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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1303525
審判番号 不服2014-16355  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-19 
確定日 2015-07-23 
事件の表示 特願2013-500967「可変容量素子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日国際公開、WO2012/114931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成24年2月14日(国内優先権主張 特願2011-39754号(平成23年2月25日))を出願日とする出願であって、平成25年11月27日付け拒絶理由通知に対して平成26年1月29日付けで手続補正がなされたが、同年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月19日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。


2.本願発明

本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年8月19日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
なお、上記手続補正は、請求項1ないし17のうち請求項8ないし17を削除したものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

「【請求項1】
LiNbO_(3)またはLiTaO_(3)からなる圧電基板と、
前記圧電基板上に形成されており、配向性を有するバッファ層と、
前記バッファ層上に形成されており、印加電圧により比誘電率が変化する誘電体層と、
前記誘電体層に電界を印加し得るように設けられた第1の電極および第2の電極とを備える、可変容量素子。」


3.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2010-53399号公報(以下、「引用例」という。)には、チューナブル素子に関し、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

ア.「【0010】
図1は、本発明によるチューナブル素子10の一例を示す略横断面図である。チューナブル素子10は、基板1と、任意の電極層2と、(111)エピタキシャル成長したペロブスカイト構造強誘電体薄膜3とを含む。」
【0011】
ペロブスカイト構造強誘電体薄膜3の構成材料としては、外部電界の印加により誘電率または屈折率を変化させることが可能なチューナブル素子として機能する材料であって(111)エピタキシャル成長することが可能なものである限りにおいて、任意の材料を用いることができる。・・・(以下、省略。)」

イ.「【0014】
電極層2を設ける場合、その構成材料としては、その上に堆積されるペロブスカイト構造強誘電体薄膜3の(111)エピタキシャル成長を可能ならしめる限りにおいて、任意の材料を用いることができる。具体的には、(111)Pt、(111)Pd、(111)Ir、(111)Ru等の金属の他、(111)SrRuO_(3)、(111)LaNiO_(3)、(111)(LazSr_(1-z))CoO_(3)等の導電性金属酸化物が好適に用いられる。電極層2の厚さに特に制限はなく、0?100nmの範囲で任意に設定することができる。」

ウ.「【0025】
<チューナブル特性>
強誘電体BST薄膜のチューナブル特性(印加電界に対する比誘電率の変化)を測定するため、比誘電率の電界依存性を測定した。測定試料として、例1による厚さ180nmのBST薄膜(x=0.3)を用意した。BST薄膜の上に、上部電極として15μm角のPt電極(厚さ100nm)をスパッタリングで堆積させた。インピーダンスアナライザ(HP製4194A)を用い、温度300K、周波数100kHzにて、上下電極間に印加電界-800?800kV/cmの範囲にわたり直流電圧を印加し、電気容量を測定した。・・・(以下、省略)」

上記「ア」、「イ」及び図1によれば、引用例には、基板1上に配向性を有する電極層2が形成され、上記電極層2上に外部電界の印加により比誘電率を変化するペロブスカイト構造強誘電体薄膜が形成されたチューナブル素子が記載されている。
よって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「基板と、
前記基板上に形成されており、配向性を有する電極層と、
前記電極層上に形成されており、外部電界の印加により比誘電率が変化するペロブスカイト構造強誘電体薄膜とを備える、チューナブル素子。」


4.対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「基板」は、誘電体層を備えた素子形成のための「基板」である点で本願発明と共通するが、「圧電」基板ではない。

b.本願発明の「バッファ層」は、基板と誘電体層の間に形成され、該誘電体層をエピタキシャル成長させるために特定方向に配向している「第1の電極(層)」をいう。そして、引用発明の「電極層」は、その上に形成する誘電体層をエピタキシャル成長させるために特定方向に配向しているものではあるから、本願発明の「バッファ層」の機能を有しているといえる。

c.引用発明の「ペロブスカイト構造強誘電体薄膜」は、外部電界の印加により比誘電率が変化するものであるから、印加電圧により比誘電率が変化する本願発明の「誘電体層」に相当する。

d.引用発明の「チューナブル素子」は、本願発明の「可変容量素子」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「基板と、
前記基板上に形成されており、配向性を有するバッファ層と、
前記バッファ層上に形成されており、印加電圧により比誘電率が変化する誘電体層とを備える、可変容量素子。」

(相違点1)
基板について、本願発明は「LiNbO_(3)またはLiTaO_(3)からなる圧電」基板であるのに対し、引用発明は圧電基板ではない点。

(相違点2)
電極について、本願発明は「前記誘電体層に電界を印加し得るように設けられた第1の電極および第2の電極」を備えているのに対し、引用発明は対の電極を備えているか特定されていない点。

そこで、上記相違点1ないし2について検討する。

<相違点1について>
結晶配向してなる可変容量素子の誘電体薄膜を形成する基板としてLiNbO_(3)やLiTaO_(3)の圧電基板を用いることは、例えば特開2001-35749号公報(段落【0022】を参照。)や特開2006-120765号公報(段落【0011】、【0021】を参照。)に記載されているように周知である。
したがって、引用発明の基板として周知のLiNbO_(3)やLiTaO_(3)からなる圧電基板を用いて相違点1の構成にすることは、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

<相違点2について>
引用発明は、ペロブスカイト構造強誘電体薄膜(誘電体層)に外部電界を印加するものであり、当該外部電界を印加するためには対になる電極を設けることは当然のことであるから(上記「ウ」を参照。)、相違点2は実質的な相違点とはいえない。

そして、上記相違点1ないし2を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。


5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-20 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2013-500967(P2013-500967)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴垣 俊男太田 龍一  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 関谷 隆一
酒井 朋広
発明の名称 可変容量素子  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

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