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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1302210
審判番号 不服2012-21804  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-05 
確定日 2015-06-17 
事件の表示 特願2008-517033「無線装置上のファームウェア照合を管理するための装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日国際公開、WO2006/135905、平成20年12月25日国内公表、特表2008-547092〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2006年6月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年6月13日(以下,「優先日」という。),アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成19年12月13日付けで特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され,平成20年2月13日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出され,同日付けで審査請求がなされ,平成23年6月8日付けで拒絶理由通知(同年6月14日発送)がなされ,同年11月11日付けで誤訳訂正書が提出され,同年11月14日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年12月20日付けで最後の拒絶理由通知(平成24年1月10日発送)がなされ,平成24年6月11日付けで誤訳訂正書及び意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,同年6月28日付けで拒絶査定(同年7月3日謄本送達)がなされたものである。
これに対して,「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成24年11月5日付けで本件審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされた。
そして,平成24年11月26日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,平成25年3月18日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年3月26日発送)
がなされ,同年9月25日付けで回答書の提出がなされ,平成26年4月24日付けで当審により拒絶理由通知(同年5月7日発送)がなされ,同年8月7日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年9月9日付けで当審により最後の拒絶理由通知(同年9月16日発送)がなされ,同年12月16日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされた。


第2 平成26年12月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年12月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成26年12月16日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成26年8月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4の記載

「 【請求項1】
ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設するべく、無線通信装置を動作可能にするデータおよびプログラム・コードを含むファームウェアを有するコンピュータプラットフォームと、
ファームウェアの整合性を示し、無線通信装置における情報ログに記憶される照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能で、前記照合コンフィグレーションは、どのくらいの頻度で情報ログにどの情報を集めるべきであるか指示するトラッキング・パラメータを含み、生成された照合試験結果を記録する指示を含む、ファームウェア照合モジュールとを備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアのバージョンを変更しないようにするべく予め定義したファームウェアバージョン、予め定義したファームウェアサイズおよび予め定義した日付のうち少なくとも1つを含む所定の照合結果を備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合結果と前記生成された照合試験結果とを比較するよう動作可能である無線通信装置。
【請求項2】
前記照合コンフィグレーションは、照合スキームを備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記照合試験結果を生成するべく前記照合スキームを実行するよう動作可能である請求項1の装置。
【請求項3】
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記生成された照合試験結果を他の装置へ送信するよう動作可能である請求項2の装置。
【請求項4】
前記ファームウェア照合モジュールは、無線網を介して前記生成された照合試験結果を他の装置へ送信するよう動作可能である請求項3の装置。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設するべく、無線通信装置を動作可能にするデータおよびプログラム・コードを含むファームウェアを有するコンピュータプラットフォームと、
ファームウェアの整合性を示し、無線通信装置における情報ログに記憶される照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能で、前記照合コンフィグレーションは、どのくらいの頻度で情報ログにどの情報を集めるべきであるか指示するトラッキング・パラメータを含み、生成された照合試験結果を記録する指示を含む、ファームウェア照合モジュールと
を備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアのバージョンを変更しないようにするべく予め定義したファームウェアバージョン、予め定義したファームウェアサイズおよび予め定義した日付のうち少なくとも1つを含む所定の照合試験結果を備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合試験結果と前記生成された照合試験結果とを比較し、前記ファームウェアの整合性は、ファームウェアが変更されない、または変更されていることを指示する、無線通信装置。
【請求項2】
前記照合コンフィグレーションは、照合スキームを備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記照合試験結果を生成するべく前記照合スキームを実行するよう動作可能である請求項1の装置。
【請求項3】
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記生成された照合試験結果を他の装置へ送信するよう動作可能である請求項2の装置。
【請求項4】
前記ファームウェア照合モジュールは、無線網を介して前記生成された照合試験結果を他の装置へ送信するよう動作可能である請求項3の装置。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお,下線は,補正箇所を示すものとして,出願人が付与したものである。)

に補正することを含むものである。

そして,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的として,本件補正前の請求項1に記載されている「照合結果」を「照合試験結果」に訂正するとともに,本件補正前の請求項1記載の発明を特定するための事項(以下,「発明特定事項」という。)であるところの「ファームウェア照合モジュール」について、「前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合結果と前記生成された照合試験結果とを比較する」を,より下位の「前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合試験結果と前記生成された照合試験結果とを比較し、前記ファームウェアの整合性は、ファームウェアが変更されない、または変更されていることを指示する」に限定するものであり,この限定によって,本件補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

したがって,本件補正は,請求項1に記載した発明特定事項を限定するものであって,その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下,「限定的減縮」という。)に該当し,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる事項を目的とするものを含むと解することができる。

2 独立特許要件

以上のように,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)は,補正前の請求項1に対して,限定的減縮を行ったものと認められる。そこで,本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記「1 補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設するべく、無線通信装置を動作可能にするデータおよびプログラム・コードを含むファームウェアを有するコンピュータプラットフォームと、
ファームウェアの整合性を示し、無線通信装置における情報ログに記憶される照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能で、前記照合コンフィグレーションは、どのくらいの頻度で情報ログにどの情報を集めるべきであるか指示するトラッキング・パラメータを含み、生成された照合試験結果を記録する指示を含む、ファームウェア照合モジュールと
を備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアのバージョンを変更しないようにするべく予め定義したファームウェアバージョン、予め定義したファームウェアサイズおよび予め定義した日付のうち少なくとも1つを含む所定の照合試験結果を備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合試験結果と前記生成された照合試験結果とを比較し、前記ファームウェアの整合性は、ファームウェアが変更されない、または変更されていることを指示する、無線通信装置。」

(2)引用文献

(2-1)引用文献1

ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,上記平成26年9月9日付けの当審による拒絶理由通知において引用された文献である,米国特許出願公開2004/0103347号明細書(2004年5月27日公開。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「[0007] A network connection device is any apparatus that may be used to connect network components together. For instance, a network connection device may comprise a modem, including, but not limited to dial-up modems, cable modems, digital subscriber line (DSL) modems, wireless modem and the like. Network connection devices (NCDs) often derive much of their functionality from firmware stored in non-volatile memory. Examples of non-volatile memory include, but should not be limited to flash memory and electrically-erasable programmable read-only-memory (EEPROM). This type of memory may be characterized as semi-permanent because its state does not change when power is removed from the memory module. If the firmware becomes corrupted for any reason, then an NCD normally would not be able to function.」
(当審訳:[0007]ネットワーク接続装置は,互いにネットワーク・コンポーネントを接続するために使用され得る装置である。例えば,ネットワーク接続装置はモデムを含むが,ダイヤルアップモデム,ケーブルモデム,デジタル加入者回線(DSL)モデム,無線モデムなど限定されない。ネットワーク接続装置(NCD)は,多くの場合,不揮発性メモリに格納されたファームウェアから,それらの機能の多くを引き出す。不揮発性メモリの例としては,フラッシュメモリやEEPROMに限定されるべきではない。メモリモジュールの電源を切っても,その状態は変化しないので,この種のメモリは,半永続的なものとして特徴付けることができる。ファームウェアが何らかの理由で壊れた場合は,NCDは正常に機能することができない。)

B 「[0010] In order to determine if the firmware stored in the NCD's semi-permanent memory has been corrupted, one variation of the present method provides for calculating a check sum for the firmware. Once the check sum is calculated, it may be compared to a pre-established value. If the comparison is successful, it may be inferred that the firmware has not been corrupted. Otherwise, the firmware may be considered "corrupted".」
(当審訳:[0010]NCDの半永続的メモリに格納されたファームウェアが破損しているかどうかを決定するために,本発明の一形態は,ファームウェアのチェックサムを計算する方法を提供する。チェックサムが計算されると,それは事前に用意された値と比較することができる。比較が成功した場合,それはファームウェアが破損していないことが推論できる。そうでなければ,ファームウェアは,「破損した」と見なすことができる。)

