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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1302022
審判番号 不服2014-9668  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-26 
確定日 2015-06-08 
事件の表示 特願2010-190840「携帯端末、ロック解除プログラムおよびロック解除方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 8日出願公開、特開2012- 49872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年8月27日の出願であって,平成25年11月25日付けの拒絶理由通知に対し,平成26年1月31日に手続補正がされ,同年2月21日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年5月26日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年5月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって,特許請求の範囲の請求項1については,本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項1】
タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部、および
前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合、前記ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末。」
・補正後
「【請求項1】
タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部、および
前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末。」

2 補正事項の整理
本件補正による,補正前の特許請求の範囲の請求項1についての補正を整理すると,本件補正による請求項1についての補正事項は,補正前の請求項1の「前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合、前記ロック状態を解除する解除部」を,補正後の請求項1の「前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する解除部」と補正するものである。(当審注.下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)

3 補正の適否について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0077】の記載から,上記補正事項は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,上記補正事項は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合、前記ロック状態を解除する解除部」の内容を,上記補正事項の上記限定に伴って限定的に減縮するから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

4 独立特許要件についての検討
(1)検討の前提
上記3で検討したとおり,本件補正による補正前の請求項1についての上記補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,本件補正による補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,更に検討する。

(2)本願補正発明
ア 本件補正後の請求項1の記載は,次のとおりである。(再掲)
「【請求項1】
タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部、および
前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末。」

イ 本件補正後の請求項1に記載の「前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクト」における「第1オブジェクト」及び「前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクト」における「第2オブジェクト」との用語について,その意味内容を一義的に理解することは困難であるので,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,その意味内容を理解すると,上記の用語について,本願明細書の発明の詳細な説明には,図7及び8とともに,以下の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
・「【0081】
図7(A)-(C)を参照して、ロック状態が設定されているときに、メニューキー26bが操作されると、図7(A)に示すように、扉オブジェクトDoがディスプレイ30に表示される。また、図7(A)の扉オブジェクトDoが表示された状態で、上方向のスライドがされると、図7(B)に示すようにスライドの距離に応じて扉オブジェクトDoの扉が開き始める。さらに、スライドの距離が所定値以上になると、扉オブジェクトDoは図7(C)の状態になり、ロック状態は解除される。そして、一定時間(たとえば、1秒)が経過すると、扉オブジェクトDoは消え、図3(C)に示すように、待機画像が表示される。」
・「【0085】
図8(A)-(C)を参照して、ロック状態が解除されているときに、メニューキー26bが操作されると、図8(A)に示すように、花オブジェクトFoがディスプレイ30に表示される。また、花オブジェクトFoが表示された状態で、上方向のスライドがされると、図8(B)に示すようにスライドの距離に応じて花オブジェクトFoが開花し始める。さらに、スライドの距離が所定値以上になると、図8(C)に示すように花オブジェクトFoは完全に開花し、ロック状態は解除される。そして、第2実施例と同様、一定時間が経過すると、花オブジェクトFoは消え、図3(C)のように、待機画像が表示される。」
そして,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載及び図7,8より,本願に係る発明において,ロック状態で表示される図7(A)の扉オブジェクトDoは,扉の枠,蝶番,扉及び取っ手から構成され,スライド距離が所定値以上になると表示される図7(C)の扉オブジェクトDoは,図7(A)の扉オブジェクトDoに対し,位置,形状及び大きさが変化しない扉の枠と,位置,形状又は大きさが変化する扉とから構成されるものであり,ロック状態で表示される図8(A)の花オブジェクトDoは,茎,とげ,大きい葉,花から構成され,スライド距離が所定値以上になると表示される図8(C)の花オブジェクトDoは,図8(A)の花オブジェクトDoに対し,位置,形状及び大きさが変化しない茎,とげ及び大きい葉と,形状又は大きさが変化する小さい葉及び花とから構成されるものであると認められる。
また,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載及び図7,8より,本願に係る発明において,「第1オブジェクト」は,ロック状態で表示される図7(A)の扉オブジェクトDo又は図8(A)の花オブジェクトFoであり,「第2オブジェクト」は,スライド距離が所定値以上になると表示される図7(C)の扉オブジェクトDo又は図8(C)の花オブジェクトFoであると認められる。
そうすると,本願明細書の記載を参酌すれば,本件補正後の請求項1に記載の「前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクト」における「第1オブジェクト」及び「前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクト」における「第2オブジェクト」との用語は,それぞれ,位置,形状及び大きさがスライドしても変化しない部分と,位置,形状又は大きさがスライドにより変化する部分とから構成されることを含み得ると理解できる。

