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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04R
管理番号 1302842
審判番号 不服2014-4823  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-12 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 特願2011-531322「音声周波のデジタルインターフェイスを有するマルチメディア音響システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月16日国際公開、WO2009/046682、平成24年 3月 1日国内公表、特表2012-505616〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成20年10月13日を国際出願日とする出願であって、平成24年8月31日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月4日付けで手続補正がされたが、同年11月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年3月12日に拒絶査定不服の審判請求がなされた。

第2 本願発明について

1.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年3月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
オーディオのデジタルインターフェイスを有するマルチメディア音響システムであって、少なくとも一つのUSB(ユニバーサルシリアルバス)、IEEE1394インターフェイス、コンピュータまたはCD-ROMゲーム機の少なくとも1つのUSBインターフェイスまたはIEEE1394インターフェイスまたは同軸ケーブルのインターフェイスまたは光ファイバーのインターフェイス、USBまたはIEEE1394インターフェイスに接続される2.0チャネルの外付けのサウンドカード及び組合せDタイプまたはTタイプのオーディオのパワー増幅器のICチップの1組、前記2.0チャネルの外付けのサウンドカードおよび前記オーディオのパワー増幅器の組合せの制御電気回路またはマイクロ・プロセッサICチップの1組、および1対の左右チャネルのスピーカーボックスが含まれている。
さらに、前記2.0チャネルの外付けのサウンドカード、前記ICチップ及び関連SMD表面構成部品または集成して一体としてなるCMOS電気回路、指示した前記外付けのサウンドカードの作業状態のLED信号灯、前記オーディオのパワー増幅器の音量調節装置はすべてPCB板の上に取り付けている或いはケーブルと接続構成部品で接続し、前記PCB板は前記左チャネルのスピーカーボックスまたはボックスホルダーに取り付けられている。前記LED信号灯及び前記音量調節装置は全て左チャンネルのスピーカーパネルまたはスピーカーホルダーに取り付けている。前記PCB板または左チャネルのスピーカーパネルにまた一つのインターフェイスと組合せのコンセントまたは1本のインターフェイスの延長線のプラグやコンピュータまたはCD-ROMのゲーム機の前記インターフェイスの一つを設置し接続する。前記左右チャネルのパネルにはまた1つのオーディオのコンセントを設置し接続し、前記右チャンネルのパネルには一つのオーディオコンセントを設け、1本のオーディオのケーブルは前記左右チャネルのスピーカーに接続され、1つの2.0チャネル音響システムが構成される。
前記2.0チャンネルの外付けのサウンドカードは少なくとも1組の単方向通信方式の16?48Bit2.1チャネルのデコーダーDACを備えて、前記DAC及び前記ICチップはコンピュータのUSBインターフェイスの5V電源を通じて電力を供給し、且つ電源入力フットに最も近寄り、フィルターとエネルギー蓄電効果を兼ね備える1組の電解コンデンサーをそれぞれ並列に接続する。規定された前記オーディオのパワー増幅器の定額作業電圧の下限値は前記DACの定額作業電圧の下限値より1.1?2.7V低くて、前記スピーカーは一つの幅が十分に大きく大出力低音周波の信号を出力する時、前記のパワー増幅器及び前記DACの瞬間作業の電圧は作業電圧の下限値を基本的に上回らない。
前記左右チャンネルのスピーカーには少なくとも一つの抵抗負荷の特性または抵抗負荷の特性に近似する多磁気ギャップ・マルチコイルであるスピーカーを設置し、規定された前記多磁気ギャップ・マルチコイルのスピーカーは1つだけφ7インチの口径の円錐形の振動板或いは内凹形の振動板を配置し、規定された前記円錐形の振動板の中心孔の直径はφ26?φ33mmを上回らず、二つの同軸共点発声、前記多磁気ギャップ・マルチコイルのスピーカーのインダクタンス及びその往復運動過程で感応し得る逆起電力で180度の位相角を持ち、交互に相殺しあう全周波スピーカーが構成される;
規定された前記オーディオのパワー増幅器の定格作業電圧がDC5.25V以下またはDC8?15Vであり、前記オーディオのパワー増幅器のチャンネルごとに定格連続出力パワーを1Wまたは2W以下とし、USBインターフェイスまたはIEEE1394インターフェイスと通じて電力を供給し、感度とハイファイを有する一種類の2.0チャンネルのデジタルマルチメディア音響システムが構成される。」


