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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1302092
審判番号 不服2014-8982  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-14 
確定日 2015-06-18 
事件の表示 特願2009-248161「入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月12日出願公開、特開2011- 95925〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成21年10月28日の出願であって、平成26年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年7月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「タッチセンサと、
前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、
表示部と、
前記タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
前記タッチ面に対する入力により、表示画像が変化しているときに、前記荷重検出部が触感を呈示する荷重基準を満たす押圧荷重を検出すると、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。」


3.引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-92472号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、据置型や携帯型などの端末装置に用いられるタッチパネルを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】・・・(中略)・・・
【0003】・・・(中略)・・・
【0004】・・・(中略)・・・
【0005】・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のタッチパネルを備えた表示装置では、その表示画面に操作ボタン(タッチボタン)などのタッチ操作部材からなる入力手段の画像を表示することにより、その入力手段を顧客やユーザの視覚で認識させ、この認識のもとに、この入力手段の画像の操作したいと思われる個所をタッチして操作するものであるから、次のような問題が生ずる。
【0007】
まず、ユーザがタッチ操作するためのタッチ操作部材のタッチ操作エリアは、表示画面に表示されたものであるから、そのタッチ操作エリア以外の部分と同じ平面上にあり、キーボードなどの操作部とは違って、タッチ操作エリアをタッチした感じとそれ以外の部分をタッチした感じとは同じである。このため、指先でタッチした位置が所望とするタッチ操作エリアからずれても、気が付かない場合
もあり得る。
【0008】
特に、タッチ操作部材として、案内のメッセージなどとともに、いくつかの操作ボタンを表示する場合には、これら操作ボタンを表示画面のあちこちに表示する場合があり、このように表示される操作ボタンを操作する場合には、指先のタッチ位置が所望とする操作ボタンの表示位置からずれる場合もあり得る。このようなずれがわずかであっても、この操作ボタンはタッチされなかったことになり、機能しない。しかし、ユーザとしては、その操作ボタンにタッチしたつもりであり、タッチしていないことに気が付かない場合もある。このため、再度同じ操作スイッチをタッチする操作をすることになるが、このためには、タッチしなかったと認識することが必要であり、しかし、この認識にある程度の時間を要することになる、という問題があった。
【0009】
また、多くの操作ボタンが互いに近接して表示画面に同時に表示するような場合もあり、このような場合には、各操作ボタンは比較的小さく表示されるので、指先のタッチ位置が所望とする操作ボタンの表示位置からわずかでもずれると、隣の操作ボタンにタッチしてしまうこともある。従来のタッパネルを備えた表示装置は、表示される操作ボタンがタッチされると、直ちに機能するように構成されているので、タッチ位置がずれて隣の操作ボタンにタッチすると、この隣の操作ボタンが機能してしまい、この機能を停止させて再度操作をし直さなければならない、という問題があった。
【0010】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、表示画面に表される操作ボタンなどのタッチ操作部材を指先などでタッチしたことを容易に認識でき、しかも、該タッチ操作部材を操作したことを容易にかつ確実に認識できるようにしたタッチパネルを備えた表示装置を提供することにある。
」 (2頁32行?3頁46行)

(イ)「0015】
図1は本発明によるタッチパネルを備えた表示装置の第1の実施形態を示す構成図であって、同図(a)は外観斜視図、同図(b)は側面図、同図(c)は断面図であり、1は筐体、1aは開口、2は表示画面、3は取付部、4はスタンド、5は回転軸、6はピン穴、7はピン、8は表示パネル、8aは表示面、9はタッチパネル、10,10a,10bは支持部材、11は駆動モータ、12は回転歯車、13は平歯車、14はリンク機構、14a,14bはリンク、14c,14dは支持部材、15,16は引張りバネである。
【0016】
同図において、箱型の筐体1の前面に矩形状の開口1aが形成されており、この開口1aに表示画面2が設けられている。この表示画面2に、図示しないが、操作ボタンやメッセージなどのタッチ操作できる部材(以下、タッチ操作部材という)が表示され、かかるタッチ操作部材をタッチ操作することにより、この実施形態である表示装置を利用した装置(例えば、後述するATMや券売機など)を動作させることができる。」(4頁19?31行)