ウ また,本件補正後の請求項1には,「前記接触検出部が,前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき,前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部」との記載がある。
そして,本件補正後の請求項1における上記の記載からは,「前記接触検出部」がどの用語に係り,どのような動作をするものなのか不明確であるため,本件補正後の請求項1の記載から,「前記接触検出部」との用語について,その意味内容を一義的に理解することは困難である。
そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,「前記接触検出部」の意味内容を理解すると,本件補正後の請求項1に記載の「前記接触検出部」について,本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
・「【0007】
第1の発明は、タッチパネルおよびタッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、ロック状態が設定されていることを示すオブジェクトを表示する表示部、ロック状態が設定されている場合において、接触検出部が、タッチパネルに対して接触部材を接触して移動させたことを検出したとき、表示部によって表示されたオブジェクトの表示を更新する更新部、および更新部によるオブジェクトの表示の更新が、所定の更新であった場合、ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末である。
【0008】
第1の発明では、携帯端末(10:実施例において対応する部分を例示する参照符号。以下、同じ。)は、指などの接触部材によってタッチ、リリースおよびスライドなどの操作が行われるタッチパネル(38)および、それらの操作を検出する接触検出部(36)を有する。また、携帯端末には、タッチパネルに対する操作によって電話発信やメール送信などの携帯端末が備える所定の処理(機能)が実行されないようにする、ロック状態を設定することができる。」
・「【0033】
タッチパネル38は、指(接触部材)が表面に接近して生じた電極間の静電容量の変化を検出する静電容量方式で、たとえば1本または複数本の指がタッチパネル38に触れたことを検出する。また、タッチパネル38は、ディスプレイ30の画面内で、任意の位置を指示するためのポインティングデバイスである。たとえば、タッチパネル38は、その表面を指で、押したり、撫でたり、触られたりすることにより操作されると、その操作を検出する。そして、接触検出部として機能するタッチパネル制御回路36は、タッチパネル38に指が触れると、その指の位置を特定し、操作された位置を示す座標のデータをプロセッサ24に出力する。つまり、使用者は、タッチパネル38の表面を指で、押したり、撫でたり、触れたりすることによって、操作の方向や図形などを携帯電話機10に入力することができる。」
・「【0068】
続いて、プロセッサ24は、ステップS23でタッチされたか否かを判断する。つまり、タッチパネル制御回路36によってタッチが検出されたか否かを判断する。ステップS23で“NO”であれば、つまりタッチが検出されなければ、プロセッサ24はステップS23を繰り返し実行する。また、ステップS23で“YES”であれば、つまりタッチが検出されれば、プロセッサ24はステップS25で、タッチ点を記憶する。つまり、タッチパネル制御回路36によって検出されたタッチ点をタッチバッファ330に格納する。
【0069】
続いて、プロセッサ24は、ステップS27で、スライドされたか否かを判断する。つまり、タッチパネル制御回路36によってタッチが検出された状態で、タッチ位置がタッチ点と異なる座標であるか否かを判断する。ステップS27で“NO”であれば、つまりタッチパネル38に対してスライドされなければ、プロセッサ24はステップS27の処理を繰り返す。また、ステップS27で“NO”であれば、つまりタッチパネル38に対してスライドされると、プロセッサ24はステップS29で、スライドの方向を判定する。つまり、プロセッサ24は、タッチ点とタッチ位置との縦軸座標に基づいてスライドの方向を判定する。また、判定結果に基づいて、方向フラグ338のオン/オフが設定される。なお、ステップS29の処理を実行するプロセッサ24は判定部として機能する。」
そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載より,本件補正後の請求項1に係る発明において,「前記接触検出部」は,接触部材がタッチパネルに接触して移動したことを検出するものと認められる。
したがって,本願明細書の記載を参酌すれば,本件補正後の請求項1における「前記接触検出部」は,接触部材がタッチパネルに接触して移動したことを検出するものと理解でき,本件補正後の請求項1における「前記接触検出部が,前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき,前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部」との記載は,「前記接触検出部が,前記接触部材が前記タッチパネルに接触して移動したことを検出し,前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき,前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部」の誤記と解するのが相当と認められる。

エ 以上から,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,本件補正後の請求項1に記載の「前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクト」における「第1オブジェクト」及び「前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクト」における「第2オブジェクト」との用語は,それぞれ,位置,形状及び大きさがスライドしても変化しない部分と位置,形状又は大きさがスライドにより変化する部分とから構成されることを含み得ると解したうえで,上記ア及びウより,次のとおりのものと認める。
「タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して移動したことを検出し、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部、および
前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末。」

