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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1302826
審判番号 不服2013-18592  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-26 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 特願2006-201445号「人が出入りできる区域への、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日出願公開、特開2007- 87370号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年7月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年7月28日、欧州特許庁)の出願であって、平成25年5月22日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年9月26日に本件審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1?9に係る発明は、平成24年5月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置(20)により、少なくとも一つの第2の可搬式通信装置(30)により、そしてアクセスコードを受信する受信装置(10)により、人が出入りできる区域、特に扉(1)によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法であって、以下のステップ、すなわち、
a)第1の通信装置(20)から第2の通信装置(30)へアクセスコードを送信することと、
b)第2の通信装置(30)から受信装置(10)へアクセスコードを送信することと、
c)受信装置(10)によってアクセスコードをチェックすることと、
d)チェックに成功した場合に出入りを解放することと
を含み、
アクセスコードに少なくとも一つの属性が設けられること、またはアクセスコードの少なくとも一つの属性が変更されることと、
属性が第1の通信装置(20)によって、または第2の通信装置(30)によって作成される、または変更されることと、
特定の実行時間、または複製防止が、属性として割り当てられること
を特徴とする方法。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-113409号公報(以下「刊行物1」という。)には、入退室管理システム、認証装置、リモート装置および入退室管理方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
ユーザに携帯される認証装置と、ユーザが出入り口を通行する際に前記認証装置の認証情報に基づいて本人認証を行なうリモート装置とからなる入退室管理システムであって、
前記認証装置は、認証情報を電子的に複製し、該複製された認証情報の出所元情報、有効期限情報を付加情報として付加した電子的な合鍵を、他の認証装置に与える合鍵管理手段を具備し、
前記リモート装置は、前記認証装置が電子的な合鍵を所持している場合、該電子的な合鍵に付加されている付加情報に基づいて、通行許可するか否かを判断する入退室管理手段を具備することを特徴とする入退室管理システム。」
(イ)「【0013】
本発明によれば、前記認証装置が、合鍵管理手段により、認証情報を電子的に複製し、該複製された認証情報の出所元情報、有効期限情報を付加情報として付加した電子的な合鍵を、他の認証装置に与えた場合、・・・
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
A.実施形態の構成
図1は、本発明の実施形態による入退室管理システムの構成を示すブロック図である。図1において、認証装置20a,20bは、接触、非接触式ICカードや携帯電話等からなり、入退室管理システムにおける認証手段として用いられる。該認証装置20a,20bは、各々、書き換え可能な記憶部21a,21b、データ送受信部22a,22b、および合鍵管理部23a,23bを備えている。記憶部21には、入退室時の認証のために必要とされる、シリアルナンバ、個人コード、グループコード、氏名等が保存される。データ送受信部22a,22bは、リモート装置30との間、あるいは他の認証装置との間で各種データを送受信する。合鍵管理部23a,23bは、自身の認証情報と該認証情報がいつまで利用可能であるかを示す借用期間などを示す借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)とを、認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与える。」
(ウ)「【0015】
リモート装置30は、入退室管理システムとして標準的機能(通行許可判断、履歴保持等)を有する入退室管理部31、電気錠解錠を行なう施錠・解錠制御部32、上記認証装置20との間でデータを送受信するデータ送受信部33を備えている。入退室管理部31は、認証装置20a,20bからアクセスがあると、同装置からの認証情報を収集し、許可可能であれば、出入り口等の電気錠を解錠する。なお、許可不可であっても、借用期限内の合鍵(他の認証装置の認証情報)を持って入れば、出入り口等の電気錠を解錠するようになっている。このとき、リモート装置30は、貸出者の権限を確認することにより不正な貸出をチェックする。リモート装置30は、電子的な合鍵の中に、貸出者、貸出機間、貸出理由等の借用情報を追加することにより、通行履歴情報上でそれらの情報を確認することが可能である。」
(エ)「【0024】
また、図3(b)に示すように、認証装置20aが認証装置20bに対して認証情報A(借用情報を含む)を貸し出した場合には、認証装置20aに対しては上述した図3(a)と同様である。これに対して、認証装置20bでは、当該装置の許可登録情報は「不許可」であるが、電子的な合鍵を所持しているので、元の所有者が「許可」であり、借用期限内であると判断されると、出入り口等が解錠され、通行履歴には、「通行」した旨に加えて、「電子的な合鍵を所持」していた旨が保持される。」

すると、記載事項(イ)の「認証装置20a,20bは、・・・携帯電話」からなる態様に着目して、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「ユーザに携帯される認証装置と、ユーザが出入り口を通行する際に前記認証装置の認証情報に基づいて本人認証を行なうリモート装置とからなる入退室管理システムであって、
認証装置20a,20bは、
携帯電話であり、
書き換え可能な記憶部21a,21b、データ送受信部22a,22b、および合鍵管理部23a,23bを備え、
記憶部21には、入退室時の認証のために必要とされる、シリアルナンバ、個人コード、グループコード、氏名等が保存され、
データ送受信部22a,22bは、リモート装置30との間、あるいは他の認証装置との間で各種データを送受信し、
合鍵管理部23a,23bは、自身の認証情報と該認証情報がいつまで利用可能であるかを示す借用期間などを示す借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)とを、認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与え、
リモート装置30は、
入退室管理システムとして標準的機能(通行許可判断、履歴保持等)を有する入退室管理部31、電気錠解錠を行なう施錠・解錠制御部32、上記認証装置20との間でデータを送受信するデータ送受信部33を備え、
入退室管理部31は、認証装置20a,20bからアクセスがあると、同装置からの認証情報を収集し、許可可能であれば、出入り口等の電気錠を解錠するものであって、
認証装置20aが認証装置20bに対して認証情報A(借用情報を含む)を貸し出した場合には、認証装置20bでは、電子的な合鍵を所持しているので、元の所有者が『許可』であり、借用期限内であると判断されると、出入り口等が解錠され、通行履歴には、『通行』した旨に加えて、『電子的な合鍵を所持』していた旨が保持される
入退室管理システム。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2003-515688号公報(以下「刊行物2」という。)には、電子キー・デバイス、システム、および電子キー情報を管理する方法に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0003】上に挙げるサービス提供者の中には、郵便配達員など毎日の出入りを必要とする者もあり、また例えば新聞配達員は午前6時から9時までの間に出入りを必要とするなど、決まった曜日や、決まった時刻など一定の時間に出入りを必要とする者もあることが考えられる。
【0004】さらに、サービス/配達が異なれば、異なる出入り権が必要となることもある。例えば、消防士、警備会社、あるいは警察はあらゆる施設への立ち入り権を必要とするのに対し、郵便配達員は郵便受けまで達することができればよい。
【0005】したがって、本発明の目的は、ロック制御ユニットによって制御するロック機構で保護する場所へのアクセスを制御する効率的な方法およびシステムを提供することであり、これにより高度の柔軟性と高レベルの安全性を提供することができる。」
(イ)「【0066】図2aを参照すると、本発明によるアクセス制御システムの第1の実施形態は、移動電子キー・デバイス201と、ドア・ロックなどのロック機構231を制御するロック制御ユニット221とを含む。・・・電子キー・デバイス201は、ロック制御ユニット221が受信し、例えばドアのロックを制御するなどして場所へのアクセスを制御することのできる、赤外線または無線ベースの信号、または他タイプの信号を発することのできる、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、ハンドヘルド・コンピュータ、スマート・カード、PSION端末、バー・コード・リーダ、あるいは他の端末などでよい。・・・
【0068】ロック制御ユニット221は、電子キー・デバイス201の通信ポート209が送信する、アクセス・コードを含む信号を受信する受信器227を含む。・・・受け取ったアクセス・コードが有効である場合・・・ロック制御インタフェース224がロック機構231の操作を開始し、その結果場所へのアクセスを許可することができる。」
(ウ)「【0072】図2bは、本発明によるロック制御システムの第2の実施形態を表す・・・
【0075】アクセス・コード管理システム211はコンピュータ・システムであることが好ましく、・・・アクセス・コード管理システム211は、図3および図9a?bとの関連で説明するように、アクセス・コードを生成し、管理する。アクセス・コード管理システム211は、電子キー・デバイス201および/またはロック制御ユニット221にアクセス・コードを送信する。・・・
【0076】
ロック制御ユニット221は、・・・図2aに示すアクセス制御システムの第1の実施形態との関連ですでに説明したロック制御インタフェース224を含む。」
(エ)「【0079】図3は、本発明によるアクセス権の管理プロセスの流れ図を示す。・・・ステップ383で、アドミニストレータ351はアクセス・コード管理システムを用いて、アクセス権の定義を、図4との関連で説明する個々の権利または一群の権利を識別する電子的なアクセス・コードのセットに変換する。アクセス・コードの定義と生成、および可能性としては電子キー・デバイスの設計と製造は、アクセス権所有者352からの要求を受けて、またはアクセス権所有者との協働、あるいは第3者との協働によって、アドミニストレータ351が実行することができる。・・・」
(オ)「【0088】図4は、本発明によるアクセス・コードのデータ形式の一実施形態を示す。・・・図4に示すアクセス・コードのデータ形式はバイトのシーケンスからなり、例えば4バイトのアクセス・コードIDを含むヘッダ401で開始する。アクセス・コードはさらに次のような識別を含む。そのアクセス・コードが有効であるロック制御ユニットまたはロック制御ユニットのグループを識別するロック制御ユニットID402、そのアクセス・コードの使用を許可された電子キー・デバイスまたはキー・デバイスのグループを識別するキー・デバイスID、およびアドミニストレータID404。これらの追加的なIDは任意選択であり、これらは省略しても、あるいはデフォルト値に設定してもよいことは理解されよう。図4に示すアクセス・コードはさらに追加の任意選択フィールドを含み、これはアクセス権のタイプに関する情報405、および追加的なアクセス・コード属性406を含む。アクセス権のタイプ407は、例えば、セキュリティ・レベルや、それが時間の制限されたアクセス権か、あるいはある回数に制限されたアクセス権かなどの、アクセス権のタイプを指定する1バイトのフィールドである。アクセス条件フィールド408は、そのアクセス権が例えばパスワードを条件とするかどうかを指定する。アクセス権のタイプによっては、例えば有効期間410、毎平日の時間411、許可される立ち入り(entry)回数412など追加のパラメータが必要となる。
・・・
【0090】こうした機能をアクセス・コードに含むことができることにより、例えば自己破壊型のアクセス・コードや、独自の特性を有するコード(例えば午前4時から6時までしか使用できないなど)を生成することができる。
【0091】これらのオプションを、電子キー・デバイスおよび/またはロック制御ユニットに送信するアクセス・コードに含むことができることが理解される。・・・」
(カ)【図4】には、アクセス・コードID401、ロック制御ユニットID402、キー・デバイスID403、アドミニストレータID404、アクセス権のタイプ405、アクセスコードの属性406からなるアクセスコードの一例が記載されている。
また、アクセス権のタイプ405として、アクセス権フィールド407、アクセス条件フィールド408等が例示され、アクセスコードの属性406としては、有効期間410、毎平日の時間411、許可される立ち入り回数412等が例示されている。
(キ)「【0100】・・・この実施形態によれば、それぞれステップ694?696と697?699に示すように、電子キー・デバイス601およびロック制御ユニット621に手動で複数のアクセス・コードを入力し、それぞれのメモリに記憶する。ユーザによる手動のアクセス・コード入力695、698には、例えば、それぞれ電子キー・デバイスまたはロック制御ユニット上で、ディップ・スイッチなどスイッチと、キーパッドを利用することができる。」

すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が開示されているものということができる。
「アクセス・コード管理システム211と、移動電子キー・デバイス201と、ドア・ロックなどのロック機構231を制御するロック制御ユニット221とを含むアクセス制御システムであって、
電子キー・デバイス201は、携帯電話であり、
アクセス・コード管理システム211は、アクセス・コードを生成し、管理し、電子キー・デバイス201および/またはロック制御ユニット221にアクセス・コードを送信し、
ロック制御ユニット221は、電子キー・デバイス201の通信ポート209が送信する、アクセス・コードを含む信号を受信し、
受け取ったアクセス・コードが有効である場合ロック制御インタフェース224がロック機構231の操作を開始し、その結果場所へのアクセスを許可する
ものであって、
アクセス・コードのデータ形式は、
4バイトのアクセス・コードIDを含むヘッダ401で開始し、
さらに追加の任意選択フィールドを含み、これはアクセス権のタイプに関する情報405、および追加的なアクセス・コード属性406を含み、
アクセス権のタイプ407は、セキュリティ・レベルや、それが時間の制限されたアクセス権か、あるいはある回数に制限されたアクセス権かなどの、アクセス権のタイプを指定するものあり、
アクセス条件フィールド408は、そのアクセス権が例えばパスワードを条件とするかどうかを指定するものあり、
アクセス権のタイプによっては、有効期間410、毎平日の時間411、許可される立ち入り(entry)回数412など追加のパラメータが必要となる方法。」

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「認証用の電子的な合鍵」及び、データ送受信部22a,22b,33で送受信部される「データ」の内「入退室時の認証のために必要とされる」データは、本願発明の「アクセスコード」に相当し、以下同様に
「認証装置20a」は、「携帯電話」であるので、「第1の可搬式通信装置」に、
「他の認証装置」となる「認証装置20b」も、「携帯電話」であるので、「第2の可搬式通信装置」に、
「リモート装置30」の「データ送受信部33」は、「アクセスコードを受信する受信装置」に相当する。
(b)「出入り口等の・・錠を解錠する」のは、扉によって閉ざされた空間への人の出入りの規制を解除するのが代表的態様であるので、その様に解される。
そうすると、引用発明の「入退室管理部31は、認証装置20a,20bからアクセスがあると、同装置からの認証情報を収集し、許可可能であれば、出入り口等の電気錠を解錠する」ことは、本願発明の「人が出入りできる区域、特に扉(1)によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法」に相当する。
(c)引用発明の「認証装置20a」の「データ送受信部22a・・は、・・他の認証装置との間で各種データを送受信」することのうち「他の認証装置」、すなわち「認証装置20b」に「送信」することは、本願発明の「第1の通信装置(20)から第2の通信装置(30)へアクセスコードを送信すること」に相当する。
(d)引用発明の「認証装置20b」の「データ送受信部・・22bは、リモート装置30との間・・で各種データを送受信」のうち「リモート装置30」に「送信」することは、それによって「元の所有者が『許可』であり、借用期限内であると判断されると、出入り口等が解錠され」るものであるので、本願発明の「第2の通信装置(30)から受信装置(10)へアクセスコードを送信すること」に相当する。
(e)引用発明の「入退室管理部31は、認証装置20a,20bからアクセスがあると、同装置からの認証情報を収集し、許可可能であれば、出入り口等の電気錠を解錠する」は、本願発明の「受信装置(10)によってアクセスコードをチェックすること」、及び「チェックに成功した場合に出入りを解放すること」に相当する。
(f)引用発明の「データ」は、認証装置20aの合鍵管理部23aが「自身の認証情報と該認証情報がいつまで利用可能であるかを示す借用期間などを示す借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)とを、認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与え」るためのものであって、その「借用情報」は、認証装置20a自身の認証情報に対して付加されたものであるので、本願発明の「属性」に相当する。
そして、引用発明の認証装置20aの合鍵管理部23aの「自身の認証情報と該認証情報がいつまで利用可能であるかを示す借用期間などを示す借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)とを、認証用の電子的な合鍵」とすることは、本願発明の「アクセスコードに少なくとも一つの属性が設けられること」に相当する。
(g)引用発明の認証装置20aの「合鍵管理部23a」は、「自身の認証情報と該認証情報がいつまで利用可能であるかを示す借用期間などを示す借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)とを、認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与え」るものであるので、当該認証用の電子的な合鍵(本願発明の「アクセスコード」に相当するもの)が認証装置20aの「合鍵管理部23a」で属性が設けられた状態にされることは自明である。
そして、該認証用の電子的な合鍵は、「借用情報」(本願発明の「属性」に相当するもの)を含むものであるので、引用発明の「認証装置20a」の「合鍵管理部23a」の「自身の認証情報と該認証情報がいつまで利用可能であるかを示す借用期間などを示す借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)とを、認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与え」ることと、本願発明の「属性が第1の通信装置(20)によって、または第2の通信装置(30)によって作成される、または変更されること」とは、「属性を含むアクセスコードが第1の通信装置によって属性が設けられた状態にされること」で共通する。
(h)引用発明の合鍵の「借用情報」は、「貸出期間・・の情報も含む」ものであるので、引用発明の合鍵の借用情報が「貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む」ことは、本願発明の「特定の実行時間」が、「属性として割り当てられること」に相当する。

(2)両発明の一致点
「少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置により、少なくとも一つの第2の可搬式通信装置により、そしてアクセスコードを受信する受信装置により、人が出入りできる区域、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法であって、以下のステップ、すなわち、
a)第1の通信装置から第2の通信装置へアクセスコードを送信することと、
b)第2の通信装置から受信装置へアクセスコードを送信することと、
c)受信装置によってアクセスコードをチェックすることと、
d)チェックに成功した場合に出入りを解放することと
を含み、
アクセスコードに少なくとも一つの属性が設けられることと、
属性を含むアクセスコードが第1の通信装置によって属性が設けられた状態にされることと、
特定の実行時間が、属性として割り当てられること
を特徴とする方法。」

(3)両発明の相違点
アクセスコードの属性が、本願発明は「第1の通信装置(20)によって、または第2の通信装置(30)によって作成される、または変更される」ものなのに対して、引用発明の「借用情報(貸出者・貸出期間・貸出理由等の情報も含む)」(本願発明の「アクセスコードの属性」に相当するもの)は、認証装置20a(本願発明の「第1の通信装置(20)」に相当するもの)の合鍵管理部23aが「自身の認証情報と・・借用情報・・とを、認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与え」る「借用情報」であって、認証装置20aによって「作成される、または変更される」ものでない点。

4.本願発明の容易推考性の検討
(1)本願発明と刊行物2記載の発明の対応関係
(a)刊行物2記載の発明の「移動電子キー・デバイス201」は、「携帯電話」であるので、本願発明の「第2の可搬式通信装置(30)」に相当し、以下同様に、
「ロック制御ユニット221」は、「電子キー・デバイス201の通信ポート209が送信する、アクセス・コードを含む信号を受信」するものであるので、「アクセスコードを受信する受信装置(10)」に、
「アクセス制御」は、「ロック制御ユニット221は、・・受け取ったアクセス・コードが有効である場合・・ロック機構231の操作を開始し、その結果場所へのアクセスを許可する」ものであるので、「人が出入りできる区域、特に扉(1)によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法」に、
「ロック制御ユニット221は、電子キー・デバイス201の通信ポート209が送信する、アクセス・コードを含む信号を受信」することは、「第2の通信装置(30)から受信装置(10)へアクセスコードを送信すること」に、
「ロック制御ユニット221は、・・・受け取ったアクセス・コードが有効である場合・・ロック機構231の操作を開始し、その結果場所へのアクセスを許可する」ことは、「受信装置(10)によってアクセスコードをチェックすること」及び「チェックに成功した場合に出入りを解放すること」に、
「アクセス権のタイプに関する情報405、および追加的なアクセス・コード属性406」は、アクセス・コードIDに対する「追加の任意選択フィールド」であって、アクセスコードに設けられる「属性」に、
