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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1302825
審判番号 不服2013-18375  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-24 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 特願2009-507195「電子デバイスの搭載に用いる装置と方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日国際公開、WO2007/122516、平成22年 1月21日国内公表、特表2010-501998〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年4月25日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成18年4月26日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成20年12月24日付けで手続補正がなされ、平成23年6月10日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月20日付けで手続補正がなされ、平成24年4月24日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月8日付けで手続補正がなされたが、平成25年5月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月24日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、平成26年1月22日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年4月28日付けで回答書が提出され、当審がした同年7月10日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年12月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
チップ搬送部を備えた第1の電極と、
前記チップ搬送部に近接して配置され、絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されている第2の電極と、
前記第1の電極の一部分と前記第2の電極の一部分とを包んでいる筐体であって、前記筐体は、前記筐体の第1の表面から前記筐体の中へ伸びている凹部を有し、前記チップ搬送部の少なくとも一部分が前記凹部を通して露出していることを特徴とする筐体と
を備え、
前記第2の電極は、第1の頭部終端と第2の頭部終端を備え、
前記第1の電極は、前記チップ搬送部から前記筐体の周囲へ伸び、前記第1の電極が前記チップ搬送部から前記筐体の前記周囲へ伸びるところで、開口部によって分離された第1の複数のリードに分かれ、前記第1の電極が前記筐体の外部に張り出す前に、前記第1の複数のリードは第1の幅を有する単一の第1の集合リード部に集合し、前記第1の電極が前記筐体の外でも前記第1の幅を維持しながら前記第1の電極が前記筐体の外に張り出し、かつ、前記第1の電極は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間における前記第1の複数のリードに分かれるところで幅が狭くなるように、前記第1の電極の中心軸の方向に徐々に幅が狭くなった後に、前記第1の複数のリードが前記第1の集合リードに集合するところで幅が広くなっており、これにより前記第1の電極の前記中心軸の方向に徐々に幅が狭くなっている部分は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間に位置し、前記第1の幅よりも狭い幅を有しており、
前記チップ搬送部は、前記チップ搬送部の端部から前記筐体の周囲へ伸びるにつれて、前記中心軸より徐々に離れるように構成され、
前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端は、前記絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されており、
前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端の端部は、前記チップ搬送部の端部に対して平行であり、
前記チップ搬送部の少なくとも一部分は、前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端との間に位置し、
前記第2の電極は、前記チップ搬送部から離れる方向に伸びて、前記筐体の外へ張り出す前に第2の幅を持ち、前記筐体の外でも前記第2の幅を維持しながら前記筐体の外部へ張り出す、
ことを特徴とする表面搭載デバイス。」

3.引用例
これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用された国際公開第2004/036660号(以下、「引用例」という。)には、「A SURFACE MOUNTING TYPE LIGHT EMITTING DIODE」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、引用例である国際公開第2004/036660号は、国内段階において公表された特表2006-514426号公報と基本的に同じであるから、当該公報の記載を翻訳文として付記する。また、下線は当審で付与した)。
(1)「Claims
1.The lead frame(I) with Anode lead frame(D) and Cathode lead frame(C); An insulated light transmitted epoxy glue(E) doting die pad cup(El) of the above lead frame(I); LED chip(A) die bonding on the above light transmitted epoxy glue(E);
The current conducting wire(Al)(A2) for applying an current conducting between anode/cathode lead frame(D)(C);
The light transmitted epoxy(F) molding the upper of the above two lead frame(D)(C);
The lower epoxy(H) forming the lower of the above lead frame(I);
A surface mounting type light emitting diode include this such special feature. 」(9頁1?12行)
(特許請求の範囲
1.陽極リードフレーム(D)と陰極リードフレーム(C)に構成されているリードフレーム(I)と、
前記リードフレーム(I)のダイ・パット・カップ(E1)にドッティングする絶縁性光透過エポキシ接着剤(E)と、
前記光透過エポキシ接着剤(E)にダイボンディングした発光ダイオードチップ(A)と、
陽極/陰極リードフレーム(D)(C)との間を通電させる電流導電ワイヤ(A2)(A1)と、
前記2つのリードフレーム(D)(C)の上部をモールディングする光透過エポキシ樹脂(F)と、
前記リードフレーム(I)の下部を形成する下端エポキシ樹脂(H)とを具備した表面実装型発光ダイオード。」