(3)引用文献1の記載と引用発明
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,日本国内において頒布された刊行物である,特表2009-521753号公報(以下「引用文献1」という。)には,図1,3及び5とともに,次の記載がある。
(ア)「【0002】
開示する実施形態は、一般に、タッチセンシティブディスプレイを用いたユーザインタフェースに関し、より具体的には携帯用電子機器におけるユーザインタフェースのアンロッキングに関する。
・・・(中略)・・・
【0007】
従って、このような機器、タッチスクリーン、及び/又はアプリケーションをアンロックするためのより効率的な、ユーザにわかり易い手順の必要性が存在する。さらに一般的には、このような機器、タッチスクリーン、及び/又はアプリケーションを(例えば、第1アプリケーションに対応するユーザインタフェースの状態から第2アプリケーションに対応するユーザインタフェースの状態へ、同じアプリケーションにおけるユーザインタフェースの状態間、又はロック状態とアンロック状態との間などの)ユーザインタフェースの状態間で移行させるためのより効率的な、ユーザにわかり易い手順の必要性が存在する。さらに、移行が行われるのに必要なユーザ入力条件を満たす方向への進捗状態に関する感覚的なフィードバックをユーザに提供する必要性が存在する。」

(イ)「【0016】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による携帯用電子機器を示す図である。機器100は、メモリ102、メモリコントローラ104、1又はそれ以上の処理ユニット(CPU)106、周辺インタフェース108、RF回路112、オーディオ回路114、スピーカ116、マイク118、入力/出力(I/O)サブシステム120、タッチスクリーン126、その他の入力又は制御装置128、及び外部ポート148を含む。これらのコンポーネントは、1又はそれ以上の通信バス又は信号回線110を通じて通信を行う。機器100は、以下に限定されるわけではないが、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、メディアプレイヤ、携帯用情報端末(PDA)、又はこれらの項目の2又はそれ以上の組合せを含む同様のものを含む任意の携帯用電子機器であってもよい。機器100は、携帯用電子機器100の1つの例に過ぎないこと、及び機器100は図示したものよりも多数の又は少数のコンポーネント、或いは異なる構成のコンポーネントを有することができることを理解されたい。図1に示した様々なコンポーネントは、1又はそれ以上の信号処理回路及び/又は特定用途向け集積回路を含むハードウェア、ソフトウェア、或いはハードウェア及びソフトウェア双方を組合せた形で実装することができる。
・・・(中略)・・・
【0023】
タッチスクリーン126は、機器とユーザとの間に出力インタフェースと入力インタフェースとの両方を提供する。タッチスクリーンコントローラ122は、タッチスクリーン126との間で電気信号を送受信する。タッチスクリーン126は、視覚的な出力をユーザに表示する。この視覚的な出力は、テキスト、グラフィック、ビデオ、及びこれらの任意の組合せを含むことができる。視覚的な出力のいくつか又は全ては、ユーザインタフェースオブジェクトに対応することができ、これについてのさらなる詳細を以下に説明する。
【0024】
タッチスクリーン126はまた、触覚及び/又は触感のある接触に基づいてユーザからの入力も受け入れる。タッチスクリーン126は、ユーザ入力を受け入れるタッチセンシティブな表面を形成する。タッチスクリーン126及びタッチスクリーンコントローラ122は、(メモリ102内の任意の関連するモジュール及び/又は命令セットと共に)タッチスクリーン126上での接触(及び接触による任意の動き又は中断)を感知し、感知した接触を、タッチスクリーン上に表示される1又はそれ以上のソフトキーなどのユーザインタフェースオブジェクトとの交信に転換する。例示の実施形態では、タッチスクリーン126とユーザとの間の接触ポイントは、ユーザの1本又はそれ以上の指に対応する。タッチスクリーン126は、LCD(液晶ディスプレイ)技術、又はLPD(発光ポリマーディスプレイ)技術を用いることができるが、他の実施形態においては他のディスプレイ技術を用いることもできる。タッチスクリーン126及びタッチスクリーンコントローラ122は、以下に限定されるわけではないが、容量性、抵抗性、赤外線、及び弾性表面波技術、並びにその他の近接センサアレイ、或いはタッチスクリーン126との1又はそれ以上の接触ポイントを決定するためのその他の要素を含む任意の複数のタッチセンシティビティ技術を用いて、接触及び接触による任意の動き又は中断を感知することができる。