• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1303252
審判番号 不服2014-14454  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-24 
確定日 2015-07-17 
事件の表示 特願2009- 57409「コンバイン」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月24日出願公開、特開2010-209813〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成21年3月11日の出願であって、平成25年2月8日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月9日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成25年10月3日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成25年12月9日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成26年5月8日付けで平成25年12月9日付け手続補正書でした補正を却下する決定がされるとともに拒絶査定がされ、これに対して、平成26年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年7月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年7月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成26年7月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては,本件補正により補正される前の(すなわち,平成25年4月9日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1ないし3を下記の(2)に示す請求項1に補正するものである。

(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「【請求項1】
脱穀装置及びグレンタンクが横並び状に搭載された走行機体と、前記グレンタンク前側にある操縦部の下方に、エンジン出力軸を前記走行機体の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジンとを備えているコンバインであって、
前記エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記排気ガス浄化装置は、平面視で前記エンジン出力軸と交差する方向に長い形態で且つ前記操縦部の前記エンジンルーム内に収まるように前記エンジンの上方に配置しており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス取入れ側は、前記エンジンの排気マニホールドに連結しており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側は、前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けた状態で、固定脚体を介して前記エンジンのシリンダヘッドに連結している、
コンバイン。
【請求項2】
前記エンジンのうち前記走行機体の左右外側にある側部に、エンジン空冷用の冷却ファンが設けられており、平面視で前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側と前記冷却ファンとの間に、前記エンジンにおける吸気マニホールドの吸気入口部が位置している、
請求項1に記載したコンバイン。
【請求項3】
前記冷却ファンの上方には、前記吸気マニホールドに供給される外気をろ過するためのエアクリーナが配置されている、
請求項2に記載したコンバイン。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
脱穀装置及びグレンタンクが横並び状に搭載された走行機体と、前記グレンタンク前側にある操縦部の下方に、エンジン出力軸を前記走行機体の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジンとを備えているコンバインであって、
前記エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記排気ガス浄化装置は、平面視で前記エンジン出力軸と交差する方向に長い形態で且つ前記操縦部の下方にあるエンジンルーム内に収まるように前記エンジンの上方に配置しており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス取入れ側は、前記エンジンの排気マニホールドに連結しており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側は、前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けた状態で、固定脚体を介して前記エンジンのシリンダヘッドに連結して、前記排気ガス浄化装置を前記エンジンで支持しており、
前記エンジンルームのうち前記操縦部の左側にあるサイドコラムの下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス浄化装置と前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側に連結した排気系統とを直列に並ぶように位置させている、
コンバイン。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記操縦部の前記エンジンルーム」を「前記操縦部の下方にあるエンジンルーム」に限定する補正、及び、同じく「排気ガス浄化装置」について、「前記排気ガス浄化装置を前記エンジンで支持しており、