2.本願明細書の検討

本願明細書及び図面から把握される本願発明の課題と解決手段、及び解決手段以外の構成は以下のとおりである。

(1)本願発明の課題
DC5V±5%,出力電流500mAというUSBのような限られた電力供給において、エネルギー変換効率が低い既存の主流的な単磁気ギャップ・単コイルのスピーカーでは十分な音量と良い音質を得ることは困難である。

(2)解決手段
本願発明は、USBバスパワーを用いた音響システムにおいて、特定構造(多磁気・マルチコイル;複数の磁気ギャップ・複数のコイル)のスピーカーを採用することにより、大口径(Φ7インチ)のスピーカーにおいても高効率、ハイファイの音響システムが得られる。

(3)スピーカーの上記特定構造以外の構成
スピーカー特定構造(複数の磁気ギャップ、複数のコイルを備えた点。)以外の構成については、【発明を実施するための形態】(段落【0062】乃至【0105】)のうち、段落【0062】乃至【0070】、図1乃至図4、段落【0100】乃至【0105】、図16乃至図17に概略的な記載があるにとどまっており、「USBバスパワーという制限された電力を用いた音響システム」の一例として記載されていることは把握されるものの、個別の各構成について具体的な説明がされているものではない。
また、上記課題、解決手段との関係においても、「USBバスパワーという制限された電力を用いた音響システム」であること以上に、本願発明に記載された具体的な各構成との関係が記載されているとは認められない。

これらによれば、本願発明において、スピーカーの上記特定構造以外の構成は「USBバスパワーという制限された電力を用いた音響システム」を構成する一例として特定されたものと認めるのが相当である。


3.引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-148894号公報(以下、「引用例」という。)には、「USB対応スピーカ駆動システム」について、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0012】図1に示すUSB対応スピーカ駆動システム11は、パーソナルコンピュータ本体12に付属するUSBポート12aを介して供給されるバスパワーをUSBケーブル13を介して取り込み、左右一対のスピーカ駆動アンプ17L,17Rを動作させるとともに、USBポートケーブル13を介して取り込んだ音声信号をスピーカ駆動アンプ17L,17Rにより増幅し、スピーカ18L,18Rを駆動する構成としたものである。すなわち、本実施形態に示したUSB対応スピーカ駆動システム11は、USBケーブル13を介して伝送される音声信号ならびに電源を、アップストリーム側USBポート13aを介してUSBインタフェース回路14に取り込み、ダウンストリーム側USBポート14aへ出力する一方、復号処理回路15と音量制御回路16を介してスピーカ駆動アンプ17L,17Rに供給する。USBケーブル13を介してUSBポート12aからUSBポート13aへ供給されるバスパワーはDC5V,0.5Aであるが、USBインタフェース回路14では各DC5V,0.1Aずつ計5系統に向けてバスパワーを分割するため、スピーカ駆動アンプ17L,17Rには最大消費電流が0.1A以下のものを用いる。また、スピーカ18L,18Rも、スピーカ駆動アンプ17L,17Rの最大出力により十分駆動できるよう、87?90dB/Wの高能率タイプを使用する。」