(2)「Figs. 2 is view showing a four cross section of inside organization about the smallest and ultra slight and light LED. Like the illustration, organization of the smallest and ultra slight and light chip LED optical semiconductor device according as the present idea is formed that the lead frame(I) wiht a pair of anode lead frame(D) and cathode lead frame(C), theelectric current wire(Al)(A2) for applying an electric current between anode/cathode lead frame(D)(C) and LED chip(A), the transmitted epoxy(F) molding the above two lead frame(D)(C), the lower epoxy(H) for 10?50um projection formed lower of lead frame(C)(D), and the anode lead penetration(Bl) and the cathode lead penetration(B2) for jointing on the above light transmitted epoxy(F) cope with this lower epoxy(H).
The brief about the production process of chip LED optical semiconductor device is the following that the process which be arranging multiline with a pair of anode/cathode lead frame is one group, the process which be dotting every unit lead frame by insulated light transmitted epoxy glue, the process which die bonding light device chip(350nm?470nm chip) to lead frame pad cup, the process which the above light device chip be electronically jointing by gold wire to the part of frame of the above lead frame, the process which the part of frame of lead frame be reaching safe in mold press and molding by transmitted epoxy, the ended series of lead frame stick to glue, this made through particular process cutting by diamond blade. 」(5頁11行?6頁9行)
( 図2は、本発明に係る超小型、超軽薄型の発光ダイオードの内部構造を示すもので、図示のように、本発明による超小型、超軽薄型の発光ダイオードの構成は一対の陽極リードフレーム(D)と陰極リードフレーム(C)から成るリードフレーム(I)と、上記の陽極、陰極リードフレーム(D)(C)と発光ダイオード・チップ(A)の通電のための通電ワイヤー(A1)(A2)と、上記のリードフレーム(D)(C)の上部部分をモールディングした透過エポキシ樹脂(F)と、上記のリードフレーム(C)(D)下部に形成された10?50μm程度の突出になるようにした下部エポキシ樹脂(H)と、この下部エポキシ樹脂(H)に対応した上部の光透過エポキシ樹脂(F)を相互接着するため陽極リード貫通ホール(B)と陰極リード貫通ホール(B1)が形成されている。
本発明のチップLED光半導体素子を製造する工程について簡単に説明すると、一対の陽極/陰極リードフレーム部を多数個の1組として多数列で配列する工程、一対に配列された単一リードフレームごとに絶縁性光透過エポキシ接着剤でドッティングする工程、このエポキシ接着剤に光素子チップ(350nm?470nm)をリードフレームパット・カップ部分にダイボンディングする工程、上記のリードフレームのフレーム部で上記の光素子チップを金のワイヤによって電極接合する工程、リードフレームのフレーム部をモルード金型に安着させ透過型エポキシ樹脂でモールディングする工程、モールディングが終わった一連のリードフレーム部を接着剤につけてこれをダイヤモンドブレードで切断し、個別化する工程を経て製造される。)

(3)「Also the idea is that the lead frame(I) with low thickness use as the board, the lead frame(I) and the lower epoxy(H) of light transparency epoxy is molding to be 10?50um projection than same surface of lead part of lead frame using the light transparency epoxy, by the penetration(B)(Bl) be made that the upper transmitted epoxy(F) and the lower transmitted epoxy(H) adhered each other. Hence the heat- shock of light device decrease at the least and offer ultra slight and light chip LED.」(6頁19?24行)
( 本発明はまた、厚さが薄いリードフレーム(I)を基板で使用し、リードフレーム(I)と光透過エポキシの下部エポキシ樹脂(H)をリードフレームのリード部分の同一平面上より10?50μm程度の突出になるように光透過エポキシ樹脂を使用してモールディングし、貫通ホール(B)(B1)により上部の光透過エポキシ樹脂(F)と下部のエポキシ樹脂(H)が接着することにより光素子の熱衝撃を最小化できる。)