タッチセンシティブディスプレイは、以下の米国特許第6,323,846号(Westerman他)、米国特許第6,570,557号(Westerman他)、及び/又は米国特許第6,677,932号(Westerman)、及び/又は米国特許公報2002/0015024号A1に記載のマルチタッチセンシティブタブレットに類似したものとすることができ、これらの特許の各々は、引用により本明細書に組み入れられる。しかし、タッチスクリーン126は携帯機器からの視覚的な出力を表示するが、タッチセンシティブタブレットは視覚的な出力を行うものではない。タッチスクリーン126は、100dpiをはるかに越える解像度を有することができる。例示の実施形態では、タッチスクリーン126は約168dpiの解像度を有することができる。ユーザは、スタイラスペン、指などの任意の適当なオブジェクト又は付属物を用いてタッチスクリーン126に接触することができる。
・・・(中略)・・・
【0030】
接触/動作モジュール138は、タッチスクリーンコントローラ122と共にタッチスクリーン126との接触を感知する。この接触/動作モジュール138は、接触が生じたかどうかを判定したり、接触による動きがあるかどうかを判定し、タッチスクリーンの全域で動きを追跡したり、また接触が中断されたかどうか(接触が終了したかどうか)を判定したりするなどのタッチスクリーン122との接触の感知に関する様々な動作を行うための様々なソフトウェアコンポーネントを含む。接触ポイントの動きを判定するステップは、接触ポイントの速さ(大きさ)、速度(大きさ及び方向)、及び/又は加速度(大きさ及び/又は方向を含む)を判定するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、接触/動作モジュール126(当審注.「接触/動作モジュール138」の誤記と認める。)及びタッチスクリーンコントローラ122はタッチパッド上での接触も感知する。」
(ウ)「【0033】
ユーザインタフェースの状態モジュール144は、機器100のユーザインタフェースの状態を制御する。このユーザインタフェースの状態モジュール144は、ロックモジュール150とアンロックモジュール152を含むことができる。ロックモジュールは、任意の1又はそれ以上の条件が満たされたことを感知し、機器100をユーザインタフェースロック状態へ移行させると共に、機器100をロック状態へ移行させる。アンロックモジュールは、任意の1又はそれ以上の条件が満たされたこと感知し、機器をユーザインタフェースアンロック状態へ移行させると共に、機器100をアンロック状態へ移行させる。ユーザインタフェースの状態に関する更なる詳細について以下に説明する。
・・・(中略)・・・
【0039】
ユーザインタフェースロック状態(以下「ロック状態」とする)では、機器100は、電源オンされ、操作可能であるが、ユーザ入力を全部ではなくともほとんど無視する。すなわち、機器100はユーザ入力に応答してアクションを全く取らないか、及び/又は機器100はユーザ入力に応答して所定の動作セットを行うことを妨げられることになる。所定の動作セットは、ユーザインタフェース間のナビゲーション及び所定の機能セットの起動又は停止を含むことができる。このロック状態を使用して、機器100の意図的でない又は不正な使用、或いは機器100における機能の起動又は停止を防止することができる。機器100がロック状態にある場合、機器100をロックしていることを示すことができる。いくつかの実施形態では、ロック状態の機器100は、機器100をユーザインタフェースアンロック状態へ移行させようとする試行に対応する入力、或いは機器100の電源をオフにすることに対応する入力を含む限定されたユーザ入力の組に応答することができる。換言すれば、ロックされた機器100は、機器100をユーザインタフェースアンロック状態へ移行させようとする試行に対応するユーザ入力や、或いは機器100の電源をオフにするユーザ入力には応答するが、ユーザインタフェース間をナビゲートしようとする試行に対応するユーザ入力には応答しないということになる。たとえ機器100がユーザ入力を無視する場合でも、機器100は、入力を感知するとユーザに(視覚、オーディオ、又は振動によるフィードバックなどの)感覚フィードバックを提供して、入力を無視する旨を示すこともできるということを理解されたい。
【0040】
機器100がタッチスクリーン126を含む場合の実施形態では、機器100がロックされている間は、機器100がロックされているときのタッチスクリーン126への接触に応答して、ユーザインタフェース間のナビゲーションなどの所定の動作セットが行われないようになる。換言すれば、ロックされた機器100によって接触が無視されているとき、タッチスクリーンはロックされていると言える。しかしながら、ロックされた機器100は、タッチスクリーン126への限定された種類の接触にはなおも応答することができる。この限定された種類には、機器100をユーザインタフェースアンロック状態へ移行させようとする試行に対応するように機器100が定める接触が含まれる。」

