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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1302651
審判番号 不服2014-297  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-08 
確定日 2015-07-01 
事件の表示 特願2010- 76552「マイクロプレート」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日出願公開、特開2011-209084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年3月30日の出願であって、平成25年5月8日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成27年2月17日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明は、平成27年4月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「複数のウェルと、前記複数のウェルの周囲に配置されるフレーム部材とを有するマイクロプレートであって、
前記ウェルの開口部の端面が、フレーム部材よりも5mm以上30mm以下で突出しており、
少なくとも前記ウェルの側面部の周囲かつ前記フレーム部材の上方にフィルタープレート保持具を配設させ、かつ、前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と間隙をもって重なるように配設させることによって、真空マニホールドに装着させるために用いられ、
前記間隙が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とするマイクロプレート。」

3 当審の拒絶理由通知
当審の拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。
(1)(省略)
(2)本願の請求項1?4に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特表2004-526950号公報及び特表平10-510501号公報に記載されたような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 刊行物の記載事項
本願出願前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用されたた刊行物である特表2004-526950号公報(以下、「刊行物1」という。」)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1?図3に、本発明によるマルチウェル濾過装置10を示す。装置10は一般に流体、例えば血液検体またはその他の体液を受けるようになされた分離プレート12と、真空カラー14と、分離プレート12を通過した体液の成分を捕捉し、かつ収容する収集手段16とを含む。真空カラー14を真空源(図示せず)に接続するための、例えばホースバーブコネクタ18のような手段も備えられる。
【0013】
図2に最も良く示される分離プレート12は、従来のマルチウェル分離プレートであってよい。分離プレート12は、濾過または固相抽出技術によって処理すべき体液の多数の試験検体を受けるために、複数、例えば96個のウェル22を含む手段を有する。分離プレートのウェル22は、ここでは「濾過ウェル」と呼ぶこともある。図示した実施態様10における分離プレート12内のウェル22の数は、分析または研究を行う者の都合によるだけであることが理解されるであろう。分離プレート12に含まれるウェルの数は1つだけであってもよく、またプレート12の実際の寸法を定める上で機能的に許容されるだけ多くのウェルを含むこともできる。体液の試験試料は、通常は体積が約500マイクロリットルよりも小さいことが多く、ウェル22は概してこのような小体積を収容する寸法とされる。分離プレート12は、一般に利用可能な任意の弾力があり非反応性の材料で形成できる。
【0014】
図2の破断部分に示されるように、分離媒体24が一般に濾過ウェル22の各々の底部に配置され、体液がウェル22を通過するときに流体の成分を分離して保持するように機能する。分離媒体24は、考えている用途に適した1層または多層構造の任意のフィルター、膜、マトリックス等からなる。
【0015】
ここで特に図4を参照する。分離プレート12はほぼ一体に成形された構造で、濾過ウェル22の各々は分離プレート12の全厚みを貫通して延びる一般に円筒形の開口34からなる。より具体的には、各濾過ウェル22は比較的広い受け入れ部38と比較的小さい出口部39を含んで、ノズル状の先端部を形成する。フィルター24は図示するように入り口部38の底部に配置され、保持リング42または他の通常の手段によって所定位置に保持することができる。隣接するウェル22の入り口部38は、共通の壁44によって規定することができる。ここで図1?図3を参照して、分離プレート12は面47を持つほぼ長方形の上部46を含み、面47内で濾過ウェル22は図示のようなマトリックス状に配置される。特に図2を参照して、分離プレート12は更に下部48を持ち、濾過ウェル22のノズル状の先端部39はこの下部48から垂下する。
【0016】
ここで図2および図4を参照して、図示の実施態様10における収集手段16はマルチウェル収集プレートからなる。収集プレート16は、濾過ウェル22の先端出口部39から排出される体液検体の液体成分、すなわち濾液または溶出液を受けるための手段、例えば複数のウェル52を含む。収集ウェル52の各々は液体成分を収容するために、収集プレート16の面54(図2参照)内で規定される入り口53と、閉じた底部(図4参照)を持つ。収集プレート16には、かかるウェル52をいくつでも含むことができるが、96ウェル収集プレートが典型的な例である。隣接する2つの収集ウェル52は共通の壁58を共有することができる。
【0017】
本発明によれば、真空カラー14は分離プレート12と収集プレート16の間のインターフェースとなり、それらを接続するように成されることが重要である。より具体的には図2に示すように、真空カラー14は一般に中央にあるスペース64を規定する内壁62と、外壁66を含む。スペース64は分離プレート12の下部48と収集プレート16の面54を受けるような寸法とされる。
【0018】
真空カラー14が分離プレート12と収集プレート16の間に接続されると、収集ウェル52の各々は濾過ウェル22の対応する1つと位置合わせされる。図示された実施態様では、真空カラー14は濾過ウェル22の先端排出口39の位置が収集ウェル52内に所定の距離だけ挿入されて、溶出液または濾液が隣接するウェルを汚染しないことを保証するように構成される。
【0019】
真空に引く対象となるチャンバー68は分離プレート12、収集プレート16および内壁62の間に規定される:図4参照。ホースバーブ継手18に加えて、真空カラー14にはチャンバー68と連通するバルブ70を含むことができる。」

