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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1302489
審判番号 不服2014-6406  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-07 
確定日 2015-06-25 
事件の表示 特願2009- 19674「自動分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日出願公開、特開2010-175441〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年1月30日を出願日とする出願であって、平成25年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年4月5日に意見書、手続補正書が提出されたが、同年12月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年4月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正について
平成26年4月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成25年4月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正前のものから補正後のものに補正する事項を含むものである。

(補正前)
「【請求項1】
サンプルと試薬とを反応させる反応容器と、
容器に収容されたサンプルまたは試薬を前記容器から吸引して前記反応容器に吐出するプローブと、
前記反応容器における前記サンプルと前記試薬との反応の度合いを測定する測定手段と、
洗浄液を送出する送出手段と、
前記洗浄液を噴射口から前記プローブへと噴射して前記プローブを洗浄する洗浄手段と、
前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流すもので、途中にその前後よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する流路形成手段とを具備したことを特徴とする自動分析装置。」
が、
(補正後)
「【請求項1】
サンプルと試薬とを反応させる反応容器と、
容器に収容されたサンプルまたは試薬を前記容器から吸引して前記反応容器に吐出するプローブと、
前記反応容器における前記サンプルと前記試薬との反応の度合いを測定する測定手段と、
洗浄液を送出する送出手段と、
前記洗浄液を噴射口から前記プローブへと噴射して前記プローブを洗浄する洗浄手段と、
前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流すもので、途中にその前後および前記噴射口よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する流路形成手段とを具備したことを特徴とする自動分析装置。」
と補正された。(下線は、補正箇所を示す。)

そして、上記請求項1の補正は、具体的に以下の事項である。
補正前に
「前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流すもので、途中にその前後よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する流路形成手段」
としていたものを、
「前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流すもので、途中にその前後および前記噴射口よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する流路形成手段」
とする補正(以下、「補正事項」という。)

2 本件補正についての検討

(1)新規事項を追加する補正

ア 補正事項について
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、補正事項について記載も示唆もなされていない。

なお、平成26年4月7日に提出された審判請求書において、補正事項についての補正の根拠として、
「(2)補正根拠の明示
(2-1) 請求項1および請求項2には、洗浄液の流路における「径が小さくなる部分」の径が噴射口の径よりも小さい旨の限定を加えた。これは、本願明細書の段落[0041]の記載および図3から明らかです。
すなわち、段落[0041]には「貫通孔183の径がチューブ18a,18b,18c,18dの内径よりも小さい」と記載され、図3からは噴射口17b,17cの径がチューブ18c,18dの径よりも小さくはないことが明らかであるから、貫通孔183の径が噴射口17b,17cの径よりも小さいことが明らかである。なお、貫通孔183は「径が小さくなる部分」に相当する。」((2)補正根拠の明示(2-1)欄) と記載されている。(下線は、当審において付加したものである。)

ここで、審判請求書では、「図3からは噴射口17b,17cの径がチューブ18c,18dの径よりも小さくはないことが明らかである」(上記下線部を参照。)と記載しているが、当初明細書等には、噴射口17b,17cの径がチューブ18c,18dの径よりも小さくはないことの記載も示唆もなく、一般に図面は、発明を説明する上での必要事項を模式的に示したものであって、図3から、噴射口17b,17cの径とチューブ18c,18dの径との大小関係まで読み取ることはできないので、貫通孔183の径が噴射口17b,17cの径よりも小さいことが明らかであるとはいえない。
したがって、審判請求書の補正事項についての補正の根拠として示した上記記載は、その根拠といえない。

