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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1302021
審判番号 不服2014-7899  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-28 
確定日 2015-06-08 
事件の表示 特願2009-252000「LED素子載置部材、LED素子載置基板およびその製造方法、ならびにLED素子パッケージおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月12日出願公開、特開2011- 96970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成21年11月 2日 特許出願
平成25年 6月27日 拒絶理由通知(同年7月2日発送)
平成25年 8月28日 意見書・手続補正書
平成26年 1月30日 拒絶査定(同年2月4日送達)
平成26年 4月28日 本件審判請求・手続補正書

第2 平成26年4月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年4月28日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概略
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「コアレス型LED素子パッケージを構成するために設けられ、LED素子を載置するためのLED素子載置部材において、
中央に位置するLED素子載置領域と、
LED素子載置領域の周縁に位置する周縁領域とを備え、
LED素子載置領域および周縁領域は、周縁領域からLED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部を形成し、
LED素子載置領域および周縁領域の表面は、LED素子からの光を反射するための反射面として機能し、
LED素子載置領域および周縁領域は、めっきにより形成され、
LED素子載置領域および周縁領域は、本体めっき層と、この本体めっき層上に形成された反射用めっき層とを有し、
本体めっき層の側面は反射用めっき層によって覆われることなく、本体めっき層が露出していることを特徴とするLED素子載置部材。」

とあったものを、

「コアレス型LED素子パッケージを構成するために設けられ、LED素子を載置するためのLED素子載置部材において、
中央に位置するLED素子載置領域と、
LED素子載置領域の周縁に位置するとともにLED素子載置部材の側面から下方に向かって傾斜する傾斜面を含む周縁領域とを備え、
LED素子載置領域および周縁領域は、周縁領域のうちLED素子載置部材の側面の位置からLED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部を形成し、
LED素子載置領域および周縁領域の表面は、LED素子からの光を反射するための反射面として機能し、
LED素子載置領域および周縁領域は、めっきにより形成され、
LED素子載置領域および周縁領域は、本体めっき層と、この本体めっき層上に形成された反射用めっき層とを有し、
本体めっき層の側面は反射用めっき層によって覆われることなく、本体めっき層が露出していることを特徴とするLED素子載置部材。」(当審注:下線は、請求人が補正箇所に付加したものである。)

に補正する補正事項を含むものである。
上記請求項1についてする補正は、
ア 「LED素子載置領域の周縁に位置する」「周縁領域」について、「LED素子載置部材の側面から下方に向かって傾斜する傾斜面を含む」ことを限定する補正事項、
イ 「周縁領域」から「LED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部」の「周縁領域」の位置について、「LED素子載置部材の側面の位置」に限定する補正事項、
からなる。
上記ア、イの補正事項は、何れも特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定する要件を満たすか否か)について以下に検討する。

2 引用する刊行物と引用発明
(1)刊行物の記載事項
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-173605号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある(当審注:下線は当審が付加した。)。