以上の記載事項から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「分離プレート12の濾過ウェル22のノズル状先端出口部39から排出される濾液を受けるための複数の収集ウェル52を含む収集プレート16であって、
収集ウェル52の各々は液体成分を収容するために、収集プレート16の面54内で規定される入り口53と、閉じた底部を持ち、
分離プレート12は面47を持つほぼ長方形の上部46を含み、面47内で濾過ウェル22はマトリックス状に配置され、分離プレート12は更に下部48を持ち、濾過ウェル22のノズル状の先端部39はこの下部48から垂下するものであり、
真空カラー14は分離プレート12と収集プレート16の間のインターフェースとなり、それらを接続するように成され、
真空カラー14は中央にあるスペース64を規定する内壁62と、外壁66を含み、スペース64は分離プレート12の下部48と収集プレート16の面54を受けるような寸法とされ、
真空カラー14が分離プレート12と収集プレート16の間に接続されると、収集ウェル52の各々は濾過ウェル22の対応する1つと位置合わせされ、
真空カラー14は濾過ウェル22のノズル状の先端部39の位置が収集ウェル52内に所定の距離だけ挿入されて、濾液が隣接するウェルを汚染しないことを保証するように構成され、
真空に引く対象となるチャンバー68は分離プレート12、収集プレート16および内壁62の間に規定される、収集プレート16。」(以下、「引用発明」という。)

5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「複数の収集ウェル52」、「収集プレート16」、「分離プレート12」及び「真空カラー14」が、それぞれ、本願発明の「複数のウェル」、「マイクロプレート」、「フィルタープレート」及び「フィルタープレート保持具」に相当する。

(2)引用発明の「複数の収集ウェル52を含む」「収集プレート16」の側面の部材は、「複数の収集ウェル52」の周囲に配置されるフレーム部材といえるから、引用発明の「複数の収集ウェル52を含む」「収集プレート16」は、本願発明の「複数のウェルと、前記複数のウェルの周囲に配置されるフレーム部材とを有するマイクロプレート」に相当する。

(3)引用発明の「真空カラー14」の「スペース64」は「収集プレート16の」「入り口53」を「規定する」「面54を受ける」のであるから「収集プレート16」に対して「真空カラー14」が上方になることは明らかである。よって、上記(2)の対比も参照すれば、引用発明の「複数の収集ウェル52を含む」「収集プレート16」に「真空カラー14」を「接続」させることは、本願発明の「前記フレーム部材の上方にフィルタープレート保持具を配設させ」ることに相当する。
また、引用発明の「真空カラー14」に「分離プレート12」を「接続」させ、「収集ウェル52の各々は濾過ウェル22の対応する1つと位置合わせさ」せ、「真空カラー14は濾過ウェル22のノズル状の先端部39の位置が収集ウェル52内に所定の距離だけ挿入され」ることと、本願発明の「前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と間隙をもって重なるように配設させること」とは、「前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と重なるように配設させること」の点で共通する。
さらに、引用発明の「分離プレート12、収集プレート16および内壁62の間に規定される」「真空に引く対象となるチャンバー68」に「接続」させるために用いられる「収集プレート16」は、本願発明の「真空マニホールドに装着させるために用いられ」る「マイクロプレート」に相当する。
したがって、引用発明の「複数の収集ウェル52を含む」「収集プレート16」に「真空カラー14」を「接続」させ、「真空カラー14」に「分離プレート12」を「接続」させ、「収集ウェル52の各々は濾過ウェル22の対応する1つと位置合わせさ」せ、「真空カラー14は濾過ウェル22のノズル状の先端部39の位置が収集ウェル52内に所定の距離だけ挿入され」ることによって、「分離プレート12、収集プレート16および内壁62の間に規定される」「真空に引く対象となるチャンバー68」に「接続」させるために用いられる「収集プレート16」と、本願発明の「少なくとも前記ウェルの側面部の周囲かつ前記フレーム部材の上方にフィルタープレート保持具を配設させ、かつ、前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と間隙をもって重なるように配設させることによって、真空マニホールドに装着させるために用いられ、前記間隙が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とするマイクロプレート」とは、「前記フレーム部材の上方にフィルタープレート保持具を配設させ、かつ、前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と」「重なるように配設させることによって、真空マニホールドに装着させるために用いられ」る「マイクロプレート」の点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「複数のウェルと、前記複数のウェルの周囲に配置されるフレーム部材とを有するマイクロプレートであって、
前記フレーム部材の上方にフィルタープレート保持具を配設させ、かつ、前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と重なるように配設させることによって、真空マニホールドに装着させるために用いられるマイクロプレート。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「フィルタープレート保持具を配設させ」る位置である「フレーム部材の上方」が、本願発明では「前記ウェルの側面部の周囲」となり、その結果、「前記ウェルの開口部の端面が、フレーム部材よりも5mm以上30mm以下で突出」するのに対し、引用発明ではそのようなものではない点。

