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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1302689 |
審判番号 | 不服2014-14971 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-31 |
確定日 | 2015-07-02 |
事件の表示 | 特願2009-269769「認証装置、認証システムおよび認証方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 9日出願公開、特開2011-113343〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成21年11月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 拒絶理由の通知 (起案日)平成25年 9月18日 意見,手続補正 (提出日)平成25年11月19日 拒絶査定 (起案日)平成26年 4月21日 同 謄本送達 (送達日)平成26年 5月 7日 審判請求 (提出日)平成26年 7月31日 手続補正 (提出日)平成26年 7月31日 前置報告 (起案日)平成26年 8月21日 第2 平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年7月31日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成26年7月31日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成25年11月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至3の記載 「 【請求項1】 照合用のファイルとして複数の個人データが登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶手段と, IDカードに書き込まれている個人データを読み取り,その読み取った個人データと前記マスタファイルに登録されている個人データとを照合する照合手段と, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の個人データを照合一致回数の多い個人データと少ない個人データとに分け,照合一致回数の多い個人データのグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない個人データのグループを第2のグループとし,前記第1のグループの個人データからなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの個人データからなる第2のマスタファイルを作るグループ分け手段とを備え, 前記照合手段は, 前記IDカードに書き込まれている個人データを読み取り,運用開始から前記所定時間が経過するまではその読み取った個人データと前記マスタファイルに登録されている個人データとの照合を行い,運用開始から前記所定時間が経過した後は,最初,その読み取った個人データと前記第1のグループ中の個人データとの照合を行い,一致しなかった場合にのみ,その読み取った個人データと前記第2のグループ中の個人データとの照合を行う ことを特徴とする認証装置。 【請求項2】 請求項1に記載された認証装置を複数備えることを特徴とする認証システム。 【請求項3】 照合用のファイルとして複数の個人データが登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶ステップと, IDカードに書き込まれている個人データを読み取り,この読み取った個人データと前記マスタファイルに登録されている個人データとを照合する照合ステップと, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の個人データを照合一致回数の多い個人データと少ない個人データとに分け,照合一致回数の多い個人データのグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない個人データのグループを第2のグループとし,前記第1のグループの個人データからなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの個人データからなる第2のマスタファイルを作るグループ分けステップとを備え, 前記照合ステップは, 前記IDカードに書き込まれている個人データを読み取り,運用開始から前記所定時間が経過するまではその読み取った個人データと前記マスタファイルに登録されている個人データとの照合を行い,運用開始から前記所定時間が経過した後は,最初,その読み取った個人データと前記第1のグループ中の個人データとの照合を行い,一致しなかった場合にのみ,その読み取った個人データと前記第2のグループ中の個人データとの照合を行う ことを特徴とする認証方法。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「本件補正前の請求項」という。) を, 「 【請求項1】 照合用のファイルとして個人を特定する個人IDが複数登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶手段と, IDカードに書き込まれている個人を特定する個人IDを読み取り,その読み取った個人IDと前記マスタファイルに登録されている個人IDとを照合する照合手段と, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の個人IDを照合一致回数の多い個人IDと少ない個人IDとに分け,照合一致回数の多い個人IDのグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない個人IDのグループを第2のグループとし, 前記第1のグループの個人IDからなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの個人IDからなる第2のマスタファイルを作るグループ分け手段とを備え, 前記照合手段は, 前記IDカードに書き込まれている個人IDを読み取り, 運用開始から前記所定時間が経過するまでは, その読み取った個人IDと前記マスタファイルに登録されている個人IDとの照合を行い, 運用開始から前記所定時間が経過した後は, 最初,その読み取った個人IDと前記第1のグループ中の個人IDとの照合を行い, 一致しなかった場合にのみ,その読み取った個人IDと前記第2のグループ中の個人IDとの照合を行う ことを特徴とする認証装置。 【請求項2】 請求項1に記載された認証装置を複数備えることを特徴とする認証システム。 【請求項3】 照合用のファイルとして個人を特定する個人IDが複数登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶ステップと, IDカードに書き込まれている個人を特定する個人IDを読み取り,この読み取った個人IDと前記マスタファイルに登録されている個人IDとを照合する照合ステップと, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の個人IDを照合一致回数の多い個人IDと少ない個人IDとに分け,照合一致回数の多い個人IDのグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない個人IDのグループを第2のグループとし, 前記第1のグループの個人IDからなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの個人IDからなる第2のマスタファイルを作るグループ分けステップとを備え, 前記照合ステップは, 前記IDカードに書き込まれている個人IDを読み取り, 運用開始から前記所定時間が経過するまでは, その読み取った個人IDと前記マスタファイルに登録されている個人IDとの照合を行い, 運用開始から前記所定時間が経過した後は, 最初,その読み取った個人IDと前記第1のグループ中の個人IDとの照合を行い, 一致しなかった場合にのみ,その読み取った個人IDと前記第2のグループ中の個人IDとの照合を行う ことを特徴とする認証方法。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「本件補正後の請求項」という。) に補正することを含むものである。 そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。 2 目的要件 本件補正(審判請求時の補正)が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものに限られるものであるかについて,以下に検討する。 (1)本件補正前の請求項と,本件補正後の請求項とを比較すると,本件補正後の請求項1,3はそれぞれ,本件補正前の請求項1,3に対応することは明らかである。 (2)本件補正後の請求項1,3に係る補正は,下記の補正事項よりなるものである。 <補正事項> 本件補正前の請求項1,3の「複数の個人データが登録されたマスタファイル」および「IDカードに書き込まれている個人データ」との記載を,本件補正後の請求項1,3の「個人を特定する個人IDが複数登録されたマスタファイル」及び「IDカードに書き込まれている個人ID」との記載にそれぞれ限定することを目的とするものであり,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。 (3) したがって,上記補正事項は限定的減縮を目的とするものであり,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると言えることから,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。 3 独立特許要件 以上のように,本件補正は,限定的減縮を目的とする上記補正事項を含むものである。