ア 「【請求項10】
電子デバイスと、
前記電子デバイスに電気的に接続される電気接続部と、
前記電子デバイスを前記電気接続部へ固定する固定剤と
を具備し、
前記固定剤が前記電子デバイスのパッケージを提供するものであり、
前記電気接続部が前記固定剤中に埋め込まれ、前記固定剤の一面において露出していることを特徴とする、パッケージングされた電子デバイス。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの薄型化を実現可能な、電子デバイスのパッケージ方法およびそのパッケージ方法で製作された電子デバイスパッケージに関する。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を説明する為の実施例を図に示した。
【0011】
図1は電子デバイスをパッケージングする為の方法100の一例を示すものである。その方法100によれば、電子デバイスが基板上の電気接続部へと電気的に接続される(102)。次に電子デバイスを電気接続部へと固定する為に固定剤が設けられる(104)。その後、電気接続部をパッケージ接続部として露出する為に、基板の少なくとも一部分が除去される(106)。
【0012】
方法100の一応用例を図2A?図2Dに描いた。一例として、基板200上には3つの電気接続部202、204、206(トレース又はパッド等)が設けられている(図2A参照)。電子デバイス208はそれらの電気接続部のうちの1つである接続部204の上に(接着剤218等により)搭載されており、電子デバイス208と他の電気接続部202、206を結合する為にワイヤボンド210、212が使われている(図2B参照)。次に電子デバイス208を電気接続部202?206へと固定する為に、固定剤214が設けられる(図2C参照)。図示したように、固定剤214はワイヤボンド210、212も同様に固定する、また更には、電子デバイス208、ワイヤボンド210、212及び電子接続部202?206の一部又は全体を封止するものとすることが出来る。固定剤214の形成後、基板200が除去されることにより、電子接続部202?206が薄型パッケージ電子デバイス216上のパッケージ接続部として露出されるものである(図2D参照)。
【0013】
基板は有機物及び無機物を含むどのような形式のものであっても良い。例えば、基板200は半導体基板(シリコン又はガリウム砒素等)、ラミネート基板(ガラスエポキシ・ラミネート又はフェノール樹脂ラミネート等)、プラスチック複合材基板(Amodel(登録商標)ポリフタルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、又はアクリルニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)等)、ポリマー基板又は金属基板(銅又はスチール等)とすることが出来る。パッケージの一部分を構成し、また、パッケージの合計厚を最小にするために薄いことが望まれる基板と違って、基板200の厚さは、基板が取り扱われる、又は操作されるプロセス中に十分な強度を提供し得るものであれば、いずれの厚さであっても良い。即ち、基板200の厚さは、取り扱い時に損傷を受けやすい厚さにまで薄くする必要が無いのである。
【0014】
基板200の組成に応じ、基板を固定剤214、電子デバイス208及び電気接続部202?206から化学的及び/又は機械的手段を含む様々な手段により除去することが出来る。例えば、基板200はウエット又はドライ化学エッチング処理により除去することが出来る。ウエット化学エッチング処理には、基板200の組成に応じて酸性、アルカリ性又は中性のエッチング溶剤でさえも利用することが出来る。或いは、基板200はプラズマエッチング処理により除去することも可能である。基板200を除去する為の機械的手段としては、ラッピング(基板200を荒い面又は硬い粒子を用いて摩滅により除去する等)が含まれる。更に他の手段として、加熱により、又はレーザー等からの放射により基板200を除去することも出来る。
【0015】
ある場合においては、図2Dに示したように基板200を全て除去することが出来る。他の場合においては、電気接続部202?206を基板200中に部分的に埋め込み、これらの接続部202?206が露出された後も基板200の一部を固定剤214に接着したまま残すことも出来る(図3参照)。更に他の場合においては、エッチング等の基板除去手段とした結果、基板200の除去に加えて固定剤214の一部も除去される(図4参照)。しかしながら、固定剤214は基板200の除去に用いられる手段からの影響を受けない(又は少なくとも耐性を持つ)ものであることが望ましい。
【0016】
基板200上への電気接続部202?206の形成は、無電解めっき、電解めっき、クラッディング処理、めっき及びエッチング処理、スパッタリング、又は蒸着を含むいずれの方法を使用しても良い。一部の場合においては、接続部202?206は、例えば銅、ニッケル、金、銀、チタン、プラチナ、ゲルマニウム、スズ及び/又はタングステン層等を1つ以上含む金属層の積層物とすることも出来る。例えば、銅、ニッケル及び金の層、又は銅、ニッケル及び銀の層で形成された接続部が有用である。或いは、2種類以上の金属を混合し、単一の接続層として形成することも可能である。」

エ 「【0017】
電気接続部202?206の厚さは均一にしても変化させても良い。多くのアプリケーションにおいては、厚さを1?100μmとした接続部が有用である。図5?図7は、不均一な厚さの電気接続部を含む様々な薄型パッケージ電子デバイス500、600、700を描いたものである。…

【0019】
図7においては、電子デバイス208は発光ダイオード(LED)であり、電気接続部702、704、706のうちの1つには、LEDが放射した光を反射させる為のリフレクタカップを構成する陥没部708が作られている。」