・上記引用例に記載の「A SURFACE MOUNTING TYPE LIGHT EMITTING DIODE(表面実装型発光ダイオード)」は、上記(1)、(2)の記載事項、及びFig.2によれば、陰極リードフレーム(C)と陽極リードフレーム(D)と、陰極リードフレーム(C)のダイ・パット・カップ(E1)部分にダイボンディングした発光ダイオードチップ(A)と、2つのリードフレーム(C)(D)の上部をモールディングする光透過エポキシ樹脂(F)と、2つのリードフレーム(C)(D)の下部を形成する下部エポキシ樹脂(H)とを具備した表面実装型発光ダイオードに関する。
・上記(2)、(3)の記載事項、及びFig.2によれば、陰極リードフレーム(C)と陽極リードフレーム(D)は、その一端部同士がギャップを介して対向して配置されており、
陰極リードフレーム(C)は、一端部側がダイ・パット・カップ(E1)部分であり、他端部側は光透過エポキシ樹脂(F)及び下部エポキシ樹脂(H)の外部に一定の幅をもって露出しており、ダイ・パット・カップ(E1)部分と外部に露出する部分との間には陰極リード貫通ホール(B1)が形成され、さらに、陰極リード貫通ホール(B1)が形成されている部分の両側面にはそれぞれ凹部が形成されてなるものである。
また、陽極リードフレーム(D)は、一端部側に陽極リード貫通ホール(B)が形成されて2つの終端部分に分かれており、他端部側は光透過エポキシ樹脂(F)及び下部エポキシ樹脂(H)の外部に一定の幅をもって露出してなるものである。
そして、陰極リード貫通ホール(B1)と陽極リード貫通ホール(B)とによって上部の光透過エポキシ樹脂(F)と下部エポキシ樹脂(H)とが相互に接着することにより光素子(発光ダイオードチップ(A))の熱衝撃を最小化できるようにしたものである。
・なお、Fig.2によれば、陽極リードフレーム(D)の2つの終端部分の端面と、陰極リードフレーム(C)のダイ・パット・カップ(E1)部分の端面とは、ギャップを介して平行であることが見てとれる。

したがって、上記表面実装型発光ダイオードのうち、ダイボンディングされる発光ダイオードチップを除いた「デバイス」部分に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「陰極リードフレーム及び陽極リードフレームと、
前記2つのリードフレームの上部をモールディングする光透過エポキシ樹脂及び前記2つのリードフレームの下部を形成する下部エポキシ樹脂とを備え、
前記陰極リードフレームと前記陽極リードフレームとは、その一端部同士がギャップを介して対向して配置されており、
前記陰極リードフレームは、その一端部側が発光ダイオードチップをダイボンディングするためのダイ・パット・カップ部分であり、他端部側は前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出しており、前記ダイ・パット・カップ部分と前記外部に露出する部分との間には陰極リード貫通ホールが形成され、さらに、当該陰極リード貫通ホールが形成されている部分の両側面にはそれぞれ凹部が形成されてなり、
前記陽極リードフレームは、その一端部側は陽極リード貫通ホールが形成されてその両側に2つに分かれた終端部分が設けられ、他端部側は前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出してなり、
前記陽極リードフレームの前記2つに分かれた終端部分の端面と、前記陰極リードフレームの前記ダイ・パット・カップ部分の端面とは、前記ギャップを介して平行であり、
前記陰極リード貫通ホールと前記陽極リード貫通ホールとによって前記光透過エポキシ樹脂と前記下部エポキシ樹脂とが相互に接着することにより前記発光ダイオードチップの熱衝撃を最小化できるようにしたデバイス。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「陰極リードフレーム」、「陽極リードフレーム」は、それぞれ本願発明における「第1の電極」、「第2の電極」に相当し、
引用発明における「陰極リードフレーム及び陽極リードフレームと、・・・・前記陰極リードフレームと前記陽極リードフレームとは、その一端部同士がギャップを介して対向して配置されており、前記陰極リードフレームは、その一端部側が発光ダイオードチップをダイボンディングするためのダイ・パット・カップ部分であり、・・」によれば、
(a)陰極リードフレームの一端部側の「ダイ・パット・カップ部分」は、発光ダイオードチップをダイボンディングするための部分であるから、本願発明でいう「チップ搬送部」に相当するといえ、
(b)また、「ギャップ」は、陰極リードフレームと陽極リードフレームとの対向する一端部同士を電気的に分離するものであることは明らかであるから、本願発明でいう「絶縁ギャップ」に相当するものであり、
したがって、本願発明と引用発明とは、「チップ搬送部を備えた第1の電極と、前記チップ搬送部に近接して配置され、絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されている第2の電極と」を備えるものである点で一致する。

