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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1302503 |
審判番号 | 不服2015-6263 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-03 |
確定日 | 2015-06-25 |
事件の表示 | 特願2014-180450「写真シール作成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 26078〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成24年4月24日(国内優先権主張:平成24年2月9日)に出願した特願2012-98716号の一部を平成26年6月18日に新たな特許出願とした特願2014-125780号の一部を平成26年9月4日に新たな特許出願としたものであって、平成26年9月30日付けの拒絶理由の通知に対し、同年11月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年12月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年4月3日に審判請求がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、平成26年11月26日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって、 ズームリングを回転させることで、カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有するカメラ部と、 前記カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ、利用者の顔付近を照射するカメラストロボと、 前記筐体の下方に設けられ、利用者の足元を照射する足元ストロボと、 前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整されて撮影が行われる場合、前記足元ストロボを発光させずに前記カメラストロボの発光を制御し、前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整されて撮影が行われる場合、前記カメラストロボおよび前記足元ストロボの発光を制御する制御部と を備える写真シール作成装置。」 3 引用例 (1)引用例1 ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-107574号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。 (ア)「【特許請求の範囲】」、 「撮影装置と、 前記撮影装置により撮影される被写体を異なる位置及び/又は方向から照明する複数の照明装置と、 画像情報を出力する出力装置と、 前記撮影装置及び前記照明装置を制御して撮影を行う制御部と、 前記制御部に接続され、前記制御部からの情報の表示、及び/又は、前記制御部への操作入力を行うことができる表示操作部と、 を備える撮影システム。」(【請求項1】)、 「請求項1に記載の撮影システムにおいて、 前記制御部は、前記表示操作部により指定された撮影モードに応じて、制御の動作を変更すること、 を特徴とする撮影システム。」(【請求項2】)、 「請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の撮影システムにおいて、 前記制御部が行う制御は、前記照明装置の内いずれの照明装置を使用するかの光源選択制御、及び/又は、前記照明装置の光量を変更する光量選択制御を含むこと、 を特徴とする撮影システム。」(【請求項8】)、 「請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の撮影システムにおいて、 前記照明装置は、前記被写体の前方から光を照射する前部光源に加えて、 前記被写体の上方から光を照射する上部光源,前記被写体の後方から光を照射する背部光源,前記被写体の下方から光を照射する下部光源のうち、少なくとも1つを含むこと、 を特徴とする撮影システム。」(【請求項11】) (イ)「【発明の実施の形態】」、 「以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。 (第1実施形態)図1は、本発明による撮影システムの第1実施形態の概要を示す透視図である。図2は、図1に示した撮影システムを、説明のために展開して示した図である。