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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1302023 |
審判番号 | 不服2014-9691 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-26 |
確定日 | 2015-06-08 |
事件の表示 | 特願2008-263126「端末、画像表示方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月22日出願公開、特開2010- 93650〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年10月9日を出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成25年 4月10日(起案日) 手続補正 :平成25年 6月17日 拒絶査定 :平成26年 2月20日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成26年 5月26日 手続補正 :平成26年 5月26日 前置報告 :平成26年 9月30日(起案日) 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 【請求項1】 フレーム間予測を用いて圧縮された画像データを受信する受信部と、 前記受信部にて受信された画像データの先頭フレームが非予測フレームであるか否かを判別し、前記先頭フレームが非予測フレームでない場合、端末の能力情報に基づいて再符号化することで前記先頭フレームを非予測フレームに変換する第1の変換部と、 前記第1の変換部から出力された前記変換後の先頭フレームに対し、解像度を増大させる超解像度処理を行う第2の変換部と、 を備え、前記受信部にて受信された画像データの先頭フレームを非予測フレームにして画像を表示する端末。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由(平成25年4月10日付け拒絶理由通知書における拒絶の理由C.)の概要は、以下のとおりである。 「C.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 発明の詳細な説明の記載は「最初の予測フレーム又はユーザの切替要求による切替直後の予測フレームを非予測フレームに変換」しうる実質的な開示ができていない。例えば、0028,0036段落は、単に再符号化又は変換する旨が記載されているのみであって、当該再符号化又は変換を実現する具体的構成の開示はない。 (そもそも、上記構成に関連する0008段落に記載の課題は、「最初の予測フレーム又はユーザの切替要求による切替直後の予測フレーム」の情報からは、「非予測フレーム」に相当する情報を得られないことに起因するものであるところ、発明の詳細な説明の記載はこの点を単に「変換する」なる文言のみにより「非予測フレーム」を得るように説明しており、本願発明として、どのような具体的処理により、(「最初の予測フレーム又はユーザの切替要求による切替直後の予測フレーム」の情報からは構成し得ない、)「非予測フレーム」を得るものを開示しようとしているのかは、全く不明である。) よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-3,6,8に係 る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」 第4 本願明細書の記載事項 平成25年6月17日及び平成26年5月26日にされた手続補正により補正された本願明細書には、以下の記載がある。 【0001】 本発明は、端末、画像表示方法及びプログラムに関し、特に、動画像、静止画像等の少なくとも一つを含むコンテンツの符号化圧縮されたストリームを受信する機能を備えた端末、その画像表示方法及びプログラムに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、ワンセグ(1seg)放送やデジタル地上波放送等のほか、ネットワーク環境等においても、動画像、静止画等を含むマルチメディアコンテンツが配信されるようになってきており、こうした環境でコンテンツを視聴することを想定したIPTV(Internet Protocol TeleVision)等が普及している。 【0003】 IPネットワークを介して、これらのコンテンツを配信するときは、ネットワークの負荷を軽減するために、IPネットワーク上をマルチキャストプロトコルまたはブロードキャストプロトコルで配信する技術が検討されている。また、ネットワークの帯域幅は、NGN(Next Generation Network)やモバイルでのLTE(Long Term Evolution)技術により、有線ネットワークやモバイルネットワークにおいて、今後、拡大・高速化されていくことが予想される。 【0004】 特許文献1には、テレビ放送を受信し、パケット交換網、インターネット、公衆回線交換網等の通信網を介して、携帯端末にマルチキャストする放送送信サーバが開示されている。 【0005】 特許文献2には、映像伝送システムにおける映像切替の際の静止画状態を短くするために、映像復号器からの映像切替指示に応じて原画像から映像符号化データの生成を開始する映像符号器のうち、指定された少なくとも一つの映像符号器から送信された映像符号化データを復号した映像が安定したことを検出してから映像出力する映像伝送システムが開示されている。 【0006】 特許文献3には、映像表示する1フレームの画面における動画を含む映像に対しては、動画フレーム補完を伴うフレームレート変換を実施し、静止画によるOSD(On Screen Display)画像に対しては、動画フレーム補完を伴わないフレームレート変換を実施し、動画映像上にOSD画像を重ねて表示しても、画質の劣化の少ないテレビジョン受信機が開示されている。また、同文献の段落0016には、このテレビジョン受信機が備えるスケーリング部にて、解像度の変換を行うことが記載されている。 【0007】 【特許文献1】特開2002-185943号公報 【特許文献2】特開2004-193961号公報 【特許文献3】特開2008-160591号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上記特許文献2の段落0006以下に記載されているように、画像を圧縮符号化して伝送する方式では、視聴開始時やチャンネル切替直後に、受信端末側で画像が速やかに表示されないという問題点がある。特に、アナログ放送に慣れたユーザは、この待ち時間に、違和感、ストレスを感じ、待ちきれずに切断処理を行ってしまうことも考えられる。 