(2)引用発明における「前記2つのリードフレームの上部をモールディングする光透過エポキシ樹脂及び前記2つのリードフレームの下部を形成する下部エポキシ樹脂とを備え」、「前記陰極リードフレームは、・・・・他端部側は前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出しており・・・・前記陽極リードフレームは、・・・・他端部側は前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出してなり・・」によれば、
引用発明の「光透過エポキシ樹脂」及び「下部エポキシ樹脂」は、2つのリードフレームを外部に露出する部分以外の部分をモールディングしてなるものであることから、本願発明でいう「筐体」に対応するものであり、
本願発明と引用発明とは、後述の相違点はあるものの「前記第1の電極の一部分と前記第2の電極の一部分とを包んでいる筐体と」を備える点で共通する。

(3)引用発明における「陰極リード貫通ホール」は、本願発明における「開口部」に相当し、
引用発明における「前記陰極リードフレームは、その一端部側が発光ダイオードチップをダイボンディングするためのダイ・パット・カップ部分であり、他端部側は前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出しており、前記ダイ・パット・カップ部分と前記外部に露出する部分との間には陰極リード貫通ホールが形成され、さらに、当該陰極リード貫通ホールが形成されている部分の両側面にはそれぞれ凹部が形成されてなり」によれば、
(a)陰極リードフレームは、「前記ダイ・パット・カップ部分と前記外部に露出する部分との間には陰極リード貫通ホールが形成され」ているのであるから、ダイ・パット・カップ部分と外部に露出する部分との間の部分は、陰極リード貫通ホールによって分離された2つのリード部分(本願発明でいう「第1の複数のリード」)に分かれてなるものであることは明らかであり、
本願発明と引用発明とは、「前記第1の電極は、前記チップ搬送部から前記筐体の周囲へ伸び、前記第1の電極が前記チップ搬送部から前記筐体の前記周囲へ伸びるところで、開口部によって分離された第1の複数のリードに分かれ」ている点で一致する。
(b)また、陰極リードフレームの他端部側は、「前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出して」いることから、当該陰極リードフレームは、光透過エポキシ樹脂及び下部エポキシ樹脂の外部へ露出する(張り出す)前に、上述の分離された2つのリード部分は一定の幅(本願発明でいう「第1の幅」)を有する単一のリード部分に集合し、その一定の幅を維持しながら光透過エポキシ樹脂及び下部エポキシ樹脂の外部へ露出する(張り出す)ものであるということができ、
本願発明と引用発明とは、「前記第1の電極が前記筐体の外部に張り出す前に、前記第1の複数のリードは第1の幅を有する単一の第1の集合リード部に集合し、前記第1の電極が前記筐体の外でも前記第1の幅を維持しながら前記第1の電極が前記筐体の外に張り出」すものである点で一致する。
(c)さらに、「当該陰極リード貫通ホールが形成されている部分の両側面にはそれぞれ凹部が形成されて」なるものであることから、陰極リードフレームは、上述の2つのリード部分に分かれるところで幅が狭くなり、その後、上述の一定の幅を有する単一のリード部分に集合するところで幅が広くなっているということができ、この幅が狭くなっている部分は、ダイ・パット・カップ部分と外部に露出する部分との間に位置し、その幅は前記一定の幅よりも狭いことも当然のことであるから、
本願発明と引用発明とは、後述の相違点はあるものの「前記第1の電極は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間における前記第1の複数のリードに分かれるところで幅が狭くなるように、前記第1の電極の中心軸の方向に幅が狭くなった後に、前記第1の複数のリードが前記第1の集合リードに集合するところで幅が広くなっており、これにより前記第1の電極の前記中心軸の方向に幅が狭くなっている部分は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間に位置し、前記第1の幅よりも狭い幅を有して」いる点で共通するといえる。

