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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1302417
審判番号 不服2013-20885  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-25 
確定日 2015-06-24 
事件の表示 特願2011-525154「無線送電のための受動受信機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月 4日国際公開、WO2010/025156、平成24年 1月12日国内公表、特表2012-501160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009年8月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年8月25日 米国(US),2008年11月25日 米国(US),2009年3月18日 米国(US),2009年3月18日 米国(US),2009年5月4日 米国(US),2009年6月19日 米国(US),2009年8月24日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成25年6月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年10月25日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同日付けで手続補正がなされたが、当審により平成26年7月4日付けで、平成25年10月25日付け手続補正についての補正の却下の決定(発送日平成26年7月22日)がなされると共に、同日付けで最後の拒絶理由が通知され(発送日平成26年7月8日)、これに対し、平成26年10月8日に付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.平成26年10月8日付の手続補正についての補正の却下の決定。
[補正の却下の決定の結論]
平成26年10月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、平成25年4月3日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりである。

「【請求項1】
無線送電受信機であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、前記出力は、第1の電圧である、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、前記第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給するように構成される、無線送電受信機。
【請求項2】
前記整流器回路は、デュアルダイオード全波整流器回路として構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記整流器回路は、前記第1の電圧の前記RMS値の半分である値で前記第2の電圧を供給するように構成される請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、そのループ端子のうちの1つにおいて接地に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項5】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、高周波チョークを用いて接地に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項6】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、接地に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項7】
前記整流器回路は、高周波チョークを含み、前記共振器は、誘導ループを含み、前記高周波チョークは、前記誘導ループと接地との間に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項8】
前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードを含み、前記共振器は、誘導ループを含み、前記少なくとも1つのダイオードは、前記誘導ループと接地との間に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項9】
前記整流器回路は、第1及び第2のダイオードを含み、前記共振器は、誘導ループを含み、前記第1及び第2のダイオードは、前記誘導ループと接地との間に結合され、前記整流器回路は、前記第1及び第2のダイオードと電気的に直列に各々結合された第1と第2の高周波チョークをさらに含む請求項2に記載の受信機。
【請求項10】
前記整流器回路は、前記誘導ループがその対称ポイントにおいて接地に結合された対称的クワッドダイオード全波整流器回路として構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項11】
前記整流器回路は、前記第1の電圧の前記RMS値の4分の1である値で前記第2の電圧を供給するように構成される請求項10に記載の受信機。
【請求項12】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、高周波チョークを用いて接地に結合される請求項10に記載の受信機。
【請求項13】
前記整流器回路は、高周波チョークを含み、前記共振器は、ループインダクタを含み、前記高周波チョークは、前記ループインダクタと接地との間に結合される請求項10に記載の受信機。
【請求項14】
前記共振器は、ダブルターン誘導ループを含み、前記ダブルターン誘導ループは、その対称ポイントにおいて接地に結合される請求項10に記載の受信機。
【請求項15】
前記共振器は、キャパシタを含み、前記整流器回路は、前記キャパシタと電気的に並列に結合された少なくとも第1及び第2のダイオードを含む請求項1に記載の受信機。
【請求項16】
前記受信アンテナは、送信機の電磁的な近傍界(electromagnetic near-field)の領域から電力を受信するように構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項17】
前記整流器回路は、複数の入力を含み、前記受信機が前記複数の入力のそれぞれのために複数のフィルタをさらに含む請求項1に記載の受信機。
【請求項18】
前記整流器回路は、前記整流器回路により生成される高調波信号を抑止するように構成されたシールドを含む請求項1に記載の受信機。
【請求項19】
前記シールドは、高周波(HF)シールド又は極超短波(UHF)フェライトビード又はフィードスルーキャパシタ(feed through capacitor)の少なくとも1つを含む請求項18に記載の受信機。
