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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1303260
審判番号 不服2013-18906  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-30 
確定日 2015-07-15 
事件の表示 特願2008-556520「角度分解型のフーリエドメイン光干渉断層撮影法を遂行する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 7日国際公開、WO2007/101026、平成21年 7月30日国内公表、特表2009-527770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年2月21日(パリ条約による優先権主張2006年2月24日,米国(US))を国際出願日とする出願であって,平成24年5月10日付けで拒絶理由が通知され,同年11月12日付けで手続補正がなされ,平成25年5月16日付けで拒絶査定がなされ,同年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
さらに,当審から平成26年12月4日に求釈明がなされ,同年12月24日にファクシミリにより釈明がなされたものである。

第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1?19に係る発明は,平成24年11月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つの第1電磁波を受信し,且つ,立体角内の少なくとも1つの第2電磁波をサンプルに対して転送するべく構成された少なくとも1つの第1構成部であって,この場合に,前記少なくとも1つの第2電磁波は,前記少なくとも1つの第1電磁波と関連付けられており,この場合に,前記少なくとも1つの第1構成部は,前記少なくとも1つの第2電磁波と関連付けられた前記サンプルから複数の第3電磁波を受信するべく構成されており,且つ,この場合に,前記第3電磁波の少なくとも1つの部分は,前記立体角の外縁の外において提供されている,少なくとも1つの第1構成部と,
前記第3電磁波の各々と関連付けられた信号を同時に検出して組み合わせるべく構成された少なくとも1つの第2構成部であって,この場合に,前記信号は,前記サンプル内の複数の深さにおける少なくとも1つのサンプルの情報と関連付けられており,且つ,この場合に,前記少なくとも1つの第2構成部は,前記第3電磁波の中の前記少なくとも1つの部分を使用することにより,前記サンプル内の複数の深さを判定するべく構成されている,少なくとも1つの第2構成部とを有することを特徴とする装置。」(以下,「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
(1)本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「John W. Pyhtila and Adam Wax,"Rapid, depth-resolved light scattering measurements using Fourier domain, angle-resolved low coherence interferometry",PYHTILA,OPTICS EXPRESS,米国,OPTICAL SOCIETY OF AMERICA,2004年12月13日,V12 N25, pp. 6178-6183」(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1ーア)
「We present a novel angle-resolved low coherence interferometry scheme for rapid measurement of depth-resolved angular scattering distributions to enable determination of scatterer size via elastic scattering properties. Depth resolution is achieved using a superluminescent diode in a modified Mach-Zehnder interferometer with the mixed signal and reference fields dispersed by an imaging spectrograph. The spectrograph slit is located in a Fourier transform plane of the scattering sample, enabling angle-resolved measurements over a 0.21 radian range. The capabilities of the new technique are demonstrated by recording the distribution of light scattered by a sub-surface layer of polystyrene microspheres in 40 milliseconds. The data are used to determine the microsphere size with good accuracy. Future clinical application to measuring the size of cell nuclei in living epithelial tissues using backscattered light is discussed.」(Abstract)
「当審仮訳:我々は,弾性散乱特性を介して散乱体の大きさを決定できる,深度分解型の角度散乱分布を迅速に測定するための,新しい角度分解型低コヒーレント干渉法を提案する。
深度分解は,信号場と参照場が混合され,イメージング分光器によって分光される,改良マッハ-ゼンダー干渉計のスーパールミネッセントダイオードを用いて得られる。
イメージング分光器のスリットは,散乱サンプルのフーリエ変換面に位置し,0.21ラジアン以上の範囲の角度分解測定を可能にする。
新しい技術の可能性は40ミリ秒間のポリシリコン小球の表面下層からの散乱光の分布を記録することにより証明された。
そのデータは小球の大きさをすぐれた正確さで決定するために使用される。
反射散乱光を用いて生体上皮組織の細胞核の大きさを測定する今後の臨床適用が論じられる。」

(1ーイ)
「Angle-resolved low coherence interferometry (a/LCI) has been developed as a means to obtain sub-surface structural information by examining the angular distribution of scattered light [1?3].
・・・
This paper presents a new a/LCI technique, Fourier domain a/LCI (faLCI), which combines the Fourier domain concept with the use of an imaging spectrograph to record the angular distribution in parallel.
・・・
The capabilities of faLCI are demonstrated below by extracting the size of polystyrene beads in a depth-resolved measurement.」(1. Introduction)
「当審仮訳:角度分解型低コヒーレント干渉法 (a/LCI)は,散乱光の角度分配情報を調べることにより表面近くの分光情報を得る手段として発展してきた。
・・・
この論文は,新しいa/LCI技術,即ち,フーリエドメインa/LCI (faLCI)を説明する。それは,フーリエドメインの構想に,角度分配を並列に記録するイメージング分光器の使用を組み合わせる技術である。
・・・
faLCIの可能性は,以下に,深さ分解型測定の中からポリスチレンビーズの大きさを導き出すことで,論証する。」

(1ーウ)
「The faLCI scheme is based on a modified Mach-Zehnder interferometer (Fig. 1(a)). Broadband light from a superluminescent diode (Output Power=3 mW, λo=850 nm,Δλ=20 nm FWHM) is split into a reference beam and an input beam to the sample by beamsplitter BS1. The path length of the reference beam is set by adjusting retroreflector RR, but remains fixed during measurement. The reference beam is expanded using lenses L1 and L2 (f1=1.5 cm, f2=15 cm) to create illumination which is uniform and collimated upon reaching the spectrograph slit. Lenses L3 and L4 are arranged to produce a collimated pencil beam incident on the sample.By displacing lens L4 vertically relative to lens L3, the input beam is made to strike the sample at an angle of 0.10 radians relative to the optical axis. This arrangement allows the full angular aperture of L4 to be used to collect scattered light. The light scattered by the sample is collected by lens L4 (f4=3.5 cm) and relayed by a 4f imaging system (lenses L5 and L6) such that the Fourier plane of lens L4 is reproduced in phase and amplitude at the spectrograph slit.The scattered light is mixed with the reference field at BS2 with the combined fields falling upon the entrance slit to an imaging spectrograph (SP2150i, Acton Research). Fig. 1(b) shows the distribution of scattering angle across the dimension of the slit. The mixed fields are dispersed with a high resolution grating (1200 l/mm) and detected using a cooled CCD (1340 X 400, 20 μm X 20 μm pixels, Spec10:400, Princeton Instruments).」(2. Experimental scheme)
「当審仮訳: faLCI の構成は,改良マッハ-ゼンダー干渉計を基にしている(図1(a))。
スーパールミネッセントダイオード (出力=3 mW, λo=850 nm, Δλ=20 nm FWHM)からの広帯域の光は,ビームスプリッターBS1により分割され,参照光とサンプルへの入射光となる。
参照光の光路長は調節リトロリフレクターRRによって設定されるが,測定中は固定される。
参照光はレンズL1 と L2 (f1=1.5 cm, f2=15 cm)を用いて,イメージング分光器のスリットに到達する一様で平行な照明を作るように広げられる。
レンズ L3 と L4は,サンプルへの入射平行光束を作るように配置されている。
レンズL4をレンズ L3に対して垂直に移動することにより,光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光が作られる。
この配置は,L4の全角度口径が散乱光の収集に用いられることを許容する。
サンプルからの散乱光は,レンズ L4 (f4=3.5 cm)によって収集され,レンズ L4 のフーリエ変換面がイメージング分光器のスリットに位相と振幅を再現するように,4f 結像システム (レンズL5 と L6)によって伝えられる。
散乱光は,BS2で参照場と混合され,混合場となり,イメージング分光器(SP2150i, Acton Research)の入口スリットに入射する。
図 1(b)はスリットの次元を横切る散乱角の分布を示している。
混合場は高い分解能の格子 (1200 l/mm)によって分光され,冷却されたCCD (1340 X 400, 20 μm X 20 μm pixels, Spec10:400, Princeton Instruments)によって検出される。」

(1ーエ)
「・・・The data are ensemble averaged by integrating over one mean free path (MFP). As shown previously [2], a spatial average can enable a reduction of speckle when using low-coherence light to probe a scattering sample. 」(4. Results)「当審仮訳: ・・・データは,一つのMFPにわたり,集約されることにより平均される。 前述[2]のように,空間平均は,低コヒーレント光を用いて分散サンプルを調べる場合に,スペックルの低減を可能とする。」

(1-オ)
Fig.1



ア (1-ウ)には,「散乱光は,BS2で参照場と混合し,混合場となり,イメージング分光器(SP2150i, Acton Research)の入口スリットに入射する」との記載があるが,光学の分野においては,散乱光が,参照場と混合したものを「干渉光」と呼ぶことが慣用されているので「混合場」を「干渉光」と読み換える。

上記(1ーア)?(1ーオ)の記載及び当業者の技術常識から,上記刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「スーパールミネッセントダイオードからの広帯域の光は,ビームスプリッターBS1により分割され,参照光とサンプルへの入射光となり,
参照光の光路長は調節リトロリフレクターRRによって設定されるが,測定中は固定され,参照光はレンズL1 と L2 を用いて,イメージング分光器のスリットに到達する一様で平行な照明を作るように広げられ,
レンズ L3 と L4は,サンプルへの入射平行光束を作るように配置されており,
レンズL4をレンズ L3に対して垂直に移動することにより,光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光が作られ,
この配置は,L4の全角度口径が散乱光の収集に用いられることを許容し,
サンプルからの散乱光は,レンズ L4 によって収集され,レンズ L4 のフーリエ変換面がイメージング分光器の0.21ラジアン以上の範囲の角度分解測定を可能にするように,4f 結像システム (レンズL5 と L6)によって伝えられ,
サンプルからの散乱光は,BS2で参照場と混合され干渉光となり,イメージング分光器の入口スリットに入射し,
干渉光は高い分解能の格子によって分光され,CCD によって検出され,空間平均される,分光することによって深度分解が得られる改良マッハ-ゼンダー干渉計を基にしているフーリエドメイン角度分解型低コヒーレント干渉装置。」(以下,「引用発明」という。)

3 求釈明と釈明事項の概要
(1)求釈明事項
特許請求の範囲の記載に用いられた用語と,明細書で説明に用いられた用語が対応していないので,特許請求の範囲の記載に用いられた用語と,明細書で説明に用いられた用語との対応関係と,特許請求の範囲で用いられた用語の明細書での記載箇所の説明を,当審は,請求人に求めた。

(2)釈明事項
請求人は,請求項1について,次のように釈明した。
ア 請求項記載の用語と明細書記載の用語との対応関係として,段落0032を参照しつつ,次の(ア)?(オ)の対応関係を示した。
(ア)請求項1の「第1電磁波」が,明細書の「(サンプル・アーム・コリメータ730から)コリメートされた光」に対応する。
(イ)請求項1の「第2電磁波」が明細書の「撮像オプティクスに入射する光」に対応する。
(ウ)請求項1の「第3電磁波」が明細書の「サンプル780から反射された光」に対応する。
(エ)請求項1の「第1構成部」が明細書の「光カプラ710,ビームスプリッタ750,撮像オプティクス」に対応する。
(オ)請求項1の「第2構成部」が明細書の「ライン走査カメラ765」に対応する。

イ 請求項記載の構成に対応する明細書の記載として,次の(ア)?(キ)を釈明した。
(ア)請求項1の「少なくとも1つの第1電磁波を受信し,且つ,」に対する,明細書の対応記載箇所は「段落0032,11-13行」である。
(イ)請求項1の「立体角内の少なくとも1つの第2電磁波をサンプルに対して転送するべく」に対する,明細書の対応記載箇所は「段落0032,13-15行」である。
(ウ)請求項1の「構成された少なくとも1つの第1構成部であって,」に対する,明細書の対応記載箇所は「750,770,775」である。
(エ)請求項1の「この場合に,前記少なくとも1つの第2電磁波は,前記少なくとも1つの第1電磁波と関連付けられており,」に対する,明細書の対応記載箇所は「段落0032,11-15行」である。
(オ)請求項1の「この場合に,前記少なくとも1つの第1構成部は,前記少なくとも1つの第2電磁波と関連付けられた前記サンプルから複数の第3電磁波を受信するべく構成されており,且つ,この場合に,前記第3電磁波の少なくとも1つの部分は,前記立体角の外縁の外において提供されている,」に対する,明細書の対応記載箇所は「段落0012,4-6行,段落0033,6-9行,図7,要素780」である。
(カ)請求項1の「前記第3電磁波の各々と関連付けられた信号を同時に検出して組み合わせるべく構成された少なくとも1つの第2構成部であって,」に対する,明細書の対応記載箇所は「要素765,段落0034,段落0033,9-10行」である。
(キ)請求項1の「この場合に,前記信号は,前記サンプル内の複数の深さにおける少なくとも1つのサンプルの情報と関連付けられており,且つ,この場合に,前記少なくとも1つの第2構成部は,前記第3電磁波の中の前記少なくとも1つの部分を使用することにより,前記サンプル内の複数の深さを判定するべく構成されている,少なくとも1つの第2構成部と」に対する,明細書の対応記載箇所は「段落0029,2-4行,段落0036,9-11行,段落0037,8-16行」である。

4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「スーパールミネッセントダイオードからの広帯域の光」は,「ビームスプリッターBS1により分割され」「レンズ L3 と L4は,サンプルへの入射平行光束を作るように配置されており,レンズL4をレンズ L3に対して垂直に移動することにより,光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光が作られ」るのであるから,レンズL4から出てサンプルに入射する「光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光」は,光軸に対称に0.10ラジアンの範囲からサンプルに入射することは明らかであるから,レンズL4を通して転送され光軸に対して特定の立体角内でサンプルを照射する入射光である。
そうすると,引用発明の「光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光」は,本願発明の「立体角内の少なくとも1つの第2電磁波」に相当する。
そして,「光軸に対して0.10ラジアンの角度で」「サンプル」を照射する「入射光」は「レンズ L3」から「レンズL4」に入射する,すなわち「レンズL4」が受信する光束から「レンズL4」で形成されることは自明である。
すると,引用発明の「レンズ L3」から「レンズL4」に入射する光束が,本願発明の「第1電磁波」に相当し,引用発明の「レンズL4」は,本願発明の「少なくとも1つの第1電磁波を受信」する「第1構成部」に相当し,かつ,本願発明の「立体角内の少なくとも1つの第2電磁波をサンプルに対して転送するべく構成された少なくとも1つの第1構成部」に相当する。

イ 上記アで論じたように引用発明の「光軸に対して0.10ラジアンの角度で」「サンプル」を照射する「入射光」は「レンズ L3」から「レンズL4」に入射する光束から「レンズL4」で形成されるのであるから,引用発明の「レンズ L3」から「レンズL4」に入射する光束は,「光軸に対して0.10ラジアンの角度で」「サンプル」を照射する「入射光」に関連づけられているといえる。
そして,上記アより,引用発明の「レンズ L3」から「レンズL4」に入射する光束は,本願発明の「第1電磁波」に相当し,「光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光」は,本願発明の「立体角内の第2電磁波」に相当する。
そうすると,引用発明の「レンズ L3」から「レンズL4」に入射する光束が,「光軸に対して0.10ラジアンの角度で」「サンプル」を照射する「入射光」に関連づけられているとことは,本願発明の「前記少なくとも1つの第2電磁波は,前記少なくとも1つの第1電磁波と関連付けられて」いることに相当する。

ウ 引用発明の「レンズ L4」は,上記アより,本願発明の「第1構成部」に相当する。
また,上記アより,引用発明の「光軸に対して0.10ラジアンの角度でサンプルを照射する入射光」は,本願発明の「立体角内の少なくとも1つの第2電磁波」に相当するので,引用発明の「サンプルを照射する入射光」は,本願発明の「少なくとも1つの第2電磁波」に相当する。
さらに,引用発明は「スーパールミネッセントダイオードからの広帯域の光は,ビームスプリッターBS1により分割され,参照光とサンプルへの入射光となり,」「サンプルからの散乱光は,BS2で参照場と混合し干渉光となり,イメージング分光器の入口スリットに入射し,
干渉光は高い分解能の格子によって分光され」るのであるから,引用発明の「サンプルからの散乱光」は広帯域であり,「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光」であるといえる。
そうすると,引用発明の「サンプルからの散乱光」が,本願発明の「サンプルから複数の第3電磁波」に相当する。
つまり,引用発明の「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光」が,本願発明の「サンプルから複数の第3電磁波」に相当するので,引用発明が内在する「サンプルからのある波長の散乱光」が,本願発明の「第3電磁波」に相当する。
さらに,引用発明の「サンプルからの散乱光」は,「サンプルを照射する入射光」が元になっているので,引用発明の「サンプルからの散乱光」は,「サンプルを照射する入射光」に関連づけられているといえる。
以上より,引用発明の「レンズ L4」によって「サンプルを照射する入射光」に関連づけられている「サンプルからの散乱光」を収集することは,本願発明の「少なくとも1つの第1構成部は,前記少なくとも1つの第2電磁波と関連付けられた前記サンプルから複数の第3電磁波を受信するべく構成されて」いることに相当する。

エ 引用発明は,「サンプルからの散乱光は,レンズ L4 によって収集され,レンズ L4 のフーリエ変換面がイメージング分光器の0.21ラジアン以上の範囲の角度分解測定を可能にするスリットに位相と振幅を再現する」のであるから,「サンプルからの散乱光」は,0.21ラジアン以上の範囲の散乱角を有しているといえ,さらに,「サンプルからの散乱光」は,0.21ラジアン以上に対応する特定の立体角を有しているといえる。
そして,サンプルからの散乱光の0.21ラジアン以上の角度は,入射光の0.10ラジアンの角度より広い角度であるから,サンプルからの散乱光の0.21ラジアン以上の角度に対応する立体角も,入射光の0.10ラジアンの角度に対応する立体角よりも広いものといえるから,引用発明の「レンズ L4 によって収集される」「サンプルからの散乱光」は,「サンプルを照射する入射光」の立体角の外縁の外においても提供されているといえる。
さらに,引用発明の「レンズ L4」は,上記アより,本願発明の「第1構成部」に相当する。
そうすると,引用発明の「レンズ L4 によって収集される」「サンプルからの散乱光」が,「サンプルを照射する入射光」の立体角の外縁の外においても提供されているように構成された「レンズ L4 」は,本願発明の「前記第3電磁波の少なくとも1つの部分は,前記立体角の外縁の外において提供されている,少なくとも1つの第1構成部」に相当する。

