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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A62C
管理番号 1302690
審判番号 不服2014-16501  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-20 
確定日 2015-07-02 
事件の表示 特願2013-210605「ガス消火設備」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月23日出願公開、特開2014- 12226〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月15日(優先権主張平成21年10月23日、平成22年2月4日、平成22年4月2日)に出願した特願2011-267400号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年10月7日に新たな特許出願としたものであって、同日に上申書及び早期審査に関する事情説明書が提出され、平成25年12月17日付けで早期審査に関する報告書が作成され、平成25年12月20日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年5月13日付けで拒絶査定がなされ、平成26年8月20日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、平成26年11月27日に上申書が提出されたものである。

第2 平成26年8月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年8月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
(1)本件補正の内容
平成26年8月20日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年3月10日提出の手続補正書により補正された)下記アの特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載を、下記イの特許請求の範囲の請求項1及び2の記載へと補正するものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし7
「【請求項1】
(a)高圧の消火ガスを導き、第1おねじが形成される端部を有する導管14と、
(b)導管14に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、
(c)導管14を、振動および変位を抑制して建物に締結して設置する手段20,21,22と、
(d)噴射ヘッド13であって、
高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔16が形成され、噴射ヘッド13における消火ガスの噴射方向下流側(図2,4,5,13,14の左方)に設けられ、第2おねじが形成されるノズル部12と、
噴射ヘッド13における消火ガスの噴射方向上流側(図2,4,5,13,14の右方)に設けられ、導管14の前記端部の第1おねじに接続される第1めねじが形成される噴射ヘッド端部とを有し、
ノズル孔16と、前記噴射ヘッド端部とは、導管14の前記端部の軸線に沿って延びる噴射ヘッド13と、
(e)ノズル部12からの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置17,17b、17c、17f、17gであって、
噴射ヘッド13のノズル部12の第2おねじに着脱可能である第2めねじが形成される取付け部27,37、43、123、133と、
取付け部27,37、43、123、133から、ノズル孔16の出口からの消火ガスの噴射方向下流側(図2,4,5,13,14の左方)に連なり、内部空間を規定する筒状の周壁25,35、41、121,131と、
前記内部空間に収容され、微細な空隙を有し、噴射ヘッド13のノズル部12から高速で噴射された消火ガスを、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記消火対象区画内の空間へ放出する吸音材33,40,46,125、134?136とを有し、
導管14の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する消音装置17,17b、17c、17f、17gとを備えることを特徴とするガス消火設備。
【請求項2】
周壁25,35、41、121,131の外径は、取付け部27,37、43、123、133の外径よりも大きい(図2,4,5,14)か、または同一(図13)であることを特徴とする請求項1記載のガス消火設備。
【請求項3】
消音装置17は、周壁25の軸線方向一端部に、該周壁25の軸線に垂直に形成される端壁26を含み、
取付け部27は、周壁25の軸線方向他端部に形成され、
端壁26には、周壁25の軸線上にガス放出孔34が該端壁の厚み方向に貫通して形成され、
前記内部空間は、周壁25とともに、端壁26によって規定され、
吸音材33は、周壁25の内周面に沿って筒状に装着され、
周壁25の外径は、取付け部27の外径よりも大きい(図2)ことを特徴とする請求項1記載のガス消火設備。
【請求項4】
消音装置17bの周壁35は、ノズル孔16の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状であり、
消音装置17bはさらに、周壁35の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に形成される端壁36を含み、この端壁36は、周壁35とともに前記内部空間39を規定し、この端壁36には、複数の通気孔38が該端壁36の厚み方向に貫通して形成され、
吸音材40は、前記内部空間39に詰めて装填されて収容され、
周壁35の外径は、取付け部37の外径よりも大きい(図4)ことを特徴とする請求項1記載のガス消火設備。
【請求項5】
消音装置17cの周壁41は、導管14の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状であって、周壁41の軸線に垂直に拡がった内部空間45を形成し、
周壁41には、複数の通気孔44が分布して、該周壁41の厚み方向に貫通して形成され、
消音装置17cはさらに、周壁41の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に、該周壁41の軸線に垂直に形成され、周壁41とともに内部空間45を規定する端壁42を含み、
取付け部43は、周壁41の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成され、
吸音材46は、前記内部空間45に隙間なく詰めて装填されて収容され、
周壁41、121,131の外径は、取付け部43の外径よりも大きい(図5)ことを特徴とする請求項1記載のガス消火設備。
【請求項6】
ノズル孔16は、導管14の前記端部の軸線に沿って延びるノズル孔軸線L12を有し、ノズル孔16のノズル孔軸線L12に垂直な断面は、ノズル孔軸線L12に沿って一様であり、
噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面12aは、ノズル孔軸線L12に垂直な仮想平面上に形成され、
消音装置17fの周壁121は、ノズル孔軸線L12に沿って延びる周壁軸線L121を有する円筒状であり、
消音装置17fはさらに、端壁122を含み、
この端壁122は、周壁121における周壁軸線L121方向のノズル部12から遠ざかった一端部に連なって形成され、周壁121とともに前記内部空間124を規定し、端壁122には、透孔122bが周壁軸線L121方向に貫通して形成され、
取付け部123は、周壁121における周壁軸線L121方向のノズル部12に近い他端部に形成され、
吸音材125は、前記内部空間124に隙間なく詰めて装填されて収容され、
多孔質材料から成り、
周壁軸線L121に一致する吸音材軸線L125を有する柱状であり、
吸音材125の前記ノズル部12から遠ざかった一端面125bと、前記ノズル部12に近い他端面125cとを有し、
吸音材125の前記ノズル部12に近い前記他端面125cは、吸音材軸線L125に垂直な仮想平面上に形成され、
取付け部123が噴射ヘッド13に取付けられることによって、前記一端面125b側が前記端壁122に支持されるとともに、前記他端面125cと前記ノズル部12の前記端面12aとが面接触し、
周壁121の外径は、取付け部123の外径と同一(図13)であることを特徴とする請求項1記載のガス消火設備。
【請求項7】
噴射ヘッド13のノズル部12におけるノズル孔16が開口するノズル孔16の出口端部まわりの端面は、ノズル孔16の軸線に垂直な仮想平面上に形成され、
消音装置17gの周壁131は、ノズル孔16の軸線に沿って延びる軸線を有する円筒状であり、
消音装置17gはさらに、端壁143を含み、
この端壁143は、周壁131の軸線方向のノズル部12から遠ざかった一端部に形成され、周壁131とともに前記内部空間140を規定し、端壁143には、透孔が周壁131の軸線方向に貫通して形成され、
取付け部133は、周壁131の軸線方向のノズル部12に近い他端部に形成され、
前記内部空間140に収容される吸音材は、第1、第2および第3吸音材134,135,136であって、
多孔質金属から成り、
周壁131の軸線方向に、前記ノズル部12から端壁143に、第1吸音材134と、第3吸音材136と、第2吸音材135とが、この順序で設けられ、
第1吸音材134と第2吸音材135とは、周壁131の軸線に一致する軸線を有する柱状であり、
第3吸音材136は、周壁131の軸線に一致する軸線を有する筒状であり、
第1吸音材134の前記ノズル部12に近い端面は、第1吸音材134の前記軸線に垂直な仮想平面上に形成され、
第2吸音材135は、前記ノズル部12から遠ざかった端面を有し、
取付け部133が噴射ヘッド13に取付けられることによって、第2吸音材135の前記ノズル部12から遠ざかった前記端面と前記端壁143とが当接するとともに、第1吸音材134の前記ノズル部12に近い前記端面と前記ノズル部12の前記端面とが当接し、
周壁131の外径は、取付け部133の外径よりも大きい(図14)ことを特徴とする請求項1記載のガス消火設備。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
(a)高圧の消火ガスを導き、第1外ねじが形成される端部を有する導管と、
(b)導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源と、
(c)導管を、振動および変位を抑制して建物に締結して設置する手段と、
(d)噴射ヘッドであって、
高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔が形成され、噴射ヘッドにおける消火ガスの噴射方向下流側(図13の左方)に設けられ、第2外ねじが形成され、ノズル孔は、導管の前記端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線を有するノズル部と、
噴射ヘッドにおける消火ガスの噴射方向上流側(図13の右方)に設けられ、導管の前記端部の第1外ねじに接続される第1内ねじが形成される噴射ヘッド端部とを有し、
ノズル孔と、前記噴射ヘッド端部とは、導管の前記端部の軸線に沿って延びる噴射ヘッドと、
(e)ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置であって、
噴射ヘッドのノズル部の第2外ねじに着脱可能である第2内ねじが形成される取付け部と、
取付け部から、ノズル孔の出口からの消火ガスの噴射方向下流側(図13の左方)に連なり、内部空間を規定し、ノズル孔軸線に沿って延びる周壁軸線を有する筒状の周壁121と、
前記内部空間に収容され、微細な空隙を有し、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射された消火ガスを、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記消火対象区画内の空間へ放出し、多孔質金属から成る吸音材と、
周壁における周壁軸線方向のノズル部から遠ざかった一端部に連なって、周壁軸線に垂直に形成され、前記周壁とともに前記内部空間を規定し、周壁軸線を中心軸線とする透孔が周壁軸線方向に貫通して形成され、吸音材を、噴射ヘッドのノズル部におけるノズル孔が開口するノズル孔の出口端部まわりの端面とによって挟持する端壁とを有し、
導管の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する消音装置とを備えることを特徴とするガス消火設備。
【請求項2】
周壁の外径は、取付け部の外径と同一(図13)であることを特徴とする請求項1記載の
ガス消火設備。」
(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものであるが、請求人が下線を付した箇所以外も補正されている。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の発明特定事項である「ノズル孔」について、「ノズル孔は、導管の前記端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線を有する」という事項を付加して限定し、本件補正前の発明特定事項である「筒状の周壁121」について、「ノズル孔軸線に沿って延びる周壁軸線を有する」という事項を付加して限定し、「周壁における周壁軸線方向のノズル部から遠ざかった一端部に連なって、周壁軸線に垂直に形成され、前記周壁とともに前記内部空間を規定し、周壁軸線を中心軸線とする透孔が周壁軸線方向に貫通して形成され、吸音材を、噴射ヘッドのノズル部におけるノズル孔が開口するノズル孔の出口端部まわりの端面とによって挟持する端壁」を有する点を追加(以下、「補正事項A」という。)し、本件補正前の発明特定事項である「第1おねじ」、「第2おねじ」、「第1めねじ」及び「第2めねじ」を本件補正後にそれぞれ「第1外ねじ」、「第2外ねじ」、「第1内ねじ」及び「第2内ねじ」にしたものである。
しかしながら、上記補正事項Aは、本件補正前のいずれの発明特定事項を限定するものでもない。(いわゆる「外的付加」に該当する。)
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれにも該当しないものである。