(エ)「【0044】
いくつかの実施形態では、ロックされた機器は、ユーザが機器をアンロックするために実行できるアンロックアクションについての1又はそれ以上の視覚的な合図をタッチスクリーン上に表示する(204)。この(単複の)視覚的な合図は、ユーザにアンロックアクションについてのヒント又は助言を提供するものである。この視覚的な合図は、テキスト、グラフィック、又はこれらの任意の組合せとすることができる。いくつかの実施形態では、機器がロックされている間の特定イベントの発生時にこの視覚的な合図が表示される。視覚的な合図の表示をトリガするこの特定イベントは、着呼、着信メッセージ、又はユーザの対応を要する何らかの他のイベントを含むことができる。いくつかの実施形態では、この視覚的な合図はまた、ユーザがメニューボタンを用いて交信したり、ユーザがロックされたタッチスクリーンに触れたり、及び/又はユーザが任意の他の入力/制御装置を用いて交信したりしたときなどの特定のユーザ入力時に表示される。視覚的な合図を表示していないとき、ロックされた機器は、タッチスクリーンの電源を切る(電力の節約になる)か、或いはスクリーンセーバ又は(電池の充電残量、日付及び時間、ネットワーク強度などの)ユーザにとって関心のある情報などの他のオブジェクトをタッチスクリーン上に表示することができる。
・・・(中略)・・・
【0054】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、アンロック画像を使用して機器をユーザインタフェースアンロック状態へ移行させるための処理300を示すフロー図である。処理300は、処理200(図2)に類似しており、視覚的な合図と共に表示されるアンロック画像を加えたものである。処理300におけるアンロックアクションはアンロック画像に対して行われ、すなわちこのアンロックアクションにはアンロック画像との交信が含まれる。以下に説明する処理フロー300は、特定の順序で行われるように見える多くの動作を含んでいるが、これらの処理はそれより多い数の又はそれより少ない数の動作を含むことができ、それらの動作を連続して或いは並行して(例えば並行プロセッサ又はマルチスレッドな環境を使用して)実行できることは明らかである。
【0055】
機器は、動作202(図2)の場合と同様に、ロック条件を満たした時にロックされる(302)。アンロック画像及びこのアンロック画像を用いたアンロックアクションについての視覚的な合図が表示される(304)。動作304は、動作304では視覚的な合図に加えてアンロック画像が表示されるという点を除き、動作204(図2)と同じである。
【0056】
上述のように、アンロックアクションにはアンロック画像との交信が含まれる。いくつかの実施形態では、アンロックアクションは、ユーザがアンロック画像に対して所定のジェスチャを行うステップを含む。いくつかの実施形態では、このジェスチャは、1又はそれ以上の所定のアンロック基準を満たすタッチスクリーン上の位置にアンロック画像をドラッグするステップを含む。換言すれば、ユーザは、アンロック画像に対応する位置でタッチスクリーンに接触し、次にタッチスクリーンとの持続的な接触を維持しながら所定のジェスチャを行い、所定のアンロック基準を満たす位置に画像をドラッグすることになる。いくつかの実施形態では、このアンロックアクションは、所定のジェスチャの完了時にタッチスクリーンとの接触を中断する(従ってアンロック画像を放す)ことにより完了する。
・・・(中略)・・・
【0064】
図5A?図5Dは、本発明のいくつかの実施形態によるアンロックアクションのジェスチャに関する動作の様々なポイントにおける機器のGUIディスプレイを示す図である。図5Aでは、手及び指502(縮尺通りには図示せず)により表されるユーザが、ユーザの指502で機器400のタッチスクリーン408に触れることによりアンロックアクションを開始する。いくつかの実施形態では、タッチスクリーン408は、最初はスリープモード及び/又は暗い状態にあり、スクリーン408は、触れられたときにアンロック画像402を表示する。ユーザは、最初はチャンネル404の左端に位置するアンロック画像402に対応する位置でタッチスクリーン408に触れる。アンロック画像402に重なるか、或いはアンロック画像402に近接するかのいずれかによる接触が機器400により感知され、ユーザ502がアンロック画像402と交信中であるという事実に基づいて、この接触はタッチスクリーンをアンロックするための試行であると判定される。
【0065】
図5Bでは、ユーザは、タッチスクリーン408と持続的に接触しているユーザの指を動き504の方向に動かすことによるジェスチャを行っている途中である。このジェスチャの結果としてアンロック画像402がチャンネル404に沿ってドラッグされる。チャンネル404は、アンロックジェスチャが水平方向の動きであることをユーザに想起させる。いくつかの実施形態では、チャンネル404は所定の位置(図5A?図5Dにおけるチャンネルの右端)を示し、ユーザはその位置へアンロック画像402をドラッグしてアンロックアクションを完了させるか、及び/又はチャンネル404は所定の経路を示し、ユーザはその経路に沿ってアンロック画像402をドラッグしてアンロックアクションを完了させることになる。
【0066】
図5Cでは、ユーザは、アンロック画像をチャンネル404の右端へドラッグしたところである。ユーザがチャンネル404の右端でアンロック画像402を放すと、アンロックアクションは完了する。機器は、アンロックジェスチャの完了時にアンロックされ、機器400の標準的な動作に関連したユーザインタフェースオブジェクトをタッチスクリーン408上に表示する。図5Dは、機器400がアンロックされたときに表示することができるユーザインタフェースオブジェクトの例を示す図である。図5Dでは、機器400はメニュー506を表示している。メニュー506は、様々なアプリケーション又は動作に対応するインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトを含む。ユーザは、このユーザインタフェースオブジェクトと交信して、アプリケーションを起動するか、或いは動作を実行することができる。しかしながら、機器400は、アンロック時に追加の又は代替のユーザインタフェースオブジェクトを表示することもできると理解されたい。
【0067】
いくつかの実施形態では、アンロックアクションの動作が失敗した旨を示すためにアンロック画像402を使用することができる。例えば、アンロック画像がチャンネル404の右端に達する前に、ユーザがタッチスクリーンとの接触を中断した場合、アンロックアクションは失敗したことになる。機器400は、アンロック画像402をチャンネル404の左端の初期位置に戻して表示し、ユーザが選択すれば、再度アンロックアクションを試みることができるようになる。いくつかの実施形態では、予め設定した時間の間ジェスチャが行われなければ、機器はスリープ状態に戻る。」

