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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1302902
審判番号 不服2014-13810  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-16 
確定日 2015-07-09 
事件の表示 特願2010- 33985「携帯型装置及び情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日出願公開、特開2011-170633〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、
平成22年2月18日を出願日とする出願であって、
平成24年1月11日付けで手続補正書が提出され、
同年1月16日付けで審査請求がなされ、
平成25年8月30日付けで拒絶理由通知(同年9月3日発送)がなされ、これに対して同年10月29日付けで意見書が提出されると共に手続補正書が提出され、
平成26年1月27日付けで拒絶理由通知(同年2月4日発送)がなされ、これに対して同年4月1日付けで意見書が提出されると共に手続補正書が提出され、
同年4月17日付けで拒絶査定(同年4月22日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」との請求の趣旨で、同年7月16日付けで審判請求がなされた。

2.本願発明

本願の請求項に係る発明は、上記平成26年4月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「位置情報を検出する位置検出部と、
入力インタフェースにより入力を行う入力部と、
前記入力に関連した情報を表示する表示部と、
前記位置検出部が検出した位置に応じて、日付又は時刻とは異なる情報については前記表示部への表示を制限する制御部と、
を備えたことを特徴とする携帯型装置。」

3.引用文献

(1)本願出願前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成26年1月27日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2009-104237号公報(平成21年5月14日出願公開、以下、「引用文献1」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【請求項1】
情報を表示する表示手段と、
通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記表示手段に表示する情報を格納する格納手段を有し、
前記制御手段は、前記表示手段に表示されている情報のうち、機密属性を付与されて前記格納手段に格納されている機密情報を非表示状態とすることを特徴とする情報処理装置。」

B 「【0016】
図3は、ICカード30-1の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、ICカード30-1は、EPD31(請求項中「表示手段」に対応)、表示制御回路32、バッテリ33、電源回路34、入力デバイス35、表示制御MCU(Main Control Unit)36(請求項中「制御手段」に対応)、不揮発性メモリ37(請求項中「格納手段」に対応)、通信制御MCU38(請求項中「判定手段」に対応)、RF(Radio Frequency)回路39、および、アンテナ40を主要な構成要素としている。」

C 「【0019】
(B)実施の形態の動作の説明
つぎに、ICカード30-1,30-2において実行される処理の一例について説明する。なお、ICカード30-1,30-2において実行される処理は同様であるので、以下ではICカード30-1を例に挙げて説明する。
まず、ICカード30-1を新たに発行する場合について説明する。例えば、新入社員に対して、ICカード30-1を新たに発行するような場合、パーソナルコンピュータ10において、所定のアプリケーションプログラムを起動し、ICカード30-1に登録する情報を生成する。なお、パーソナルコンピュータ10以外の発行専用の装置によって発行処理を行うことも可能である。このとき、登録する情報としては、例えば、会社名、所属部署名、会社員の氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、会社員の肖像写真、および、所定の情報を含む2次元コード等である。また、会社名については非機密情報としての属性が付与され、それ以外の情報については機密情報としての属性である「機密属性」が付与される。そして、これらの情報は、描画コマンドおよびシフトJISコードに変換され、書き込みを指示するコマンドとともに所定のインタフェース(例えば、USB(Universal Serial Bus)またはLAN(Local Area Network))を介して通信ルータ20に供給される。通信ルータ20では、パーソナルコンピュータ10から供給された情報を取得し、対応するディジタルビット列(“0”および“1”の列)に変換し、このディジタルビット列に基づいて搬送波を変調し、図示せぬアンテナから電波として送信する。
【0020】
このようにして通信ルータ20から送信された電波は、ICカード30-1のアンテナ40によって捕捉され、RF回路39に供給される。RF回路39では、アンテナ40によって捕捉された搬送波に含まれているディジタルビット列を抽出する。そして、抽出されたディジタルビット列は、通信制御MCU38に供給され、そこで、コマンドの解釈が行われる。いまの例では、受信した情報は、不揮発性メモリ37に登録するための情報であるので、表示制御MCU36にこの情報が供給される。
【0021】
表示制御MCU36は、通信制御MCU38から供給された情報を不揮発性メモリ37の表示情報37aとして登録する処理を実行する。このとき、非機密情報の属性が付与されている「会社名」を示す情報については、非機密情報37a1として登録され、機密情報の属性(機密属性)が付与されているそれ以外の情報については機密情報37a2として登録される。このようにして情報が登録されたICカード30-1は、所有者である会社員に手渡される。」

