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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B |
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管理番号 | 1303432 |
審判番号 | 不服2013-13063 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-07-08 |
確定日 | 2015-07-24 |
事件の表示 | 特願2008-113701「レンズアレイを備えた装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月 4日出願公開、特開2008-289872〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成20年4月24日(パリ条約による優先権主張2007年4月24日,(FR)フランス)を出願日とする出願であって,平成24年4月18日付けで拒絶理由が通知され,同年10月24日付けで手続補正がなされ,平成25年2月25日付けで拒絶査定がなされ,同年7月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。 さらに,当審で平成26年8月22日付けで拒絶理由を通知し,同年11月26日付けで意見書が提出されるとともに,手続補正がなされされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は,平成26年11月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 ・少なくとも二つの異なるケラチン性物質を具現し,各々が識別子を包含する三つ以上の画像と, ・装置の観察角度の変化の結果として異なるいくつもの画像を連続させて現すように構成され,識別子が少なくとも一つの英数字を備え及び/又は識別子が外側に配置されるスケールと関連付けられたマーカーを備える光学システムと を有し, ・しわの数及び深さ,皮膚のたるみ,首の皮膚のたるみ,首の折り重なったしわの数及び深さ,皮膚の縦じわ,目の縁の黒ずみの深さ,皮下脂肪のレベル,まぶたの下垂状態,皮膚のシミ,そばかす,傷の中から選択した加齢に関連する特徴, ・皮膚の角質粒子の数及び大きさ,皮脂分泌レベル,汗分泌レベル,皮膚或いは口唇の乾燥度,まつ毛或いは毛髪の長さ,曲率或いは密集度,皮膚への血液供給量,色素沈着異常,毛穴の黒ずみの密集度,にきび,おでき,ほくろ(あざ),口唇の輪郭の中から選択した物理的或いは形態学的特徴,及び, ・ 皮膚或いは毛髪の色,まつ毛或いは顔の他の部位又は身体の類型,歯の色, 或いは目の水晶体の色 から選択したケラチン性物質の特徴の少なくとも二つの異なる程度を画像が示していることを特徴とする装置。」 第3 引用刊行物およびその記載事項 (1)本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である実用新案登録第3121030号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,「触覚訴求肌カウンセリングシート」について図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。) (1ーア) 「【技術分野】 【0001】 本考案は,シート板に指先の触覚と視覚を通じて肌感覚の相違が理解できる複数種の肌見本素材を配設し,各肌見本素材の近くに,各部位の経年による肌変化の例示写真とか,手入れの行き届いた肌と手入れの行き届かない肌の例示比較写真を表示するか,あるいは各肌見本に対応した推奨すべき化粧品の紹介欄を表示するなどして,その肌見本素材に最適な化粧品を顧客に推奨するためのカウンセリングツールとして使用することができる,触覚訴求肌カウンセリングシートを得ることを目的とする。」 (1ーイ) 「【実施例1】 【0028】 図1に示す本考案の触覚訴求肌カウンセリングシート1は,厚紙又は樹脂製で形成されるシート板2と肌見本素材3とで構成されている。 シート板2には,例えば目もと部,ほお部,首部に相当する肌見本素材3a(目もと部用),3b(ほお部用),3c(首部用)を配設保持するための透孔4がそれぞれ形成されている。 【0029】 図1の実施例においては,人の顔の図柄5が表示されており,その図柄5上に示された目もと部とほお部と首部とが,対応線6を介して前記肌見本素材3a(目もと部用),3b(ほお部用),3c(首部用)とそれぞれ対応されている。 したがって顔の特定部位に対応する肌見本素材3の配設された位置を,視覚を通じて簡単に確認することができ,さらに当該肌見本素材3を指先で触ることで,実際の肌表面の肌感覚を触覚を通じた臨場感を持って認識できるようになっている。」 (1ーウ) 【0030】 ここで肌見本素材3a(目もと部用),3b(ほお部用),3c(首部用)は,実際の肌の各部位における皮膚の厚さの違いや水分量の違いを反映するように,布生地製の肌見本素材3の生地の違いで代用している。実際の肌においては,首部,ほお部,目もと部の順で徐々に水分量が少なくなっていく(そのレベル表示は図中のインジケーター7に表示されている通りである)が,本考案においては実際のものと違和感のない程度に似た感触が得られるようにしてある。・・・」 (1ーエ) 「【0035】 図1の左側部分のシート板上には,各部位の経年による肌変化の例示写真8が表示されているので,目もと部にはちりめんじわができ易く,首部にはたるんだしわができ易いという実際の経年変化の状況を臨場感を持って顧客に理解させることができる。 上記に代えて,肌見本素材の近くのシート板上に,手入れの行き届いた肌と手入れの行き届かない肌の例示比較写真(図示省略)を表示することで,上記と同様の効果が達成できる。」 (1ーオ) 図1には,目もと部とほお部と首部の3枚の写真からなる1枚の写真が,経年による肌変化に対応して2枚表示されている。また,該写真の目もと部とほお部と首部の水分量は,該写真の外側にあるインジケータにおけるそれぞれの表示位置のインジケータの幅として表示されている。 (1-カ) 図1 上記(1ーア)?(1ーオ)の記載,図1を参照すると,上記引用刊行物1には, 「目もと部とほお部と首部の3枚の写真からなる1枚の写真が,経年による肌変化に対応して2枚表示されており,かつ,該写真の目もと部とほお部と首部の水分量のレベル表示は,該写真の外側にあるインジケーターにおけるそれぞれの表示位置のインジケータの幅として表示されているシート。」の発明が記載されているものと認める(以下,「引用発明」という。)。 第3 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「目もと部とほお部と首部」は,皮膚がケラチン性物質を含むという当業者の技術常識に照らして,本願発明の「少なくとも二つの異なるケラチン性物質」に相当する。 そうすると,引用発明の「目もと部とほお部と首部の3枚の写真からなる1枚の写真」は,本願発明の「・少なくとも二つの異なるケラチン性物質を具現」する「画像」に相当する。 引用発明の「水分量」は,「目もと部とほお部と首部の写真」それぞれが有している分量であるから,本願発明の「識別子」に相当する。 引用発明では「水分量のレベル表示は,インジケーターに表示されている」のであるから,引用発明の「インジケータ」は,本願発明の「スケール」に相当する。 引用発明の「写真の目もと部とほお部と首部」は,「該写真の外側にあるインジケーターにおけるそれぞれの表示位置のインジケータの幅」に対応して,「水分量のレベル表示」が「表示されている」から,本願発明の「外側に配置されるスケール」に「関連づけられたマーカー」に相当する。 そうすると,引用発明の「目もと部とほお部と首部の3枚の写真からなる1枚の写真が,経年による肌変化に対応して2枚表示されており,かつ,該写真の目もと部とほお部と首部の水分量のレベル表示は,該写真の外側にあるインジケーターにおけるそれぞれの表示位置のインジケータの幅として表示されているシート」と, 本願発明の「 ・少なくとも二つの異なるケラチン性物質を具現し,各々が識別子を包含する三つ以上の画像と, ・装置の観察角度の変化の結果として異なるいくつもの画像を連続させて現すように構成され,識別子が少なくとも一つの英数字を備え及び/又は識別子が外側に配置されるスケールと関連付けられたマーカーを備える光学システム」とを有する「装置」とは, 「 ・少なくとも二つの異なるケラチン性物質を具現し,各々が識別子を包含する複数の画像と, ・識別子が外側に配置されるスケールと関連付けられたマーカーを備える」「装置」の点で共通する。 イ 引用発明の「首部」は,本願発明の「首の皮膚」に相当し,経年によって首の皮膚のたるみが増すことは技術常識であるから,引用発明の「首部」の写真は,本願発明の「首の皮膚のたるみ」の程度を画像が示しているといえ,また, 引用発明の「ほお部」は,本願発明の「ほくろ(あざ)」のできる場所であって,経年によってほくろ(あざ)の程度が増すことは技術常識であるから,引用発明の「ほお部」の写真は,本願発明の「ほくろ(あざ)」の程度を画像が示しているといえる。 そして,引用発明の「ほお部と首部」は,「経年による肌変化に対応して2枚表示されて」いるのであるから,変化前と変化後で「首の皮膚のたるみ」の程度も,「ほくろ(あざ)」の程度も「異なる程度」となることは自明である。 したがって,引用発明の「目もと部とほお部と首部の3枚の写真からなる1枚の写真が,経年による肌変化に対応して2枚表示されて」いることは,本願発明の「首の皮膚のたるみ」と,「ほくろ(あざ)」という「ケラチン性物質の特徴の二つの異なる程度を画像が示している」ことに相当する,すなわち,本願発明の「・首の皮膚のたるみという加齢に関連する特徴」,「・ほくろ(あざ)という物理的或いは形態学的特徴」という「ケラチン性物質の特徴の少なくとも二つの異なる程度を画像が示している」ことに相当する。 そうすると,本願発明と引用発明とは, 「・少なくとも二つの異なるケラチン性物質を具現し,各々が識別子を包含する複数の画像と, ・識別子が外側に配置されるスケールと関連付けられたマーカーを備える構成 を有し, ・首の皮膚のたるみという加齢に関連する特徴, ・ほくろ(あざ)という物理的或いは形態学的特徴 というケラチン性物質の特徴の少なくとも二つの異なる程度を画像が示している装置」で一致し,次の点で相違している。 (相違点1) 複数の画像について,本願発明では,「三つ以上」であるのに対して,引用発明では,「2枚」である点。 (相違点2) 本願発明は,「装置の観察角度の変化の結果として異なるいくつもの画像を連続させて現すように構成される光学システム」を有するのに対して,引用発明は,そのような構成を有さない点。 (1)相違点1についての検討 引用発明において,経年変化をより分かり易く表示するために2枚の画像を「三つ以上」とすることは,当業者が容易に想到するものといえる。 (2)相違点2についての検討 「装置の観察角度の変化の結果として異なるいくつもの画像を連続させて現すように構成される光学システム」は,周知の技術事項(例えば,米国特許出願公開第2003/0002160号明細書「【0003】【0006】」参照)である。 そして,引用発明は,経年による肌の変化を利用者に理解させるためのものであるから,当該変化をより理解し易くするために,引用発明の「目もと部とほお部と首部の写真」に,上記周知技術を適用し,相違を連続させて現すように構成することは,当業者が容易に想到するものといえる。 (3)そして,本願明細書に記載された効果も,引用発明および周知技術から,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものといえない。 (4)したがって,本願発明は,引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。 第4 まとめ 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-29 |
結審通知日 | 2015-02-04 |
審決日 | 2015-02-17 |
出願番号 | 特願2008-113701(P2008-113701) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多田 達也、佐藤 高之 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 信田 昌男 |
発明の名称 | レンズアレイを備えた装置 |
代理人 | 浜野 孝雄 |