【請求項20】
前記整流器回路は、第1のキャパシタ及び前記第1のキャパシタに並列に接続された第2のキャパシタを含み、前記整流器回路は、前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタに直列に接続された第1のダイオード及び第2のダイオードをさらに含む請求項1に記載の受信機。
【請求項21】
無線送電受信機を備える電子デバイスであって、前記無線送電受信機が、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、前記出力は、第1の電圧である、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を含み、前記整流器回路は、前記第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給するように構成される、電子デバイス。
【請求項22】
前記受信アンテナは、送信機の電磁的な近傍界の領域から電力を受信するように構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項23】
前記整流器回路は、複数の入力を含み、前記受信機は、前記複数の入力のそれぞれのために複数のフィルタをさらに含む請求項1に記載の受信機。
【請求項24】
前記整流器回路は、前記整流器回路により生成される高調波信号を抑止するように構成されたシールドを含む請求項1に記載の受信機。
【請求項25】
前記シールドは、高周波(HF)シールド又は極超短波(UHF)フェライトビード又はフィードスルーキャパシタ(feed through capacitor)の少なくとも1つを含む請求項18に記載の受信機。
【請求項26】
前記整流器回路は、第1のキャパシタ及び前記第1のキャパシタに並列に接続された第2のキャパシタを含み、前記整流器回路が前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタに直列に接続された第1のダイオード及び第2のダイオードをさらに含む請求項1に記載の受信機。
【請求項27】
電磁界を介して電力を受信するための方法であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで前記電磁界から電力を、並列の同調された共振器により、受信することと、前記並列の同調された共振器が出力を有し、前記出力が第1の電圧であり、
前記並列の同調された共振器によって受信された電力を、前記共振器と前記負荷との間に結合された整流器回路により、整流すること、とを備え、前記整流器回路が前記第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する、無線電力を受信するための方法。
【請求項28】
電力を整流することは、デュアルダイオード全波整流器回路として構成された整流器回路で電流を整流することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
電力を整流することは、対称的クアッドダイオード全波整流器回路として構成された整流器回路で電流を整流することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
受信することは、送信機の電磁的な近傍界の領域で共振することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記共振器により受信された前記電力を整流することによって生じる高調波信号を抑止することをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項32】
無線送電受信機であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するための手段と、前記手段が出力を有し、前記出力が第1の電圧であり、
前記電力を受信するための手段により受信された電力を整流するための手段と、を備え、前記整流するための手段が前記第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する無線送電受信機。
【請求項33】
前記電力を受信するための手段は、共振器を含む受信アンテナを備え、前記電力を整流するための手段が整流器回路を備える請求項32に記載の受信機。
【請求項34】
前記受信アンテナは、送信機の電磁的な近傍界の領域から電力を受信するように構成されている請求項32に記載の受信機。
【請求項35】
前記電力を受信するための手段により受信された前記電力を整流するための手段によって生じる高調波信号を抑止するための手段をさらに備える請求項32の受信機。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
無線送電受信機であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、前記出力は、第1の電圧である、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記共振器と前記負荷との間に直列に接続され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷に提供するように構成される、無線送電受信機。
【請求項2】
前記整流器回路は、デュアルダイオード全波整流器回路として構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記整流器回路は、前記第1の電圧の前記RMS値の半分である値で前記第2の電圧を供給するように構成される請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、そのループ端子のうちの1つにおいて接地に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項5】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、前記高周波チョークを用いて接地に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項6】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、接地に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項7】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記少なくとも1つのダイオードは、前記誘導ループと接地との間に結合される請求項2に記載の受信機。
【請求項8】
前記整流器回路は、第1及び第2のダイオードを含み、前記共振器は、誘導ループを含み、前記第1及び第2のダイオードは、前記誘導ループと接地との間に結合され、前記整流器回路は、前記第1及び第2のダイオードと電気的に直列に各々結合された第1と第2の高周波チョークをさらに含む請求項2に記載の受信機。
【請求項9】