したがって以上をまとめると、本願発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「前記第1の電極は、前記チップ搬送部から前記筐体の周囲へ伸び、前記第1の電極が前記チップ搬送部から前記筐体の前記周囲へ伸びるところで、開口部によって分離された第1の複数のリードに分かれ、前記第1の電極が前記筐体の外部に張り出す前に、前記第1の複数のリードは第1の幅を有する単一の第1の集合リード部に集合し、前記第1の電極が前記筐体の外でも前記第1の幅を維持しながら前記第1の電極が前記筐体の外に張り出し、かつ、前記第1の電極は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間における前記第1の複数のリードに分かれるところで幅が狭くなるように、前記第1の電極の中心軸の方向に幅が狭くなった後に、前記第1の複数のリードが前記第1の集合リードに集合するところで幅が広くなっており、これにより前記第1の電極の前記中心軸の方向に幅が狭くなっている部分は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間に位置し、前記第1の幅よりも狭い幅を有して」いる点で共通するということができる。

(4)引用発明における「前記陽極リードフレームは、その一端部側は陽極リード貫通ホールが形成されてその両側に2つに分かれた終端部分が設けられ、他端部側は前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出してなり、前記陽極リードフレームの前記2つに分かれた終端部分の端面と、前記陰極リードフレームの前記ダイ・パット・カップ部分の端面とは、前記ギャップを介して平行であり」によれば、
(a)陽極リードフレームの一端部側に陽極リード貫通ホールが形成されることによって設けられた「2つに分かれた終端部分」は、本願発明でいう「第1の頭部終端と第2の頭部終端」に相当するといえ、
本願発明と引用発明とは、「前記第2の電極は、第1の頭部終端と第2の頭部終端」を備える点」で一致する。
(b)また、「2つに分かれた終端部分の端面と、前記陰極リードフレームの前記ダイ・パット・カップ部分の端面とは、前記ギャップを介して平行」であることから、2つに分かれた終端部分は、ギャップを介してダイ・パット・カップ部分から分離されているのは当然であり、
本願発明と引用発明とは、「前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端は、前記絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されて」いる点で一致する。
(c)さらに、陽極リードフレームの他端部側は、「前記光透過エポキシ樹脂及び前記下部エポキシ樹脂の外部に一定の幅をもって露出して」なるものであることから、当該陽極リードフレームは、一端部側のダイ・パット・カップ部分から離れる方向に伸び、光透過エポキシ樹脂及び下部エポキシ樹脂の外部へ露出する(張り出す)前に一定の幅(本願発明でいう「第2の幅」)を持ち、その一定の幅を維持しながら光透過エポキシ樹脂及び下部エポキシ樹脂の外部へ露出する(張り出す)ものであるということができ、
本願発明と引用発明とは、「前記第2の電極は、前記チップ搬送部から離れる方向に伸びて、前記筐体の外へ張り出す前に第2の幅を持ち、前記筐体の外でも前記第2の幅を維持しながら前記筐体の外部へ張り出す」ものである点で一致する。