前記エンジンルームのうち前記操縦部の左側にあるサイドコラムの下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス浄化装置と前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側に連結した排気系統とを直列に並ぶように位置させている」という事項を追加して限定する補正を含んでいる。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件の判断
(1) 刊行物
ア 刊行物1
(ア) 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-48704号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0001】
本発明はコンバインに関し、より詳細には、コンバインの機体上部に配管された排気装置と排出オーガとの干渉を防止する技術に関する。」(段落【0001】)
b 「【0008】
すなわち、請求項1においては、刈取、脱穀、選別後の籾を貯留するグレンタンクと、上下方向と水平方向に回動自在に配置されて、前記グレンタンクより籾を排出する排出オーガと、一端が機体上に搭載されたエンジンに接続され、他端が脱穀部とグレンタンクとの間に延設される、排気サイレンサやテールパイプなどによって構成される排気装置と、を備えたコンバインであって、前記排気装置の上流側でエンジンの排気マニホールドと接続する排気サイレンサを、エンジンルームに内装し、該排気サイレンサに接続されるテールパイプを脱穀部に設けた支持具によって支持したものである。
【0009】
請求項2においては、前記テールパイプは、エンジンルームより脱穀部とグレンタンクとの間を上方に向けて延設し、テールパイプ先端の排出口をグレンタンクの上端近傍に配置したものである。
【0010】
請求項3においては、前記排気サイレンサの排出側に連通したマフラーパイプの先端に、外径を大きくしたテールパイプ側の基端部を外嵌接続して外気導入部を形成し、該外気導入部におけるテールパイプ側の基端部を斜めに開口したものである。」(段落【0008】ないし【0010】)
c 「【0015】
次に、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0016】
本発明に係るコンバイン11について、図を用いて説明する。図1はコンバイン11の全体側面図、図2はコンバイン11の正面図、図3はコンバイン11の平面図、図4は排気装置41の側面簡略図、図5は排気装置41の正面簡略図、図6は排気装置41の平面簡略図、図7は縦送りオーガ22と横送りオーガ23の接続部の側面簡略図、図8は図3におけるガード板90のP矢視図、図9はガード板90の側面図、図10はガード板90の平面図、図11はガード板90の断面図、図12は(a)従来の外気導入部71の平面図(b)上流側端部62を斜めに開口した場合の外気導入部71の平面図、図13は上流側端部62を段付に切り欠いた場合の外気導入部71の斜視図、図14は(a)上流側端部62をV字状に開口した場合の外気導入部の側面図(b)同正面図、図15は図6のP方向より見た排気装置41等の斜視図である。
【0017】
まずコンバイン11の全体構成について説明する。図1から図3に示すように、コンバイン11は、左右のクローラを支承してなるクローラ走行装置12上に機体(シャーシ)13が配設されており、この機体13の前部右側にエンジン34が搭載されている。機体13の前方にはエンジン34の駆動力を変速してクローラ走行装置12に伝達するミッションケース31が配設されており、ミッションケース31にはクローラ走行装置12の駆動輪の車軸が設けられている。また、機体13の前部には刈取部14、機体13の上部において走行方向の左側には選別部16が設けられ、選別部16の上部には扱胴及びフィードチェーン15a等を具備する脱穀部15が設けられている。機体13の上部の右側前部には座席19及びキャビン18が設けられており、機体13の右側後部にはグレンタンク17が設けられている。グレンタンク17の底部には排出コンベア26が前後方向に配設され、グレンタンク17の後部には排出オーガ21が立設されている。グレンタンク17に貯溜された穀粒は排出コンベア26により後方に搬送され、排出オーガ21の縦送りオーガ22、横送りオーガ23を経て、横送りオーガ23先端部の排出口24からトラック等へ排出される。また、機体13の上方には、テールパイプ61と排出オーガ21との干渉を防止するガード部材81が設けられている。そして、排出オーガ21の横送りオーガ23には、テールパイプ61の下流側端部63に接近する箇所にガード板90が取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、コンバイン11の機体13の前方のキャビン18の下方には前記エンジン34が搭載されており、このエンジン34はエンジンルーム32内に収容されている。エンジンルーム32は上面、前面、左右側面を覆うエンジンルームカバー(図示せず)により構成されており、後面はエンジンルーム後部フレーム33により構成されている。エンジンルーム32には、冷却用の外気を取り入れるための開部(図示せず)が右側方に設けられ、キャビン18の後下部からエンジン34にかけては、エアクリーナや吸気サイレンサ等を配設した吸気経路(図示せず)が形成される。
【0019】
次に排気装置41について説明する。図4に示すように、排気装置41はエンジン34の排気マニホールド36に接続され、燃焼後の排気ガスを排出し、燃焼に伴う排気音を低減させるものである。排気装置41は、排気サイレンサ42、テールパイプ61、外気導入部71を有している。
【0020】
