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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1303412
審判番号 不服2013-21545  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-05 
確定日 2015-07-22 
事件の表示 特願2008-540017「光起電力構造」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月24日国際公開、WO2008/048232、平成21年 2月19日国内公表、特表2009-507397〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2006年8月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年8月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年6月25日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年11月5日に請求された拒絶査定不服審判であって、当審において、平成26年9月5日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成27年1月5日付けで意見書が提出されるととともに、手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年1月5日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
基体と、
前記基体から伸びており、前記基体から離れた自由端を有している光起電力ナノ構造の第1のアレイとを備える光起電力構造であって、
前記光起電力ナノ構造の各々は、導電性の金属ナノケーブルをその中に有し、
前記金属ナノケーブルは、鋳型の孔の内表面によって規定される間隔および表面構造を有し、
前記金属ナノケーブルの縦軸は、相互に平行になるように配置されており、
前記光起電力ナノ構造の各々は、さらに、前記金属ナノケーブルを覆っている少なくとも1つの層を有し、
前記少なくとも1つの層は、前記光起電力ナノ構造のそれぞれの内部に、光起電活性p-n接合を生じ、
前記光起電力ナノ構造の軸が、前記第1のアレイの平面に対して垂直な方向から傾いている、光起電力構造。」

3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、当審における平成26年9月5日付けの拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された「特開平3-151672号公報」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「〈産業上の利用分野〉
本発明は、PIN接合で構成される非晶質シリコン太陽電池に関する。」(第1頁左下欄第13?15行)
「〈実施例〉
以下、本発明を図示の実施例により詳細に説明する。
第1図は非晶質シリコン太陽電池の一例を示す縦断面図であり、1はガラス基板、2はこのガラス基板1上にCVD法で形成され、裏面電極をなすN型のポリシリコン膜、3はAu膜を用いたCVD法により0.5μm程度の間隔をおいてポリシリコン膜2の表面に垂直に略1μmの高さで成長せしめられ、0.01μmから1μmの直径をもつ柱状Si結晶、4は光の反射を増すべく上記ポリシリコン膜2および柱状Si結晶3の表面を覆うように蒸着したAg膜、5,6,7はこのAg膜4の表面にプラズマCVD法で順次堆積せしめられ、縦断面が図示の如き波形をなしてPIN接合を形成する夫々N型、I型、P型の非晶質シリコン層、8は上記P型非晶質シリコン層7の表面を覆って蒸着され、表面電極をなす透明導電膜である。
上記ポリシリコン膜2は、600℃に保持したガラス基板1上にSiH_(4)、H_(2)、Ar、PH_(3)からなる混合ガスを流すことにより形成され、膜を構成するポリシリコンの粒径は300?800Å程度であり、その面方位は<111>面が優先的に形成される。
上記柱状Si結晶3は、次のプロセスで成長させる。即ち、ポリシリコン膜2を形成した上記ガラス基板1を300℃に保持して、ポリシリコン膜2上にまず膜厚が20?100ÅになるようにAuを蒸着し、次いでこの基板を600℃に保持しつつSiCl_(4)、H_(2)ガスを流す。すると、SiとAuの共融点が500℃以下であるので、ポリシリコン膜2上にSiとAuの液体合金が生じ、この液体合金中で過飽和になるSiは、固相のポリシリコン膜2の表面に析出して、柱状Si結晶3をつくる。一方、上記液体合金中のAuは柱状Si結晶中には固溶せず、柱状Si結晶3の先端に析出する。そこで、先端に析出したAuを王水でエッチングして除去すれば、ポリシリコン膜2の表面に垂直な方向即ちポリノリコン膜2の面方位<111>の方向に成長した多数の柱状Si結晶3を得ることができる。なお、柱状Si結晶3の直径および間隔は、Au蒸着時の基板温度と膜厚によって変化させることができ、非晶質シリコン太陽電池の能力、製造プロセスや実用性の観点から、直径は0.01μm?1μmに、間隔は1μm以下に夫々限定される。すなわち、この限定を外れると本発明の構造の効果がなくなるのである。」(第2頁左下欄第4行?第3頁左上欄第10行)