(ウ)「【0020】
この筐体1内では、図1(c)に示すように、表示手段を形成する表示パネル8とタッチパネル9とからなる表示手段が内蔵されており、この表示パネル8の表示面8aとタッチパネル9とで表示画面2を形成している。タッチパネル9は、この表示部8aに対向し、その周辺部が支持部材10によって表示パネル8で支持されている。
【0021】
筐体1内には、また、表示画面2を筐体1の開口1aに対して前後に移動させるための移動機構を備え、タッチパネル9での指先などによる押圧力に応じて表示画面2を開口1aから引っ込めることができるようにしている。
【0022】
この移動機構は、図1(c)において、駆動モータ11やリンク機構14などを用いて構成され、筐体1内の表示パネル8よりも奥部に配置されている。」(4頁48行?5頁9行)

(エ)「【0027】
図2(a)は表示画面2の初期状態を示すものであって、平歯車13が最も奥側に移動した状態、・・・(中略)・・・、これらリンク14a,14bによって支持部材10a,10bが持ち上げられて表示画面のタッチパネル9が開口1aに当接もしくは開口1aに近接して配置されている。
【0028】
駆動モータ11が時計廻り方向に所定回転量だけ回転すると、図2(b)に示すように、・・・(中略)・・・、表示パネル8は矢印A方向に移動し、表示画面2が開口1aから後退する(引き込む)ことになる。
【0029】
駆動モータ11が時計廻り方向に最大限回転したときには、図2(c)に示すように、・・・(中略)・・・、表示パネル8は矢印A方向に最大限移動したことになり、表示画面2が開口1aから最大限引っ込んだ状
態となる。」(5頁30行?6頁1行)

(オ)「【0042】
図4(a)に示す状態は、図5での0≦P<P1の状態を示すものであって、この状態では、タッチパネル9にタッチされていないと判定される。また、図4(b)は指先19がタッチパネル9にタッチした状態を示すものであるが、このとき、0≦P<P1であれば、図5から、タッチパネル9にタッチされていないと判定するし、P1≦P<P2であれば、タッチパネル9にタッチされただけで押し込まれてはいないと判定される。図4(c)は指先19でタッチパネル9を押し込むようにタッチした状態を示すものであり、図5において、P2≦Pの状態である。このときには、タッチパネル9が押し込まれると判定される。」(7頁25?33行)

(カ)「【0045】
図6は第1の実施形態での回路構成の一具体例の要部を示すブロック図であって、20は制御部、21はスピーカ、22は記憶部、23は振動部であり、図1,図3に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
【0046】
図6において、タッチパネル9がタッチセンサと圧力センサとを備えており、このタッチセンサの検出出力と圧力センサの検出圧力Pとが制御部20に供給される。制御部20は、タッチセンサの検知出力により、タッチパネル9での指先のタッチ位置を検出し、この検出圧力Pを基に、図5で説明した判定を行ない、その判定結果に応じて、記憶部22に記憶されているデータを基に、後述するように、表示パネル8や映出装置17を制御し、また、スピーカ21で所定の音声再生を行なわせる。
【0047】
また、制御部20は、圧力センサの検出圧力Pが、予め設定されている圧力値P1,P2に対し、P<P1(タッチされていない)であるか、P1≦P<P2(タッチされたか:「タッチ検知」)であるか、P2≦P(押し込みがなされたか:「圧力検知」)であるかが判定し、かかる判定に基づいて駆動モータ11を制御する。」(7頁41行?8頁6行)