前記排気サイレンサ42について説明すると、前記排気サイレンサ42は、エンジン34の排気マニホールド36に接続されて排気音を低減させるためのものである。図4に示すように、排気サイレンサ42は断面形状が略楕円の筒状体であり、一側部付近に排気ガス出口であるサイレンサ出口管43が設けられている。排気サイレンサ42はエンジンルーム32内に配置されており、エンジン34の上方において、冷却ファン35の排風が当たる位置に設けられている。排気サイレンサ42が冷却ファン35の排風が当たる位置に設けられているため、排気サイレンサ42が冷却されるとともに塵が溜まることも防止できる。また、図5に示すように、排気サイレンサ42は長手方向を機体13の左右方向に向け、かつ排気マニホールド36に対して機体13の左側方向にオフセットして配置されており、前記サイレンサ出口管43が機体13の進行方向左側となるように接続されている。
【0021】
次に前記テールパイプ61について説明する。前記テールパイプ61は、前記排気サイレンサ42の下流側に接続されてエンジン34からの排気ガスを排出するためのものである。テールパイプ61の全体形状は、図4から図6に示すように、排気サイレンサ42のサイレンサ出口管43に接続される部分である上流側端部62から機体13の後方に向けて延出し、次に、エンジンルーム後部フレーム33の貫通部の後方で機体13の上方に向けて屈曲しつつ、かつ機体13の左側に向けて延出し、次に、グレンタンク17と脱穀部15の間まで至ったところで再度機体13の後方に向けて水平方向に屈曲して後方へ延出し、本機(脱穀部15またはグレンタンク17)前後中央付近にテールパイプ61の下流側端部63を配置している。下流側端部63は、側面視で水平面に対して斜め上方に角度β(図4)屈曲し、かつ、平面視で前後方向に対して斜め左後方(フィードチェーン側)に角度α(図6)屈曲している。すなわち、排気ガスを下流側端部63(排気口)から機体13の上部で、横送りオーガ23と反対側の斜め左後上方へ排出するように配管されている。
また、前記テールパイプ61は、図15に示すように、最も高い位置にある下流側端部63の排出口の上端が、排出オーガ21の下端よりも低い位置となるように設けられている。このように構成することにより、作業終了(エンジン停止)直後に、雨よけ用シート100を機体全体に被せた場合であっても、雨よけシート100がテールパイプ61と接触することがなく、雨よけシート100を焦がすこともない。」(段落【0015】ないし【0021】)
d 「【0033】
次に、排気装置41の支持について説明する。図4から図6に示すように、テールパイプ61は、支持部材82・83を介して脱穀部15で支持されるようにしている。前述のように、排気装置41を機体13の上方に配管、支持させると、排気装置41に藁屑等が蓄積されにくくなる。また、テールパイプ61の脱穀部15での支持部では、テールパイプ61と脱穀部15との間隔を十分確保しており、テールパイプ61下部にハーネス、注油ホース等が配置されても、熱による影響を防ぐようにしている。
前記支持部材82はテールパイプの上下方向に延びる縦部61aを支持している。一方前記支持部材83はテールパイプの水平方向に延びる横部61bを支持している。複数箇所で支持することにより、より強固に脱穀部15で支持されることとなる。なお、本実施例では支持部材によって二箇所で支持しているが三箇所以上で支持する構成としてもよい。」(段落【0033】)
e 「【0046】
以上のように、本実施例のコンバイン11は、籾を貯留するグレンタンク17と、上下方向と水平方向に回動自在に配置されて、前記グレンタンク17より籾を排出する排出オーガ21と、一端が機体上に搭載されたエンジン34に接続され、他端が脱穀部15とグレンタンク17との間に延設される、排気サイレンサ42やテールパイプ61などによって構成される排気装置41と、を備えたコンバインであって、前記排気装置41の上流側でエンジン34の排気マニホールド36と接続する排気サイレンサ42を、エンジンルーム32に内装し、該排気サイレンサ42に接続されるテールパイプ61を脱穀部15に設けた支持具82・83によって支持したものである。このように構成することにより、ラジエタからの排風を導入することにより、テールパイプの表面温度を低下させる。また、マフラーパイプへの粉塵の堆積を防止する。また、振動の少ない脱穀部で支持するため、テールパイプの耐久性が向上し、組立性が向上する。また、テールパイプの耐久性があがるため、軽量な材質を使用することが可能となる。
【0047】
また、前記テールパイプ61は、エンジンルーム32より脱穀部15とグレンタンク17との間を上方に向けて延設し、テールパイプ61先端の排出口をグレンタンク17の上端近傍に配置したものである。このように構成することにより、車庫への格納時などテールパイプの先端が引っ掛かることがない。また、テールパイプを上方へ配置することにより、テールパイプの泥詰まりを防止する。また、テールパイプへの塵の堆積を抑制し、塵が堆積した場合においても目視確認が容易となる。
【0048】
また、前記排気サイレンサ42の排出側に連通したマフラーパイプ43の先端に、外径を大きくしたテールパイプ61側の基端部62を外嵌接続して外気導入部71を形成し、該外気導入部71におけるテールパイプ61側の基端部62を斜めに開口したものである。このように構成することにより、外気導入量を増加し、テールパイプの表面温度の低減を図る。また、ラジエタからの排風と対向する面の長さを長くでき、外気導入量を増加し、テールパイプの表面温度の低減を図る。また、新たに部材を加えることなくガイドを形成することが可能となる。」(段落【0046】ないし【0048】)

(イ) 上記(ア)の記載及び図面から分かること
上記(ア)c(段落【0020】、【0021】)及び図4ないし図6等の記載をみると、排気サイレンサ42はエンジンルーム32内のキャビン18の略左側の下方側に配置されている。また、排気サイレンサ42の排気ガス排出側に連結した排気系統は、サイレンサ出口管43に接続される部分である上流側端部62から機体13の後方に向けて延出し、次に、機体13の上方に向けて屈曲しつつ(縦部61a)、かつ機体13の左側に向けて延出し、次に、グレンタンク17と脱穀部15の間まで至ったところで再度機体13の後方に向けて水平方向に屈曲して後方へ延出し(横部61b)、本機前後中央付近にテールパイプ61の下流側端部63を配置している。そして、このような配置をなしている排気系統のうち少なくとも上流側端部62及び縦部61aは、排気サイレンサ42が位置するエンジンルーム32から脱穀部15とグレンタンク17との間に至る前後方向の空間に位置していることが看取できる。以上からすると、エンジンルーム32のうちキャビン18の略左側の下方側から脱穀部15とグレンタンク17との間に至る前後方向の空間に、排気サイレンサ42と排気サイレンサ42の排気ガス排出側に連結した排気系統の少なくとも上流側端部62及び縦部61aとを直列に並ぶように位置させていることが分かる。