2 独立特許要件の検討
仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。

2-1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の原出願の最先の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2003-530922号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため、当審で付したものである。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 防火性大気として常設される18%以下の酸素又は火災抑止剤として一時的に使用する16.8%以下の酸素と、窒素とを含む気体混合物を含み、包囲された有人空間内に呼吸可能な防火大気となる低酸素濃度消火性組成物。
(中略)
【請求項11】 その位置とその目的に対して周辺の内部大気を収容する内部環境(91,101,110,140,151,201,211,275,281,301)を形成しかつ内部環境に連絡する入口を有する包囲構造体と、
16%以下の範囲の酸素と窒素とを含む低酸素濃度の火災抑止剤を収容する気体貯蔵容器とを備え、火災抑止剤は、二酸化炭素及び他の大気中の気体を含んでもよく、
包囲構造体内に火災抑止剤を導出したとき、10%から16%までの範囲にある濃度の酸素と、10%以下の任意濃度を有する二酸化炭素とを含む呼吸可能な大気となる計算された量で火災抑止剤を気体貯蔵容器内に収容しかつそれから放出し、呼吸可能な防火性大気を供給することを特徴とする防火システム。
【請求項12】 気体貯蔵容器は、好ましくは10バール以上の高気圧で火災抑止剤を収容し、火災-煤煙検知装置(98,125,159,285,305)から検知信号を受信したときに、火災抑止剤を放出し、
気体貯蔵容器は、検知信号により作動される起動装置により作動される放出弁(107,123,274,286,311)と、任意の気体分配管(94,105,109,113,145,152,174,194,203,212,267,288,308)を通じて又は直接接続された気体排出ノズル(95,106,114,146,154,175,195,204,213,268,306)とを備え、
気体排出ノズルは、火災抑止剤の放出に伴う騒音のレベルを低減する任意の騒音低減装置を有する請求項11に記載の防火システム。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項12】)

イ 「【0001】
発明の技術分野
本発明は、低酸素濃度環境を利用して燃焼する火災を瞬時に消火し、火災の発生を防止する火災防止システム及び火災抑止システムの方法、装置及び組成物に属する。」(段落【0001】)

ウ 「【0091】
図10は、火災抑止モードで設置されたビルFirePASSを備える多層建築物101の概略図である。
【0092】
建築物101の屋根に設置される大型なFirePASSブロック(ハイポキシコ社から市販)は、周辺空気から酸素を抽出して低酸素濃度空気(又は消火剤)を供給する低酸素空気発生装置102を備える。低酸素空気発生装置102は、圧縮機103に連結して、貯蔵容器104に高圧で低酸素濃度空気を供給する。そこで一旦、約200バールの一定圧力で貯蔵容器104内に低酸素濃度空気が保持される。
【0093】
図10に示すように、エレベータシャフトの外部又は内部の何れかに沿って建築物の全体にわたり、各階に排出ノズル106を有する垂直火災抑止剤供給管105を設置できる。排出ノズル106は、高圧火災抑止剤の放出により生じる騒音を減少させる消音器を備えている。
【0094】
火災が検知されると、中央制御盤からの信号により、放出弁107の開放が開始され、貯蔵された低酸素濃度空気(火災抑止剤)を分配管105内に圧送する。FirePASSが迅速な反応時間で対応すれば、火災を検知した階に呼吸可能な火災抑止環境を形成すれば十分のはずである。しかしながら、付加的な予防措置として、低酸素濃度薬剤を隣接階にも放出すべきである。ビル用FirePASSは、十分な量の低酸素火災抑止剤(酸素含有率10%以下で)を所望の階に放出して、約12%-15%の酸素含有率を有する呼吸可能な火災抑止大気を形成する。
【0095】
低酸素濃度大気の正圧は、確実に全部屋に浸透して、あらゆる室の火元を瞬時に鎮火する。また、隣接する階に低酸素濃度環境を形成することにより、建築物の上部に火災が拡大しない。本システムの重要な長所は、現在、適当な場所に配置された(例えばスプリンクラシステム、気体火災抑止システム等により使用される)火災検出装置/消火装置を容易に組み込める点にある。」(段落【0091】ないし【0095】)

