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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
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管理番号 | 1303224 |
審判番号 | 不服2014-2434 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-10 |
確定日 | 2015-07-16 |
事件の表示 | 特願2010-128391「背面投射型映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日出願公開、特開2011-253130〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年6月4日の出願であって、平成25年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月1日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、同年11月5日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、平成26年2月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において、平成27年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月23日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年4月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「室内空間内においてその両面を当該空間に露出し直立した状態で配置され、背面から射された映像光を透過して表面の映像表示面に表示する透過型スクリーンと、 前記透過型スクリーンの背面側における所定の位置に配置され、当該透過型スクリーンの背面の下方から映像光を拡大投射する映像投射装置とを備えた背面投写型映像表示装置であって、 前記透過型スクリーンは、前記映像投射装置から投射された映像光を前記映像表示面に対して略垂直な方向に導くと共に、前記室内空間内の上方から照射される外光を前記映像表示面の下方に導く直線状のフレネルレンズ面を有するフレネルレンズを備え、 前記フレネルレンズは上下方向に複数の領域に分割され、前記映像投射装置から投射される映像光の入射角に応じて、前記分割された各領域におけるフレネルレンズ面の角度がそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする背面投写型映像表示装置。」 2.引用刊行物 当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平9-101568号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付した。) (a)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明はスクリーン装置に関する。 【0002】 【従来の技術】画像が投影されるスクリーン装置には、投影された画像を投影側と反対側から観察する透過型のスクリーン装置がある。この透過型のスクリーン装置は、一般に、フレネルレンズと拡散板とからなる透過型スクリーンを備え、投影レンズから広がり角度をもった投影光がフレネルレンズに入射し、この入射した光をフレネルレンズで観察者に向けて集光させるとともに、この集光される光を拡散板で拡散させて観察者側に出射する構造になっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなスクリーン装置では、フレネルレンズの厚さが数mm程度と厚いため、ゴーストが目立つという不都合があるほか、透過型スクリーンをロール状に巻き取ることが難しいという問題もあった。なお、このような不都合を解消するために、フレネルレンズの厚さを薄くすることが検討されているが、単にフレネルレンズの厚さを薄くしただけでは、強度的に弱くなり、実際の使用に耐えられないという問題がある。この発明の課題は、フレネルレンズを薄くしても、十分な強度を確保でき、かつ容易にロール状に巻き取ることができ、スクリーン全体の薄型化および小型化が図れるようにすることである。 【0004】 【課題を解決するための手段】この発明は、強度の強い合成樹脂からなるフィルム状の基材の一面に合成樹脂製のフレネルレンズを膜状に形成したから、フレネルレンズの厚さを薄くしても、フィルム状の基材によって十分な強度を確保することができ、しかもフィルム状の基材を用いているので、容易にロール状に巻き取ることができ、スクリーン全体の薄型化および小型化を図ることができる。