(ウ) 刊行物1発明
上記(ア)、(イ)及び図面(特に図4ないし図6)の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
<刊行物1発明>
「脱穀部15及びグレンタンク17が横並び状に搭載された機体13と、前記グレンタンク17前側にあるキャビン18の下方に、エンジン出力軸を前記機体13の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジン34とを備えているコンバイン11であって、
前記エンジン34からの排気音を低減する排気サイレンサ42を備えており、前記排気サイレンサ42は、平面視で前記エンジン出力軸と略平行な方向に長い形態で且つ前記キャビン18の下方にあるエンジンルーム32内に収まるように前記エンジン34の上方に配置しており、前記排気サイレンサ42の排気ガス取入れ側は、前記エンジン34の排気マニホールド36に連結しており、前記排気サイレンサ42の排気ガス排出側は、前記脱穀部15と前記グレンタンク17との間に向けた状態で、前記排気サイレンサ42を前記エンジン34で支持しており、
前記エンジンルーム32のうち前記キャビン18の略左側の下方側から前記脱穀部15と前記グレンタンク17との間に至る前後方向の空間に、前記排気サイレンサ42と前記排気サイレンサ42の排気ガス排出側に連結した排気系統の少なくとも上流側端部62及び縦部61aとを直列に並ぶように位置させている、
コンバイン11。」

イ 刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-31955号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
この発明は、ディーゼルエンジンに関し、主として作業車両等に搭載するディーゼルエンジンの排気浄化装置の分野に属する。」(段落【0001】)
(イ) 「【0005】
請求項1の発明は、作業車両等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2において、このエンジン2に接続するマフラー3を該エンジン2の本体上方側に近接配置させると共に、該マフラー3に酸化触媒4とディーゼルパティキュレートフィルタ5を、又はディーゼルパティキュレートフィルタ5のみを内装して設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの構成とする。」(段落【0005】)
(ウ) 「【0011】
作業車両等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2におけるマフラー3を、該エンジン2の本体上方側に近接配置させると共に、このマフラー3に酸化触媒4とディーゼルパティキュレートフィルタ5を、又はディーゼルパティキュレートフィルタ5のみを内装して設ける。また、該マフラー3本体の外周近接位置を下部側を開放させたマフラーカバー6によって覆うと共に、このマフラーカバー6により、更にマフラー3本体から突出させたテールパイプ7の全長又は適宜長の外周近接位置をも覆うべく延設する。
【0012】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)に示す如く、作業車両としてのトラクタやコンバイン等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2は、多気筒形態でシリンダブロック8の上部にはシリンダヘッド9を、下部にはオイルパン10を配設すると共に、前部にはギヤケース11とラジエータファン12を、後部にはフライホイル13を各々配設させる。14はクランク軸である。
【0013】
該シリンダヘッド9に設けられた排気弁を通してシリンダブロック8内に連通の排気マニホールド15を介して、該エンジン2の本体上方側に近接位置するようマフラー3を配置接続すると共に、このマフラー3に酸化触媒4(以下DOCという)とディーゼルパティキュレートフィルタ5(以下DPFという)を各々内装して設ける。
【0014】
このような構成により、従来からの構成を踏襲しながら、該マフラー3本体が排気マニホールド15からの距離が近くなり、排気ガスの温度低下を抑制することができるため、DOC4による酸化活性温度を良好に保持して排気ガス中の窒素酸化物から二酸化窒素を生成することが可能となり、この二酸化窒素を酸化剤として、DPF5によって捕集された排気ガス中のカーボンを主成分とする粒子状物質(以下PMという)、及び一部の未燃焼物質(以下SOFという)等を連続的に燃焼させ除去することができる。」(段落【0011】ないし【0014】)

ウ 刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である 特開2003-239719号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンバイン等の作業機の排気装置に係るものである。」(段落【0001】)
(イ) 「【0006】
【実施例】本発明の実施例をコンバインの例にて図により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方位置に設けた走行装置、3は前記機体フレーム1の上方位置に設けた脱穀装置、4は前記機体フレーム1の前方位置に設けた刈取部、5は運転席、6はグレンタンク、7は前記脱穀装置3により脱穀された穀粒をグレンタンク6に供給する揚穀装置、8は前記脱穀装置3に設けた2番物戻し装置、9は前記グレンタンク6に設けた排出用揚穀装置、10は排出オーガ、11は前記運転席5の下方に設けたエンジン、12は燃料タンクである。前記機体フレーム1は、前後方向の前後フレーム15と左右方向の横フレーム16により構成され、機体フレーム1の下方には、前記前後フレーム15と平行の前記走行装置2の走行フレーム17を左右に所定間隔を有して設ける。前記走行フレーム17の外側面には前後に所定間隔を置いて転輪18を設け、該転輪18の外周にはクローラ19を掛け回す。20は駆動輪、21はアイドルローラである。
【0007】しかして、前記機体フレーム1と前記走行フレーム17との間には、圃場の左右傾斜に対して機体フレーム1を水平にするローリング機構を設ける。ローリング機構は左右対称状に構成しているので、以下同一符号で説明する。前記走行フレーム17の前部に前部横取付軸23を設け、前部横取付軸23には前側リンク機構の前側横アーム24の先部を軸着し、前側横アーム24の基部は左右方向の前側支持軸25に固定状態に取付ける。前側支持軸25は前記機体フレーム1側に設けた前側支持メタルに回転のみ自在に軸着する。前記前側支持軸25には、前側リンク機構の前側縦アーム26の基部を固定状態に取付ける。前記走行フレーム17の後部には後部横取付軸28を設け、後部横取付軸28には後側リンク機構の後側横アーム29の先部を軸着する。後側横アーム29の基部は左右方向の後側支持軸30に固定状態に取付ける。後側支持軸30は前記機体フレーム1側に設けた後側支持メタルに回転のみ自在に軸着する。後側支持軸30には後側リンク機構の後側縦アーム31の基部を固定する。
【0008】前記前側縦アーム26と前記後側縦アーム31の上部をその間の任意の位置で屈折する屈折リンク機構32により連結し、左右の屈折リンク機構32にはローリング用シリンダ33のロッド34の先端を取付ける。しかして、前記エンジン11の排気マニホールド36には排気管37の基部を接続し、排気管37の先端は前後方向に長くなるように配置したマフラー38の前側に接続する。マフラー38はエンジン11の出力軸に設けた出力プーリ39の上方に位置させるが、マフラー38の後端は後側に至るに従いエンジン11側に可及的に近づけ、平面視マフラー38が出力プーリ39に掛け回したベルト40の上方位置より離すようにしている。即ち、エンジン11の上部と干渉しない範囲でマフラー38を可及的にエンジン11に近づけてベルト40の上方位置より離すように構成する。マフラー38の後部下面にはテールパイプ42の基部を接続し、テールパイプ42は前記左右のローリング用シリンダ33の間に配置して後方に伸びるように配置し、テールパイプ42の終端は下方に傾斜させる。」(段落【0006】ないし【0008】)
(ウ) 「【0015】また、マフラー38の下部に出力プーリ39を配置できるため、全体を小型にし、また、マフラー38はベルト40(エンジン出力伝達手段)の上方位置より可及的に離すようにしているから、メンテナンスを容易にする。しかして、エンジン11は、機体進行方向横向きに配置し、エンジン11の外側側部にラジエーターファン50を設けているが、前記吸引装置43はエンジン11より後方に設けているので、ラジエーターファン50からの送風(エンジン11により熱くなっている)に影響されない。また、テールパイプ42は左右のローリング用シリンダ33の間に均等に間隔を開けていること、テールパイプ42は側面視においてローリング用シリンダ33と重合するように配置していることから、ローリング用シリンダ33のロッド34の伸縮によりテールパイプ42上に藁屑等が落下しても、堆積するのを防止する。
【0016】また、テールパイプ42は左右のローリング用シリンダ33の間に設け、取付空間を有効に確保しており、特にコンバインの場合、脱穀装置3とグレンタンク6との間の空間を有効利用し、また、テールパイプ42の地上高を高くできるために湿田走行性能を向上させ、また、テールパイプ42の終端を下方に下げているので、排気効率を良好にする。しかして、燃料タンク12に基部を接続したエアー抜きホース55の先端はエンジンルームの一部を構成する筒形状の横フレーム56内に開口させ、横フレーム56の端部は吸気カバー等により塵埃の侵入を防止しているから、燃料タンク12内の燃料をエンジン11に供給する際、燃料が減少すると、横フレーム56の端部より吸引する。したがって、吸引する空気は清浄であり、また、燃料タンク12より遥かに高位置に開口させているから、機体が傾斜しても、燃料が漏れることはない。」(段落【0015】及び【0016】)

エ 刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である 特開2003-120277号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に係り、詳しくは、内燃機関の排気通路に設けられるとともに、排気ガスを浄化する排気後処理装置を備えた内燃機関の排気ガス浄化装置に関する。」(段落【0001】)
(イ) 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したような排気ガス浄化装置では、締め付け部材で床や内燃機関上に取り付けようとすると、締め付け部材の締め付け力で板金製の円筒部材が変形する。そして、この変形量が大きい場合には、緩衝部材で吸収しきれず、排気後処理装置に大きな外力が加わることになる。排気後処理装置の担体は、ハニカム状に多数の小孔が軸方向に貫通した構造を有し、外力に対して比較的弱いため、このような場合には担体が損傷されるおそれがある。特に、建設機械等の車両では、設置スペースの問題から、エンジン上に排気浄化装置を取り付けることが多い。このような場合、建設機械稼働時におけるエンジン振動が直接的に排気浄化装置に伝わるため、より大きな締め付け力で排気ガス浄化装置をエンジンにしっかりと取り付ける必要があり、担体が損傷される可能性が大きい。」(段落【0006】)
(ウ) 「【0020】筒状部材20は、図3に示すように、略円筒状に形成されており、当該筒状部材20外周面の下部を受けるブラケット51を介して、ディーゼルエンジン2上に取り付けられている。ここで、筒状部材20は、ブラケット51にナット521で取り付けられる2つのUボルト52によって、両端部分がブラケット51側に締め付けられている。これにより、ディーゼルエンジン2稼働時においても、振動で排気ガス浄化装置1がディーゼルエンジン2から外れないようになっている。なお、ブラケット51およびUボルト52が、本発明に係る支持手段である。筒状部材20の内部には、排気後処理装置10が収容され、排気後処理装置10(担体11)の外周面および筒状部材20の内周面の間には、略全周に渡って緩衝部材60が介装されている。緩衝部材60は、排気後処理装置10および筒状部材20間の衝突をやわらげたり、筒状部材20の変形を吸収して排気後処理装置10に影響を及ぼさないようにするためのクッション材である。本実施形態では、緩衝部材60は、バーミキュライト、アルミナファイバ、シリカから形成され、図示しない有機バインダによって、排気後処理装置10の外周面に取り付けられている。なお、筒状部材20自体の詳細な構造については、後述する。
【0021】上流側管30は、図4に示すように、その一端が筒状部材20の上流側端部(排気ガス流入側端部)に接続され、他端が壁部30Aで閉ざされている。なお、上流側管30の一端には、筒状部材20と接続するためのフランジ30Bが形成されている。この上流側管30には、その軸方向と略直交して入口管31が設けられている。
【0022】入口管31は、開口している一端がディーゼルエンジン2の排気通路2Aに接続され、閉塞している他端が上流側管30内部に突出しており、一端と他端との間の部分で上流側管30に接続されている。入口管31の上流側管30内部に配置される部分には、全周に渡って無数の小孔31Aが形成されているとともに、その管内部に2枚の抵抗板311,312が入口管31の軸方向に間隔をあけて配置されている。抵抗板311,312には、それぞれ丸孔311A,312Aが形成されている。入口管31の他端に近い抵抗板311の丸孔311Aの径寸法は、抵抗板312の丸孔312Aの径寸法よりも小さく、各抵抗板311,312を通過する排気ガスの流量が適宜規制されるようになっている。このような構成を有する入口管31において、ディーゼルエンジン2の図示しないシリンダから排出される排気ガスが、排気通路2Aを介して流入すると、一端側から他端側に向かって流れようとするが、抵抗板311,312により、入口管31内での排気ガスの流れが適宜妨げられる。これにより、排気ガスが、入口管31の小孔31Aから略均一に上流側管30内に流出し、この後、均一化された状態で排気後処理装置10へ流入する。」(段落【0020】ないし【0022】)

オ 刊行物5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である 特開2000-297638号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、排気触媒コンテナを支持する支持構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】従来、図4に示すように、エキゾーストマニホールド2はその上端側をボルト3,3を介し内燃機関本体1に固定されており、エキゾーストマニホールド2の下端側には、排気ガスを浄化するための触媒コンテナ4がボルト等により連結されたものとなり、触媒コンテナ4は、内燃機関本体1に固定されて突出された保持ブラケット51に固定支持されている。このような従来構造において、内燃機関本体1の運転時には、高温の排気ガスにより前記エキゾーストマニホールド2が高温となり、エキゾーストマニホールド2は熱膨脹して延びようとするが、上下方向の延びが全て抑制された構造となっているため、エキゾーストマニホールドが膨脹した時に、特にポート部、即ちエキゾーストマニホールド2の上端の内燃機関本体1に対する固定部位に亀裂が発生する恐れがあるという問題点があった。」(段落【0001】及び【0002】)
(イ) 「【0005】次に、図3は変更例を示すものであり、図3では、L字状のブラケット8を用いて、ブラケット8の固定片8a側をボルト9により内燃機関本体1側に固定しておき、固定片8aから突出するブラケット8の取付片8bに、触媒コンテナ4を、ボルト5を介し、ナット6を締め付けて固定する際に、スライドブッシュ7が介在されるものであり、このような構造においても、エキゾーストマニホールド2の膨脹時の上下方向への延びを、良好にスライドブッシュ7で吸収させることができ、エキゾーストマニホールドのポート部等の亀裂の発生をなくすることができるものとなる。」(段落【0005】)

(2) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、
刊行物1発明における「脱穀部15」は本願補正発明における「脱穀装置」に相当し、以下同様に、「機体13」は「走行機体」に、「キャビン18」は「操縦部」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明における「エンジン34からの排気音を低減する排気サイレンサ42」と本願補正発明における「エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置」は、「エンジンからの排気を処置する排気ガス処置装置」という限りにおいて一致する。
刊行物1発明における「略平行な方向」と本願補正発明における「交差する方向」は、「所定の方向」という限りにおいて一致する。
刊行物1発明における「前記エンジンルーム32のうち前記キャビン18の略左側の下方側から前記脱穀部15と前記グレンタンク17との間に至る前後方向の空間に、前記排気サイレンサ42と前記排気サイレンサ42の排気ガス排出側に連結した排気系統の少なくとも上流側端部62及び縦部61aとを直列に並ぶように位置させている」と本願補正発明における「前記エンジンルームのうち前記操縦部の左側にあるサイドコラムの下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス浄化装置と前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側に連結した排気系統とを直列に並ぶように位置させている」は、「前記エンジンルームのうち前記操縦部の略左側の下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス浄化装置と前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側に連結した排気系統の少なくとも一部とを直列に並ぶように位置させている」という限りにおいて一致する。