以上をまとめると、本願発明と引用発明とは、「前記第2の電極は、第1の頭部終端と第2の頭部終端」を備える点、「前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端は、前記絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されて」いる点、及び「前記第2の電極は、前記チップ搬送部から離れる方向に伸びて、前記筐体の外へ張り出す前に第2の幅を持ち、前記筐体の外でも前記第2の幅を維持しながら前記筐体の外部へ張り出す」ものである点で一致する。

(5)引用発明における「前記陽極リードフレームの前記2つに分かれた終端部分の端面と、前記陰極リードフレームの前記ダイ・パット・カップ部分の端面とは、前記ギャップを介して平行であり」によれば、当然、
本願発明と引用発明とは、「前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端の端部は、前記チップ搬送部の端部に対して平行」である点で一致するといえる。

(6)そして、引用発明における「デバイス」は、陰極リードフレームの表面上に発光ダイオードチップをダイボンディングにより搭載するためのデバイスといえるから、本願発明における「表面搭載デバイス」に相当するとみることができる。

よって、本願発明と引用発明とは、
「チップ搬送部を備えた第1の電極と、
前記チップ搬送部に近接して配置され、絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されている第2の電極と、
前記第1の電極の一部分と前記第2の電極の一部分とを包んでいる筐体と
を備え、
前記第2の電極は、第1の頭部終端と第2の頭部終端を備え、
前記第1の電極は、前記チップ搬送部から前記筐体の周囲へ伸び、前記第1の電極が前記チップ搬送部から前記筐体の前記周囲へ伸びるところで、開口部によって分離された第1の複数のリードに分かれ、前記第1の電極が前記筐体の外部に張り出す前に、前記第1の複数のリードは第1の幅を有する単一の第1の集合リード部に集合し、前記第1の電極が前記筐体の外でも前記第1の幅を維持しながら前記第1の電極が前記筐体の外に張り出し、かつ、前記第1の電極は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間における前記第1の複数のリードに分かれるところで幅が狭くなるように、前記第1の電極の中心軸の方向に幅が狭くなった後に、前記第1の複数のリードが前記第1の集合リードに集合するところで幅が広くなっており、これにより前記第1の電極の前記中心軸の方向に幅が狭くなっている部分は、前記チップ搬送部と前記筐体の前記周囲との間に位置し、前記第1の幅よりも狭い幅を有しており、
前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端は、前記絶縁ギャップによって前記チップ搬送部から分離されており、
前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端の端部は、前記チップ搬送部の端部に対して平行であり、
前記第2の電極は、前記チップ搬送部から離れる方向に伸びて、前記筐体の外へ張り出す前に第2の幅を持ち、前記筐体の外でも前記第2の幅を維持しながら前記筐体の外部へ張り出す、
ことを特徴とする表面搭載デバイス。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
筐体について、本願発明では、「前記筐体の第1の表面から前記筐体の中へ伸びている凹部を有し、前記チップ搬送部の少なくとも一部分が前記凹部を通して露出している」と特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点2]
第1の電極の幅が狭くなることについて、本願発明では、「徐々に」幅が狭くなる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定がない点。

[相違点3]
本願発明では、「チップ搬送部の少なくとも一部分は、前記第1の頭部終端と前記第2の頭部終端との間に位置」する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点4]
チップ搬送部について、本願発明では、「チップ搬送部の端部から前記筐体の周囲へ伸びるにつれて、前記中心部より徐々に離れるように構成され」ていると特定する、つまり、チップ搬送部の形状が幅が徐々に広がる略三角形あるいは略台形である旨特定するものであると解されるのに対し、引用発明では、形状が矩形であり、そのような特定を有していない点。


