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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1303736
審判番号 不服2014-8500  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-07 
確定日 2015-07-29 
事件の表示 特願2011-147418「信号データの符号拡散を設けたOFDMシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月27日出願公開,特開2011-217401〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,2005年8月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年8月25日 米国,2004年9月16日 米国)を国際出願日とする出願である特願2007-530118号の一部を,平成23年7月1日に新たな特許出願としたものであって,平成25年12月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成26年5月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その請求項1に係る発明は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,平成25年7月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下,「本願発明」という。)。
「【請求項1】
送信に利用できるN個の周波数サブバンドから信号データの送信のためにM個の周波数サブバンドを選択し,前記N個のサブバンドからデータシンボルの送信のためにL個の周波数サブバンドを選択するように構成される変調器を具備し,
M,N及びLは整数であり,
前記M個の周波数サブバンドは少なくとも前記L個の周波数サブバンドのサブセットを含み,
MはNに等しく,前記変調器は,前記信号データの送信のためにN個の使用可能な周波数サブバンドをすべて利用するように構成される,無線通信システムに使用する装置。」


2 先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された,国内優先権主張を伴う特願2005-20397号(特開2005-244960号)の優先権主張の元となった特願2004-18772号(本願の第1優先日(2004年8月25日)前の平成16年1月27日に特許出願され,本願の第1優先日後である平成17年9月8日に特許法第41条第3項の規定により出願公開されたとみなされる。)の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,「先願明細書」という。)には,「無線通信システム,無線送信装置,無線受信装置及び無線通信方法」として,図面とともに以下の事項が記載されている。当該事項は特願2005-20397号の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面にも実質的に記載されているものである。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は,一般に無線通信の技術分野に属し,特に直交周波数分割多重化(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の無線通信システム,無線送信装置,無線受信装置及び無線通信方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術分野では,マルチパス伝搬環境等に有利なOFDM方式の無線通信が注目を集めている。OFDM方式では,送信される情報チャネル(シンボル系列)は,互いに直交する関係に選ばれた多数のサブキャリアに乗せられ,逆フーリエ変換され,OFDMシンボルとして無線送信される。受信側では,OFDMシンボルをフーリエ変換することで,サブキャリア毎の情報を抽出し,送信された情報チャネルを復元する。この場合において,無線受信装置は,情報チャネルだけでなく制御チャネルをも受信し,制御チャネルには,所定の既知信号より成るパイロットチャネルや,総ての無線受信装置に対して共通の情報を送信する共通制御チャネル等が含まれている。制御チャネルには,所定の専用のリソースが割り当てられており,制御チャネルは無線送信装置から送信されるOFDMシンボルに多重化されている。無線受信装置は,受信したOFDMシンボルからパイロットチャネルを抽出し,同期を確保するためにそれを使用したり,チャネル推定にそれを利用したりする。このようなOFDM方式の無線通信技術については,例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
図1は,情報チャネルとパイロットチャネルとの関係を示す概念図である。図1(A)は,パイロットチャネルに所定の周波数帯域を割り当てることで,パイロットチャネルが情報チャネルと多重化されている様子を示す。図1(B)は,パイロットチャネルに所定のタイムスロットを割り当てることで,パイロットチャネルが情報チャネルと多重化されている様子を示す。
【特許文献1】特開2001-144724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(中略)
【0005】
一方,図1に示されるように,パイロットチャネル等の制御チャネルは周波数又は時間軸における特定の領域にのみ挿入されている。従って,それが挿入されていない領域で信号レベルが激しく変動するような場合には,チャネル推定等を良好に行なうことはできなくなってしまう。このような場合には,パイロットチャネル等の機能が充分に発揮されず,その目的を充分に達成していないので,制御チャネルに割り当てたリソースは有効に活用されていないことになってしまう。
【0006】
更に,制御チャネルには専用のリソースが割り当てられるので,その分だけ情報チャネル等の他のチャネルに割り当てるリソースが減少する。制御チャネル専用にリソースを折角割り当てているにもかかわらず,それが有効に利用されないならば,他のチャネルに割り当てるリソースを減らしてまで制御チャネルにリソースを確保した意義が失われてしまう。
【0007】
本発明は,上記の問題点に鑑みてなされたものであり,その課題は,OFDM方式の無線通信における情報チャネル及び制御チャネルに割り当てられるリソースの有効利用を図ることが可能な無線通信システム,無線送信装置,無線受信装置及び無線送信方法を提供することである。」