エ 「【0116】
図15は、自動車用トンネルのトンネル用FirePASSシステムの概略図を示す。この火災抑止システムは、自己調整可能であり、完全自動式である。
【0117】
高圧管152は、トンネル151の長さ全体に延伸する。壁151の横に又は天井の下方に高圧管152を装着できる。管152は、トンネル151外の高圧容器153に接続される。本形態では、十分に包囲された高圧ガス管路152-153が達成される。より長いトンネルには、各端部に独立したシステムを設けることが望ましい。必要に応じて、選択された区画に追加のシステムを付加してもよい。例えば、ノルウェーで最近開通した25kmのトンネルは、全長さにわたって設置される少なくとも10台の付加FirePASSシステムを必要とする。
【0118】
気体排出ノズル154は、トンネルの全長にわたり均等に配置される。各排出ノズル154は、トンネルの分割された区画A、B、C等で作動される。トンネルの換気システムを図示せず説明を簡略化する。火災の場合には、通常、カーテンホルダ156に保持される柔軟なフラップカーテン155により各領域を分割できる。
【0119】
低酸素大気発生装置157はトンネル外に配置されて、圧縮機ブロック158を通じて高圧容器153に連結される。高圧容器153及び管152は、15%以下の酸素含有率を有する呼吸可能な低酸素濃度空気を含む。低酸素大気発生装置157により生成され、圧縮機ブロック158を通じ容器153に供給される空気の気圧は、約200-300バールであるより長いトンネルは、図15に示す多数のトンネル用FirePASSシステムの装備を必要とする。
【0120】
本実施の形態による動作原理を次に説明する。火災が区画Cで発生すると、トンネル中に5メートル間隔で配置された熱/煙検知器159により火災を瞬時に検出する。区画A、B、C、D及びEの間に設置されるカーテンホルダ156は、可撓性の透明なカーテンを放出する。これにより、トンネルの他の区画から区画Cの火災を分離する。
【0121】
図16に示すように、カーテン155は、合成材料より製造され柔軟性のある透明なフラップを備える。高圧ガスカートリッジ又は起爆カートリッジ161によって、カーテン155を瞬時に膨張できる。カートリッジは、自動車の膨張可能なエアバッグに使用されるものと同様である。カートリッジは、煙/火災検知器159からの信号により起爆されるであろう。適当な検出装置は、多くの製造業者から入手可能である。
【0122】
同時に、トンネル内換気システムは運転を停止して、区画Cの排出ノズル154は、低酸素濃度空気を高圧で放出する。低酸素濃度空気は、管152及び容器153内に貯蔵される。区画Cに放出される低酸素濃度空気の容量は、区画Cの容量の数倍を超える。従って、区画B、C及びDの空気は完全に低酸素濃度空気に置換され、呼吸可能火災抑止環境を迅速かつ確実に確立できる。より短いトンネル(1000m未満)では、トンネル全体を十分に充填する容積で低酸素濃度空気を放出しなければならない。
【0123】
管路152-153から区画B、C及びDに放出のに必要な低酸素消火性組成物の量を算出するために、最終酸素濃度が13%から15%を放出すべき火災抑止大気中に使用すべきである。これは、人の呼吸に依然として適する2700メートルと3800メートルとの間の標高に相当する。本低酸素濃度環境は、いかなる火災も瞬時に鎮火するであろう。これは、化学的火災、電気的火災、可燃性液体により誘因される火災及びガス爆発火災を含む。また、本環境は爆発からの火災も瞬時に鎮火する。これはテロリストの攻撃に対する重要な予防手段となる。
【0124】
排出ノズル154は、高圧気体の放出に起因する騒音を減少させる特殊な消音器を備えている。トンネル内外の両方の人に警報音を生ずる空気サイレンを消音器に取り付けることも推奨される。また、酸素含有量が低酸素閾値以下に低下すると、閉じ込められた自動車の内燃機関は、稼動不能となる。従って、長時間、呼吸可能な空気が十分に存在するであろう。」(段落【0116】ないし【0124】)

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)及び図面の記載から、引用文献1には次の事項が記載されていることが分かる。

カ 上記(1)アないしウ及び図10の記載から、引用文献1には、高圧の低酸素濃度空気を供給する低酸素空気発生装置102、圧縮機103及び貯蔵容器104と、垂直火災抑止剤供給管(分配管)105と、消音器を備える排出ノズル106が備えられる火災防止システムが記載されていることが分かる。また、排出ノズル106にはノズル孔が形成されることは、技術常識に照らせば明らかである。

キ 上記(1)ア、イ及びエ並びに図15及び16の記載から、引用文献1には、高圧の低酸素濃度空気を供給する低酸素大気発生装置(当審注:「低酸素空気発生装置」の誤記と認める。)157、圧縮機ブロック158及び高圧容器153と、管152と、消音器を備える排出ノズル154が備えられる火災防止システムが記載されていることが分かる。また、排出ノズル154にはノズル孔が形成されることは、技術常識に照らせば明らかである。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図10、15及び16の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
なお、(a)ないし(e)は、理解の一助のため当審において付したものである。

「(a)高圧の低酸素濃度空気を導き、端部を有する分配管105(又は管152)と、
(b)分配管105(又は管152)に高圧の低酸素濃度空気を供給する低酸素空気発生装置102,157、圧縮機103,158及び貯蔵容器104(又は高圧容器153)と、
(c)分配管105(又は管152)を、設置する手段と、
(d)排出ノズル106,154であって、
高圧の低酸素濃度空気を建築物101(又はトンネル151)内の消火対象階(又は消火対象区画)内の空間に向けて放出するノズル孔が形成される排出ノズル106,154と、
(e)排出ノズル106,154からの低酸素濃度空気の放出による騒音を減少させて消火対象階(又は消火対象区画)内の空間へ放出する消音器とを備える防火システム。」

2-2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の原出願の最先の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭57-408号(実開昭58-103100号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。

ア 「本考案は、空気パージ用消音器に関するものであつて、比較的簡単な構成で優れた消音効果を発揮する新規な消音器を提供するものである。
電子機器を好ましくない雰囲気で使用するのにあたつて、電子機器内に清浄空気を人力して内圧を高め、電子機器内への有害雰囲気の侵入を防止する空気パージが行われている。
ところで、このような空気パージと共に、機器の冷却を行うこともある。この場合には、相当量の空気が必要となるが、空気流量に比例して入力空気による騒音も大きくなる傾向がある。このような騒音は、オペレータによる操作頻度が高い装置では、操作阻害要因の一つとなり、好ましくない。
そこで、このような騒音を減らすために、焼結金属による微少な隙間に空気を通すようにした消音器が実用化されてはいるが、十分な消音効果を得ることはできない。
本考案は、筒状のケース内に空気が屈折して流れるように複数の仕切板を配置するとともに仕切板間に通気性を有する吸音材を充填し、効率良く消音できるようにしたものである。」(明細書第1ページ第14行ないし第2ページ第15行)