この場合、請求項2に記載のごとく、フレネルレンズは光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂からなることが望ましく、また請求項3に記載のごとく、フレネルレンズはサーキュラルフレネルレンズまたはリニアフレネルレンズであることが望ましく、さらに請求項4に記載のごとく、基材の他面に拡散層が塗布により形成されていることが望ましい。 【0005】 【発明の実施の形態】以下、図1および図2を参照して、この発明のスクリーン装置の一実施形態について説明する。図1はスクリーン装置の使用状態を示す外観斜視図である。このスクリーン装置1は、携帯可能なものであり、樋状のスクリーンケース2を備えている。このスクリーンケース2の下面には2つの支持脚3が設けられており、スクリーンケース2の上部には開閉蓋4が回動自在に取り付けられている。また、スクリーンケース2内には透過型スクリーン5を巻き取る巻取軸(図示せず)が回転自在に配置されており、その内部両端にはそれぞれ支持軸6が起立横倒可能に取り付けられている。各支持軸6は、それぞれロッドアンテナ状に形成され、その長さが伸縮自在に調節でき、収縮させた状態でスクリーンケース2内に収納される構造になっている。したがって、このスクリーン装置では、スクリーンケース2の内部両端に設けられた各支持軸6を起立させて高さを調節した上、スクリーンケース2内の巻取軸に巻かれた透過型スクリーン5を引き出し、この透過型スクリーン5の先端部に設けられた支持棒7の両端を各支持軸6の上端部に係止させることにより、透過型スクリーン5がセットされる。 【0006】このスクリーン装置1の透過型スクリーン5は、図2に示すように、フィルム状の基材10を備えている。このフィルム状の基材10は、抗張力や屈折強度に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などの合成樹脂からなり、その両面にそれぞれ下地処理層11が施され、その一面(投影光が入射する入射側の面)にフレネルレンズ12が膜状に形成され、他面(投影光が出射する出射側の面)に拡散層13が形成されている。フレネルレンズ12は、紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂からなり、この樹脂を基材10の一面の下地処理層11の表面に塗布した状態で、溝付きローラを転動させて樹脂にレンズ溝を形成しながら、紫外線などの光を基材10の他面側から照射して樹脂を硬化させることにより、膜状に形成されている。なお、フレネルレンズ12は、レンズ溝が輪帯状に形成されたサーキュラルなもの、あるいはレンズ溝が直線状に形成されたリニアなもののいずれであってもよい。拡散層13は、マイクロビーズなどの有機系拡散剤13aと、着色剤13bと、バインダ13cからなり、基材10の他面の下地処理層11の表面に塗布によりほぼ一定の膜厚で形成されている。したがって、この透過型スクリーン5は、全体の厚さが250μm以下と非常に薄く形成されている。 【0007】次に、このようなスクリーン装置1を使用する場合について説明する。この場合には、まず、図1に示すように、スクリーンケース2の両端に各支持軸6を起立させて高さを調節した上、各支持軸6の上端部にスクリーンケース2内から引き出した透過型スクリーン5の先端部の支持棒7の両端を係止させることにより、透過型スクリーン5をセットする。この状態で、液晶プロジェクタなどの画像形成装置(図示せず)からの投影光が図2に示すように透過型スクリーン5に照射されると、まず、入射側のフレネルレンズ12で投影光が屈折され、この屈折された光が基材10を透過して出射側の拡散層13に入射し、この拡散層13の有機系拡散剤13aにより拡散されて観察者側に出射される。これにより、投影された画像を観察することができる。この場合には、透過型スクリーン5が250μm程度と薄いので、ゴーストが目立たず、しかも外部光に対し強くて明るい画像を得ることができる。 【0008】また、スクリーン装置1を使用しない場合には、各支持軸6の上端部から透過型スクリーン5の先端部の支持棒7を取り外し、透過型スクリーン5を巻取軸に巻き取ることにより、スクリーンケース2内に収納することができる。また、各支持軸6は収縮させた後、横倒させることにより、スクリーンケース2内に収納することができる。この後、開閉蓋4を閉じれば、スクリーン装置1全体が円柱状になり、非常にコンパクトなものとなる。このため、取り扱いが簡単になり、携帯や保管が便利になる。 【0009】このように、このスクリーン装置1では、透過型スクリーン5がポリエチレンテレフタレート樹脂などの強度の強い合成樹脂からなるフィルム状の基材10の一面に紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂からなるフレネルレンズ12を膜状に形成したから、フレネルレンズ12の厚さを薄くしても、フィルム状の基材10によって十分な強度を確保することができ、このため透過型スクリーン5を容易にロール状に巻き取ることができ、スクリーン装置1全体の薄型化および小型化を図ることができる。