そこで,限定的減縮を目的として補正された本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記平成26年7月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「照合用のファイルとして個人を特定する個人IDが複数登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶手段と, IDカードに書き込まれている個人を特定する個人IDを読み取り,その読み取った個人IDと前記マスタファイルに登録されている個人IDとを照合する照合手段と, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の個人IDを照合一致回数の多い個人IDと少ない個人IDとに分け,照合一致回数の多い個人IDのグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない個人IDのグループを第2のグループとし,前記第1のグループの個人IDからなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの個人IDからなる第2のマスタファイルを作るグループ分け手段とを備え, 前記照合手段は, 前記IDカードに書き込まれている個人IDを読み取り, 運用開始から前記所定時間が経過するまでは, その読み取った個人IDと前記マスタファイルに登録されている個人IDとの照合を行い, 運用開始から前記所定時間が経過した後は, 最初,その読み取った個人IDと前記第1のグループ中の個人IDとの照合を行い, 一致しなかった場合にのみ,その読み取った個人IDと前記第2のグループ中の個人IDとの照合を行う ことを特徴とする認証装置。」 (2)引用例 (2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明 ア 本願出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である上記平成25年9月18日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2002-329204号公報(平成14年11月15日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【0002】 【従来の技術】人体から得られる特徴データを用いて個人認証を行うシステムとして,アイリス(虹彩)や顔貌を利用したものがある。例えばアイリスを利用した個人認証システムは,登録者の眼部をカメラで撮影し,そのイメージ画像から特徴データとしてのアイリスコード(アイリスパターンデータ)を作成してデータベース(以下,DB)に登録し,そして,個人認証の際,認証対象者の眼部をカメラで撮影して,そのイメージ画像から作成されるアイリスコードを前記DBに登録されているアイリスコードと照合して,登録者か否かを認証するシステムである。」 B 「【0009】また,個人認証のためのアイリスコード照合時にカメラ3は認証対象者の眼部を撮影し,照合端末4はカメラ3の撮影により得られたイメージ画像からアイリスコードを作成して前記DBに登録されているアイリスコードと照合する機能を有している。図2は第1の実施の形態におけるDBの登録内容例を示す図で,この図に示したように登録端末2に設けられたDBはユーザ情報DBと,アイリスコードDBと,照合処理統計DBにより構成されている。」 C 「【0016】登録端末2は照合端末4から返送されてきたユーザIDとアイリスコード番号に該当する照合適合回数の情報を照合処理統計DBから検索し,その照合適合回数に「+1」の処理を行って情報を更新する。このような処理により,照合処理統計DBの内容は随時更新されることになるので,登録端末2は日次あるいは月次等の一定期間毎の処理として,照合処理統計DBの照合適合回数の情報を利用して不要な情報の削除処理を行い,DBをスリム化する。」 D 「【0032】尚,上述した第1及び第2の実施の形態では,個人認証の際の照合で適合する頻度の低いアイリスコードを削除するものとしたが,アイリスコードDBをアイリスコードプライマリDBとアイリスコードセカンダリDBの2つに分割することによりアイリスコードの検索順位に優先度を設けることで処理能力の向上を図ることも可能である。 【0033】その場合の,DBの登録内用例を図6及び図7に示す。ここで図6は第1の実施の形態に対応し,図7は第2の実施の形態に対応するもので,それぞれ分割したアイリスコードセカンダリDBに個人認証の際の照合で適合する頻度の低いアイリスコードを登録している。このようにすることで,次の個人認証の際にアイリスコードプライマリDBのアイリスコードを使用して照合を行い,その照合で不適合となったアイリスコードに対して,アイリスコードセカンダリDBに登録されているアイリスコードを利用することが可能となる。 【0034】この場合,アイリスコードセカンダリDBに登録されているアイリスコードを利用すると,その分の処理時間がかかることになるが,適合する確率が高いアイリスコードプライマリDBのアイリスコードを先に使用して照合を行うことで,実際には照合処理の時間は短くなり,結果的に処理能力は向上する。以上各実施の形態について説明したが,本願発明はこれに限られるものではなない。 【0035】例えば,上述した実施の形態では,個人認証のための照合時に登録端末2からアイリスコードを照合端末4に送り,照合端末4によってアイリスコードの照合を行うものとしたが,照合端末4で作成したアイリスコードを登録端末2に送って,登録端末2でアイリスコードの照合を行うようにしてもよい。また,上述した実施の形態では,個人認証を行うための特徴データとしてアイリスコードを例にして説明したが,登録者の顔貌をカメラで撮影して,そのイメージ画像から顔貌コードを作成し,これを特徴データとして個人認証を行うシステムにも適用可能である。」 イ ここで,上記引用例1に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの「人体から得られる特徴データを用いて個人認証を行うシステムとして,アイリス(虹彩)や顔貌を利用したものがある。」との記載,及び上記Dの「上述した実施の形態では,個人認証を行うための特徴データとしてアイリスコードを例にして説明したが,登録者の顔貌をカメラで撮影して,そのイメージ画像から顔貌コードを作成し,これを特徴データとして個人認証を行うシステムにも適用可能である。」との記載からすると,この個人認証システムにおいて用いられる「アイリスコード」や「顔貌コード」は,「個人認証を行うための特徴データ」であるものと読み取れる。 また,上記Aの「アイリスを利用した個人認証システムは,登録者の眼部をカメラで撮影し,そのイメージ画像から特徴データとしてのアイリスコード(アイリスパターンデータ)を作成してデータベース(以下,DB)に登録し」との記載からすると,データベースには個人認証を行うための特徴データが複数登録されていることは自明である。 また,上記Aの「個人認証の際,認証対象者の眼部をカメラで撮影して,そのイメージ画像から作成されるアイリスコードを前記DBに登録されているアイリスコードと照合して,登録者か否かを認証するシステムである」との記載,上記Bの「照合端末4はカメラ3の撮影により得られたイメージ画像からアイリスコードを作成して前記DBに登録されているアイリスコードと照合する機能を有している」との記載からすると,”認証対象者の特徴データをデータベースに登録されている特徴データと照合して,登録者か否かを認証する”「照合端末」が読み取れることから,引用例1には, ”個人認証を行うための特徴データが登録されたデータベースと,認証対象者の特徴データを前記データベースに登録されている特徴データと照合して,登録者か否かを認証する照合端末を有する個人認証システム” が記載されていると解される。 (イ)上記Cの「登録端末2は日次あるいは月次等の一定期間毎の処理として,照合処理統計DBの照合適合回数の情報を利用して不要な情報の削除処理を行い」との記載,および上記Dの「上述した第1及び第2の実施の形態では,個人認証の際の照合で適合する頻度の低いアイリスコードを削除するものとしたが,アイリスコードDBをアイリスコードプライマリDBとアイリスコードセカンダリDBの2つに分割することによりアイリスコードの検索順位に優先度を設けることで処理能力の向上を図る」及び「アイリスコードセカンダリDBに個人認証の際の照合で適合する頻度の低いアイリスコードを登録している」との記載からすると,引用例1には, ”データベースをプライマリDBとセカンダリDBに分割し,セカンダリDBには一定期間毎にプライマリDBから削除された,同一の認証対象者が登録した複数の特徴データのうち,照合適合回数の少ない特徴データを登録する” ことが記載されていると解される。 (ウ)上記Aの「個人認証の際,認証対象者の眼部をカメラで撮影して,そのイメージ画像から作成されるアイリスコードを前記DBに登録されているアイリスコードと照合して,登録者か否かを認証するシステムである」との記載,上記Bの「照合端末4はカメラ3の撮影により得られたイメージ画像からアイリスコードを作成して前記DBに登録されているアイリスコードと照合する機能を有している」との記載,及び上記Dの「個人認証の際にアイリスコードプライマリDBのアイリスコードを使用して照合を行い,その照合で不適合となったアイリスコードに対して,アイリスコードセカンダリDBに登録されているアイリスコードを利用する」,「適合する確率が高いアイリスコードプライマリDBのアイリスコードを先に使用して照合を行うことで,実際には照合処理の時間は短くなり,結果的に処理能力は向上する」との記載からすると,引用例1には, ”照合端末は,認証対象者の特徴データについて,プライマリDBの特徴データを使用して照合を行い,不適合の場合には,セカンダリDBの特徴データを使用して照合を行うことにより,照合時間を短縮する” ことが記載されていると解される。 ウ 以上,(ア)乃至(ウ)で指摘した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「個人認証を行うための特徴データが登録されたデータベースと,認証対象者の特徴データを前記データベースに登録されている特徴データと照合して,登録者か否かを認証する照合端末を有する個人認証システムにおいて, データベースをプライマリDBとセカンダリDBに分割し,セカンダリDBには一定期間毎にプライマリDBから削除された,同一の認証対象者が登録した複数の特徴データのうち,照合適合回数の少ない特徴データを登録し, 照合端末は,認証対象者の特徴データについて,プライマリDBの特徴データを使用して照合を行い,不適合の場合には,セカンダリDBの特徴データを使用して照合を行うことにより,照合時間を短縮する ことを特徴とする個人認証システム。」 (2-2)引用例2に記載されている技術的事項 ア 本願出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である上記平成25年9月18日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2002-47840号公報(平成14年2月15日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) E 「【0010】次に,バイオメトリックスデータ認証装置として指紋データを記録した記録装置から指紋データを読み出すための指紋記録媒体リーダを備えているものでは,指紋データを記録した記録装置を内蔵しているICカードや,スティックメモリ等々を指紋記録媒体リーダに掛けることにより,指紋データを読み出して認証することが出来る。従って本人がこれ等の記録装置と鍵とを持っている限りに於いては,スイッチ機構をON状態とすることが出来るのである。」 F 「【0023】なお上記で指紋と例示した部分は,他のバイオメトリックスに置き換えることが出来るのは言うまでもない。」 G 「【0030】第2実施形態 この実施形態のスイッチ機構は,図6及び図7で表わすように,第1実施形態の指紋読取装置11の代わりにカードリーダ14を設けたものである。この変更に伴ないシリンダ錠2にはスティックメモリ読取装置4が併設されている。このスティックメモリ読取装置4にはスティックメモリ挿入口40が設けられておりここに図示しないスティックメモリが挿入される。 【0031】スティックメモリには,登録ユーザーの指紋データが格納されており,メモリ12内の登録ユーザーの指紋データと比較照合される。ここでマッチしていることが判明した場合にはスタータ10を起動する。」 H 「【0045】なお上記実施形態では,主として自動車のスイッチ機構に付いて説明したが,これに限定されるものではない。また指紋のみならず虹彩や声紋による個人識別を行なうようにして良いのは言うまでもない。」 イ ここで,上記引用例2に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Fの「指紋と例示した部分は,他のバイオメトリックスに置き換えることが出来るのは言うまでもない」との記載,及び上記Hの「指紋のみならず虹彩や声紋による個人識別を行なうようにして良いのは言うまでもない」との記載からすると,バイオメトリックスデータにより個人識別を行っていることが読み取れる。 (イ)上記Eの「指紋データを記録した記録装置を内蔵しているICカードや,スティックメモリ等々を指紋記録媒体リーダに掛けることにより,指紋データを読み出して認証することが出来る。従って本人がこれ等の記録装置と鍵とを持っている限りに於いては,スイッチ機構をON状態とすることが出来る」との記載,及び上記Gの「第1実施形態の指紋読取装置11の代わりにカードリーダ14を設けたものである」,「スティックメモリには,登録ユーザーの指紋データが格納されており,メモリ12内の登録ユーザーの指紋データと比較照合される。ここでマッチしていることが判明した場合にはスタータ10を起動する」との記載からすると,引用例2には, ”ICカードに格納されたバイオメトリックスデータをカードリーダで読み取り,メモリ内の登録ユーザーのバイオメトリックスデータと比較照合する” ことが記載されているものと認める。 (3)参考文献 (3-1)参考文献1に記載されている技術的事項 ア 本願出願前に頒布された,特開2005-149344号公報(平成17年6月9日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) I 「【0016】 本実施形態では,予め設定によりグルーピングしておいた権限ステータスに適合した人の指紋特徴量データをデータベースからROM102に複製(ダウンロード)し,照合に用いる。また,認証後には,照合に用いた特徴量データをROM102に保持したままにしておき,次に行われる指紋認証の実行時に照合を行うときには,先ずROM102に保持されている既に認証に用いたデータをアクセスし,その特徴量データとの比較照合を行う。 このようにROM102に保持され,過去の照合に用いたデータを優先処理することにより,HDD900へアクセスしてデータベースからデータを得るという手順を行う場合に比べ,処理の高速化を図ることが可能になる。ただし,照合時に優先させるROM102中に必要とする特徴量データが無い場合には,HDD900のデータベースからダウンロードしながら照合を行うことになる。 指紋認証処理の結果は,比較照合によって最も近いという結果を得た特徴量データが本人/他人を判断する閾値を超えるか否かで認証を行うようにする条件設定をしているので,本人/他人のいずれかを認証結果として得る。 上記の指紋認証処理により権限ステータスを有する人であることが認証されるので,その結果に従って処理を分岐するために,次のステップで認証結果である本人データの有無をチェックし(ステップS209),認証できなかった場合には,操作部700の表示画面にエラーの警告表示を行い,印刷出力を行わない旨を知らせる警告表示を行う(ステップS215)。」 J 「【0019】 「実施形態3」 本実施形態は,指紋認証に用いる特徴量等の照合用データのアクセスを高速化するために用いる記憶手段(ROM102)の有効利用を可能とするメモリ管理に係わる上記「実施形態2」において,さらにアクセス回数を条件として加えた管理をするものである。