b 図面の記載
「第1図


c 上記bの記載事項の考察
引用例1の第1図によると、「透明導電膜8」は「ガラス基板1」側からみて凸状の形状であることが読み取れる。
d 引用例1記載の発明
上記a及びbの記載事項及びcの考察によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ガラス基板1と、
このガラス基板1上にCVD法で形成され、裏面電極をなすN型のポリシリコン膜2と、
Au膜を用いたCVD法により0.5μm程度の間隔をおいてポリシリコン膜2の表面に垂直に略1μmの高さで成長せしめられ、0.01μmから1μmの直径をもつ多数の柱状Si結晶3と、
光の反射を増すべくポリシリコン膜2及び柱状Si結晶3の表面を覆うように蒸着したAg膜4と、
このAg膜4の表面に堆積された、PIN接合を形成する夫々N型、I型、P型の非晶質シリコン層5,6,7と、
ガラス基板1側からみて凸状の形状であり、上記P型非晶質シリコン層7の表面を覆って蒸着され、表面電極をなす透明導電膜8と、
を備えた非晶質シリコン太陽電池。」

(2)引用刊行物2
また、当審における平成26年9月5日付けの拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された「特開平11-246300号公報」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタンを主材料とするナノ細線およびその製造方法、ナノ構造体及び電子放出素子に関し、さらに詳しくは、電子デバイスやマイクロデバイス等の機能材料や構造材料等として、広い範囲で利用可能な、特に機能材料としての光電変換素子、光触媒素子、電子放出材料、マイクロマシン用細線、量子効果素子用細線等に利用可能なナノ細線、およびその製造方法、ナノ細線を具備するナノ構造体及びそれを用いた電子放出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、チタンおよびその合金は、機械的には、軽いこと、強いこと、腐食されにくいこと等の特徴から、航空機、自動車、化学機械等の構造材料として広く用いられてきた。また、チタンおよびその合金は人体に無害であることから医療器材にも用いられている。
【0003】最近では、酸化チタンの光半導体特性や、光触媒作用等の応用として、光太陽電池、有害物質の分解、抗菌等の研究が盛んに行われている。このほか、チタン材料の応用範囲は、真空ゲッタ材料、電子放出材料、水素貯蔵合金、各種電子デバイスの電極等の多方面にわたっている。」
「【0009】このような陽極酸化アルミナの特異的な幾何学構造をベースとして用い、さまざまな応用が試みられている。益田による解説(益田:“固体物理”31,493,1996)に詳しいが、細孔内に金属や半導体導を充填する技術やレプリカをとる技術が典型であり、着色、磁気記録媒体、EL発光素子、エレクトロクロミック素子、光学素子、太陽電池、ガスセンサをはじめとするさまざまな応用が試みられている。」
「【0030】図3にチタンナノ細線を具備するナノ構造体の概略図を示す。図3(a)は、基体10に形成されたTiを含む表面を構成する層11と、該層11の表面上に、該表面に対して特定の方向(ほぼ垂直な方向)を有して配置したチタンナノ細線15から構成されているナノ構造体を示す。
【0031】図3(b)は、基体10に形成されたTiを含む表面を構成する層11の該表面上に設けた、該表面に対して垂直な方向に伸びる細孔14を有する多孔体(陽極酸化アルミナ)13と細孔14内に配したチタンナノ細線15から構成されているナノ構造体を示す。
【0032】図3(b)に示すナノ構造体においては、チタンナノ細線15は細孔表面から突出しているが、図3(c)に示すナノ構造体のように細孔内部で成長を止めて利用することも可能である。
【0033】さらに、図3(b),(c)においてはチタンナノ細線は、細孔径よりも細く記載されているが、図3(d)のように細孔径と同等の太さのチタンナノ細線から構成することもできる。
【0034】チタンナノ細線15はチタンを主成分とする金属、半導体、絶縁体であり、たとえばチタン、チタン-鉄やチタン-アルミをはじめとするチタン合金、酸化チタン、水素化チタン、窒素化チタン、炭化チタンなどの任意のチタン化合物である。チタンナノ細線15の細線径(太さ)は、広くは、1nm?2μm、長さ10nm?百μmの範囲である。また、チタンナノ細線は、多孔体の細孔の形状がある程度反映されることから、多孔体の細孔径、間隔等の形状を制御することでチタンナノ細線の細線径等をある程度制御でき、また細線の方向もたとえば基体と垂直にすることが出来る。
【0035】また、特別な作成条件においては、チタンナノ細線をウィスカー結晶とすることができる。この条件については後述する。
【0036】図3(b)に示した構造体に於て、Tiを含む表面を構成する層11上に形成してなる多孔体13としては、陽極酸化アルミナ、ゼオライト、ポーラスシリコン、フォトリソーグラフィーの手法により形成したマスク等を用いることができる。特に、陽極酸化アルミナは、直線的な細孔を等間隔に有するため、直線性に優れるチタンナノ細線を等間隔に作成することが可能となり、さらには、チタンナノ細線をある特定の方向(例えば基板に対してほぼ垂直)を有して等間隔に配したナノ構造体とすることができることから望ましい。」
「【0058】