オ 「【0021】
ここで図2A?図2Dに戻るが、電気接続部202?206は、交互に電気接続機能又はヒートシンク機能を提供するものであっても良い。電子デバイス208を接続部のうちの1つ204へと搭載する場合、デバイス208をはんだ、共晶又は導電性接着剤218を用いて実装することが出来る。或いは、電子デバイス208ははんだ、共晶、導電性接着剤又は非導電性接着剤を用いて基板200へと直接的に実装することも出来る。
【0022】
電子デバイス208は、1つ以上のいずれの半導体デバイスの形態をしていても良く、その中にはLED、レーザーダイオード、フォトダイオード、マイクロプロセッサ、抵抗器、キャパシタ、又はインダクタが含まれる。デバイス208がLED、レーザーダイオード又はフォトダイオードであった場合、固定剤214は好適な光学特性(透光性又は透明性)を持っていなければならない。いずれの場合においても、固定剤214は例えばその温度特性、絶縁性及び/又は構造特性(例えば強度又は剛性)等に基づいて選択することが出来る。
【0023】
一例として、図2Dに示した電子デバイス208はLEDダイである。図8は、フリップチップ800を一対の電気接続部802、804へと搭載したものを示している。フリップチップはその電気接続部802、804への接続を、ボンディングワイヤを要さずに実施出来ることから有用である。はんだバンプ、めっきバンプ、金スタンプ・バンプ(金バンプ)、導電性接着剤バンプ、又は他のバンプ806、808を単にリフローするだけでフリップチップ800を接続部802、804へと結合することが出来るのである。デバイス208とは対照的に、デバイス800は固定剤214の厚さ削減を実現することが出来る(ワイヤボンド210、212の封止が不要となる為等)。」

カ 「【0025】
留意すべきは、上述した薄型パッケージ電子デバイスがパッケージ基板1202、基板接続部1208、1210、又はデバイスからパッケージへの接続部間接続(バイア)1218、1220(図12のパッケージ1200に示したようなもの)を含んでいないという点である。代わりに電子デバイス208は、介在の役を担う基板1202が無い状態でパッケージ接続部202?206へと接続されているのである。
【0026】
上述したパッケージ基板1202を含まない電子デバイスとした結果、これらを他のパッケージングされた電子デバイスよりも薄く作ることが出来る。例えば、電子デバイス208がLEDダイである場合、0.3mm未満のパッケージ厚に到達することが出来る。更なる利点としては熱経路の短縮が挙げることが出来るが、これは電子デバイス208からの、より効率的な伝熱を可能とするものである。」

キ 図7は、以下のとおりである。


(2)引用発明
以下、上記「(1)エ」の記載と上記「(1)キ」の図7に係る電子デバイスに基づいて引用発明を認定する。その際、上記「(1)エ」【0017】の記載によれば、図7に係る電子デバイスは、電気接続部の厚さを不均一にした実施例であるから、電気接続部の厚さの点を除き、図7に係る電子デバイスと共通する構成については、請求項等の他の記載を参酌して認定する。

ア 上記「(1)ア」によれば、
「電子デバイスと、
前記電子デバイスに電気的に接続される電気接続部と、
前記電子デバイスを前記電気接続部へ固定する固定剤とを具備し、
前記固定剤が前記電子デバイスのパッケージを提供するものであり、
前記電気接続部が前記固定剤中に埋め込まれ、前記固定剤の一面において露出している、
パッケージングされた電子デバイス。」
が記載されている。

(イ)上記「(1)エ」の【0019】によれば、「電子デバイスは発光ダイオード(LED)」であることが記載されている。また、「電気接続部702、704、706のうちの1つには、LEDが放射した光を反射させる為のリフレクタカップを構成する陥没部708が作られている。」

(ウ)上記「(1)エ」の記載を踏まえて図7を見ると、
ア 電気接続部704の上面の中央部であって、且つ電気接続部704の側面から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられていること、
イ 前記陥没部は、下方に向かって傾斜する傾斜面と底面を有すること、
ウ 前記陥没部の底面の中央部にはんだ、共晶又は導電性接着剤218を用いて発光ダイオード208が実装されていること、
が看て取れる。

(エ)上記「(1)カ」によれば、電子デバイスは、パッケージ基板を含まないデバイスである。

(オ)以上のことから、刊行物には、
「発光ダイオードと、
前記発光ダイオードに電気的に接続される電気接続部702、704、706と、
前記発光ダイオードを前記電気接続部702、704、706へ固定する固定剤とを具備し、
前記固定剤が前記発光ダイオードのパッケージを提供するものであり、
前記電気接続部702、704、706が前記固定剤中に埋め込まれ、前記固定剤の一面において露出している、パッケージングされた発光ダイオードにおいて、
前記電気接続部704の上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ、
前記陥没部は、下方に向かって傾斜する傾斜面と底面を有し、
前記陥没部の底面の中央部にはんだ、共晶又は導電性接着剤を用いて発光ダイオードが実装され、
前記陥没部は、発光ダイオードが放射した光を反射させる為のリフレクタカップを構成する、
パッケージ基板を含まないパッケージングされた発光ダイオード。」

