• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1302660
審判番号 不服2014-4490  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-07 
確定日 2015-07-01 
事件の表示 特願2010-238132「小気孔分子篩を有する混合マトリックス膜、その膜の製造方法及びその膜の使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年3月17日出願公開、特開2011-50956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年12月24日(以下、「本願優先日」という。)(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願の一部を、平成22年10月25日に新たな出願としたものであって、平成22年11月22日に手続補正書が提出され、平成24年9月24日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月27日に意見書が提出されたが、同年11月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成26年3月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年3月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年3月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成26年3月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成22年11月22日付けで手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1である、
「連続相有機重合体及びその中に分散した小気孔分子篩を含む混合マトリックス膜であって、前記分子篩が3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有し、かつ、前記分子篩がERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGISの少なくとも一つのIZA構造型を有しており、前記膜が混合マトリックス効果を示す、前記膜。」
を、
「連続相有機重合体及びその中に分散した小気孔分子篩を含む混合マトリックス膜であって、前記分子篩が3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有し、かつ、前記分子篩がERIのIZA構造型を有しており、前記膜が混合マトリックス効果を示す、前記膜。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)目的要件
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である分子篩のIZA構造型が、「ERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGISの少なくとも一つ」であったものを、「ERI」に限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(請求項1についての補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるか)を、進歩性について検討する。

ア 刊行物及び本願優先日における技術常識を示す文献例
・刊行物1 特開平2-4416号公報(原査定の引用文献2である。以下、「刊行物1」という。)
・文献例a1 特開2001-29760号公報(原査定の引用文献1である。以下、「文献例a1」という。)
・文献例a2 特開平10-330173号公報(以下、「文献例a2」という。)
・文献例b1 特開2003-114067号公報(以下、「文献例b1」という。)
・文献例b2 特開2003-286013号公報(以下、「文献例b2」という。)
・文献例b3 原 伸宜・高橋 浩編著「ゼオライト」(株式会社 講談社 1997年3月10日第12刷発行)p59,p116(以下、「文献例b3」という。)