【実施例】以下、本発明の詳細を実施例により図面に基づいて説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0059】実施例1
本実施例は、酸化チタンナノ細線、および酸化チタンナノ細線を具備するナノ構造体を作成した例である。以下、図2(a)?(d)を用い、本発明のナノ細線およびチタンナノ細線を適用したナノ構造体の製法を順に追って説明する。
【0060】(工程1)本実施例の基板16には、石英基板を用い、有機溶剤および純水により十分に洗浄後、スパッタ法により厚さlμmのTi膜11を製膜し、基体10を構成した(図2(a)参照)。
【0061】(工程la)さらに、上記基体上にAlを主成分とする膜12として、スパッタ法により厚さlμmのAl膜を製膜した(図2(b)参照)。
【0062】(工程lb)引き続き、図5に示す陽極酸化装置を用いてAl膜12に陽極酸化処理(図2(c)参照)を施した。電解液は0.3Mシュウ酸水溶液とし、恒温水槽により溶液を17℃に保持した。陽極酸化電圧はDC40Vとし、陽極酸化処理時間は10minとした。陽極酸化工程の途中、約8min後に陽極酸化が、基体(Ti膜)表面まで到達し、陽極酸化電流の減少が見られた。
【0063】さらに、ポアワイド処理として、リン酸5wt%溶液に45分間、浸すことにより細孔径を調節した。処理後、純水、およびイソプロピルアルコールによる洗浄を行った。
【0064】(工程2:熱処理工程)引き続さ、以下の方法によって、基体上に陽極酸化アルミナを形成した構造体に、水蒸気、水素、ヘリウムの混合雰囲気下で、熱処理を施すことにより、酸化チタンナノ細線を形成した。
【0065】即ち、構造体を図4に示す反応装置に設置して、まずヘリウム50倍希釈の水素ガスにより、5℃に保持した純水をバブリングし、ガス導入管44から流量50sccmで導入し反応容器内の圧力を1000Paに維持した。そして赤外線ランプを点灯して構造体温度を700℃でlhrの熱処理を施した。そして赤外線ランプを消して、基板温度を室温にしてからガス供給を遮断し試料を大気中に取り出した。
【0066】取り出したサンプルの表面、断面をFE-SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope:電界放出走査型電子顕微鏡)にて観察した。
【0067】その結果、図3(b)に示すように、直径は約60nmで、約100nmの間隔で互いに平行且つほぼ等間隔に配列し、Ti含有膜11の表面に対して垂直に伸びる細孔を有する陽極酸化アルミナと、細孔内および細孔内から外に向けて、多数のナノ細線が成長していた。このチタンナノ細線の形状は、細孔の形状を反映して、細線径は40?60nm程度、長さは数100nm?数μmで、基体表面からほば垂直方向に成長していた。
【0068】さらに、EDAX(非分散型X線回折分析装置)により、上記ナノ細線がチタンを主成分とすることを確認した。また、X線回折によりルチル型酸化チタンの存在が示された。
【0069】さらに、細孔内に形成されたチタンナノ細線を基体から分離して顕微鏡を用いて高倍率で観察すると、図1(a)のように非紐状のもの、図1(b)のように柱状のもの、図1(c)のように柱状で太さが段階的に変わるもの、図1(d)に示すように複数の柱状体が合体した形状のもの等が見られた。また、図1(b)、(c)および(d)の中には、面方位を示すエッジ形状を有するものがあり、結晶成長、すなわちウィスカー成長したものであると思われる。
【0070】実施例2
本実施例は、陽極酸化アルミナの細孔径を制御することにより、チタンナノ細線の細線径の制御を試みた例である。陽極酸化の電圧は50Vとし、さらに、ポアワイド処理の時間を0、15min、30min、45min及び60minとした以外は実施例1と同様に処理して、陽極酸化アルミナの細孔径を各々異ならせた構造体を用意した。
【0071】各々の構造体の標準的な細孔径は、10nm、25nm、40nm、60nm及び80nmであった。次いでこれらの構造体に熱処理を施した。熱処理工程は実施例1に準じた。
【0072】その結果各々の構造体の細孔内に形成されたチタンナノ細線の細線径は、細孔径を反映し、細孔径の大きい試料において、細線径が太い傾向があった。すなわち細孔の形状を反映して、チタンナノ細線が成長していた。具体的には、平均的なチタンナノ細線の径は、各々8nm、20nm、30nm、50nm及び70nmであった。」
b 図面の記載
「【図2】


「【図3】



(3)引用刊行物3
さらに、当審における平成26年9月5日付けの拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された「特開2005-76039号公報」(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノメートルスケールの微小な間隔を有する凹凸構造のナノ構造体、その製造方法、この構造体を用いる細線構造体および光触媒に関する。
【0002】
【背景技術】
物体表面に微細な構造を作製する技術として、従来からの光や電子線によるリソグラフィ手法ではなく、アルミニウム膜の陽極酸化による細孔構造が従来より知られている。アルミニウム膜をシュウ酸や硫酸等の酸性水溶液中で陽極酸化することにより、膜に垂直方向に伸びた高アスペクトな細孔を形成でき、ある一定条件下では規則的に配列したナノホールを形成することが出来る。また、これをリン酸を含む水溶液中等に浸してアルミナを溶解することで、細孔構造の口径を広げることが出来、直径数nm?数100nm、深さ数十nm?数十μm、間隔10nm?500nm程度の高アスペクトなナノホールを形成することができる。
【0003】
一方、タングステンという材料は、従来より走査型トンネル顕微鏡の探針として使用されており、電解研磨や化学エッチング等による先端の先鋭化方法が、従来より提案されている(特許文献1参照)。しかし、現在のような化学エッチング等による製造方法では、先端曲率半径が数十?数百nmと非常に大きい。
【0004】
また酸化タングステンやアルミナは、酸化チタン等と並んで金属触媒として知られ、酸化タングステンは有機物や水分解用の光触媒や太陽電池やガスセンサーに、アルミナはNO_(x) 除去用光触媒などに用いられている。近年、触媒活性をより向上させるために金属の更なる微粒子化が検討されているが、より微粒子化された金属触媒を効率よく且つ確実に得るための方法は未だ開発されていない。また、貴金属触媒等に於いては、金属微粒子の粒径がある値以下になると触媒活性がかえって低下したり耐熱性が不十分となるなど、過度な微粒子化は必ずしも有効ではない。これを改善するものとして、細線状の金属クラスター(金属細線触媒)が提案されており(特許文献2参照)、ナノメートルサイズの構造体の簡易な作製手法が幅広い応用範囲において早急に求められている。」
「【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるナノ構造体の製造方法は、タングステンを主成分とする下地層と、その上部に細孔形成層を形成し、この細孔形成層を通常のフォトリソグラフィやドライエッチングや陽極酸化するなどして細孔構造を形成して下地層を露出させ、下地層の陽極酸化を行って、酸化タングステン凸構造が細孔形成層の表面より突出した後に陽極酸化を停止することでナノメートルサイズの構造体(ナノ構造体)を製造するものである。
【0017】
細孔構造も陽極酸化により行う場合、酸化タングステン凸構造の形成を一括した陽極酸化で行うことが出来、また陽極酸化条件により酸化タングステン凸構造のサイズが決まる。本発明の製造プロセスは簡略であり、従来に比べ短時間に安価にタングステンまたは酸化タングステンの細線を製造することが可能である。
【0018】
図1は本発明のナノ構造体の製造方法の一実施態様を示す工程図である。
本発明のナノ構造体の製造方法は、図1に示すような支持基板3上にタングステンを主成分とする下地層2と細孔形成層1を積層して(工程(1))、細孔形成層1をフォトリソグラフィ、ドライエッチングまたは陽極酸化するなどして細孔構造5を形成し(工程(2))、被加工物4を陽極として陽極酸化を行い細孔構造5を下地層2まで到達させ、細孔構造5の底部に酸化タングステン凸構造6を形成し、該酸化タングステン凸構造6を成長させて細孔形成層1の表面より突出したら陽極酸化を停止して(工程(3))、酸化タングステン細線構造7を形成することを特徴とするナノ構造体の製造方法である。
【0019】
本発明では、細孔形成層1から突出して成長した酸化タングステン凸構造を、酸化タングステン細線構造と呼ぶ。
【0020】
例えば、シリコン等の支持基板3上に、スパッタリングやビーム蒸着などの膜積層技術によりタングステン下地層2を形成し、更にその上部に細孔形成層1としてアルミニウムやアルミニウム-シリコン合金膜のようなアルミニウムを主成分とする膜を形成し、これを被加工物4とする(図1(a))。これを陽極として、シュウ酸水溶液やリン酸水溶液や或いはこれらの混合酸性水溶液中にて適当な濃度・温度・電圧下で陽極酸化をすると、細孔構造5が形成される(図1(b))。このとき細孔の壁面周辺のアルミニウムはアルミナとなる。細孔は膜に対して垂直に形成され、陽極酸化を続けると細孔底部が下地層2に到達し、タングステンが酸化されて体積が膨張することで細孔中に充填され、酸化タングステン凸構造6が形成される(図1(c))。この後更に陽極酸化を継続すると、細孔構造5内部に酸化タングステン凸構造6が徐々に成長してアスペクト比が増大し、細孔形成層1の表面から突出して更に伸びつづけ、酸化タングステン細線構造7となる(図1(d))。形成される細線のサイズは主に細孔構造5のサイズに依存し、細孔構造5の間隔は陽極酸化の印加電圧で、また細線の径は陽極酸化の溶液種類又は細孔形成後の細孔径拡大処理で、また細線の長さは陽極酸化時間及び下地層の厚さで決めることが出来る。
【0021】
細孔構造5の間隔は陽極酸化電圧と比例関係にあり、細孔径は陽極酸化後にリン酸水溶液に浸してアルミナを溶解することで拡大できる。例えば、シュウ酸水溶液(0.3mol/L)、液温16℃、電圧40Vでアルミニウムの陽極酸化を行うと、間隔約100nm、径約10?20nmの細孔が形成され、これをリン酸水溶液(0.3mol/L)に40分浸漬すると径は約40?60nmになる。
【0022】
細孔が下地層2に到達したところで陽極酸化を中断し、細孔径を拡大してから再度陽極酸化をして酸化タングステン細線構造7を形成することで、径の大きいものを製造できる。つまり、本発明により製造される酸化タングステン細線構造7のサイズは細孔構造サイズに依存し、長さ数百nm?数μm、径数nm?数十nm、曲率半径数nmの範囲にて実現することが可能である。またここで、アルミニウム膜の剥離防止等の目的で、アルミニウム膜と下地層の間にチタンやニオブ等の他種類の金属を数nm程度積層させてもよい。細孔形成層に細孔を形成する手法は、通常のフォトリソグラフィやドライエッチング等でも良い。
【0023】
また、本発明いおいては、細孔構造5を形成するにあたり、細孔形成層1の表面に、規則的に配列した深さ数nm?数十nm程度の凹構造を形成しておくと、そこが細孔の形成開始点となり、規則的に配列した細孔構造が得られる。これにより、規則的に配列した酸化タングステン細線構造を製造することが出来る。
【0024】
また、本発明いおいては、酸化タングステン細線構造7を形成した後に細孔構造5を除去し、酸化タングステン細線構造7のみを支持基板3上に形成することが出来る。これは、酸化タングステン細線構造7を形成した後に、被加工物4をリン酸水溶液中などの酸化タングステンを侵さず且つ細孔形成層1を溶解する液体ないし気体中に静置すればよい。このようにして得られた、酸化タングステン細線構造7のみを支持基板3上に形成した構造体を図3に示す。
【0025】
また、図3に示す酸化タングステン細線構造7を、アニール等で酸化タングステンを還元してタングステンとし、タングステン細線構造を製造することも出来る。このようにして得られた、タングステン細線構造9を支持基板3上に形成した構造体を図4に示す。」
b 図面の記載
「【図1】


「【図3】


「【図4】



(4)引用刊行物4
また、当審における平成26年9月5日付けの拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された「特開2005-59125号公報」(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
本発明は、膜面に対して垂直またはほぼ垂直なナノ細線を具備するナノ構造体及びその製造方法に関し、特に前記ナノ細線の平均直径が20nm以下、且つナノ細線の長さが1μm以下であることを特徴とする、微細な直径を持つ細線が高密度に集積されたナノ細線を具備するナノ構造体及びその製造方法に関する。前記ナノ構造体は電子デバイスやマイクロデバイスなどの機能材料や、構造材料等として、広い範囲で利用可能である。特に量子効果デバイス、発光デバイス、太陽電池や、触媒、電気化学センサー、バイオセンサーなどとしての応用が可能である。」
「【0039】
次に、本発明におけるナノ構造体の製造方法について図5?図8を参照して詳細に説明する。
【0040】
以下、この製造方法で用いる製造工程を、(1)成膜工程1(下地膜の成膜)、(2)成膜工程2(AlSi(またはAlGe、AlSiGe成膜)、(3)細孔体形成工程、(4)めっき工程、(5)エッチング工程に分けて順に説明する。
【0041】
なお、本実施形態の(4)めっき工程において、電気めっきを用いる場合と無電解めっきを用いる場合で製造工程及び製造工程における留意点が若干異なる。以下、「電解めっきの場合」及び「無電解めっきの場合」とに分けて説明をする。また、以下に示す実施形態の一例には、(2)成膜工程2(AlSi(またはAlGe、AlSiGe)成膜)で用いる材料として、AlSiの場合に関して説明を行うが、Siの一部または全部をゲルマニウムに置き換えても本工程に変化はなく、本実施形態では説明の便宜上AlSiとして説明する。
(電解めっきを用いる場合)
図5は、本発明におけるナノ構造体の製造方法に関する一実施形態の工程図である。図5(a)は成膜工程1(下地膜の成膜)、図5(b)は成膜工程2(AlSi(またはAlGe、AlSiGe成膜)、図5(c)は細孔体形成工程、図5(d)はめっき工程、図5(e)はエッチング工程をそれぞれ示す。なお、図5に示す各工程は、後述の実施例1で用いる工程と同じである。以下、各工程を詳細に説明する。
【0042】
工程(1)成膜工程1(下地膜の成膜)
図5(a)に示すように、本工程は、基板(Si基板)51上に下地膜(Pd薄膜)52を成膜するものである。
【0043】
下地膜52は、以下に示す(4)めっき工程で用いる電解めっきにおける電極となる。そのため、電導性を有する薄膜であることが好ましいが、基板51が導電性を充分に有する場合は、導電性の有無にはこだわらない。本発明では下地膜52としてWを用意したが、勿論他の材料を用いても問題は無い。
【0044】
基板51としては、石英ガラスやプラスチックをはじめとする絶縁体基板やSiやGaAsをはじめとする半導体基板などの基板、金属基板や、これらの基板の上に1層以上の膜を形成したものが挙げられる。なお、引き続き行われる以下の各工程に不都合を及ぼさない限り、基板51の材質、厚さ、機械的強度などは特に限定されるものではない。
【0045】
また、下地膜52の成膜には、蒸着法・スパッタ法等の物理的手法(PVD)、化学的手法(CVD)等を用いる気相法、めっき等の液相法、ゾル-ゲル等の固相法等、任意の薄膜作成方法を適用することが可能であるが、本実施形態では、良好な膜厚分布を有する薄膜を比較的容易に形成できるスパッタリング法を用いている。
【0046】
また、スパッタリング法を用いて成膜された下地膜52には、ターゲット材料の他に、使用ガスであるArや真空装置内の不純物であるH、O、Ar、N、C等が一部混入されていても支障がない。
【0047】
工程(2)成膜工程2(AlSi(またはAlGe.AlSiGe)成膜)
(a)AlとSiを用意する工程
図6は、非平衡状態で物質を形成する成膜法としてマグネトロンスパッタリング法を用いた反応装置内の概要を示す。図6において、61は基板、62はArプラズマ、63はSiチップ、64はAlターゲットである。
【0048】
まず、原料としてのSi及びAlを用意する工程として、例えば、図6に示すように、反応装置内のAlターゲット(基板)64上にSiチップ63を配置する。
(b)AlSi構造体の形成工程
次に、非平衡状態で物質を形成する成膜法としてマグネトロンスパッタリング法を用いて、図6に示すように、反応装置内でAlターゲット64上に放電用ガスとして導入されたArガスによる高密度のArプラズマ62を発生させ、そのプラズマ62中のArイオンを、Siチップ63を配置したAlターゲット64に衝突させてそのイオン衝撃でSi及びAlをはじき出し、基板41上にそのSi及びAlの混合体からなるAlSi構造体を形成する。このAlSi構造体は、Alを主成分とする柱状の部材(アルミニウム柱状部)と、その周囲を取り囲むSiを主成分とする部材(マトリクス部)から構成される。
【0049】
原料としてのSi及びAlは、図6のようにAlのターゲット基板64上にSiチップ63を配することで達成される。Siチップ63は、図6では、複数に分けて配置しているが、勿論これに限定されるものではなく、所望の成膜が可能であれば、1つであっても良い。ただし、均一なAlを含む柱状の部材をSi領域内に均一に分散させるには、Alターゲット64上にSiチップ63を対称に配置しておくのがよい。Alターゲット64に対するSiチップ63の量及び配置の制御により、AlとSiの割合を簡単に変化させることができる。
【0050】
また、所定量のAlとSiとの粉末を焼成して作製したAlSi焼結ターゲットを使用し、更に、AlターゲットとSiターゲットを別々に用意し、同時に両方のターゲットをスパッタリングする方法を用いても良い。
【0051】
形成される膜中のSiの量は、AlとSiの全量に対して20?70atomic%であり、好ましくは25?65atomic%、さらに好ましくは30?60atomic%である。Si量が斯かる範囲内であれば、Si領域内にAlの柱状の部材が分散したAlSi構造体が得られる。
【0052】
また、基板温度としては、300℃以下であり、好ましくは200℃以下であるのがよい。
【0053】
なお、このような方法でAlSi構造体を形成すると、AlとSiが準安定状態の共晶型組織となり、AlがSiマトリックス内に数nmレベルのナノ構造体(柱状の部材)を形成し、自己組織的に分離する。そのときのAlはほぼ円柱状形状であり、その孔径は1?20nmであり、間隔は5?30nmである。
【0054】
また、非平衡状態で成膜を行う場合、特にスパッタリング法の場合は、Arガスを流したときの反応装置内の圧力は、0.2?1Pa程度が好ましい。また、プラズマを形成するための出力は4インチターゲットでは、150?1000W程度が好ましい。しかし、特に、これに限定されるものではなく、Arプラズマ62が安定に形成される圧力及び出力であればよい。
【0055】
非平衡状態で物質を形成する成膜法は、スパッタリング法が好ましいが抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)をはじめとする任意の非平衡状態で物質を形成する成膜法が適用可能である。
【0056】
また、成膜する方法としては、SiとAlを同時に形成する同時成膜プロセスを用いても良いし、SiとAlを数原子層づつ積層する積層成膜プロセスを用いてもよい。
【0057】
上記の様にして成膜されたAlSi構造体は、Alを主成分とする組成からなるAlを含む柱状の部材(アルミニウム柱状部)と、その周囲を取り囲むSiを主成分とする部材(マトリクス部)を備える。
【0058】
Alを含有する柱状の部材の組成は、Alを主成分とするが、柱状構造の微細構造体が得られていれば、Si、H、O、Ar、Nなどの他の元素を含有していてもよい。
【0059】
また、Alを含む柱状の部材の周囲を取り囲んでいるSiを主成分とする部材の組成は、柱状構造の微細構造体が得られていれば、Al、O、Ar、N、Hなどの各種の元素を含有してもよい。
【0060】
本工程により、図5(b)に示すように、基板51上に成膜形成された下地膜52上にAlSi構造体薄膜(構造体)53が形成(成膜)される。
【0061】
工程(3)細孔体形成工程
本工程では、図5(c)に示すように、AlSi構造体中のAlを主成分とする柱状の部材(アルミニウム柱状部)のみを選択的にエッチングする。その結果、AlSi構造体には、細孔54aを有するSi領域、すなわちマトリックス部53aのみが残り、ナノ細孔体54が形成される。このナノ細孔体54中の細孔径2rは、20nm以下、細孔間隔2Rは、30nm以下であるが、好ましくは、細孔径2rは1?15nmであり、その間隔2Rは5?20nmである。また、長さLは1nm?1μmの範囲である。
【0062】
本工程で用いるエッチングに用いる溶液は、例えばAlを溶かしSiをほとんど溶解しない、りん酸、硫酸、塩酸、クロム酸溶液などの酸が挙げられるが、特に酸の種類に限定されるものではない。また、数種類の酸溶液を混合したものを用いてもかまわない。またエッチング条件は、例えば、溶液温度、濃度、時間などは、作製するSi細孔体に応じて、適宜設定することができる。
【0063】
工程(4)めっき工程(電解めっき)
本工程で用いる電解めっき装置の概略を図7に示す。図7において、2は電解メッキ装置、70は恒温槽であり、71は試料、73は電解液、74は電解液73を入れる反応容器、72は参照電極(アノード)、75は試料71と参照電極72間に電圧を印加する電源、76は電流を測定する電流計である。図7中では省略してあるが、このほか、電圧、電流を自動制御、測定するコンピュータなどが組み込まれている。