本実施形態における撮影システムは、撮影装置10,前部光源21?25,上部光源26,背部光源27,下部光源28,処理装置30,スピーカ61,62等を備え、側壁部81,82,背景部83,天井部84,床部85,前壁部86等を有した略箱状の筐体80に囲まれ、不図示の出入り口から被写体となる人物が出入り可能になっている。」(段落【0020】)、 「撮影装置10は、いわゆるデジタルスチルカメラであり、処理装置と接続されている。」(段落【0021】)、 「前部光源21?25は、撮影装置10及び処理装置30のまわりに配置され、被写体の前方から照明を行う光源である。前部光源21?25は、被写体の上下左右あらゆる箇所の照明の均一性を保持する役割を果たす。上部光源26は、被写体の上方から照明を行う光源であり、被写体の髪の質感(いわゆるエンジェルリング)の表現を行い、前後左右の照明の均一性を保持し、更に、背面に生じる影を低減する役割を果たす。背部光源27は、被写体の後方から照明を行う光源であり、背面に生じる影を低減する役割を果たす。下部光源28は、被写体の下方から照明を行う光源であり、鼻の下や顎の下、及び、下半身に生ずる影を低減する役割を果たす。前部光源21?25,上部光源26,背部光源27,下部光源28は、いずれも独立して処理装置30により発光制御される閃光発光装置であり、以下、これらをまとめて照明装置と呼ぶこととする。」(段落【0022】)、 「図3は、処理装置30を中心として、撮影システム全体を示す制御ブロック図である。処理装置30は、制御部31,プリンタ32,表示操作部35,外部記憶装置36?40等を有し、撮影システム全体を統合して各種処理を行う装置である。制御部31は、撮影装置10,照明装置21?28,プリンタ32,表示操作部35,外部記憶装置36?40,被写体センサ70が接続され、これらの動作を統括して制御を行う部分であり、本実施形態では、パーソナルコンピュータを使用している。また、処理部31は、撮影装置10から得られた画像に対して画像処理を行い、被写体の位置及び動作を認識することも行える。したがって、処理部31は、被写体センサ70からの情報と、撮影装置10から得られる画像から得られる情報とを合わせて、被写体の状態を検出する被写体状態検出装置としての機能も有している。」(段落【0023】)、 「次に、本実施形態における撮影システムの動作について説明する。図6は、撮影システムの動作全体の概要を示すフローチャートである。ステップ(以下、Sとする)10から動作を開始する。S20では、利用者(=被写体)が、利用したい機能を選択する。ここで、撮影システムが有する機能としては、利用者が持参した外部記憶媒体から画像データを読込んでプリントアウト等を行う機能と、撮影装置10を利用して証明写真,娯楽用の写真シール等を撮影する機能とが備わっている。」(段落【0029】)、 「・・・S70では、出力する画像に対して、画像加工処理を行う。ここで、画像加工処理には、例えば、画像の明るさを調整したり、一部を切り取る(トリミング)等のように、画像自体を加工する処理の他、落書き、選択した模様をスタンプするように追加、画像の合成等も含んでいる。・・・」(段落【0031】) 「図7は、図6におけるS50の撮影処理を更に詳しく示したフローチャートである。以下、図7を用いて、撮影処理に付いて説明を行う。S501から撮影処理を開始する。S502では、撮影モードの選択を行う。本実施形態における撮影システムは、証明写真撮影モード、バストアップ撮影モード、全身撮影モード、及び、前述の各モードを組合わせ可能な組合わせモードを有している。S503では、S502において選択した撮影モードに応じて、利用者(被写体)に対して、スピーカ61,62からの音声及び表示操作部35の画面表示により、立ち位置の案内を行う。S504では、被写体センサ70から被写体の立ち位置及び高さに関する情報を取得する。」(段落【0032】)、 「S510では、被写体の位置に応じて、撮影時に発光する光源と、発行時の光量を決定する。また、被写体センサ70により得られた被写体の高さに応じて、上部光源26の発光量の調整も行う。図8は、全身撮影を行うときの被写体の立ち位置と構図を示す図である。全身撮影を行うときには、被写体は、撮影装置10から離れた位置に立ち〔図8(a)〕、全身を収めた構図F1が得られる〔図8(b)〕。図9は、図8に示す状態における照明装置の発光する位置を示す図である。図8に示す状態で撮影を行うときには、前部光源21?25,上部光源26,背部光源27,下部光源28の全てを発光する。また、撮影距離が長いので、前部光源21?25の発光光量を大きくして発光する。」(段落【0035】) 「図10は、バストアップ撮影を行うときの被写体の立ち位置と構図を示す図である。バストアップ撮影を行うときには、被写体は、撮影装置10に近い位置に立ち〔図10(a)〕、全身を収めた構図F2が得られる〔図10(b)〕。