アクセス回数を加味することで,平均化した使用頻度に基づいた管理をすることにより比較的長い期間に使用(アクセス)回数が少ない人の特徴量データのみを消去するようにして,使用回数の多い人は使用状況が異なってもデータを消去せず,認証時間に違いが出ないようにする柔軟な管理を可能とし,ROM102の有効利用を図ることを目的にするものである。 図5は,本実施形態における指紋認証処理を含む印刷出力制御手順を示すフローチャートである。 図5の制御フローを参照して制御手順を説明する。なお,図5に示す制御フローは,本実施形態の構成の特徴である,上記したアクセス回数を加味したROM102のメモリ管理に係わる部分を除いて,基本的に上記実施形態2(図4参照)と変わりが無い。従って,実施形態2と変わりの無い指紋認証処理を含む制御手順(図5にタスク1として示す)のステップS301?309及びステップS312?315については,それぞれ対応する実施形態2(図4にタスク1として示す)のステップS201?209及びS212?215に関する上記記載を参照することとし,ここでは重複する説明はしない。 【0020】 ROM102のメモリ管理に係わる本実施形態の特徴部分について図5を参照して説明する。 本実施形態では,本人の認証できた場合には(ステップS309-YES),印刷出力を行うための制御を行うが,その前に本実施形態の特徴部分であるROM102のメモリ管理に係わる手順として,実施形態2におけると同様に,ROM102に保持される特徴量データに認証を行った時点における時刻データを付与するが(ステップS310),それに加え認証回数のカウントを行い(ステップS311),これらのデータを管理データとして用いるようにする。 この時刻データ及び認証(アクセス)回数を管理データとして用いて,図5にタスク2として示す制御手順を実行することにより,ROM102を上記目的に沿って管理することを可能にする。 タスク2は適当なタイミングで起動され,規定した所定の期間を過ぎ,かつ規定した所定の回数のアクセスが無かった場合にROM102に保持されている特徴量データの消去を行う。なお,タスク2を起動するタイミングは,消去期限として規定した時間との兼ね合いで規定の時間が無意味にならない範囲で決めるようにする。 図5のタスク2を起動すると,まずタスク1のステップ310で特徴量データに管理情報として付与した時刻データを読み出し(ステップS351),またステップ311でカウントしたアクセス回数を読み出す(ステップS352)。 次いで,読み出したアクセス回数が規定の回数を超えているか否かをチェックし(ステップS353),その結果,超過していれば,消去をしないで特徴量データを保持し続け,タスク2を終了する。 他方,アクセス回数が規定の回数を超過していなければ,次の経過時間のチェックを行う(ステップS354)。経過時間のチェックは,読み出した時刻データと現在の時刻から認証時にROM102に保持されてからの経過時間を求め,その経過時間が設定された規定時間を超過しているかをチェックし,その結果,超過していれば,プログラムROM102から保持している特徴量データを消去し(ステップS355),超過していなければ,消去をしないで特徴量データを保持し続け,タスク2を終了する。」 (3-2)参考文献2に記載されている技術的事項 ア 本願出願前に頒布された,特開昭63-231576号公報(昭和63年9月27日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) K 「個人照合装置11では,照合する際に個人特徴情報入力部12で指紋情報を入力するとともに,個人識別情報入力部14から識別番号等をテンキーで入力する。入力指紋情報は一時記憶部13で記憶され,また識別番号に対応した登録済指紋情報が内部記憶部15の先頭番地からサーチされ,ない場合にはさらに外部記憶部16をサーチして読み出され,個人特徴情報比較部18において,照合が行われる。照合が行われた登録指紋情報は,内部記憶部15の先頭番地に戻されるとともに,従来記憶されている登録済指紋情報が順送りされ再配置が行われる。従って,照合する頻度が高い人は常に内部記憶部15に記憶されているため,その読み出しが時間が短くなり,照合終了までの待ち時間が短くなる。 尚,本発明の個人特徴情報としては,指紋以外に本人を確認できる特徴情報であればよく,その入力部はホログラムを用いた平板状指紋センサ以外にプリズム式の指紋センサにも適用される。また,個人識別情報入力部14は,テンキーによる識別番号を入力するほか,容易に持ち運び可能な記憶媒体,例えば磁気カード,エンボスカードに記憶させ照合する際読み出すようにしたものでもよい。さらに,使用頻度制御部17は,少なくとも照合頻度の高い人の登録済個人特徴情報が優先的に内部記憶部15に記憶されるよう制御されればよく,例えば照合頻度を計数し多い順に先頭番地から再配置するようにしてもよい。」(第3頁右下欄第1行?第4頁左上欄第8行) (4)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は,個人認証システムにおいて照合時間を短縮することを課題とした技術であり,本件補正発明と,技術分野及び課題が共通する。 (イ)引用発明の「特徴データ」は,個人認証を行うためのものであり,「個人を特定する識別情報」という点では,本件補正発明の「個人ID」と共通するものである(相違点については後述する。)