(キ)「【0048】
図7をもとに、駆動モータ11による表示画面2の駆動量を説明するが、この図7は、図2(a)に示す状態のときの表示画面2の位置を基準にして、この基準位置からの駆動量を表わしている。
【0049】
図7(a)において、制御部20は、P<P1と判定したときには、駆動モータ11による表示画面2の駆動量をゼロとして、表示画面2を図2(a)に示す状態に設定する。そこで、例えば、図2(b)または(c)に示す状態にあるとき、制御部20は、P<P1の判定をすると、駆動モータ11を、その角度センサの検出出力をもとに、反時計廻り方向に回転制御し、リンク機構14などの振動部23を駆動して図2(a)に示す状態にする。また、制御部20は、P1≦P<P2と判定したときには、駆動モータ11を回転制御して、図2(b)に示す状態とし(これを、駆動1という)、P2≦Pと判定したときには、同様にして駆動モータ11を回転制御して、図2(c)に示す状態とする(これを、駆動2という)。
【0050】
なお、図7(a)において、駆動1の駆動量を0とし、P2≦Pのときのみ、駆動2を実行することもできる。指先による押圧力PがP1≦P<P2のときには、画面表示の変化や音声案内を行ない、P2≦Pのときにのみ駆動を行なうことによっても、決定操作が実行されたことを操作者に確実に認識させることができ、かつ駆動制御を単純化することができる。」(8頁7?26行)

(ク)「【0053】
図8は制御部20のかかる機能制御の第1の具体例を示すフローチャートである。なお、以下では、図5に示すように、この圧力Pが0≦P<P1であるときの制御部20による処理をA、P1≦P<P2であるときの制御部20による処理をB、P2≦Pであるときの制御部20による処理をCとする。これらの処理については後述するが、処理Aは、当然のことながら、タッチパネル9へのタッチ操作もなされていないときの処理である。
【0054】・・・(中略)・・・

【0055】
次に、図4(b)または(c)に示すように、タッチパネル9へのタッチ操作がなされると、P≧P1(これは、P≧P2も含む)となるから(ステップ102)、まず、図4(b)または(c)に示すようにタッチパネル9での指先19でタッチされた位置(タッチ位置)が、操作ボタンなどのタッチ操作部材の処理B,Cを実行するべき位置であるか否かを判定する(ステップ103)。ここで、タッチセンサ(図6)により、指先19のタッチ位置を検出し、これを記憶部22(図6)のデータと比較して、このタッチ位置が処理B,Cの実行を必要とする位置、例えば、タッチ操作部材を操作ボタンとして、操作ボタンの表示エリア(以下、操作ボタンエリアという)内にあるかどうかを判定し、表示画面2で操作ボタンエリア内にタッチ位置があるときには、まず、処理Bを実行するとともに(ステップ104)、駆動モータ11(図6)を制御して振動部23、即ち、リンク機構14を動作させ、表示画面2の駆動1(図7)を実行するが(ステップ105)、タッチ位置が操作ボタンエリア内にないときには、P≧P1である限り、ステップ103にあって処理Aの実行を継続し、その後、P<P1となった場合には(タッチパネル9から指先19を離す)、図示しないが、ステップ
100に戻り、また、指先19が移動してタッチ位置が操作ボタンエリア内に入ると、これがタッチされたものと判定して処理Bと駆動1とを実行する(ステップ104,105)。このときの表示画面2(図1)に表示されるこの処理Bによる画面を(ii)とする。
【0056】・・・(中略)・・・

【0057】
そして、圧力センサからその検出圧力Pを取り込んで判定し、P<P1であるときには(ステップ106)、処理Bを終了して(ステップ107)ステップ100に戻るが、P1≦Pであるときには(ステップ106)、さらに、P2≦Pであるか否かを判定し(ステップ108)、この判定の結果、P1≦P<P2であるときには、ステップ103に戻り、P1≦P<P2である限り、処理Bと駆動1をそのまま継続して実行する。また、P2≦Pのときには(ステップ108)、タッチ位置が操作ボタンのエリア内にあるとき、処理Cを実行するするとともに(ステップ108)、駆動2(図7)を実行する(ステップ110)。このときの表示画面2(図1)に表示される処理Cによる画面を(iii)とする。
【0058】
この処理Cは、操作ボタンに対しては、先の第1の実施形態と同様、例えば、その決定処理に相当するものであり、このとき同時に実行される駆動2は、表示画面2をガタンと大きくさらに押し込むものである。従って、表示画面2で表示される操作ボタンで実行操作を行なうと、これと同時に表示画面2が押し込まれるように動作するものであるから、ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得ることができ、大きな視差でもってこの操作ボタンの決定操作を行なっても、かかる操作をしたか否かを正確に判断することができるし、また、目が不自由な人も、上記の駆動1の実行に続く駆動2の実行により、決定操作が実行されたことを確実に知ることができる。
【0059】・・・(中略)・・・

【0060】
処理Cと駆動2を実行してから、タッチパネル9から指先19を離すと、P<P2となるから(ステップ111)、処理Cを終了し(ステップ112)、処理103に戻るが、このとき、P<P1であれば、処理100に戻る。
【0061】
このようにして、図4(b)に示すように指先19がタッチパネル9での操作ボタンエリアに触れた状態にしてP1≦P<P2とすると、処理Bと駆動1が行なわれ、また、図4(c)に示すように指先19でタッチパネル9での操作ボタンを押し込むようにタッチすると、P2≦Pとなり、処理Bの実行を経て処理Cと駆動2を実行することになる。」(8頁38行?10頁11行)

(ケ)「【0063】
図9は、タッチ操作部材を操作ボタンとして、かかる画面の具体例を示す図である。
【0064】
図9(a)は表示画面2に操作ボタン24が表示され、この操作ボタン24をタッチ操作すると、表示色が処理A,B,Cで変化する場合の具体例を示すものである。図8のステップ100?102の動作では、処理Aが行なわれて画面(i)が表示され、この画面(i)で、いま、第1の色により、操作ボタン24が表示されているものとする。
【0065】
かかる表示状態で指先19でこの操作ボタン24のエリアをタッチすると、このときのタッチパネル9に対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサ(図6)により、このときの指先19のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部22(図6)でのデータを基に、操作ボタン24のエリア内にある(即ち、操作ボタン位置と一致している)と判定されると(ステップ103)、処理Bが実行され(図8のステップ104)、操作ボタン24が第2の色に変化した画面(ii)が表示される。これとともに、図7での駆動1が実行され(図8のステップ105)、図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態に移り、表示画面2がガタッと小さく、もしくはゆっくりと小さく奥の方に後退する。以上の処理Bと駆動1により、指先19が
操作ボタン24にタッチしたことが、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。
【0066】
さらに、指先19で操作ボタン24を押し込むようにし、これにより、P2≦Pとなると、この場合も、タツチ位置が操作ボタン24の位置と一致していると、操作ボタン24が第3の色に変化した画面(iii)が表示され、これとともに、図7に示す駆動2が実行されて、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態に急速に移り、表示画面2がガタンと大きく奥の方に後退する(なお、図7(c)の場合には、逆に前進する)。これにより、この操作ボタン24で実行操作などの機能操作が行なわれたことが(即ち、間違いなくこの操作ボタン24を操作したことが)、視覚的にも、また、触覚的にも、認識できる。従って、誤った操作がなされたときには、これを容易に知ることができて、タッチ操作のやり直しを簡単に行なうことができ、誤操作防止も向上する。タッチパネル9から指先19を離すと、画面(i)に戻る。」(10頁14?43行)


上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記(ア)、(イ)の記載によれば、引用例には、タッチパネルを備えた表示装置が記載されている。
また、上記(イ)の段落【0015】の記載によれば、タッチパネルを備えた表示装置は、表示パネル、タッチパネル、駆動モータ、リンク機構を有している。

b.さらに、上記(ウ)の段落【0020】記載によれば、表示パネルとタッチパネルとで表示画面を形成すること、さらに、段落【0016】の記載によれば、表示画面に、操作ボタンやメッセージなどのタッチ操作できるタッチ操作部材が表示され、該タッチ操作部材をタッチ操作することにより、表示装置を利用した装置を動作させることができることが記載されており、また、表示装置を利用した装置を動作させることは、タッチ操作部材の機能が実行されることにほかならない。
そして、段落【0021】には、移動機構でタッチパネルでの指先などによる押圧力に応じて表示画面を引っ込めること、また、段落【0022】には、移動機構は駆動モータやリンク機構などを用いて構成されることが記載されている。

したがって、引用例には、表示パネルとタッチパネルで表示画面を形成し、該表示画面に、操作ボタンやメッセージなどのタッチ操作できるタッチ操作部材が表示され、該タッチ操作部材をタッチ操作することにより、タッチ操作部材の機能が実行され、駆動モータとリンク機構から移動機構を構成し、該移動機構によって前記表示画面をタッチパネルへの指先による圧力に応じて引っ込めるように移動できることが記載されているといえる。

c.上記(カ)の段落【0045】、及び図6の記載によれば、タッチパネルを備えた表示装置が、制御部、記憶部、を備えており、さらに、段落【0046】、【0047】の記載によれば、タッチパネルがタッチセンサと圧力センサを備えており、タッチセンサの検出出力と圧力センサの検出圧力Pとが制御部に供給され、該制御部は、検出出力Pと、予め設定されている圧力値P1、P2、及び記憶部に記憶されているデータを基に、表示パネル、駆動モータを制御するものである。

d.上記(オ)の記載によれば、P1≦P<P2であれば、タッチパネルに指先がタッチされた状態である。
そして、上記(ク)の段落【0055】の記載によれば、タッチ操作部材が操作ボタンの際に、タッチパネルへのタッチ操作がなされると、P≧P1(これは、P≧P2も含む)となるから(ステップ102)、指先のタッチ位置を検出し、これを記憶部のデータと比較して、操作ボタンの表示エリア(以下、操作ボタンエリアという)内にあるかどうかを判定し、表示画面で操作ボタンエリア内にタッチ位置があるときには、まず、処理Bを実行するとともに(ステップ104)、駆動モータを制御して振動部、即ち、リンク機構を動作させ、表示画面の駆動1(図7)を実行している。
また、上記(キ)の段落【0049】の記載によれば、制御部は、P1≦P<P2と判定したときには、駆動モータを回転制御して、図2(b)に示す状態と(これを、駆動1という)すること、さらに、段落【0050】の記載によれば、駆動1の駆動量を0とし、指先による押圧力PがP1≦P<P2のときには、画面表示の変換のみを行い、駆動制御を単純化できることが記載されており、制御部は、P1≦P<P2と判定したとき駆動モータの駆動量をゼロとし、画面表示の変換のみを行うことが記載されているといえる。
さらに、上記(ク)の段落【0065】の記載によれば、指先で操作ボタンのエリアをタッチすると、このときのタッチパネルに対する圧力PがP1≦P<P2であるときには(図8のステップ102)、このとき、タッチセンサにより、このときの指先のタッチ位置が検出され、このタッチ位置が、記憶部でのデータを基に、操作ボタンのエリア内にある(即ち、操作ボタン位置と一致している)と判定されると、処理Bが実行され(図8のステップ104)、操作ボタンが第2の色に変化して表示させることが記載されている。

したがって、引用例には、制御部は、タッチ操作部材が操作ボタンの際にタッチパネルへの指先のタッチ操作がなされ、圧力センサの検出圧力PがP1≦P<P2となるとタッチパネルへのタッチがされたと判断し、指先のタッチ位置を検出し、これを記憶部のデータと比較して、操作ボタンの表示エリア(以下、操作ボタンエリアという)内にあるかどうかを判定し、表示画面で操作ボタンエリア内にタッチ位置があるときには、まず、処理Bとして、操作ボタンの色が変化させることが記載されているといえる。

e.上記(ク)の段落【0057】の記載によれば、さらに、P2≦Pのときには(ステップ108)、タッチ位置が操作ボタンのエリア内にあるとき、処理Cを実行するするとともに(ステップ108)、駆動2(図7)を実行する(ステップ110)こと、そして、段落【0049】の記載によれば、制御部は、P2≦Pと判定したときには、駆動モータを回転制御して、図2(c)に示す状態とする(これを、駆動2という)こと、さらに、段落【0058】には、処理Cは、操作ボタンに対しては、その決定処理に相当するものであり、このとき同時に実行される駆動2は、表示画面2をガタンと大きくさらに押し込むものである。従って、表示画面で表示される操作ボタンで実行操作を行なうと、これと同時に表示画面が押し込まれるように動作するものであるから、ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得ることができことが記載されている。

したがって、引用例には、さらに、制御部は、P2≦Pのときには、指先のタッチ位置が操作ボタンのエリア内にあるとき、決定処理に相当する処理Cを実行するするとともに、駆動モータを回転制御して駆動2を実行し、表示画面を大きく下げて、ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得ることができることが記載されているといえる。


したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「表示パネルと、タッチパネルと、駆動モータとリンク機構からなり、
表示パネルとタッチパネルで表示画面を形成し、該表示画面に、操作ボタンやメッセージなどのタッチ操作できるタッチ操作部材が表示され、該タッチ操作部材をタッチ操作することにより、該タッチ操作部材の機能が実行され、
駆動モータとリンク機構から移動機構を構成し、該移動機構によって前記表示画面をタッチパネルへの指先による圧力に応じて引っ込めるように移動でき、
タッチパネルはタッチセンサと圧力センサからなり、
さらに、タッチセンサの検出出力と圧力センサの検出圧力Pとが供給される制御部と、記憶部、とを有し、
該制御部は、検出出力Pと、予め設定されている圧力値P1、P2、及び記憶部に記憶されているデータを基に、表示パネル、駆動モータを制御する、タッチパネルを備えた表示装置において、
制御部は、タッチ操作部材が操作ボタンの際に、タッチパネルへの指先のタッチ操作がなされ、圧力センサの検出圧力PがP1≦P<P2となるとタッチパネルへのタッチがされたと判断し、指先のタッチ位置を検出し、これを記憶部のデータと比較して、操作ボタンの表示エリア(以下、操作ボタンエリアという)内にあるかどうかを判定し、表示画面で操作ボタンエリア内にタッチ位置があるときには、まず、処理Bとして操作ボタンの色が変化し、
さらに、P2≦Pのときには、指先のタッチ位置が操作ボタンのエリア内にあるとき、決定処理に相当する処理Cを実行するするとともに、駆動モータを回転制御して駆動2を実行し、表示画面を大きく引っ込め、ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得ることができる、
タッチパネルを備えた表示装置。」


4.対比・判断

a)引用発明の「タッチパネルを備えた表示装置」は、表示画面のタッチ操作部材をタッチ操作することにより、該タッチ操作部材の機能を実行するものであり、タッチ操作は入力操作といえ、引用発明の「タッチパネルを備えた表示装置」は、本願発明の「入力装置」に相当する。

b)引用発明の「タッチセンサ」、「圧力センサ」、及び「表示パネル」は、本願発明の「タッチセンサ」、「荷重検出部」、及び「表示部」に相当する。

c)引用発明の「駆動モータとリンク機構から移動機構を構成し、該移動機構によって前記表示画面をタッチパネルへの指先による圧力に応じて引っ込めるように移動でき」において、表示画面は表示パネルとタッチパネルで構成され、さらに、タッチパネルはタッチセンサと圧力センサからなっており、移動機構はタッチセンサを駆動するものと認められる。
また、引用発明の「駆動モータを回転制御して駆動2を実行し、表示画面をガタンと大きくさらに引っ込め、ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得ることができる」における駆動モータは、移動機構を構成するものであり、表示画面の引っ込みは移動機構が行っているものと認められ、さらに、引っ込みによって「ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得ることができる」ものであるから、移動機構は引っ込みによって指先に感覚を呈示しているといえる。
したがって、引用発明の「移動機構」と、本願発明の「タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部」は、「前記タッチセンサのタッチ面を駆動させる感覚呈示部」で共通する。

d)引用発明の「制御部は、タッチ操作部材が操作ボタンの際に、タッチパネルへの指先のタッチ操作がなされ、圧力センサの検出圧力PがP1≦P<P2となるとタッチパネルへのタッチがされたと判断し、指先のタッチ位置を検出し、これを記憶部のデータと比較して、操作ボタンの表示エリア(以下、操作ボタンエリアという)内にあるかどうかを判定し、表示画面で操作ボタンエリア内にタッチ位置があるときには、まず、処理Bとして操作ボタンの色が変化し」は、表示画面の操作ボタンを指先で押しタッチパネへの圧力がP≧P1であると、表示画面の操作ボタンの色を変えることであり、表示画面の操作ボタンが指先で押すことは入力操作であるから、引用発明の「制御部は、圧力センサの検出圧力PがP≧P1となるとタッチパネルへのタッチがされたと判断し、指先のタッチ位置を検出し、これを記憶部のデータと比較して、操作ボタンの表示エリア(以下、操作ボタンエリアという)内にあるかどうかを判定し、表示画面で操作ボタンエリア内にタッチ位置があるときには、まず、処理Bとして操作ボタンの色が変化」は、本願発明の「タッチ面に対する入力により、表示画像が変化」に相当する。
さらに、引用発明の「さらに、P2≦Pのときには、タッチ位置が操作ボタンのエリア内にあるとき、決定処理に相当する処理Cを実行するするとともに、駆動モータを回転制御して駆動2を実行し、表示画面をガタンと大きくさらに引っ込め、ハード構成のスイッチを押し込み操作したのと同様の感触を得る」は、制御部が圧操作ボタンの色が変化している状態で、さらに、圧力センサの検出圧力PがP2≦Pのときに、上記c)にも記したように、移動機構によって表示画面の引っ込みを行い、該引っ込みによって感覚を指先に呈示するものであり、P2は感覚を呈示する荷重基準といえ、タッチパネルは指先で押されており、指先が押圧対象といえる。
したがって、引用発明の「制御部」と、本願発明の「制御部」は、「タッチ面に対する入力により、表示画像が変化しているときに、荷重検出部が感覚を呈示する荷重基準を満たす押圧荷重を検出すると、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して感覚を呈示するように前記感覚呈示部を制御する制御部」で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

「タッチセンサと、
前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、
表示部と、
前記タッチセンサのタッチ面を駆動させる感覚呈示部と、
前記タッチ面に対する入力により、表示画像が変化しているときに、前記荷重検出部が感覚を呈示する荷重基準を満たす押圧荷重を検出すると、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して感覚を呈示するように前記感覚呈示部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。」


(相違点)
制御部と感覚呈示部による感覚の呈示が、本願発明では、タッチ面を振動させるものであるのに対して、引用発明では、タッチ面を引っ込めるものである点。


以下、上記相違点について検討する。
(相違点)に関して
引用例の段落【0006】?【0010】の記載から理解される引用発明が解決しようとした課題に照らせば、引用発明における「感覚の呈示」がタッチ面を引っ込めるというものである必要はなく、操作者がタッチしたことを認識できるものであればどのようなものでもよいことは、明らかである。
一方、タッチ面に対するタッチ入力が受け入れられたことを示すフィードバックの感覚として、タッチセンサを振動させて、操作者の指先に対して触感を呈示することは、出願人も従来例として記載するように常套手段である。
してみれば、引用発明の「感覚の呈示」を「タッチ面を引っ込める」に代え「振動」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の効果も、引用発明から想到される構成から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび

以上によれば、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
したがって、本願は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-13 
結審通知日 2015-04-14 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2009-248161(P2009-248161)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正和  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
和田 志郎
発明の名称 入力装置  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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