【0009】 本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ワンセグ放送、デジタル地上波放送、モバイルネットワーク、インターネット、有線ネットワーク環境、IPTV環境等の種々の圧縮符号化されて伝送される画像を受信する端末側で、視聴開始時やチャンネル切替時に生じる待ち時間を解消できる端末、画像表示方法及びプログラムを提供することを目的とする。 【0027】 動画パケット受信部290は、ネットワークから、接続要求又はチャンネル切り替え後速やかにビデオRTPパケットを受信し、呼制御部301から入力されたビデオ信号に関する能力情報を参照して、RTPパケットのペイロード部に格納されているビデオストリームを読み出してIフレーム変換部303に出力する。 【0028】 Iフレーム変換部303は、呼制御部301から入力されたビデオ信号に関する能力情報を参照して、動画パケット受信部290から入力されたビデオストリームを一旦復号する。さらに、Iフレーム変換部303は、入力直後の先頭のフレームのみについてIフレーム(非予測フレーム)であるか否かを判別し、Iフレームでない場合はIフレームに再符号化し、符号化後のストリームを出力する。入力直後の先頭のフレームがIフレームである場合は、変換せずに入力したストリームをそのまま出力する。2フレーム以降のフレームに関しては、Iフレーム変換部303は、上記のような変換や再符号化を行わずに入力したストリームをそのまま出力する。 【0029】 ここで、Iフレームに再符号化する場合は、呼制御部301から入力された能力情報に従い再符号化する。例えば、能力情報がH.264 BPP@L1.2、画面解像度はQVGA、ビットレートは384 kbps、フレームレートは15 fpsを表している場合、Iフレーム変換部303は、これらのパラメータに従って再符号化を行う。 【0036】 Iフレーム変換部303は、動画パケット受信部290で受信されたビデオストリームを復号し(ステップS002)、更に、入力直後の先頭のフレームのみについてIフレーム(非予測フレーム)であるか否かを判別する(ステップS003)。ここで、Iフレームでない場合、Iフレーム変換部303は、Iフレーム(非予測フレーム)への変換が必要であると判断し、非予測フレームへの変換を行う(ステップS004)。 第5 当審の判断 特許請求の範囲には、変換部について「前記受信部にて受信された画像データの先頭フレームが非予測フレームであるか否かを判別し、前記先頭フレームが非予測フレームでない場合、端末の能力情報に基づいて再符号化することで前記先頭フレームを非予測フレームに変換する第1の変換部」と記載されている。 上記記載を、当該技術分野における技術常識も踏まえて検討すると、 「非予測フレーム」とは、当該フレームのデータのみで画像を復号することができるフレーム、 「予測フレーム」とは、当該予測の基となるフレームのデータと予測フレームのデータとを合成することにより画像を復号することができるフレーム、 であるといえることから、「前記先頭フレームが非予測フレームでない場合」とは、先頭フレームが予測フレームである場合といえ、このとき当該予測フレームを復号化するには、予測の基となるフレームのデータが必要であるといえる。 しかしながら、上記請求項の記載では、前記先頭フレームは、「前記受信部にて受信された画像データの先頭フレーム」であるから、先頭フレーム以前のフレームデータは存在せず、したがって、予測の基となるフレームのデータも存在しないから、前記先頭フレームは復号化できない。 そして、請求項の「前記先頭フレームが非予測フレームでない場合、端末の能力情報に基づいて再符号化することで前記先頭フレームを非予測フレームに変換する」の記載では、予測フレームである先頭フレームを再符号化することで非予測フレームに変換するととらえることが普通であるといえる。 「再符号化」とは、すでに符号化されたフレームデータを、復号化し、再度符号化するという意味であることが普通であるから、上記記載では、予測フレームである先頭フレームを(復号化し)再符号化することで非予測フレームに変換する意味であるととらえるべきであるといえるが、先に検討したとおり先頭の予測フレームは復号化することができないのであるから、再符号化することができないことは明らかである。 この点、発明の詳細な説明の記載をみても、「入力直後の先頭のフレームのみについてIフレーム(非予測フレーム)であるか否かを判別し、Iフレームでない場合はIフレームに再符号化し、符号化後のストリームを出力する。」(【0028】)程度の記載しかなく、先頭の予測フレームについてどのように再符号化するかについて開示がない。 請求人は、平成25年6月17日付け意見書において「しかしながら、本明細書で述べている「予測フレームを非予測フレームに変換」は、予測フレーム(例えば、PフレームやBフレーム)を画素補間するなど特段特別な変換処理を行うわけではなく、差分圧縮された予測フレーム(PフレームやBフレーム)を非予測フレーム(例えばIフレーム)として出力することを「非予測フレームに変換」と述べているものであります。なお、引用頂いた引用文献1の0003-0008及び「切替点」との題のテーブルにおいても、同様の技法を指して「PフレームをIフレームに変換」と述べており、同記載に接した当業者であれば、例えば、予測フレームのフレームヘッダを非予測フレームのフレームヘッダに付け替えること等が連想されるものであります。このように、本願明細書の0028、0036の記載は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分な記載となっているものと思料致します。」と主張しているが、予測フレームのフレームヘッダを非予測フレームのフレームヘッダに付け替えることは、通常「再符号化」と称することはなく、さらにこのようなフレームヘッダの付け替えは、本願の明細書に記載も示唆もなく、また、本願明細書から自明な技術事項であると認めることもできないから、上記意見書における主張は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内ということはできない。 よって、本願明細書の記載は、「前記受信部にて受信された画像データの先頭フレームが非予測フレームであるか否かを判別し、前記先頭フレームが非予測フレームでない場合、端末の能力情報に基づいて再符号化することで前記先頭フレームを非予測フレームに変換する第1の変換部」について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-27 |
結審通知日 | 2015-04-07 |
審決日 | 2015-04-21 |
出願番号 | 特願2008-263126(P2008-263126) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 嘉宏 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 渡邊 聡 |
発明の名称 | 端末、画像表示方法及びプログラム |
代理人 | 加藤 朝道 |