5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用発明においては、筐体全体を透光性の樹脂を用いて形成しているといえるが、例えば当審の拒絶の理由に引用された特表2006-508537号公報(特に段落【0033】?【0037】、図1を参照)、特表2001-518692号公報(特に段落【0002】、【0021】、図1を参照)、さらには特開2001-177160号公報(特に段落【0002】、【0008】、図9、図10を参照)、特表2005-539386号公報(段落【0002】、【0044】、【0047】?【0050】、図3C、図4Bを参照)に記載されているように筐体として、例えば非透過性の樹脂を用いて上面側に上方に向かって広がるすり鉢状の凹部をリードフレームの先端(チップ搬送部)が露出するように形成し、凹部には透明樹脂を充填することにより当該凹部の内面にいわゆるリフレクタの機能を持たせるようにすることも周知の技術事項であり、引用発明においても、かかる周知の技術事項を採用し、相違点1に係る本願発明の特定事項のように構成することは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点2]について
引用発明における、陰極リード貫通ホールが形成されている部分の両側面にそれぞれ形成された「凹部」は、例えば当審の拒絶の理由に引用された特開2002-9217号公報(段落【0011】14?16行の記載、及び図1(a)に示される「凹部3c」を参照)、さらには特表2004-534405号公報(段落【0018】、【0050】の記載、及び図2に示される「切欠部5」を参照)に記載のようにいわゆる投錨効果(アンカー効果)によってリードフレームと当該リードフレームの一部分が露出するように封止する樹脂との接合強度(密着力)を高めることができるものであることは当業者にとって自明といえる技術事項であるところ、その形状はFig.2によれば長方形の形状のように見てとれるが、投錨効果(アンカー効果)を持たせるに当たって具体的にどのような形状とするかは当業者にとって任意であり、例えば幅が徐々に狭くなるような形状(つまり台形の形状)とすることも当業者が適宜なし得ることである。

[相違点3]及び[相違点4]について
例えば当審の拒絶の理由に引用された実願昭61-28668号(実開昭62-140758号)のマイクロフィルム(特に、7頁4?11行、第1図を参照)、さらには上記特開2001-177160号公報(段落【0004】?【0005】、図9を参照)、特開2002-374005号公報(図7、図8を参照)、特開2003-7946号公報(図3、図4を参照)、特開2004-111937号公報(図6を参照)、上記特表2005-539386号公報(図2A?図2Cを参照)に見られるように、一方のリードフレームにおけるチップ搬送部(マウント部)の一部分が他方のリードフレームの2つに分かれた終端部分の間に位置する形状・配置は周知であり、引用発明においてもこのような周知の形状・配置を採用し、ダイ・パット・カップ部分の少なくとも一部分が陽極リードフレームの2つに分かれた終端部分の間に位置するものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、チップ搬送部の形状については、そもそもどのような形状とするかは当業者が適宜定め得る事項にすぎず(例えば上記実願昭61-28668号(実開昭62-140758号)のマイクロフィルムの6頁11?14行の記載や、本願明細書の段落【0017】の記載も参照)、例えば上記特開2004-111937号公報(図6を参照)や上記特表2005-539386号公報(特に図2Bを参照)には、チップ搬送部の形状をその端部から筐体の周囲へ伸びるにつれて、中心部より(両側面が)徐々に離れる構成、つまり幅が徐々に広がる略三角形あるいは略台形の形状とした例も示されているところであり、引用発明においても、ダイ・パット・カップ部分をその端部からモールディングしたエポキシ樹脂の周囲へ伸びるにつれて、中心部より(両側面が)徐々に離れる構成、つまり幅が徐々に広がる略三角形あるいは略台形の形状とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
なお、その際にも、陽極リードフレームの2つに分かれた終端部分の端部がギャップを介してダイ・パット・カップ部分の端部に対して平行とすることも当業者がごく普通になし得ることである。