。 (ウ)引用発明の「データベース」は,「特徴データ」を登録したものであることから,個人を特定する識別情報を登録するという点では,本件補正発明の「マスタファイル記憶手段」と共通するものである。 (エ)引用発明の「照合適合回数」は,認証対象者の特徴データと,データベースに登録されている特徴データとの照合が適合した回数を意味することから,本件補正発明の「照合一致回数」に相当する。 (オ)引用発明の「プライマリDB」及び「セカンダリDB」は,本件補正発明の「第1のマスタファイル」及び「第2のマスタファイル」に,それぞれ相当する。 (カ)引用発明の「照合端末」は,認証対象者の特徴データを,データベースに格納された特徴データと照合している点で,本件補正発明の「照合手段」と共通する。 (キ)引用発明では「データベースをプライマリDBとセカンダリDBに分割し,セカンダリDBには一定期間毎にプライマリDBから削除された,同一の認証対象者が登録した複数の特徴データのうち,照合適合回数の少ない特徴データを登録し」ており,所定期間が経過する毎に,データベース中の特徴データを照合一致回数の多い特徴データ(第1のグループ)と,照合一致回数の少ない特徴データ(第2のグループ)とに分け,第1のグループの識別情報からなる特徴データを登録する第1データベースと,照合一致回数の少ないデータを登録する第2データベースを作成するという点では,本件補正発明の「グループ分け手段」と共通するものである(相違点については後述する。)。 (ク)引用発明において,運用当初においては特徴データの照合適合回数のデータは存在しないことから,照合端末がデータベースに登録されている特徴データと照合し,一定期間が経過してプライマリDBとセカンダリDBとが作成された後は,プライマリDBの特徴データを使用して照合を行い,不適合の場合には,セカンダリDBの特徴データを使用して照合を行っていることは明らかである。 イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 【一致点】 「照合用のファイルとして個人を特定する識別情報が複数登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶手段と, 個人を特定する識別情報を読み取り,その読み取った識別情報と前記マスタファイルに登録されている識別情報とを照合する照合手段と, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の識別情報を照合一致回数の多い識別情報と少ない識別情報とに分け,照合一致回数の多い識別情報のグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない識別情報のグループを第2のグループとし, 前記第1のグループの識別情報からなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの識別情報からなる第2のマスタファイルを作るグループ分け手段とを備え, 前記照合手段は, 識別情報を読み取り, 運用開始から前記所定時間が経過するまでは, その読み取った識別情報と前記マスタファイルに登録されている識別情報との照合を行い, 運用開始から前記所定時間が経過した後は, 最初,その読み取った識別情報と前記第1のグループ中の識別情報との照合を行い, 一致しなかった場合にのみ,その読み取った識別情報と前記第2のグループ中の識別情報との照合を行う ことを特徴とする認証装置。」 【相違点1】 本件補正発明では,認証における識別情報の照合は(個人1人につき1つの)「個人ID」を用いて行われるのに対し,引用発明では,(認証対象者1人につき複数登録されることが有り得る)「特徴データ」単位で行われる点。 【相違点2】 本件補正発明では,照合一致回数の少ない「個人ID」からなる第2のマスタファイルを作るのに対し,引用発明では,同一の認証対象者が登録した複数の「特徴データ」のうち,照合適合回数の少ない特徴データについてセカンダリDBに登録している点。 【相違点3】 本件補正発明は,識別情報(個人ID)が「IDカード」に書き込まれているのに対し,引用発明では,そのような特定がない点。 (5)当審の判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1及び相違点2について 参考文献1や参考文献2に記載されているように,認証における照合を個人ID単位で行い,個人ID単位での照合一致回数をチェックし,照合順序を決定することは,認証システムの技術分野において周知技術である。 そうすると,引用発明の認証における照合を個人ID単位とし,個人ID単位での照合一致回数のチェックを行うとともに,照合一致回数の多い個人IDからなる第1のマスタファイル及び照合一致回数の少ない個人IDからなる第2のマスタファイルを作るように構成することは,当業者が必要に応じて適宜なし得た事項にすぎない。 イ 相違点3について 上記(2-2)イ(イ)のとおり,引用例2には,「ICカードに格納されたバイオメトリックスデータをカードリーダで読み取り,メモリ内の登録ユーザーのバイオメトリックスデータと比較照合する」ことが記載されているところ,このような技術は認証処理の技術分野において本願出願前には周知の技術であった。 