「アクセス権のタイプ407は、・・アクセス権のタイプを指定するものあり」「アクセス権のタイプによっては、有効期間410、毎平日の時間411」であることは、「特定の実行時間・・が、属性として割り当てられること」に、
相当する。
(b)刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」は、「アクセス・コードを生成し、管理し、電子キー・デバイス201および/またはロック制御ユニット221にアクセス・コードを送信」するものであって、アクセス・コードを記憶していることが自明であるので、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」と、本願発明の「少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置(20)」とは、「少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の通信装置」で共通する。
また、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」と、本願発明の「第1の可搬式通信装置(20)」とは、「アクセスコード発行元の第1の通信装置」でも共通する。
そうすると、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211は、・・電子キー・デバイス201・・にアクセス・コードを送信」することと、本願発明の「第1の通信装置(20)から第2の通信装置(30)へアクセスコードを送信すること」とは、「アクセスコード発行元の第1の通信装置から第2の通信装置へアクセスコードを送信すること」で共通する。(なお、本願発明の「第1の通信装置」は前述の「可搬式」通信装置であるが、その点は共通点でない。)
(c)刊行物2記載の発明の「セキュリティ・レベル」「時間の制限」「パスワードを条件とするかどうか」等の追加の任意選択フィールドに含まれる情報は、刊行物2の記載事項(ア)の記載を参酌すれば、サービス提供者毎に、個別に内容設定されるものと考えられるので、アクセス・コードの追加の任意選択フィールドの部分は、アクセス・コード管理システム211によって、個別に設定されたもの、換言するとアクセス・コードの追加の任意選択フィールドの部分がアクセス・コード管理システム211によって作成されたものといえる。
そうすると、刊行物2記載の発明の「アクセス権のタイプに関する情報405、および追加的なアクセス・コード属性406を含」むアクセス・コードを「アクセス・コード管理システム211は・・生成」することと、本願発明のアクセスコードに設けられる「属性が第1の通信装置(20)によって、または第2の通信装置(30)によって作成される、または変更されること」とは、「属性がアクセスコード発行元の第1の通信装置によって、作成されること」で共通する。(なお、本願発明の「第1の通信装置」は前述の「可搬式」通信装置であるが、その点は共通点でない。)

そうすると、刊行物2記載の発明は、本願補正発明の表現に倣えば
「少なくとも一つの第2の可搬式通信装置により、そしてアクセスコードを受信する受信装置により、人が出入りできる区域、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法であって、以下のステップ、すなわち、
a)アクセスコード発行元の第1の通信装置から第2の通信装置へアクセスコードを送信することと、
b)第2の通信装置から受信装置へアクセスコードを送信することと、
c)受信装置によってアクセスコードをチェックすることと、
d)チェックに成功した場合に出入りを解放することと
を含み、
アクセスコードに少なくとも一つの属性が設けられることと、
属性がアクセスコード発行元の第1の通信装置によって作成されることと、
特定の実行時間が、属性として割り当てられること
を含む方法。」
と言い換えることができる。

(2)相違点の容易想到性について
(a)刊行物2記載の発明の「アクセス・コードID」と、引用発明の「自身の認証情報」とは、鍵となる信号中の人を特定する情報である点で共通し、同じく、「追加の任意選択フィールド」と、引用発明の「借用情報」とは、人を特定する情報に付加する属性情報である点で共通するものである。
そして、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード」は「アクセス・コードID」と「追加の任意選択フィールド」を含むものであるので、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード」と、引用発明の「自身の認証情報」と「借用情報」とからなる「認証用の電子的な合鍵」とは、人を特定する情報と属性情報とからなる認証用の電子的な鍵である点で共通するものである。
