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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
管理番号 1303214
審判番号 不服2013-1015  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-21 
確定日 2015-07-16 
事件の表示 特願2009-50633「強化された殺ダニ活性のための組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成21年5月28日出願公開、特開2009-114216〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2001年11月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年11月30日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願の一部を平成21年3月4日に新たな特許出願としたものであって、平成23年11月9日付けの拒絶理由通知に対し平成24年5月14日付けの意見書及び手続補正書が提出され、同年9月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月21日付けで審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年7月24日付けで審尋がなされ、平成26年1月30日付けで回答書が提出され、同年6月24日付けの補正の却下の決定により平成25年1月21日の手続補正が却下されるとともに同日付で拒絶理由通知がなされたのに対し、同年12月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1 当審が通知した拒絶の理由
平成26年6月24日付けで当審が通知した拒絶の理由は以下の内容を含むものである。
(1) 「1 拒絶理由1
本件出願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特表平10-510252号公報 (注.原審の引用文献6に対応する。)」

(2) 「2 拒絶理由2
この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開された下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書または図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

特願2001-537545号(特表2003-513990号。以下、「先願」という。)」

2 「1 拒絶理由1」についての当審の判断
(1) 本願発明
本願発明は、平成26年12月25日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「動物における寄生性ダニ類の抑制のための薬剤であって、下記式(a)?(e):
【化1】

の化合物よりなる群より選ばれる化合物と、ペルメトリン、フェントリン、シペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、トラロシトリン、デルタメトリン及びフルメトリンよりなる群より選ばれるピレスロイドの組み合わせを含んでなるが、但し、式(a)のイミダクロプリドとペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせは除く、薬剤。」

(2)刊行物の記載事項
ア 刊行物1(特表平10-510252号公報)の記載事項
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
1-a 「動物に寄生する昆虫を皮膚防除するための組成物であって、
- 昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬を調合物の全重量を基準にして1?20重量%の濃度、
- ベンジルアルコールまたは任意に置換されていてもよいピロリドン類からなる群の溶媒を調合物の全重量を基準にして少なくとも20重量%の濃度、
- 望まれるならば、環状カーボネート類またはラクトン類からなる群のさらなる溶媒を調合物の全重量を基準にして5.0?80重量%の濃度、
- 望まれるならば、増粘剤、展着剤、着色剤、抗酸化剤、噴射剤、防腐剤、接着剤、乳化剤からなる群のさらなる助剤を調合物の全重量を基準にして0.025?10重量%の濃度、
で含有することを特徴とする組成物。」(特許請求の範囲、請求項1)
1-b 「本発明は、昆虫のニコチン性(nicotinergic)アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬を用いて動物に寄生する昆虫を皮膚防除するに適した調合物に関する。
昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬は公知である。これらにはニコチニル殺虫剤、より詳細にはクロロニコチニル殺虫剤が含まれる。
・・・
昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬を含有していて皮膚に塗布するに適した新規な調合物をここに見い出し、この調合物は、動物に寄生すり昆虫、例えばノミ、シラミまたはハエなどを皮膚防除するのに特に適切である。」(第3頁第3?17行)
1-c 「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬は、例えば・・・などから公知である。
・・・
上記化合物は、好適には、一般式(I)

[式中、
Rは、水素を表すか、或はアシル、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基の群の任意に置換されていてもよい基を表し、
Aは、水素、アシル、アルキル、アリールの群の単官能基を表すか、或は基Zに結合している二官能基を表し、
Eは、電子求引基を表し、
Xは、基-CH=または=N-を表すが、基-CH=の場合、H原子の代わりに基Zに結合していてもよく、
Zは、アルキル、-O-R、-S-R

の群の単官能基を表すか、或は基Aにか或は基Xに結合している二官能基を表す]
で描写可能である。
式(I)で表される特に好適な化合物は、上記基が下記の意味を有する化合物、即ち
Rが水素を表す化合物、そしてRがアシル、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルの群の任意に置換されていてもよい基を表す化合物である。
・・・
具体的には、下記の化合物を挙げることができる:

」(第3頁最下行?第11頁4行)
1-d 「本発明に従う調合物は、温血種に対する毒性は低いが、飼育動物および繁殖用動物、家畜動物および生産用動物、動物園および実験室の動物、そして実験で用いられる動物および趣味探求用動物で遭遇する寄生性昆虫の防除で用いるに適切である。これに関連して、これらは、その有害生物の全発育段階および個々の段階に作用し、そしてその有害生物の耐性種および通常の感受性種に作用する。」(第13頁下から第2行?第14頁第4行)
1-e 「本発明に従う成形品にまたさらなる活性物質を存在させることも可能である。
さらなる活性物質には、殺虫剤、例えば燐含有化合物、即ちホスフェート類またはホスホネート類など、天然もしくは合成ピレトロイド類、カルバメート類、アミジン類、幼若ホルモンおよびジュベノイド(juvenoid)合成活性物質、およびキチン合成阻害剤、例えばジアリールエーテル類およびベンゾイル尿素類などが含まれる。
・・・
合成ピレトロイド類には下記が含まれる:
3-[2-(4-クロロフェニル)-2-クロロビニル]-2,2-ジメチル-シクロ-プロパンカルボン酸(α-シアノ-4-フルオロ-3-フェノキシ)-ベンジルエステル(フルメトリン(flumethrin))、
2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)-シクロプロパンカルボン酸α-シアノ(4-フルオロ-3-フェノキシ)-ベンジル(シフルトリン(cyfluthrin))およびそれのエナンチオマー類およびステレオマー類、(±)-シス,トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸α-シアノ-3-フェノキシベンジル(デルタメトリン(deltamethrin))、2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)-シクロプロパンカルボン酸α-シアノ-3-フェノキシベンジル(シペルメトリン(cypermethrin))、(±)-シス,トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸3-フェノキシベンジル(ペルメトリン(permethrin))、α-(p-Cl-フェニル)-イソ吉草酸α-シアノ-3-フェノキシ-ベンジル(フェンバレレート(fenvalerate))、2-(2-クロロ-α,α,α-トリフルオロ-p-トルイジノ)-3-メチル酪酸2-シアノ-3-フェノキシベンジル(フルバリネート(fluvalinate))。」(第15頁第10行?第17頁第3行)
1-f 「生産用および繁殖用動物には、哺乳動物、例えば牛、馬、羊、豚、山羊、らくだ、水牛、ろば、うさぎ、黄じか、となかいなど、毛皮を持つ動物、例えばミンク、チンチラまたはアライグマなど、鳥類、例えば鶏、がちょう、七面鳥、あひるなどが含まれる。
実験室動物および実験用動物には、ハツカネズミ、ネズミ、モルモット、ゴールデンハムスター、犬および猫などが含まれる。
趣味用動物には犬および猫が含まれる。」(第15頁第2?8行)
1-g 「以下に示す実施例で用いる活性物質は1-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-N-ニトロ-2-イミダゾリジニウム(一般名イミダクロプリド(imidacloprid))を用いる。
・・・
実施例13
イミダクロプリド 10.0g
フルメトリン 2.0g
ベンジルアルコール 60.0g
プロピレンカーボネート 28.0g」(第24頁第2行?第26頁第18行)

イ 周知技術について
(ア) 周知技術である特開昭62-174030号公報には、以下の事項が記載されている。
S-11 「肉牛の飼育および生産は南半球の特定の国、たとえば南アフリカ、ならびに南アメリカのアルゼンチンその他の国においてきわめて大きな産業である。これらの国には従来から寄生昆虫(たとえばダニ)の大集団があり、これが家畜の群れに対し現実的な問題を提起する。群れにまん延する可能性のある疾病の保菌体になるという本来の危険性を別としても、動物の皮膚に長期間にわたって過度に侵入すると体重減少を生じやすく、これにより屠殺用としての動物の価値が低下する。従って動物を頻繁に(たとえば毎週)狩り集め、有効な殺虫薬の水剤または水性懸濁剤を動物に噴霧し、浸漬し、または背に注ぎかけることが一般に行われている。多くの殺虫薬、たとえば既知のピレスロイド系殺虫薬がこの目的にきわめて有効である。」(第5頁第3?17行)
S-12 「本発明の実施に際し使用できる生物活性薬剤は一般に既知の局所用薬剤からなる。しかし前記のように本発明は特に牛その他の家畜をダニその他の吸血寄生昆虫の有害な作用から予防するために処理することを目的とする。」(第7頁第7?11行)
(イ) 周知技術である特開平5-132402号公報には、以下の事項が記載されている。
S-13 「一方、人間生活に直接若しくは間接的に害を与える所謂衛生害虫と称される昆虫類は自然界に数多く存在している。その代表的なものとしては、蚊類、ブヨ類、アブ類、ヌカガ類、ゴキブリ類、カメ虫類、ツツガ虫類更にはダニ類、イガ類、コイガ類或いはノミ類やハエ類等が知られている。これ等の衛生害虫は人間生活に悪影響を及ぼすばかりでなく、家畜、ペット等の動物の飼育育成環境を悪化せしめる他食品の保存環境を悪化せしめる原因ともなっていた。」(【0004】)
(ウ) 周知技術である特開平10-338608号公報には、以下の事項が記載されている。
S-21 「また、本発明防除剤には必要により、フェンプロパスリン、ペルメトリン、アレスリン、d-アレスリン、プラレトリン、サイフェノトリン、(S)- サイフェノトリン、フェノトリン、レスメトリン、エムペントリン、フェンバレレート、シハロトリン、サイフルトリン、エトフェンプロクス、トラロメトリン、エスビオスリン、トランスフルスリン、テラレスリン、1-エチニル-2-フルオロ-2-ペンテニル 3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラート等のピレスロイド系化合物・・・イミダクロプリド、ニテンピラン、アセタミプリド、MTI446等のクロルニコチル系化合物、・・・等の殺虫成分・・・を適宜含有させることもできる。」(【0006】)
S-22 「本発明が防除の対象とする有害生物としては、特に牛、羊等の家畜やイヌ、ネコ等のペットの外部寄生虫であるノイエバエ(Musca hervei)、クロイエバエ(Musca bezzii)、ノサシバエ(Haematobia irritans)、ツメトゲブユ(Simulium iwatens)、ウシヌカカ(Culicoides oxystoma)、ウシアブ(Tabanus chrysurus)、アカイエカ(Culex pipiens)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)等の双翅目害虫、ウシジラミ(Haematopinus eurysternus),ヒツジジラミ(Damalinia ovis)等のシラミ目害虫、フタトゲチマダニ(Haemaphyxalis longicornis),オウシマダニ(Boophilus microplus)等のダニ目害虫、ネコノミ(Ctenocephalides felis),イヌノミ(Ctenocephalides canis)等のノミ目害虫等が挙げられる。また、対象とする動物としては、上記の他、マウス、ラット、ハムスター、リス等のげっ歯目、ウサギ目、フェレット等の食肉目、アヒル、ニワトリ、ハト等の鳥類も含まれる。」(【0008】)
(エ) 周知技術である特開平10-120514号公報には、以下の事項が記載されている。
S-23 「本発明組成物のもう一方の有効成分化合物は殺虫および/または殺ダニ剤の有効成分化合物として良く知られた公知の化合物であり、具体的にその一般名を例示すれば次の通りであるが、必ずしもこれらのみに限定されるものではない。・・・パーメスリン、サイパーメスリン、ビフェンスリン、フェンプロパスリン、エトフェンプロックス、フェンバレレートなどに代表されるピレスロイド系化合物、・・・アセタミプリド、ニテンピラム、イミダクロプリドなどに代表されるクロルニコチル系化合物・・・などが挙げられる。」(【0069】)

(3) 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「動物に寄生する昆虫を皮膚防除するための組成物であって、
- 昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬を調合物の全重量を基準にして1?20重量%の濃度、
- ベンジルアルコールまたは任意に置換されていてもよいピロリドン類からなる群の溶媒を調合物の全重量を基準にして少なくとも20重量%の濃度、
- 望まれるならば、環状カーボネート類またはラクトン類からなる群のさらなる溶媒を調合物の全重量を基準にして5.0?80重量%の濃度、
- 望まれるならば、増粘剤、展着剤、着色剤、抗酸化剤、噴射剤、防腐剤、接着剤、乳化剤からなる群のさらなる助剤を調合物の全重量を基準にして0.025?10重量%の濃度、
で含有することを特徴とする組成物。」(1-a)の発明が記載されており、「本発明に従う成形品にまたさらなる活性物質を存在させることも可能である。さらなる活性物質には、・・・合成ピレトロイド類・・・が含まれる。」(1-e)ことが記載されており、また実施例13には昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬であるイミダクロプリドと合成ピレトロイドであるフルメトリンとを含む調合物が具体的に記載されている(1-g)。
してみると、刊行物1には、
「動物に寄生する昆虫を皮膚防除するための組成物であって、
- 合成ピレトロイド類、
- 昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬を調合物の全重量を基準にして1?20重量%の濃度、
- ベンジルアルコールまたは任意に置換されていてもよいピロリドン類からなる群の溶媒を調合物の全重量を基準にして少なくとも20重量%の濃度、
- 望まれるならば、環状カーボネート類またはラクトン類からなる群のさらなる溶媒を調合物の全重量を基準にして5.0?80重量%の濃度、
- 望まれるならば、増粘剤、展着剤、着色剤、抗酸化剤、噴射剤、防腐剤、接着剤、乳化剤からなる群のさらなる助剤を調合物の全重量を基準にして0.025?10重量%の濃度、
で含有する組成物。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(4) 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「動物に寄生する」、「皮膚防除するための組成物」、「合成ピレトロイド類」、及び「組成物」は、それぞれ、本願発明における「動物における寄生性」、「抑制のための薬剤」、「ピレスロイド」及び「薬剤」に対応する。
そして、引用発明における「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」は本願発明の式(a)?(e)の化合物にも相当するクロロニコチニル化合物を包含し、また、引用発明における「昆虫」と本願発明における「ダニ類」は何れも「節足動物」である。
してみると、本願発明と引用発明とは
「動物における寄生性節足動物の抑制のための薬剤であって、クロロニコチニル化合物とピレスロイドの組み合わせを含んでなる、薬剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1] 「動物における寄生性節足動物の抑制のための薬剤」における寄生性節足動物が、本願発明が「ダニ類」であるのに対し、引用発明では「昆虫」である点
[相違点2] クロロニコチニル化合物とピレスロイドの組み合わせについて、本願発明が「下記式(a)?(e):
【化1】

の化合物よりなる群より選ばれる化合物と、ペルメトリン、フェントリン、シペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、トラロシトリン、デルタメトリン及びフルメトリンよりなる群より選ばれるピレスロイドの組み合わせ」を用いるのに対し、引用発明ではかかる組み合わせを用いることは特に記載されていない点
[相違点3] 薬剤について、本願発明が「但し、式(a)のイミダクロプリドとペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせは除く」と規定するのに対し、引用発明ではかかる規定はなされていない点

(5) 相違点についての判断
ア 相違点1について
刊行物1には「動物に寄生する昆虫」の例として特にダニを例示していないが、ダニは動物に寄生する昆虫として周知である(例えば、S-11?S-13参照。)し、また、「ピレスロイド」及び「クロロニコチニル化合物」は何れも殺ダニ剤の有効成分として周知である(例えば、S-21?S-23 参照。なお、「クロルニコチル系化合物」は「クロロニコチニル化合物」と同義である。)ので、クロロニコチニル化合物とピレスロイドの組み合わせの施用対象としてダニ類を選定すること、すなわち「動物における寄生性節足動物の抑制のための薬剤」における寄生性節足動物を「ダニ類」とすること、は当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
刊行物1には、昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬として、以下の化合物

が具体的に記載されている(1-c)。
また、刊行物1には、合成ピレトロイド類(ピレスロイド)として「ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、デルタメトリン及びフルメトリン」が含まれていることが具体的に記載されている(1-e)。
そして、刊行物1の実施例13には「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」であるイミダクロプリドとピレスロイドであるフルメトリンを組み合わせた組成物が具体的に記載されている(1-g)。
してみると、刊行物1に具体的に記載されている「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」及び「合成ピレトロイド類(ピレスロイド)」の中から、「下記式(a)?(e):
【化1】

の化合物よりなる群より選ばれる化合物と、ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、デルタメトリン及びフルメトリンよりなる群より選ばれるピレスロイドの組み合わせ(但し、式(a)のイミダクロプリドとペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせは除く)」を用いることは当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 相違点3について
刊行物1に具体的に記載されている「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」及び「ピレスロイド」の組み合わせの中から「式(a)のイミダクロプリド及びペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせは除」いても、その除かれた組み合わせ以外の「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」及び「ピレスロイド」の組み合わせについては本願発明と引用発明とは依然として重複しているのであるから、上記の相違点は実質的な相異点ではない。
(なお、引用発明の「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」及び「ピレスロイド」の組み合わせを、刊行物1の実施例に基づく「イミダクロプリド」及び「(ペルメトリン又は)フルメトリン)」という特定の組み合わせのみに限定して解釈すべき根拠は見いだせない。)
また、刊行物1に具体的に記載されている「昆虫のニコチン性アセチルコリンレセプタの作用薬または拮抗薬」及び「ピレスロイド」の中から、必要とする組み合わせを適宜取捨選択することにより、「式(a)のイミダクロプリドとペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせ」を除くことは、当業者が必要に応じて容易になし得ることである。

エ 効果について
本願明細書の実施例において具体的に用いられ、効果が確認されているのはクロロニコチニル化合物であるイミダクロプリドとピレスロイドであるペルメトリンの組み合わせを用いた例のみであるところ、かかる組み合わせは本願発明には包含されないものである。
そして、技術常識を考慮しても、イミダクロプリドとペルメトリンの組み合わせが格別顕著な技術的効果を奏するからといって、本願発明が格別顕著な技術的効果を奏すると認めることはできない。
してみると、本願明細書の記載からは、本願発明が格別顕著な技術的効果を奏し得たものであるとは認められない。

オ 請求人の主張について
請求人は平成26年12月25日に提出した意見書において以下のように主張している。
主張1 「本願発明に関連する先行技術によれば、ピレスロイドは、昆虫やダニ類の神経軸索に沿った膜レセプターに結合し、ナトリウムチャンネルを長時間開放させ、長時間の消極、反復性神経発射及びシナプス障害を生じ、過興奮症状に導く物質であり、殺虫、殺ダニ剤として有用であるが、活性の持続性が短く、効果も十分とは言えない。一方で、ニコチニル化合物は、解剖学的及び生理学的にピレスロイドと異なる生物活性を有する、ピレスロイドとは別の作用モードを有し、シナプス後神経領域におけるニコチン作用性レセプターに結合し、神経間の信号のアセチルコリン化学的伝達物質が結合して信号を伝達するのを妨げる機能を有しており、例えば、クロロニコチニル化合物は、ダニ類よりも昆虫の結合部位に関して、ピレスロイドよりも特異的に結合し(昆虫に対して特異的であり)、したがって、ダニ類に対して効果がないか、あったとしても極めて限定的であると言われている(本願明細書の段落[0007]?[0009]参照)。
このような背景の下、本発明者等は、ピレスロイドの中でも、その代表的なペルメトリン及びフルメトリン等よりなる群から選ばれるピレスロイドと、ニコチニル化合物の中でも、その代表的なイミダゾクロプリドとを組合せると、驚くべきことに、ピレスロイドとニコチニル化合物とが相乗的に作用し、ダニ類に対する活性の発現が有意に増強されるのみならず、その活性が長期間にわたり持続するという顕著な効果が得られることを見出し、本願発明を完成した。
・・・
本願明細書に開示されたピレスロイドの代表例であるペルメトリンとニコチニル化合物の代表例であるイミダクロプリドの組合せによって達成されるかかる顕著な相乗的殺ダニ活性は、組合せパートナーであるニコチニル化合物(例えば、イミダクロプリド)が一般にダニ類に対して有意な活性を有していないことからして、全く意外なことであって、当業者といえども決して容易に予測することができるものではない。
一方、上記理論を参酌すれば、ペルメトリンと3-(置換ビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボン酸のm-フェノキシベンジルエステルである化学構造上の基本的な骨格を共通に有するフェントリン、シペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、トラロシトリン、デルタメトリン及びフルメトリンのいずれかと、イミダクロプリドと上記式(a)?(e)、特に、(a)?(c)に見られるN1-[(6-クロロ-3-ピリジル)メチル]-N2-ニトロ(又はシアノ)-アセトアミジンである化学構造上の基本骨格を共通に有する化合物のいずれかとのすべての組み合わせは、ダニ類の抑制に関してペルメトリンとイミダクロプリドの組み合わせと同様に相乗的効果を発現するであろうことは、当業者であれば容易に理解し得ることである。」(意見書2頁下から16行?3頁下から19行)
主張2 「本願出願時における適正な技術常識に基づけば、既に、本件審判事件に関して提出した平成25年3月7日付手続補正書(方式)の「3.3.3.」において述べたとおり、昆虫類と蛛形類、特にダニ類とは分類学上明確に区別されている。本願発明が防除の対象としているダニ類は、節足動物門 鋏角類亜門 蛛形類に属し(例えば、クモ、サソリ、ダニ)、羽根をもたず4対の脚を有するのに対し、昆虫は単肢動物亜門 昆虫類に属し(例えば、ノミ、ハエ、ガ、アリ、ハチ)、羽根をもち3対の脚を有するものであって、ダニ類と昆虫とは、進化過程的にも、分子生物学的にも、生理学的にも全く別異のものであることは、当業者に周知であり、また、共通して認識されている事実である。
このことは、本願出願時には、当業者に周知であったのである。ご参考までに、広川 薬科学大辞典 薬科学大辞典編集員会編 1983 東京廣川書店 昭和58年4月15日 第1刷発行 第803頁の写しを参考資料Aとして提出する、その「だに」の説明をご確認されたい。
してみると、刊行物1には、記載されている調合物等が動物における寄生性ダニ類の抑制のための薬剤として使用できることのみならず、勿論のこと、補正後の請求項1に係る発明のとおりに規定された特定の組み合わせが寄生性ダニ類の抑制のために使用できることは、記載も示唆もされていないことは明白である。」(意見書4頁28行?下から8行)

主張1について
請求人の主張は、「ピレスロイドとニコチニル化合物とは作用機序が異なる、すなわち、ピレスロイドは昆虫やダニ類の神経軸索に沿った膜レセプターに結合して作用するのに対し、ニコチニル化合物はシナプス後神経領域におけるニコチン作用性レセプターに結合して作用するところ、「ペルメトリン」と「フェントリン、シペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、トラロシトリン、デルタメトリン及びフルメトリン」並びに「イミダクロプリド」と「本願発明の式(a)?(e):の化合物」とは化学構造上の基本骨格を共通にするのであるから、ピレスロイドとニコチニル化合物との組み合わせからなる本願発明の薬剤が、ペルメトリンとイミダクロプリドの組み合わせが示すのと同様の相乗効果を発現することは当業者であれば容易に理解し得るので、本願発明は格別顕著な効果を奏する。」という趣旨の主張と解される。
しかしながら、「イミダクロプリド(式(a)の化合物)」と「式(b)?(e)の化合物」とは、そもそも化学構造がかなり相違しており化学構造上の基本骨格を共通にするとはいえないから、両者が化学構造上の基本骨格を共通にすることを前提とする請求人の主張は前提において誤りである。
しかも、ピレスロイドとニコチニル化合物とは作用機序が異なるとしても、ピレスロイドに属するペルメトリンとニコチニル化合物に属するイミダクロプリドとを組み合わせると相乗効果を発現することを見いだしたからといって、その一例をもって、(ペルメトリン以外の)ピレスロイドに属する「フェントリン、シペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、トラロシトリン、デルタメトリン及びフルメトリン」と(イミダクロプリド以外の)ニコチニル化合物に属する「式(b)?(e)の化合物」に含まれる化合物の組み合わせが相乗効果を発現すると認めるに足る技術的根拠は見いだせないから、請求人の主張は採用することはできない。
主張2について
請求人の主張は、「ダニ類と昆虫とは、進化過程的にも、分子生物学的にも、生理学的にも全く別異のものであることは当業者に周知であるから、刊行物1に記載されている『動物に寄生する昆虫を皮膚防除するための組成物』を動物における寄生性ダニ類の抑制のための薬剤として使用できることは、刊行物1には記載も示唆もされていない。」という趣旨の主張と解される。
しかしながら、請求人が主張するように、学術的な定義からすると、確かにダニ類は昆虫には分類されないものの、先に第2 2(5)アの「相違点1について」で述べたように、当技術分野においてはダニは動物に寄生する節足動物に含まれるものであって、動物に寄生するその他の昆虫と同列に扱われ、時には「動物に寄生する昆虫」と称されることが理解できる(例えば、S-11?S-13参照。)。そして、ピレスロイド及びクロロニコチニル化合物は何れも殺ダニ成分としても周知である(例えば、S-21?S-23 参照。)ので、刊行物1に記載されている『動物に寄生する昆虫を皮膚防除するための組成物』を動物における寄生性ダニ類の抑制のための薬剤として使用することは当業者が容易に想到し得ることであるといわざるを得ない。
したがって、請求人の主張は採用することはできない。

(6) むすび
したがって、本願発明は、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


3 「2 拒絶理由2」についての当審の判断
(1) 本願発明
本願発明は、第2 2(1)に記載されたとおりのものである。

(2) 先願明細書(特願2001-537545号(特表2003-513990号))に記載された事項
先願明細書には、以下の事項が記載されている。
2-a 「【請求項2】
a)少なくとも1種の製薬学的もしくは獣医学的に活性な化合物及び
b)1分子当たりに少なくとも1個の第4級アンモニウム基を含有するポリシロキサン誘導体
適宜、さらに別の助剤及び担体
を含む組成物。
・・・
【請求項4】 少なくとも1種のピレスロイド及び少なくとも1種のクロロニコチニル化合物を活性化合物として含むことを特徴とする請求項2に従う組成物。」(特許請求の範囲)
2-b 「特に適した活性化合物は、フェンバレレート[α-シアノ-3-フェノキシベンジル α-(p-Clフェニル)-イソバレレート]、フルメスリン[(α-シアノ-4-フルオロ-3-フェノキシ)ベンジル 3-[2-(4-クロロフェニル)-2-クロロビニル]-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート]及びそのエナンチオマー及び立体異性体、シフルスリン[(α-シアノ-4-フルオロ-3-フェノキシ)ベンジル 2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート]、ペルメスリン[3-フェノキシベンジル シス,トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート]、シペルメスリン[α-シアノ-3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート]、デルタメスリン[α-シアノ-3-フェノキシベンジル シス,トランス-3-(2,2-ジブロモビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート]、フルバリネート[2-シアノ-3-フェノキシベンジル 2-(2-クロロ-α,α,α-トリフルオロ-p-トルイド)-3-メチルブチレートのような普通名を有するピレトリン類及びピレスロイド類であり、ここで殺ダニ作用を有するピレスロイド類が新規な調製物の調製のために好ましく、α-シアノピレスロイド類、例えばα-シアノ-3-フェニルベンジルアルコール又は4-フルオロ-α-シアノ-3-フェノキシベンジルアルコールのエステルに基づくものが特に好ましい。フルメスリンが特別に好ましい。」(【0012】)
2-c 「もちろん、本発明に従う組成物中でさらに別の活性化合物を組合わせパートナーとして用いることもできる。
好ましいとして挙げることができる組合わせ化合物は、外部寄生性昆虫の抑制において用いられる殺虫剤、例えばニコチニル及び特にクロロニコチニル殺虫剤、N-フェニルピラゾール類、カルバメート類、リン酸及びホスホン酸エステル類、成長抑制剤又はこれらの活性化合物の互いの混合物、ならびにそれらの相乗剤との混合物である。本出願の範囲内で相乗剤とは、独立して所望の活性を有してはいないが、混合パートナーとして活性成分の活性を向上させる化合物を意味すると理解される。
挙げることができるクロロニコチニル殺虫剤は式(I)、(II)及び(III)の化合物である:
・・・
特に、以下の化合物を挙げることができる:
・・・
さらに、化合物
【化7】

が特に好ましい。」(【0014】?【0029】)
2-d 「有害生物には:
・・・
が含まれる。
ノミ類に対する、特にノミ及びダニに対する作用を特に挙げることができる。」(【0068】?【0069】)
2-e 「生産及び飼育動物には哺乳類、例えば牛、馬、羊、豚、山羊、らくだ、水牛、ろば、うさぎ、黄じか、となかい、毛皮動物、例えばミンク、チンチラもしくはラクーン、鳥類、例えば鶏、がちょう、七面鳥及びあひるが含まれる。
実験室動物及び試験のための動物にはマウス、ラット、モルモット、ゴールデンハムスター、犬及び猫が含まれる。
趣味の追求において用いられる動物には犬及び猫が含まれる。」(【0070】?【0072】)
2-f 「実施例2
0.30gのフルメスリン
27.65gのジエチレングリコールモノエチルエーテル
50.50gのイソプロパノール
7.50gの水
1.00gのAbil Quat 3274(2)
0.1gのクエン酸
を含む均一なポンプ-スプレー調製物(100ml)
(2)Abil Quat 3274は、ジ第4級アンモニウム基及び25℃における5000-15,000[mm^(2).s-1]の粘度範囲を特徴とするGoldschmidt AG D-4300 Essenからの50%濃度ポリジメチルシロキサン水溶液である。
実施例2の下に言及した調製物の活性を調べるための標準実験室試験(GZ 49/97)において、合計で10匹の犬(レトリバー、ラブラドール、セッター、雄及び雌)を用いた。すべての動物に1回、処置の3-日前に、それぞれ70匹のダニ(リピセファルス・サングイネウス、イクソデス・カニスガ(Ixodes canisuga))を蔓延させた。処置の日に、犬上の寄生しているダニを計数し、犬を寄生虫の数に従ってランク付けした。あるいは又、すべての動物を2つの試験グループの1つに指定した。試験グループ1の動物は体重のキログラム当たり約3mlの実施例2の下に言及した調製物を与えられた。試験グループ2の動物は未処置のままであった。試験グループ1において、適用は体の表面全体にスプレー噴霧することにより行われた。
すでに寄生しているダニへの作用に関する試験は、次に続く2つの日に各犬上のダニを再度計数することにより行われた。実施例2の下に言及した調製物の活性は、処置から後の3日目に未処置標準グループと比較して100%であることが見いだされた。
持続活性(再蔓延に対する保護)に関する試験は、動物当たりにそれぞれ70匹のダニを週に1回再蔓延させることにより行われた。両試験グループにおいて5?7週間、全くダニが吸い始めないか、もしくはわずかな個別のダニが吸い始めるのみであることを示すことができた。さらに、調製物は十分に許容された。」(【0082】?【0085】)
2-g 「実施例4
0.30gのフルメスリン
27.35gのジエチレングリコールモノエチルエーテル
50.50gのイソプロパノール
7.50gの水
1.00gのAbil Quat 3272(1)
0.1gのクエン酸
0.3gのイミダクロプリド
を含む均一なポンプ-スプレー調製物(100ml)
実施例2に従うダニに対する活性についての実験室試験は、調製物がダニに対して非常に活性であり、ダニの抑制に非常に適していることを示す。」(【0087】)
2-h 「実施例9
1.00gのフルメスリン、
5.00gのピペロニルブトキシド、
2.50gのイミダクロプリド
15.00gの水
2.00gのAbil Quat 3272(1)
74.77gのジエチレングリコールモノエチルエーテル
0.13gのクエン酸
0.10gのBHT(ブチルヒドロキシトルエン)
を含む均一なスポット-オン調製物(100ml)
を用い、実施例4に従うダニに対する、及びノミに対する犬上での活性研究を行った。適用容積は体重のkg当たり0.4mlであった。ノミ及びダニに対する調製物の作用は100%であり、少なくとも5週間の持続作用と組み合わされていた。」(【0095】)

(3) 先願明細書(特願2001-537545号(特表2003-513990号))に記載された発明
先願明細書には、「【請求項2】
a)少なくとも1種の製薬学的もしくは獣医学的に活性な化合物及び
b)1分子当たりに少なくとも1個の第4級アンモニウム基を含有するポリシロキサン誘導体
適宜、さらに別の助剤及び担体
を含む組成物。
・・・
【請求項4】少なくとも1種のピレスロイド及び少なくとも1種のクロロニコチニル化合物を活性化合物として含むことを特徴とする請求項2に従う組成物。」(2-a)の発明が記載されており、特に適したピレスロイドは「フェンバレレート、フルメスリン、シフルスリン、ペルメスリン、シペルメスリン、デルタメスリン及びフルバリネート」であること(2-b)、特に好ましいクロロニコチニル化合物は「

」であること(2-c)、有害生物には「ノミ類に対する、特にノミ及びダニに対する作用を特に挙げることができる」(2-d)こと、当該組成物を適用する対象は犬などの動物であること(2-e、2-f及び2-i)、並びに実施例4及び実施例9には、ピレスロイドであるフルメスリンとクロロニコチニル化合物であるイミダクロプリドを含む調製物はダニに対する作用が100%であること(2-g及び2-h)が記載されている。
してみると、先願明細書には、
「a)ピレスロイドであるフェンバレレート、フルメスリン、シフルスリン、ペルメスリン、シペルメスリン、デルタメスリン及びフルバリネート並びにクロロニコチニル化合物である

を活性化合物として含む製薬学的もしくは獣医学的に活性な化合物及び
b)1分子当たりに少なくとも1個の第4級アンモニウム基を含有するポリシロキサン誘導体適宜、さらに別の助剤及び担体
を含む、動物に適用してダニの抑制に用いるための組成物。」
の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

(4) 対比
先願発明の「動物に適用してダニの抑制に用いるための」及び「組成物」は、本願発明における「動物における寄生性ダニ類の抑制のための」及び「薬剤」に対応する。
また、先願発明の「フルメスリン」、「シフルスリン」、「ペルメスリン」、「シペルメスリン」及び「デルタメスリン」は、本願発明の「フルメトリン」、「ペルメトリン」、「シペルメトリン」及び「デルタメトリン」にそれぞれ対応する。
してみると、本願発明と先願発明とは
「動物における寄生性ダニ類の抑制のための薬剤であって、下記式(a)、(b)及び(e):

の化合物よりなる群より選ばれる化合物と、ペルメトリン、シペルメトリン、シハロトリン、シフルトリン、デルタメトリン及びフルメトリンよりなる群より選ばれるピレスロイドの組み合わせを含んでなる薬剤。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。
[相違点] 薬剤について、本願発明が「但し、式(a)のイミダクロプリドとペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせは除く」と規定するのに対し、引用発明ではかかる規定はなされていない点

(4) 相違点についての判断
先願発明における「クロロニコチニル化合物」及び「ピレスロイド」の組み合わせの中から「式(a)のイミダクロプリド及びペルメトリン又はフルメトリンの組み合わせは除」いても、その除かれた組み合わせ以外の先願発明における「クロロニコチニル化合物」及び「ピレスロイド」の組み合わせについて、本願発明と先願発明とは依然として重複しているのであるから、上記の相違点は実質的な相異点ではない。
(なお、先願発明の「クロロニコチニル化合物」及び「ピレスロイド」の組み合わせを、先願明細書の実施例に基づく「イミダクロプリド」及び「(ペルメトリン又は)フルメトリン)」という特定の組み合わせのみに限定して解釈すべき根拠は見いだせない。)

(5) むすび
以上のとおり、本願発明は先願発明と同一であり、しかも本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また、本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項及び同法第29条の2の規定により特許を受けることができないので、本願は、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-16 
結審通知日 2015-02-18 
審決日 2015-03-04 
出願番号 特願2009-50633(P2009-50633)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (A01N)
P 1 8・ 121- WZ (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
唐木 以知良
発明の名称 強化された殺ダニ活性のための組成物  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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