【0064】
図7に示す電解めっき装置2において、試料71および参照電極72は、恒温水槽70により温度を一定に保たれた反応容器74内の電解液73中に配置され、電源75より試料71と参照電極72間に電圧を印加することで電解めっきが行われる。
【0065】
この電解めっきにより、図5(c)に示す細孔体形成工程(3)で作成したナノ細孔体54中にめっき材料を充填する。この電解めっきにより金属、合金等を充填することができる。これにより、図5(d)に示すように、ナノ細孔体54を成すマトリックス部53b中にナノ細線(Ptナノ細線)55が形成される。
【0066】
本発明の場合、以下の工程(5)エッチングプロセスにより、細孔体材料であるSiを選択的に溶解し、ナノ細線構造を形成する必要がある。このため、以下の工程(5)エッチングプロセスにも示すが、エッチングにアルカリ性溶液を用いる場合は、充填する材料としては、Siの細孔体材料よりもアルカリ性溶液に対する溶解度が低い材料であることが必要とされる。故に、アルカリ性に対する溶解度の低いPt、Pd、Ru、Rh、Ir等の貴金属等が好ましい。一方、エッチングには、フッ酸を用いて選択的にSiを除去することも可能である。
【0067】
工程(5)エッチング工程
エッチング処理をすることにより、図5に示すナノ細線材料を取り囲むSiを主成分とする部材、すなわちマトリクス部53aの一部及び全部を選択的に除去することにより本発明のナノ細線構造が完成する。エッチング時間によりSiを主成分とする部材の残存量を制御することが可能であり、これにより、図5(e)の図中左側に示すようにSiを主成分とする部材の一部を選択的に除去することでナノ細線55がそれを取り囲むSiを主成分とする部材、すなわちマトリックス部53bに対して上に凸であるナノ構造体56a(図1のナノ構造体1参照)、または図5(e)の図中右側に示すようにSiを主成分とする部材、すなわちマトリックス部53aの全部を選択的に除去することでナノ細線55を取り囲むSiを主成分とする部材が全て除去されて存在しないナノ構造体56b(図4のナノ構造体1a参照)を形成することができる。
【0068】
本工程で用いるエッチング溶液としては、例えばNaOH、KOH等のアルカリ性を有する溶液が用いられる。アルカリ濃度、処理時間、温度の制御により所望のナノ細線材料を形成することができる。ただし、ナノ細線材料の溶解に注意を払う必要がある。」
b 図面の記載
「【図5】



4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ガラス基板1」は、本願発明の「基体」に相当する。
(2)引用発明は、「光の反射を増すべくポリシリコン膜2及び柱状Si結晶3の表面を覆うように蒸着したAg膜4と、このAg膜4の表面に堆積された」「夫々N型、I型、P型の非晶質シリコン層5,6,7と、」「上記P型非晶質シリコン層7の表面を覆って蒸着され、表面電極をなす透明導電膜8と」「を備えた」ものであって、「透明導電膜8」が「ガラス基板1側からみて凸状の形状であ」るから、本願発明の「基体から伸びており、前記基体から離れた自由端を有している光起電力ナノ構造」に相当する構成を有するものである。
(3)引用発明は、「0.5μm程度の間隔をおいて」「成長せしめられ、0.01μmから1μmの直径をもつ」「柱状Si結晶3」が「多数」存在するから、本願発明の「光起電力ナノ構造の第1のアレイ」に相当する構成を有するものである。
(4)引用発明の「柱状Si結晶3」は「柱状」であって、「略1μmの高さで成長せしめられ、0.01μmから1μmの直径をもつ」ものであるから、引用発明の「柱状Si結晶3」及び「Ag膜4」は、本願発明の「導電性の」「ナノケーブル」に相当する。
また、引用発明の「多数の柱状Si結晶3」は、「ポリシリコン膜2の表面に垂直に」「成長せしめられ」たものであるから、引用発明は、本願発明の「ナノケーブルの縦軸は、相互に平行になるように配置されて」いる構成に相当する構成を有するものである。
そうすると、引用発明の「Au膜を用いたCVD法により0.5μm程度の間隔をおいてポリシリコン膜2の表面に垂直に略1μmの高さで成長せしめられ、0.01μmから1μmの直径をもつ多数の柱状Si結晶3と、光の反射を増すべくポリシリコン膜2及び柱状Si結晶3の表面を覆うように蒸着したAg膜4と」「を備えた」構成と、本願発明の「光起電力ナノ構造の各々は、導電性の金属ナノケーブルをその中に有し、前記金属ナノケーブルは、鋳型の孔の内表面によって規定される間隔および表面構造を有し、前記金属ナノケーブルの縦軸は、相互に平行になるように配置されて」いる構成とは、「光起電力ナノ構造の各々は、導電性のナノケーブルをその中に有し、前記ナノケーブルの縦軸は、相互に平行になるように配置されて」いる構成で共通する。
(5)引用発明の「Ag膜4の表面に堆積された、PIN接合を形成する夫々N型、I型、P型の非晶質シリコン層5,6,7」「を備えた」構成と、本願発明の「光起電力ナノ構造の各々は、さらに、前記金属ナノケーブルを覆っている少なくとも1つの層を有し、前記少なくとも1つの層は、前記光起電力ナノ構造のそれぞれの内部に、光起電活性p-n接合を生じ」る構成とは、「光起電力ナノ構造の各々は、さらに、前記ナノケーブルを覆っている少なくとも1つの層を有し、前記少なくとも1つの層は、前記光起電力ナノ構造のそれぞれの内部に、光起電活性半導体接合を生じ」る構成で共通する。
(6)引用発明の「非晶質シリコン太陽電池」は、本願発明の「光起電力構造」に相当する。

上記(1)ないし(6)から、本願発明と引用発明は、
「基体と、
前記基体から伸びており、前記基体から離れた自由端を有している光起電力ナノ構造の第1のアレイとを備える光起電力構造であって、
前記光起電力ナノ構造の各々は、導電性のナノケーブルをその中に有し、
前記ナノケーブルの縦軸は、相互に平行になるように配置されて
前記光起電力ナノ構造の各々は、さらに、前記ナノケーブルを覆っている少なくとも1つの層を有し、
前記少なくとも1つの層は、前記光起電力ナノ構造のそれぞれの内部に、光起電活性半導体接合を生じる、光起電力構造。」
で一致し、以下a及びbの点で相違する。

(相違点)
a 「ナノケーブル」が、本願発明は、「金属」であって、「鋳型の孔の内表面によって規定される間隔および表面構造を有し、」「光起電力ナノ構造の軸が、前記第1のアレイの平面に対して垂直な方向から傾いている」のに対し、引用発明は、「Au膜を用いたCVD法により0.5μm程度の間隔をおいてポリシリコン膜2の表面に垂直に略1μmの高さで成長せしめられ、0.01μmから1μmの直径をもつ多数の柱状Si結晶3と、光の反射を増すべくポリシリコン膜2及び柱状Si結晶3の表面を覆うように蒸着したAg膜4と」からなるものであって、「鋳型の孔の内表面によって規定される間隔および表面構造を有」さず、「非晶質シリコン太陽電池」の「柱状Si結晶3と、」「Ag膜4と、」「N型、I型、P型の非晶質シリコン層5,6,7と」「を備えた」ものの軸が傾いているか不明である点。
b 「光起電活性半導体接合」が、本願発明は、「p-n接合」であるのに対し、引用発明は、「PIN接合」である点。

5 当審の判断
以下、上記a及びbの相違点について検討する。
(aの相違点について)
太陽電池に用いるナノケーブルを、金属で形成すること(以下「周知技術1」という。)も、鋳型の穴の内表面によって規定される間隔および表面構造とすること(以下「周知技術2」という。)も、いずれも引用例2?4に記載(引用例2では、【0003】、【0009】、【0030】?【0036】、【0039】?【0048】、図2、3(d)、引用例3では、【0004】、【0018】?【0025】、図1、4、引用例4では、【0001】、【0039】?【0068】、図5参照。)されているように周知技術である。
一方、本願発明の「光起電力ナノ構造の軸が、前記第1のアレイの平面に対して垂直な方向から傾いている」構成について、本願明細書には、「剛毛20の軸は、図面中のアレイの平面に対して垂直(直角)の向きであるにもかかわらず、剛毛の軸は、わずかに(垂直から数度)または著しく(例えば、40?89°)傾いている場合があることにも注意されたい」(【0046】)と記載されているが、上記構成の製造方法については明細書に特段の記載がない。
上記【0046】の記載は、「光起電力ナノ構造の軸が、・・・(略)・・・垂直(直角)の向きであるにもかかわらず、剛毛の軸は、わずかに(垂直から数度)・・・(略)・・・傾いている場合があることにも注意されたい」と記載されており、剛毛の軸を故意に傾ける製造方法が明細書に記載されていないことを参酌すると、上記【0046】の記載は、光起電力ナノ構造の軸を垂直(直角)の向きに製造しているにもかかわらず、製造誤差等によりわずかに(垂直から数度)傾いてしまう場合があり、本願発明は、このような構成のものを含むと解釈できる。
そして、太陽電池に用いるナノケーブルを鋳型の穴の内表面によって規定される間隔および表面構造とすることは、周知技術であることは上述したとおりであり、この周知技術においても、本願発明と同様に、太陽電池に用いるナノケーブルが誤差等によりわずかに(垂直から数度)傾いてしまう場合があることは明らかである。
さらに、引用発明、上記周知技術1及び周知技術2は、いずれも太陽電池に用いるナノケーブルに関する技術で共通するものであるから、引用発明の「柱状Si結晶3」及び「Ag膜4」に代えて、上記周知技術1の金属のナノケーブルを採用し、さらに、上記周知技術2である、鋳型の孔の内表面によって規定される間隔および表面構造を有するナノケーブルを採用して、上記aの相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
(bの相違点について)
太陽電池に用いる光起電活性半導体接合として、p-n接合を用いることも、PIN接合を用いることも、引用例を挙げるまでもなく周知技術であるから、引用発明のPIN接合に代えて、p-n接合を採用することに、格別の困難性はない。

上記a及びbの相違点については以上のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-17 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-09 
出願番号 特願2008-540017(P2008-540017)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 光起電力構造  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  
代理人 仲村 義平  
代理人 堀井 豊  
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