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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A62B
管理番号 1302894
審判番号 不服2014-8738  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-12 
確定日 2015-07-09 
事件の表示 特願2012-162849「マスク」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-205926〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年6月4日に出願した特願2007-148446号(以下、「原出願」という。)の一部を平成24年7月23日に新たな特許出願としたものであって、平成25年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年2月5日付けで拒絶査定がされ、同年5月12日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに同時に手続補正書が提出され、同年6月19日に審判請求書の請求の理由を変更する手続補正書(方式)が提出され、その後、当審において平成27年2月4日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし12に係る発明は、平成27年4月10日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
通気性を有し、口及び鼻孔を覆うマスク本体と、
前記マスク本体の両端部に設けられ、当該マスク本体を顔に保持するための一対の耳掛け部と、
前記マスク本体に装着され、保水液が含浸される吸収性コアと、を備え、
前記マスク本体は、顔への装着時に口及び鼻孔との間に空間を形成するように構成され、
前記吸収性コアは、前記マスク本体において前記空間と対向する領域にのみ配置され、
前記吸収性コアには、1.3?15gの保水液が含浸されており、
前記空間の体積a(cm^(3))と、前記吸収性コアに保水液として含浸される水の質量b(g)との関係が、0.8/70 × a + 1.2 ≦ bを満たす、マスク。」

第3 引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献の記載
当審拒絶理由で引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平1-268568号公報(以下、「引用文献」という。)には、「加湿マスク」に関して、図面とともに概ね次の記載(以下、順に、「記載1a」ないし「記載1c」という。)がある。

1a 「[産業上の利用分野]
本発明は、空気に湿気を加えた状態で呼吸することができるようにした加湿マスクに関するものである。
・・・(略)・・・
本発明は、上記の点に鑑みて為されたものであり、長時間に亘って呼吸気に湿気を加えることができ、乾燥した空気から呼吸器官を保護することができる加湿マスクを提供することを目的とするものである。」(第2ページ左上欄第4行ないし右上欄第6行)

1b 「[問題点を解決するための手段]
しかして本発明に係る加湿マスクは、鼻から口に及ぶ顔面部分に沿うような曲面を内側面に有する凹曲形状に内マスク半体1と外マスク半体2とを形成すると共に内マスク半体1と外マスク半体2にそれぞれ呼吸孔3,4を設け、内マスク半体1の外側に外マスク半体2を重ねて両マスク半体1,2をその下縁部から側縁部に亘って接着接合することによってマスク5を形成し、水分を含浸せる保水性通気シート6を呼吸孔3,4の部分において内マスク半体1と外マスク半体2との間に挟持して成ることを特徴とするものである。
[作用]
内マスク半体1と外マスク半体2とで形成されるマスク5内に水を含浸せる保水性通気シート6を挟持させることによって、保水性通気シート6を通過して加湿された空気を呼吸することができ、乾燥した空気から呼吸器官を保護することができる。また内マスク半体1と外マスク半体2とはその下縁部から側縁部に亘って接着接合してあるために、マスク5内に水もれするおそれなく多量の水分を保持させることができ、長時間に亘って呼吸気に湿気を加えることができる。」(第2ページ右上欄第7行ないし左下欄第9行)

1c 「[実施例]
以下本発明を実施例により詳述する。
内マスク半体1や外マスク半体2はポリエチレンやポリプロピレンなど保形性を有する柔軟な軟質乃至半硬質のプラスチックを射出成形などすることによって形成されるものであり、内マスク半体1と外マスク半体2とはいずれも内面側が鼻から口にかけての顔面部分に沿うような凹曲面になるように凹曲形状に形成される。また内マスク半体1と外マスク半体2にはいずれも第2図や第3図、第4図に示すように外鼻孔の下側に対応する位置において多数の呼吸孔3,4が設けてある。・・・(略)・・・内マスク半体1と受け材20との間に上部が開口する水滴受け21が形成されるようにしてあり、この水滴受け21にガ-ゼなどの吸水材22が挿入して取り付けてある。さらに、内マスク半体1と外マスク半体2の各紐通し孔10,10、及び受けシート20に形成した紐通し孔10にゴム紐などの耳掛け紐15を通して取り付けてある。・・・(略)・・・
しかして上記のように形成されるマスク5にあって、マスク5の上部を開いてこの箇所から保水性通気シート6を収納凹所11内に挿入し、保水性通気シート6を内マスク半体1と外マスク半体2の間に挟持させる。保水性通気シート6としてはガ-ゼなど通気性に優れると共に保水性にも優れるものが用いられるものであり、この保水性通気シート6は二枚を用いて、一枚の保水性通気シート6aは収納凹所11のうち保水部13内に、他の一枚の保水性通気シート6bは上部をシート保持部12に下部を保水部13にそれぞれセットするようにするのがよい。・・・(略)・・・
そして上記のように形成される加湿マスクは第2図に示すように鼻から口にかけてマスク5を被せ、そして耳掛は紐15を耳に掛けることによって顔面に装着して使用に供されるものであり、呼吸をする際に呼吸孔3,4を流通する空気は保水性通気シート6を通過して呼吸器官に吸入される。このとき空気は保水性通気シート6を通過する際に保水性通気シート6に含有される水分を吸収して適当な湿気を帯びた状態となり、乾燥した空気から呼吸器官を保護することができるのである。」(第2ページ左下欄第10行ないし第3ページ右下欄末行)