イ.「【0014】ところで、スピーカ駆動アンプ17L,17Rとスピーカ18L,18Rの組み合わせは種々考えられるが、具体的に例えばスピーカ18L,18Rとしてボイスコイル・インピーダンスが16Ω、能率が87dB/Wのものを用いた場合、スピーカ駆動アンプ17L,17Rとして2×0.2W(16Ω負荷時)出力のものを使用することで、必要電力を各系統に割り振られたUSBバスパワーでもって十分に賄うことができる。例えば、電源電圧Vcc(=5V)でスピーカ駆動アンプ17L(17R)をSEPP(Single Ended Push-Pull)動作させた場合、負荷抵抗r(=16Ω)のスピーカ18L(18R)を流れる平均電流は、Vcc/2πr(≒0.05A)であり、左右チャンネル合わせても0.1Aである。すなわち、スピーカ駆動アンプ17L,17Rの前段に電流制限回路を配設しなくとも、例えばUSBポート12aから規定上限を越える過大電流が流出してパーソナルコンピュータ本体12側から強制的に給電停止に追い込まれるといった事態を招くことはなく、スピーカ駆動アンプ17L,17Rが不意に動作停止する心配もなく安心して使用することができる。」

ウ.「【0016】上記具体例からも明らかなように、使用するスピーカ18L,18Rは16Ω以上のボイスコイル・インピーダンスを有し、かつまた高能率であってしかも廉価に製作できるものがよい。そこで、こうした条件を満たすスピーカ18L,18Rとして、ここでは新規に設計開発した図2(A),(B)に示す構造のものを用いるようにしている。図示のスピーカ18L,18Rは、テンスドダイヤフラムと呼ぶ四角形状の振動膜22の四辺を四角枠体状の支持枠23に支持し、振動膜22の背面中央部を加振器24によりピストン駆動して発音させるものである。・・・(以下、略)」

エ.「【0019】加振器24は、振動膜22の背面中央部にピストン板25aを介して一端が当接するボイスコイル25と、このボイスコイル25の他端側に同軸的に配設した逆E字状断面を有するカルデラ火山形状のヨーク26と、このヨーク26の円環部中間に挟持した環状マグネット27と、ボイスコイル25の側面とヨーク26の端部とを連結するダンパ28とから構成される。加振器24は、磁力強化や磁気ギャップの極小化或いはダンパの摩擦低減等により高効率化を徹底した構成としてあり、ヨーク26に沿って環状マグネット27が形成する磁界内にあるボイスコイル25に音声電流を通電すると、ボイスコイル25に発生するフレミングの力によりボイスコイル25が軸方向に振動し、ピストン板25aが前後方向に駆動されるようになっている。」

・引用例は、上記ア及び図1によれば、左右2つのスピーカを有し、USBポートケーブルを介してパーソナルコンピュータの外部にスピーカ駆動システムを備えたものであるから、2.0チャンネルの外付けUSB対応スピーカ駆動システムに関する発明である。そして、パーソナルコンピュータとUSB対応スピーカ駆動システムとは互いのUSBポートを介してUSBポートケーブルで接続され、USB対応スピーカ駆動システムに電力を供給し、USBインターフェース回路、復号処理回路、音量制御回路、スピーカ駆動アンプを経て左右のスピーカを駆動する。

・上記イによれば、スピーカ駆動アンプは、5Vで動作させ、0.2Wで出力する。

・上記ウ、エ及び図2によれば、スピーカは、1つの磁気ギャップ、1つのコイルを備えたものである。

したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「USB対応スピーカ駆動システムであって、
USBポートケーブルに接続される2.0チャンネルの外付けのUSBインターフェース回路、復号処理回路、スピーカ駆動アンプ、および左右のスピーカが含まれる。
前記左右のスピーカは、1つの磁気ギャップ、1つのコイルを備えたスピーカが構成される;
前記スピーカ駆動アンプは、5Vで駆動し、出力は0.2Wであり、USBポートケーブルを通じて電力を供給し、2.0チャンネルのUSB対応スピーカ駆動システムが構成される。」


4.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「USBポートケーブル」、「左右のスピーカ」は、本願発明の「USBインターフェイス」、「左右チャンネル(左右チャネル)のスピーカーボックス」に相当する。

b.引用発明の「スピーカ駆動アンプ」は、本願発明の「オーディオのパワー増幅器」に相当するが、Dタイプ/Tタイプのものかどうかの記載はない。

c.本願発明の「サウンドカード」とは、オーディオパワー増幅器の前に位置し、デジタルデコーダーDACを含んだものであることを踏まえると、引用発明の「復号処理回路」は、本願発明の「サウンドカード」に相当する。

d.引用発明の「USB対応スピーカ駆動システム」は、本願発明の「オーディオのデジタルインターフェイスを有するマルチメディア音響システム」に相当する。

e.引用発明のスピーカは「1つの磁気ギャップ、1つのコイル」から構成されるものであるのに対して、本願発明は「多磁気ギャップ・マルチコイル」である。

f.一般に、パーソナルコンピュータから供給されるUSBの電源電圧の仕様は5Vであり、定格作業電圧は5V±5%とするのが普通であるから、引用発明におけるスピーカ駆動アンプの「5Vで駆動」及び「0.2Wで出力」は、本願発明のオーディオパワーの増幅器の「定格作業電圧がDC5.25V」及び「定格連続出力パワーを1W以下」に対応する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「オーディオのデジタルインターフェイスを有するマルチメディア音響システムであって、少なくとも一つのUSB(ユニバーサルシリアルバス)のUSBインターフェイスに接続される2.0チャネルの外付けのサウンドカード及びオーディオのパワー増幅器の1組、および1対の左右チャネルのスピーカーボックスが含まれている。
前記2.0チャンネルの外付けのサウンドカードはデコーダーDACを備えて、前記DAC及び前記ICチップはコンピュータのUSBインターフェイスの5V電源を通じて電力を供給する。
前記左右チャンネルのスピーカーは磁気ギャップ・コイルのスピーカーが構成される;
規定された前記オーディオのパワー増幅器の定格作業電圧がDC5.25V以下であり、前記オーディオのパワー増幅器のチャンネルごとに定格連続出力パワーを1W以下とし、USBインターフェイスと通じて電力を供給する2.0チャンネルのデジタルマルチメディア音響システムが構成される。」

(相違点1)
本願発明は、「DタイプまたはTタイプのオーディオのパワー増幅器のICチップの1組、前記2.0チャネルの外付けのサウンドカードおよび前記オーディオのパワー増幅器の組合せの制御電気回路またはマイクロ・プロセッサICチップの1組」を備えているのに対して、引用発明は増幅器の具体的なタイプが記載されておらず、制御電気回路が記載されていない点。

(相違点2)
本願発明は、スピーカーに「2.0チャネルの外付けのサウンドカード、ICチップ及び関連SMD表面構成部品または集成して一体としてなるCMOS電気回路、指示した前記外付けのサウンドカードの作業状態のLED信号灯、前記オーディオのパワー増幅器の音量調節装置はすべてPCB板の上に取り付けている或いはケーブルと接続構成部品で接続し、前記PCB板は前記左チャネルのスピーカーボックスまたはボックスホルダーに取り付けられている。前記LED信号灯及び前記音量調節装置は全て左チャンネルのスピーカーパネルまたはスピーカーホルダーに取り付けている。前記PCB板または左チャネルのスピーカーパネルにまた一つのインターフェイスと組合せのコンセントまたは1本のインターフェイスの延長線のプラグやコンピュータまたはCD-ROMのゲーム機の前記インターフェイスの一つを設置し接続する。左右チャネルのパネルにはまた1つのオーディオのコンセントを設置し接続し、前記右チャンネルのパネルには一つのオーディオコンセントを設け、1本のオーディオのケーブルは前記左右チャネルのスピーカーに接続され、1つの2.0チャネル音響システムが構成される。」を備えるのに対して、引用発明のスピーカーには具体的な構成が記載されていない点。

(相違点3)
本願発明は、「単方向通信方式の16?48Bit2.1チャネル」のデコーダーDAC、「電源入力フットに最も近寄り、フィルターとエネルギー蓄電効果を兼ね備える1組」の電解コンデンサーを備え、「規定された前記オーディオのパワー増幅器の定額作業電圧の下限値は前記DACの定額作業電圧の下限値より1.1?2.7V低くて、前記スピーカーは一つの幅が十分に大きく大出力低音周波の信号を出力する時、前記のパワー増幅器及び前記DACの瞬間作業の電圧は作業電圧の下限値を基本的に上回らない。」ようにしたのに対して、引用発明には具体的な構成が記載されていない点。

(相違点4)
本願発明は、「前記左右チャンネルのスピーカーには少なくとも一つの抵抗負荷の特性または抵抗負荷の特性に近似する多磁気ギャップ・マルチコイルであるスピーカーを設置し、規定された前記多磁気ギャップ・マルチコイルのスピーカーは1つだけφ7インチの口径の円錐形の振動板或いは内凹形の振動板を配置し、規定された前記円錐形の振動板の中心孔の直径はφ26?φ33mmを上回らず、二つの同軸共点発声、前記多磁気ギャップ・マルチコイルのスピーカーのインダクタンス及びその往復運動過程で感応し得る逆起電力で180度の位相角を持ち、交互に相殺しあう全周波スピーカー」を備えているのに対して、引用発明は1磁気ギャップ・1コイルのスピーカーである点。
また、本願発明は「感度とハイファイを有する」デジタルマルチメディア音響システムと記載されているが、引用発明にはその旨の記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
USBインターフェイスによって接続されるスピーカーに使用される増幅器として「Dタイプ」のものを用いることは、特開2005-223372号公報(図1及び図2のDクラスアンプ9L、9R、9S。)、特開2005-311859号公報(図1のD級増幅器108。)に記載されているように周知である。そして、増幅器等をICチップ化することは、当業者であれば容易になし得ることである。
また、復号処理回路や増幅器は、信号処理において当然に制御されるものであるから、具体的な記載がなくても引用発明には、復号処理回路や増幅器を制御する制御電気回路(マイクロプロセッサ)が備えられていると認められる。
したがって、引用発明の増幅器について周知技術を採用し、相違点1の構成とすることは当業者であれば容易になし得る事項である。

<相違点2、相違点3について>
上記「2.本願明細書の検討」で判断したように、本願発明の課題及び解決手段は「USBバスパワーという制限された電力を用いた音響システムにおけるスピーカーの構成を多ギャップ・マルチコイルとした」ことにより大口径(Φ7インチ)のスピーカーにおいても高効率、ハイファイの音響システムを得ることにあり、その他の構成要素は、本願発明の音響システムを構成する単なる一例に過ぎないものである。
すると、LED信号灯や音量調節装置、コンセントをスピーカーボックスのどこに取り付けたり、何Bitのデコーダーを用いること、増幅器とデコーダーの定格作業電圧の関係について、相違点2、相違点3の構成とすることは、当業者であれば適宜設計し得る事項である。

<相違点4について>
スピーカーにおいて多磁気ギャップ・マルチコイルを採用することは、原査定で引用された特表2003-531508号公報(段落【0017】、【0041】、図2、図10)、特開平8-331691号公報(段落【0007】-【0009】、図1(a)及び(b))に記載されているように周知である。そして、上記周知技術に記載された2つのコイルは、互いに逆向きに巻回している(180°の位相差を持たせた)ので逆起電力を相殺し得ることは自明である。
そして、上記特表2003-531508号公報には、多磁気ギャップ・マルチコイルを採用することにより、感度とハイファイを有すること、同じ口径のものと比較して変換効率が良くなる旨(段落【0054】-【0055】)が記載されているから、「感度とハイファイを有する」ことは、コイルに180°の位相差を持たせた多磁気ギャップ・マルチコイルを採用することにより達成し得る事項である。
したがって、引用発明のスピーカーについて周知技術を採用し、大口径(Φ7インチ)のスピーカーにおいても高効率、ハイファイの音響システムとするために、相違点4の構成とすることは当業者であれば容易になし得る事項である。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。


5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-21 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2011-531322(P2011-531322)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 正宏  
特許庁審判長 丹治 彰
特許庁審判官 井上 信一
酒井 朋広
発明の名称 音声周波のデジタルインターフェイスを有するマルチメディア音響システム  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  
代理人 菅河 忠志  
代理人 伊藤 浩彰  

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