そして、
特に、引用発明における「陰極リード貫通ホール」等は、これによって「前記光透過エポキシ樹脂と前記下部エポキシ樹脂とが相互に接着することにより前記発光ダイオードチップの熱衝撃を最小化できる」ものであることに加えて、引用発明における「陰極リード貫通ホール」は、例えば当審の拒絶の理由に引用された上記実願昭61-28668号(実開昭62-140758号)のマイクロフィルム(4頁12行?5頁6行、及び第1図等に示される「貫通孔16」を参照)、さらには特表2005-500703号公報(段落【0030】、【0035】、及び図1等に示される「貫通口6a,6b」を参照)に記載のようにいわゆる投錨効果(アンカー効果)によってリードフレームと当該リードフレームの一部分が露出するように封止する樹脂との接合強度(密着力)を高めることができるものであることは当業者にとって自明といえる技術事項であること、
また、引用発明における2つの「凹部」についても同様に、上記「[相違点2]について」で指摘したとおりいわゆる投錨効果(アンカー効果)によってリードフレームと当該リードフレームの一部分が露出するように封止する樹脂との接合強度(密着力)を高めることができるものであることは当業者にとって自明といえる技術事項であること、
を踏まえると、上記相違点を総合的に勘案しても本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

なお、請求人は平成26年12月15日付け意見書において、「請求項1に係る発明の特徴は、『チップ搬送部が、チップ搬送部の端部から筐体の周囲へ伸びるにつれて、中心軸より徐々に離れるように構成されている』ことにあります。そして、請求項1に係る発明は、上記特徴により、チップ搬送部の上に載置される電気的デバイスについて様々なサイズおよび形状にすることを可能にしたり、また、チップ搬送部の上に多くの電気的デバイスを載置することを可能にしたりします(明細書の段落[0017]を参照)。また、請求項1に係る発明の上記特徴により、電気的デバイスにおける熱の放散能力を向上させることが可能となります(明細書の段落[0017]を参照)。さらに、請求項1に係る発明の上記特徴により、筐体に対する電極の安定性が促進され、デバイスの構造的な完全性が促進されます(明細書の段落[0040]を参照)。」などと主張しているが、
明細書の段落【0017】には「いくつかの実施形態では、チップ搬送部120は一般的に三角形である。チップ搬送部120のサイズと形状は、チップ搬送部120を通して、および/または第1の電極110を通しての所望の熱の放散、および/または他の要因に基づいて、そこに置くべき電子素子のサイズおよび/またはタイプに依存して決めてよい。チップ搬送部は、他の配置および/または形状で実現することも出来る。例として、チップ搬送部120は、台形、四角形、長方形、円形、または他のそのような形状などの色々な様式で形成することができる。」と記載されているのみであって、かかる記載からは、チップ搬送部の形状は、所望の熱の放散、電子素子(デバイス)のサイズやタイプに依存して決めてよいものであり、三角形の他に、台形、四角形、長方形、円形などの色々な形状とすることができることが把握し得るのみであり、また、明細書の段落【0040】についても「第1の電極110及び第2の電極115を通して、及びそれらの周囲に実現される結合が強化されると、少なくとも部分的に、筐体105に対する第1の電極110及び第2の電極115の安定性が促進され、表面搭載デバイス100の構造的な完全性(itegrity)が促進される。・・」と記載されているのみであって、電気的デバイスについて様々なサイズおよび形状にすることを可能にしたり、多くの電気的デバイスを載置することを可能にしたり、電気的デバイスにおける熱の放散能力を向上させることや、筐体に対する電極の安定性が促進され、デバイスの構造的な完全性が促進されることが、チップ搬送部の形状をその「端部から筐体の周囲へ伸びるにつれて、中心軸より徐々に離れるように構成」した、つまり幅が徐々に広がる略三角形あるいは略台形のような形状としたことによってもたらされる特有の作用効果であるとは認められず、請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-30 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2009-507195(P2009-507195)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 萩原 義則
井上 信一
発明の名称 電子デバイスの搭載に用いる装置と方法  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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