イ 「第1図は、本考案の一実施例を示す構成説明図であつて、1はケース、2はノズル、3はスペーサ、4はキヤツプ、5,6は仕切板、7は吸音材、8は整流板、9は取付部材、10は機器本体である。
ケース1は筒状に形成されていて、一端にはパージ用の空気の入力部が設けられ、他端には内部に入力された空気の出力部が設けられている。本実施例では、入力部としてノズル2が設けられ、出力部として環状に形成されたキヤツプ4が設けられている。これらノズル2およびキヤツプ4は、それぞれケース1の端部内周にねじ結合されている。スペーサ3は、各仕切板5,6の間隔を保つためのものであつて、ケース1内周に嵌め合うように環状に形成されている。仕切板5,6は、ケース1内で空気が屈折して流れるようにするためのものであつて、少なくとも透孔あるいは切欠部のいずれかが形成されたものを用いる。第2図は、このような仕切板5,6の具体例を示す平面図であつて、(a)は外周に切欠部を設けた仕切板5の例を示し、(b)は中心部に透孔を設けた仕切板6の例を示している。これら仕切板5,6は、スペーサ3を介して交互にケース1内に配置されている。吸音材7は、通気性を有するものであつて、仕切板5,6間に充填されている。このような吸音材7としては、ガラス繊維や石綿等が好適である。整流板8は、キヤツプ4から出力される空気の流れを平均化するものであつて、多数の径の等しい透孔が形成されている。取付部材9は、機器本体10に消音器を取り付けるためのものである。」(明細書第2ページ第17行ないし第4ページ第6行)

ウ 「第3図は、第1図の構成における空気の流れを実線で示し、音の流れを破線で示した動作説明図である。第3図に示すように、ノズル2から入力されたパージ用の空気は、仕切板5の切欠部および仕切板6の透孔を通り、ケース1内で屈折しながらキヤツプ4から送出される。一方、音は、仕切板5,6間で反射を繰り返しながらキヤツプ4に向かつて進行するが、その音波エネルギーはその過程で吸音材7に吸収されて熱エネルギーに変換されてしまい、外部にはほとんど送出されることはない。
このような構成によれば、音の経路を実質的に長く形成することができ、入力空気圧を大幅に減殺することなく、十分な消音効果を得ることができる。
なお、上記実施例では、2種類の仕切板を用いる例について説明したが、外周に切欠部を設けるとともに偏心した位置に透孔を設けた1種類の仕切板を用い、取付角度を順次異ならせるようにしてもよい。また、3種類以上の仕切板を用いてもよい。
また、スペーサおよび整流板は、必要に応じて用いればよい。
以上説明したように、本考案によれば、比軟的簡単な構成で、消音効果の優れた消音器が実現でき、各種の空気パージ用消音器として好適である。」(明細書第4ページ第9行ないし第5ページ第14行)

(2)引用文献2の記載から分かること

カ 上記(1)アないしウ及び第1図から、引用文献2には、空気による騒音を減少させるための消音器が記載されていることが分かる。

キ 上記(1)イ及び第1図から、引用文献2に記載された消音器のノズル2の上流側端部(第1図では左端)には内ねじが形成されており、したがって、ノズル2に接続される管(以下、「入力管」という。)には外ねじが形成されることが分かる。また、第1図から、ノズル2の下流側端部(第1図では右端)には、ノズル孔が形成されていることが看取できる。

ク 上記(1)イの「本実施例では、入力部としてノズル2が設けられ、出力部として環状に形成されたキヤツプ4が設けられている。これらノズル2およびキヤツプ4は、それぞれケース1の端部内周にねじ結合されている。」という記載及び第1図から、引用文献2に記載された消音器のノズル2の下流側端部には、外ねじが形成され、ケース1の上流側端部には内ねじが形成されていることが分かる。

ケ 上記(1)イ及び第1図から、引用文献2に記載された消音器において、ケース1は筒状(円筒状)に形成され、該ケース1の内部には吸音材7が充填されていることが分かる。また、第1図から、吸音材7の形状は円柱状であり、吸音材7の上流側の面は、ノズル2の下流側の面に面接触していることが看取できる。

コ 上記(1)ウの「スペーサおよび整流板は、必要に応じて用いればよい。」という記載から、引用文献2に記載された消音器において、スペーサおよび整流板を用いることは必須ではないことが分かる。

サ 上記(1)イ及び第1図から、引用文献2に記載された消音器の吸音材7は、通気性を有するガラス繊維や石綿等からなるものであり、ガラス繊維や石綿からなる吸音材7はその内部に空隙を有しているものであるから、吸音材7はその内部に空隙を有しているといえる。

シ 上記(1)アの「この場合には、相当量の空気が必要となるが、空気流量に比例して入力空気による騒音も大きくなる傾向がある。・・・このような騒音を減らすために、焼結金属による微少な隙間に空気を通すようにした消音器が実用化されてはいる」という記載から、空気流量が大きい入力空気による大きな騒音を減らすための消音器の吸音材として、焼結金属を用いる技術が既に実用化され周知技術であったことが分かる。なお、このような焼結金属が多孔質金属であることは、技術常識に照らせば明らかである。

ス 上記(1)ウ及び第1図から、引用文献2に記載された消音器は、ノズル2から入力されたパージ用の空気を、吸音材7に通過させ、その過程で音波エネルギーを吸音材に吸収させるものであることが分かる。

セ 上記(1)アないしウ及び第1図から、引用文献2に記載された消音器に入力されるパージ用の空気は、空気による騒音が出るほどの高速の空気流であることが分かる。また、該高速の空気流が、ガラス繊維や石綿等からなる吸音材7を通過する際には、空気流が拡散され、徐々に減圧されて空気流の速度が低下することは自明である。

ソ 上記(1)アないしウ及び第1図から、引用文献2に記載されたノズル2、ケース1、スペーサ3、キャップ4、仕切板5及び6、吸音材7並びに整流板8は、噴射ヘッドを構成することが分かる。