イ 刊行物及び文献例に記載された事項
(ア)刊行物1
刊行物1は、「複合膜による気相混合物の各成分の分離方法」と題する特許文献で、本願優先日前に頒布された刊行物であるといえる。
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
1a 「従来技術およびその問題点
膜による分離法、特に気体透過法は最近、著しい発展をみたが、これは活性層厚が極めて薄い膜、ならびに比表面積が非常に大きい空洞繊維モジュール(module)の完成のおかげによるものである。
しかし、例えば、水素と炭化水素の混合ガスからの水素の分離、または、炭酸ガスと炭化水素の混合ガスからの炭酸ガスの分離のような工業的な用途が現在既にあるこれらの方法も、未だ炭化水素異性体の分離の分野では成功しなかった。
…略…炭化水素異性体の分離は、新設計の膜を使用すれば可能になることが発見された。
更に、本発明による方法によれば、より有利な条件で、水素とメタンガス、メタンと炭酸ガスのような混合ガスの分離が可能となる。」(2頁左下欄19行ないし右下欄20行)
1b 「本発明による方法で使用される膜は、分離すべき混合物中に存在する各成分中の一つに対して選択的である吸着剤の分散相を組み込んだ複合膜である。」(3頁左上欄1ないし4行)
1c 「連続的でかつ、非多孔質のポリマー相に、後で明示するような条件を遵守するという条件で、選択性の吸着剤の相の粒子を分散させれば、前記の欠点がなくて、効率が改善された選択性複合層を実現しうることが判明した。」(4頁右上欄2ないし6行)
1d 「吸着剤の分散相は成分Aに対して選択的でなければならない。
各種の天然ゼオライトまたは人造ゼオライトによって構成された分子篩は、分子寸法またはそれらの化学的親和力が異なる各成分間の選択的分離の目的で、既に使用されている。…略…
様々な種類の分子篩を用いて、本発明で用いる膜の非多孔質ポリマー内に分散相を構成することができる。
従って、例えば、
分子篩3Aとも称されるKA型のゼオライトによれば、その分子の寸法が3オングストローム(1Å=1×10^(-10)m)以下の成分を、分子寸法が3Å以上の成分から分離することができる。…略…
分子篩4Aとも言われているNaA型のゼオライトによれば、分子寸法が4Å以下である成分を、分子寸法が4Å以上である成分から分離することができる。
分子篩5Aとも称せられているCaA型のゼオライトによれば、n-パラフィンとイソパラフィンの混合物からn-パラフィンを分離することができる。」(5頁右下欄19行ないし6頁右上欄6行)
1e 「実施例1(比較用)
a) 下記のようにして先行技術による膜を調製する。すなわち、
100重量部のn-メチルピロリドン(NMP)中に商標ULTEMのポリエーテルイミドを25重量部を溶解して溶液Aを得る。
130℃の窒素中で、粘稠な物質が得られるまで溶媒を調節蒸発した後、この粘稠物質を、厚さ1mmの05級のステンレス鋼焼結品に均一に塗布して、溶媒蒸発後の厚さが0.15mmに等しいフィルムを得るようにする。溶媒の蒸発には大気圧下で50から200℃に逐次加熱し、次に200℃で24時間滞留し、真空中で24時間、この温度にする。
b) 分離:
第3図において、管路(7)を経て、常温常圧の状態で測定した1m^(3)/時という流量で、60バールの圧力で水素とメタンの等モル混合物を装入する。高圧と低圧(△P=30バール)の部屋が表面積1m^(3)の上記の膜で分離されている。これらの部屋は室温に近い温度に維持されている。管路(9)を経て0.35g/lの水素と、0.002g/時のメタンを排出する。」(8頁左上欄1行ないし右上欄3行)
1f 「実施例2(比較用)
平均寸法が1マイクロメーター以下の粒子で構成された4Aゼオライト12.5重量部を24時間、10^(-3)torrの真空中で350℃にする。真空中で冷却した後、真空中で100重量部のNMPを添加する。ゼオライト4AとNMPの混合物を大気圧に戻したものが懸濁液Bを構成する。
45重量部のNMPに、11重量部のポリエーテルイミドULTEMを溶解して溶液Aを調製する。
撹拌後、懸濁液Bを溶液Aに混入する。
次に、この混合物を窒素中で130℃にし、結局NMPの約半分を蒸発させて粘稠な物質を得るようにする。
b) この混合物を厚さ1mmの0.5級のステンレス鋼の焼結品に均一に塗って、実例1a)に従って実施する溶媒蒸発後に厚さが0.15mmのフィルムが得られるようにする。実施例1b)による分離を実施し、管路(9)を経て、3.1g/時の水素と、0.004g/時のメタンを回収する。」(8頁右上欄4行ないし左下欄5行)

(イ)文献例a1
「【0036】…略…一般にゼオライトは、モレキュラーシーブと呼ばれるように、分子をサイズ差で分けることができる。水素、水、一酸化炭素、二酸化炭素のそれぞれの最小分子サイズ(キネティックダイアミター:Kinetic Diameter)は、それぞれ2.89,2.6,3.76,3.3オングストロームであり(ブレック著ゼオライト モレキュラー シーブス(1974年ジョンウィリー アンド サンズ出版)p636?637)」

(ウ)文献例a2
「【0004】…略…炭酸ガスの分子径0.33nmとメタンガスの分子径0.38nm…略…なお、ここで、分子径とは、分子の最小の径を示す。」

(エ)文献例b1
「【0023】…略…ALPO-17はERI型(フレームワーク密度=15.7T/1000Å^(3)細孔径3.6×5.1Å)のゼオライトである。」

(オ)文献例b2
「【0022】…略…実験式(Na,K)_(9)Al_(9)Si_(27)O_(72)・27H_(2)Oで表されるエリオナイトタイプのモレキュラーシーブであって、最小および最大窓(細孔)直径3.5Åおよび5.2Åを有し」

(カ)文献例b3
p59「


p116「


ウ 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「膜による分離法、特に気体透過法」(摘示1a)について記載するものであって、その方法に使用される膜は、「連続的でかつ、非多孔質のポリマー相に、…選択性の吸着剤の相の粒子を分散させ」た(摘示1c)、「分離すべき混合物中に存在する各成分中の一つに対して選択的である吸着剤の分散相を組み込んだ複合膜」(摘示1b)である。
そして、その膜の具体例と認められる「実施例2」(摘示1f)には、「ポリエーテルイミドULTEM」に「ゼオライト4A」が分散した膜が記載されていることが認められる。
そうすると、刊行物1には、
「ポリエーテルイミドULTEMにゼオライト4Aが分散した膜」
(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