C 「[0013] The present invention further comprises a network connection device. Said network connection device may comprise a firmware integrity checker, a firmware update unit and an execution unit. According to this embodiment of the invention, functional features exhibited by an NCD are typically defined by firmware stored in semi-permanent memory. When the NCD begins operating, the firmware integrity checker tests the integrity of the firmware stored in the semi-permanent memory. The firmware integrity checker may generate a firmware fault signal if it discovers that the firmware has been corrupted. According to one example embodiment, the firmware integrity checker may comprise a check sum computation unit and a comparison unit. In operation, the check sum computation unit may retrieve the firmware image from a semi-permanent memory and generate a check sum. The comparison unit may receive a pre-established check sum value that it may compare against the check sum generated by the check sum computation unit. The comparison unit may then generate a firmware fault signal if the comparison is unsuccessful.」
(当審訳:[0013]本発明は,ネットワーク接続装置を含む。該ネットワーク接続装置は,ファームウェア整合性チェッカ,ファームウェア更新部および実行部を備えていてもよい。本発明の実施形態によれば,NCDが示す機能的特徴は,典型的には,半永続的なメモリに格納されたファームウェアによって定義される。 NCDが動作を開始すると,ファームウェア整合性チェッカは半永続的メモリに格納されているファームウェアの整合性をテストする。ファームウェアが破損していることを発見した場合,ファームウェア整合性チェッカは,ファームウェア故障信号を生成することができる。一実施例によると,ファームウェア整合性チェッカは,チェックサム演算部と,比較部を含むことができる。動作時には,チェックサム演算部は,半永続的メモリからファームウェアイメージを取得し,チェックサムを生成してもよい。比較部は,チェックサム演算部によって生成されたチェックサムと比較するための事前に用意されたチェックサム値を受信してもよい。比較が失敗した場合,比較部は,ファームウェア故障信号を生成することができる。)

イ ここで,上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「a network connection device may comprise a modem・・・wireless modem and the like(ネットワーク接続装置はモデムを含む・・・無線モデムなど)」,「Network connection devices (NCDs) often derive much of their functionality from firmware stored in non-volatile memory. Examples of non-volatile memory include・・・flash memory・・・This type of memory may be characterized as semi-permanent(ネットワーク接続装置(NCD)は,多くの場合,不揮発性メモリに格納されたファームウェアから,それらの機能の多くを引き出す。不揮発性メモリの例としては,フラッシュメモリ・・・この種のメモリは,半永続的なものとして特徴付けることができる)」との記載,上記Bの「the firmware stored in the NCD's semi-permanent memory(NCDの半永続的メモリに格納されたファームウェア)」との記載,上記Cの「network connection device may comprise a firmware integrity checker・・・and an execution unit(ネットワーク接続装置は,ファームウェア整合性チェッカ・・・および実行部を備えていてもよい)」との記載からすると,引用文献1には,
“無線モデム(wireless modem)と,実行部(execution unit)と,ファームウェアを格納したフラッシュメモリ等の半永続的メモリ(semi-permanent memory)と,ファームウェア整合性チェッカ(firmware integrity checker)とを備えたネットワーク接続装置(NCD)”
が記載されていると解される。

(イ)上記Cの「the firmware integrity checker may comprise a check sum computation unit and a comparison unit(ファームウェア整合性チェッカは,チェックサム演算部と,比較部を含むことができる)」との記載からすると,引用文献1には,
“ファームウェア整合性チェッカは,チェックサム演算部(check sum computation unit)と,比較部(comparison unit)”を備える態様
が記載されていると解される。

(ウ)上記Cの「the check sum computation unit may retrieve the firmware image from a semi-permanent memory and generate a check sum(チェックサム演算部は,半永続的メモリからファームウェアイメージを取得し,チェックサムを生成してもよい)」との記載からすると,引用文献1には,
“チェックサム演算部は,半永続的メモリからファームウェアイメージを取得し,チェックサムを生成”する態様
が記載されていると解される。

(エ)上記Bの「Once the check sum is calculated, it may be compared to a pre-established value(チェックサムが計算されると、それは事前に用意された値と比較することができる)」との記載,上記Cの「The comparison unit may receive a pre-established check sum value that it may compare against the check sum generated by the check sum computation unit. The comparison unit may then generate a firmware fault signal if the comparison is unsuccessful(比較部は,チェックサム演算部によって生成されたチェックサムと比較するための事前に用意されたチェックサム値を受信してもよい。比較が失敗した場合,比較部は,ファームウェア故障信号を生成することができる)」との記載からすると,引用文献1には,
“比較部は,生成されたチェックサムと,事前に用意されたチェックサム値(pre-established check sum value)とを比較し,比較の結果,両者が一致しなければ,故障信号(fault signal)を生成する”態様
が記載されていると解される。

ウ 以上,(ア)ないし(エ)で指摘した事項を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「無線モデムと,実行部と,ファームウェアを格納したフラッシュメモリ等の半永続的メモリと,ファームウェア整合性チェッカとを備えたネットワーク接続装置(NCD)であって,
前記ファームウェア整合性チェッカは,チェックサム演算部と,比較部を備え,
前記チェックサム演算部は,前記半永続的メモリからファームウェアイメージを取得し,チェックサムを生成し,
前記比較部は,前記生成されたチェックサムと,事前に用意されたチェックサム値とを比較し,比較の結果,両者が一致しなければ,故障信号を生成する
ネットワーク接続装置(NCD)。」

(2-2)引用文献2

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,上記平成26年9月9日付けの当審による拒絶理由通知において引用された文献である,特開2001-265217号公報(平成13年9月28日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

D 「【0024】また、制御手段10であるプログラムは、任意の検査タイミングで、例えば、数分おき、数時間おき、毎日所定時刻、数日おきなどのタイミングで、監視対象となっているウエブサーバにアクセスし、所定のデジタルコンテンツ(ウエブページ)のコンテンツファイル51を記憶手段2にダウンロードし、当該コンテンツファイル51の要約値を要約値算出手段11によって算出するステップを有する。すなわち、比較対象となる検査時に係るコンテンツファイル51の要約値を算出するものである。」

(2-3)引用文献3

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,上記平成26年9月9日付けの当審による拒絶理由通知において引用された文献である,特開平9-265385号公報(平成9年10月7日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

E 「【請求項1】実行プログラムに、バージョン番号、日付等のデータを含めさせる手段と、バージョン番号、日付等のデータを持つバージョンチェックプログラムを作成する手段と、バージョンチェックプログラムが持つバージョン情報と実行プログラムに持たせたバージョン情報を検査し、それぞれが異なる場合、警告メッセージを表示させる手段とを備えたことを特徴とするソフトウェア整合性管理方法。」

(2-4)引用文献4

本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,上記平成26年9月9日付けの当審による拒絶理由通知において引用された文献である,特開2003-50732号公報(平成15年2月21日出願公開。以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「【請求項6】 前記監視ステップにおいて、
前記コンテンツを構成するファイルの、更新日時の変化、サイズの変化または数の変化の少なくとも一つを監視することにより、不当なコンテンツ改竄を検知するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の公開コンテンツ改竄対処方法。」

(3)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「ネットワーク接続装置(NCD)」が「無線モデム」を備えていることから、引用発明の「ネットワーク接続装置(NCD)」は、本件補正発明の「無線通信装置」に対応するといえる。


