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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J
管理番号 1303735
審判番号 不服2014-8172  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-02 
確定日 2015-07-29 
事件の表示 特願2009-278256号「シート段階で印字を行うソフトカプセル製造方法並びにその製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月23日出願公開、特開2011-120619号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年12月8日の出願であって、平成25年10月23日付けで拒絶理由が通知され、平成25年12月26日付けで意見書とともに手続補正書が提出され、平成26年1月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年5月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年12月26日付けの手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「一対のダイロール間に外皮シートを対向的に拝み合わせ状態に供給し、ダイロールの突き合わせ作用によって外皮シートの接合を図るとともに、接合に合わせて内容物を外皮シートに供給し、外皮シートから成る外皮部の内側に内容物を収容したソフトカプセルを製造する方法において、
前記外皮シートには、一対のダイロールによる接合を受けるまでの間に、レーザーマーカー機から発振されたレーザー光を照射し、外皮シートをカプセル状に成形する前の段階で、ソフトカプセルに施す適宜のマーキングを事前に施すようにしたことを特徴とする、シート段階で印字を行うソフトカプセル製造方法。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成13年10月16日に頒布された「特表2001-518826号公報 」(以下「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「充填されたゼラチンカプセルを製造する方法であって、ゼラチンストリップを形成/充填手段を有する封入ステーションにおいて並列状態となるように供給すること;該封入ステーションまでのゼラチンストリップの通路上において該ストリップの横方向の位置を監視すること;及び該ストリップの横方向の位置を予め定めた範囲内に維持するように制御することからなる方法。」(請求項10)
(2)「本発明は、ゼラチンリボンから得られるゼラチンシェル内に製品を封入することに関するものである。ゼラチンシェルに広範な製品を封入することは長く伝統がある。その基本的技術は米国特許第2234479号に記載されており、勿論それ以降充分に展開されてきている。しかし、近時の封入装置は、依然、2つのソース(供給元)から装填ステーションまでゼラチンリボンを引き出し、該装填ステーションで両方のリボンからのゼラチンストリップの断片を各内容物の周囲にわたって封止するものであった。封入は、通常、フラット・ダイ又はローラ・ダイ技術を用いて行われる。・・・ ゼラチンカプセルは、通常、柔らかいゼラチンを用いて作られるが、このゼラチンは封入前はリボン状で、非常に柔軟性がありかつ変形可能である。ゼラチンは、様々な適用のため他の成分と混合されその特性を種々変化させることができる。ここで使用する「ゼラチン」という述語は、封入プロセスで使用される範囲にあるゼラチンをベースにした組成物を包含する。ゼラチンの柔軟性と変形性は勿論重要な利点であるが、その柔軟性と変形性のため、ソース(供給元)、通常はゼラチンが流延されるドラムから封入ステーションまでゼラチンを引き出す際に、ゼラチンは非常に動きやすい傾向にある。」(4頁3?21行)
(3)「図1に示される装置には、各流延用ドラムから封入ステーション6までの、2つのゼラチンリボン2、4の通路が現れている。封入ステーション6はローラ・ダイ8を有し、このローラ・ダイ8は、慣用の方法により充填材料を封入するためくさび部材10と結合した充填機構(図示せず)と組合わさっている。リボン2は複数のローラ12の周囲を回り送り棒14の上を通って封入ステーション6まで搬送される。リボン4の通路は複数のローラ16及びセンサ装置28を回っている。複数のローラ16のうちの一つは転写ステーション18の一部をなし、転写ステーション18では印刷ローラ20から画像があてがわれる。インクはインク浴24の上に設置されたトランスファ(インク)ローラ22から印刷ローラ20に供給される。封入ステーション6におけるローラ・ダイ8には複数の凹部が形成されており、これら凹部はニップに到達し充填されるとき並列(対向する)関係となる。リボン4にあてがわれた画像を、製造されたカプセル上の適所に位置させるために、当然、あてがわれた画像と上記凹部とが適切に位置合わせされることが重要である。・・・ 図から明らかなように、印刷ローラ20から転写された画像を有するゼラチンリボン4は封入ステーション6付近まで搬送され、そこでは装置28が、カプセルを形成するローラ・ダイ8の凹部に対する、リボン上の画像の位置を監視している。」(6頁16行?7頁16行)
(4)「本発明の上記議論は転写印刷方式を用いた装置について記載したものである。しかし、本発明はかかる方式に限定されない。他の方式の印刷機構も使用可能である。それらは封入ステーションまでのルート上のゼラチンリボンの通路におけるガイドローラ間に配置させることができる。」(11頁1行?4行)
(5)各流延用ドラムから封入ステーション6にわたり、かつ、一対のローラ・ダイ8の間に、シート状の2つのゼラチンリボン2,4を供給した点が図示されている。(【図1】)

上記(1)ないし(5)の記載事項及び図示内容から見て、引用刊行物には、「2つのゼラチンリボン2,4を、封入ステーション6に設けられた一対のローラ・ダイ8の間において並列状態となるように供給し、ローラ・ダイ8には複数の凹部が形成されており、これら凹部はニップに到達し充填材料が充填されるとき並列(対向する)関係となり、ゼラチンリボン2,4から成るゼラチンシェル内に充填材料を封入した、ゼラチンカプセルを製造する方法において、シート状のゼラチンリボン4は転写ステーション18で印刷ローラ20から画像が転写され、画像が転写されたゼラチンリボン4は封入ステーション6付近まで搬送された後に、一対のローラ・ダイ8によりカプセルが形成される、ゼラチンカプセルの製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ゼラチンリボン2,4」 、「ローラ・ダイ8」、「並列状態となるように供給」、「充填材料」、「ゼラチンシェル」、「画像」、「転写」及び「ゼラチンカプセル」は、それぞれ前者の「外皮シート」、「ダイロール」、「対向的に拝み合わせ状態に供給」、「内容物」、「外皮部」、「適宜のマーキング」、「印字」及び「ソフトカプセル」に相当する。そして、後者の「ローラ・ダイ8には複数の凹部が形成されており、これら凹部はニップに到達し充填材料が充填されるとき並列(対向する)関係となり、ゼラチンリボン2,4から成るゼラチンシェル内に充填材料を封入した、ゼラチンカプセルを製造する方法」は、2つのゼラチンリボン2,4からゼラチンシェルを形成するとともに、その内部に充填材料を封入するという封入ステーション6及びローラ・ダイ8の機能等に鑑みて、前者の「ダイロールの突き合わせ作用によって外皮シートの接合を図るとともに、接合に合わせて内容物を外皮シートに供給し、外皮シートから成る外皮部の内側に内容物を収容したソフトカプセルを製造する方法」に相当するということができる。さらに、後者において、シート状のゼラチンリボン4は転写ステーション18で印刷ローラ20から画像が転写され、画像が転写された当該ゼラチンリボン4は封入ステーション6付近まで搬送された後に、一対のローラ・ダイ8によりカプセルが形成されるのであるから、ゼラチンリボン4に画像が転写されるタイミングは、ゼラチンリボン2,4が一対のローラ・ダイ8による接合を受けるまでの間であって、ゼラチンリボン2,4をカプセル状に成形する前の段階、すなわちゼラチンリボン4がシート状の段階で転写を行うということができるから、後者の「シート状のゼラチンリボン4は転写ステーション18で印刷ローラ20から画像が転写され、画像が転写されたゼラチンリボン4は封入ステーション6付近まで搬送された後に、一対のローラ・ダイ8によりカプセルが形成される、ゼラチンカプセルの製造方法」は、前者の「外皮シートには、一対のダイロールによる接合を受けるまでの間に、外皮シートをカプセル状に成形する前の段階で、ソフトカプセルに施す適宜のマーキングを事前に施すようにした、シート段階で印字を行うソフトカプセル製造方法」に相当するということができる。

以上のことから、両者は、
「一対のダイロール間に外皮シートを対向的に拝み合わせ状態に供給し、ダイロールの突き合わせ作用によって外皮シートの接合を図るとともに、接合に合わせて内容物を外皮シートに供給し、外皮シートから成る外皮部の内側に内容物を収容したソフトカプセルを製造する方法において、前記外皮シートには、一対のダイロールによる接合を受けるまでの間に、外皮シートをカプセル状に成形する前の段階で、ソフトカプセルに施す適宜のマーキングを事前に施すようにした、シート段階で印字を行うソフトカプセル製造方法」
という点(一致点)で一致する。
他方、両者は、「マーキングを施す手法に関し、本願発明ではレーザーマーカー機から発振されたレーザー光を照射するのに対し、引用発明では転写ステーション18で印刷ローラ20から転写する」点(相違点)で相違する。

第5 相違点についての検討
上記相違点について検討するにあたり、まず以下の周知技術文献1-3を検討する。
(周知技術文献1:国際公開第06/126561号(原査定において提示された文献))
ア 「本発明は、医薬品や食品等の経口投与用組成物の表面に、識別性マークを施す方法に関する。」(段落【0001】)
イ 「印刷法や刻印法に代替する方法として、パターンマスクを介して出力の小さなレーザー光を照射することにより錠剤及びカプセル剤にマーキングする方法が開示されている」(段落【0004】)