(2)「【0017】
図2は,本願実施例による無線送信装置の部分ブロック図である。無線送信装置200は,図示されているように,チャネル符号化部202と,データ変調部204と,直並列変換部(S/P変換部)207208と,2次元拡散部210と,制御チャネル多重部212と,高速逆フーリエ変換部(IFFT)214に加えて,拡散率及び振幅判断部216と,拡散率制御部218と,振幅制御部220とを有する。
【0018】
チャネル符号化部202は,ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームを受信し,適切な符号化を施す。この符号化は,例えば畳み込み符号化やターボ符号化等のような誤り訂正符号化である。
【0019】
データ変調部204は,適切に符号化された情報ビットストリームを所定の変調方式で変調する。変調方式は,例えば,QPSK変調方式,16QAM変調方式,64QAM変調方式等様々なものであり得る。
【0020】
直並列変換部206は,変調された一連の情報ビットストリームを,並列的なビットストリームに変換する。簡単のため,並列的なビットストリーム数は,サブキャリア数Ncとするが,これに限定されない。これら並列的なビットストリームは,制御チャネル多重部212に入力される。
【0021】
一方,直並列変換部208は,例えばパイロットチャネルのような制御チャネルを表現する一連の制御ビットストリームを,並列的な制御ビットストリームに変換する。この場合における制御ビットストリーム数は,簡単のためサブキャリア数Ncを符号拡散率SFで除算したもの(Nc/SF)とするが,これに限定されない。
【0022】
2次元拡散部210は,直並列変換部208にて変換された並列的な制御ビットストリームに,拡散符号を乗算する。
【0023】
図3は,2次元拡散部210の更なるブロック図を示す。図示されるように,2次元拡散部210は,マルチキャリア方式の符号分割多重接続(MC-CDMA)方式による符号拡散を行なうための要素であり,シンボル複製部302と,拡散符号生成部304と,拡散符号乗算部306とを有する。シンボル複製部302は,並列的な制御ビットストリームの1つを所定数(例えば,拡散率SF)の並列的な制御ビットストリームに変換し,変換後の制御ビットストリームを拡散符号乗算部306の一方の入力に与える。拡散符号生成部304は,符号拡散を行なうための所定の拡散符号を生成し,拡散符号乗算部306の他方の入力に与える。拡散符号乗算部306の各々は,制御ビットストリームに拡散符号を乗算することで,制御ビットストリームの符号拡散を行なう。符号拡散された制御ビットストリームは,振幅レベルを適切に調整するための乗算部222を経て制御チャネル多重部212に与えられる。
【0024】
(中略)
【0026】
制御チャネル多重部212は,直並列変換部206からの並列的な情報ビットストリームと,符号拡散された並列的な制御ビットストリームとをサブキャリア毎に加算し,Nc個のビットストリームを出力する。即ち,このNc個のビットストリームは,情報ビットストリームに,符号拡散された制御ビットストリームが多重化されたものである。
【0027】
IFFT部214は,Nc個のビットストリームを高速逆フーリエ変換することで,各サブキャリアに乗せられる情報を時間領域のビットストリームに変換する。このビットストリームは,以後不図示の帯域制限処理部,周波数変換部,電力増幅部等を含む無線部を経て無線送信される。」