また、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」と、引用発明の「認証装置20a」とは、人を特定する情報と属性情報とからなる認証用の電子的な鍵の発行元である点において共通するものである。
そして、刊行物2記載の発明は、上記「アクセス・コードID」と「追加の任意選択フィールド」を含む「アクセス・コード」を「アクセス・コード管理システム211は・・生成」する構成(上記(1)に記載した様に、本願発明の「属性が第1の通信装置によって・・作成される」構成に対応するもの。)を備えることで、上記(1)(c)記載のように、アクセス・コードの追加の任意選択フィールドの部分が、個別に内容設定できる機能を備えるものである。
(b)ところで、引用発明の「借用情報」の「貸出理由」は、貸出しを許可する時点で特定されることが多いと想定される情報であり、同じく「貸出期間」も貸出しを許可する時点で特定したいことも想定される情報であると認識される。
そうすると、引用発明の認証装置20a(本願発明の「第1の可搬式通信装置」に相当するもの)は、合鍵を他の認証装置に対して与えるときに、貸出期間等を合わせて与えているので、そのときどきの状況で特定したい事項である貸出期間等を設定、若しくは変更して、認証装置20bに対して与えようとする課題が内在しているといえる。
また、引用発明の認証装置20aは、携帯電話であるところ、携帯電話は、刊行物2記載事項(キ)に、電子キー・デバイスのキーパッドにより手動でアクセス・コードを入力する態様のものも記載されているように、通常、キーボード等の入力機構、情報処理機能を有するものであって、刊行物2記載事項(ウ)で「コンピュータ・システムであることが好まし」いとされた、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」と同様にハードウエアとしてデータを作成変更して送る機能を有していることは技術常識であり、引用発明の認証装置20aは、そのような機能を有する点、及び認証用の電子的な鍵の発行元である点で、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」と共通しているといえる。
そして、刊行物2記載の発明に接した当業者であれば、引用発明の認証装置20aの電子的な合鍵を他の認証装置に対して与えるときに、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」の様に、期限等を個別に内容設定するものとして、すなわち、属性が作成されたものとして、本願発明の相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(c)なお、引用発明の「借用情報」が、貸出者が認証装置20aで「認証用の電子的な合鍵として、他の認証装置に対して与え」るものであるのに対して、刊行物2のアクセスコードの生成は、「アクセス権所有者352からの要求を受けて、またはアクセス権所有者との協働、あるいは第3者との協働によって、アドミニストレータ351が実行する」(刊行物2の記載事項(エ))ものであるので、そのことが、上記(b)の引用発明の認証装置20aの電子的な合鍵を他の認証装置に対して与えるときに、刊行物2記載の発明の「アクセス・コード管理システム211」の様に、期限等を個別に内容設定するものとすることを困難とする様なものであるかについても検討しておく。
引用発明においても認証装置20aを所持する貸出者が、合鍵を他の認証装置に対して与えるのであるから、認証装置20aを所持する貸出者も、一応アクセス権所有者の委任を受けているものと解されることから、刊行物2のアクセスコードの生成が、アクセス権所有者352からの要求を受けてアドミニストレータで実行されるものであることが、上記(b)とすることを困難とするものではない。
また、引用発明の認証装置20aが、所謂コンピュータ・システムでなく、携帯電話であることについては、上記(b)に記載した様に、携帯電話も、通常、キーボード等の入力機構、情報処理機能を有するものであるので、認証装置20aで属性の作成を行うものとすることにハードウエアとしての困難性が存在するものでもない。
(d)そして、本願発明の作用効果は、引用発明、及び刊行物2記載の発明の奏する作用効果から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-26 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-24 
出願番号 特願2006-201445(P2006-201445)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
中川 真一
発明の名称 人が出入りできる区域への、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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