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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47J
管理番号 1303876
審判番号 不服2014-2935  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-17 
確定日 2015-08-06 
事件の表示 特願2012-113150号「加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月4日出願公開、特開2012-187417号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年11月5日に出願した特願2008-283909号の一部を平成24年5月17日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年2月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において平成27年3月4日付けで拒絶理由が通知され、同年5月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成27年5月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「加熱室と、
被加熱物が載置される載置部と、
前記載置部の直上を避けた位置に設けられ、前記被加熱物を輻射加熱するガラス管ヒータと、を備え、
前記加熱室は、
前記加熱室の背面の一部を構成し、前記加熱室と前記ガラス管ヒータとの間に設置され、前記加熱室と隙間なく設置された隔壁となり、前記載置部の直上を避けた位置に設けられた赤外線透過材と、
前記加熱室の背面のうち前記赤外線透過材を避けた部分に開口して設けられたダクト開口部と、を有し、
前記加熱室における前記ダクト開口部の背面側に設置された排気ダクトを備え、
前記赤外線透過材と前記ダクト開口部とは、略同一面上に設けられている
ことを特徴とする加熱調理器。」

第3 刊行物に記載された事項
当審の拒絶の理由に引用された本願原出願日前に頒布された刊行物である特開平3-99125号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(刊-1)「第1図は本発明による調理器の一実施例の簡単な断面図である。平面状石英管1の中にヒータ線2が複数本通されており、平面状石英管ヒータを形成する。このヒータの近傍に反射板9を設け、さらに排気入口4、排気通路5、排気出口6を設けるように煙処理の触媒体3を配置する。調理室内面7には油汚れ熱分解の被膜を形成し、上記ヒータ又は底面側に設けられたヒータ8による加熱で被膜を機能させる。図中10aはドア、10はドアガラス、19は支持脚、20は触媒体の支持板、21は調理器の外装である。」(第3頁右上欄第14行?同頁左下欄第4行)

(刊-2)「又、第3図にも他実施例の調理器の断面図を示した。
石英管1lの中にヒータ線12が複数本入り平面状石英管ヒータを形成するが、この場合ヒータ線同士の接触を避けるため石英管には絞りが施されている。他は第1図同様に反射板16、触媒体13、内面14、ヒータ15となっている。」(第3頁左下欄第7?13行)

(刊-3)第3図より、被加熱物が載置される載置部(記号18で示されるもの)を備えること、調理室内面14の背面側に平面状石英管ヒータ(11、12)を設けること、及び、調理室内面14の背面に排気入口4を有し、調理室内面14における排気入口4の背面側に排気通路5を設置することが看取できる。

よって、上記記載事項より、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「調理室と、
被加熱物が載置される載置部と、
調理室内面14の背面側に平面状石英管ヒータ(11、12)を設け、
前記加熱室は、
調理室内面14の背面に排気入口4を有し、
調理室内面14における排気入口4の背面側に排気通路5を設置した
調理器」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「調理室」、「被加熱物が載置される載置部」、「平面状石英管ヒータ」、「排気入口4」、「排気通路5」及び「調理器」は、それぞれ、本願発明の「加熱室」、「被加熱物が載置される載置部」、「ガラス管ヒータ」、「ダクト開口部」、「排気ダクト」及び「加熱調理器」に相当する。
引用発明の「調理室内面14の背面側に」「設け」られた「平面状石英管ヒータ」は、その設けられた位置が載置部の直上を避けた位置といえ、前記被加熱物を輻射加熱することはその機能上、明らかであるから、本願発明の「前記載置部の直上を避けた位置に設けられ、前記被加熱物を輻射加熱する」ものといえる。
引用発明の「調理室内面14の背面」の「排気入口4」は、本願発明の「前記加熱室の背面のうち前記赤外線透過材を避けた部分に開口して設けられたダクト開口部」と、「前記加熱室の背面に開口して設けられたダクト開口部」との限度で一致する。
引用発明の「調理室内面14における排気入口4の背面側に」「設置した」「排気通路5」は、本願発明の「前記加熱室における前記ダクト開口部の背面側に設置された排気ダクト」に相当する。

そうすると、両者は、
「加熱室と、
被加熱物が載置される載置部と、
前記載置部の直上を避けた位置に設けられ、前記被加熱物を輻射加熱するガラス管ヒータと、を備え、
前記加熱室は、
前記加熱室の背面に開口して設けられたダクト開口部と、を有し、
前記加熱室における前記ダクト開口部の背面側に設置された排気ダクトを備える
加熱調理器。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明は、「前記加熱室の背面の一部を構成し、前記加熱室と前記ガラス管ヒータとの間に設置され、前記加熱室と隙間なく設置された隔壁となり、前記載置部の直上を避けた位置に設けられた赤外線透過材」を有し、ダクト開口部が、「加熱室の背面のうち前記赤外線透過材を避けた部分に」設けられ、「前記赤外線透過材と前記ダクト開口部とは、略同一面上に設けられている」のに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

第5 判断
[相違点]について検討する。
ヒータの汚れ防止のため、加熱室とガラス管ヒータとの間に、加熱室と隙間なく凹凸のない平らな赤外線透過材を設置することは、当審の拒絶の理由に例示した特開昭62-145692号公報(保護スクリーン11、第3頁左下欄第18行?右下欄第4行、図1等参照)及び特開平3-36427号公報(板体8、第2頁左欄第11行?18行、図1等参照)にも例示されるように、本願原出願日前周知の事項である。
そうしてみると、引用発明において、ヒータの汚れ防止という周知な課題解決のため、載置部と平面状石英管ヒータの間において、調理室内面14の上部から隙間がないように下方に向けて、上記周知の平らな赤外線透過材を設置することは当業者が容易になし得たことであって、その際、加熱室背面の排気通路5に排気を導くために、設置する平らな赤外線透過材の最下部は、排気入口として開口することは設計上当然考慮することである。そして、その場合、排気入口としての開口は、「加熱室の背面のうち前記赤外線透過材を避けた部分に開口して設けられたダクト開口部」となり、「前記赤外線透過材と前記ダクト開口部とは、略同一面上に設けられている」ことになる。
よって、相違点に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の効果について検討しても、加熱室1の背面は赤外線透過材19とダクト開口部18が略同一面上に設けられており、背面に凹凸がないため、清掃作業等をしやすいという本願発明の効果(第【0030】段落)は、引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-02 
結審通知日 2015-06-09 
審決日 2015-06-23 
出願番号 特願2012-113150(P2012-113150)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 紀本 孝
小野 孝朗
発明の名称 加熱調理器  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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