図11は、図10に示す状態における照明装置の発光する位置を示す図である。図10に示す状態で撮影を行うときには、前部光源のうち、下方に設けられている前部光源24,25は、発光しない。これらの光源は、主に被写体の下部を照明する光源であり、バストアップの撮影では、必要ないからである。また、背部光源27も発光しない。被写体と背面との距離が十分に離れているため、背面に影が発生せず、発光する必要がないからである。」(段落【0036】) (ウ)図8?11は次のとおりである。 (エ)段落【0035】及び【0036】(上記(イ))には、全身撮影を行うときには、被写体は、撮影装置10から離れた位置に立ち、前部光源21?25,上部光源26,背部光源27,下部光源28の全てを発光し、バストアップ撮影を行うときには、被写体は、撮影装置10に近い位置に立ち、前部光源のうち、下方に設けられている前部光源24,25は、主に被写体の下部を照明する光源であり、バストアップの撮影では、必要ないから、発光しない旨の記載があるところ、この発光制御については、【請求項8】に、「・・・前記制御部が行う制御は、前記照明装置の内いずれの照明装置を使用するかの光源選択制御・・・を含む・・・」との記載があることに照らせば、制御部によりなされているものと認められる。 イ 上記アの各事項によれば、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「撮影装置と、 前記撮影装置により撮影される被写体を異なる位置及び/又は方向から照明する複数の照明装置と、 画像情報を出力する出力装置と、 前記撮影装置及び前記照明装置を制御して撮影を行う制御部と、 前記制御部に接続され、前記制御部への操作入力を行うことができる表示操作部と、 を備える撮影システムであって、 前記制御部は、前記表示操作部により指定された撮影モードに応じて、制御の動作を変更するものであり、 前記制御部が行う制御は、前記照明装置の内いずれの照明装置を使用するかの光源選択制御を含み、 前記照明装置は、前記被写体の前方から光を照射する前部光源に加えて、前記被写体の上方から光を照射する上部光源,前記被写体の後方から光を照射する背部光源,前記被写体の下方から光を照射する下部光源のうち、少なくとも1つを含み、 撮影装置を利用して証明写真,娯楽用の写真シール等を撮影する機能とが備わっており、 出力する画像に対して、落書き、選択した模様をスタンプするように追加、画像の合成等も含む画像加工処理を行うものであって、 前部光源,上部光源,背部光源,下部光源は、いずれも独立して制御部により発光制御される閃光発光装置であり、 撮影モードは、証明写真撮影モード、バストアップ撮影モード、全身撮影モード、及び、前述の各モードを組合わせ可能な組合わせモードを有しており、 選択した撮影モードに応じて、利用者(被写体)に対して、立ち位置の案内を行うものであって、 前記制御部は、全身撮影を行うときには、被写体は撮影装置から離れた位置に立ち、前部光源,上部光源,背部光源,下部光源の全てを発光し、バストアップ撮影を行うときには、被写体は撮影装置に近い位置に立ち、前部光源のうち、下方に設けられている前部光源は、主に被写体の下部を照明する光源であり、バストアップの撮影では、必要ないから、発光しないよう制御する、 撮影システム。」 (2)引用例2 ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-311993号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに次の記載がある。 (ア)「【発明が解決しようとする課題】」、 「従来のフォトブースでは、使用者に対して新しいタイプのものを提供するために様々な趣向が凝らされてきた。例えば、上述したように使用者が選択できるフレーム画像の種類を多くしたり、フレーム画像と撮影画像との合成による画質の劣化を緩和させるべく合成処理を改良したり、近年では、使用者を全身撮影しこれを印刷するタイプのものを提供したりするなど、様々な趣向が凝らされている。一方、これらのフォトブースは使用者が表示画面に表示される自身の姿を見ながらちょうどよい撮影ポジションへ体を移動させ、この移動したポジション、体勢を維持しつつ撮影を行う必要があるので、撮影が非常に面倒であるとともに実際に撮影するまでに多くの時間を費やしてしまいやすい。」(段落【0004】)、 「本発明は、これらの課題を解消するべく、撮影に要する時間を少なくし得、できるだけ使用者に手間をかけずにスムーズに撮影を行うことが可能なフォトブースを提供することを課題とする。」(段落【0005】) (イ)「【発明の実施の形態】」、 「また、本実施形態のフォトブースにおける各カメラ1はその撮影焦点を合わせるためのズームイン又はズームアウトを行うことが可能となっている。