(相違点2)
「前記フィルタープレート保持具の上部に、フィルタープレートを、前記ウェルの開口部の端面と重なるように配設させること」について、本願発明では「間隙をもって」配設させるもので、「前記間隙が0.5mm以上3mm以下である」のに対し、引用発明ではそのようなものではない点。

(相違点1について)
引用発明の「分離プレート12」が「下部48を持ち、濾過ウェル22のノズル状の先端部39」が「この下部48から垂下」し、「真空カラー14」の「中央にあるスペース64は分離プレート12の下部48」「を受ける」構成は、濾過ウェル22のノズル状先端出口部39がフレーム部材に相当する上部46の側面の部材よりも下方に突出し、濾過ウェル22の側面部の周囲かつフレーム部材に相当する上部46の側面の部材の下方に真空カラー14を配設させるものといえる。
そして、「濾過ウェル22のノズル状先端出口部39の位置が収集ウェル52内に所定の距離だけ挿入され」るようにするためには、真空カラー14の厚みに対して濾過ウェル22のノズル状先端出口部39と収集ウェル52の入り口53を近づける構成が必要があることは明らかであり、そのために、引用発明のように、濾過ウェル22のノズル状先端出口部39をフレーム部材に相当する上部46の側面部材よりも下方に突出させて、濾過ウェル22の側面部の周囲かつフレーム部材に相当する上部46の側面部材の下方に真空カラー14を配設するように成すか、反対に、収集ウェル52の入り口53を、フレーム部材に相当する収集プレート16の側面の部材よりも上方に突出させて、「収集ウェル52の側面部の周囲」かつフレーム部材に相当する収集プレートの側面の部材の上方に真空カラー14を配設するように成すかは、当業者が適宜選択し得るものというべきであり、後者を採用して、相違点1に係る本願発明の構成の如くすることに格別の困難性はない。
また、その際の突出量は真空カラー14の厚み等を考慮しながら当業者が設定し得る設計的事項であり、5mm以上30mm以下とすることは当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点2について)
マイクロプレートと共に用いる濾過ウェルの先端部をノズル状でなく平坦なものにすることは、周知技術である。また、その際にも、滴下する液体を水平方向へそらさないように、濾過ウェルと収集ウェルとの距離を真空の程度に合わせて十分小さくしなければならないことは、例えば、当審の拒絶の理由に引用された特表平10-510501号公報(以下、「刊行物2」という。13頁16?19行の「第1の液体容器24と第2の液体容器30との間の距離は、第2の液体容器30から第1の液体容器24へ滴下する液体を水平方向へそらさないように、真空マニホルド10内で使用されるべき真空の程度と関連して注意深く選定されなければならないことを当業者が認識するであろう。」との記載が、距離が大きくなれば滴下する液体を水平方向にそらすおそれが大きくなるという技術常識に鑑みれば、距離を真空の程度に合わせて十分小さくしなければならないことを意味することは当業者に自明である。)に記載されているように周知技術である。さらに、0.5mm以上3mm以下の距離が技術常識からみて特異な数値ということもできない。したがって、引用発明のノズル状先端出口部に代えて、周知技術である平坦な先端部とすることに格別の困難性はなく、その際に、周知技術の如く濾過ウェルと収集ウェルとの距離を真空の程度に合わせて十分小さくすることにより、0.5mm以上3mm以下とすることは、当業者が容易になし得たというべきである。

なお、請求人は、平成27年4月13日の意見書において、刊行物2の内部リップ32の内側への突出量は、液体容器24の上方突出部分の側面よりも内側まで達しており、濾過ウェルと収集ウェルとの間の距離を十分小さくすることの開示はなく、設計上不可能な装置しか記載されていないことから当該距離を十分小さくすることの示唆がない旨主張する。しかしながら、引用発明のノズル上の先端部に代えて、平坦なものを採用した際に、滴下する液体を水平方向へそらさないように、濾過ウェルと収集ウェルとの距離を真空の程度に合わせて十分小さくしなければならないという周知技術を適用する場面では、内部リップ32は無関係であって、濾過ウェルと収集ウェルの距離を0.5mm以上3mm以下とすることに何ら支障はないといえる。したがって、請求人の主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-07 
結審通知日 2015-05-08 
審決日 2015-05-20 
出願番号 特願2010-76552(P2010-76552)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松本 隆彦
藤田 年彦
発明の名称 マイクロプレート  
代理人 特許業務法人 クレイア特許事務所  

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