が記載されている。ここで、電気接続部704に着目すると、

「発光ダイオード、固定材、電気接続部702、706とともに、パッケージ基板を含まないパッケージングされた発光ダイオードを構成する電気接続部704であって、
前記電気接続部702、704、706は、前記発光ダイオードに電気的に接続され、
前記固定材は、前記発光ダイオードを前記電気接続部702、704、706へ固定し、
前記固定剤が前記発光ダイオードのパッケージを提供するものであり、
前記電気接続部702、704、706が前記固定剤中に埋め込まれ、前記固定剤の一面において露出し、
電気接続部704は、その上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ、
前記陥没部は、下方に向かって傾斜する傾斜面と底面を有し、
前記陥没部の底面の中央部にはんだ、共晶又は導電性接着剤を用いて発光ダイオードが実装され、
前記陥没部は、発光ダイオードが放射した光を反射させる為のリフレクタカップを構成する、
電気接続部704。」(以下「引用発明」という。)
が記載されている。

3 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)本願補正発明の「コアレス型LED素子パッケージを構成するために設けられ、LED素子を載置するためのLED素子載置部材」と、引用発明の「発光ダイオード、固定材、電気接続部702、706とともに、パッケージ基板を含まないパッケージングされた発光ダイオードを構成する電気接続部704」であって、「電気接続部704は、その上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ、…前記陥没部の底面の中央部に…発光ダイオードが実装され」ることを対比する。
ア はじめに、本願補正発明における「コアレス型LED素子パッケージ」の技術的意味について、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌する。本願の発明の詳細な説明には、「【0008】…。コアレス型半導体パッケージは、半導体パッケージの薄型化および放熱特性の向上という2点の課題を解決するために開発された半導体パッケージの形態である。リードフレームやインタポーザと呼ばれる内部配線基板などのコア部材は、単体で搬送や加工可能な形状と、機械的強度とを維持するため一定の厚さを有している。完成後のコアレス型半導体パッケージには、リードフレームや内部配線基板(インタポーザと呼ばれる)等のコア部材が含まれていないため(コアレス)、半導体パッケージの薄型化が可能となっている。」との記載がある。該記載によれば、「コアレス型LED素子パッケージ」は、リードフレームや内部配線基板等のコア部材が含まれていないLED素子パッケージを意味するものと解される。
イ 引用発明の「発光ダイオード」は、本願補正発明の「LED素子」に相当する。また、引用発明の「パッケージ基板」は、上記アで検討した「内部配線基板」に相当し、コア部材と言えるから、引用発明の「パッケージ基板を含まないパッケージングされた発光ダイオード」は、本願補正発明の「コアレス型LED素子パッケージ」に相当する。
ウ 引用発明の「電気接続部704」は、「その上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ、…前記陥没部の底面の中央部に…発光ダイオードが実装され」ているから、発光ダイオードを載置する部材である。そうすると、引用発明の「電気接続部704」であって、「その上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ、…前記陥没部の底面の中央部に…発光ダイオードが実装され」ることは、本願補正発明の「LED素子を載置するためのLED素子載置部材」に相当する。
エ してみると、両者は相当関係にある。

(2)本願補正発明の「LED素子載置部材」の「中央に位置するLED素子載置領域」と、引用発明の「発光ダイオード」が実装される「電気接続部704」の「上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ、…前記陥没部の底面」を対比する。
引用発明において「発光ダイオード」が実装される「陥没部の底面」は、本願補正発明の「LED素子載置領域」に相当する。また、引用発明の「陥没部の底面」は、「電気接続部704」の「上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に」設けられた陥没部の底面であるから、「電気接続部704」の中央部にある。
してみると、両者は相当関係にある。

(3)本願補正発明の「LED素子載置領域の周縁に位置するとともにLED素子載置部材の側面から下方に向かって傾斜する傾斜面を含む周縁領域」と、引用発明の「電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に」設けられた「陥没部」の「下方に向かって傾斜する傾斜面」を対比する。
引用発明は、「電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に」「陥没部」が設けられ、該陥没部は、「下方に向かって傾斜する傾斜面」と「底面」を有するから、引用発明は、「電気接続部704の端部」から、「水平部分」、「下方に向かって傾斜する傾斜面」、「底面」を有する。そうすると、引用発明の「下方に向かって傾斜する傾斜面」は、「底面」の周縁に位置するといえる。そして、引用発明の「底面」には発光ダイオードが実装されることを踏まえると、引用発明の「下方に向かって傾斜する傾斜面」は、「LED素子載置領域の周縁に位置する…下方に向かって傾斜する傾斜面を含む周縁領域」に相当する。
してみると、両者は「LED素子載置領域の周縁に位置するとともに下方に向かって傾斜する傾斜面を含む周縁領域」の点で一致する。

(4)本願補正発明の「LED素子載置領域および周縁領域は、周縁領域のうちLED素子載置部材の側面の位置からLED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部を形成」することと、引用発明の「電気接続部704は、その上面の中央部であって、且つ前記電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置に陥没部が設けられ」ていることであって、前記「陥没部」は、「下方に向かって傾斜する傾斜面と底面を有し、前記陥没部の底面の中央部に…発光ダイオードが実装され」ていることを対比する。
上記(2)で検討したとおり、引用発明において「発光ダイオード」が実装される「陥没部の底面」は、本願補正発明の「LED素子載置領域」に相当する。また、上記(3)で検討したとおり、引用発明の「下方に向かって傾斜する傾斜面」は、「…下方に向かって傾斜する傾斜面を含む周縁領域」に相当する。そして、引用発明の「陥没部」が本願補正発明の「凹部」に相当する。
してみると、両者は「LED素子載置領域および周縁領域は、周縁領域のうちからLED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部を形成」する点で一致する。

(5)本願補正発明の「LED素子載置領域および周縁領域の表面は、LED素子からの光を反射するための反射面として機能」することと、引用発明の「前記陥没部は、発光ダイオードが放射した光を反射させる為のリフレクタカップを構成する」ことを対比する。
引用発明の「発光ダイオードが放射した光を反射させる為のリフレクタカップ」は、その表面が、発光ダイオードが放射した光を反射させるための反射面として機能することは、明らかである。そして、引用発明の「陥没部」は、「下方に向かって傾斜する傾斜面と底面を有」するところ、上記(3)で検討したとおり「下方に向かって傾斜する傾斜面」は本願補正発明の「周縁領域」に相当し、上記(2)で検討したとおり「底面」は、「LED素子載置領域」に相当する。
してみると、両者は相当関係にある。


(6)以上のことから、本願補正発明と引用発明は、
「コアレス型LED素子パッケージを構成するために設けられ、LED素子を載置するためのLED素子載置部材において、
中央に位置するLED素子載置領域と、
LED素子載置領域の周縁に位置するとともに下方に向かって傾斜する傾斜面を含む周縁領域とを備え、
LED素子載置領域および周縁領域は、LED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部を形成し、
LED素子載置領域および周縁領域の表面は、LED素子からの光を反射するための反射面として機能する
LED素子載置部材。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
LED素子載置領域の周縁に位置し、傾斜面が下方に向かって傾斜する位置が、本願補正発明では、LED素子載置部材の側面であるのに対し、引用発明では、電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置である点。

相違点2:
LED素子載置領域および周縁領域が形成する凹部であって、LED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む位置が、本願補正発明では、「周縁領域のうちLED素子載置部材の側面の位置」であるのに対し、引用発明では、「電気接続部704の端部から水平部分を介した内方の位置」である点。

相違点3:
本願補正発明は、
「LED素子載置領域および周縁領域は、めっきにより形成され、
LED素子載置領域および周縁領域は、本体めっき層と、この本体めっき層上に形成された反射用めっき層とを有し、
本体めっき層の側面は反射用めっき層によって覆われることなく、本体めっき層が露出している」
のに対し、引用発明では、そのように特定されるものか否か明らかでない点。