タ 上記(1)イ(明細書第3ページ第2行)における「ケース1は筒状に形成されていて」等の記載及び第1図から、ケース1は円筒状に形成されていることが分かる。ケース1は円筒状であるから、中心軸を有することは自明である。さらに、(1)アないしウの記載及び第1図並びに技術常識を参酌すると、ノズル2に接続される入力管の中心軸、ノズル2のノズル孔、ケース1の中心軸、及びキャップ4の透孔の中心は、一直線状にあるとみることが合理的である。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)及び第1図から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。
(なお、符号(a)ないし(e)は、理解の一助のため、当審において付したものである。)

「(a)高圧の空気を導き、外ねじが形成される端部を有する入力管と、
(b)入力管に高圧の空気を供給する空気供給源と、
(d)噴射ヘッドであって、
高圧の空気を所定の空間に向けて送出するノズル孔が形成され、噴射ヘッドにおける空気の送出方向下流側に設けられ、外ねじが形成され、ノズル孔は、入力管の端部の入力管軸線に沿って延びるノズル孔軸線を有するノズル2と、
噴射ヘッドにおける空気の送出方向上流側に設けられ、入力管の端部の外ねじに接続される内ねじが形成されるノズル2の上流側端部とを有し、
ノズル孔と、ノズル2の上流側端部とは、入力管の端部の軸線に沿って延びる噴射ヘッドと、
(e)ノズル2からの空気の送出による騒音を減少させて所定の空間へ送出する消音器であって、
ノズル2の外ねじに着脱可能である内ねじが形成されるケース1の上流側端部と、
ケース1の上流側端部から、ノズル孔の出口からの空気の送出方向下流側に連なり、内部空間を規定し、ノズル孔軸線に沿って延びる軸線を有する筒状のケース1と、
内部空間に収容され、微細な空隙を有し、噴射ヘッドのノズル2から高速で送出された空気を、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、空気の騒音を吸収し、所定の空間へ送出し、ガラス繊維や石綿等からなる吸音材と、
ケース1における軸線方向のノズル2から遠ざかった下流側端部に連なって、軸線に垂直に形成され、ケース1とともに内部空間を規定し、軸線を中心軸線とする透孔が軸線方向に貫通して形成され、吸音材を、噴射ヘッドのノズル2におけるノズル孔が開口するノズル孔の出口端部まわりの端面とによって挟持するキャップ4とを有し、
入力管の端部の軸線に沿って延びる軸線を有する、消音器。」

また、上記(1)ア及び(2)シから、次の技術が周知技術(以下、「周知技術A」という。)であったことが分かる。

「空気の流れによる騒音を減少させるための消音器において、吸音材として、多孔質金属からなる吸音材を用いる技術。」

2-3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「低酸素濃度空気」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「消火ガス」に相当し、以下同様に、「低酸素空気発生装置102,157、圧縮機103,158及び貯蔵容器104(又は高圧容器153)」は「消火ガス供給源」に、「分配管105(又は管152)」は「導管」に、「排出ノズル106,154」は「噴射ヘッド」に、「建築物101(又はトンネル151)」は「建物」に、「消火対象階(又は消火対象区画)」は「消火対象区画」に、「放出」は「噴射」に、「騒音」は「音響」に、「減少」は「減衰」に、「消音器」は「消音装置」に、「防火システム」は「ガス消火設備」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「(d)排出ノズル106,154であって、高圧の低酸素濃度空気を建築物101(又はトンネル151)内の消火対象階(又は消火対象区画)内の空間に向けて放出するノズル孔が形成される排出ノズル106,154」は、「(d)噴射ヘッドであって、高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔が形成される噴射ヘッド」という限りにおいて、本願補正発明における「(d)噴射ヘッドであって、高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔が形成され、噴射ヘッドにおける消火ガスの噴射方向下流側(図13の左方)に設けられ、第2外ねじが形成され、ノズル孔は、導管の前記端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線を有するノズル部と、噴射ヘッドにおける消火ガスの噴射方向上流側(図13の右方)に設けられ、導管の前記端部の第1外ねじに接続される第1内ねじが形成される噴射ヘッド端部とを有し、ノズル孔と、前記噴射ヘッド端部とは、導管の前記端部の軸線に沿って延びる噴射ヘッド」に相当し、
引用発明における「(e)排出ノズル106,154からの低酸素濃度空気の放出による騒音を減少させて消火対象階(又は消火対象区画)内の空間へ放出する消音器とを備える防火システム。」は、「(e)噴射ヘッドからの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置とを備えるガス消火設備。」という限りにおいて、本願補正発明における「(e)ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置であって、噴射ヘッドのノズル部の第2外ねじに着脱可能である第2内ねじが形成される取付け部と、取付け部から、ノズル孔の出口からの消火ガスの噴射方向下流側(図13の左方)に連なり、内部空間を規定し、ノズル孔軸線に沿って延びる周壁軸線を有する筒状の周壁121と、前記内部空間に収容され、微細な空隙を有し、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射された消火ガスを、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記消火対象区画内の空間へ放出し、多孔質金属から成る吸音材と、周壁における周壁軸線方向のノズル部から遠ざかった一端部に連なって、周壁軸線に垂直に形成され、前記周壁とともに前記内部空間を規定し、周壁軸線を中心軸線とする透孔が周壁軸線方向に貫通して形成され、吸音材を、噴射ヘッドのノズル部におけるノズル孔が開口するノズル孔の出口端部まわりの端面とによって挟持する端壁とを有し、導管の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する消音装置とを備えることを特徴とするガス消火設備。」に相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「(a)高圧の消火ガスを導き、端部を有する導管と、
(b)導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源と、
(c)導管を、設置する手段と、
(d)噴射ヘッドであって、
高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔が形成される噴射ヘッドと、
(e)噴射ヘッドからの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ放出する消音装置とを備えるガス消火設備。」
である点で一致し、次の点において相違する。

