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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1303778
審判番号 不服2014-7020  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-16 
確定日 2015-07-30 
事件の表示 特願2010- 17204「太陽電池モジュール用端子ボックス及び太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月11日出願公開、特開2011-155216〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月28日の出願であって、平成25年6月28日付けで拒絶理由が通知され、同年8月30日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、その後、平成26年1月15日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、平成26年4月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成26年4月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年4月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成26年4月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正された。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「太陽電池モジュールに装着され、上面が開放された収容凹部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と、
一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、
前記ボックス本体の側面に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と、
前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、
を備え、
前記ケーブル貫通孔は、前記ケーブル貫通孔と前記外部接続用ケーブルとの間に樹脂溜まりを備え、前記充填用樹脂は前記収容凹部内から前記樹脂溜まりに入り込む、太陽電池モジュール用端子ボックス。」

なお、本願補正発明の「前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、を備え」について、「充填用樹脂」がどこに充填されるかが必ずしも明らかでないところ、平成25年8月30日付けの意見書の
「(補正の根拠の明示)
本日付け提出の手続補正書では、[0036]段落の「…ケーブル17の芯線部17aを接続端子33a(33e)と接続した後、ボックス本体31の収容凹部内にシリコーン樹脂を充填する…」との記載に基づき、請求項1において、「前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と」を有するとした補正を行いました。」
という請求人の主張を参酌すると、「充填用樹脂」は、「ボックス本体」の「収容凹部内」に充填されるものであると解するのが相当である。

そこで、上記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

2.引用刊行物
(1)本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2006-294646号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

(a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の出力を外部へ取出すための太陽電池用端子ボックスの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜太陽電池はガラス基板等の絶縁性基板を用いていたが、近年、可撓性(フレキシブル)を有するプラスチックフィルム等を絶縁性基板とした薄膜太陽電池の研究開発が進められている。同一基板上に形成された複数の太陽電池素子が直列接続された太陽電池としては、同一基板上に多結晶シリコンまたはアモルファスシリコン(a-Si)等の薄膜半導体からなる光電変換素子、透明電極および接続電極等をパターニングしたフィルム基板型の薄膜太陽電池が公知である。例えば、特許文献1には、プラスチックフィルムを基板とした可撓性薄膜太陽電池(素子)が示されている。
【0003】
図3は、上述した従来のフィルム基板型の薄膜太陽電池素子10の構造を示す斜視図である。図3において、符号1はプラスチックフィルム基板、2はa-Siの光電変換層、3は電流収集電極である透明電極層、4は光電変換層2の下部に形成された裏面電極層(下電極層)、5はプラスチックフィルム基板1の背面に形成した接続電極層(太陽電池素子10の裏面側電極)、6は透明電極層3の領域に形成されプラスチックフィルム基板1を貫通して透明電極層3と接続電極層5との間を導通する集電ホール(集電孔、スルーホール)、7は透明電極層3の領域外に形成されプラスチックフィルム基板1を貫通して接続電極層5と裏面電極層4との間を導通する接続ホール(接続孔)である。
【0004】
図3に示されるように、太陽電池素子10の太陽光入射側は複数の単位ユニット(セル)U_(n-1)、U_(n)、U_(n+1)、U_(n+2)等に完全に分離されており、裏面側の接続電極層5も複数の単位セルE_(n-1)、E_(n)、E_(n+1)等に完全に分離されている。各分離位置、例えば単位セルU_(n)とU_(n+1)との間の分離位置(セル分割溝)8と、裏面の単位セルE_(n)とE_(n+1)との間のセル分割溝9とは相互にずらして形成されている。つまり、プラスチックフィルム基板1の太陽光入射側に形成された透明電極層3、光電変換層2および裏面電極層4は、セル分割溝8をレーザースクライブすることにより複数の単位セルU_(n)等に分離されている。さらに、プラスチックフィルム基板1の裏面側に形成された接続電極層5は、上記単位セルU_(n)等と半ピッチずらして分割溝9をレーザースクライブすることにより複数の単位セルE_(n)等に分離されている。以上のようにして、複数の単位セルを直列接続した太陽電池素子10が構成されている。
【0005】
上述した従来のフィルム基板型の薄膜太陽電池素子10は、フレキシブル性を生かしたロールツーロール(Roll to Roll)方式を用いる連続形成の製造方法により大量生産が可能である。フィルム基板型の薄膜太陽電池素子10は、薄型で軽量であること、量産性に優れているため製造コストが安価であること、大面積化が容易であること等の実用太陽電池に要求される産業上および技術上の利点を有していることから、今後の太陽電池の主流となるものと考えられている。このため、各種用途への適用が進められており、特に電力分野では、屋外環境における使用にも十分耐えるようにするため薄膜太陽電池素子10に封止保護層および補強板等の外装を施した太陽電池モジュールが既に実用化されている。外装の具体例としては、薄膜太陽電池素子10の受光面および裏面をシート状の保護層で封止し、さらに金属補強板を裏打ちしたものが挙げられる。この裏打ちをした上で、当該金属補強板の裏面側に端子ボックスを設け、当該端子ボックスに連通して金属補強板および裏面側保護層に開口した出力リード線引出し用の穴を通しておく。続いて、薄膜太陽電池素子10の電極と端子ボックスとの間に出力リード線を配線し、薄膜太陽電池素子10の出力を外部に取り出すようにする。以上のようにして構成された太陽電池モジュールが知られている。
【0006】
特許文献2には、上述のような太陽電池モジュールが記載されている。図4は、特許文献2に開示されている太陽電池モジュール50の平面図を示し、図5は図4に示される太陽電池モジュール50のXX断面図を示し、図6は太陽電池モジュール50の端子ボックス23の詳細を示す。図4?図6で同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、重複する説明は省略する。図4?図6に示される太陽電池モジュール50の製造工程においては、薄膜太陽電池素子10の受光面に、薄膜太陽電池素子10よりも厚みが相当大きいエチレンビニルアセテート(エチレンー酢酸ビニル重合体。Ethylene Vinyl Acetate : EVA)樹脂等を使用したフィルム状の接着層が予め低温で仮ラミネートされる(仮ラミネート体)。図4に示されるように、この仮ラミネート体をさらに所定の寸法に裁断した薄膜太陽電池素子10が使用される。さらに、図5に示されるように、薄膜太陽電池素子10の受光面側(図5の図面上の上部側)の表面全体を覆うように、EVA樹脂等を使用して形成されたフィルム状の接着層11、接着層11の受光面側にエチレン・テトラフルオロエチレン(ethylene tetrafluoroethylene : ETFE、エチレン/四フッ化エチレン共重合体)等を使用して形成された防湿層12、防湿層12の受光面側に形成された、EVA樹脂にガラス繊維を充填して機械的強度を高めた強化層13、強化層13の受光面側に形成された、ETFE等を使用した汚損物質付着防止用の表面保護層14が積層されている。このように、接着層11、防湿層12、強化層13および表面保護層14から構成される耐候性保護層としての受光面側保護層15が積層されて薄膜太陽電池素子10を保護している。
【0007】
図5に示されるように、受光面側と反対側の非受光面側(図面上の下部)では、薄膜太陽電池素子10の非受光面側の裏面全体を覆うように、EVA等を使用して形成されたフィルム状の接着層16、接着層16の非受光面側に防水と電気絶縁とを兼ねてETFEまたは耐熱性高分子のポリイミド(polyimide)等を使用して形成された絶縁層17、絶縁層17の非受光面側に形成された、裏面補強層(板)20(後述)との接合の役目をなすEVA樹脂等を使用したフィルム状の接着層18が順次積層される。このように、接着層16、絶縁層17および接着層18が積層されて非受光面側保護層19が形成されている。非受光面側保護層19の下(最裏面)には、鋼板(金属製平板)等を使用して作成された裏面補強層(金属補強板)20が裏打ちされる。上記太陽電池モジュール50の製造工程では、各層を積層した状態で真空ラミネータ等を用い、加圧しながら層間を熱融着して一体化する(加圧熱融着ラミネート)。
【0008】
太陽電池モジュール50の発電出力を取り出すため、図4および図5に示されるように、予め薄膜太陽電池素子10の発電領域Aの左右両側に振り分けた非発電領域B1およびB2に、半田メッキ平箔銅線からなる主配線21を敷設しておく。その上で、導電性粘着テープと半田メッキ平箔銅線とからなる補助配線22を介して、薄膜太陽電池素子10の裏面に形成した十極、一極の接続電極層5(図3参照)に接続しておく。主配線21と裏面補強層20の背面に設置した端子ボックス23との間に、主配線21に接続された出力リード線24を引出し(後で詳述)、出力ケーブル25を介して薄膜太陽電池素子10の発電出力を外部に取り出すようにしている。
【0009】
次に、太陽電池モジュール50の端子ボックス23の詳細について説明する。図6に示されるように、端子ボックス23が当接して配置された裏面補強層20に出力リード線24を引き出す穴26を開けておく。一方、非受光面側保護層19には、出力リード線24を引き出す穴26を開けておく。この穴26で、外部から挿入した出力リード線24の先端を主配線21に半田付けしている。図6において、符号23aは端子ボックス23の端子台、23bは端子ネジ、23cは端子ボックス23の蓋、27は出力ケーブル25の導体芯線、28は逆流防止ダイオード、29は端子ボックス23内の穴である。出力リード線24は穴26および端子ボックス23の穴29を通って端子台23aへ導かれ、その端部が端子ネジ23bにより逆流防止ダイオード28と共に固定される。以上のようにして、端子ボックス23の端子台23aに出力リード線24を接続した後、端子ボックス23内方に防水且つ絶縁性の封止樹脂を充填し、外部から雨水が太陽電池モジュール50の内部に浸透するのを防ぐようにしている。
【0010】
上述の端子ボックス23の取り付けは、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の接着剤を使用し、裏面補強層20に接着固定される。これらの接着剤を付けた端子ボックス23は数時間から一晩かけて、押圧負荷し、乾燥硬化させる。
【0011】
上述の接着剤のみによる端子ボックス23の取り付けでは、接着後に端子ボックス23が滑って位置ズレを発生する等の取り付け不良が発生するという問題があった。この問題を防止する方法として、特許文献3に記載されているように両面テープ等の粘着剤と接着剤とを兼用した端子ボックス23の取り付け方法が知られている。
【0012】
【特許文献1】特開2000-223727号公報
【特許文献2】特開2002-111032号公報
【特許文献3】特開2001-223382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述した従来の端子ボックスの取り付け方法には、以下のような問題点があった。
(1)硬化時間が長い。
接着剤の乾燥硬化には一晩以上の時間が必要である。粘着剤を兼用した場合でも同様に一晩以上の時間が必要と言われている。
(2)作業性が悪い。
接着剤が乾燥硬化するまで、太陽電池モジュール50を移動させることができないため、広い作業場所が必要となる。
(3)取り付け不良が発生する。
上述のように、接着剤のみによる端子ボックス23の取り付けでは、接着後に端子ボックス23が滑って位置ズレを発生する。
(4)端子ボックス23の押圧負荷を一定にするには熟練を必要とする。
接着剤を塗布した後、そのまま放置した場合、端子ボックス23に出力ケーブル25等が固定されているため、太陽電池モジュール50全体として重心を取ることができない。この結果、太陽電池モジュール50が片側に偏ったり、端子ボックス23の一部に裏面補強層20と接着されていない場所ができたりする。従って、端子ボックス23の均一且つ一定の押圧負荷が不可欠である。
(5)作業環境が良くない。
接着剤には溶剤等が使用されている。仕上げにも溶剤が使用されている。このため、作業環境を悪化させないようにするには換気設備が必要となる。
(6)材料の選択が必要である。
上述のように、接着剤により端子ボックス23を裏面補強層20に取り付けた後、端子ボックス23内方に封止樹脂を充填する。接着剤と封止樹脂との相性を考慮して、例えば硬化阻害を生じる組み合わせを避けるような各材料の選択が必要である。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、端子ボックスの取り付け作業時間が短くて作業性も良く、さらに熟練を必要としないため作業コストが低くなり、取り付け不良が発生しにくいため取り付け後の信頼性が高く、作業環境の悪化、接着剤との材料の選択等について特段に配慮を必要としない太陽電池用端子ボックスの取り付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法は、太陽電池の出力を外部へ取出す太陽電池用端子ボックスの取り付け方法であって、該太陽電池は、受光面側及び非受光面側が保護層で封止された薄膜太陽電池素子を有し、非受光面側の該保護層には金属製の補強層が裏打ちされ、該補強層の裏面に太陽電池用端子ボックスが設けられ、非受光面側の該保護層と該補強層とには連通した開口穴が設けられると共に、該開口穴を通して取出された該薄膜太陽電池素子からの出力リード線は、該太陽電池用端子ボックス側に設けられた該開口穴と同形状の穴を通して取出される構造を有しており、前記太陽電池用端子ボックスを貼り合せ硬化型のシート状接着剤を用いて前記補強層の裏面に取り付ける貼り合せ工程を備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、この発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法において、前記貼り合せ硬化型のシート状接着剤は、室温硬化型であり、2つの成分を貼り合せることにより白金触媒の下で付加反応架橋しゴム弾性体を形成することができる。
【0017】
ここで、この発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法において、前記貼り合せ工程は、前記貼り合せ硬化型のシート状接着剤を前記太陽電池用端子ボックス側と前記補強層とに貼り付けた後、前記太陽電池用端子ボックスを前記補強層の裏面に貼り合せて架橋させることができる。
【0018】
ここで、この発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法において、前記貼り合せ硬化型のシート状接着剤は、太陽電池用端子ボックスの形状に打ち抜いたものとすることができる。
【0019】
ここで、この発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法において、前記貼り合せ硬化型のシート状接着剤に前記開口穴と同形状の穴を設けることができる。
【0020】
ここで、この発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法において、前記貼り合せ硬化型のシート状接着剤は、該シート状接着剤の膜厚に応じて硬化速度が異なるものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法によれば、端子ボックスの取り付けおよび接着固定作業は、溶剤を含まず、単に貼り合せ硬化型のシート状接着剤を貼り合せるだけで良い。このため、端子ボックスの取り付け作業時間が短くて作業性も良く、さらに熟練を必要としないため作業コストを低くすることができる。さらに、取り付け不良が発生しにくいため取り付け後の信頼性が高く、作業環境も申し分なく良く、接着剤との材料の選択等について特段に配慮を必要としない太陽電池用端子ボックスの取り付け方法を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の太陽電池用端子ボックス取り付け方法を説明するための概要図を示す。図1において、太陽電池モジュール30の積層方向(下から上)とは逆の手順で組み立てを行なう。図5で示された従来の太陽電池モジュール50の構造では、太陽光入射側に防湿層12、強化層13および絶縁層16を形成していた。しかし、出願人における信頼性試験等の結果、上記各層を除いた構造でも十分信頼性のあることが判明したため、図1に示されるような記各層を除いた構造を採用した。図1で図5および図6と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、説明は省略する。
【0024】
図1に示されるように、まず、剥離処理した支持板(不図示)上に、太陽光入射側の接着層11および表面保護層14を組み立てる。次に、仮ラミネートされた薄膜太陽電池素子10を組み立てる。薄膜太陽電池素子10の裏面側の電極と、補助配線22を介して、幅6mmの半田メッキ平箔銅線(厚さ:0.1mm)からなる主配線21とを接続する。補助配線22としては、幅6mmの積層テープ(導電性粘着テープ/アルミテープ/PETテープ:商品名AIPET:リンテック株式会社製)と幅2mmの半田メッキ平箔銅線(厚さ:0.075mm)を用いることが好適である。太陽電池素子10間が接触しないように所定の間隔を維持しながら、順次組み立てを行う。
【0025】
図5に示される従来の太陽電池モジュール50と同様に、裏面補強層20(金属鋼板)における穴と同一位置に開けられた開口穴26を有する裏面側封止材料としての接着層18の開口穴26を通して、外部より挿入した出力リード線24の片側を主配線21に半田付けし、出力リード線24の他の片側を外部に取り出す。最後に、裏面補強層20として0.8mm厚の金属鋼板(サンライトGL:大洋製鋼株式会社製)を用い、裏面補強層20(金属鋼板20とも言う。)に開けたφ10mmの開口穴26と出力リード線24とを接触しないよう組み立てる。裏面補強層20の位置決め後、テフロン(登録商標)テープを用いて、剥離処理した支持板(不図示)上に金属鋼板20の端部を固定する。金属鋼板20の開口穴26より取り出した出力リード線24は、金属鋼板20の開口穴26と接触しないように折り曲げておき、金属鋼板20の開口穴26と一緒にテフロン(登録商標)テープで封止固定する。
【0026】
各材料の組み立て固定後、ラミネート装置により所定の条件(150℃、20分硬化)でラミネートして、太陽電池モジュール30を得る。引続き、端子ボックス(太陽電池用端子ボックス)23の取り付け作業を行なう(貼り合せ工程)。
【0027】
図2(A)は端子ボックス23の底面図(裏面補強層20側)を示す。図2(A)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図2(A)に示されるように、端子ボックス23の底面(裏面補強層20側)に予め0.3mm厚さの貼り合せタイプの接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aを貼付けて保管する。接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aには、端子ボックス23に設けられた開口穴26と同形状の開口穴26部分も確保され、且つ端子ボックス23と同じ寸法に打ち抜き加工されている。接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aの片側(端子ボックス23に貼り合せた側とは反対側)には剥離フィルムが付着しているため、接着作業時に剥がすだけで接着が可能である。上述のように、出力リード線24は折り曲げられて金属鋼板20の開口穴26と一緒にテフロン(登録商標)テープで封止固定されていたため、次に、出力リード線24を金属鋼板20の開口穴26よりテフロン(登録商標)テープを取り除いた後、引き起こす。
【0028】
図2(B)は接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bの平面図を示す。図2(B)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bは3mm厚さの貼り合せタイプであり、図2(B)に示されるように、開口穴26部分も確保され、且つ端子ボックス23と同じ寸法に打ち抜き加工されている。出力リード線24が金属鋼板の穴26に接触しないようにして、金属鋼板20の所定位置(金属鋼板の穴26と開口穴26部分とが合う位置)に接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bを貼付け固定する。
【0029】
図2(C)は端子ボックス23の断面図を示す。図2(C)で図1、図2(A)および図2(B)と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。上述のように接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bが金属鋼板20の所定位置に貼付け固定された状態で、図2(C)に示されるように、貼り合せタイプの接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aが貼付けられた端子ボックス23を、ポリマーエース-B(HM-50)34-Bの位置に両者の開口穴26部分を合わせて貼り合せ、硬化を開始する。貼り合せは接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aの片側に付着した剥離フィルムを剥がすことにより行う。図2(C)において、符号34-A/Bは、接着された状態の接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aと接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bとを示す。
【0030】
上述のように接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aと接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bとを接着してから2時間経過後、端子ボックス23内に2液型シリコン樹脂KE200/XE200(信越化学工業株式会社製)材料を混合充填し、硬化させて水分浸入防止を兼ねた絶縁処理を行い、端子ボックス蓋23cを取り付けた。
【0031】
貼り合せ後すぐ、端子ボックス23の出力ケーブル25を持ち上げたところ、しっかり接着していて剥離しなかった。すなわち、粘着効果も維持していることが判明した。従って、一晩放置する必要がなく、接着後、短時間で移動が可能であるため、広い作業面積を必要としない利点もある。
【0032】
貼り合せ硬化型のシート状接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-A等は、2つの成分を別々にシート状に形成し、剥離フィルムで覆って、各成分の飛散および粘着を防止する。膜厚は各種作成できるが、通常0.2mmから3.0mmが好適である。膜厚が0.2mm以下の寸法の場合、製造工程が困難であり、且つ取扱いが難しい。一方、膜厚が3.0mm以上では、貼り合せ後の付加反応架橋に長時間を要するため、作業性が落ちる可能性がある。
【0033】
貼り合せ硬化型のシート状接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-A等は、室温硬化型であり、2つの成分を貼り合せることにより白金触媒の下で付加反応架橋し、ゴム弾性体を形成することができる。このため、端子ボックス23と金属鋼板20とに各々貼り付けた後、両者を貼り合せるだけで架橋させることができる。貼り合せ硬化型のシート状接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-A等の形状寸法としては、端子ボックス23の形状および出力リード線25の取り出し開口穴26形状に打ち抜きしたものを使用することにより、作業性を向上させることができる。
【0034】
さらに、貼り合せ硬化型のシート状接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-A等は、その膜厚によって硬化速度を変化させることができるという特徴がある。このため、端子ボックス23の形状により、膜圧の使い分けが可能である。
【0035】
上述のように金属鋼板20への端子ボックス23の取り付け作業は簡便であり、電気的にも機械的にも信頼性が高い太陽電池モジュールを提供することができる。
【0036】
以上より、本発明の太陽電池用端子ボックスの取り付け方法によれば、端子ボックス23の取り付けおよび接着固定作業は、溶剤を含まず、単に2つの貼り合せ硬化型のシート状接着剤を貼り合せるだけで良い。このため、端子ボックス23の取り付け作業時間が短くて作業性も良く、さらに熟練を必要としないため作業コストを低くすることができる。さらに、取り付け不良が発生しにくいため取り付け後の信頼性が高く、作業環境も申し分なく良く、接着剤との材料の選択等について特段に配慮を必要としない太陽電池用端子ボックスの取り付け方法を提供することができる。
【0037】
比較形態.
貼り合せタイプの接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-A等を使用せずに、従来のシリコン接着剤KE45 (信越化学工業株式会社製)を端子ボックス23側に塗布し、金属鋼板20に貼り付けた以外は実施形態1と同様とした。シリコン接着剤KE45の硬化のために一晩室温で放置した。上記塗布作業は均一膜を得るために細心の注意を払う必要がある。端子ボックス23外にはみ出たシリコン接着剤KE45の掃除には溶剤を用いて仕上げを行なった。
【0038】
上述の従来の方法(比較形態)では、実施例1と比較して取り付け作業に倍以上の時間がかかり、且つ溶剤を使用するため、作業環境的には厳しい条件であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の活用例として、太陽電池用端子ボックスの取り付けに対して適用することができる。」

(b)「【図1】

【図2(A)】

【図2(B)】

【図2(C)】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】



上記記載事項(a)、(b)(特に、図1、図2(C))から、「端子ボックス23」は、「端子台23a」を収容する凹部を有すること、また、「端子ボックス23」の側面に「出力ケーブル25」を貫通させる孔が設けられていることは、当業者には明らかである。

すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「太陽電池モジュール30の発電出力を取り出すため、半田メッキ平箔銅線からなる主配線21を敷設しておき、薄膜太陽電池素子10の裏面側の電極と、補助配線22を介して、主配線21とを接続し、
裏面補強層20(金属鋼板)における穴と同一位置に開けられた開口穴26を有する裏面側封止材料としての接着層18の開口穴26を通して、外部より挿入した出力リード線24の片側を主配線21に半田付けし、出力リード線24の他の片側を外部に取り出し、
貼り合せタイプの接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aが貼付けられた端子ボックス23を、ポリマーエース-B(HM-50)34-Bの位置に両者の開口穴26部分を合わせて貼り合せ、硬化を開始し、
出力リード線24は穴26および端子ボックス23の穴29を通って端子ボックス23の端子台23aへ導かれ、その端部が端子ネジ23bにより固定されて、端子ボックス23の端子台23aに出力リード線24を接続し、出力ケーブル25を介して薄膜太陽電池素子10の発電出力を外部に取り出すように、端子ボックス23の側面に出力ケーブル25を貫通させる孔が設けられており、
接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aと接着剤ポリマーエース-B(HM-50)34-Bとを接着してから2時間経過後、端子ボックス23の端子台23aを収容する凹部内に2液型シリコン樹脂KE200/XE200(信越化学工業株式会社製)材料を混合充填し、硬化させて水分浸入防止を兼ねた絶縁処理を行い、端子ボックス蓋23cを取り付けた、出力ケーブル25を備えた端子ボックス23。」

(2)本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2007-311665号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

(a)「【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュールの電力を取り出すために使用する端子ボックス及び当該端子ボックスを組み込んだ太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の端子ボックスは、(1) 端子板などを組み込んだ基板と(2) 周壁部と蓋部の一体物、に2分割した構成を採用し、端子ボックスを太陽電池モジュールに組み付けた後に端子ボックス内への樹脂の充填を不要としたものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004-63651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の端子ボックスは、基板と周壁部などの一体物が個別に必要となり、端子ボックス作成の費用が嵩み、また、太陽電池モジュールへの組み付けの工程が多工程となり、また、複雑化する。また、端子ボックスと太陽電池モジュール間の付着部分及び/又は端子ボックスにおける外部接続ケーブル取り出し部分の水密確保にも不安が残る。さらに、上述した従来の端子ボックスを組み込んだ太陽電池システムは、長期間に渡るシステムの耐久性、信頼性に不安が残る。
【0004】
そこで、本発明は端子ボックス作成の費用を一層低減し、太陽電池モジュールへの組み付け工程の軽減と単純化を可能とする端子ボックスを得ることを課題とする。また、本発明は、端子板内への水の浸入をより一層防止可能な端子ボックスを得ることを課題とする。
【0005】
また、本発明は、作成費用を一層低減した端子ボックスを使用し、太陽電池モジュールへの組み付け工程の軽減と単純化を実現する端子ボックスの取り付け方法を得ることを課題とする。また、本発明は、端子板内への水の浸入をより一層防止可能とする、太陽電池モジュールへの端子ボックスの取り付け方法を得ることを課題とする。
【0006】
さらに、本発明は、作成費用を一層低減し、長期間に渡る耐久性、信頼性が一層向上する太陽電池システムを得ることを課題とする。
【0007】
本発明のその他の課題は、本発明の説明により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、
(1) 太陽電池モジュールの出力電線を端子ボックスの端子板に接続し、
(2) 当該端子ボックスを反転して太陽電池モジュールに付着する、
という端子ボックスと太陽電池モジュールの取り付け方法に想到し、当該取り付け方法に適する端子ボックスの実現を企画し、本発明に至った。
【0009】
本発明の一の態様にかかる端子ボックスは、筐体、端子板と一方端部が前記端子板に接続された外部接続ケーブルを含む太陽電池モジュール用の端子ボックスにおいて、前記筐体は、底板と、前記底板から立ち上がる周壁と、前記周壁の上端部の全域にわたり前記周壁の上端に形成された付着部を有し、前記底板と前記周壁は、前記筐体の内部と外部を水密に区画し、前記付着部の内周は筐体開口部を形成していて、前記底板又は周壁にケーブル貫通部を有し、前記外部接続ケーブルは前記ケーブル貫通部を通過し、前記外部接続ケーブルの他方端部は前記筐体の外部に位置付けられ、前記ケーブル貫通部と前記外部接続ケーブルは水密に保持され、前記端子板は前記筐体の内部に、前記筐体に固定されて配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記ケーブル貫通部は、前記底板又は周壁から前記筐体の外側に向って突設された鞘部であってもよい。
【0011】
本発明によれば、鞘部により端子ボックス内への水の浸入経路が延長される結果、一層水密状態を保持可能な端子ボックスとなる。
【0012】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記端子板はその端部が、前記周壁の近傍であって、前記付着部の近傍、かつ前記付着部の表面よりも前記底板側に位置付けられていてもよい。
【0013】
本発明において、端子板の当該端部を含みその近接領域、又は当該端部に近接する領域は、太陽電池モジュールから延設される出力電線の受接部である。
本発明によれば、出力電線受接部が太陽電池モジュールの出力電線導出部に近づき、端子ボックス内に遊動状態で収容される出力電線を短くすることが可能となるので、出力電線同士の不慮の接触や、出力電線と端子ボックス内の構造物との接触を抑制可能となり、一層、反転しての付着に適した端子ボックスとなる。
【0014】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記筐体は、熱可塑性合成樹脂を材料とし、一体成型により形成されたものであってもよい。
【0015】
本発明によれば、筐体の水密確実化が達成され、かつ、作成費用と作成工数が低減される端子ボックスとなる。
【0016】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記付着部の少なくとも一部の領域が、裏面塗布コーキング剤の表・側面到達形状を備えていてもよい。
【0017】
本発明によれば、端子ボックスの付着部であって、その表面に接着剤塗布が困難な部分(例えば、出力電線が跨ぐ付着部など)には、太陽電池モジュールに付着後に、端子ボックス側からコーキング剤を塗布し、当該コーキング剤を水密保持に好適な位置に位置付けることが可能となり、一層、取り付け工程の単純化と、取り付け後の水密を図ることが可能な端子ボックスとなる。
【0018】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記裏面塗布コーキング剤の表・側面到達形状は、前記付着部に設けられた貫通部分であってもよい。
【0019】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記裏面塗布コーキング剤の表・側面到達形状は、前記付着部に設けられた前記付着部の表面に凹の樋であり、前記樋の両端部に貫通穴を有していてもよい。
【0020】
本発明にかかる端子ボックスの好ましい実施態様にあっては、前記裏面塗布コーキング剤の表・側面到達形状は、前記付着部の外周端面が、前記付着部の表面より前記付着部の裏面が前記筐体の外部方向に張り出す形状であってもよい。
【0021】
本発明の他の態様にかかる太陽電池モジュールに端子ボックスを取り付ける方法は、以下の工程からなることを特徴とする。
イ.本発明にかかる端子ボックスを準備する工程。
ロ.太陽電池モジュールの出力電線導出部から延設される出力電線を、前記端子ボックスの前記筐体開口部から前記端子ボックス内に導き、前記出力電線を前記端子ボックスの前記端子板に接続する工程。
ハ.前記端子ボックスの前記付着部を前記太陽電池モジュールの表層に対面させるとともに、前記出力電線を前記端子ボックス内に収容し、前記太陽電池モジュールの前記出力電線導出部を前記端子ボックスの前記筐体開口部の面内に位置付けて、前記端子ボックスを前記太陽電池モジュールに付着する工程。
【0022】
本発明のその他の態様にかかる太陽電池モジュールに端子ボックスを取り付ける方法は、以下の工程からなることを特徴とする。
イ.本発明にかかり、前記付着部の少なくとも一部の領域が、裏面塗布コーキング剤の表・側面到達形状を備えている端子ボックスを準備する工程。
ロ.太陽電池モジュールの出力電線導出部から延設される出力電線を、前記端子ボックスの前記筐体開口部から前記端子ボックス内に導き、前記出力電線を前記端子ボックスの前記端子板に接続する工程。
ハ.前記端子ボックスの前記付着部を前記太陽電池モジュールの表層に対面させるとともに、前記出力電線を前記端子ボックス内に収容し、前記太陽電池モジュールの前記出力電線導出部を前記端子ボックスの前記筐体開口部の面内に位置付けて、前記端子ボックスを前記太陽電池モジュールに付着又は仮固定する工程。
二.前記端子ボックスの付着部にある裏面塗布コーキング剤の表・側面到達形状にコーキング剤を塗布する工程。
【0023】
本発明によれば、端子ボックスの付着部への接着剤の塗布作業が軽減されるかまたは皆無となるとともに、コーキング剤の塗布作業がより一層容易化される。
【0024】
本発明の他の態様にかかる太陽電池システムは、本発明にかかる太陽電池モジュールに
端子ボックスを取り付ける方法により製造される太陽電池モジュールと端子ボックス一体物を含む太陽電池システムである。
【0025】
以上説明した本発明、本発明の好ましい実施態様、これらに含まれる構成要素は可能な限り組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる端子ボックスは、付着部を有し、底板と周壁が筐体の内部を水密に区画している等の構成を採用したので、端子ボックスを反転しての太陽電池モジュールへの付着に適した端子ボックスである。そして本発明によれば、端子ボックス作成の費用を低減し、太陽電池モジュールへの組み付け工程の軽減と単純化が可能と端子ボックスが得られる効果を有する。また、端子板内への水の浸入をより一層防止可能な端子ボックスを得ることができる。
【0027】
また、本発明にかかる太陽電池モジュールに端子ボックスを取り付ける方法は、作成費用を一層低減した端子ボックスを使用し、太陽電池モジュールへの組み付け工程の軽減と単純化を実現する取り付け方法となる。また、端子板内への水の浸入が、より一層、防止される効果を奏する取り付け方法である。
【0028】
さらに、本発明にかかる太陽電池システムは、作成費用を一層低減し、長期間に渡る耐久性、信頼性が一層向上する太陽電池システムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施例にかかる太陽電池モジュール用端子ボックスと太陽電池システムをさらに説明する。本発明の実施例に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載のない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
図1は、本発明にかかる太陽電池システムの説明図である。太陽電池システム101は、太陽電池モジュール6、端子ボックス1を含み、必要に応じてインバータ(図示しない)、分電盤(図示しない)などを含む。端子ボックス1は、端子ボックスの付着部13を太陽電池モジュール6の表層に位置付けて、太陽電池モジュール6に付着されている。太陽電池モジュール6は、通常、複数の太陽電池セルを含み、これら複数の太陽電池セルの一定数を直列に接続してセルストリングスとし、セルストリングの両端に接続した出力電線から電力が取り出される。
【0031】
端子ボックス1は、上述した出力電線が接続される端子板、当該端子板に接続された外部接続用ケーブル30を有し、外部接続用ケーブル30の先端にはコネクタ33、34を備えていて、隣接する端子ボックス1と接続される。図示した太陽電池モジュール6においては、出力電線は太陽電池モジュール6の裏面中央部から取り出され、端子ボックス1は当該出力電線の導出部に覆い被さるように、太陽電池モジュール6の裏面中央部に付着されている。
【0032】
図2は、本発明にかかる端子ボックス1を筐体開口部16側から見た一部切り欠き斜視図であり、図3は、本発明にかかる端子ボックス1を底板11側から見た斜視図である。
【0033】
端子ボックス1は筐体10、2個の端子板20と2本の外部接続ケーブル30を含む。外部接続ケーブル30の芯線31を端子板20の一端が巻き込む状態で、端子板20の端部がかしめられ、外部接続ケーブル30の一方端部は端子板20に接続されている。
【0034】
筐体10は、底板11、底板11から上方に立ち上がる周壁12と、周壁12の上端部の全域にわたり、周壁12の上端に形成された付着部13を有している。周壁12は底板11のどの領域から立ちあがっていてもよいが、端子ボックスの材料節約、端子ボックスの小型化、後述する付着部13へのコーキング剤の塗布作業性などの観点から、周壁12は底板11の外周から立ちあがっていることが好ましい。
【0035】
周壁12は、底板11の外周全領域を取り囲んでいる。底板11と周壁12は連続的に形成されていて、筐体10の内部と外部を水密に区画している。
【0036】
付着部13は、周壁の上端から筐体10の外側に向って張り出した庇形状である。もっとも、付着部は、その表面が端子ボックス1を太陽電池モジュールの表層に一定の強度で貼り付けるのに十分な面積を有していればよい。従って、例えば、周壁の厚さを上方に向うほど厚くして上端を付着部としてもよく、また、筐体の内側に向けて張り出す形状であってもよい。筐体材料の節約や、端子板などの内部構造物の組み込み容易性、太陽電池モジュールの出力電線と、端子板の接続作業容易性などの観点より、付着部は、周壁から外に向けて庇状に張り出す形状とすることが好ましい。
【0037】
付着部13の内周は筐体開口部16を形成している。図示した実施例においては、付着部13の内周は、周壁12上端の内周に等しい。筐体開口部16は、端子板などの内部構造体の組み込み作業、太陽電池モジュールの出力電線と端子板の接続作業を行うための開口であり、また、太陽電池モジュールの出力電線を収容するための開口である。
【0038】
周壁12の一の領域である周壁122に鞘部42が形成されている。鞘部42の内部は空洞であり、外部接続ケーブル30が鞘部42を通過している。外部接続ケーブル30の他方端部は、筐体10の外部に位置付けられている。外部接続ケーブル30の他方端部は、図2、図3には図示していないコネクタ33、コネクタ34がそれぞれ接続されている。
【0039】
外部接続ケーブル30を空洞部に収納した鞘部は、鞘部外周と、鞘部の外であって鞘部の近傍に存在する外部接続ケーブル外周を、一体的に封じるカバーにより水密に保持されている。当該カバーは、溶融状態の熱硬化性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなど)を、鞘部と外部接続ケーブルの外周囲に一体的に付着・成型して作成することができる。また、鞘部と外部接続ケーブルの外周囲に熱収縮樹脂チューブ(例えば、ポリ塩化ビニルチューブなど)を被せて、熱を加えて付着・成型してもよい。さらに、鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填してもよい。なお、当該カバーは図示していない。
【0040】
鞘部42は、筐体10の外部から内部への水の浸入経路延長を図り、ひいては水の浸入防止を図るものであり、例えば、鞘部の外周にネジを螺設し、外部接続ケーブルを袋ナットにより螺子止めして、防水と固定を図るものでもよい。また、鞘部は、筐体の底板に設けてもよい。
【0041】
さらに、鞘部は設けず、例えば、筐体10の周壁あるいは底板に区画領域を作成し、外部接続ケーブルを貫通させた後に、当該区画領域にシリコン樹脂などを充填して水密を図ってもよい。このシリコン樹脂充填作業は、端子ボックス単体の組み立て作業中に行うものであり、例え、固化時間が長くなっても、硬化待ちの間一時保管場所に大きな作業場所が必要となるものではない。この点で、従来の端子ボックス組み付け作業において、太陽電池モジュールと端子板一体物における端子ボックス内へのシリコン樹脂充填作業及び引続く硬化待ち作業とは異なる。
【0042】
端子ボックス作成の費用低減、端子ボックス自体の組み立て作業軽減などの観点から、外周周囲面が平滑な(すなわち螺子を刻まない)鞘部を設け、外部接続ケーブル挿入後に、カバーを形成する又は鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分に樹脂を充填して、鞘部と外部接続ケーブル間の密閉を図ることが好ましい。
【0043】
鞘部の周壁又は底板からの突出長さは、通常、15mm以上であり、好ましくは25mm以上である。当該突出長さに特に上限はないが、その長さは好ましくは、50mm以下である。」

(b)「【0070】
図7は、端子ボックス1を太陽電池モジュールに取り付ける工程の説明図である。図7の紙面は太陽電池モジュールの出力電線導出部61が存在する面であり、出力電線導出部61から出力電線62が延設されている。
【0071】
(a)を参照して、出力電線導出部61の近傍に端子ボックス1を位置付ける。そして、出力電線62を、付着部132の表面146を跨いで、端子ボックス1の筐体開口部16から端子ボックス1内へ導く。出力電線62の先端部を、端子板20の出力電線受接部22に半田付けなどで接続する。」

(c)「【図1】

【図2】

【図3】

【図7】



3.対比
(1)本願補正発明と引用発明1との対比
(a)引用発明1の「太陽電池モジュール30」、「端子ボックス23」、「薄膜太陽電池素子10」、「出力リード線24」、「端子台23a」、「出力ケーブル25」、「出力ケーブル25を貫通させる孔」、「2液型シリコン樹脂KE200/XE200(信越化学工業株式会社製)材料」及び「出力ケーブル25を備えた端子ボックス23」は、それぞれ、本願補正発明の「太陽電池モジュール」、「ボックス本体」、「太陽電池」、「接続線」、「接続端子」、「外部接続用ケーブル」、「ケーブル貫通孔」、「充填用樹脂」及び「太陽電池モジュール用端子ボックス」に相当する。

(b)引用発明1の「端子ボックス23」は「端子台23aを収容する凹部」を有し、また、「端子ボックス蓋23c」に対応する箇所が開放されていることは明らかであり、さらに、「貼り合せタイプの接着剤ポリマーエース-A(HM-50)34-Aが貼付けられた端子ボックス23を、ポリマーエース-B(HM-50)34-Bの位置に両者の開口穴26部分を合わせて貼り合せ、硬化」するのであるから、引用発明1の「端子ボックス23」は、本願補正発明の「太陽電池モジュールに装着され、上面が開放された収容凹部を有するボックス本体」に相当する。

(c)引用発明1の
「太陽電池モジュール30の発電出力を取り出すため、半田メッキ平箔銅線からなる主配線21を敷設しておき、薄膜太陽電池素子10の裏面側の電極と、補助配線22を介して、主配線21とを接続し、
裏面補強層20(金属鋼板)における穴と同一位置に開けられた開口穴26を有する裏面側封止材料としての接着層18の開口穴26を通して、外部より挿入した出力リード線24の片側を主配線21に半田付けし、出力リード線24の他の片側を外部に取り出し、」
「出力リード線24は穴26および端子ボックス23の穴29を通って端子ボックス23の端子台23aへ導かれ、その端部が端子ネジ23bにより固定されて、端子ボックス23の端子台23aに出力リード線24を接続」することと、本願補正発明の
「前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と」「を備え」ることとは、
「前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの接続線が接続される接続端子と」「を備え」ることで一致する。

(d)引用発明1の「出力ケーブル25を介して薄膜太陽電池素子10の発電出力を外部に取り出すように、端子ボックス23の側面に出力ケーブル25を貫通させる孔が設けられて」いることは、本願補正発明の
「一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、
前記ボックス本体の側面に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と」「を備え」ることに相当する。

(e)引用発明1の「端子ボックス23の端子台23aを収容する凹部内に2液型シリコン樹脂KE200/XE200(信越化学工業株式会社製)材料を混合充填し、硬化させて水分浸入防止を兼ねた絶縁処理を行」うことは、本願補正発明の「前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、を備え」ることに相当する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「太陽電池モジュールに装着され、上面が開放された収容凹部を有するボックス本体と、
前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と、
一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、
前記ボックス本体の側面に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と、
前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、
を備える、太陽電池モジュール用端子ボックス。」
で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
(イ)本願補正発明では、「接続線」及び「接続端子」が複数であるのに対して、引用発明1では、「出力リード線24」、「端子台23a」が複数ではない点。

(ロ)本願補正発明では、「前記ケーブル貫通孔は、前記ケーブル貫通孔と前記外部接続用ケーブルとの間に樹脂溜まりを備え、前記充填用樹脂は前記収容凹部内から前記樹脂溜まりに入り込む」のに対して、引用発明1では、「出力ケーブル25を貫通させる孔」の詳細な構成が明らかでない点。

4.判断
(1)相違点(イ)について
太陽電池モジュールの端子ボックスにおいて、接続線及び接続端子が複数であるものは、引用文献2(「出力電線62」及び「出力電線受接部22」:図2、7等参照)、特開2002-141537号公報(「太陽電池モジュールの電極a」及び「端子板20」:図3、7、12等参照)、特開2005-353734号公報(「リード40」及び「端子板30」:図2等参照)、特開2007-184646号公報(「太陽電池モジュールの電極a」及び「端子板20」:段落【0019】、図1等参照)に示されるように周知であるから、引用発明1の「出力リード線24」、「端子台23a」を複数とすることは、当業者には容易である。

(2)相違点(ロ)について
一般に、太陽電池モジュールにおいて、端子ボックスから水が浸入することを防止することは周知の課題であって、引用文献1にも、「端子ボックス23内方に防水且つ絶縁性の封止樹脂を充填し、外部から雨水が太陽電池モジュール50の内部に浸透するのを防ぐようにしている。」(段落【000れていることは明らかである。
また、引用文献2には、「端子ボックスと太y電池モジュール間の付着部分及び/又は端子ボックスにおける外部接続ケーブル取り出し部分の水密確保にも不安が残る。」(段落【0003】)ことから、「端子板内への水の浸入をより一層防止可能な端子ボックスを得ることを課題と」(段落【0004】)して、端子ボックス1(本願補正発明の「太陽電池モジュール用端子ボックス」、引用発明1の「出力ケーブル25を備えた端子ボックス23」に相当)の筺体10(本願補正発明の「ボックス本体」に相当)の周壁12(本願補正発明の「側面」、引用発明1の「側面」に相当)の一の領域である周壁122に鞘部42(本願補正発明の「ケーブル貫通孔」、引用発明1の「出力ケーブル25を貫通させる孔」に相当)が形成され、鞘部42の内部は空洞であり、外部接続ケーブル30が鞘部42を通過しており、鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分(本願補正発明の「樹脂溜まり」に相当)にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填することにより、鞘部42が、筐体10の外部から内部への水の浸入経路延長を図り、ひいては水の浸入防止を図るものであること(段落【0038】?【0040】)が記載されている。
すると、引用発明1において、「端子ボックス23」における「出力ケーブル25を貫通させる孔」からの水の浸入をより一層防止するために、引用文献2に記載された、端子ボックス1の筺体10の周壁12の一の領域である周壁122に鞘部42が形成され、鞘部42の内部は空洞であり、外部接続ケーブル30が鞘部42を通過しており、鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填する構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
しかも、その際、鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填するには、鞘部の両端のうちの少なくとも一方から充填することは自明であり、また、引用発明1では、「端子ボックス23の端子台23aを収容する凹部内に2液型シリコン樹脂KE200/XE200(信越化学工業株式会社製)材料を混合充填」するのであるから、鞘部の端子ボックス側の端部から樹脂を充填するようにすることは、技術の具体的適用に伴い、当業者の通常の創作能力を発揮することにより、適宜設計し得る事項にすぎない。
すると、引用発明1において、引用文献2に記載された技術事項を採用して、上記相違点(ロ)に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)効果について
本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)結論
本願補正発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年8月30日付けの手続補正により補正された、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「太陽電池モジュールに装着されるボックス本体と、
前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と、
一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、
前記ボックス本体に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と、
前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、
を備え、
前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂が前記ボックス本体の収容凹部内から前記ケーブル貫通孔内部に入り込むように樹脂溜まりを設けたことを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。」

なお、本願発明の「前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、を備え」についても、上記「第2」「[理由]」「1.」に記載したとおり、「充填用樹脂」は、「ボックス本体」の「収容凹部内」に充填されるものであると解するのが相当である。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献2の記載内容は、上記「第2」「[理由]」「2.」「(2)」に記載したとおりである。

すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「筐体10、2個の端子板20と2本の外部接続ケーブル30を含む端子ボックス1であって、
筐体10は、底板11、底板11から上方に立ち上がる周壁12と、周壁12の上端部の全域にわたり、周壁12の上端に形成された付着部13を有しており、
端子ボックス1は、端子ボックスの付着部13を太陽電池モジュール6の表層に位置付けて、太陽電池モジュール6に付着され、太陽電池モジュール6は、通常、複数の太陽電池セルを含み、これら複数の太陽電池セルの一定数を直列に接続してセルストリングスとし、セルストリングの両端に接続した出力電線62を、付着部132の表面146を跨いで、端子ボックス1の筐体開口部16から端子ボックス1内へ導いて、出力電線62の先端部を、端子板20の出力電線受接部22に半田付けなどで接続し、また、外部接続ケーブル30の芯線31を端子板20の一端が巻き込む状態で、端子板20の端部がかしめられ、外部接続ケーブル30の一方端部は端子板20に接続し、
周壁12は、底板11の外周全領域を取り囲んでいて、底板11と周壁12は連続的に形成されて、筐体10の内部と外部を水密に区画しており、周壁12の一の領域である周壁122に鞘部42が形成され、鞘部42の内部は空洞であり、外部接続ケーブル30が鞘部42を通過していて、外部接続ケーブル30の他方端部は、筐体10の外部に位置付けられており、
鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填した、端子ボックス1。」

3.対比
(1)本願発明と引用発明2との対比
(a)引用発明2の「太陽電池モジュール6」、「筺体10」、「太陽電池セル」、「出力電線62」、「端子板20」、「外部接続用ケーブル30」、「鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分」及び「端子ボックス1」が、それぞれ、本願発明の「太陽電池モジュール」、「ボックス本体」、「太陽電池」、「接続線」、「接続端子」、「外部接続用ケーブル」、「樹脂溜まり」及び「太陽電池モジュール用端子ボックス」に相当し、また、引用発明2の「鞘部42」は、本願発明の「ケーブル貫通孔」及び「前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所」に相当する。

(b)引用発明2の「筐体10」「を含む端子ボックス1であって、」「筐体10は、底板11、底板11から上方に立ち上がる周壁12と、周壁12の上端部の全域にわたり、周壁12の上端に形成された付着部13を有しており、端子ボックス1は、端子ボックスの付着部13を太陽電池モジュール6の表層に位置付けて、太陽電池モジュール6に付着され」ることは、本願発明の「太陽電池モジュールに装着されるボックス本体と」「を備え」ることに相当する。

(c)引用発明2の「セルストリングの両端に接続した出力電線62」という構成から、「出力電線62」は2個であり、また、「2個の端子板20」「を含む」ことから、引用発明2の「太陽電池モジュール6は、通常、複数の太陽電池セルを含み、これら複数の太陽電池セルの一定数を直列に接続してセルストリングスとし、セルストリングの両端に接続した出力電線62を、付着部132の表面146を跨いで、端子ボックス1の筐体開口部16から端子ボックス1内へ導いて、出力電線62の先端部を、端子板20の出力電線受接部22に半田付けなどで接続」することは、本願発明の「前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と」「を備え」ることに相当する。

(d)引用発明2の「外部接続ケーブル30の芯線31を端子板20の一端が巻き込む状態で、端子板20の端部がかしめられ、外部接続ケーブル30の一方端部は端子板20に接続し、」「周壁12の一の領域である周壁122に鞘部42が形成され、鞘部42の内部は空洞であり、外部接続ケーブル30が鞘部42を通過していて、外部接続ケーブル30の他方端部は、筐体10の外部に位置付けられて」いることは、本願発明の「一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、前記ボックス本体に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と」「を備え」ることに相当する。

(e)引用発明2の「鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填した」ことと、本願発明の「前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂が前記ボックス本体の収容凹部内から前記ケーブル貫通孔内部に入り込むように樹脂溜まりを設けたこと」とは、「前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂が前記ケーブル貫通孔内部に入り込むように樹脂溜まりを設けたこと」で一致する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「太陽電池モジュールに装着されるボックス本体と、
前記ボックス本体内に配設されて太陽電池モジュールの太陽電池からの複数の接続線がそれぞれ接続される複数の接続端子と、
一端が対応する接続端子に接続されて他端がボックス本体外に引き出された外部接続用ケーブルと、
前記ボックス本体に設けられ前記外部接続用ケーブルをボックス本体内部に引き込むためのケーブル貫通孔と、
を備え、
前記ボックス本体の前記外部接続用ケーブルが挿通される箇所に充填用樹脂が前記ケーブル貫通孔内部に入り込むように樹脂溜まりを設けたことを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックス。」
で一致し、次の点で相違する。

(3)相違点
(ハ)本願発明は、「前記ボックス本体の収容凹部内から充填される充填用樹脂と、を備え」るのに対して、引用発明2は、「筺体10」内に樹脂を充填しない点。

(ニ)本願発明では、「充填用樹脂が前記ボックス本体の収容凹部内から前記ケーブル貫通孔内部に入り込む」(特に、下線部)のに対して、引用発明では、「鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填」する際に、どこから樹脂を充填するのかが明らかでない点。

4.判断
(1)相違点(ハ)について
まず、引用発明2の「周壁12は、底板11の外周全領域を取り囲んでいて、底板11と周壁12は連続的に形成されて、筐体10の内部と外部を水密に区画して」いることにより、「筺体10」が、本願発明の「収容凹部」に相当する構成を有することは明らかである。
そして、引用発明2は、「端子板内への水の浸入をより一層防止可能な端子ボックスを得ることを課題とする」(段落【0004】)ものであり、一般に、太陽電池モジュールの端子ボックスにおいて、端子ボックスへの浸水を防止するために、端子ボックス内を樹脂で充填することは、引用文献1(段落【0009】、【0030】等参照)、特開2002-141537号公報(段落【0005】、【0007】、【0030】等参照)、特開2001-24206号公報(段落【0002】、【0016】、図2等参照)、特開2004-235189号公報(段落【0039】等参照)に記載されるように周知であり、引用発明2の「鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填」することに加えて、「筺体10」内を樹脂で充填すれば、端子ボックスへの浸水をより確実に防止できることは当業者には明らかであるから、引用発明2において、「筺体10」内を樹脂で充填することは当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点(ニ)について
引用発明2において、「鞘部と外部接続ケーブルの間隙部分にシリコン樹脂などの水密樹脂を充填」するには、鞘部の両端のうちの少なくとも一方から充填することは自明であり、また、上記(1)のとおり、引用発明2において、「筺体10」内を樹脂で充填することは当業者が容易になし得ることであって、「筺体10」内を樹脂で充填するのであれば、鞘部の「筺体10」側の端部から樹脂を充填するようにすることは、技術の具体的適用に伴い、当業者の通常の創作能力を発揮することにより、適宜設計し得る事項にすぎない。

(3)効果について
本願発明が奏し得る効果は、引用発明2及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)結論
本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-28 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-18 
出願番号 特願2010-17204(P2010-17204)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 太陽電池モジュール用端子ボックス及び太陽電池モジュール  
代理人 松川 克明  
代理人 鳥居 洋  

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