したがって、本願補正発明の記載に倣って整理すると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「脱穀装置及びグレンタンクが横並び状に搭載された走行機体と、前記グレンタンク前側にある操縦部の下方に、エンジン出力軸を前記走行機体の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジンとを備えているコンバインであって、
前記エンジンからの排気を処置する排気ガス処置装置を備えており、前記排気ガス処置装置は、平面視で前記エンジン出力軸と所定の方向に長い形態で且つ前記操縦部の下方にあるエンジンルーム内に収まるように前記エンジンの上方に配置しており、前記排気ガス処置装置の排気ガス取入れ側は、前記エンジンの排気マニホールドに連結しており、前記排気ガス処置装置の排気ガス排出側は、前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けた状態で、前記排気ガス処置装置を前記エンジンで支持しており、
前記エンジンルームのうち前記操縦部の略左側の下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス処置装置と前記排気ガス処置装置の排気ガス排出側に連結した排気系統の少なくとも一部とを直列に並ぶように位置させている、
コンバイン。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、「エンジンからの排気を処置する排気ガス処置装置」が「エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置」であり、また、
「前記排気ガス浄化装置は、平面視で前記エンジン出力軸と交差する方向に長い形態で且つ前記操縦部の下方にあるエンジンルーム内に収まるように前記エンジンの上方に配置しており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス取入れ側は、前記エンジンの排気マニホールドに連結しており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側は、前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けた状態で、固定脚体を介して前記エンジンのシリンダヘッドに連結して、前記排気ガス浄化装置を前記エンジンで支持しており、
前記エンジンルームのうち前記操縦部の左側にあるサイドコラムの下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス浄化装置と前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側に連結した排気系統とを直列に並ぶように位置させている、」のに対し、
刊行物1発明においては、「エンジンからの排気を処置する排気ガス処置装置」が「エンジン34からの排気音を低減する排気サイレンサ42」であり、また、
「前記排気サイレンサ42は、平面視で前記エンジン出力軸と略平行な方向に長い形態で且つ前記キャビン18の下方にあるエンジンルーム32内に収まるように前記エンジン34の上方に配置しており、前記排気サイレンサ42の排気ガス取入れ側は、前記エンジン34の排気マニホールド36に連結しており、前記排気サイレンサ42の排気ガス排出側は、前記脱穀部15と前記グレンタンク17との間に向けた状態で、前記排気サイレンサ42を前記エンジン34で支持しており、
前記エンジンルーム32のうち前記キャビン18の略左側の下方側から前記脱穀部15と前記グレンタンク17との間に至る前後方向の空間に、前記排気サイレンサ42と前記排気サイレンサ42の排気ガス排出側に連結した排気系統の少なくとも上流側端部62及び縦部61aとを直列に並ぶように位置させている、」点(以下、「相違点」という。)。

上記<相違点>について検討する。
まず、刊行物2には、コンバイン等のエンジンルーム1に搭載格納したディーゼルエンジン2において、該エンジン2の本体上方側に近接配置させたマフラー3に、酸化触媒4とディーゼルパティキュレートフィルタ5を、又はディーゼルパティキュレートフィルタ5のみを内装して設けること(以下、「刊行物2技術」という。)が開示されている。そして、一般にコンバインに用いられるエンジンはディーゼルエンジンであるから、刊行物1発明においても、その排気系統にディーゼルパティキュレートフィルタ等を設けることが望ましいことはいうまでもなく、刊行物1発明における例えば排気サイレンサ42に刊行物2技術を適用して、ディーゼルパティキュレートフィルタ等を内装することは当業者が適宜なし得ることである。
このように排気サイレンサ42にディーゼルパティキュレートフィルタ等を内装した装置をどのように称するかは適宜の呼称の問題であり、また、例えばマフラ内にディーゼルパティキュレートフィルタ等を内装した装置を排気浄化装置と称することはごく普通であること(必要であれば、特開2002-54433号公報(特に、請求項1、段落【0001】及び【0010】)等参照。)からすると、上記のように、マフラと同等ないし類似の排気サイレンサ42にディーゼルパティキュレートフィルタ等を内装した装置を「排気浄化装置」や「排気ガス処置装置」等と称することに何ら支障はなく、この点において技術的に実質的な差異が存するものではない。