この場合、透過型スクリーン5のフレネルレンズ12は、紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂を用いているので、その製造が簡単で、精度の高いものが得られる。 【0010】なお、上記実施形態では、紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂でフレネルレンズ5を膜状に形成したが、これに限らず、例えば熱硬化性樹脂で形成しても良い。この場合には、フィルム状の基材10の一面の下地処理層11に熱硬化性樹脂を塗布して溝付きローラで樹脂にレンズ溝を形成しながら樹脂を加熱させて硬化させれば良い。このようにしても、上記実施形態と同様、その製造が簡単で、精度の高いものを得ることができる。 【0011】また、上記実施形態では、拡散層13が有機系拡散剤13a、着色剤13b、バインダ13cからなっているが、これに限らず、例えばレンチキュラーレンズ層であってもよく、また有機系拡散剤13a、着色剤13b、バインダ13cからなる拡散層とレンチキュラーレンズ層の2層構造でもよい。 【0012】さらに、上記実施形態では、透過型スクリーン5がフィルム状の基材10の一面にフレネルレンズ12を設け、他面に拡散層13を設けた1枚構成になっているが、全体の厚さが250μm程度と非常に薄いので、これに限らず、フレネルレンズ12がリニアフレネルレンズの場合には、別の基材の一面に上記実施形態のフレネルレンズ12のレンズ溝と直交するレンズ溝のリニアフレネルレンズを形成し、この別の基材を上記実施形態の基材10と重ね合わせた2枚構成としても良い。 【0013】 【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、強度の強い合成樹脂からなるフィルム状の基材の一面に合成樹脂製のフレネルレンズを膜状に形成したから、フレネルレンズの厚さを薄くしても、フィルム状の基材によって十分な強度を確保することができ、しかもフィルム状の基材を用いているので、容易にロール状に巻き取ることができ、スクリーン全体の薄型化および小型化を図ることができる。」 (b)「【図1】 【図2】 」 (c)上記記載事項中の段落【0007】の「この状態で、液晶プロジェクタなどの画像形成装置(図示せず)からの投影光が図2に示すように透過型スクリーン5に照射されると、まず、入射側のフレネルレンズ12で投影光が屈折され、この屈折された光が基材10を透過して出射側の拡散層13に入射し、この拡散層13の有機系拡散剤13aにより拡散されて観察者側に出射される。これにより、投影された画像を観察することができる。」という記載、及び、図2の記載から、引用文献1には、「透過型スクリーン5」の入射側に配置された「液晶プロジェクタなどの画像形成装置」と「透過型スクリーン5」とを備えた背面投影型画像観察装置であって、「液晶プロジェクタなどの画像形成装置」からの投影光が「透過型スクリーン5」の入射側に下方から照射され、「フレネルレンズ12」で投影光が屈折されて、フレネルレンズ12の出射面に略垂直に出射する構成が開示されていると認められる。(特に、下線部が、図2から読み取れる。) (d)上記記載事項中の「スクリーン装置1」は、室内に配置されて使用されることが通常であることは、当業者には明らかであり、また、上記記載事項中の段落【0005】、及び、図1の記載から、「透過型スクリーン5」は、セットされた際に直立し、その両面が室内で露出されると認められる。(特に、下線部が、図1から読み取れる。) (e)上記記載事項中の図2の記載から、「フレネルレンズ12」に、「透過型スクリーン5」の入射側の面に上方から光が入射すれば、その光の少なくとも一部は、「フレネルレンズ12」を透過して「透過型スクリーン5」の出射側の面の下方に導かれることは、当業者には明らかである。 すると、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「室内に配置されて使用される、スクリーン装置1のスクリーンケース2の内部両端に設けられた各支持軸6を起立させて高さを調節した上、スクリーンケース2内の巻取軸に巻かれた透過型スクリーン5を引き出し、この透過型スクリーン5の先端部に設けられた支持棒7の両端を各支持軸6の上端部に係止させることにより、直立するようにセットされ、その両面が室内に露出する透過型スクリーン5と、 透過型スクリーン5の入射側に配置された液晶プロジェクタなどの画像形成装置とを備えた背面投影型画像観察装置であって、 透過型スクリーン5は、フィルム状の基材10を備えていて、このフィルム状の基材10は、抗張力や屈折強度に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などの合成樹脂からなり、その両面にそれぞれ下地処理層11が施され、その一面(投影光が入射する入射側の面)にフレネルレンズ12が膜状に形成され、他面(投影光が出射する出射側の面)に拡散層13が形成されており、フレネルレンズ12は、紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂からなり、この樹脂を基材10の一面の下地処理層11の表面に塗布した状態で、溝付きローラを転動させて樹脂にレンズ溝を形成しながら、紫外線などの光を基材10の他面側から照射して樹脂を硬化させることにより、膜状に形成されたレンズ溝が直線状に形成されたリニアなものであり、 液晶プロジェクタなどの画像形成装置からの投影光が透過型スクリーン5の入射側に下方から照射されると、まず、入射側のフレネルレンズ12で投影光が屈折されて、フレネルレンズ12の出射面に略垂直に出射され、この出射光が基材10を透過して出射側の拡散層13に入射し、この拡散層13の有機系拡散剤13aにより拡散されて観察者側に出射される拡散層13から観察者側に出射され、 フレネルレンズ12に、透過型スクリーン5の入射側の面に上方から光が入射すれば、その光の少なくとも一部は、フレネルレンズ12を透過して透過型スクリーン5の出射側の面の下方に導かれる、背面投影型画像観察装置。」 2.対比 (1)本願発明と引用発明との対比 (a)引用発明の「透過型スクリーン5」、「液晶プロジェクタなどの画像形成装置」,「入射側」、「出射側」、「背面投影型画像観察装置」及び「フレネルレンズ12」が、それぞれ、本願発明の「透過型スクリーン」、「映像投写装置」、「背面」、「映像表示面」、「背面投写型映像表示装置」及び「フレネルレンズ」に相当する。 (b)引用発明の「透過型スクリーン5」は、「液晶プロジェクタなどの画像形成装置からの投影光が透過型スクリーン5の入射側に下方から照射されると、まず、入射側のフレネルレンズ12で投影光が屈折され、この屈折された光が基材10を透過して出射側の拡散層13に略垂直に入射し、この拡散層13の有機系拡散剤13aにより拡散されて観察者側に出射される拡散層13から観察者側に出射される」ものであるから、引用発明の「室内に配置されて使用される、スクリーン装置1のスクリーンケース2の内部両端に設けられた各支持軸6を起立させて高さを調節した上、スクリーンケース2内の巻取軸に巻かれた透過型スクリーン5を引き出し、この透過型スクリーン5の先端部に設けられた支持棒7の両端を各支持軸6の上端部に係止させることにより、直立するようにセットされ、その両面が室内に露出する透過型スクリーン5」は、本願発明の「室内空間内においてその両面を当該空間に露出し直立した状態で配置され、背面から投射された映像光を透過して表面の映像表示面に表示する透過型スクリーン」に相当する。 (c)引用発明の「液晶プロジェクタなどの画像形成装置」は、「液晶プロジェクタなどの画像形成装置からの投影光が透過型スクリーン5の入射側に下方から照射される」ものであり、また、「液晶プロジェクタ」は画像を拡大投写するものであることは自明であるから、引用発明の「透過型スクリーン5の入射側に配置された液晶プロジェクタなどの画像形成装置」は、本願発明の「前記透過型スクリーンの背面側における所定の位置に配置され、当該透過型スクリーンの背面の下方から映像光を拡大投射する映像投射装置」に相当する。 (d)引用発明の「透過型スクリーン5は、フィルム状の基材10を備えていて、このフィルム状の基材10は、抗張力や屈折強度に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などの合成樹脂からなり、その両面にそれぞれ下地処理層11が施され、その一面(投影光が入射する入射側の面)にフレネルレンズ12が膜状に形成され、他面(投影光が出射する出射側の面)に拡散層13が形成されており、フレネルレンズ12は、紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂からなり、この樹脂を基材10の一面の下地処理層11の表面に塗布した状態で、溝付きローラを転動させて樹脂にレンズ溝を形成しながら、紫外線などの光を基材10の他面側から照射して樹脂を硬化させることにより、膜状に形成されたレンズ溝が直線状に形成されたリニアなものであ」る構成は、本願発明の「前記透過型スクリーンは、」「直線状のフレネルレンズ面を有するフレネルレンズを備え」る構成に相当する。 (e)本願発明の「前記映像投射装置から投射された映像光を前記映像表示面に対して略垂直な方向に導く」構成について、本願の明細書及び図面には、映像表示面は、「フレネルレンズ」の出射側に配置された「拡散シート」や「拡散層」の出射側の面であって、このような映像表示面では、映像光は引用文献2の図2に示される「拡散層13」からの出射光と同様、広い範囲に拡散するように出射されることが自明であること、また、本願発明では、「透過型スクリーン」が、その出射側に「拡散シート」や「拡散層」が配置された構成が特定されていないことを考慮すると、本願発明の「映像表示面」は、「フレネルレンズ」の出射面であると解するのが相当である。 すると、引用発明の「液晶プロジェクタなどの画像形成装置からの投影光が透過型スクリーン5の入射側に下方から照射されると、まず、入射側のフレネルレンズ12で投影光が屈折されて、フレネルレンズ12の出射面に略垂直に出射され」る構成は、本願発明の「フレネルレンズ」は「前記映像投射装置から投射された映像光を前記映像表示面に対して略垂直な方向に導く」構成に相当する。 (f)本願発明の「前記室内空間内の上方から照射される外光を前記映像表示面の下方に導く」について、まず、上記(e)と同様、「映像表示面」は、「フレネルレンズ」の出射面であると解するのが相当である。また、「フレネルレンズ」に「室内空間内の上方から照射される外光」には、種々の角度で照射される外光が含まれることは自明であり、本願の明細書及び図面の記載を参酌すれば、本願発明の「前記室内空間内の上方から照射される外光を前記映像表示面の下方に導く」が、「フレネルレンズ」に「室内空間内の上方から(種々の角度で)照射される外光」のすべてが「映像表示面の下方に導」かれることを意味するものではないと解するのが相当である。 すると、引用発明の「フレネルレンズ12に、透過型スクリーン5の入射側の面に上方から光が入射すれば、その光の少なくとも一部は、フレネルレンズ12を透過して透過型スクリーン5の出射側の面の下方に導かれる」構成は、本願発明の「フレネルレンズ」は「前記室内空間内の上方から照射される外光を前記映像表示面の下方に導く」構成に相当する。 (2)一致点 以上のことから、両者は、 「室内空間内においてその両面を当該空間に露出し直立した状態で配置され、背面から投射された映像光を透過して表面の映像表示面に表示する透過型スクリーンと、 前記透過型スクリーンの背面側における所定の位置に配置され、当該透過型スクリーンの背面の下方から映像光を拡大投射する映像投射装置とを備えた背面投写型映像表示装置であって、 前記透過型スクリーンは、前記映像投射装置から投射された映像光を前記映像表示面に対して略垂直な方向に導くと共に、前記室内空間内の上方から照射される外光を前記映像表示面の下方に導く直線状のフレネルレンズ面を有するフレネルレンズを備える背面投写型映像表示装置。」で一致し、次の点で相違する。 (3)相違点 本願発明では、「前記フレネルレンズは上下方向に複数の領域に分割され、前記映像投射装置から投射される映像光の入射角に応じて、前記分割された各領域におけるフレネルレンズ面の角度がそれぞれ異なるように形成されている」のに対して、引用発明では、「フレネルレンズ12」のレンズ面の角度が明らかでない点。 3.判断 (1)相違点について スクリーンの上方又は下方から斜めに映像光が投影される透過型スクリーンにおいて、入射光の角度がフレネルレンズの位置により異なるから、映像光をフレネルレンズから垂直に出射させるために、各フレネルレンズのレンズ面の角度をそれぞれ異なるようにすることが、特開昭63-30836号公報(特に、公報第4頁左上欄第6?10行、同頁右上欄第19行?同頁左下欄第18行、第2図、第3図参照:「プリズム素子21」が本願発明の「フレネルレンズ」に相当する。)、特開2004-212770号公報(特に、段落【0032】?【0033】、【0051】、図2、図10参照)に示されるように、当業者には周知である。 そして、引用発明も「液晶プロジェクタなどの画像形成装置からの投影光が透過型スクリーン5の入射側に下方から照射される」ものであって、入射光の角度がフレネルレンズの位置により異なるから、映像光をフレネルレンズから垂直に出射させるために、各フレネルレンズのレンズ面の角度をそれぞれ異なるようにする方がよいことは当業者には当然のことである(引用文献1の図2の記載では、「フレネルレンズ12」の各レンズ面の角度が異なるようにされていることがうかがわれる)から、引用発明において、「フレネルレンズ12」の各レンズ面の角度をそれぞれ異なるように形成して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)効果について そして、本願発明が奏し得る効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 (3)結論 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-05-15 |
結審通知日 | 2015-05-19 |
審決日 | 2015-06-01 |
出願番号 | 特願2010-128391(P2010-128391) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井口 猶二 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
伊藤 昌哉 土屋 知久 |
発明の名称 | 背面投射型映像表示装置 |
代理人 | 青稜特許業務法人 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |