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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1303342
審判番号 不服2013-23970  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-05 
確定日 2015-07-15 
事件の表示 特願2011- 4095「発光素子チップ、発光素子パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日出願公開、特開2011-146707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)1月12日(パリ条約による優先権主張、2010年(平成22年)1月14日 韓国)を出願日とする出願であって、平成24年9月14日付けの拒絶理由の通知に対し、平成25年1月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月5日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、当審における平成26年10月10日付けの拒絶理由の通知に対して、平成27年1月14日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年1月14日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「第1導電型半導体層、第2導電型半導体層、及び上記第1導電型半導体層と上記第2導電型半導体層との間に活性層を含む発光構造物と、
前記発光構造物の上に透光性層と、
前記透光性層の上に蛍光体層と、を含み、
前記蛍光体層はパターンを含み、
前記蛍光体層のパターンは前記透光性層の一部を露出させ、
前記透光性層の底面は前記発光構造物の上面と接し、
前記透光性層は蛍光体層より熱伝導度が低く、透光性が高いことを特徴とする、発光素子チップ。」

3 引用例の記載事項
(1)引用例1
ア 当審において拒絶の理由で引用し、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2007-109948号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに以下の記載がある(下線は当審で引いた。以下同じ。)。
(ア)「【特許請求の範囲】」、
「素子搭載基板と、
前記素子搭載基板にアンダーフィルを介して搭載された発光素子と、
前記発光素子を封止する光透過性部材からなる封止部材と、
前記封止部材を覆う蛍光体層とを備えたことを特徴とする発光装置。」(請求項1)、
「前記素子搭載基板はサブマウントである請求項1に記載の発光装置。」(請求項2)、
「前記発光素子は発光ダイオード素子からなる請求項1又は2に記載の発光装置。」(請求項3)
(イ)「【背景技術】」、
「周知のように、単一の発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)素子から発せられる光と、この光で蛍光体が励起されて発する波長変換光との混合により白色光を得ることができる発光装置が実用化されている。」(段落【0002】)、
「従来、この種の発光装置には、素子搭載基板にバンプを介して実装されたLED素子と、このLED素子を封止する蛍光体含有の封止部材とを備えたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。」(段落【0003】)、
「このような発光装置においては、LED素子として青色光を発する青色LED素子であり、また蛍光体として青色光で励起されて黄色光を発する蛍光体であると、LED素子から発せられる青色の励起光と蛍光体から発せられる黄色の波長変換光との混合により白色光が得られる。」(段落【0004】)
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】」、
「しかし、特許文献1によると、LED素子が蛍光体含有の封止部材によって封止されているため、LED素子から発せられる光が蛍光体含有の封止部材内に入射した後に蛍光体で反射され易く、その一部の光がLED素子に戻って吸収されていた。このため、光吸収損失が生じ、光取出効率が低下するという問題があった。」(段落【0005】)、
「また、特許文献1に示す発光装置においては、素子封止時にLED素子と素子搭載基板との間に形成された空隙に封止部材が入り込まず、気泡が残存する虞がある。このため、素子封止後(封止部材の熱硬化時)に気泡の熱膨張によってバンプが外れ、品質上の信頼性が低下するという問題もあった。」(段落【0006】)、
「従って、本発明の目的は、光取出効率及び品質上の信頼性を高めることができる発光装置及びその製造方法を提供することにある。」(段落【0007】)
(エ)「【課題を解決するための手段】」、
「(1)本発明は、上記目的を達成するために、素子搭載基板と、前記素子搭載基板にアンダーフィルを介して搭載された発光素子と、前記発光素子を封止する光透過性部材からなる封止部材と、前記封止部材を覆う蛍光体層とを備えたことを特徴とする発光装置を提供する。」(段落【0008】)
(オ)「【発明の効果】」、
「本発明によると、光取出効率及び品質上の信頼性を高めることができる。」(段落【0010】)
(カ)「【発明を実施するための最良の形態】」、
「[実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を説明するために示す図である。」(段落【0011】)、
「〔発光装置1の全体構成〕
図1において、発光装置1は、ベースとしての素子搭載基板6と、この素子搭載基板6に搭載されたLED素子31と、このLED素子31を封止する封止部材8と、この封止部材8を覆う蛍光体層9とから大略構成されている。」(段落【0012】)、
「(素子搭載基板6の構成)
素子搭載基板6は、Al_(2)O_(3)のセラミックス材料からなる薄板部材によって形成されている。素子搭載基板6の材料としては、Al_(2)O_(3)の他に、シリコン(Si)や窒化アルミニウム(AlN)あるいは樹脂が用いられる。素子搭載基板6の光取出側面(表面)及び側面・裏面には、LED素子3の両電極にそれぞれ金(Au)からなるバンプ12,13を介して接続する電源供給用の配線パターン14,15が設けられている。配線パターン14,15は、例えばタングステン(W),モリブデン(Mo),ニッケル(Ni),アルミニウム(Al),白金(Pt),チタン(Ti),Au,銀(Ag),銅(Cu)等の単層又は積層あるいは半田材料によって形成されている。」(段落【0013】)、
「(LED素子31の構成)
LED素子31は、p側電極及びn側電極を有するフリップチップ型の青色LED素子からなり、素子搭載基板6に搭載され、かつ封止部材8によって封止されている。LED素子31は、サファイア(Al_(2)O_(3))基板上にAlNからなるバッファ層(図示せず)及びn型半導体(n-GaN)層・発光層・p型半導体(p-GaN)層を順次結晶成長させることにより形成されている。LED素子31の平面縦横寸法は、例えば縦寸法及び横寸法をそれぞれ約1mmとする平面サイズに設定されている。LED素子31と素子搭載基板6との間に形成される空隙には、AlN等の熱伝導(放熱)性部材からなるアンダーフィル32が配設されている。アンダーフィル32の材料としては、AlNの他に、二酸化チタン(TiO_(2)),硫酸バリウム(BaSO_(4)),アルミナ(Al_(2)O_(3))等の反射性材料(白色フィラー)と熱伝導性材料との混合材料、透明材料あるいは反射性材料が用いられる。」(段落【0014】)、
「なお、本実施の形態では、素子搭載基板6にLED素子31が搭載されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、サブマウントを介して素子搭載基板にLED素子を搭載してもよい。」(段落【0015】)、
「(封止部材8の構成)
封止部材8は、シリコーン等の光透過性樹脂材料からなり、前述したようにLED素子31を封止するように構成されている。」(段落【0016】)、
「(蛍光体層9の構成)
蛍光体層9は、LED素子31からの光(青色光)を受けて励起されることにより、波長変換光(黄色光)を発するYAG(YttriumAluminum Garnet)等の蛍光体を含有するシリコーン等の光透過性樹脂材料によって形成されている。そして、前述したように封止部材8を覆うように構成されている。蛍光体層9の厚さは均一な寸法に設定されている。これにより、LED素子31から発せられる各光の行路長を蛍光体層9内において一定の寸法に近づけ、蛍光体層9から出射される光の色むらの発生が抑制される。」(段落【0017】)、
「〔発光装置1の動作〕
LED素子31に電源から配線パターン14,15を介して電圧が印加されると、LED素子31の発光層において青色光を発し、この青色光がLED素子31の光取出面から封止部材8に出射される。この場合、LED素子3において発生する熱がアンダーフィル32を介して素子搭載基板6に放散される。」(段落【0018】)、
「次に、LED素子31からの出射光が封止部材8を透過して蛍光体層9内に入射すると、蛍光体層9では入射光(青色光)を受けて励起されることにより黄色の波長変換光を発する。このため、LED素子31から発せられる青色の励起光と蛍光体層9から発せられる黄色の波長変換光とが混合して白色光となる。そして、白色光が蛍光体層9を透過し、その光出射面から外部に出射される。」(段落【0019】)
「[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。」(段落【0027】)、
「(1)LED素子31から発せられる光が封止部材8を介して蛍光体層9に入射するため、従来のようにはLED素子31から出射される光がLED素子側に戻ることがない。このため、光吸収損失の発生を抑制することができ、光取出効率を高めることができる。」(段落【0028】)、
「(2)LED素子31と素子搭載基板6との間にはアンダーフィル32が配設されているため、LED素子31と素子搭載基板6との間に気泡が従来のようには残存することがない。このため、封止部材8の熱硬化時にバンプ12,13が外れることがなく、品質上の信頼性を高めることができる。」(段落【0029】)
(キ)「以上、本発明の発光装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。」(段落【0030】)、
「(1)本実施の形態では、蛍光体層9の厚さが均一な寸法に設定されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、その光取出面(光出射面)を光取出側に膨出する光学形状面で形成してもよい。」(段落【0031】)、
「(2)本実施の形態では、蛍光体層9が蛍光体含有のシリコーン等の光透過性樹脂である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、蛍光体含有の無機ガラスからなるもの、あるいは蛍光体含有の有機・無機ハイブリッド材料からなるものでもよい。」(段落【0032】)
(ク)図1は以下のとおりのものである。

(ケ)上記(ア)の請求項2の記載を踏まえて請求項1の記載をみると、引用例1には、
「サブマウントと、
サブマウントにアンダーフィルを介して搭載された発光ダイオード素子と、
前記発光ダイオード素子を封止する光透過性部材からなる封止部材と、
前記封止部材を覆う蛍光体層とを備えた発光装置。」
が記載されていることになる。
そして、上記(カ)の段落【0015】の記載を踏まえて、上記記載をみると、サブマウントとそれに搭載された発光ダイオード素子とを含む上記「発光装置」は、当該サブマウントを介して、(当該サブマウントとは異なる)素子搭載基板に搭載されることになるものと認められる。
イ 上記アの各事項によれば、引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「サブマウントと、
サブマウントにアンダーフィルを介して搭載された発光ダイオード素子と、
前記発光ダイオード素子を封止する光透過性部材からなる封止部材と、
前記封止部材を覆う蛍光体層とを備えた発光装置であって、
前記発光ダイオード素子は、p側電極及びn側電極を有するフリップチップ型の青色LED素子からなり、サファイア(Al_(2)O_(3))基板上にAlNからなるバッファ層及びn型半導体(n-GaN)層・発光層・p型半導体(p-GaN)層を順次結晶成長させることにより形成されており、
前記青色LED素子からの出射光が封止部材を透過して蛍光体層内に入射すると、蛍光体層では入射光(青色光)を受けて励起されることにより黄色の波長変換光を発し、前記青色LED素子から発せられる青色の励起光と蛍光体層から発せられる黄色の波長変換光とが混合して白色光となり、白色光が蛍光体層を透過し、その光出射面から外部に出射され、
サブマウントを介して素子搭載基板に前記発光ダイオード素子が搭載されることになる、
発光装置。」

(2)引用例2
ア 当審において拒絶の理由で引用し、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2005-340850号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに以下の記載がある。
(ア)「図5は、蛍光材料層49にパターンを設けて未変換光が素子を脱出できるようにした、本発明の或る実施形態を示している。この蛍光材料層の特性と、被覆面対非被覆面の比を選択すれば、素子を脱出する未変換光の量を制御することができる。図5の例では、活性領域44は青色光を放射し、蛍光材料層49は2つのリン光体を含んでおり、一方は青色光を吸収して緑色光を放射し、もう一方は青色又は緑色光の何れかを吸収して赤色光を放射する。変換された光は未変換光と混ざり合って白色に見える複合光を形成する。」(段落【0023】)
(イ)図5は以下のとおりのものである。

イ 上記アの記載によれば、引用例2には、
「蛍光材料層にパターンを設けて未変換光が素子を脱出できるようにし、この蛍光材料層の特性と、被覆面対非被覆面の比を選択すれば、素子を脱出する未変換光の量を制御することができる。」
との技術的事項が記載されていると認められる。

4 対比
(1)本願発明と引用発明1とを以下に対比する。
ア 引用発明1の「n型半導体(n-GaN)層」、「p型半導体(p-GaN)層」及び「発光層」は、それぞれ、本願発明の「第1導電型半導体層」、「第2導電性半導体層」及び「活性層」に相当する。
そして、引用発明1は、「サファイア(Al_(2)O_(3))基板上に」「n型半導体(n-GaN)層・発光層・p型半導体(p-GaN)層を順次結晶成長させる」ものであるから、本願発明の「上記第1導電型半導体層と上記第2導電型半導体層との間に活性層を含む」との事項を備えている。
さらに、引用発明1の「第1導電型半導体層」、「第2導電性半導体層」及び「活性層」は、本願発明の「発光構造物」に相当する。
イ 引用発明1の「光透過性部材からなる封止部材」は、本願発明の「透光性層」に相当するといえる。
そして、引用発明1の「光透過性部材からなる封止部材」は、「前記発光ダイオード素子を封止する」ものであるから、「前記発光構造物の上に」設けられていることになる。
ウ 引用発明1の「蛍光体層」は、本願発明の「蛍光体層」に相当する。
そして、引用発明1の「蛍光体層」は、「前記封止部材を覆う」ものであるから、「前記透光性層の上に」設けられていることになる。
エ 引用発明1の「発光装置」は、「サブマウント」と「サブマウントに」「搭載された」「発光ダイオード素子」とを備えており、この「サブマウントを介して素子搭載基板に前記発光ダイオード素子が搭載されることになる」ものである。ここで、サブマウント及びその上に搭載された発光ダイオードを一体として「LEDチップ」と称する(例えば、特開2005-252222号公報の段落【0007】・【0008】を参照。)ところであり、また、サブマウント及びその上に搭載された発光ダイオードを搭載部材上に配置して封止することは技術常識(例えば、特開2001-15817号公報の段落【0070】?【0073】・図8・図9、特開2007-59781号公報の段落【0015】?【0019】・図1・図2を参照。)であって、搭載部材への実装手法という観点でみれば、サブマウント及びその上に搭載された発光ダイオードを実装の対象とする場合と、発光ダイオードのみを実装の対象とする場合とで、特段変わるところはないと解される。
そして、本願発明の「発光素子チップ」に、サブマウント及びその上に搭載された発光ダイオード素子を一体としたものが含まれるとみても、本願の明細書の記載に特段反することはないと解される。
そうすると、引用発明1の「発光装置」は、本願発明の「発光素子チップ」に相当するということができる。

(2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明1とは、
「第1導電型半導体層、第2導電型半導体層、及び上記第1導電型半導体層と上記第2導電型半導体層との間に活性層を含む発光構造物と、
前記発光構造物の上に透光性層と、
前記透光性層の上に蛍光体層と、を含む、
発光素子チップ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]蛍光体層について、本願発明のものはパターンを含み、そのパターンは透光性層の一部を露出させているのに対し、引用発明1のものはそうなっていない点。
[相違点2]本願発明では、透光性層の底面は発光構造物の上面と接しているのに対し、引用発明1では、そうなっていない点。
[相違点3]透光性層について、本願発明のものは蛍光体層より熱伝導度が低く、透光性が高いのに対し、引用発明1のものはそうであるのか不明である点。

5 相違点の判断
上記各相違点について検討する。
(1)[相違点1]について
上記3(2)イのとおり、引用例2には、「蛍光材料層にパターンを設けて未変換光が素子を脱出できるようにし、この蛍光材料層の特性と、被覆面対非被覆面の比を選択すれば、素子を脱出する未変換光の量を制御することができる。」との技術的事項が記載されており、この技術的事項により、蛍光体を用いた発光ダイオード素子の色合いが調整できることが明らかである。
他方、引用発明1は、青色LED素子からの出射光が封止部材を透過して蛍光体層内に入射すると、蛍光体層では入射光(青色光)を受けて励起されることにより黄色の波長変換光を発し、青色LED素子から発せられる青色の励起光と蛍光体層から発せられる黄色の波長変換光とが混合して白色光となり、白色光が蛍光体層を透過し、その光出射面から外部に出射されるものであるところ、その色合いを適宜調整することは例示するまでもなく周知の課題であるから、当該課題を解決するために、引用例2記載の上記技術的事項を採用して、上記[相違点1]のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)[相違点2]について
成長基板を除去した発光ダイオード素子は周知(例えば、国際公開第2008/40315号の21?40頁を参照(参考日本語公報として特表2010-505252号公報の段落【0061】?【0120】)、特表2007-511065号公報の段落【0014】を参照。)であるから、引用発明1において上記周知技術を採用して、上記[相違点2]のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)[相違点3]について
引用発明1の「光透過性部材からなる封止部材」はシリコーン等の光透過性樹脂材料からなるとされ(上記2(1)ア(カ)の段落【0016】)、また、「蛍光体層」は蛍光体含有のシリコーン等の光透過性樹脂のほか、蛍光体含有の無機ガラスからなるもの、あるいは蛍光体含有の有機・無機ハイブリッド材料からなるものでもよいとされている(同(キ)の段落【0032】)から、引用発明1では、「光透過性部材からなる封止部材」(本願発明の「透光性層」に相当。)と「蛍光体層」(本願発明の「蛍光体層」に相当。)とが異なる材料から構成されることも想定されているということができる。
ここで、発光素子で発生した熱が蛍光体層に伝達されて蛍光体層の波長変換効率を阻害するとの課題を解決するために、蛍光体層に比して熱伝導度が低い透光性層を発光素子と蛍光体層との間に設けることは周知技術(例えば、特開2007-194525号公報の段落【0007】?【0011】、国際公開第2008/105527号の段落【0004】?【0007】を参照。)であり、また、その場合、蛍光体層には蛍光体が含まれている以上、通常、その透光性は透光性層よりも低くなるものと解される。
そして、引用発明1においても、上記課題が生じることは明らかであるから、その課題を解決するために、上記周知技術を採用し、上記[相違点3]のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(4)本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用発明1、引用例1の記載事項、引用例2の記載事項及び上記各周知技術から、当業者が予測し得たことである。

(5)小括
よって、本願発明は、当業者が、引用発明1、引用例1の記載事項、引用例2の記載事項及び上記各周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-05 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-03-02 
出願番号 特願2011-4095(P2011-4095)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 百瀬 正之  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 山村 浩
星野 浩一
発明の名称 発光素子チップ、発光素子パッケージ  
代理人 市川 英彦  
代理人 金山 賢教  
代理人 小野 誠  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 重森 一輝  

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