D 「【0026】
ステップS12では、表示制御MCU36は、機密情報を表示状態とする。より詳細には、表示制御MCU36は、不揮発性メモリ37の表示情報37aから機密情報37a2を取得し、VRAM37cに対して展開する処理を実行する。このとき、ビットマップデータについては、VRAM37cの対応する領域に展開し、また、文字については対応するフォントデータをフォントデータ37bから取得し、VRAM37cの対応する領域に展開する。なお、1回目の展開処理では、機密情報だけでなく非機密情報についても同様にして展開処理がされる。2回目以降の展開処理では、非機密情報が既にVRAM37cに展開されているので、機密情報のみが展開され、非機密情報については既存の情報がそのまま使用される。
【0027】
VRAM37cへの展開が終了すると、表示制御MCU36は、表示制御回路32に対してEPD31への表示を指示する。この結果、表示制御回路32は、EPD31に対して展開の結果得られた画像データを転送するとともに、転送された画像データをEPD31の表示部に表示させる制御を行う。このとき、電源回路34は、EPD31に対して書き込み用の電源電力を供給する。」

E 「【0029】
つづいて、通信制御MCU38は、通信エリア内に自機が存在するか否かを判定し(ステップS13)、通信エリア内に自機が存在する場合(ステップS13;Yes)には同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS13;No)にはステップS14に進む。例えば、会社員が会社の敷地内(通信エリア内)から外部に出た場合には、Noと判定されてステップS14に進む。
ステップS14では、表示制御MCU36は、通信エリア内でないと判定される状況が一定時間継続しているか否かを判定し、一定時間継続していると判定した場合(ステップS14;Yes)にはステップS15に進み、それ以外の場合にはステップS13に戻って同様の処理を繰り返す。より詳細には、
・・・(中略)・・・
【0030】
ステップS15では、表示制御MCU36は、機密情報を非表示状態にする。より詳細には、
・・・(中略)・・・
この結果、EPD31には、図6(B)に示すように、非機密情報である会社名を示す「○×株式会社」のみが表示された状態となり、機密情報である肖像写真61、所属部署名、氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、および、2次元コードは非表示状態となる。この結果、この会社員が社外において、このICカード30-1を紛失し、第三者の手に渡った場合であっても、機密情報である肖像写真61、所属部署名、氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、および、2次元コードを当該第三者は見ることができないので、これらの情報が不正に使用されることを防止できる。また、当該第三者が会社名を参照して、この会社に近づいた場合であっても、ステップS11において所定の操作がなされない限り、機密情報を参照することができない。」

F 「【0037】
(C)変形実施の態様
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
たとえば、以上の実施の形態では、本発明の実施の形態に係る情報処理装置をICカードとして実施した場合の例を示したが、本発明は、このような場合に限定されるのではなく、例えば、他の小型の情報処理装置に適用することが可能である。」

G 「【0039】
また、以上の実施の形態では、表示する情報を機密情報と非機密情報とに分け、通信エリアの内か外かに応じて機密情報を表示または非表示とするようにしたが、例えば、通信エリア毎に表示する情報を変更するようにしてもよい。例えば、2次元コード63については、例えば、食堂等において使用されることが多いので、食堂に配置されているパーソナルコンピュータの通信エリア内に入った場合には、2次元コード63を表示し、それ以外の通信エリア内に入った場合には2次元コード63を非表示の状態としてもよい。また、2次元コード63を非表示とするだけでなく、その他の情報(肖像写真61および属性情報62)を拡大して表示するようにしてもよい。そのような方法によれば、必要に応じて情報を表示するとともに、表示の態様を変えることにより、視認性を向上させることができる。」

H 「【0041】
また、以上の実施の形態では、機密情報および非機密情報は、情報を登録する際に指定するようにしたが、登録後にこれらの情報を変更することができるようにしてもよい。例えば、操作ボタン35a?35cを操作することにより、機密情報および非機密情報の別を選択できるようにしてもよい。」

(2)ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段」、及び、
上記Bの「通信制御MCU38(請求項中「判定手段」に対応)」、及び、
上記Eの「通信制御MCU38は、通信エリア内に自機が存在するか否かを判定し」、及び、
上記Gの「通信エリア毎に表示する情報を変更するようにしてもよい。」との記載について検討するに、
通信エリア毎に表示する情報を変更するためには、いずれのエリアか判定できなければならないことは自明であり、「判定手段」は、複数のエリアのうち、いずれのエリアに自機が存在するのか判定できるものといえることから、
引用文献1には「複数のエリアのいずれに自機が存在するのか判定する判定手段」が記載されていると解される。

(イ)上記Cの「会社名については非機密情報としての属性が付与され、それ以外の情報については機密情報としての属性である「機密属性」が付与される。そして、これらの情報は、描画コマンドおよびシフトJISコードに変換され、書き込みを指示するコマンドとともに所定のインタフェース(例えば、USB(Universal Serial Bus)またはLAN(Local Area Network))を介して通信ルータ20に供給される。
・・・(中略)・・・
このようにして通信ルータ20から送信された電波は、ICカード30-1のアンテナ40によって捕捉され、RF回路39に供給される。
・・・(中略)・・・
表示制御MCU36は、通信制御MCU38から供給された情報を不揮発性メモリ37の表示情報37aとして登録する処理を実行する。このとき、非機密情報の属性が付与されている「会社名」を示す情報については、非機密情報37a1として登録され、機密情報の属性(機密属性)が付与されているそれ以外の情報については機密情報37a2として登録される。」との記載について検討するに、
機密情報とは機密属性が付与された情報であり、非機密情報とは非機密情報の属性が付与された情報であるといえ、
「アンテナ」は、外部から所定のインタフェースを介して送信される情報の受信側のインタフェースとみることができるから、
引用文献1には「機密情報及び非機密情報を受信するアンテナ」が記載されていると解される。

(ウ)上記Aの「情報を表示する表示手段」、及び、
上記Bの「EPD31(請求項中「表示手段」に対応)」、及び、
上記Cの「このようにして通信ルータ20から送信された電波は、ICカード30-1のアンテナ40によって捕捉され、RF回路39に供給される。
・・・(中略)・・・
表示制御MCU36は、通信制御MCU38から供給された情報を不揮発性メモリ37の表示情報37aとして登録する処理を実行する。」、及び、
上記Dの「表示制御MCU36は、不揮発性メモリ37の表示情報37aから機密情報37a2を取得し・・・(中略)・・・表示制御MCU36は、表示制御回路32に対してEPD31への表示を指示する」との記載について検討するに、
表示手段に表示される不揮発性メモリ37の表示情報は、アンテナから受信されて不揮発性メモリ37に格納された情報といえることから、
引用文献1には「入力された情報を表示する表示手段」が記載されていると解される。

(エ)上記Aの「通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段・・・(中略)・・・前記制御手段は・・・(中略)・・・機密属性を付与されて前記格納手段に格納されている機密情報を非表示状態とする」、及び、
上記Bの「表示制御MCU(Main Control Unit)36(請求項中「制御手段」に対応)」、及び、
上記Eの「例えば、会社員が会社の敷地内(通信エリア内)から外部に出た場合・・・(中略)・・・表示制御MCU36は、機密情報を非表示状態にする。」、及び、
上記Gの「通信エリア毎に表示する情報を変更するようにしてもよい。」との記載について検討するに、
制御手段は、エリアに応じて、複数の情報のうちの一部である機密情報を非表示状態にするものと解される。

また、上記Hの「機密情報および非機密情報は、情報を登録する際に指定するようにしたが、登録後にこれらの情報を変更することができるようにしてもよい。例えば、操作ボタン35a?35cを操作することにより、機密情報および非機密情報の別を選択できる」との記載について検討するに、
上記(イ)で受信された情報は、情報処理装置で情報毎に機密情報か否かを設定できるものといえる。

また、上記Cの「登録する情報としては、例えば、会社名、所属部署名、会社員の氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、会社員の肖像写真、および、所定の情報を含む2次元コード等である。また、会社名については非機密情報としての属性が付与され、それ以外の情報については機密情報としての属性である「機密属性」が付与される。」との記載について検討するに、
「機密情報」は、氏名を含む情報であるといえる。

したがって、引用文献1には「自機が存在するエリア毎に、氏名を含む機密情報として設定した情報を非表示状態とする制御手段」が記載されていると解される。

(オ)上記Aの表示手段、判定手段、制御手段を有することを特徴とする「情報処理装置」、及び、
上記Bの「ICカード30-1は、EPD31(請求項中「表示手段」に対応)、表示制御回路32、バッテリ33、電源回路34、入力デバイス35、表示制御MCU(Main Control Unit)36(請求項中「制御手段」に対応)、不揮発性メモリ37(請求項中「格納手段」に対応)、通信制御MCU38(請求項中「判定手段」に対応)、RF(Radio Frequency)回路39、および、アンテナ40を主要な構成要素としている。」、及び、
上記Fの「本発明は、このような場合に限定されるのではなく、例えば、他の小型の情報処理装置に適用することが可能である。」との記載について検討するに、
引用文献1には、上記の判定手段、アンテナ、表示手段、制御手段を有することを特徴とする「小型の情報処理装置」が記載されていると解される。

(3)以上、(ア)乃至(オ)で指摘した事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「複数のエリアのいずれに自機が存在するのか判定する判定手段と、
機密情報及び非機密情報を受信するアンテナと、
入力された情報を表示する表示手段と、
自機が存在するエリア毎に、機密情報として設定した氏名を含む情報を非表示状態とする制御手段
を有する小型の情報処理装置。」

4.参考文献

本願出願前に頒布された、特開2004-86441号公報(平成16年3月18日出願公開、以下、「参考文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

I 「【0076】
次に、図7及び図8に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態の特徴は、情報端末20が位置特定機能(GPS:Global Positioning System)を内蔵又は外付けで利用可能な場合に、GPSにより得られた位置情報も利用して施設1の内外いずれに位置するかを判断する点にある。」

J 「【0078】
図8に示すように、認証部33は、サーバ10との認証が成功した場合に(S24:YES)、GPS部35からの位置情報に基づいて、情報端末20の現在位置が許可されたコンテンツ利用エリア内に位置するか否かを判定する(S60)。サーバ10との認証が成功した場合でも、情報端末20が所定のエリア外に位置する場合は(S60:NO)、上述の通り、コンテンツデータ30の利用が禁止される(S26?S31)。」

5.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「判定手段」は、本願発明の「位置検出部」に対応するとみることができる。
そして、引用発明の「判定手段」は、自機が存在するエリアを判定するものであり、エリアの判定は位置の判定に相当する事項であるから、引用発明の「判定手段」は、位置を検出しているものといえる。
そうすると、引用発明の「判定手段」と、本願発明の「位置検出部」とは、後記する点で相違するものの「位置を検出する位置検出部」である点で共通しているといえる。

(2)本願発明の「入力インタフェース」は、その入力元や入力方式を特定しておらず、
引用発明の「機密情報及び非機密情報を受信するアンテナ」は、小型の情報処理装置において、外部から情報が入力されるインタフェースの1つであるといえるから、
引用発明の「アンテナ」は本願発明の「入力インタフェースにより入力を行う入力部」に相当するといえる。

(3)引用発明の「表示手段」は、引用発明の上記「アンテナ」から受信された情報を表示するものであるから、本願発明の「前記入力に関連した情報を表示する表示部」に相当する。

(4)引用発明の「自機が存在するエリアに応じて、複数の情報のうち機密情報と設定した氏名を含む情報を非表示状態とする制御手段」において、
該「エリア」は判定手段が判定したものであり、「位置」に相当する事項である。

ここで、本願発明の「日付又は時刻とは異なる情報」とは、日付又は時刻以外の任意の情報であるといえる。
引用発明の「機密情報」に含まれる「氏名」は、日付でも時刻でもないことから、
引用発明の「機密情報」に含まれる「氏名」は、本願発明の「日付又は時刻とは異なる情報」に相当する事項である。

また本願発明の「日付又は時刻とは異なる情報については前記表示部への表示を制限する」事項について、
仮に、暗黙的に「日付又は時刻の情報は前記表示部への表示を制限しない」事項をも意味すると解釈すると、
本願明細書を参酌しても、表示を制限するために、情報の属性が「日付又は時刻」であるか否かを判定する処理は記載されておらず、本願明細書段落【0073】の「また、キーワードDBの登録内容は、適宜(例えば、メンテナンス時等において)追加・変更が可能であるものとする。また、図7では、個人名、会社名、技術用語などの属性以外にも、特許情報や予算情報、商談情報などの属性でキーワードを登録しても良い。」との記載からすると、守秘性のあるキーワードの属性は格別限定されていないことから、「日付又は時刻」の情報だけを、表示制限の対象としないように制限する機能も記載されていないので、
上記「日付又は時刻の情報は前記表示部への表示を制限しない」事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていない新規事項となる。
よって、本願発明の 「日付又は時刻とは異なる情報については前記表示部への表示を制限する」との事項は、「日付又は時刻とは異なる情報」の表示を制限する事のみが限定されており、「日付又は時刻」の表示を制限しない事については限定されていないと解釈するのが妥当である。

したがって、引用発明の「自機が存在するエリアに応じて、複数の情報のうち機密情報と設定した氏名を含む情報を非表示状態とする制御手段」は、本願発明の「前記位置検出部が検出した位置に応じて、日付又は時刻とは異なる情報については前記表示部への表示を制限する制御部」に相当するといえる。

以上(1)?(4)から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「位置を検出する位置検出部と、
入力インタフェースにより入力を行う入力部と、
前記入力に関連した情報を表示する表示部と、
前記位置検出部が検出した位置に応じて、日付又は時刻とは異なる情報については前記表示部への表示を制限する制御部と、
を備えたことを特徴とする携帯型装置。」

(相違点)

位置検出部に関し、
本願発明では、「位置情報」を検出するのに対して、
引用発明では、位置を検出するにとどまり、「位置情報」を検出することについては言及されていない点。

6.当審の判断

上記相違点について検討する。

端末が備えるGPSのような位置特定機能により得られた「位置情報」に基づいてデータの利用可否を判定する旨の技術は、例えば、参考文献1(上記I,J参照)に記載されているように、本願出願前には、認証の技術分野の当業者が適宜採用していた周知技術であった。

したがって、引用発明の「判定手段」において、該周知技術を適用し、「位置情報」を検出するようにすること、すなわち、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

上記で検討したごとく、上記相違点は格別のものではなく、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び参考文献1に記載の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

7.むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-11 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-26 
出願番号 特願2010-33985(P2010-33985)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢頭 尚之脇岡 剛  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 戸島 弘詩
辻本 泰隆
発明の名称 携帯型装置及び情報処理システム  
代理人 片山 修平  

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