次に、刊行物1発明における排気サイレンサ42及び該排気サイレンサ42の排気ガス排出側に連結した排気系統の配置は、エンジンルーム32及び機体13等における他の装置・部品等の配置を考慮しつつ、スペースや空間部の有効活用の観点から適宜設計すべき事項である。実際、刊行物1の段落【0021】及び図4ないし図6等の記載をみると、排気系統のうち少なくとも上流側端部62及び縦部61aは、脱穀部15とグレンタンク17との間に至る前後方向の空間に位置していることが看取できることは、(1)ア(イ)に述べたとおりであるが、加えて、排気系統の横部61bも、概ね、平面視で脱穀部15とグレンタンク17との間に至る前後方向の空間に位置しているように描かれているとともに、下流側端部63が平面視で斜め左後方に屈曲していることは、本願の明細書中において説明されている実施の形態(特に、段落【0045】及び図6)においても概ね同様であり、したがって、そもそも排気系統全体について、刊行物1の実施形態は、本願の明細書中において説明されている実施の形態に相当に類似しているといえる。また、このような排気系統等に関して、刊行物3には、刊行物1発明と同じくコンバインに関して、マフラー38を、平面視でエンジン出力軸と交差する方向に長い形態に配置すること(以下、「刊行物3技術1」という。)、及びマフラー38に接続されるテールパイプ42は、左右のローリング用シリンダ33の間に設けて後方に伸びるように配置され、脱穀装置3とグレンタンク6との間の空間を有効利用すること(以下、「刊行物3技術2」という。)が開示されている。さらに、コンバイン等において、エンジンルーム32ないしキャビン18の略左側にサイドコラムを配置することは、刊行物3(特に、図1及び図12)からも推察できるようにごく普通のことであって、格別のことではない。以上をあわせ考えると、刊行物1発明に刊行物3技術1を適用して、排気サイレンサ42を平面視でエンジン出力軸と交差する方向に長い形態に配置し、また、刊行物1発明に刊行物3技術2を適用して、排気サイレンサ42及び排気系統を、前記エンジンルーム32のうち前記キャビン18の略左側にあるサイドコラムの下方側から前記脱穀部15と前記グレンタンク17との間に至る前後方向の空間に位置させることに格別の困難性はないといわざるを得ない。以上の道理は、上述したように排気サイレンサ42にディーゼルパティキュレートフィルタ等を内装した装置についても何ら異なるものではない。

さらに、刊行物4及び刊行物5にみられるように、ディーゼルエンジンの上方に設けられるディーゼルパティキュレートフィルタ、触媒等の排気ガス浄化装置をブラケット等の固定用脚体を介して該エンジンに取り付けないし支持することは、本願の出願日前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)である。そして、刊行物1発明における排気サイレンサ42に刊行物2技術を適用した上記装置は、刊行物1(特に、図5)、刊行物2(特に、図1)の記載からも了解されるように一般に比較的長尺の形状であるから、その安定的な支持等のために、周知技術を適用して、該装置の排気ガス排出側をブラケット等の固定用脚体を介してエンジンのシリンダヘッド等に連結することは適宜なし得ることである。

以上を総合すると、刊行物1発明に刊行物2技術、刊行物3技術1、刊行物3技術2及び周知技術を適用して、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術1、刊行物3技術2及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術1、刊行物3技術2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(3) むすび
請求項1における上記補正について以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成26年7月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成25年4月9日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲、並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本願の請求項1に記載した発明(以下、「本願発明」という。)の特許請求の範囲は、上記第2の[理由]の1(1)に記載したとおりである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物1ないし5には、図面とともに、上記第2の[理由]の3(1)に摘記したとおりの事項及び発明が記載されている。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]の2で検討した本願補正発明から、「前記操縦部の前記エンジンルーム」を限定する「下方にある」との発明特定事項及び「排気ガス浄化装置」を限定する「前記排気ガス浄化装置を前記エンジンで支持しており、
前記エンジンルームのうち前記操縦部の左側にあるサイドコラムの下方側から前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に至る前後方向の空間に、前記排気ガス浄化装置と前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側に連結した排気系統とを直列に並ぶように位置させている」との発明特定事項を省いたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2の[理由]の3に述べたとおり、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術1、刊行物3技術2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術1、刊行物3技術2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術1、刊行物3技術2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-24 
結審通知日 2015-03-25 
審決日 2015-06-01 
出願番号 特願2009-57409(P2009-57409)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 伊藤 元人
槙原 進
発明の名称 コンバイン  
代理人 渡辺 隆一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