このカメラ1のズームイン又はズームアウトについては、表示画面7において使用者の撮影する対象を顔だけにするか、上半身にするか、全体にするかなど撮影範囲の選択を使用者に対して促す選択画面が表示され、使用者がこの撮影範囲を選択することに応じて行われる。上述したような案内画像の表示、使用者の選択入力に基づくカメラの選択や移動などは記憶部12に記憶されたズームイン又はズームアウトに関するデータをもとに制御部9の命令に従ってプログラムデータが実行されることにより行われる。」(段落【0020】) (ウ)「【発明の効果】」、 「本発明によれば、使用者が自身の意思により撮影範囲を選択することが可能となるので、例えば、カメラをズームインさせて使用者の顔をズームアップさせた画像を撮影したり、また、カメラをズームアウトさせて使用者の全身の姿を撮影したりするなど、より自分の好みの合成画像が印刷された被印刷体を取得することが可能となる。」(段落【0036】) イ 上記アの各記載によれば、引用例2には次の事項が記載されていると認められる。 「従来のフォトブースでは、使用者がちょうどよい撮影ポジションへ体を移動させる必要があり、撮影が非常に面倒であったため、使用者が自身の意思により撮影範囲を選択することが可能とし、例えば、カメラをズームインさせて使用者の顔をズームアップさせた画像を撮影したり、また、カメラをズームアウトさせて使用者の全身の姿を撮影したりするようにしたもの。」 4 対比 (1)本願発明と引用発明とを以下に対比する。 ア 引用発明の「撮影装置を利用して証明写真,娯楽用の写真シール等を撮影する機能とが備わって」おり、「出力する画像に対して、落書き、選択した模様をスタンプするように追加、画像の合成等も含む画像加工処理を行うものであ」る「撮影システム」は、本願発明の「利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置」に相当する。 イ 引用発明の「撮影装置」は、本願発明の「カメラ部」に相当する。 ウ 引用発明の「前部光源」は「閃光発光装置」であるから、本願発明の「ストロボ」であるといえる。 そして、引用発明では、「全身撮影を行うときには、」「前部光源,上部光源,背部光源,下部光源の全てを発光し」、「バストアップ撮影を行うときには、」「前部光源のうち、下方に設けられている前部光源は、主に被写体の下部を照明する光源であり、バストアップの撮影では、必要ないから、発光しない」ものとされている。 そうすると、引用発明の「前部光源」のうち、下方に設けられていないものは、被写体のバストアップを照明するための光源であると認められ、これが、本願発明の「利用者の顔付近を照射する」「ストロボ」を含むことは明らかである。 さらに、引用発明の「下方に設けられている前部光源」は、「主に被写体の下部を照明する光源であり、バストアップの撮影では、必要ないから、発光しない」ものであるから、本願発明の「利用者の足元を照射する足元ストロボ」を含むことが明らかである。 エ 本願発明の「前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整されて撮影が行われる場合、前記足元ストロボを発光させずに前記カメラストロボの発光を制御し、前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整されて撮影が行われる場合、前記カメラストロボおよび前記足元ストロボの発光を制御する制御部」と、引用発明の「全身撮影を行うときには、被写体は、撮影装置から離れた位置に立ち、前部光源,上部光源,背部光源,下部光源の全てを発光し、バストアップ撮影を行うときには、被写体は、撮影装置に近い位置に立ち、前部光源のうち、下方に設けられている前部光源は、主に被写体の下部を照明する光源であり、バストアップの撮影では、必要ないから、発光しないよう制御する」「制御部」とは、第1の「場合、前記足元ストロボを発光させずに」利用者の顔付近を照射する「ストロボの発光を制御し」、第2の「場合、」利用者の顔付近を照射する「ストロボおよび前記足元ストロボの発光を制御する制御部」である点で一致する。 (2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、 「利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって、 カメラ部と、 利用者の顔付近を照射するストロボと、 利用者の足元を照射する足元ストロボと、 第1の場合、前記足元ストロボを発光させずに利用者の顔付近を照射するストロボの発光を制御し、第2の場合、利用者の顔付近を照射するストロボおよび前記足元ストロボの発光を制御する制御部と を備える写真シール作成装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、利用者の顔付近を照射するストロボが「カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ」た「カメラストロボ」であり、利用者の足元を照射する足元ストロボが「前記筐体の下方に設けられ」ているのに対し、引用発明では、そのような特定とはなっていない点。 [相違点2] 本願発明では、第1の場合が「前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整されて撮影が行われる場合」であり、第2の場合が「前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整されて撮影が行われる場合」であるとともに、「カメラ部」が「ズームリングを回転させることで、カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有」しているのに対し、引用発明では、第1の場合が「バストアップ撮影を行う」場合であり、第2の場合が「全身撮影を行う」場合であり、また、撮影装置(本願発明の「カメラ部」に相当。)がズームするとはされていない点。 5 相違点の判断 上記各[相違点]について検討する。 (1)[相違点1]について ア 本願発明の「カメラストロボ」の意義とともに、本願発明において、利用者の顔付近を照射するストロボが「カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ」た「カメラストロボ」である技術的意義、及び、利用者の足元を照射する足元ストロボが「前記筐体の下方に設けられ」ている技術的意義について検討する。 (ア)本願の明細書には、【発明を実施するための形態】として、次の記載がある。 a カメラストロボに関する記載は次のとおりである。 「カメラ91の背面側には、カメラストロボ92が設けられ、カメラ91は、カメラストロボ92の表面側で上下方向に駆動(移動)するようになされている。カメラストロボ92は、発光面を構成するアクリル板と、その背後に設けられる蛍光灯等の照明装置とから構成され、他のストロボと同様にカメラ91による撮影に合わせて発光する。カメラストロボ92においては、カメラ91の上下方向の位置に応じて露出する部分が発光面となる。つまり、カメラストロボ92は、カメラ91の上下方向の位置に応じて、被写体としての利用者の顔付近をカメラ91の上方または下方から照射する。」(段落【0052】)、 「[撮影・表示ユニットの構成例] 図5は、上下方向に駆動するカメラ91を含む撮影・表示ユニット81の詳細な構成例を示している。」(段落【0064】)、 「図5Aに示されるように、撮影・表示ユニット81は、縦長の直方体の形状を有する筐体の一側面に、カメラ91、カメラストロボ92、およびタッチパネルモニタ93が設けられることで構成される。カメラ91およびカメラストロボ92の周囲には、それらを囲うような額縁状のカバー94が設けられており、カメラ91は、カバー94の開口部の範囲内で上下方向に駆動する。」(段落【0065】)、 「図5Bは、図5Aの状態から、タッチパネルモニタ93およびカバー94を取り外した撮影・表示ユニット81を示している。図5Bに示されるように、カメラ91は、カメラストロボ92の発光面を構成するアクリル板95と一体に構成されており、アクリル板95は、カメラ91とともに上下方向に駆動する。また、カメラ91は、カメラ支持部96によってその側面が支持されており、カメラ支持部96に設けられたガイド溝に従って上下方向に駆動する。」(段落【0066】)、 「図5Cは、図5Bの状態から、アクリル板95を取り外した撮影・表示ユニット81を示している。図5Cに示されるように、カメラ91の背面上方には、カメラ上蛍光灯97Uが設けられ、カメラ91の背面下方には、カメラ下蛍光灯97Dが設けられている。カメラ91は、カメラストロボ92を構成する照明装置としてのカメラ上蛍光灯97Uおよびカメラ下蛍光灯97Dと一体に構成されており、カメラ上蛍光灯97Uおよびカメラ下蛍光灯97Dは、カメラ91とともに上下方向に駆動する。」(段落【0067】)、 「つまり、図5Aに示されるように、カメラ91がカバー94の開口部の下端に位置し、下カメラの状態となるとき、カメラ91の上側のアクリル板95が露出し、カメラ上蛍光灯97Uが発光することで、カメラストロボ92は、被写体としての利用者の顔付近をカメラ91の上方から照射する。」(段落【0068】)、 「また、図示はしないが、カメラ91がカバー94の開口部の上端に位置し、上カメラの状態となるとき、カメラ91の下側のアクリル板95が露出し、カメラ下蛍光灯97Dが発光することで、カメラストロボ92は、被写体としての利用者の顔付近をカメラ91の下方から照射する。」(段落【0069】) b 足元ストロボに関する記載は次のとおりである。 