を「又は」で接続しており、どれか1つの条件を満たせば、「候補壁面」になるものと理解できる。
ここで、刊行物1発明における「ただし、前記候補面は、同じ種類の幾何形状(平面)で、面の法線ベクトルが平行であり、基本位相要素の境界上の点について、面の法線ベクトル方向に立てた直線が他方の面分の領域内で交差するもの」と構成要件D-2とを対比する。
刊行物1発明の「前記候補面」は、上記(4)のとおり、本願発明の「前記候補壁面」に相当する。
刊行物1発明においては、前記候補壁面は「面の法線ベクトルが平行であり」、本願発明においては「前記候補壁面は前記第1の面と反対の複数の法線ベクトルを有する」ものであり、法線ベクトルが平行である点で共通する、すなわち、本願発明と刊行物1発明とは「前記候補壁面は前記第1の面と平行の法線ベクトルを有する」点で共通する。
しかしながら、「平行な法線ベクトル」が、本願発明においては「反対」であり、「複数」であるのに対し、刊行物1発明においてはそうでない点で相違する。
そして、上記のとおり、構成要件D-2は、複数の条件が「又は」で接続されており、そのうちの1つが上記のような共通点と相違点を持つことから、本願発明と刊行物1発明とは、
「ただし、前記候補壁面は前記第1の面と同一のオブジェクトモデルボディに由来する、又は、前記候補壁面は前記第1の面と同一表面タイプである、又は、前記候補壁面は前記第1の面と平行な法線ベクトルを有する、又は、前記候補壁面は前記第1の面からオフセットされている、」
で一致し、
「平行な法線ベクトル」が、本願発明においては「反対」であり、「複数」であるのに対し、刊行物1発明においてはそうでない点で相違する。

(6)構成要件E
刊行物1発明における「前記候補面から前記面の対応面を指定するステップ」と構成要件Eとを対比する。
「面」が「第1の面」といえることは上記(3)のとおりであり、刊行物1発明における「前記候補面」は、記憶されているものであり、「候補リストに」記憶されていないことは、上記(4)のとおりである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、
「前記候補面における少なくとも1つの候補壁面を、前記第1の面の対応面として指定するステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、「前記候補面」が、上記(4)の相違に伴い、本願発明においては、「候補リストにおける」ものであるのに対し、刊行物1発明においてはそうではない点で相違する。

(7)構成要件F
刊行物1発明における「板状部分の特定時に求めた面のペアについてtogetherの関係要素を設定するステップ」と構成要件Fとを対比する。
特定された「板状部分」は、「オブジェクトの壁」に相当し、「面のペアについてtogetherの関係要素を設定する」ことは、「オブジェクトの壁として前記CADシステムに記憶するといえる。
また、「面のペア」は「前記第1の面および前記対応面」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記第1の面および前記対応面を前記オブジェクトモデルの壁として前記CADシステムに記憶するステップ」を含む点で一致する。

3 一致点、相違点
以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
CADシステムで表されるオブジェクトモデルにおける壁フィーチャを識別するための方法において、
CADシステムにオブジェクトモデルをロードするステップと、
前記CADシステムによって前記オブジェクトモデルの第1の面の選択を受信するステップと、
前記CADシステムによって候補壁面を発見し、該候補壁面を記憶するステップと、
ただし、前記候補壁面は前記第1の面と同一のオブジェクトモデルボディに由来する、又は、前記候補壁面は前記第1の面と同一表面タイプである、又は、前記候補壁面は前記第1の面と平行な法線ベクトルを有する、又は、前記候補壁面は前記第1の面からオフセットされている、
前記候補壁面における少なくとも1つの候補壁面を、前記第1の面の対応面として指定するステップと、
前記第1の面および前記対応面を前記オブジェクトモデルの壁として前記CADシステムに記憶するステップと
を含むことを特徴とする、方法。

(相違点1)
「前記CADシステムによって候補壁面を発見し、該候補壁面を記憶するステップ」における「該候補壁面を記憶する」ことが、本願発明においては「候補リストに」記憶するのに対し、刊行物1発明においてはそうではなく、
それに伴い、「前記候補壁面における少なくとも1つの候補壁面を、前記第1の面の対応面として指定するステップ」における「前記候補壁面」が、本願発明においては「候補リストにおける」ものであるのに対し、刊行物1発明においてはそうではない点

(相違点2)
「平行な法線ベクトル」が、本願発明においては「反対」であり、「複数」であるのに対し、刊行物1発明においてはそうでない点

第4 判断
1 相違点1について
関連する複数のデータを記憶する際に、リストとして記憶することはデータの記憶の仕方として普通のことであるから、刊行物1発明において、候補壁面を記憶する際に、候補壁面を候補リストとして記憶するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2 相違点2について
法線ベクトルは、面に垂直なベクトルであり、面に対して所定のベクトルが法線ベクトルであれば、所定のベクトルの向きが反対のベクトルも法線ベクトルであって、法線ベクトルの向きは法線ベクトルの求め方により決まるものである。
また、条件を満たすかを判断する際に、1つを満たすことより、複数を満たすことにより判断すれば、より正確な判断ができることは技術常識と認められる。
刊行物1発明は、平行な法線ベクトルを有するものを候補の面としており、上記のこと勘案すれば、刊行物1発明において、反対の複数の法線ベクトルを有するものを候補の面とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-09 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2011-554225(P2011-554225)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 功  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 藤井 浩
小池 正彦
発明の名称 オブジェクトモデルにおける壁面を識別するためのシステム、方法、コンピュータプログラム  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  

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