4 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1、2について
相違点1における「下方へ落ち込む凹部」の側面と、相違点2における「下方に向かって傾斜する傾斜面」は、実質的に同じ面であり、相違点1と相違点2は実質的に同じである。よって、相違点1と相違点2をまとめて検討する。
本願補正発明の「LED素子載置部材」の凹部と引用発明の「電気接続部704」の陥没部は、何れもLED素子を載置する機能とLED素子からの光を反射する機能を有するところ、LEDを載置する凹部を載置部材の側面の位置から設けることは、周知の技術事項(例えば、LEDを載置する凹部を載置部材の側面の位置から設けたものは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-294621号公報の図5(b)参照。)であり、引用発明において上記周知の技術事項を採用し、電気接続部704の端部から水平部分を介することなく陥没部を設け、上記相違点1、2に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(2)相違点3について
上記「2(1)ウ」には、図1?図4に係る実施例として、電気接続部202?206の形成をメッキの方法で形成すること、また、銅、ニッケル、金、銀、チタン、プラチナ、ゲルマニウム、スズ及び/又はタングステン層等を1つ以上含む金属層の積層物とすることが開示されている(上記「2(1)ウ」【0016】参照。)ところ、数百μm程度の厚さの層をめっき法により形成できることが技術常識であることを踏まえると、引用発明の電気接続部704をめっきの方法で形成することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。そしてその際、反射率を向上させる目的で反射層を形成することは周知の技術手段(例えば、上記特開2007-294621号公報(【0025】参照。)、あるいは特開2007-208041号公報(【0090】参照。))であるから、リフレクタカップとして機能する電気接続部704において、発光ダイオードが放射した光を反射する領域となる電気接続部704の陥没部の傾斜面と底面の表面に反射用めっき層を形成し、発光ダイオードが放射した光を反射する領域とはならない電気接続部704の側面の表面に反射用メッキ層を形成しないように為し、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(3)本願補正発明の効果について
本願補正発明は、引用発明、刊行物の記載事項と上記周知の技術手段に基づいて当業者が容易に予測し得る程度のものであり、格別のものとは認められない。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「4.(3)」において、「図7に記載された電気接続部704に関し、陥没部708をどのようにして形成するかについての具体的な記載は存在しない。このような電気接続部704を作製する場合、電解めっき法により電気接続部704の全体を作製することと同時に、電気接続部704の側面よりも内方の位置から下方へ凹む陥没部708を形成することは難しいと考えられる(本願の図6(a)-(c)参照)。」と主張するので、以下、検討する。
一般にメッキ法により製品を製造する場合、素地(基板等)に所定の厚さの金属を直接メッキしてそのまま製品とする方法(以下「前者の方法」という。)と、母型に所定の厚さの金属をメッキし、母型から剥離して製品とする方法(以下「後者の方法」という。)があることは、当業者には技術常識である。刊行物の図7に記載された電気接続部704を前者の方法により形成することは、請求人が主張するように容易でないとしても、後者の方法により形成することは、当業者が容易に理解しうるものである。
そうすると、刊行物の図7に記載された電気接続部704は、メッキ法により製造できない旨の請求人の主張は採用できない。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、刊行物の記載事項と上記周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年8月28日付け手続補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「コアレス型LED素子パッケージを構成するために設けられ、LED素子を載置するためのLED素子載置部材において、
中央に位置するLED素子載置領域と、
LED素子載置領域の周縁に位置する周縁領域とを備え、
LED素子載置領域および周縁領域は、周縁領域からLED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部を形成し、
LED素子載置領域および周縁領域の表面は、LED素子からの光を反射するための反射面として機能し、
LED素子載置領域および周縁領域は、めっきにより形成され、
LED素子載置領域および周縁領域は、本体めっき層と、この本体めっき層上に形成された反射用めっき層とを有し、
本体めっき層の側面は反射用めっき層によって覆われることなく、本体めっき層が露出していることを特徴とするLED素子載置部材。」

2 引用する刊行物と引用発明
引用する刊行物と引用発明は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「LED素子載置領域の周縁に位置する」「周縁領域」について、「LED素子載置部材の側面から下方に向かって傾斜する傾斜面を含む」との構成を省き、また、「周縁領域」から「LED素子載置領域に向かって下方へ落ち込む凹部」の「周縁領域」の位置について、「LED素子載置部材の側面の位置」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4」に記載したとおり、引用発明、刊行物の記載事項と上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、刊行物の記載事項と上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明、刊行物の記載事項と上記周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-23 
結審通知日 2015-03-27 
審決日 2015-04-23 
出願番号 特願2009-252000(P2009-252000)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 星野 浩一
山村 浩
発明の名称 LED素子載置部材、LED素子載置基板およびその製造方法、ならびにLED素子パッケージおよびその製造方法  
代理人 村田 卓久  
代理人 永井 浩之  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 勝沼 宏仁  

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