前記整流器回路は、前記誘導ループがその対称ポイントにおいて接地に結合された対称的クワッドダイオード全波整流器回路として構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項10】
前記整流器回路は、前記第1の電圧の前記RMS値の4分の1である値で前記第2の電圧を供給するように構成される請求項9に記載の受信機。
【請求項11】
前記共振器は、誘導ループを含み、前記誘導ループは、前記高周波チョークを用いて接地に結合される請求項9に記載の受信機。
【請求項12】
前記共振器は、ループインダクタを含み、前記高周波チョークは、前記ループインダクタと接地との間に結合される請求項9に記載の受信機。
【請求項13】
前記共振器は、ダブルターン誘導ループを含み、前記ダブルターン誘導ループは、その対称ポイントにおいて接地に結合される請求項9に記載の受信機。
【請求項14】
前記共振器は、キャパシタを含み、前記整流器回路は、前記キャパシタと電気的に並列に結合された少なくとも第1及び第2のダイオードを含む請求項1に記載の受信機。
【請求項15】
前記受信アンテナは、送信機の電磁的な近傍界(electromagnetic near-field)の領域から電力を受信するように構成される請求項1に記載の受信機。
【請求項16】
前記整流器回路は、複数の入力を含み、前記受信機が前記複数の入力のそれぞれのために複数のフィルタをさらに含む請求項1に記載の受信機。
【請求項17】
前記整流器回路は、前記整流器回路により生成される高調波信号を抑止するように構成されたシールドを含む請求項1に記載の受信機。
【請求項18】
前記シールドは、高周波(HF)シールド又は極超短波(UHF)フェライトビード又はフィードスルーキャパシタ(feed through capacitor)の少なくとも1つを含む請求項17に記載の受信機。
【請求項19】
前記整流器回路は、第1のキャパシタ及び前記第1のキャパシタに並列に接続された第2のキャパシタを含み、前記整流器回路は、前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタに直列に接続された第1のダイオード及び第2のダイオードをさらに含む請求項1に記載の受信機。
【請求項20】
無線送電受信機を備える電子デバイスであって、前記無線送電受信機が、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、前記出力は、第1の電圧である、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を含み、前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記共振器と前記負荷との間に直列に接続され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷に提供するように構成される、電子デバイス。
【請求項21】
前記受信アンテナは、送信機の電磁的な近傍界の領域から電力を受信するように構成される請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記整流器回路は、複数の入力を含み、前記無線送電受信機は、前記複数の入力のそれぞれのために複数のフィルタをさらに含む請求項20に記載のデバイス。
【請求項23】
前記整流器回路は、前記整流器回路により生成される高調波信号を抑止するように構成されたシールドを含む請求項20に記載のデバイス。
【請求項24】
前記シールドは、高周波(HF)シールド又は極超短波(UHF)フェライトビード又はフィードスルーキャパシタの少なくとも1つを含む請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記整流器回路は、第1のキャパシタ及び前記第1のキャパシタに並列に接続された第2のキャパシタを含み、前記整流器回路が前記第1のキャパシタ及び前記第2のキャパシタに直列に接続された第1のダイオード及び第2のダイオードをさらに含む請求項20に記載のデバイス。
【請求項26】
電磁界を介して電力を受信するための方法であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで前記電磁界から電力を、並列の同調された共振器により、受信することと、ここで、前記並列の同調された共振器が出力を有し、前記出力が第1の電圧である、
前記並列の同調された共振器によって受信された電力を、前記共振器の出力と前記負荷との間に結合された整流器回路により、整流すること、とを備え、前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記共振器と前記負荷との間に直列に接続され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷に提供するように構成される、電力を受信するための方法。
【請求項27】
電力を整流することは、デュアルダイオード全波整流器回路として構成された前記整流器回路で電流を整流することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
電力を整流することは、対称的クアッドダイオード全波整流器回路として構成された前記整流器回路で電流を整流することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項29】
受信することは、送信機の電磁的な近傍界の領域で共振することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記共振器により受信された前記電力を整流することによって生成される高調波信号を抑止することをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項31】
無線送電受信機であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するための手段と、ここで、前記受信するための手段が出力を有し、前記出力が第1の電圧である、
前記電力を受信するための手段により受信された電力を整流するための手段と、を備え、前記整流するための手段は、前記電力を受信するための手段の出力と前記負荷との間に結合され、前記整流するための手段は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記電力を受信するための手段と前記負荷との間に直列に接続され、前記整流するための手段は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷(336)に提供する、無線送電受信機。
【請求項32】
前記電力を受信するための手段は、共振器を含む受信アンテナを備え、前記電力を整流するための手段が整流器回路を備える請求項31に記載の受信機。
【請求項33】
受信アンテナは、送信機の電磁的な近傍界の領域から電力を受信するように構成されている請求項31に記載の受信機。
【請求項34】
前記電力を受信するための手段により受信された前記電力を整流するための手段によって生成される高調波信号を抑止するための手段をさらに備える請求項31の受信機。」