イ 引用発明
(ア)上記ア(イ)及び図1によれば,引用文献1には,タッチスクリーン126とタッチスクリーンコントローラ122を含む携帯用電子機器100について記載されている。
また,上記ア(イ)によれば,引用文献1には,ユーザは,指などを用いてタッチスクリーン126に接触することについて記載されている。
さらに,上記ア(イ)によれば,引用文献1には,タッチスクリーンコントローラ122は,タッチスクリーン126上での接触を感知することについて記載されている。
そうすると,上記ア(イ)及び図1から,引用文献1には,タッチスクリーン126とタッチスクリーン126上での指の接触を感知するタッチスクリーンコントローラ122を含む携帯用電子機器に100ついて記載されているということができる。

(イ)上記ア(イ)及び(ウ)によれば,引用文献1には,任意の条件が満たされたことを感知すると,携帯用電子機器100をロック状態へ移行させることについて記載されている。
また,上記ア(ウ)によれば,引用文献1には,ロックされている間は,タッチスクリーン126への接触に応答して,ユーザインタフェース間のナビゲーションなどの所定の動作セットが行われないようにすることについて記載されている。
そうすると,上記ア(イ)及び(ウ)から,引用文献1には,タッチスクリーンへの接触に応答した所定の動作セットを行わないロック状態に移行させることについて記載されているということができる。

(ウ)上記ア(エ),図3及び5より,引用文献1には,ロック状態では,最初に,視覚的な合図であるチャンネル404の左端にアンロック画像が位置するように,アンロック画像402と視覚的な合図であるチャンネル404を,タッチスクリーンのGUIディスプレイに表示することについて記載されていると認められる。
また,上記ア(エ)及び図5より,引用文献1における,アンロック画像402と視覚的な合図であるチャンネル404は,特定の位置に表示されていることについて記載されていると認められる。
そうすると,上記ア(エ),図3及び5から,引用文献1には,ロック状態において,視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402とを,特定の位置に表示するGUIディスプレイについて記載されているということができる。

(エ)上記ア(エ)及び図5より,引用文献1には,チャンネル404の左端にアンロック画像402が表示されて,ユーザの指がアンロック画像402に接触すると接触が感知され,その後,タッチスクリーンに持続的に接触させながら,チャンネル404の右端の位置まで指をドラッグすると,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像をGUIディスプレイの特定の位置に表示することについて記載されていると認められる。
また,上記ア(イ)によれば,引用文献1には,タッチスクリーンコントローラ122は,タッチスクリーン126上での接触による任意の動きを感知することについて記載されている。
そうすると,上記ア(イ),(エ),及び図5から,引用文献1には,視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402が特定の位置に表示されて,タッチスクリーンコントローラ122が指のタッチスクリーンへの持続的な接触による動きを感知し,指がタッチスクリーンに持続的に接触しながら,チャンネル404の右端の位置までドラッグすると,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像を特定の位置に表示することについて記載されているということができる。

(オ)上記ア(エ)及び図5によれば,引用文献1には,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像が特定の位置に表示されて,指がタッチスクリーンから離れると,アンロックされることについて記載されている。

(カ)上記(ア)ないし(オ)より,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「タッチスクリーン126とタッチスクリーン126上での指の接触を感知するタッチスクリーンコントローラ122を含み,タッチスクリーンへの接触に応答した所定の動作セットを行わないロック状態に移行させる,携帯用電子機器に100であって,
ロック状態において,視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402とを,特定の位置に表示するGUIディスプレイ,
視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402が特定の位置に表示されて,タッチスクリーンコントローラ122が指のタッチスクリーンへの持続的な接触による動きを感知し,指がタッチスクリーンに持続的に接触しながら,チャンネル404の右端の位置までドラッグすると,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像を特定の位置に表示し,
チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像が特定の位置に表示されて,指がタッチスクリーンから離れると,アンロックされる,携帯用電子機器100。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比,一致点及び相違点
ア 引用発明における「タッチスクリーン126」,「指」,「接触を感知」,「タッチスクリーンコントローラ122」及び「携帯用電子機器100」は,それぞれ,本願補正発明の「タッチパネル」,「接触部材」,「接触を検知」,「接触検出部」及び「携帯端末」に相当するといえる。
そして,上記(3)イ(イ)のとおり,引用発明は,携帯用電子機器100をロック状態に移行させることができ,「ロック状態」では,タッチスクリーンへの接触に応答した所定の動作セットが行われないものであり,「所定の動作セット」を行うことが,所定の処理を実行することであることは明らかであるから,引用発明における「タッチスクリーンへの接触に応答した所定の動作セットを行わないロック状態に移行させる」は,本願補正発明の「前記接触部材が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる」に相当するといえる。
そうすると,引用発明は,本願補正発明における「タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって」に相当する構成を備えるということができる。