そうすると,引用発明において,引用例2に記載の周知技術を適用し,個人IDをカードに格納する構成とすることは,当業者ならば容易に想到し得たものである。 ウ 小括 上記で検討したごとく,相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,この相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明1,引用例2に記載の技術及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,上記引用発明1,引用例2に記載の技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (6)請求人の主張について 請求人は,審判請求書において,「引用文献1記載の発明は,本願発明のように,利用回数の少ないユーザーを除外した,利用回数の多いユーザーデータベースを対象に優先的に照合を行い,それでも一致するユーザーを見付けられない場合に,利用回数の少ないユーザーデータベースで照合を行うというものではない。」と主張している。しかしながら,請求人が主張する「利用回数」との記載は,本願の特許請求の範囲および明細書の記載に基づくものではない。また,引用発明の「照合適合回数」は,上記(4)ア(エ)において述べたとおり,本件補正発明の「照合一致回数」に相当するものである。 したがって,請求人の主張は認められない。 (7)むすび 本件補正は,上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求の成否について 1 本願発明の認定 平成26年7月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年11月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「照合用のファイルとして複数の個人データが登録されたマスタファイルを記憶するマスタファイル記憶手段と, IDカードに書き込まれている個人データを読み取り,その読み取った個人データと前記マスタファイルに登録されている個人データとを照合する照合手段と, 運用開始から所定期間が経過する毎に,前記マスタファイル中の個人データを照合一致回数の多い個人データと少ない個人データとに分け,照合一致回数の多い個人データのグループを第1のグループとし,照合一致回数の少ない個人データのグループを第2のグループとし,前記第1のグループの個人データからなる第1のマスタファイルと前記第2のグループの個人データからなる第2のマスタファイルを作るグループ分け手段とを備え, 前記照合手段は, 前記IDカードに書き込まれている個人データを読み取り,運用開始から前記所定時間が経過するまではその読み取った個人データと前記マスタファイルに登録されている個人データとの照合を行い,運用開始から前記所定時間が経過した後は,最初,その読み取った個人データと前記第1のグループ中の個人データとの照合を行い,一致しなかった場合にのみ,その読み取った個人データと前記第2のグループ中の個人データとの照合を行う ことを特徴とする認証装置。」 2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された,引用発明は,前記「第2 平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」に記載したとおりである。 また,参考文献は,前記「第2 平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(3)参考文献」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記「第2 平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の 「個人を特定する個人IDが複数登録されたマスタファイル」および「IDカードに書き込まれている個人ID」との特定事項を,「複数の個人データが登録されたマスタファイル」および「IDカードに書き込まれている個人データ」との特定事項に,上位概念化したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」乃至「(5)当審の判断」に記載したとおり,引用発明1,引用例2に記載の技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明1,引用例2に記載の技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-21 |
結審通知日 | 2015-05-07 |
審決日 | 2015-05-20 |
出願番号 | 特願2009-269769(P2009-269769) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久慈 渉、脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
浜岸 広明 高木 進 |
発明の名称 | 認証装置、認証システムおよび認証方法 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 山川 政樹 |