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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J |
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管理番号 | 1303881 |
審判番号 | 不服2014-6424 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-07 |
確定日 | 2015-08-06 |
事件の表示 | 特願2012-282453「高分子多孔質膜」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月8日出願公開、特開2013-151671〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月26日(優先権主張 平成23年12月28日)の特許出願であって、平成25年4月1日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成26年4月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年5月2日付けで前置報告がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成26年4月7日に補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「ビニルアルコール単位及びテトラフルオロエチレン単位を有する共重合体(A)からなる高分子多孔質膜であって、 該共重合体(A)は、ビニルアルコール単位とテトラフルオロエチレン単位との交互率が30%以上であり、 該高分子多孔質膜は、非溶媒誘起相分離法、熱誘起相分離法、又は、それら両方の組み合わせにより作製されたものであり、 該高分子多孔質膜は、精密濾過膜又は限外濾過膜に用いられることを特徴とする高分子多孔質膜。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の理由は、要するに、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 刊行物1:国際公開第2001/126056号 第4 当審の判断 1.刊行物 国際公開第2001/126056号(上記刊行物1に同じ、以下、単に「引用文献1」という。) 2.引用文献1の記載事項 以下、下線は当審で付した。 (1)「下式(1)で表される含フッ素オレフィンとビニルアルコールの交互共重合比率が95%以上である含フッ素オレフィン/ビニルアルコール共重合体。 CF_(2)=CFX (1) (ただし、前記式中、Xはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、または-OC_(a)F_(2a+1)(aは1?3の整数である。)である。)」(特許請求の範囲請求項7) (2)「本発明の含フッ素オレフィン/ビニルアルコール共重合体(以下、「共重合体(A)」という。)の製造方法は、下記工程を有する。 重合工程:下式(1)で表される含フッ素オレフィン(以下、「含フッ素オレフィン(a)」という。)と、下式(2)で表されるビニルエーテル(以下、「ビニルエーテル(b)」という。)とを共重合させる工程。 脱保護工程:前記重合工程で得られた共重合体におけるビニルエーテル(b)に基づく重合単位のR^(1)を水素原子に置換し、水酸基を生じさせる工程。 CF_(2)=CFX (1) CH_(2)=CHOR^(1) (2) (ただし、前記式中、Xはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、-OC_(a)F_(2a+1)(aは1?3の整数である。)である。また、R^(1)は脱保護反応により水素原子に置換される保護基である。)」(段落0010) (3)「重合工程: 重合工程では、前記式(1)で表される含フッ素オレフィン(a)と、前記式(2)で表されるビニルエーテル(b)とを共重合させることにより、含フッ素オレフィン(a)に基づく重合単位とビニルエーテル(b)に基づく重合単位を有する共重合体(B)を得る。 含フッ素オレフィン(a)の具体例としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられる。・・・なかでも、・・・耐熱性に優れることから、テトラフルオロエチレン、またはクロロトリフルオロエチレンが好ましく、テトラフルオロエチレンが特に好ましい。 含フッ素オレフィン(a)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」(段落0012) (4)「本発明の製造方法により得られる共重合体(A)は、耐候性および透明性に優れた塗料用原料、透明性に優れた光学材料、耐水性に優れた気体/液体分離膜材料、ガスバリア材料、太陽電池用封止材料、各種表面保護シート材料、ならびに親水性多孔質材料等に好適に応用できる。」(段落0060) 2.引用文献1に記載された発明 引用文献1には、摘示(1)から、含フッ素オレフィン/ビニルアルコール共重合体が記載され、そして、摘示(3)から、含フッ素オレフィンの具体例はテトラフルオロエチレンであって、さらに、かかる共重合体は、摘示(4)から、「気体/液体分離膜材料」等に好適に応用できるのであるから、これらを総合すると引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。 「テトラフルオロエチレンとビニルアルコールの交互共重合比率が95%以上である含フッ素オレフィン/ビニルアルコール共重合体からなる気体/液体分離膜。」(以下、「引用発明1」という。) 3.対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「テトラフルオロエチレンとビニルアルコールの交互共重合比率が95%以上である含フッ素オレフィン/ビニルアルコール共重合体」は、本願発明の「ビニルアルコール単位及びテトラフルオロエチレン単位を有する共重合体(A)」で、「該共重合体(A)は、ビニルアルコール単位とテトラフルオロエチレン単位との交互率が30%以上」のものに相当することは明らかである。 引用発明1の「気体/液体分離膜」は、高分子であることは明らかであり、そして、分離という機能を有することから、多孔質であることも明らかである。 そうすると、両者は、 「ビニルアルコール単位及びテトラフルオロエチレン単位を有する共重合体(A)からなる高分子多孔質膜であって、 該共重合体(A)は、ビニルアルコール単位とテトラフルオロエチレン単位との交互率が30%以上である高分子多孔質膜。」 である点で一致し、以下の相違点で相違するものである。 <相違点1> 本願発明では、高分子多孔質膜の作成方法を「非溶媒誘起相分離法、熱誘起相分離法、又は、それら両方の組み合わせ」と特定するが、引用発明1ではそのような特定をしていない点。 <相違点2> 本願発明では、高分子多孔質膜の用途を「精密濾過膜又は限外濾過膜に用いられる」と特定するが、引用発明1ではそのような特定をしていない点。 4.相違点に対する判断 (1)相違点1について 高分子多孔質膜の作成方法として、非溶媒誘起相分離法及び熱誘起相分離法は周知の技術(例えば、特開平5-261256号公報(段落0012、0013)、特開昭58-49405号公報(7頁右下欄1行?8頁左上欄4行)、特開2011-225659号公報(段落0046?0060)等参照)であるから、当業者にとってこれらの方法を採用することに格別の困難性はなく、また、本願明細書の記載を検討しても、このことによって格別優れた効果が奏されているともいえない。 してみれば、上記相違点1は、当業者であれば容易に想到しうることと認められる。 (2)相違点2について 高分子多孔質膜を、精密濾過膜又は限外濾過膜として用いることは、周知の用途(例えば、特開平5-261256号公報(段落0019)、特開昭58-49405号公報(11頁右下欄下から4行?12頁左上欄4行)、特開2011-225659号公報(段落0070)等参照)であって、当業者にとってこれらの用途とすることに格別の困難性はなく、また、本願明細書の記載を検討しても、このことによって格別優れた効果が奏されているともいえない。 してみれば、上記相違点2は、当業者であれば容易に想到しうることと認められる。 5.請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張する。 「引用文献1には、非溶媒誘起相分離法又は熱誘起相分離法で高分子多孔質膜を製造したことは開示されていません。 本願発明は、ビニルアルコール単位とテトラフルオロエチレン単位との交互率を特定範囲とし、特定の製法で作製された高分子多孔質膜であるため、優れた透水性及び親水性を有し、水処理用途に好適に用いることができるものです。上記交互率に加え、特定の製法で作製することにより上述の効果を奏し得ることは、引用文献1には開示も示唆もありません。 従って、補正後の本願発明(請求項1)は、当業者が引用文献1に基づき容易に想到し得る発明ではないことが明らかです。」 しかしながら、そもそも水処理用途は高分子多孔質膜の用途として通常に認識されているものであり、さらに、非溶媒誘起相分離法又は熱誘起相分離法は高分子多孔質膜の周知の製造方法であり、しかも請求人が主張する上述の効果についても、透水性や親水性は水処理等の分離膜において当然に考慮される技術的事項に過ぎず、本願明細書の記載を検討しても、格別優れた効果とも認められない。 6.まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の理由は妥当なものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-05-28 |
結審通知日 | 2015-06-02 |
審決日 | 2015-06-22 |
出願番号 | 特願2012-282453(P2012-282453) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横田 晃一、家城 雅美 |
特許庁審判長 |
小野寺 務 |
特許庁審判官 |
田口 昌浩 大島 祥吾 |
発明の名称 | 高分子多孔質膜 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |