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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1303237
審判番号 不服2014-8175  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-02 
確定日 2015-07-16 
事件の表示 特願2008-226624「部品内蔵配線板、部品内蔵配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 62339〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年9月4日の出願であって、平成26年1月29日付け(平成26年2月4日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。その後、平成27年1月8日付けで当審により拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年3月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成27年3月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋設された、端子パッドを有する半導体チップと、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、前記半導体チップ用の実装用ランドを含む銅の配線パターンと、
前記半導体チップの前記端子パッドと前記配線パターンの前記実装用ランドとの間に挟設された、該端子パッドと該実装用ランドとを電気的に接続するはんだ材と、
前記半導体チップと前記第1の絶縁層および前記実装用ランドとの間に設けられた、Snを含有するはんだの粒子と樹脂とを有する異方性導電性樹脂と、を具備し、
前記異方性導電性樹脂が、前記半導体チップと前記第1の絶縁層との間においてはSnを含有する前記はんだの粒子が前記樹脂中に分散されたままで導電性が発現されておらず、前記半導体チップと前記実装用ランドとの間においては前記樹脂中に分散された前記はんだの粒子が溶融することによって前記はんだ材に変化しており、該はんだ材の前記実装用ランドの銅との接合部位にはCu-Snの金属間化合物が生成されていること
を特徴とする部品内蔵配線板。」

第3.刊行物の記載事項
(1)引用発明
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2002-93957号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「電子回路装置」に関して、図面(【図1】、【図4】及び【図11】参照。)と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば抵抗やコンデンサ等の電子部品が基板に実装されてなる電子回路装置であって、その基板に半導体チップを内蔵する電子回路装置およびその製造方法に関する。」

イ.「【0006】本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであって、半導体チップを内蔵した電子回路装置において、温度変化に対する信頼性の向上した電子回路装置およびその製造方法を提供することを目的とする。」

ウ.「【0021】プリント配線板1aは、絶縁樹脂層8上に積層されており、このプリント配線板1aは、たとえば、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ材からなる基板10と、この基板10の両面に形成された、たとえば、銅からなる配線(11a,12a)とから構成されている。このプリント配線板1a上には、半導体チップ4がスタッドバンプ5および異方性導電膜6を介して実装されており、半導体チップ4の電子回路と配線11aが電気的に接続されている。
【0022】半導体チップ4は、たとえば、シリコンチップであり、電子回路を有している。また、半導体チップ4は、ウェーハから切り出したままの、いわゆるベアチップの状態である。スタッドバンプ5は、半導体チップ4の下面に配列されており、たとえば、金線から形成されている。
【0023】異方性導電膜6は、たとえば、異方性導電フィルムあるいは異方性導電ペーストからなる。異方性導電フィルムとは、微細な導電ボールを絶縁性樹脂中に分散してフィルム上に加工したものであり、フィルムそのものは絶縁性であるが、この異方性導電フィルムを1対の電極で挟んで押しつぶすと、導電ボールが1対の電極に接触して、両電極間を導通させると同時に、両電極を固着することができるものである。異方性導電ペーストは、微細な導電ボールを絶縁性樹脂中に分散したペーストであり、塗布することにより異方性導電膜は上記の異方性導電フィルムと同様の効果を有している。
【0024】絶縁樹脂層7は、プリント配線板1a上に積層されており、この絶縁樹脂層7は、ガラスクロスなどにエポキシ樹脂などを含浸させて形成されたプリプレグからなる。また、絶縁樹脂層7は、半導体チップ4のスタッドバンプ5が形成されていない面に接する領域に、半導体チップ4の厚み方向における熱膨張係数が他の領域よりも高い高膨張部40を有する。この高膨張部40は、半導体チップ4の面積と略同じ面積を有している。また、高膨張部40は、たとえば、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂にフィラ(ガラス繊維)が含まれる材料等で形成されている。なお、高膨張部40は絶縁樹脂層7と一体化されている。」

エ.「【0046】次に、図4(d)に示すように、プリント配線板1aの配線11a側のチップ搭載部分に異方性導電膜6を形成する。異方性導電膜6の形成は、異方性導電ペーストをチップ搭載部分に塗布する、あるいは、チップ搭載部分に異方性導電フィルムを敷くことにより形成する。
【0047】次いで、複数のスタッドバンプ5が形成された半導体チップ4を用意する。スタッドバンプ5は、たとえば、ワイヤボンディング法を利用した公知の方法により形成した。すなわち、ワイヤボンディングマシンにおいて、ソフト的にキャピラリーの動きを通常とは変えて形成する。スタッドバンプ5の寸法は、直径が60μm、高さが50μmとした。また、半導体チップ4には、電子回路が形成された、厚さt_(2) が0.2mm程度のシリコンチップを用いた。
【0048】次に、図4(e)に示すように、一面にスタッドバンプ5が形成された半導体チップ4を、不図示のマウント治具によりスタッドバンプ5の形成面を下にして保持して位置合わせを行い、半導体チップ4を加圧・加熱しながら、プリント配線板1a上にマウントする。」

オ.上記ア.の「本発明は、例えば抵抗やコンデンサ等の電子部品が基板に実装されてなる電子回路装置であって」との記載及び上記ウ.の段落【0021】の「プリント配線板1aは、絶縁樹脂層8上に積層されており、このプリント配線板1aは、たとえば、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ材からなる基板10と、この基板10の両面に形成された、たとえば、銅からなる配線(11a,12a)とから構成されている。このプリント配線板1a上には、半導体チップ4がスタッドバンプ5および異方性導電膜6を介して実装されており、半導体チップ4の電子回路と配線11aが電気的に接続されている。」との記載並びに図1からみて、電子回路装置は、基板10と、前記基板10に対して積層状に位置する絶縁樹脂層7と、前記絶縁樹脂層7に埋設された半導体チップ4からなることが分かり、また、前記基板10と前記絶縁樹脂層7とに挟まれて、前記半導体チップ4用の実装用ランドを含む銅の配線11aが設けられることが分かる。

カ.上記ウ.の段落【0022】の「半導体チップ4は、ウェーハから切り出したままの、いわゆるベアチップの状態である。スタッドバンプ5は、半導体チップ4の下面に配列されており、たとえば、金線から形成されている。」との記載及び図4からみて、半導体チップ4はその下面にスタッドバンプ5が設けられる部位を有することが分かる。

キ.上記ウ.の段落【0021】の「銅からなる配線(11a,12a)とから構成されている。このプリント配線板1a上には、半導体チップ4がスタッドバンプ5および異方性導電膜6を介して実装されており、半導体チップ4の電子回路と配線11aが電気的に接続されている。」との記載、上記ウ.の段落【0023】の「異方性導電膜6は、たとえば、異方性導電フィルムあるいは異方性導電ペーストからなる。異方性導電フィルムとは、微細な導電ボールを絶縁性樹脂中に分散してフィルム上に加工したものであり、フィルムそのものは絶縁性であるが、この異方性導電フィルムを1対の電極で挟んで押しつぶすと、導電ボールが1対の電極に接触して、両電極間を導通させると同時に、両電極を固着することができるものである。異方性導電ペーストは、微細な導電ボールを絶縁性樹脂中に分散したペーストであり、塗布することにより異方性導電膜は上記の異方性導電フィルムと同様の効果を有している。」との記載及び図1及び上記カ.からみて、スタッドバンプ5が設けられる部位と該実装用ランドとを電気的に接続する導電ボールは、半導体チップ4の前記スタッドバンプ5が設けられる部位と配線11aの実装用ランドとの間に挟設されることが分かり、また、導電ボールと絶縁性樹脂とを有する異方性導電膜6が、半導体チップ4と基板10および実装用ランドとの間に設けられることが分かる。

上記記載事項及び認定事項並びに図示事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「基板10と、
前記基板10に対して積層状に位置する絶縁樹脂層7と、
前記絶縁樹脂層7に埋設された、スタッドバンプ5が設けられる部位を有する半導体チップ4と、
前記基板10と前記絶縁樹脂層7とに挟まれて設けられた、前記半導体チップ4用の実装用ランドを含む銅の配線11aと、
前記半導体チップ4の前記スタッドバンプ5が設けられる部位と前記配線11aの前記実装用ランドとの間に挟設された、該スタッドバンプ5が設けられる部位と該実装用ランドとを電気的に接続する導電ボールと、
前記半導体チップ4と前記基板10および前記実装用ランドとの間に設けられた、導電ボールと絶縁性樹脂とを有する異方性導電膜6と、を具備する
半導体チップを内蔵した電子回路装置。」

(2)刊行物2に記載された技術事項
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2004-260131号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「端子間の接続方法」に関して、図面(【図1】、【図2】及び【図12】(a)(b)参照。)と共に次の事項が記載されている。
サ.「【0001】
本発明は、半導体チップやディスクリート部品等の電子部品に設けられた電極等の端子を外部端子に接続するための端子間の接合方法、及び、該接合方法を用いた半導体装置の実装方法に関するものである。」

シ.「【0015】
このように、上記の方法を用いれば、導電性粒子を溶融させて、導電性粒子間及び、導電性粒子と端子との間に、金属結合等の化学的な結合を形成することができる。つまり、互いに対向する端子間は、化学的結合によって接続された状態となる。それゆえ、上記端子間の電気抵抗を金属接合と同等レベルにて得ることができるので、上記端子間の電気的接続が信頼性の高いものとなる。」

ス.「【0038】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置は、端子である回路電極(以下、ランドと記載する)11を有するシリコン等からなる基板(配線基板)10上に、導電性樹脂層1aを介して、半導体チップ20が実装されてなる。上記半導体装置の基板10上のランド11は、半導体チップ20上に設けられた電極パッド(端子)21に対応するようにパターニングされ、ランド11と電極パッド21とが対向している。なお、半導体チップ20表面に設けられた電極パッド21は、該半導体チップ20上に形成された図示しない集積回路を外部に接続するために設けられている。上記電極パッド21上には、半田や金等を用いてバンプを形成しておいてもよい。
【0039】
上記半導体装置では、図1に示すように、基板10上のランド11と半導体チップ20表面の電極パッド21とが、導電性樹脂層1aを介して、互いに電気的に接続されている。この導電性樹脂層1aは、絶縁性の硬化樹脂2aに導電物質3aが含まれてなり、導電性樹脂層1aに含まれる導電物質3aが、上記電極パッド21とランド11とを電気的に接続している。この導電物質3aは、詳細は後述するが、複数の導電性粒子3bが溶融して化学的に結合したものである。
【0040】
次に、上記半導体装置にて、基板10上のランド11と半導体チップ20上の電極パッド21とを接合する接合方法について、図2及び図3に基づいて、説明する。
【0041】
まず、電極パッド21が形成された半導体チップ20と、半導体チップ20表面の電極パッド21に対応するようにランド11がパターニングされた基板10とを用意する。上記電極パッド21表面や、ランド11表面は、後述する「ぬれ」た導電性粒子との接触を良好にするために、洗浄、研磨、メッキ、表面活性化等の処理を施しておいてもよい。そして、図2(a)に示すように、基板10又は基板10のランド11上に、樹脂(樹脂成分)2b中に導電性粒子3bが分散してなる導電性接着剤(異方性導電樹脂)1bを供給する。ここで、詳細は後述するが、上記導電性接着剤1bに含まれる樹脂2bは、導電性粒子3bの溶融温度(融点)で、硬化が完了せず、かつ導電性粒子の一部が流動可能な程度の粘度を有していることが好ましい。」

セ.「【0054】
このような導電性粒子3bとしては、具体的には、錫(Sn),インジウム(In),ビスマス(Bi),銀(Ag),銅(Cu),亜鉛(Zn),鉛(Pb),カドミウム(Cd),ガリウム(Ga),銀(Ag),タリウム(Tl)等の金属や、これらの金属からなる合金を挙げることができる。上記合金としては、例えば、Sn/48In,Sn/57Bi/1Ag,Sn/9Zn,Sn/8Zn/3Bi,Sn/3.5Ag(いずれも組成比)や、表1に示す金属や合金等を挙げることができる。なお、表1には、各金属及び各合金の融点もあわせて示している。」

ソ.「【0095】
これから分かるように、基板同士で挟まれる対向空間全体に充填した導電性接着剤1b(低融点金属フィラー含有樹脂)を加熱・加圧制御することにより、導電性接着剤1bの硬化後は、銅部分に金属粒子が凝集し、銅以外の箇所には樹脂のみが存在する。このようにして銅パッド間がSn/In合金により金属接合され、隣接する銅パッド間には樹脂材料で絶縁がとられるとともに、十分な接着強度が確保された接着接合が達成される。」

タ.上記ス.の段落【0039】の「上記半導体装置では、図1に示すように、基板10上のランド11と半導体チップ20表面の電極パッド21とが、導電性樹脂層1aを介して、互いに電気的に接続されている。この導電性樹脂層1aは、絶縁性の硬化樹脂2aに導電物質3aが含まれてなり、導電性樹脂層1aに含まれる導電物質3aが、上記電極パッド21とランド11とを電気的に接続している。この導電物質3aは、詳細は後述するが、複数の導電性粒子3bが溶融して化学的に結合したものである。」との記載、上記ス.の段落【0041】の「基板10又は基板10のランド11上に、樹脂(樹脂成分)2b中に導電性粒子3bが分散してなる導電性接着剤(異方性導電樹脂)1bを供給する。ここで、詳細は後述するが、上記導電性接着剤1bに含まれる樹脂2bは、導電性粒子3bの溶融温度(融点)で、硬化が完了せず、かつ導電性粒子の一部が流動可能な程度の粘度を有していることが好ましい。」との記載及び上記セ.の段落【0054】の「このような導電性粒子3bとしては、具体的には、錫(Sn),・・・等の金属や、これらの金属からなる合金を挙げることができる。上記合金としては、例えば、Sn/48In,・・・や、表1に示す金属や合金等を挙げることができる。」との記載並びに図2からみて、異方性導電樹脂1bは、Sn/48In合金からなる導電性粒子3bと樹脂2bとを有し、異方性導電樹脂1bが、半導体チップ20と配線パターンのランド11との間においては樹脂2b中に分散されたSn/48In合金からなる導電性粒子3bが溶融することによって、Sn/48In合金からなる導電物質3aに変化していることが分かり、また、Sn/48In合金からなる導電物質3aは、半導体チップ20の電極パッド21とランド11との間に挟設され、該電極パッド21とランド11とを電気的に接続することが分かる。

チ.上記シ.の「このように、上記の方法を用いれば、導電性粒子を溶融させて、導電性粒子間及び、導電性粒子と端子との間に、金属結合等の化学的な結合を形成することができる。つまり、互いに対向する端子間は、化学的結合によって接続された状態となる。それゆえ、上記端子間の電気抵抗を金属接合と同等レベルにて得ることができるので、上記端子間の電気的接続が信頼性の高いものとなる。」、上記ス.の段落【0039】の「導電性樹脂層1aに含まれる導電物質3aが、上記電極パッド21とランド11とを電気的に接続している。」、及び上記ソ.の「このようにして銅パッド間がSn/In合金により金属接合され、隣接する銅パッド間には樹脂材料で絶縁がとられるとともに、十分な接着強度が確保された接着接合が達成される。」との記載からみて、Sn/48In合金からなる導電物質3aのランド11の銅との接合部位が金属接合されていることが分かり、このSn/48In合金からなる導電物質3aのランド11の銅との金属接合される部位には、Cu-Snの金属間化合物が生成されていることは明らかである。

上記記載事項及び認定事項並びに図示事項を総合すると、刊行物2には、次の技術事項(以下、「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されている。

「配線板において、電気的接続をするための導電材がはんだ材であり、はんだ材が異方性導電性樹脂に分散されたSnを含有するはんだの粒子の溶融により生ずるものであり、はんだ材の実装用ランドの銅との接合部位にCu-Snの金属間化合物が生成されている技術。」

第4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「基板10」は本願発明における「第1の絶縁層」に相当し、以下同様に、「絶縁樹脂層7」は「第2の絶縁層」に、「スタッドバンプ5が設けられる部位」は「端子パッド」に、「半導体チップ4」は「半導体チップ」に、「配線11a」は「配線パターン」に、「絶縁性樹脂」は「樹脂」に、「異方性導電膜6」は「異方性導電性樹脂」に、「半導体チップを内蔵した電子回路装置」は「部品内蔵配線板」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「導電ボール」は、「導電材」という限りにおいて、本願発明における「はんだ材」に相当し、また、引用発明における「導電ボール」は、「導電粒子」という限りにおいて、本願発明における「Snを含有するはんだの粒子」に相当する。

そこで、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋設された、端子パッドを有する半導体チップと、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、前記半導体チップ用の実装用ランドを含む銅の配線パターンと、
前記半導体チップの前記端子パッドと前記配線パターンの前記実装用ランドとの間に挟設された、該端子パッドと該実装用ランドとを電気的に接続する導電材と、
前記半導体チップと前記第1の絶縁層および前記実装用ランドとの間に設けられた、導電粒子と樹脂とを有する異方性導電性樹脂と、を具備する
部品内蔵配線板。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明においては、異方性導電性樹脂に含まれる「導電材」及び「導電粒子」が「はんだ材」及び「Snを含有するはんだの粒子」であり、「異方性導電性樹脂が、半導体チップと第1の絶縁層との間においてはSnを含有するはんだの粒子が樹脂中に分散されたままで導電性が発現されておらず、前記半導体チップと実装用ランドとの間においては前記樹脂中に分散された前記はんだの粒子が溶融することによって前記はんだ材に変化しており、該はんだ材の前記実装用ランドの銅との接合部位にはCu-Snの金属間化合物が生成されている」のに対し、引用発明においては、「異方性導電膜6」に含まれる「導電材」及び「導電粒子」が「導電ボール」であって、「導電材」及び「導電粒子」が「はんだ材」及び「Snを含有するはんだの粒子」であるかどうかが明らかでなく、そのため、「異方性導電性樹脂が、半導体チップと第1の絶縁層との間においてはSnを含有するはんだの粒子が樹脂中に分散されたままで導電性が発現されておらず、前記半導体チップと実装用ランドとの間においては前記樹脂中に分散された前記はんだの粒子が溶融することによって前記はんだ材に変化しており、該はんだ材の前記実装用ランドの銅との接合部位にはCu-Snの金属間化合物が生成されている」かどうかが明らかでない点。

第5.当審の判断
[相違点]に対して
上記のとおり、刊行物2には、「配線板において、電気的接続をするための導電材がはんだ材であり、はんだ材が異方性導電性樹脂に分散されたSnを含有するはんだの粒子の溶融により生ずるものであり、はんだ材の実装用ランドの銅との接合部位にCu-Snの金属間化合物が生成されている技術。」が記載されている。

ここで、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項はいずれも異方性導電性樹脂を用いた半導体チップの実装という共通の技術分野に属するものであるから、引用発明における「異方導電膜6」における導電粒子及び導電材として、刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。

一方、異方性導電性樹脂を用いた半導体チップと基板の端子間を接続する場合において、異方性導電性樹脂の導電粒子として、Snを含有するはんだの粒子を使用すると、はんだの粒子が樹脂中に分散されたままで半導体チップと絶縁層との間においては導電性が発現されないようなものとなることは周知の事項(例えば、特開平11-176879号公報の段落【0035】及び【0037】並びに特開2006-114865号公報の段落【0039】及び【0065】等参照。)である。

してみれば、上記周知の事項からみて、引用発明における「異方導電膜6」における導電粒子及び導電材として、上記刊行物2に記載された技術事項を適用することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明を全体としてみても、本願発明の効果は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-12 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-02 
出願番号 特願2008-226624(P2008-226624)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森川 元嗣
中川 隆司
発明の名称 部品内蔵配線板、部品内蔵配線板の製造方法  
代理人 須山 佐一  

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