2 引用文献の記載事項
記載1aないし1c及び図面の記載から、引用文献には、次の事項(以下、順に、「記載事項2a」ないし「記載事項2e」という。)が記載されていると認める。

2a 記載1bの「しかして本発明に係る加湿マスクは、鼻から口に及ぶ顔面部分に沿うような曲面を内側面に有する凹曲形状に内マスク半体1と外マスク半体2とを形成すると共に内マスク半体1と外マスク半体2にそれぞれ呼吸孔3,4を設け、内マスク半体1の外側に外マスク半体2を重ねて両マスク半体1,2をその下縁部から側縁部に亘って接着接合することによってマスク5を形成し」及び記載1cの「また内マスク半体1と外マスク半体2にはいずれも第2図や第3図、第4図に示すように外鼻孔の下側に対応する位置において多数の呼吸孔3,4が設けてある。」並びに図面によると、引用文献には、多数の呼吸孔3,4が設けてある、鼻から口に及ぶ顔面部分に沿うような曲面を内側面に有する凹曲形状に形成された内マスク半体1と外マスク半体2により形成されたマスク5を備えた加湿マスクが記載されている。

2b 記載1cの「内マスク半体1と外マスク半体2の各紐通し孔10,10、及び受けシート20に形成した紐通し孔10にゴム紐などの耳掛け紐15を通して取り付けてある。」及び「そして上記のように形成される加湿マスクは第2図に示すように鼻から口にかけてマスク5を被せ、そして耳掛は紐15を耳に掛けることによって顔面に装着して使用に供されるものであり、呼吸をする際に呼吸孔3,4を流通する空気は保水性通気シート6を通過して呼吸器官に吸入される。」並びに図面によると、引用文献には、マスク5の両端部に設けられ、マスク5を顔面に装着するための一対の耳掛け紐15が記載されている。

2c 記載1bの「水分を含浸せる保水性通気シート6を呼吸孔3,4の部分において内マスク半体1と外マスク半体2との間に挟持して成ることを特徴とするものである。」及び記載1cの「しかして上記のように形成されるマスク5にあって、マスク5の上部を開いてこの箇所から保水性通気シート6を収納凹所11内に挿入し、保水性通気シート6を内マスク半体1と外マスク半体2の間に挟持させる。保水性通気シート6としてはガ-ゼなど通気性に優れると共に保水性にも優れるものが用いられるものであり、この保水性通気シート6は二枚を用いて、一枚の保水性通気シート6aは収納凹所11のうち保水部13内に、他の一枚の保水性通気シート6bは上部をシート保持部12に下部を保水部13にそれぞれセットするようにするのがよい。」並びに図面によると、引用文献には、マスク5に装着され、水分が含浸される保水性通気シート6が記載されている。

2d 記載事項2aを踏まえると、第2図において、マスク5は、顔への装着時に口及び鼻孔との間に空間を形成するように構成されていることが看取される。

2e 記載事項2a、2c及び2dを踏まえると、第2図において、保水性通気シート6は、マスク5において顔への装着時に口及び鼻孔との間に形成される空間と対向する領域にのみ配置されていることが看取される。

3 引用発明
記載1aないし1c、記載事項2aないし2e及び図面を整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「多数の呼吸孔3,4が設けてある、鼻から口に及ぶ顔面部分に沿うような曲面を内側面に有する凹曲形状に形成された内マスク半体1と外マスク半体2により形成されたマスク5と、
前記マスク5の両端部に設けられ、当該マスク5を顔面に装着するための一対の耳掛け紐15と、
前記マスク5に装着され、水分が含浸される保水性通気シート6と、を備え、
前記マスク5は、顔への装着時に口及び鼻孔との間に空間を形成するように構成され、
前記保水性通気シート6は、前記マスク5において顔への装着時に口及び鼻孔との間に形成される空間と対向する領域にのみ配置されている、加湿マスク。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明における「多数の呼吸孔3,4が設けてある」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「通気性を有し」に相当し、以下同様に、「鼻から口に及ぶ顔面部分に沿うような曲面を内側面に有する凹曲形状に形成された内マスク半体1と外マスク半体2により形成された」は「口及び鼻孔を覆う」に、「マスク5」は「マスク本体」に、「顔面に装着する」は「顔に保持する」に、「耳掛け紐15」は「耳掛け部」に、「水分」は「保水液」に、「保水性通気シート6」は「吸収性コア」に、「加湿マスク」は「マスク」に、それぞれ、相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「通気性を有し、口及び鼻孔を覆うマスク本体と、
前記マスク本体の両端部に設けられ、当該マスク本体を顔に保持するための一対の耳掛け部と、
前記マスク本体に装着され、保水液が含浸される吸収性コアと、を備え、
前記マスク本体は、顔への装着時に口及び鼻孔との間に空間を形成するように構成され、
前記吸収性コアは、前記マスク本体において前記空間と対向する領域にのみ配置されている、マスク。」

そして、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「前記吸収性コアには、1.3?15gの保水液が含浸されており、
前記空間の体積a(cm^(3))と、前記吸収性コアに保水液として含浸される水の質量b(g)との関係が、0.8/70 × a + 1.2 ≦ bを満たす」のに対し、引用発明においては、「吸収性コア」に相当する「保水性通気シート6」は、「保水液」に相当する「水分」が含浸されるものではあるものの、本願発明のようなものか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

第5 相違点に対する判断
そこで、相違点について、以下に検討する。

本願発明の「前記空間の体積a(cm^(3))と、前記吸収性コアに保水液として含浸される水の質量b(g)との関係が、0.8/70 × a + 1.2 ≦ bを満たす」という発明特定事項における「0.8/70 × a + 1.2 ≦ b」という式は、本願明細書の段落【0047】ないし【0051】の記載によると、マスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間内の相対湿度を70%以上にするために満たすべきマスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間の体積と吸収性コアに保水液として含浸される水の質量との間の式であるから、上記発明特定事項は、マスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間内の相対湿度を70%以上にする質量の水を吸収性コアに含浸させるということを意味するものである。
他方、記載1aによると、引用発明は、乾燥した空気から呼吸器官を保護するためのものであり、呼吸器官である上気道内の相対湿度が非常に高い(90%程度)ことは周知である。
また、引用発明は、人の顔に装着する「加湿マスク」に関する発明であるから、例えば、マスク装着時の使用感を低下させないために、マスクが重くならないようにすることは当然考慮すべき事項であり、引用発明において、「保水性通気シート6」に「水分」を含浸させる際に、含浸させる水分量を、装着時にマスクが重くならないように、適宜調整することは当然であるし、仮に、引用発明において、「保水性通気シート6」の寸法を例えば縦5cm、横10cm、厚さ0.2cmと仮定すると、その体積は、10cm^(3)となるが、その体積全体が水分に置換されたとしても、水の質量は10gであり、実際には、体積全体が水分に置換されることはないことを考慮すると、含浸させる水分量として、「1.3?15g」という数値範囲は特別な値とはいえない。
以上を総合すると、引用発明において、装着時にマスクが重くならないように、また、マスク内の相対湿度が上気道内の相対湿度になるべく近い相対湿度になるように、吸収性コアに含浸される水分量を調整して、水分を1.3?15gの範囲内とし、顔への装着時にマスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間a(cm^(3))と吸収性コアに保水液として含浸される水の質量b(g)との関係が、0.8/70×a+1.2≦bを満たすようにして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

なお、請求人は、平成27年4月10日提出の意見書において、「このように、本願発明は、吸収性コアが顔に接触しないよう前記空間にある程度の大きさの体積を持たせたマスクにおいて、1.3g?15gの多量でない少量もしくは適度な水分量を吸収性コアに含ませた場合でも、口腔を潤すことができるように、吸収性コアの水分量との関係で前記空間の体積を予め設定するものでありますが、そのような技術的思想は引用文献1(当審注:「引用文献」のことである。)にはなく、結果論的に、前記空間の湿度が非常に高くなっている引用文献1のマスクとは構成を異にするものです。」旨主張しているが、本願発明が、結果として、「前記空間の体積a(cm^(3))と、前記吸収性コアに保水液として含浸される水の質量b(g)」との関係が、「0.8/70 × a + 1.2 ≦ b」という式を満たすマスクの発明ではなく、上記式により顔への装着時にマスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間の体積を求め予め設定するという過程に特徴を有する発明であるとしても、引用発明は、「加湿マスク」である以上、顔への装着時にマスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間における相対湿度に着目した発明であることは明らかであり、また、相対湿度が水分量と体積との関係で定まるものであることも明らかであるから、当業者であれば、引用発明において、含水させる水分量と顔への装着時にマスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間の体積との関係式に基づいて該空間の体積を求め予め設定することに格別困難性はない。さらに、本願の図4の記載によると、80%ライン上の「含浸体に含まれる水分量(g)」は、3.2?6g程度であり、「15g」より遙かに小さい値であるから、「1.3?15g」の範囲の内、「15g」に近い水分量では、相対湿度は80%を上回った非常に高いものであることが予想され、本願発明が相対湿度が非常に高いものを排除するものとはいえない。したがって、引用発明において、装着時にマスクが重くならないように、「水分」を「1.3?15g」とし、マスク内の相対湿度が上気道内の相対湿度になるべく近い相対湿度になるように、「0.8/70 × a + 1.2 ≦ b」という式により顔への装着時にマスク本体と口及び鼻孔との間に形成される空間の体積を求め予め設定することも、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-11 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2012-162849(P2012-162849)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 将一山村 和人  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
加藤 友也
発明の名称 マスク  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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