〈相違点〉
(1)相違点1
「端部を有する導管」について、本願補正発明においては「第1外ねじが形成される端部を有する導管」であるのに対し、引用発明においては、分配管105(又は管152)が「第1外ねじが形成される端部」を備えるか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
「導管を、設置する手段」について、本願補正発明においては、「導管を、振動および変位を抑制して建物に締結して設置する手段」を備えるのに対し、引用発明においては、分配管105(又は管152)を設置する手段は有するものの、「振動および変位を抑制して建物に締結して設置する手段」を備えるか否か明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点3
「(d)噴射ヘッドであって、
高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔が形成される噴射ヘッドと、
(e)噴射ヘッドからの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置とを備えるガス消火設備。」
について、本願補正発明においては、
「(d)噴射ヘッドであって、高圧の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔が形成され、噴射ヘッドにおける消火ガスの噴射方向下流側(図13の左方)に設けられ、第2外ねじが形成され、ノズル孔は、導管の前記端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線を有するノズル部と、噴射ヘッドにおける消火ガスの噴射方向上流側(図13の右方)に設けられ、導管の前記端部の第1外ねじに接続される第1内ねじが形成される噴射ヘッド端部とを有し、ノズル孔と、前記噴射ヘッド端部とは、導管の前記端部の軸線に沿って延びる噴射ヘッドと、
(e)ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させて消火対象区画内の空間へ噴射する消音装置であって、噴射ヘッドのノズル部の第2外ねじに着脱可能である第2内ねじが形成される取付け部と、取付け部から、ノズル孔の出口からの消火ガスの噴射方向下流側(図13の左方)に連なり、内部空間を規定し、ノズル孔軸線に沿って延びる周壁軸線を有する筒状の周壁121と、前記内部空間に収容され、微細な空隙を有し、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射された消火ガスを、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、消火ガスの噴射流の振動を吸収し、前記消火対象区画内の空間へ放出し、多孔質金属から成る吸音材と、周壁における周壁軸線方向のノズル部から遠ざかった一端部に連なって、周壁軸線に垂直に形成され、前記周壁とともに前記内部空間を規定し、周壁軸線を中心軸線とする透孔が周壁軸線方向に貫通して形成され、吸音材を、噴射ヘッドのノズル部におけるノズル孔が開口するノズル孔の出口端部まわりの端面とによって挟持する端壁とを有し、導管の前記端部の軸線に沿って延びる軸線を有する消音装置とを備えるガス消火設備。」
であるのに対し、引用発明においては、
「(d)排出ノズル106,154であって、
高圧の低酸素濃度空気を建築物101(又はトンネル151)内の消火対象階(又は消火対象区画)内の空間に向けて放出するノズル孔が形成される排出ノズル106,154と、
(e)排出ノズル106,154からの低酸素濃度空気の放出による騒音を減少させて消火対象階(又は消火対象区画)内の空間へ放出する消音器とを備える防火システム。」
ではあるものの、本願補正発明のような噴射ヘッド及び消音装置を備えるか否か明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