イ 引用発明における「特定の位置」及び「GUIディスプレイ」は,それぞれ,本願補正発明の「所定位置」及び「表示部」に相当するといえる。
そして,上記(2)エのとおり,本願補正発明において,「前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクト」における「第1オブジェクト」との用語は,位置,形状及び大きさがスライドしても変化しない部分と位置,形状又は大きさがスライドにより変化する部分とから構成されることを含み得ると解され,上記(3)ア(エ)及び図5より,視覚的な合図であるチャンネル404は,位置,形状及び大きさがドラッグしても変化しない部分であり,アンロック画像402は,位置,形状又は大きさがドラッグにより変化する部分であるから,引用発明における「視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402」は,本願補正発明における「第1オブジェクト」に相当するといえる。
また,上記(3)イ(ウ)のとおり,引用発明における,視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402は,ロック状態において表示されるものである。
そうすると,引用発明は,本願補正発明における「前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部」に相当する構成を備えるということができる。

ウ 上記(3)ア(エ)及び図5より,引用発明における,視覚的な合図であるチャンネル404は,位置,形状及び大きさがドラッグしても変化しない部分であり,チャンネル404の左端から右端は,所定の距離を有することは明らかであるから,引用発明における「チャンネル404の右端の位置までドラッグすると」は,本願補正発明の「所定距離以上移動したとき」に相当するといえる。
そして,上記(2)エのとおり,本願補正発明において,「前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクト」における「第2オブジェクト」との用語は,位置,形状及び大きさがスライドしても変化しない部分と位置,形状又は大きさがスライドにより変化する部分とから構成されることを含み得ると解され,上記(3)ア(エ)及び図5より,視覚的な合図であるチャンネル404は,位置,形状及び大きさがドラッグしても変化しない部分であり,アンロック画像402は,位置,形状又は大きさがドラッグにより変化する部分であるから,引用発明における「チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像」は,本願補正発明における「第2オブジェクト」に相当するといえる。
また,上記(3)ア(エ)及び図5より,引用発明における,「チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像」と「チャンネル404とその左端に位置するアンロック画像」のチャンネル404は,位置,形状及び大きさがドラッグしても変化しない部分であるから,引用発明における「チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像」が表示される「特定の位置」は,本願補正発明の「前記所定位置」に相当するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して移動したことを検出し、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する」点で共通するということができる。

エ 本願補正発明と引用発明とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する」点で共通するということができる。

オ 上記アないしエより,本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりであると認められる。
(ア)一致点
「タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して移動したことを検出し、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示し、
前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する、携帯端末。」
(イ)相違点
・相違点1
本願補正発明は「前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して移動したことを検出し、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部」を備えているのに対し,引用発明は「視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402が特定の位置に表示されて,タッチスクリーンコントローラ122が指のタッチスクリーンへの持続的な接触による動きを感知し,指がタッチスクリーンに持続的に接触しながら,チャンネル404の右端の位置までドラッグすると,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像を特定の位置に表示」するものの,「更新部」を備えていることは明示されていない点。
・相違点2
本願補正発明は「前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合において前記接触部材が前記タッチパネルから離れると、前記ロック状態を解除する解除部」を備えているのに対し,引用発明は「チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像が表示されて,指がタッチスクリーンから離れると,アンロックされる」ものの,「解除部」を備えていることは明示されていない点。