オ 引用発明の「サンプルからの散乱光は,BS2で参照場と混合され干渉光となり,イメージング分光器の入口スリットに入射し,
干渉光は高い分解能の格子によって分光され,CCD によって検出され,空間平均される」のであるから,引用発明の「イメージング分光器」のCCDはサンプルからの散乱光の干渉光を検出し,空間平均するものであるが,空間平均するとは「干渉光」を「組み合わせる」ことであり,その結果,スペックルを有する画像においては,スペックルが低減されることは自明である。
また,上記ウより,引用発明の内在する「サンプルからのある波長の散乱光」は,本願発明の「第3電磁波」に相当する。
そうすると,引用発明の「イメージング分光器」は,本願発明の「第3電磁波」に相当する「サンプルからのある波長の散乱光」を入力し,検出し,「組み合わせる」ものであるから,本願発明の「第2構成部」に相当するといえる。

カ 引用発明は「スーパールミネッセントダイオードからの広帯域の光は,ビームスプリッターBS1により分割され,参照光とサンプルへの入射光となり,」「サンプルからの散乱光は,BS2で参照場と混合し干渉光となり,イメージング分光器の入口スリットに入射し,
干渉光は高い分解能の格子によって分光され,CCD によって検出され,空間平均される」もので,「分光することによって深度分解が得られる」ものである
そうすると,引用発明の「サンプルからの散乱光の干渉光」は「広帯域」であり,「イメージング分光器」のCCD によって「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」として「同時に」検出される。
また,サンプルの異なる深度からの「散乱光の干渉光」が,波長の異なる「散乱光の干渉光」に対応することはフーリエドメインの技術常識である。
つまり,「イメージング分光器」のCCD によって検出された「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」は,サンプル内の「複数の」深さにおけるサンプルの情報と関連づけられているといえる。
さらに,引用発明の内在する「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」「がCCDで検出されたもの」は,本願発明の「第3電磁波」「と関連付けられた信号」に相当するので,引用発明の内在する「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」「がCCDで検出されたもの」は,本願発明の「第3電磁波の各々と関連付けられた信号」に相当する。
また,引用発明の 「CCD によって検出され」る「干渉光」は,「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」が「組み合わされたもの」といえる。
すなわち,引用発明の「イメージング分光器」は ,「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」を「同時に検出して組み合わせる」ものである。
そうすると,引用発明の「イメージング分光器」は,上記オより,本願発明の「第2構成部」に対応するのであるから,
引用発明の「複数の」「波長の異なる」「サンプルからのある波長の散乱光の干渉光」を「同時に検出して組み合わせる」「イメージング分光器」と,
本願発明の「前記第3電磁波の各々と関連付けられた信号を同時に検出して組み合わせるべく構成された少なくとも1つの第2構成部であって,この場合に,前記信号は,前記サンプル内の複数の深さにおける少なくとも1つのサンプルの情報と関連付けられており,且つ,この場合に,前記少なくとも1つの第2構成部は,前記第3電磁波の中の前記少なくとも1つの部分を使用することにより,前記サンプル内の複数の深さを判定するべく構成されている,少なくとも1つの第2構成部」
とは
「前記第3電磁波の各々と関連付けられた信号を同時に検出して組み合わせるべく構成された少なくとも1つの第2構成部であって,この場合に,前記信号は,前記サンプル内の複数の深さにおける少なくとも1つのサンプルの情報と関連付けられており,且つ,この場合に,前記少なくとも1つの第2構成部は,前記第3電磁波を使用することにより,前記サンプル内の複数の深さを判定するべく構成されている, 少なくとも1つの第2構成部」の点で共通する。

キ 請求人が「3(2)ア」で示した請求項記載の用語と明細書記載の用語との対応関係を検証する。
「3(2)ア(ア)」と「3(2)ア(エ)」とは,「第1電磁波」を「第1構成部」が受信するのであるから,(サンプル・アーム・コリメータ730から)コリメートされた光を,サンプル・アーム・コリメータ730より,光源側にある「光カプラ710」が受信するものも含むので,「第1構成部」に明細書の「光カプラ710」が含まれるとの釈明は明らかな誤りである。
また,「3(2)ア(イ)」の請求項1の「第2電磁波」が明細書の「撮像オプティクスに入射する光」に対応するとの記載も,「第1構成部」は,「第2電磁波をサンプルに対して転送するべく構成され」ており,「前記少なくとも1つの第2電磁波と関連付けられた前記サンプルから複数の第3電磁波を受信するべく構成されて」いるのであるから,「第2電磁波」は「第1構成部」からサンプルに出射する光であるので,請求項1の「第2電磁波」が明細書の「撮像オプティクスに入射する光」に対応するとの記載は明らかな誤りである。

ク 請求人が「3(2)イ」で示した請求項記載の構成に対応する明細書の記載を検証する。
「3(2)イ(カ)」の請求項1の「前記第3電磁波の各々と関連付けられた信号を同時に検出して組み合わせるべく構成された少なくとも1つの第2構成部であって,」に対する,明細書の対応記載箇所は「要素765,段落0034,段落0033,9-10行」であるとの釈明は,上記カで検討しているとおりであるが,対応する明細書の記載どおりに限定解釈する理由はない。
なお,請求人は審判請求書の請求の理由において,上記釈明とは異なる段落0024を根拠とした主張を行っているが,これについても,段落0024に記載されたとおりに本願発明を限定して解釈する理由はない。

上記キ,クを勘案すれば,上記ア?カでの検討は,請求人により釈明された内容に沿ったものである。

そうすると,本願発明と引用発明とは,
「少なくとも1つの第1電磁波を受信し,且つ,立体角内の少なくとも1つの第2電磁波をサンプルに対して転送するべく構成された少なくとも1つの第1構成部であって,この場合に,前記少なくとも1つの第2電磁波は,前記少なくとも1つの第1電磁波と関連付けられており,この場合に,前記少なくとも1つの第1構成部は,前記少なくとも1つの第2電磁波と関連付けられた前記サンプルから複数の第3電磁波を受信するべく構成されており,且つ,この場合に,前記第3電磁波の少なくとも1つの部分は,前記立体角の外縁の外において提供されている,少なくとも1つの第1構成部と,
前記第3電磁波の各々と関連付けられた信号を同時に検出して組み合わせるべく構成された少なくとも1つの第2構成部であって,この場合に,前記信号は,前記サンプル内の複数の深さにおける少なくとも1つのサンプルの情報と関連付けられており,且つ,この場合に,前記少なくとも1つの第2構成部は,前記第3電磁波を使用することにより,前記サンプル内の複数の深さを判定するべく構成されている,少なくとも1つの第2構成部とを有することを特徴とする装置」で一致し,次の点で相違している。

(相違点)
サンプル内の深さを判定するために用いる第3電磁波について,本願発明では,第2電磁波を制限した立体角の外縁の外において提供されている第3電磁波の「少なくとも1つの部分」であるのに対して,引用発明では,特に限定していない点。

(1)相違点についての検討
サンプル内の深さを判定するために用いるサンプルからの第3電磁波については,その波長によって,深さが決められるのであるから,サンプルからの散乱光があれば どの散乱角でも深さが判定可能であることは自明である。
そうすると,サンプル内の深さを判定するために用いる第3電磁波について,第2電磁波を制限した立体角の外縁の外において提供されている第3電磁波の「少なくとも1つの部分」を採用することに格別な困難性もない。
したがって,引用発明のサンプル内の深さを判定するために用いる第3電磁波を,相違点における本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものといえる。

(2)そして,本願発明の効果も,引用発明および周知の技術事項から,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものといえない。

(3)したがって,本願発明は,引用発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-16 
結審通知日 2015-02-17 
審決日 2015-03-02 
出願番号 特願2008-556520(P2008-556520)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 右▲高▼ 孝幸
信田 昌男
発明の名称 角度分解型のフーリエドメイン光干渉断層撮影法を遂行する方法及びシステム  
代理人 森 啓  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  
代理人 河合 章  

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