イ 補正事項の追加による技術的意義について
当初明細書等には、次の事項が記載されている。
従来の自動分析装置は、プローブの先端に洗浄液を噴射することによってプローブを洗浄する機構を備えているが(段落【0003】)、ポンプから送出される洗浄液は脈動しているため、噴射口から噴射される洗浄液が暴れ、洗浄液が安定していないので(段落【0004】)、その目的とするところは、洗浄液の噴射により効率的にプローブを洗浄可能とすることにある(段落【0006】)。そのために、送出手段から送出される洗浄液を噴射口へと流すチューブの途中に、その前後よりも径が小さくなる貫通孔を形成することにより、前記貫通孔を流れる洗浄液は、脈動の衝撃が和らげられて、脈動が平滑化されて、その結果、洗浄液の流量変化が小さくなるという技術的意義を有するものである(段落【0041】)。
一方、プローブの先端に洗浄液を噴射することによってプローブを洗浄する機構を備えている従来の自動分析装置において、プローブに洗浄液を噴射させる噴射口の径を、送出手段から送出される洗浄液を前記噴射口へと流すチューブの径より小さくすること(例えば、原査定の拒絶の理由で示した引用文献2(実願昭56-138641号(実開昭58-42754号)のマイクロフィルム)を参照。)、プローブに洗浄液を噴射させる噴射口の径を、送出手段から送出される洗浄液を前記噴射口へと流すチューブの径より小さくはしないこと(例えば、原査定の拒絶の理由で示した引用文献3(特開2001-133466号公報)を参照。)のいずれも、本願出願時の技術常識である。
前記出願時の技術常識を踏まえると、補正事項について記載も示唆もなされていない当初明細書等において、上記の「前記貫通孔を流れる洗浄液は、脈動の衝撃が和らげられて、脈動が平滑化されて、その結果、洗浄液の流量変化が小さくなるという技術的意義」は、径が小さくなる部分を持った流路(貫通孔)の径と噴射口の径との大小関係を考慮して得られているものではないといえる。

そして、噴射口の径が、径が小さくなる部分を持った流路(貫通孔)の径より、小さくなることがないことを特定した補正事項を追加したことで、噴射口の径が、径が小さくなる部分を持った流路(貫通孔)の径より、小さくなる場合と比べると、径が小さくなる部分を持った流路(貫通孔)を流れることにより、脈動の衝撃が和らげられて、脈動が平滑化された洗浄液は、噴射口による抵抗を受けることが少ないまま噴射口より噴射されることとなり、その結果、より乱れの少ない洗浄液の噴射が可能となるという新たな技術的意義を有することになる。
この点は、審判請求書において「つまり本願の請求項1-4に記載の発明では、「径が小さくなる部分」を通過した後の噴射口より噴射されるまでの洗浄液の流路の径を、「径が小さくなる部分」の径よりも小さくなることがないようにしている。
これにより、「径が小さくなる部分」を通過した後の洗浄液の流れが、流路による抵抗を受けることがないままで噴射口より噴射されることとなり、乱れの少ない洗浄液の噴射が可能となる。」((3)本願発明と引用文献との対比(3-1)欄) と記載されていることからも裏付けられる。

したがって、補正事項は、径が小さくなる部分を持った流路(貫通孔)の径と噴射口の径との大小関係を特定したことによって得られる新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

ウ まとめ
よって、補正事項は、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、補正事項を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。


(2)独立特許要件違反

ア 本件補正発明
本件補正は、上記「(1)新規事項を追加する補正」で示したように、新規事項が追加されたと判断されるものの、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するとして、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。上記「第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「1 本件補正について」の記載を参照。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

イ 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前である平成13年5月18日に頒布された「特開2001-133466号公報」(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ア)「【0020】
【発明の実施の形態】本発明を適用した第1の実施の形態の自動分析装置の構成を図1?図2を参照して説明する。まず、図1は、この第1の実施の形態の自動分析装置の全体構成を示す斜視図である。この自動分析装置は、被検試料の各種成分と反応する試薬を納めた複数の試薬ボトルを収納した試薬ラック1を設置可能な試薬庫2及び3と、円周上に複数の反応管4を配置した反応ディスク5と、被検試料が納められた被検試料容器がセットされるディスクサンプラ6とを有している。試薬庫2,3、反応ディスク5及びディスクサンプラ6は、それぞれ駆動装置により回動されるようになっている。測定に必要な試薬は、試薬庫2或いは試薬庫3の試薬ラック1に収納されている試薬ボトル7から、それぞれ分注アーム8或いは分注アーム9を用いて反応ディスク5上の反応管4に分注される。」

(イ)「【0021】また、ディスクサンプラ6上に配置されている被検試料容器17に納められた被検試料は、サンプリングアーム10を用いて反応ディスク5上の反応管4に分注される。被検試料と試薬を分注された反応管4は、反応ディスク5の回動により撹拌位置まで移動し、撹拌ユニット11により被検試料と試薬の混合液が撹拌される。その後、測光系13は、測光位置まで移動した反応管4に対して光を照射して混合液の吸光度変化を測定することにより、被検試料の成分分析を行う。そして、分析の終了した反応管4内の混合液は廃棄され、その後反応管4は洗浄ユニット12により洗浄されるようになっている。」

(ウ)「【0022】ここで、この自動分析装置には、前記各分注アーム8?10に対応して、該各分注アーム8?10の各プローブ14?16を洗浄するための洗浄槽がそれぞれ設けられている。図1には、サンプリングアーム10のサンプリングプローブ16を洗浄するための洗浄槽20のみしか図示されていないが、各分注アーム8?10に対応してそれぞれ洗浄槽が設けられているものと理解されたい。以下、このサンプリングプローブ16を洗浄するための洗浄槽20を例にとって説明を行うが、他のプローブ14,15用に設けられた洗浄槽も同じ構成である。」

(エ)「【0023】図2は、このサンプリングプローブ16用の洗浄槽20の断面図である。この図2に示すように洗浄槽20は、自動分析装置に埋め込まれるかたちで設けられた筒状の洗浄槽ブロック21と、この洗浄槽ブロック21を装置側に固定する保持ブロック21を有している。保持ブロック21には、洗浄時に当該洗浄槽20に挿入されたサンプリングプローブ16に対して洗浄水を吐出するための洗浄水パイプ24が設けられている。また、保持ブロック21には、洗浄時に当該洗浄槽20に挿入されたサンプリングプローブ16を取り囲むように設けられた洗浄水誘導パイプ23が設けられている。」

(オ)「【0024】これにより、各洗浄水パイプ24からサンプリングプローブ16の先端部分に当たるように連続した流水状態で吐出された洗浄水は、サンプリングプローブ16に付着した被検試料を洗い流し、排水として洗浄水誘導パイプ23を介して洗浄槽ブロック21の底部(廃液溜め28)に溜まるようになっている。」

(カ)「【0027】次に、このように構成された当該実施の形態の自動分析装置における被検試料の成分分析検査の全体的な制御の流れについて図1及び図3を参照しながら説明する。図3は、この実施の形態の自動分析装置の制御の流れを説明するためのブロック図である。」

(キ)「【0031】まず、サンプリングプローブ16は、非駆動時には、例えば図4に示すように反応ディスク5とディスクサンプラ6との略中間の位置(ホーム位置)で待機状態となっているのであるが、分注時となると、前記制御部35により、図4中点線の軌道で示すようにディスクサンプラ6側に移動制御され、被検試料容器に納められている被検試料を吸引した後、反応ディスク5側に移動制御され反応管4に前記吸引した被検試料を分注する。」

(ク)「【0033】このようにサンプリングプローブ16が洗浄槽20内に挿入されると、制御部35は、図3に示す洗浄ポンプ32を駆動制御する。これにより、洗浄ポンプ32を介してサンプリングプローブ16内に洗浄水が供給されると共に、図2に実線の矢印で示すように洗浄水パイプ24を介してサンプリングプローブ16の両側面側から洗浄水が吐出され、サンプリングプローブ16の内外に付着した被検試料の洗浄が行われることとなる。サンプリングプローブ16を洗浄した後の廃液は、洗浄水誘導パイプ23を介して洗浄槽ブロック21の底部に設けられた廃液溜め28に溜められることとなる。」

上記摘記事項(ア)?(ク)によれば、引用文献には、
「試薬は、反応管4に分注され、被検試料は、反応管4に分注され、
サンプリングプローブ16は、被検試料容器に納められている被検試料を吸引した後、反応管4に前記吸引した被検試料を分注し、
測定系13は、反応管4に対して混合液の吸光度変化を測定し、
サンプリングプローブ16を洗浄するための洗浄槽20が設けられ、洗浄槽20は、保持ブロック21を有し、保持ブロック21には、サンプリングプローブ16に対して洗浄水を吐出するための洗浄水パイプ24が設けられ、
洗浄ポンプ32を駆動制御し、これにより、洗浄水パイプ24を介して洗浄水が吐出される、自動分析装置」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「被検試料」、「試薬」及び「反応管4」が、それぞれ本件補正発明の「サンプル」、「試薬」及び「反応容器」に相当するところ、引用発明は、「試薬は、反応管4に分注され、被検試料は、反応管4に分注され、」前記「試薬」は、上記「イ 引用発明」の摘記事項(ア)を踏まえると、被検試料の各種成分と反応する試薬であるので、引用発明の「被検試料」と「試薬」とを「分注」する「反応管4」は、本件補正発明の「サンプルと試薬とを反応させる反応容器」に相当する。

(イ)引用発明の「被検試料容器」及び「サンプリングプローブ16」が、それぞれ本件補正発明の「容器」及び「プローブ」に相当するところ、引用発明は、「サンプリングプローブ16は、被検試料容器に納められている被検試料を吸引した後、反応管4に前記吸引した被検試料を分注」するので、引用発明の「被検試料容器に納められている被検試料を」「被検試料容器」から「吸引した後」「反応管4に」「分注」する「サンプリングプローブ16」は、本件補正発明の「容器に収容されたサンプルまたは試薬を前記容器から吸引して前記反応容器に吐出するプローブ」に相当する。

(ウ)引用発明の「測定系13」が、本件補正発明の「測定手段」に相当するところ、引用発明は、「測定系13は、反応管4に対して混合液の吸光度変化を測定し」ており、前記「混合液」は、上記「イ 引用発明」の摘記事項(イ)を踏まえると、被検試料と試薬の混合液であり、前記「混合液の吸光度変化」は、混合液の反応の度合いであることが技術的に明らかであるから、引用発明の「反応管4に対して」被検試料と試薬の「混合液の吸光度変化を測定」する「測定系13」は、本件補正発明の「前記反応容器における前記サンプルと前記試薬との反応の度合いを測定する測定手段」に相当する。

(エ)引用発明の「洗浄水」及び「洗浄ポンプ32」が、それぞれ本件補正発明の「洗浄液」及び「送出手段」に相当するところ、引用発明は、「洗浄ポンプ32を駆動制御し、これにより、洗浄水が吐出され」るので、引用発明の「洗浄水」を「吐出」する「洗浄ポンプ32」は、本件補正発明の「洗浄液を送出する送出手段」に相当する。

(オ)引用発明の「洗浄槽」が、本件補正発明の「洗浄手段」に相当するところ、引用発明は、「サンプリングプローブ16を洗浄するための洗浄槽20が設けられ、洗浄槽20は、保持ブロック21を有し、保持ブロック21には、サンプリングプローブ16に対して洗浄水を吐出するための洗浄水パイプ24が設けられ」ており、前記「洗浄水パイプ24」の「洗浄水を吐出するための」開口が吐出口であるので、引用発明の「洗浄水を」吐出口から「サンプリングプローブ16に対して」「吐出」して「サンプリングプローブ16を洗浄するための洗浄槽20」は、本件補正発明の「前記洗浄液を噴射口から前記プローブへと噴射して前記プローブを洗浄する洗浄手段」に相当する。

(カ)引用発明の「洗浄水パイプ24」が、本件補正発明の「流路形成手段」に相当するところ、引用発明は、「洗浄ポンプ32を駆動制御し、これにより、洗浄水パイプ24を介して洗浄水が吐出され」ており、前記「洗浄水パイプ24」は、上記(オ)の「洗浄水パイプ24」の「洗浄水を吐出するための」開口が吐出口であることを踏まえると、「洗浄水」を吐出口へと流すものであることが明らかであるから、引用発明の「洗浄ポンプ32を駆動制御し、」「洗浄水」を吐出口へと流す「洗浄水パイプ24」と、本件補正発明の「前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流すもので、途中にその前後および前記噴射口よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する流路形成手段」とは、「前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流す流路形成手段」という点で共通する。

したがって、両者は、
「サンプルと試薬とを反応させる反応容器と、
容器に収容されたサンプルまたは試薬を前記容器から吸引して前記反応容器に吐出するプローブと、
前記反応容器における前記サンプルと前記試薬との反応の度合いを測定する測定手段と、
洗浄液を送出する送出手段と、
前記洗浄液を噴射口から前記プローブへと噴射して前記プローブを洗浄する洗浄手段と、
前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流す流路形成手段とを具備した自動分析装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
送出手段から送出される洗浄液を噴射口へと流す流路形成手段が、本件補正発明では、前記流路形成手段の「途中にその前後および前記噴射口よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する」のに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。

エ 判断
上記相違点について検討する。

送出手段から送出される液体を流す流路形成手段において、前記流路形成手段の途中にその前後よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成することにより、前記送出手段から送出される液体の脈動を抑え、液体の流量を安定させることは、例えば、原査定の拒絶の理由で周知例として示した特開2004-239697号公報(段落【0005】、【0012】、【0013】等)、特開平9-42577号公報(段落【0002】、図2(B))等に記載されているように、本願出願前において周知の技術である。
一方、引用文献(上記「イ 引用発明」の摘記事項(オ)を参照。)には、「各洗浄水パイプ24からサンプリングプローブ16の先端部分に当たるように連続した流水状態で吐出さ」せることが記載されており、例えば、引用発明と同様な構成が記載されている特開2007-315949号公報(段落【0061】?【0066】、段落【0074】?【0080】、図5、図6(a))には、送出手段から送出される洗浄液を流す流路形成手段に流量調整部を設けることにより、連続した流水状態の洗浄液が、噴射口からプローブの先端部に当たるように、洗浄液の流量を安定させることが記載されていることからも裏付けられているように、引用発明において、連続した流水状態の洗浄水が、吐出口からプローブの先端部に当たるように、洗浄水の流量を安定させることは、引用発明に内在する課題であるといえる。
そして、引用発明は、上記「ウ 対比」の(オ)及び(カ)に記載したように、洗浄水パイプ24の洗浄水を吐出するための開口が吐出口であり、流路形成手段と噴射口が同じ内径であることは明らかであるので、さらに、この点も踏まえると、送出手段から送出される洗浄液を噴射口へと流す流路形成手段を備える引用発明において、洗浄液の流量を安定させるために、上記周知技術を考慮し、前記流路形成手段の「途中にその前後および前記噴射口よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する」ことは、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のことである。

オ まとめ
よって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定及び同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成26年4月7日付けの手続補正は、上記「第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[補正の却下の決定の結論]のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年4月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「1 本件補正について」の記載を参照。)

2 引用発明
原査定の拒絶の理由に示された引用文献及びその記載事項は、上記「第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「2 本件補正についての検討」「(2)独立特許要件違反」「イ 引用発明」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成26年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「2 本件補正についての検討」「(2)独立特許要件違反」の「ウ 対比」及び「エ 判断」で検討した本件補正発明から、「前記送出手段から送出される前記洗浄液を前記噴射口へと流すもので、途中にその前後および前記噴射口よりも径が小さくなる部分を持った流路を形成する流路形成手段」の限定事項である「および前記噴射口」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「エ 判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-22 
結審通知日 2015-04-28 
審決日 2015-05-12 
出願番号 特願2009-19674(P2009-19674)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 561- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土岐 和雅  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 麻生 哲朗
▲高▼見 重雄
発明の名称 自動分析装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 直樹  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 砂川 克  
代理人 佐藤 立志  
代理人 砂川 克  
代理人 福原 淑弘  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  

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