2-4 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
導管の端部に外ねじを設けることは、例示するまでもない周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
したがって、引用発明において、周知技術1を適用することにより、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
本願補正発明において、「導管を、振動および変位を抑制して建物に締結して設置する手段」の技術的意義を知るために、本願明細書を参照する。
本願明細書には、「導管4は、消火ガス供給源2に接続される主管5と、主管5に介在される分岐管6と、分岐管6によって主管5からの消火ガスが導かれ、前記噴射ヘッド3が接続される枝管7とを有する。主管5は、建物の躯体またはその躯体に固定された基台8およびブラケット9にUボルトなどの締結具10によって締結され、噴射ヘッド3の振動および変位が抑制された状態で設置されている(たとえば、特許文献1(当審注;特開平8-173565号公報)参照)。」(段落【0004】)、「導管14は、基台20およびブラケット21にUボルトなどの締結具22によって締結され、振動および変位が抑制された状態で建物の躯体に設置されている。」(段落【0014】)と記載されている。(下線は当審で付した。)
つまり、本願補正発明においては、「Uボルトなどの締結具22によって締結され」という状態を、「振動および変位を抑制して建物に締結して設置する」と表現しているものであるが、それは、上記段落【0004】に記載されているように、従来技術によってすでになされていたことが分かる。
また、導管を、締結具によって建物に締結する技術は、周知技術(以下、「周知技術2」という。)でもある。
してみれば、引用発明において、周知技術2を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項について検討するために、本願補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「入力管」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「導管」に相当し、以下同様に、「(入力管の)外ねじ」は「(導管の)第1外ねじ」に、「送出」は「噴射」及び「放出」に、「ノズル孔」は「ノズル孔」に、「ノズル2」は「ノズル部」に、「(ノズル2の)外ねじ」は「(ノズル部の)第2外ねじ」に、「(ノズル2の)内ねじ」は「(ノズル部の)第1内ねじ」に、「ノズル2の上流側端部」は「噴射ヘッド端部」に、「騒音」は「音響」及び「振動」に、「減少」は「減衰」に、「消音器」は「消音装置」に、「ケース1」は「周壁」に、「ケース1の上流側端部」は「取り付け部」に、「(ケース1の)軸線」は「周壁軸線」に、「(ケース1の)下流側端部」は「(周壁の)一端部」に、「透孔」は「透孔」に、「キャップ4」は「端壁」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載の技術における「空気」は、「気体」という限りにおいて、本願補正発明における「消火ガス」に相当し、同様に、引用文献2記載の技術における「空気供給源」は、「気体供給源」という限りにおいて、本願補正発明における「消火ガス供給源」に相当し、引用文献2記載の技術における「所定の空間」は、「所定の空間」という限りにおいて、本願補正発明における「建物内の消火対象区画内の空間」及び「消火対象区域内の空間」に相当する。
これらは、消音装置における消音の対象となる気体が、空気であるか、消火ガスであるかの違いによるものである。
また、引用文献2記載の技術における「ガラス繊維や石綿等」は、「吸音材料」という限りにおいて、本願補正発明における「多孔質金属」に相当する。
したがって、引用文献2記載の技術を本願補正発明の用語及び上位概念化した用語を用いて表現すると、
「(a)高圧の気体を導き、第1外ねじが形成される端部を有する導管と、
(b)導管に高圧の気体を供給する気体供給源と、
(d)噴射ヘッドであって、
高圧の気体を所定の空間に向けて噴射するノズル孔が形成され、噴射ヘッドにおける気体の噴射方向下流側に設けられ、第2外ねじが形成され、ノズル孔は、導管の端部の導管軸線に沿って延びるノズル孔軸線を有するノズル部と、
噴射ヘッドにおける気体の噴射方向上流側に設けられ、導管の端部の第1外ねじに接続される第1内ねじが形成される噴射ヘッド端部とを有し、
ノズル孔と、噴射ヘッド端部とは、導管の端部の軸線に沿って延びる噴射ヘッドと、
(e)ノズル部からの気体の放出による音響を減衰させて所定の空間へ噴射する消音装置であって、
噴射ヘッドのノズル部の第2外ねじに着脱可能である第2内ねじが形成される取付け部と、
取付け部から、ノズル孔の出口からの気体の噴射方向下流側に連なり、内部空間を規定し、ノズル孔軸線に沿って延びる周壁軸線を有する筒状の周壁と、
内部空間に収容され、微細な空隙を有し、噴射ヘッドのノズル部から高速で噴射された気体を、拡散させて徐々に減圧膨張させてその流速を下げ、気体の振動を吸収し、所定の空間へ放出し、吸音材料からなる吸音材と、
周壁における周壁軸線方向のノズル部から遠ざかった一端部に連なって、周壁軸線に垂直に形成され、周壁とともに内部空間を規定し、周壁軸線を中心軸線とする透孔が周壁軸線方向に貫通して形成され、吸音材を、噴射ヘッドのノズル部におけるノズル孔が開口するノズル孔の出口端部まわりの端面とによって挟持する端壁とを有し、
導管の端部の軸線に沿って延びる軸線を有する、消音装置。」
と表現することができる。

ここで、引用文献2記載の技術における「空気」は、高速で流れる気体であって、消音という観点においては、本願発明における「消火ガス」と相違しない。

また、消音装置における吸音材料として、多孔質金属を用いることは、周知技術(例えば、引用文献2に記載された周知技術Aを参照。)である。

そして、引用発明と、引用文献2記載の技術とは、共に、気体を高速で流す装置という共通の技術分野において、気体の流れによる騒音を低減するという共通の課題を解決するものである。

以上から、引用発明において、噴射ヘッド及び消音装置として引用文献2記載の技術を採用し、その際に、消音装置における吸音材料として、周知技術Aである多孔質金属を用いることにより、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、請求人は審判請求書(【本発明が特許されるべき理由】の10-1、ないし10-2-3)において、引用文献1に引用文献2記載の技術を適用するに当たっては阻害要因が存在する旨主張するが、請求人の主張は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に基づかないものである。
また、引用発明において、引用文献2記載の技術を適用するに当たって、大きさや強度を適合させることは、当業者が通常行うことである。

(3)効果について
本願補正発明を全体として検討しても、引用発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1、2及び周知技術Aから予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1、2及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成26年3月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)ア」のとおりである。

2 引用文献に記載された発明
本願の原出願の最先の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特表2003-530922号公報(以下、上記「第2[理由]2 2-1と同様に「引用文献1」という。)には、上記「第2[理由]2 2-1(1)」のとおりの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2[理由]2 2-1(2)」のとおりのことが分かる。
そして、引用文献1には、上記「第2[理由]2 2-1(3)」のとお

りの発明(以下、上記「第2[理由]2 2-1(3)と同様に「引用発明」という。)が記載されている。
さらに、本願の原出願の最先の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-408号(実開昭58-103100号)のマイクロフィルム(以下、上記「第2[理由]2 2-2と同様に「引用文献2」という。)には、上記「第2[理由]2 2-2(1)」のとおりの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2[理由]2 2-2(2)」のとおりのことが分かる。
そして、引用文献2には、上記「第2[理由]2 2-2(3)」のとおりの技術(以下、上記「第2[理由]2 2-2(3)」と同様に「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認める。

3 対比・判断
上記「第2[理由]1(2)」で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記「第2[理由]2」のとおり、引用発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1、2及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、引用発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1、2及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1、2及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-01 
結審通知日 2015-05-07 
審決日 2015-05-19 
出願番号 特願2013-210605(P2013-210605)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62C)
P 1 8・ 575- Z (A62C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 将一山村 和人  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 松下 聡
金澤 俊郎
発明の名称 ガス消火設備  
代理人 西教 圭一郎  

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