(周知技術文献2:特開2003-144063号公報)
ウ 「飲食用微小粒状物の表面にレーザー光照を用いてマーキングすることを特徴とする飲食用微小粒状物の刻印方法」(請求項1)
エ 「飲食用微小粒状物がカプセル製剤である請求項1に記載の刻印方法」(請求項2)
オ 「ソフトカプセルの場合は、一般に油又は油ベースの内容物を充填するため、工程上内容物の油状物がカプセル表面に付着し易く、有機溶媒で洗滌したり、或いは残留有機溶媒による健康上の問題から布などで清拭する対策が採られて居る。しかし乍ら、いずれの方法でも粒状物表面の油膜が十分に除去出来ず、インキによる印刷には不向きであった。」(段落【0003】)
カ 「本発明に於いては、レーザー光線を該微小粒状物に照射して所定の刻印を行うものである。このようにレーザー光線を使用し、該微小粒状物にレーザー光線を照射するだけで、該粒状物表面に所定のマーキングを非接触的に行うことが出来る。この非接触的に行うことは、極めて大きな特徴であり、飲食用である目的物上に、インキ等の異物を載置することなく、しかも細菌やその他の汚れの付着を全く考えることなく、マーキングを行うことが可能となり、極めて有利な方法となる。」(段落【0007】)
キ 「加えて、ソフトカプセルの場合の油膜の残存に基ずく従来の難点についても、たとえ油膜が残存していてもレーザー光線の照射であるためこの難点は生じず」(段落【0009】)

(周知技術文献3:特開平5-58025号公報(本願明細書において先行技術文献として提示された文献))
ク 「ガスレ-ザ-発振器より発振されたレ-ザ-光をシリンドリカルレンズを介してマスクに穿った文字、数字、記号、図形等の対象印影孔を透過せしめ集光レンズを通してカプセル剤の表面へ対象印影を掘り込んで印字するカプセル剤への印字方法」(請求項1)
ケ 「(d)カプセル表面の離型油の多少に関係なく均一に印字できる。」(段落【0009】)

これらの周知技術文献1-3の記載事項アないしケからみて、引用発明の属する薬品や食品を封入するカプセルの技術分野において、マーキングを施す手法として、レーザーマーカー機から発振されたレーザー光を照射する点は、本願出願前に周知の技術といえる。
してみると、上記相違点は本願出願前の周知技術に他ならず、引用発明において、マーキングを施すという同一の機能を奏する手法として、印刷ローラ20による転写に代えて、当該周知技術であるレーザーマーカー機から発振されたレーザー光を照射する点を採用して、本願発明の如く構成することは当業者が容易になし得たことである。
ソフトカプセルに対して非接触でマーキングできる、外皮シート表面の未乾燥状態や油分の存在にかかわらずマーキングできるという本願発明の効果についてみても、上記周知技術文献1-3の記載事項(特にオ、カ、キ、ケ。)に当該効果を奏することが開示されていることからも明らかなとおり、当業者であればごく普通に認識できた効果であって、格別なものということができない。

請求人は、引用刊行物に開示された「カプセル化前のシートに対する接触式のプリント印刷」は、非現実的な単なる願望や思いつき程度に過ぎないものであり、このような内容を組み合わせること自体に無理があり、技術的妥当性を欠く旨主張する。
仮に、引用刊行物記載の発明が、何らかの理由により、実施不能又は発明未完成であったとしても、当業者が引用刊行物から、「接触式のプリント印刷」という具体的なマーキング手法に関わらず、外皮シートをカプセル状に成形する前のシート段階でマーキングを施すとの技術的思想を認識し、これに周知技術を採用することが不可能となるものではないことは明らかである。そして、請求人が主張する「カプセル化前のシートに対する接触式のプリント印刷」に関して、上記「第5 相違点についての検討」では、具体的なマーキング手法として、「接触式のプリント印刷」ではなく、本願出願前の周知技術を採用することが容易であったと判断しているのであって、「接触式のプリント印刷」を構成要件とする発明が当業者にとって容易であったと判断しているのではないから、仮に、「カプセル化前のシートに対する接触式のプリント印刷」が実施不能又は発明未完成であったとしても、この判断に影響を及ぼすものではない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-14 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2009-278256(P2009-278256)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 高弘  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 内藤 真徳
平瀬 知明
発明の名称 シート段階で印字を行うソフトカプセル製造方法並びにその製造装置  
代理人 東山 喬彦  

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