(3)「【0032】
図9を参照しながら,本実施例における制御チャネルと情報チャネルの多重化及びそれらの分離について更に説明する。本実施例では,情報チャネルは通常のOFDMシンボルに含まれる情報ビットストリームであり,制御チャネルはMC-CDMA方式で符号拡散された制御ビットストリームである。これらは,制御チャネル多重部212で加算される(ステップ904)。以後IFFT部214にて変調され,ガードインターバルが付加されてOFDMシンボルとして無線送信される(ステップ906)。制御チャネルは符号拡散されているので,周波数領域でのスペクトルは,図6(A)に示されるような関係になる。この点,それが図1(A)に示されるような関係になっていた従来の方式と大きく異なる。
【0033】
無線受信装置は,受信信号から制御チャネル及び情報チャネルを識別し,それらの内容を復元する(ステップ908)。無線受信装置にて情報チャネルを復元する際には,制御チャネルはノイズとして取り扱われる。このノイズは,図6(A)に示されるように,広範な周波数領域にわたって低い振幅レベルを有し,情報チャネルの復元を妨げない。言い換えれば,制御チャネルが,情報チャネルの復元を妨げない程度のノイズとなるように,拡散率制御部218及び振幅制御部220が,符号拡散率や振幅(又は電力)を適切に調整するのである。拡散率等に関する情報は,報知チャネルのような符号化されていない制御チャネルや,情報チャネルの一部等によって,無線受信装置に通知され得るが,他の手法による通知も可能である。送信された内容を復元するのに必要な情報が,無線受信装置で使用できればよいからである。
【0034】
制御チャネルは,周波数領域の全領域にわたって連続的に挿入されている。このため,周波数軸上での急激な振幅レベル変化やフェージングにも機動的に追従することが可能になる。更に,符号化されているか否かによって,制御チャネル及び情報チャネルが区別されるので,制御チャネルに専用のリソースを割り当てることは不要である。従って,従来制御チャネルに一律に割り当てていたリソースを,情報チャネルに割り当てることが可能になる。尚,制御チャネルのうち,例えばパイロットチャネルのみを符号拡散することも可能である。」

上記記載及び当該技術分野における技術常識を考慮すると,
ア 上記(1)の【0001】,【0002】の記載によれば,先願明細書には,直交周波数分割多重化(OFDM)方式の無線通信システム内で情報チャネルと制御チャネルを送信する,無線送信装置が記載されており,上記(2)の【0021】?【0023】,(3)の【0032】,【0034】及び図2,図3,図6(A)の記載によれば,制御チャネルを表現する一連の制御ビットストリームは,直並列変換部208により,サブキャリア数Ncを符号拡散率SFで除算した(Nc/SF)個の並列的な制御ビットストリームに変換され,2次元拡散部210により2次元拡散されることによりNc個のサブキャリアの周波数領域の全領域に亘って拡散されるものである。当該領域は,制御チャネルの送信に使用するものといえる。ここで,サブキャリア数Ncは,送信に利用できるサブキャリアの数であることは明らかである。
また,上記(2)の【0018】?【0020】,【0026】,【0027】及び図2,図6(A)の記載によれば,ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームは,チャネル符号化部202で符号化され,データ変調部204で所定の変調方式で変調され,直並列変換部206でNc個の並列的なビットストリームに変換され,制御チャネル多重部212により,直並列変換部206からの並列的な情報ビットストリームと符号拡散された並列的な制御ビットストリームとがサブキャリア毎に加算されてNc個のビットストリームとなり,IFFT部214で前記Nc個のビットストリームが高速逆フーリエ変換されることで各サブキャリアに乗せられる情報が時間領域のビットストリームに変換されるものである。
したがって, 先願明細書には,「送信に利用できるNc個のサブキャリアから制御ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリアを使用し,前記送信に利用できるNc個のサブキャリアからユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリアを使用する」ことが記載されているといえる。

イ サブキャリア数の個数である「Nc」は,明らかに整数である。

ウ 先願明細書の図6(A)から明らかなように,「制御ビットストリームの送信に使用する前記Nc個のサブキャリアは,ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のために使用する前記Nc個のサブキャリアと等しい」といえる。

エ 上記アのとおりであるから,「制御ビットストリームの送信のためにNc個の送信に利用できるサブキャリアをすべて利用するように構成され」ているといえる。

したがって,先願明細書には以下の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されているものと認める。
「送信に利用できるNc個のサブキャリアから制御ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリアを使用し,前記送信に利用できるNc個のサブキャリアからユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリアを使用し,
Ncは整数であり,
制御ビットストリームの送信に使用する前記Nc個のサブキャリアは,ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のために使用する前記Nc個のサブキャリアと等しく,
制御ビットストリームの送信のためにNc個の送信に利用できるサブキャリアをすべて利用するように構成される,無線送信装置。」


3 対比・判断
(1)本願明細書の【0002】の記載によれば,本願発明の「サブバンド」は「サブキャリア」とも呼ばれるものであるから,先願発明の「送信に利用できるNc個のサブキャリア」は,明らかに本願発明の「送信に利用できるN個の周波数サブバンド」に相当する。
そして,先願明細書の「制御チャネルには,所定の既知信号より成るパイロットチャネルや,総ての無線受信装置に対して共通の情報を送信する共通制御チャネル等が含まれている。」(上記2(1)の【0002】参照。)との記載,及び一般に制御チャネルは共通制御チャネルのほか個別制御チャネルも含んでいることやシグナリングは制御チャネルを通じて行われることは技術常識であることに鑑みれば,先願発明の「制御ビットストリームの送信」は,本願発明の「信号データの送信」([当審注]:本願は特許法第36条の2第1項の規定による特許出願であるところ,本願の願書に添付された外国語書面では,「信号送信」は「signaling transmission」と記載されており,「信号」は「signal」ではなく「signaling」と解される。)に相当するものといえる。
また,先願発明の「ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信」は,本願発明の「データシンボルの送信」に相当する。
また,本願発明において「送信のために」「選択」した「周波数サブバンド」は送信のために使用されるものであることは明らかである。
また,周波数サブバンドの個数は,明らかに整数である。
更に,先願発明の無線送信装置において,先願明細書の図2に示される,IFFT部で変調するまでの構成を「変調器」と称することは任意である。
したがって,本願発明と先願発明とは,「送信に利用できるN個の周波数サブバンドから信号データの送信のために整数個の周波数サブバンドを使用し,前記N個のサブバンドからデータシンボルの送信のために整数個の周波数サブバンドを使用するように構成される変調器を具備し,周波数サブバンドの前記各個数は整数であり,」の点で差異は無い。

(2)本願発明の「前記M個の周波数サブバンドは少なくとも前記L個の周波数サブバンドのサブセットを含み」と,先願発明の「制御ビットストリームの送信に使用する前記Nc個のサブキャリアは,ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のためにに使用する前記Nc個のサブキャリアと等しく」とは,「信号データの送信のために使用する前記整数個の周波数サブバンドは,データシンボルの送信のために使用される周波数サブバンドを含む」点で差異はない。

(3)本願発明の「MはNに等しく,前記変調器は,前記信号データの送信のためにN個の使用可能な周波数サブバンドをすべて利用するように構成される」と,先願発明の「制御ビットストリームの送信のためにNc個の送信に利用できるサブキャリアをすべて利用するように構成される」とは,「前記変調器は,前記信号データの送信のためにN個の使用可能な周波数サブバンドをすべて利用するように構成される」点で差異はない。

(4)先願発明の「無線送信装置」を「無線通信システムに使用する装置」と称することは任意である。

したがって,本願発明と先願発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致している。
(一致点)
「送信に利用できるN個の周波数サブバンドから信号データの送信のために整数個の周波数サブバンドを使用し,前記N個のサブバンドからデータシンボルの送信のために整数個の周波数サブバンドを使用するように構成される変調器を具備し,
周波数サブバンドの前記各個数は整数であり,
信号データの送信のために使用する前記整数個の周波数サブバンドは,データシンボルの送信のために使用される周波数サブバンドを含み,
前記変調器は,前記信号データの送信のためにN個の使用可能な周波数サブバンドをすべて利用するように構成される,無線通信システムに使用する装置。」

一方,本願発明が,信号データの送信のために選択する周波数サブバンドの個数をM個,データシンボルの送信のために選択する周波数サブバンドの個数をL個とし,「前記L個の周波数サブバンドのサブセット」としているのに対し,先願発明は,サブキャリアの「選択」について明らかにしておらず,また,「M個」及び「L個」がいずれも同じく,送信に利用できる周波数サブバンドの数である「N個」に相当する,「Nc個」である点,及びサブセットの概念が明らかにされていない点で一応の相違がみられるので,この点について以下検討する。

ア 先願明細書の「この場合における制御ビットストリーム数は,簡単のためサブキャリア数Ncを符号拡散率SFで除算したもの(Nc/SF)とするが,これに限定されない。」(上記2(2)の【0021】参照。),「簡単のため,並列的なビットストリーム数は,サブキャリア数Ncとするが,これに限定されない。」(上記2(2)の【0020】参照。)との記載によれば,先願発明の「制御ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリア」及び「ユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリア」の個数「Nc」は一例に過ぎず,「送信に利用できるNc個のサブキャリア」から「Nc個」以外の個数のサブキャリアを選択することを排除していないことは明らかである。
してみれば,先願発明は,「送信に利用できるNc個のサブキャリアから制御ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリアを選択し,前記Nc個のサブキャリアからユーザがOFDMシンボルとして送信しようとする内容を表現する情報ビットストリームの送信のためにNc個のサブキャリアを選択し」ているといえるから,先願発明がサブキャリアの「選択」について明らかにしていない点には,実質的な差異は無い。

イ 本願発明は,MとLとの関係を特定していないが,本願明細書の【0006】等の記載からも明らかなように,Lは「1<L≦N」であり,「MはNに等し」い場合は「1<L≦M」となるから,本願発明はMがLに等しい場合,すなわちM=Lを排除していないことは明らかである。
そして,M=Lの場合でも「前記M個の周波数サブバンドは少なくとも前記L個の周波数サブバンドのサブセットを含み」と言い得ることは明らかである。
してみれば,「本願発明が,信号データの送信のために選択する周波数サブバンドの個数をM個,データシンボルの送信のために選択する周波数サブバンドの個数をL個としている」点,及び「前記L個の周波数サブバンドのサブセット」の点には,実質的な差異は無い。

そして,本願発明の課題(本願明細書の【0004】,【0005】参照。)と先願発明の課題(上記2(1)の【0005】?【0007】参照。)はほぼ同じであるから,作用効果もほぼ同じである。

したがって,本願発明は,先願の出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であって,しかも,本願発明の発明者が上記先願の発明者と同一であるとも,また,本願の出願時に,その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

( なお更にいえば,平成25年7月8日付け手続補正書による手続補正で新たに追加された本願の請求項48に係る発明は,本願発明の「MはNに等しく,前記変調器は,前記信号データの送信のためにN個の使用可能な周波数サブバンドをすべて利用するように構成される,」なる構成を「MはLに等しく,前記変調器は,信号送信およびデータ送信の両方のために前記M個の周波数サブバンドを利用するように構成される,」とするものであるところ,上述のとおり,先願発明は「M個」及び「L個」がいずれも同じく「Nc個」であるから,請求項48に係る発明も先願発明と同一であり,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。)


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,先願の出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であって,しかも,本願発明の発明者が上記先願の発明者と同一であるとも,また,本願の出願時に,その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-26 
結審通知日 2015-03-03 
審決日 2015-03-18 
出願番号 特願2011-147418(P2011-147418)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 洋  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 高野 美帆子
菅原 道晴
発明の名称 信号データの符号拡散を設けたOFDMシステム  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 井上 正  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  

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