「本発明の一側面の写真シール作成装置は、利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって、ズームリングを回転させることで、カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有するカメラ部と、前記カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ、利用者の顔付近を照射するカメラストロボと、前記筐体の下方に設けられ、利用者の足元を照射する足元ストロボと、前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整されて撮影が行われる場合、前記足元ストロボを発光させずに前記カメラストロボの発光を制御し、前記カメラ部において、前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整されて撮影が行われる場合、前記カメラストロボおよび前記足元ストロボの発光を制御する制御部とを備える。」(段落【0013】)、 「本発明においては、ズームリングを回転させることで、カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有するカメラ部と、カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ、利用者の顔付近を照射するカメラストロボと、筐体の下方に設けられ、利用者の足元を照射する足元ストロボとが設けられ、カメラ部において、カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整されて撮影が行われる場合、足元ストロボを発光させずにカメラストロボの発光が制御され、カメラ部において、カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整されて撮影が行われる場合、カメラストロボおよび足元ストロボの発光が制御される。」(段落【0018】)、 「[撮影部の構成] 図4は、撮影部21の構成例を示す図である。撮影部21は、正面パネル41、側面パネル42A、および側面パネル42Bが、箱状の形状を有するベース部43に取り付けられることによって構成される。」(段落【0048】)、 「正面パネル41には、撮影・表示ユニット81の位置を基準として、上方に上ストロボ82が設置される。また、左方に左ストロボ83が設置され、右方に右ストロボ84が設置される。撮影・表示ユニット81の下方の位置には、ベース部43の上面が一部突出する形で下ストロボ85が設けられる。」(段落【0054】)、 「ベース部43には利用者の足元を照射する足元ストロボ86も設けられる。上ストロボ82、左ストロボ83、右ストロボ84、下ストロボ85、および足元ストロボ86の内部には蛍光灯が設けられており、天井ストロボユニット24を構成するストロボの内部の蛍光灯と合わせて、撮影空間A1内の照明として用いられる。各蛍光灯の発光量が調整されることによって、または、発光させる蛍光灯の数が調整されることによって、撮影空間A1内の明るさが、利用者が行っている撮影作業の内容に応じて適宜調整される。」(段落【0056】)、 「また、上カメラ位置および下カメラ位置を含むカメラ91の上下位置や、その上下位置に応じたカメラ91の焦点距離に応じて、照明装置222(ストロボ)の発光を制御するようにしてもよい。」(段落【0252】)、 「具体的には、例えば、カメラ91の上下位置が上カメラ位置で、ズームアウトするように焦点距離が調整されている場合、すなわち、上カメラ全身撮影が行われる場合には、利用者の全身(顔から足元まで)が照射されるように、発光させるストロボの数や位置が制御される。また、カメラ91の上下位置が下カメラ位置で、ズームインするように焦点距離が調整されている場合、すなわち、下カメラアップ撮影が行われる場合には、利用者の顔付近が照射されるように、発光させるストロボの数や位置が制御される。」(段落【0253】) c 図4及び図5は次のとおりである。 (イ)以上を踏まえ、まず、「カメラストロボ」の意義について検討する。 a 本願の明細書には「カメラストロボ」の定義は記載されていないところ、「カメラストロボ」との用語の意義は、その文言に照らせば、カメラ用のストロボを意味するものと解される。なお、「カメラストロボ」との用語が、カメラ用のストロボという意義よりもさらに限定された意義を有するとの特段の技術常識の存在は認められない。 そこで、本願発明の「カメラストロボ」をカメラ用のストロボと解することの妥当性について、本願の明細書の記載を踏まえて検討する。 b 上記(ア)aの各記載によれば、「カメラストロボ」の一実施形態である「カメラストロボ92」は、次のとおりのものであると認められる。 (a)カメラストロボ92は、縦長の直方体の形状を有する筐体の一側面に、カメラ91およびタッチパネルモニタ93とともに設けられているとともに、カメラ91およびカメラストロボ92の周囲には、それらを囲うような額縁状のカバー94が設けられ、また、カメラ91、カメラストロボ92およびタッチパネルモニタ93によって撮影・表示ユニット81が構成されていること(段落【0065】)。 (b)カメラストロボ92は、発光面を構成するアクリル板と、その背後に設けられる蛍光灯等の照明装置(カメラ上蛍光灯97Uおよびカメラ下蛍光灯97D)とから構成されること(段落【0052】・【0067】)。 (c)カメラストロボ92は、カメラ91の背面側に設けられていること(段落【0052】・【0067】)。 (d)カメラストロボ92は、他のストロボと同様にカメラ91による撮影に合わせて発光すること(段落【0052】)。 (e)カメラストロボ92の構成要素であるアクリル板95、カメラ上蛍光灯97U及びカメラ下蛍光灯97Dは、カメラ91と一体に構成されており、カメラ91とともに上下方向に駆動すること(段落【0066】・【0067】)。 (f)カメラストロボ92では、カメラ91の上下方向の位置に応じて露出する部分が発光面となり、すなわち、カメラストロボ92は、下カメラの状態となるとき、カメラ91がカバー94の開口部の下端に位置するので、被写体としての利用者の顔付近をカメラ91の上方から照射し、上カメラの状態となるとき、カメラ91がカバー94の開口部の上端に位置するので、同付近をカメラ91の下方から照射すること(段落【0052】・【0068】・【0069】)。 c 上記bにおいて、(d)の事項は、「カメラストロボ」を上記aのとおり解することと整合しているといえる。 他方、(a)・(b)・(c)・(e)・(f)の各事項は、「カメラストロボ」を上記aのとおり解した内容よりもさらなる限定を含むものであるが、その限定を、「カメラストロボ」との文言及び本願発明の特定事項の文言から導き出せるということはできない。 そして、本願の明細書には、「カメラストロボ」の意義を上記aのとおり解することと特段矛盾する記載は見当たらない。 d 以上によれば、「カメラストロボ」は、上記aのとおり、カメラ用のストロボと解するのが相当である。 (ウ)次に、本願発明において、利用者の顔付近を照射するストロボが「カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ」た「カメラストロボ」である技術的意義について検討する。 a 上記(イ)bの各事項からすると、実施形態におけるカメラストロボ92は、発光面を構成するアクリル板95と、その背後に設けられる蛍光灯等の照明装置(カメラ上蛍光灯97Uおよびカメラ下蛍光灯97D)とから構成されるものであるとともに、カメラ91の背面側に、カメラ91と一体となって筐体の一側面に設けられているものであって、カメラ91、カメラストロボ92、およびタッチパネルモニタ93によって撮影・表示ユニット81を構成するものであるところ、カメラ91の上下駆動に伴って、カメラストロボ92も上下駆動することにより、上カメラ及び下カメラのいずれの状態であっても、被写体としての利用者の顔付近を照射することができるものと認められる。 そうすると、上記実施形態において、利用者の顔付近を照射するストロボが、カメラ部とともに1つの筐体内に設けられたカメラストロボである技術的意義としては、図5(上記(ア)c)をも踏まえると、カメラストロボが発光面を構成するアクリル板95を含むとともにカメラ部の背面側に設けられたことに伴う装置としての機能性・収納性の向上や、一体的に駆動する機構をユニット化することに伴う取り扱いの容易性などが考えられる。 b しかしながら、本願の明細書には、上記aで述べた技術的意義の内容について明記するところはない上、本願発明の特定事項には、筐体内の駆動機構の存在、カメラストロボの具体的構成並びに筐体内におけるカメラとカメラストロボとの位置関係及び機構的関係などについて何ら特定していない。 そうすると、本願発明における、利用者の顔付近を照射するストロボが「カメラ部とともに1つの筐体内に設けられ」た「カメラストロボ」である技術的意義としては、単なるユニット化以上の格別なものがあるとはいえない。 (エ)最後に、利用者の足元を照射する足元ストロボが「前記筐体の下方に設けられ」ている技術的意義について検討する。 a 上記(ア)bの各記載及び図4(上記(ア)c)によれば、足元ストロボについて次のことが認められる。 (a)足元ストロボ86は、撮影部21を構成する箱形の形状を有するベース部43に設けられていること(段落【0048】・【0056】)。 (b)足元ストロボ86は、撮影・表示ユニット81を構成する筐体の下方に設けられていること(図4)。 (c)足元ストロボ86は、利用者の足元を照射すること(段落【0056】)。 (d)足元ストロボ86は、カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整されて撮影が行われる場合、発光させないが、カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整されて撮影が行われる場合、発光させるものであること(段落【0013】・【0018】・【0252】・【0253】)。 b 上記aの各事項によれば、「足元ストロボ」は利用者の足元を照射するものであって、それがゆえに、下方に設けられているものと解される。 しかしながら、そのことを超えて、「足元ストロボ」を「筐体の下方に設け」ることによる格別な技術的意義を見いだすことができない。 イ 上記アの検討を踏まえ、[相違点1]の容易想到性について判断する。 機能的に関連する複数の部位を1つの筐体内に設けることは、いわゆるユニット化として、慣用されている技術であり、そのことは、本願発明の属する技術分野においても、本願の明細書(段落【0007】)に先行技術文献として提示された、同一出願人の出願に係る特開2009-169206号公報(段落【0038】・【0040】・図4?図6)に、カメラ51とストロボユニット52を備えた前方ユニット11Aについて示されているとおりである。 そして、引用発明には、光源として、下方に設けられていない、被写体のバストアップを照明する「前部光源」と、主に被写体の下部を照明する「下方に設けられている前部光源」とが少なくとも備わっているところ、これらの光源をどのように設けるのかは、当業者が実施に当たり適宜設計し得る事項であるといえる。 そうすると、引用発明における前部光源のうち下方に設けられていないものを、撮影装置(本願発明の「カメラ部」に相当。)とともに1つの筐体内に設けることは上記慣用技術に照らして当業者が適宜設計し得たことであり、その際、「下方に設けられている前部光源」(本願発明の「足元ストロボ」に相当。)をその筐体の下方に設けることも当業者が適宜設計し得たことである。 (2)[相違点2]について ア 本願発明の属する技術分野において、利用者の利便性を図ることは例示するまでもなく周知の課題であると認められる。 そして、引用例2には、上記3(2)イのとおり、従来のフォトブースでは、使用者がちょうどよい撮影ポジションへ体を移動させる必要があり、撮影が非常に面倒であったため、使用者が自身の意思により撮影範囲を選択することが可能とし、例えば、カメラをズームインさせて使用者の顔をズームアップさせた画像を撮影したり、また、カメラをズームアウトさせて使用者の全身の姿を撮影したりするようにしたものが記載されている。 他方、引用発明は、全身撮影を行うときには、被写体は、撮影装置から離れた位置に立ち、バストアップ撮影を行うときには、被写体は、撮影装置に近い位置に立つものである。 そうすると、引用発明において、利用者の利便性を図るべく、引用例2に記載された技術的事項を参酌して、撮影装置(本願発明の「カメラ部」に相当。)について、全身撮影を行う場合はズームアウトさせるとともに、バストアップ撮影を行うときはズームインさせるようにすることは当業者が容易に想到できたことである。 イ そして、撮影装置をズームイン及びズームアウトさせる際の具体的手法は、当業者が実施に当たり適宜設計し得ることであるところ、当該手法として、ズームリングとモータとを用いることは周知技術である(例えば、原査定の拒絶の理由で提示された特開平5-100143号公報の段落【0004】・図1のほか、登録実用新案第3140690号公報の段落【0019】・図1を参照。)。 ウ 以上によれば、引用発明において、上記[相違点2]に係る構成となすことに、格別の困難性があるとはいえない。 (3)本願発明の作用効果について 本願発明の作用効果は、上記(1)アの検討にも照らせば、引用発明、引用例2に記載された事項、上記慣用技術及び上記周知技術に比して、格別のものとはいえない。 (4)小括 したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項、上記慣用技術及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-28 |
結審通知日 | 2015-04-30 |
審決日 | 2015-05-12 |
出願番号 | 特願2014-180450(P2014-180450) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 登丸 久寿 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
佐竹 政彦 山村 浩 |
発明の名称 | 写真シール作成装置 |
代理人 | 稲本 義雄 |
代理人 | 西川 孝 |