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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01M |
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管理番号 | 1303523 |
審判番号 | 不服2014-14352 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-23 |
確定日 | 2015-07-23 |
事件の表示 | 特願2011-104751「非水電解質二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月6日出願公開、特開2012-238399〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月9日の出願であって、平成26年2月14日付けの拒絶理由に対して、同年4月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 平成26年7月23日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は適法になされたものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 TiFeSi合金相、又は、TiFeSi_(2)合金相を含有する非水電解質二次電池用電極材料を含有する非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由1は、本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特願2012-526674号(以下、「先願」という。国際公開第2012/015105号参照。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないというものである。 第4 先願明細書等の記載事項 1 先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。 (1a) 「 」 (当審訳:[請求項1] 活性ケイ素を含むA相と、 ケイ素及び転移金属を含む金属合金マトリックスを有するB相と、を含み、 下記一般式1の条件を満足する負極活物質: [一般式1] X≧500Hv 上記一般式1で、Xは、100gfで測定した上記合金マトリックスのビッカース硬さを示す。)(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。) (1b) 「 」 (当審訳:[請求項11] 正極と、請求項1又は2に記載の活物質を含む負極と、電解質と、を含む二次電池。) (1c) 「 」 (当審訳:[請求項13] 電解質は、非水性有機溶媒及びリチウム塩を含む、請求項11に記載の二次電池。) (1d) 「 」 (当審訳:[21] 以下、本発明の負極活物質を詳しく説明する。 本発明の負極活物質は、活性ケイ素を含むA相、好ましくは、活性ケイ素だけよりなるA相と、ケイ素と他の転移金属を含む合金マトリックスを含むB相とを含む。本発明の負極活物質は、A相の活性ケイ素が核を構成し、B相の合金マトリックスがA相の活性ケイ素の核を取り囲んでいる構造を有することができる。本発明において、B相の金属合金マトリックスは、約10nmないし約100nmの平均厚さを有するバンド形態で存在することができる。本発明の負極活物質内には、多量の微細な活性ケイ素が存在し、上記各々の活性ケイ素が金属合金マトリックスによって堅固に連結され、かつA相の活性ケイ素がB相のマトリックスによって取り囲まれている構造を有することができる。本発明において、上記合金マトリックスは、特有の合金組成によって、高い硬さ及びぜい性(embrittlement property)を同時に示し、電気伝導度及び電気化学的特性に優れている。本発明の活物質の微細構造によれば、充放電時に極板の膨張を効果的に抑制し、寿命特性を確保することができる。これにより、本発明の負極活物質は、二次電池に適用され、優れた性能を示すことができる。) (1e) 「 」 (当審訳:[122] また、本発明の二次電池に含まれる電解質の種類も特に限定されず、この分野において公知されている一般的な手段を採用することができる。本発明の1つの例示として、上記電解質は、非水性有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。上記で、リチウム塩は、有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、正極と負極間のリチウムイオンの移動を促進させることができる。本発明において使用することができるリチウム塩の例として、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiSbF_(6)、LiAsF_(6)、LiCF_(3)SO_(3)、LiN(CF_(3)SO_(2))_(3)、Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N、LiC_(4)F_(9)SO_(3)、LiClO_(4)、LiAlO_(4)、LiAlCl_(4)、LiN(C_(x)F_(2x)+1SO_(2))(C_(y)F_(2y)+1SO_(2))(ここで、x及びyは自然数)、LiCl、LiI、及びリチウムビスオキサレトボラト(lithium bisoxalate borate)などの一種又は二種以上を支持(supporting)電解塩として含むものを挙げることができる。電解質においてリチウム塩の濃度は、用途によって変化することができるものであって、通常、0.1Mないし2.0Mの範囲内で使用する。) (1f) 「 」 (当審訳:[124] 本発明の二次電池は、上記要素以外にも、セパレータ、カン、電池ケース又はカスケットなどの通常の要素を追加に含むことができ、その具体的な種類も特に限定されない。 [125] また、本発明の二次電池は、上記のような要素を含み、この分野の通常的な方式及び形状で製造されることができる。本発明の二次電池が有することができる形状の例として、筒形状、角形状、コイン形状又はパウチ形状などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。) (1g) 「 」 (当審訳:[138] 以下、本発明による実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって限定されるものではない。以下、本実施例では、特に規定しない限り、単位「%」は、「原子%」を意味する。 [139] [140] 実施例1 [141] ケイ素(Si)、チタン(Ti)及び鉄(Fe)を混合(Si:Ti:Fe=67%:16.5%:16.5%)し、上記混合物をアルゴンガス下でアーク溶解法で溶融させてSi-Ti-Feの結晶質合金を製造した。製造された合金を急冷凝固法であるメルトスピニングに適用し、バンド形状のSi-Ti-Feの合金マトリックス(B相)内に活性ケイ素(Si)粒子(A相)が位置する負極活物質を製造した。上記メルトスピニング方式で急冷速度(カパロールの回転速度)は、約3,500RPMであった。) (1h) 「 」 (当審訳:[0143] 実施例2 [0144] 混合の割合(Si:Ti:Fe)を70%:15%:15%に変更したことを除いて、実施例1と同一の方式で負極活物質を製造した。 ) (1i) 「 」 (当審訳:[0146] 実施例3 [0147] 混合の割合(Si:Ti:Fe)を74%:13%:13%に変更したことを除いて、実施例1と同一の方式で負極活物質を製造した。) (1j) 「 」 (当審訳:[155] 2.XRD分析 [156] 実施例1ないし3で製造された負極活物質に対してCukα線XRD測定を行い、その結果を図4に示した。分析時に、測定角度は、10度ないし100度であり、測定速度は、分当たり4度に設定した。図4から明らかなように、実施例の負極活物質内には、活性ケイ素に起因するピーク(■)とSi-Ti-Feの合金相に起因するピーク(●)が各々観察され、これを通じて、活物質内に活性ケイ素で構成されるA相及びSi-Ti-Feの合金で構成されるB相が存在することを確認することができる。また、Ti及びFeの原子の割合を1:1に維持しながら、ケイ素の含量を67原子%から74原子%に変化させた場合にも、Si-Ti-Feの合金の存在は確認された。) (1k) 「 」 (当審訳:[158] 3.容量及びサイクル寿命特性測定 [159] 実施例2で製造された急冷凝固リボンを利用して極板を製造し、コインセル評価を実施した後、その結果を図5及び図6に示した。コイン形状の極板の製造時に、活物質、導電剤(Super P系導電剤)及びバインダー(PI系バインダー)の混合割合は、重量比で86.6:3.4:10(活物質:導電剤:バインダー)であった。製造された極板に対して0.1Cで1回、その後、0.5Cで10回まで充放電を繰り返した後、電圧及び電流量を測定した。上記で、充放電方式は、この分野において一般的に公知されているリチウム二次電池用活物質に対する充放電方式に準じて行った。図5及び図6に示されたように、繰り返し的な充放電後にも電圧及び電流量がほぼ一定に維持され、これによって、可逆的な充放電が可能であることを確認することができる。また、図6は、実施例2の負極活物質に対して0.1Cで1回、その後、0.5Cで50回まで充放電を繰り返した後、サイクルによる容量変化を測定したものであって、繰り返し的な充放電後にも放電容量が一定に維持されていることを確認することができる。) (1l) 「 」 (当審訳:[図4] ) 第5 当審の判断 1 先願発明 (1) 先願明細書等の上記(1d)には、負極活物質は、二次電池に適用されることが記載されている。 また、先願明細書等の上記(1k)には、実施例2で製造された急冷凝固リボンを利用して極板を製造することが記載されており、当該極板とは、電池の負極のことである。 したがって、負極活物質は、二次電池の負極材料として用いられることは明らかである。 (2) 先願明細書等の上記(1g)ないし(1i)から、実施例1の負極活物質は、原子比がSi:Ti:Fe=67:16.5:16.5であり、実施例2の負極活物質は、原子比がSi:Ti:Fe=70:15:15であり、実施例3の負極活物質は、原子比がSi:Ti:Fe=74:13:13であることからすると、実施例1ないし3の負極活物質は、Ti及びFeの原子の割合を1:1に維持しながら、Siの含量を67原子%から74原子%に変化させているものである。 そして、先願明細書等の上記(1j)には、「図4から明らかなように、実施例の負極活物質内には、活性ケイ素に起因するピーク(■)とSi-Ti-Feの合金相に起因するピーク(●)が各々観察され、これを通じて、活物質内に活性ケイ素で構成されるA相及びSi-Ti-Feの合金で構成されるB相が存在することを確認することができる。また、Ti及びFeの原子の割合を1:1に維持しながら、ケイ素の含量を67原子%から74原子%に変化させた場合にも、Si-Ti-Feの合金の存在は確認された。」と記載されている。 ここで、先願明細書等の上記(1l)である図4内には、「●TiFeSi_(2)」と記載されていることからすると、当該図4の実施例3における「●」で示されているピークは、TiFeSi_(2)合金相に起因するピークであるといえるから、上記(1j)における「Si-Ti-Feの合金で構成されるB相」は、TiFeSi_(2)合金相に他ならない。 そうすると、実施例1の負極活物質も、実施例3において存在が確認されたSi-Ti-Feの合金で構成されるB相であるTiFeSi_(2)合金相を含有しているといえる。 (3) 先願明細書等の上記(1a)ないし(1c)及び(1e)によれば、正極、負極活物質を含む負極、非水有機溶媒及びリチウム塩を含む電解質とを含む二次電池が記載されているといえ、上記二次電池は、非水電解質二次電池に他ならない。 (4) 先願明細書等の上記(1f)、(1h)及び(1k)によれば、実施例2の負極活物質を極板としてコインセル、すなわち、二次電池を作製していることからすると、実施例1の負極活物質も実施例2の負極活物質と同様に、二次電池の極板、すなわち、負極に用いられることは明らかである。 (5) 以上の検討事項を、本願発明の記載ぶりに則して整理すると、先願明細書等には、「TiFeSi_(2)合金相を含有する非水二次電池用負極材料を含む負極を備えた非水電解質二次電池。」との発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。 2 対比 本願発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「TiFeSi_(2)合金相」、「非水二次電池用負極材料」、「負極」は、本願発明の「TiFeSi合金相、又は、TiFeSi_(2)合金相」、「非水二次電池用電極材料」、「非水二次電池用電極」にそれぞれ相当する。 そうすると、本願発明と先願発明とは、「TiFeSi合金相、又は、TiFeSi_(2)合金相を含有する二次電池用電極材料を含有する非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池。」の点で一致し、本願発明と先願発明との間に相違点は存在しない。 したがって、本願発明は先願発明と同一である。 3 請求人の主張 請求人は、審判請求書において、先願明細書には、実施例2の負極活物質を用いて非水電解質二次電池を作製することは記載されているものの、実施例1の負極活物質は、SEM及びTEM分析、XRD分析した結果が示されているだけであり、その負極活物質(電極材料)を用いて非水電解質二次電池を作製することは記載されていないから、先願明細書には、「TiFeSi合金相、又は、TiFeSi_(2)合金相を含有する非水電解質二次電池用電極材料を含有する非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池。」の発明が記載されているとはいえない旨主張する。 確かに、先願明細書等には、実施例1の負極活物質を用いて非水電解質二次電池を作製することは明示的には記載されていない。 しかし、先願明細書等における実施例1の負極活物質及び実施例2の負極活物質は、いずれも二次電池用負極材料として用いられるものであり、先願明細書等には、上記1(4)で検討したとおり、正極、負極活物質を含む負極、非水有機溶媒及びリチウム塩を含む電解質とを含む二次電池が記載されているとともに、上記1(5)で検討したとおり、実施例2の負極活物質を極板として二次電池を作製することが記載されている以上、実施例1の負極活物質を負極材料として用いて非水電解質二次電池を作製することが示唆されているといえるから、実施例1の負極活物質を用いて非水電解液二次電池を作製することは、先願明細書等に記載されているに等しい事項であるということができる。 したがって、請求人の主張は採用できない。 5 まとめ よって、本願発明は、先願明細書等に記載された先願発明と同一である。そして、本願の発明者がその出願前の先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであり、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-05-28 |
結審通知日 | 2015-05-29 |
審決日 | 2015-06-11 |
出願番号 | 特願2011-104751(P2011-104751) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(H01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森井 隆信 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
松嶋 秀忠 河本 充雄 |
発明の名称 | 非水電解質二次電池 |
代理人 | 松本 悟 |