(2)新規事項(特許法第17条の2第3項)について

本件補正後の請求項3に係る発明は、引用関係を書き下すと、次のとおりである。

「無線送電受信機であって、
負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、前記出力は、第1の電圧である、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記共振器と前記負荷との間に直列に接続され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷に提供するように構成され、
前記整流器回路は、デュアルダイオード全波整流器回路として構成され、
前記整流器回路は、前記第1の電圧のRMS値(注:「前記RMS値」は誤記。)の半分である値で前記第2の電圧を供給するように構成される受信機。」

したがって、本件補正後の請求項3に係る発明は、共振器の出力である第1の電圧の電圧値と、デュアルダイオード全波整流器回路から供給する電圧である第2の電圧の電圧値とは、前記第1の電圧のRMS値の半分である値で前記第2の電圧を供給するように構成されるという特徴を有するものである。
そこで、本件補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等における、共振器の出力である第1の電圧の電圧値と、整流器回路から供給する電圧である第2の電圧の電圧値との関係については、以下に記載されるにとどまる。

a.「 図5は、例示的な実施の形態による、受動ダブルダイオード半波整流器回路300に基づく、誘導ループL2332とキャパシタC2334とを含む、共振受信アンテナ318を含む無線電力受信機308の変形Aの回路図を示す。整流器回路300は、ダイオードD21328と、ダイオードD22330と、を含む。整流器回路300は、高周波(HF)チョーク(choke)LHFC324と、高周波(HF)ブロックキャパシタCHFB326と、を含む。DC経路は、アンテナループを介して閉じられる。HFチョーク324は、電流シンクとして働き、50%のダイオード通電サイクル(conduction cycle)を有し、変換係数Mは、0.5である。」(【0035】)

b.「図7は、例示的な実施の形態による、受動ダブルダイオード半波整流器回路350に基づく、誘導ループL2382とキャパシタC2384とを含む、共振受信アンテナ368を含む無線電力受信機358の変形Bの回路図を示す。整流器回路350は、図5及び図6の整流器回路300の対称的なバージョン(version)として実装される。整流器回路350は、ダイオードD21378と、D21’380と、を含む。整流器回路350は、高周波(HF)チョークLHFC374と、高周波(HF)ブロックキャパシタCHFB376と、をさらに含む。HFチョーク374は、電流シンクとして働き、HF損失とDC損失を妥協させた最適な寸法が設定される。50%のダイオード通電サイクルDを用いた場合は、整流器の出力-入力電圧変換係数Mは、0.5である。」(【0037】)

c.「図11は、例示的な実施の形態による、受動クワッドダイオード全波整流器回路400に基づく、誘導ループL2432とキャパシタC2434とを含む、受信アンテナ418を含む無線電力受信機408の変形Cの回路図を示す。 ・・・途中略・・・ 変換係数は0.25である。」(【0042】)

d.「負荷(例えば、バッテリ)336のインピーダンスRLが相対的に低い場合は、2:1の変圧(4:1インピーダンス)をほぼ行う例えば図10のステップダウン(step-down)整流器回路が適切な選択肢であることができる。それよりも高い抵抗インピーダンスRLに関しては、図15の1:1の変換をする例示的な実施の形態が、向上された性能を提供することができる。」(【0048】)

上記a.b.の記載は、受動ダブルダイオード半波整流器回路に基づくものとされてはいるが、「デュアルダイオード全波整流器回路として構成」されることに関する開示はなく、また、整流器の出力-入力電圧変換係数Mが0.5とはあるが「前記第1の電圧のRMS値の半分である値で前記第2の電圧を供給する」ものとなることは図面を参照しても記載されておらず、また、自明のことでもない。

また、上記c.d.の記載からも、「前記整流器回路は、デュアルダイオード全波整流器回路として構成され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のRMS値の半分である値で前記第2の電圧を供給するように構成される」ことは、図面を参照しても記載されておらず、また、自明のことでもない。

そして、他に当初明細書等に「前記整流器回路は、デュアルダイオード全波整流器回路として構成され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のRMS値の半分である値で前記第2の電圧を供給するように構成される」ことの根拠となるような記載も示唆も見あたらないので、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

本件補正後の請求項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲のものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(3)目的要件について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

「デバイス」(「デバイス」及び「電子デバイス」)に係る発明は、本件補正前の請求項21及び本件補正後の請求項20-25に記載されている。
本件補正前の請求項21と本件補正後の請求項20-25との対応関係について対比すると、本件補正前の請求項21は択一的な構成を有するものではなく、本件補正前の請求項21が、本件補正後の請求項20-25のいずれに対応すると仮定しても、補正前の請求項と補正後の請求項とに一対一又はこれに準ずるような対応関係は存在せず、本件補正は、「デバイス」(「デバイス」及び「電子デバイス」)に係る発明に関し、所謂増項補正を行うものといえ、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

また、本件補正は請求項の削除を目的としたものでもなく、誤記の訂正を目的としたものでもない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、特許法第17条の2第5項(補正の目的)の規定に適合していない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由II]

上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
当審の拒絶理由に引用された特開平10-145987号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されていると認められる。

ア.「【0022】図2は、本発明に係わる無線による電力伝送方式を示す図である。21は、駅の改札口やバスに備えられたリーダおよび/またはライター1に備えられた電源回路である。この電源回路21は、13.56MHzの高周波数の電圧を発生する電源22と、インピーダンスをマッチングさせて反射防止をするための整合回路23と、13.56MHzで2?5W程度の電力を電磁波(無線)で伝送するためのコイル24とから構成される。ICカード2には、リーダおよび/またはライター1に備えられた電源回路21から電磁波(無線)により電力を受け取るコイル26と該コイル26で受け取った高周波電力を直流の7?15V程度の電圧に変換する整流回路27とからなる誘起電圧発生部28と、該誘起電圧発生部28から発生した7?10V程度の直流電圧の供給を受けて動作する内部回路(例えばICチップで構成される。)29とを備えている。なお、ICカード2とリーダおよび/またはライター1との間の距離が著しく離れたとしても、内部回路29に対して所望の直流電圧を供給できるように、上記コイル26には、同調用容量25を接続して大きな誘起電力が得られるように共振回路が備えられている。上記コイル26として、スパイラル状のアンテナコイルを連続して同じ方向に巻き付けられた2層以上の多層構造とすることによって、コイル間に生じる浮遊容量とコイルのインダクタンスで並列共振回路を構成し、同調用容量25を不要または著しく小さくすることができる。」

上記記載事項からみて引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「電源回路21から無線により電力を受信するICカードであって、
電磁波から内部回路を動作させる電力を受信するように構成された共振器を含むアンテナと、
前記共振器を含むアンテナで受け取った高周波電力を、整流回路で直流の電圧に変換し、内部回路に供給するICカード。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、

引用発明の「ICカード」は、電源回路21から無線で送信された電力を受信する機器であるから、本願補正発明の「無線送電受信機」に相当する。

引用発明の「内部回路」は、無線で送信された電力の供給対象であるから、本願補正発明の「負荷」に相当する。

引用発明の「電磁波」は、電界と磁界とによって伝搬する波であるから電磁界を構成するものといえ、本願補正発明の「電磁界」に相当する。

引用発明の「共振器を含むアンテナ」は、アンテナコイル間に生じる浮遊容量とアンテナコイルのインダクタンスで共振器を構成して電力を受信するアンテナであり、本願補正発明の「共振器を含む受信アンテナ」に相当する。
また、引用発明の「前記共振器を含むアンテナで受け取った高周波電力を、整流回路で直流の電圧に変換し、内部回路に供給する」ことは、電磁波による高周波電力を整流回路へと出力し、該整流回路で整流し変換した直流電圧を内部回路に提供することであり、該整流回路は、共振器と負荷との間に結合されたものといえるので、本願補正発明の「電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、」「前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、」「電圧を前記負荷に提供する」に相当する。

また、引用発明の整流回路が変換した「直流の電圧」は、内部回路に供給する電圧であって、本願補正発明の「第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧」と比較すると、負荷に提供する「整流した電圧」である点で一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。

一致点
「無線送電受信機であって、
負荷に電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、整流した電圧を前記負荷に提供するように構成される無線送電受信機。 」

相違点
<相違点1>本願補正発明は、負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成されているのに対し、引用発明は、充電を行うこと、また、充電を行う電力レベルに関する特定はされていない点。

<相違点2>「前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、電圧を前記負荷に提供するように構成される」点に関して、本願補正発明は、「前記共振器は、出力を有し、前記出力は、第1の電圧である、前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記共振器と前記負荷との間に直列に接続され、前記整流器回路は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷に提供するように構成される」のに対し、引用発明は、整流器の構成、また、アンテナコイルの電圧と整流器からの供給電圧との関係が特定されていない点。

(3)判断

相違点1について
負荷への給電回路に充電をすることが必要な要素を含むことは、例えば、当審の拒絶理由に引用された特開昭63-155826号公報(4頁右下欄下から2行目-5頁左上欄1行,第6図の「充電用コンデンサ48」参照。)や、特開2005-137040号公報(7頁16,17行,図1の「平滑コンデンサC21」参照。)に示されるよう、ごく一般的な構成である。
引用発明の内部回路に、平滑やバックアップを目的として、充電することが必要な要素を含むものとすることは適宜なし得ることであり、また、平滑やバックアップを目的とした要素の充電に対応する十分な電力レベルで電力を供給するように構成することも、当業者が当然に考慮すべき事項であるから、相違点1は、当業者が適宜なし得る設計的な事項である。

相違点2について
一般に「ステップダウン(降圧)」とは、入力電力を変換することにより、入力電圧よりも低い出力電圧を出力することであるが、本願発明の「ステップダウン変圧」について、発明の詳細な説明の段落【0048】には、「負荷(例えば、バッテリ)336のインピーダンスRLが相対的に低い場合は、2:1の変圧(4:1インピーダンス)をほぼ行う例えば図10のステップダウン(step-down)整流器回路が適切な選択肢であることができる。」と記載され、図10には、共振器と負荷との間に直列に接続される整流器回路が、ダイオード(378,380)と、電流シンクを形成する高周波チョーク(374,375)とを備えることが図示されている。
そうすると、本願発明の「ステップダウン変圧」とは、ステップダウン整流器回路を用いることで入力電力を変換することを意味するものであって、ステップダウン整流器回路の構成自体によって、入力電圧よりも低い出力電圧を負荷に供給する「ステップダウン変圧」が行われることになるものといえる。
しかしながら、ダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記ダイオードと前記高周波チョークは、受信コイルと負荷との間に直列に接続される整流器回路(例えば、当審の拒絶理由に引用された特開2005-137040号公報の段落【0033】,図1参照。)は周知の構成であり、また、当該周知の構成を用いた整流器回路の出力電圧は、受信コイルの出力電圧の最大値よりも低い電圧に変換されることも明らかなものである。また、整流器回路は必要とする出力に応じて適宜選択できるものである。
そうであれば、引用発明の整流回路に前記周知の構成の整流器回路を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、その際当然に、共振器の出力電圧である第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を負荷に供給するものとなるものである。

したがって、本願補正発明は引用発明及び周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、本願補正発明に関する作用・効果も引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし35に係る発明は、「2.[理由I](1)」に記載した平成25年4月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし35に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成26年7月4日付けで通知した最後の拒絶の理由A,B,Cの概要は以下のとおりである。

「拒絶理由A
平成25年4月3日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


請求項1に付加された「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する」との補正事項に関し、出願人が平成25年4月3日付け意見書において補正の根拠としている、
段落【0058】の「負荷(例えば、バッテリ)336のインピーダンスRLが相対的に低い場合は、2:1の変圧(4:1インピーダンス)をほぼ行う例えば図10のステップダウン(step-down)整流器回路が適切な選択肢であることができる。」
段落【0035】の「(整流器回路300の)変換係数Mは、0.5である。」
段落【0037】の「整流器の出力-入力電圧変換係数Mは、0.5である。」
段落【0042】の「(整流器回路400の)変換係数は0.25である。」
段落【0026】の「受信機208は、AC-DC変換器として少なくとも部分的に機能する受信電力変換ユニット222をさら含む。」
段落【0030】の「ここにおいて説明される様々な例示的な実施の形態においては、受信電力変換ユニット222は、負荷236の負荷インピーダンスRLよりも大きい基本周波数で入力インピーダンスを呈するダイオード整流器回路を含む。」
を参照しても、第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を負荷に供給することに関する記載はなく、また、これらの記載から自明なことでもない。
また、他に当初明細書等に「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を負荷に供給する」構成の根拠となるような記載は見あたらず、更に、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
さらに、独立請求項21,27,32についても、同様に新規事項を追加するものである。

拒絶理由B
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


請求項1には「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する」とあるが、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
また、「二乗平均平方根(RMS)値未満」とする技術的意味について明確でなく、発明の詳細な説明の記載も、請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
独立請求項21,27,32に関しても、同様である。


拒絶理由C
この出願の請求項1-35に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平10-145987号公報
引用文献2:特開昭63-155826号公報
引用文献3:特開2005-137040号公報 」

(2)最後の拒絶の理由についての判断

(ア)拒絶理由Aについて
平成25年4月3日付けでした手続補正により、請求項1には「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する」との補正事項が付加された。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

当初明細書等には、共振器の出力である第1の電圧の電圧値と、負荷に供給する電圧である第2の電圧の電圧値との関係について、上記2.[理由I](2)にa.ないしd.として示した記載がされているにすぎないものである。

上記a.ないしc.に記載されるように、整流器の出力-入力電圧変換係数Mが0.5や0.25であるとしても、このことが、「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を負荷に供給する」ものとなることは、図面を参照しても記載も示唆もない。
そして、上記d.に記載されるような、2:1の変圧を行うステップダウン(step-down)整流器回路や1:1の変換を行う実施の形態が、「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を負荷に供給する」ものとなることも、図面を参照しても記載も示唆もない。
したがって、「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する」ことは、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
また、他に当初明細書等に「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を負荷に供給する」構成の根拠となるような記載も示唆も見あたらない。
したがって、当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
さらに、独立請求項21,27,32についても、同様に新規事項を追加するものである。

以上より、平成25年4月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし35に記載された事項は、平成26年7月4日付けの最後の拒絶理由Aに示したとおり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
したがって、平成25年4月3日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(イ)拒絶理由Bについて
平成25年4月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし35の記載は、平成26年10月8日付け意見書を参照しても、平成26年7月4日付けの最後の拒絶理由Bに示したとおり「第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給する」ことが発明の詳細な説明に記載されたものでなく、また、発明の詳細な説明の記載から「二乗平均平方根(RMS)値未満」とする技術的意味が明らかになるものでもない。
そして、発明の詳細な説明の記載は、請求項1ないし35に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
したがって、平成25年4月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし35の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載も、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(ウ)拒絶理由Cについて
a.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年4月3日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

b.引用例
当審の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2.[理由II]に示したとおりである。

c.対比

本願発明は、本願補正発明の「前記整流器回路は、少なくとも1つのダイオードと、電流シンクを形成する高周波チョークとを備え、前記少なくとも1つのダイオードと前記高周波チョークは、前記共振器と前記負荷との間に直列に接続され」との限定を省き、また、「前記整流器回路は、前記第1の電圧のステップダウン変圧である第2の電圧を前記負荷に提供するように構成される」との限定を省き、「前記整流器回路は、前記第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給するように構成される」との限定を加えたものである。

本願発明と引用発明とを対比すると、一致する点、相違する点については次のとおりである。

一致点
「無線送電受信機であって、
負荷に電磁界から電力を受信するように構成された共振器を含む受信アンテナと、ここで、前記共振器は、出力を有し、
前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、整流した電圧を前記負荷に供給するように構成される受信機。 」

相違点
<相違点3>本願発明は、負荷を充電するのに十分な電力レベルで電磁界から電力を受信するように構成されているのに対し、引用発明は、充電を行うこと、また、充電を行う電力レベルに関する特定はされていない点。

<相違点4>「前記共振器の前記出力と前記負荷との間に結合された整流器回路と、を備え、前記整流器回路は、整流した電圧を前記負荷に供給するように構成される」点に関して、本願発明は、「前記整流器回路は、前記第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を前記負荷に供給するように構成される」のに対し、引用発明は、アンテナコイルの電圧と整流器からの供給電圧との関係が特定されていない点。

d.判断

相違点3についての判断は、上記2.[理由II]における相違点1についての判断と同様である。

相違点4について
一般に整流回路は、入力される交流電圧の電圧値よりも低い電圧値の直流電圧を出力するものであるが、平滑回路やレギュレータ回路を介することにより、さらに低い電圧値で負荷に供給すること(例えば、当審の拒絶理由に引用された特開昭63-155826号公報(4頁右下欄2行-5頁左上欄3行,第6図参照。),特開2005-137040号公報(段落【0033】,図1参照。)は周知の構成である。
引用発明の整流回路に前記周知の構成の整流回路の構成を採用し、入力される交流電圧の最大電圧値よりも低い任意の電圧値の直流電圧を負荷に供給することは当業者が容易に想到し得たことであり、第1の電圧の二乗平均平方根(RMS)値未満である第2の電圧を負荷に供給するように構成することも、当業者が適宜なし得たことである。

したがって、本願発明は引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。
そして、本願発明に関する作用・効果も引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(3)まとめ
以上のとおり、平成25年4月3日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
そして、特許請求の範囲の請求項1ないし35の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、発明の詳細な説明の記載も、請求項1ないし35に係る発明の技術上の意義を理解し、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の既定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-23 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-09 
出願番号 特願2011-525154(P2011-525154)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 121- WZ (H02J)
P 1 8・ 572- WZ (H02J)
P 1 8・ 561- WZ (H02J)
P 1 8・ 575- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 藤井 昇
矢島 伸一
発明の名称 無線送電のための受動受信機  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 佐藤 立志  
代理人 峰 隆司  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 井関 守三  
代理人 野河 信久  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 直樹  

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