(ア)引用発明において,無線モデムを備えているネットワーク接続装置(NCD)の「ファームウェア」が、ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設する機能を有することは、当業者にとって自明の事項である。また、「ファームウェア」が、データおよびプログラム・コードを含むことも、自明の事項である。
(イ)してみると、引用発明の「無線モデムと,実行部と,ファームウェアを格納したフラッシュメモリ等の半永続的メモリ」は、本件補正発明の「ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設するべく、無線通信装置を動作可能にするデータおよびプログラム・コードを含むファームウェアを有するコンピュータプラットフォーム」に相当するといえる。


(ア)引用発明の「チェックサム」は、ファームウェアの整合性を確認するために用いられていることから、本件補正発明の「照合試験結果」に相当する。
(イ)引用発明の「チェックサム演算部」は,ファームウェアの整合性を確認するために用いられるチェックサムを生成するものであることから,本件補正発明の「照合コンフィグレーション」に相当する。
(ウ)引用発明の「ファームウェア整合性チェッカ」は、チェックサム演算部を含むものであるから,本件補正発明の「ファームウェア照合モジュール」に対応するといえる。
(エ)してみると,引用発明の「半永続的メモリからファームウェアイメージを取得し,チェックサムを生成」する「チェックサム演算部」「を備え」る「ファームウェア整合性チェッカ」と,本件補正発明の「ファームウェアの整合性を示し、無線通信装置における情報ログに記憶される照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能で、前記照合コンフィグレーションは、どのくらいの頻度で情報ログにどの情報を集めるべきであるか指示するトラッキング・パラメータを含み、生成された照合試験結果を記録する指示を含む、ファームウェア照合モジュール」とは,“ファームウェアの整合性を示す照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能であるファームウェア照合モジュール”である点で共通する。


(ア)引用発明の「事前に用意されたチェックサム値」及び「生成されたチェックサム」は,それぞれ,本件補正発明の「所定の照合試験結果」及び「生成された照合試験結果」に相当する。
(イ)引用発明において,チェックサムの比較は,ファームウェアの変更の有無を確認するために行われているものであるから,引用発明の「比較の結果,両者が一致しなければ,故障信号を生成する」とは,ファームウェアが変更されない,または変更されていることを指示することに他ならない。
(ウ)してみると,引用発明の「前記ファームウェア整合性チェッカは」「比較部を備え,」「前記比較部は,前記生成されたチェックサムと,事前に用意されたチェックサム値とを比較し,比較の結果,両者が一致しなければ,故障信号を生成する」ことは,本件補正発明の「前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合試験結果と前記生成された照合試験結果とを比較し、前記ファームウェアの整合性は、ファームウェアが変更されない、または変更されていることを指示する」ことに相当するといえる。

オ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

「ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設するべく,無線通信装置を動作可能にするデータおよびプログラム・コードを含むファームウェアを有するコンピュータプラットフォームと,
ファームウェアの整合性を示す照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能であるファームウェア照合モジュールと
を備え,
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合試験結果と前記生成された照合試験結果とを比較し、前記ファームウェアの整合性は、ファームウェアが変更されない、または変更されていることを指示する,無線通信装置。」

(相違点1)

本件補正発明が、生成した照合試験結果を「情報ログに記憶」するものであるのに対して、引用発明は、生成したチェックサムをメモリ等に記憶することについて、特に明記されていない点。

(相違点2)

ファームウェアの整合性を行うタイミングに関して、本件補正発明が、「どのくらいの頻度で情報ログにどの情報を集めるべきであるか指示するトラッキング・パラメータを含」むものであるのに対し、引用発明は、どのようなタイミングでファームウェアの整合性を行うのかについて、特に明記されていない点。

(相違点3)

ファームウェアの整合性の照合に関して、本件補正発明が、「前記ファームウェアのバージョンを変更しないようにするべく予め定義したファームウェアバージョン、予め定義したファームウェアサイズおよび予め定義した日付のうち少なくとも1つを含む所定の照合」を行うものであるのに対して、引用発明は、ファームウェアの「チェックサム」を計算することによって、ファームウェアの整合性の照合を行うものである点。

(4)判断

上記相違点1ないし相違点3について検討する。

ア 相違点1について

情報処理の技術分野において、生成した情報をメモリ等に記憶することは、引用文献等を示すまでもなく、従来から当業者が普通に採用している常とう手段であり、引用発明においても、生成したチェックサムを必要に応じて適宜メモリ等に記憶するように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

(ア)情報処理の技術分野において、ファームウェア等のソフトウェアの整合性確認をどのようなタイミングで行うかについては、使用するシステム環境等に応じて、当業者が適宜定め得る設計的事項にすぎない。
(イ)そして、上記引用文献2(上記D等参照)にも記載されるように、例えば、「毎日所定時刻」に整合性確認を行うことも、本願優先日前に普通に行われていたことにすぎない。そして、「毎日所定時刻」に整合性確認を行う際に、当該時刻を示す何らかのパラメータ(本件補正発明の「トラッキング・パラメータ」に相当)を保持することも、当業者には自明の事項である。
(ウ)してみると、引用発明においても、何らかのパラメータを保持し、どのくらいの頻度で整合性確認を行うかを指示するように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について

(ア)データ又はソフトウェアの整合性又は同一性を照合する際に、バージョン、サイズ、日付等の属性を利用して確認することは、上記引用文献3(上記E等参照)及び上記引用文献4(上記F等参照)にも記載されているように、本願優先日前に当該技術分野において、通常行われていたことにすぎない。
(イ)してみると、引用発明の「チェックサム」に替えて、バージョン、サイズ、日付のうち少なくとも1つを用いて判定するように構成すること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 小括

上記で検討したごとく,相違点1ないし相違点3に係る構成は,いずれも当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび

以上のように,上記「2 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1 本願発明の認定

平成26年12月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年8月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「ネットワーク上でデータを送受信するべく通信コネクションを開設するべく、無線通信装置を動作可能にするデータおよびプログラム・コードを含むファームウェアを有するコンピュータプラットフォームと、
ファームウェアの整合性を示し、無線通信装置における情報ログに記憶される照合試験結果を生成する照合コンフィグレーションを実行するように動作可能で、前記照合コンフィグレーションは、どのくらいの頻度で情報ログにどの情報を集めるべきであるか指示するトラッキング・パラメータを含み、生成された照合試験結果を記録する指示を含む、ファームウェア照合モジュールとを備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアのバージョンを変更しないようにするべく予め定義したファームウェアバージョン、予め定義したファームウェアサイズおよび予め定義した日付のうち少なくとも1つを含む所定の照合結果を備え、
前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合結果と前記生成された照合試験結果とを比較するよう動作可能である無線通信装置。」

2 引用文献

引用文献及びその記載事項は,前記「第2 平成26年12月16日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件」の「(2)引用文献」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は,前記「第2 平成26年12月16日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件」で検討した本件補正発明における「前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合試験結果と前記生成された照合試験結果とを比較し、前記ファームウェアの整合性は、ファームウェアが変更されない、または変更されていることを指示する、」の下線部の限定を省き,「前記ファームウェア照合モジュールは、前記ファームウェアの整合性を決めるべく前記所定の照合結果と前記生成された照合試験結果とを比較する」としたものである。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,
上記「第2 平成26年12月16日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2 独立特許要件」の「(3)対比」及び「(4)判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-14 
結審通知日 2015-01-20 
審決日 2015-02-02 
出願番号 特願2008-517033(P2008-517033)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G06F)
P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 田中 秀人
小林 大介
発明の名称 無線装置上のファームウェア照合を管理するための装置および方法  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井関 守三  
代理人 砂川 克  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 峰 隆司  
代理人 竹内 将訓  
代理人 野河 信久  
代理人 福原 淑弘  
代理人 白根 俊郎  
代理人 岡田 貴志  
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