(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
上記(3)イ(エ)より,引用発明は,視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402がGUIディスプレイの特定の位置に表示されて,タッチスクリーンコントローラ122が指のタッチスクリーンへの持続的な接触による動きを感知し,指がタッチスクリーンに持続的に接触しながら,チャンネル404の右端の位置までドラッグすると,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像402を上記GUIディスプレイの特定の位置に表示するものといえる。
そして,引用発明において,上記GUIディスプレイに供給する上記アンロック画像402のデータを更新する手段によって,上記の表示の処理を行うことは,引用文献1に明示されていなくても,当業者が普通に行い得るものということができ,上記の手段を更新部と称することは任意である。
そうすると,引用発明において,視覚的な合図であるチャンネル404と,その左端に位置するアンロック画像402が特定の位置に表示されて,タッチスクリーンコントローラ122が指のタッチスクリーンへの持続的な接触による動きを感知し,指がタッチスクリーンに持続的に接触しながら,チャンネル404の右端の位置までドラッグすると,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像を特定の位置に表示する処理を更新部により行うようにすることは,当業者が適宜行い得るものと認められる。
以上から,相違点1に係る発明は,引用発明において,当業者が適宜なし得たものである。
イ 相違点2について
上記(3)イ(オ)のより,引用発明は,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像が表示されて,指がタッチスクリーンから離れると,アンロックされるものである。
そして,上記(3)ア(ウ)によれば,引用文献1には,「アンロックモジュールは,任意の1又はそれ以上の条件が満たされたこと感知し,・・・機器100をアンロック状態へ移行させる」(段落【0033】)ことが記載されている。
そうすると,引用発明において,チャンネル404とその右端に位置するアンロック画像が表示されて,指がタッチスクリーンから離れると,アンロックされる処理をアンロックモジュールにより行うようにすることは,当業者が当然に行い得るものと認められ,上記アンロックモジュールを解除部と称することは任意である。
以上から,相違点2に係る発明は,引用発明において,当業者が適宜なし得たものである。

(6)本願補正発明の作用効果について
本願明細書の記載によれば,従来技術では,「ロック解除の方法が特定の言語で表示された場合、使用者がロック解除の手順を理解できない」(段落【0003】)という問題があったので,本願補正発明は,「新規な」,「使用者が理解できる言語に関係なく、ロック状態を解除させることができる」(段落【0004】,【0005】)ことを目的とし,「使用者が理解できる言語に関係なく、直感的な操作によってロック状態を解除させることができる」(段落【0025】)という効果を奏するようにしたものである。
しかし,上記(3)ア(ア)より,引用発明は,「このような機器、タッチスクリーン、及び/又はアプリケーションをアンロックするためのより効率的な、ユーザにわかり易い手順の必要性が存在する。・・・(中略)・・・さらに、移行が行われるのに必要なユーザ入力条件を満たす方向への進捗状態に関する感覚的なフィードバックをユーザに提供する必要性が存在する。」(段落【0007】)ことを課題とし,これを解決したものである。
そうすると,本願補正発明が奏する作用効果は,引用発明においても得られるものと認められる。
以上から,本願補正発明の作用効果は,格別なものとはいえない。

(7)まとめ
本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について

1 本願発明について
平成26年5月26日に提出された手続補正書による手続補正は前記のとおり却下された。そして,平成26年1月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。(再掲)
「【請求項1】
タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部、および
前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合、前記ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末。」
そうすると,前記第2の4(2)より,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成26年1月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクト」における「第1オブジェクト」及び「前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクト」における「第2オブジェクト」との用語は,それぞれ,位置,形状及び大きさがスライドしても変化しない部分と位置,形状又は大きさがスライドにより変化する部分とから構成されることを含み得ると解したうえで,次のとおりのものと認める。
「タッチパネルおよび前記タッチパネルに対する接触部材の接触を検出する接触検出部を有し、前記接触検出部が検出した接触に基づく所定の処理を実行しないロック状態が設定できる、携帯端末であって、
前記ロック状態が設定されていることを示す第1オブジェクトを所定位置に表示する表示部、
前記第1オブジェクトが前記所定位置に表示されている場合において、前記接触検出部が、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して移動したことを検出し、前記接触部材が前記タッチパネルに接触して所定距離以上移動したとき、前記第1オブジェクトとは異なる第2オブジェクトを前記所定位置に表示する更新部、および
前記更新部によって前記第2オブジェクトが前記所定位置に表示された場合、前記ロック状態を解除する解除部を備える、携帯端末。」

2 引用文献の記載と引用発明
引用文献1の記載は,前記第2の4(3)アのとおりであり,引用発明は,前記第2の4(3)イで認定したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比,一致点及び相違点
前記第2の1及び2より,本願発明は,本願補正発明において,補正事項による発明特定事項(「前記ロック状態を解除する解除部」)に対する限定(限定的減縮)を取り除いたものである。
そして,前記第2の4(5)で検討したとおり,本願補正発明は,引用文献1記載の発明(引用発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると,本願補正発明を包含する本願発明も,前記第2の4(5)で検討した理由により,引用文献1記載の発明(引用発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,前記第2の4(6)の理由により,本願発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

4 まとめ
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言

したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-02 
結審通知日 2015-04-07 
審決日 2015-04-20 
出願番号 特願2010-190840(P2010-190840)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 淳宮崎 賢司  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 山中 実
高野 美帆子
発明の名称 携帯端末、ロック解除プログラムおよびロック解除方法  
代理人 山田 義人  

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