エ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の膜における、「ポリエーテルイミドULTEM」は、「連続的でかつ、非多孔質のポリマー相」(摘示1c)であると認められるから、本件補正発明における「連続相有機重合体」に相当し、引用発明の「ゼオライト4A」は、「分子寸法が4Å以下である成分を、分子寸法が4Å以上である成分から分離することができる」という「分子篩」(摘示1d)であるといえるから、本件補正発明における「分子篩」に対応するものである。
そして、引用発明の「膜」は、分子篩粒子が有機重合体のマトリックスに分散混合したものであるから、本件補正発明における「混合マトリックス膜」に相当するといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「連続相有機重合体及びその中に分散した分子篩を含む混合マトリックス膜。」
の点で一致し、以下の点A,Bにおいて一応相違する。
A 分子篩が、本件補正発明は、「小気孔」のものであって、「3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有し、かつ、前記分子篩がERIのIZA構造型を有して」いるものであるのに対して、引用発明は、「ゼオライト4A」である点(以下、「相違点A」という。)
B 膜が、本件補正発明は、「混合マトリックス効果を示す」ものであるのに対し、引用発明は、そのような効果を示すものであるか明らかではない点(以下、「相違点B」という。)

オ 相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
各種ゼオライトにより構成される分子篩は、分子寸法や化学的親和力の異なる成分を分離するために使用されており(摘示1d)、「ゼオライト4A」は、その細孔径が概ね4Å程度である分子篩(本願優先日当時の技術常識である。必要であれば、文献例b3のp116表4.2及び表4.3等を参照)であり、「分子寸法が4Å以下である成分を、分子寸法が4Å以上である成分から分離することができる」(摘示1d)ものである。
そして、分子寸法による篩分け機能は、通過する分子の大きさ(分子の細孔通過時の抵抗が最小となる径、分子が球でないときは最小径)と、細孔の大きさ(孔断面が円でないときは最小の径。複数種の細孔を有するときは、短径の内通過がより容易な最大の短径、すなわち、最大結晶学的自由短径)との大小関係に依存することは自明であり、刊行物1にも、分離したいガスの分子寸法に応じて、適切な細孔の大きさを有するゼオライトを選択することが記載されている(摘示1d)。
してみると、引用発明は、最小分子径2.89Åの水素と、最小分子径3.8Åのメタンの分離を目的とするものである(摘示1f:水素、メタンの最小分子径は本願優先日当時の技術常識である。必要であれば、文献例a1,a2の摘示事項等を参照)から、篩分け効果の向上を期待して、分子篩を、細孔径が概ね4Åである「ゼオライト4A」に代え、2.89Åより大きく3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有することが当業者に周知のERI(エリオナイト。必要であれば、文献例b1,b2,b3p59の摘示記載を参照)とすることは、当業者が容易に想到し得る技術事項に過ぎない。

(イ)相違点Bについて
(イ-1)本件補正発明における、膜が「混合マトリックス効果を示す」との意義が必ずしも明確でないため、発明の詳細な説明の記載を参酌する。
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0065】
本発明の目的から、混合マトリックス膜は、元の膜に対しガス分離選択性を少なくとも10%増大するならば、混合マトリックス効果を示すものとして言及されるであろう。」
そして、この記載における「元の膜」とは、例えば具体例における、
「【0091】
ウルテム1000・SSZ-13混合マトリックス膜について、比較例1のウルテム単独膜の対応する値よりも、CO_(2)/CH_(4)選択性が30%高く、CO_(2)透過率が90%高い。従って、この混合マトリックス膜は、混合マトリックス効果を示している。」
などの記載から、混合マトリックス膜に使用したマトリックス物質単独の膜をいうと認められる。
そうすると、本件補正発明において、膜が「混合マトリックス効果を示す」とは、混合マトリックス膜が、「マトリックス物質単独の膜に対し、ガス分離選択性を少なくとも10%増大する」ことである、と認められる。
(イ-2)引用発明の膜の「混合マトリックス効果」について検討する。
引用発明の膜は、水素とメタンの等モル混合物の分離に用いたとき、「3.1g/時の水素と、0.004g/時のメタンを回収」(摘示1f)できるものである。
他方、実施例1に記載された膜は、摘示1eの記載から、「商標ULTEMのポリエーテルイミド」単独の膜であって、膜厚も引用発明の膜と同一であると認められる。そして、「商標ULTEMのポリエーテルイミド」は、引用発明の膜のマトリックス物質であるから、実施例1の膜は、引用発明の混合マトリックス膜のマトリックス物質単独の膜(「元の膜」)といえる。また、この実施例1の膜は、水素とメタンの等モル混合物の分離に用いたとき、「0.35g/lの水素と、0.002g/時のメタンを排出」(摘示1e)できるものである(審決注:「0.35g/l」の単位「g/l」は、「g/時」の誤記であることは明らかであるため、以下、そのように読み替える。)。
これらの膜における、水素とメタンの選択性(水素透過量/メタン透過量)は、引用発明の膜が775(=3.1/0.004)であり、実施例1の膜は175(=0.35/0.002)である。
したがって、引用発明の膜は、実施例1の膜に対し、水素とメタンの選択性が340%(=(775-175)÷175×100)以上増大するものといえるから、水素とメタンのガス分離において、引用発明は、「混合マトリックス効果を示す」といえる。
そうすると、相違点Bは、本件補正発明と引用発明との実質的な差異であるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書「3.3.出願人の見解」の項において、本件補正発明の効果について、発明の詳細な説明に記載された「比較例2」及び「例4」から、
「CVX-7分子篩粒子を用いた結果、分子篩の細孔径が小さくなったにもかかわらずメタンと二酸化炭素の合計透過量が増加し、しかもメタンの透過量だけが低下したので、事前の予想よりもはるかにCO_(2)/CH_(4)選択性が大きくなった、という客観的事実を、当業者が予期し得なかったことである」と主張している。
しかしながら、まず、合計透過量が増加する点については、比較例2ではシラノール化されたアルミノケイ酸塩ゼオライト(米国特許第4544538号参照)であるSSZ-13(段落【0080】)を使用し、例4では、非シラノール化シリコアルミノ燐酸塩ゼオライトであるCVX-7粒子(段落【0092】【0098】)を使用する点に留意する必要がある。
なぜなら、ゼオライトの選択分離性は、成分の分子寸法だけでなく化学的親和力(吸着性)にも依存する(摘示1d)からである。
したがって、化学組成も前処理も異なる比較例2と例4が、細孔径による効果のみを示すものとはいえない。
さらに、本件補正発明は、分子篩を「ERI」としか特定しておらず、「ERI」が「CVX-7」に限定されないことは、例えば、文献例b1の段落【0023】や本願明細書の【表1】の記載からも明らかであり、マトリックスの「連続相有機重合体」の物質を特定するものでもないし、「ガス分離」されるガスの成分も特定されるものではない。
そして、混合マトリックス膜の透過性は、膜の厚さ、圧力、温度を一定としたとしても、「連続相有機重合体」の透過性、「分子篩」の透過性などを総合した値になると認められ、ガス成分の種類によって変わることは自明である。
よって、請求人の主張は、請求項の記載に基づくものではないから、採用することはできない。

カ まとめ
そうすると、本件補正発明は、本願優先日前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

3 むすび
以上のとおりであるので、請求項1についての補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成22年11月22日付けで手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記第2の1に示したとおりの、
「連続相有機重合体及びその中に分散した小気孔分子篩を含む混合マトリックス膜であって、前記分子篩が3.6Å以下の最大結晶学的自由短径を有し、かつ、前記分子篩がERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGISの少なくとも一つのIZA構造型を有しており、前記膜が混合マトリックス効果を示す、前記膜。」
である(以下、「本願発明」という。)。

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明が刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

第5 当審の判断
本願発明は、前記第2の2(1)の項の項で示したとおり、本件補正発明における分子篩のIZA構造型の「ERI」が、「ERI、DDR、RHO、PAU、LEV、MER、AFX、AFT、及びGISの少なくとも一つ」となったものであり、本願発明における分子篩のIZA構造型の「ERI」の態様は本件補正発明であるといえる。
そして、本件補正発明は、前記第2の2(2)に記載したとおり刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明を含む本願発明も、同様に刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の拒絶理由について検討するまでもなく、本願は、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-28 
結審通知日 2015-01-29 
審決日 2015-02-18 
出願番号 特願2010-238132(P2010-238132)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
P 1 8・ 575- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官
河原 英雄
真々田 忠博
発明の名称 小気孔分子篩を有する混合マトリックス膜、その膜の製造方法及びその膜の使用方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